以下、本発明の吸収性物品について説明する。
本発明の吸収性物品において、液体被供給領域は、吸収性物品の種類、用途等に応じて、液体透過性シートに適宜設定される領域であり、液体透過性シートに設定される液体被供給領域の位置、面積等は特に限定されない。液体被供給領域は、実際に液体が供給される領域と略同一の領域として設定されてもよいし、それよりも大きい領域として設定されてもよいが、外部への液体の漏れ出しを防止する点から、実際に液体が供給される領域よりも大きい領域として設定されることが好ましい。
本発明の吸収性物品において、伸張性領域は、蛇腹部の伸張により伸張可能な領域である。蛇腹部は、山折り部及び谷折り部の繰り返し構造を有しており、蛇腹部が形成されている液体被供給領域の面方向及び厚さ方向に伸張可能である。蛇腹部は、伸張性に加えて、収縮性を有してもよい。但し、蛇腹部が収縮性を有する場合であっても、蛇腹部の材質、蛇腹の数等によっては、蛇腹部が完全には元の状態に収縮せず、元の状態よりも若干伸張した状態を維持する場合がある。
本発明の吸収性物品において、可撓性領域は、変形に対する弾性復元力(反発力)を有する領域である。可撓性領域は、変形時に加わる力によって伸張してもよいが、変形に対する弾性復元力を高める点から、変形時に加わる力によって実質的に伸張しないことが好ましい。
本発明の吸収性物品において、可撓性領域は、伸張性領域の周囲全体又は一部を包囲する。吸収性物品の凸状変形時に、吸収体の過剰圧縮を防止する伸張性領域の伸張及び液体透過性シートの撓みを防止する可撓性領域の弾性復元力を効果的に生じさせる点から、可撓性領域は、伸張性領域の周囲全体のうち30〜100%を包囲することが好ましく、50〜100%を包囲することがさらに好ましく、100%を包囲することが最も好ましい。
本発明の吸収性物品において、液体被供給領域に、伸張可能な蛇腹部を有する複数の伸張性領域が形成されており、可撓性領域が、各伸張性領域を包囲することが好ましい(態様1)。態様1では、吸収性物品の凸状変形時に、吸収体の過剰圧縮を防止する伸張性領域の伸張及び液体透過性シートの撓みを防止する可撓性領域の弾性復元力が効果的に生じる。
態様1において、可撓性領域が網目状に形成されており、各網目の内側に伸張性領域が形成されていることが好ましい(態様2)。態様2では、吸収性物品の凸状変形時に、吸収体の過剰圧縮を防止する伸張性領域の伸張及び液体透過性シートの撓みを防止する可撓性領域の弾性復元力が効果的に生じるように、複数の伸張性領域と、各伸張性領域を包囲する可撓性領域とが配置されている。
態様2において、可撓性領域が、吸収性物品の長手方向と交差する方向に延設され、略平行に並設された略直線状の第1の領域と、第1の領域と交差する方向に延設され、略平行に並設された略直線状の第2の領域とを有することが好ましい(態様3)。態様3では、吸収性物品の凸状変形時に、吸収体の過剰圧縮を防止する伸張性領域の伸張及び液体透過性シートの撓みを防止する可撓性領域の弾性復元力が効果的に生じるように、網目状の可撓性領域が配置されている。
本発明の吸収性物品において、蛇腹部が、吸収性物品の長手方向に延設され、吸収性物品の幅方向に並設され、幅方向に沿った断面が波状である山折り部及び谷折り部を有することが好ましい(態様4)。態様4では、吸収性物品が、その長手方向に沿って折り曲げられ、液体被供給領域側に向けて凸状変形する時、蛇腹部が吸収性物品の幅方向及び厚さ方向に伸張するので、凸状変形に起因する吸収体の過度な圧縮及びこれに伴うリウェットが効果的に防止される。
本発明の吸収性物品において、伸張性領域に液体透過孔が形成されており、可撓性領域に液体透過孔が形成されていないことが好ましい(態様5)。態様5では、吸収性物品の凸状変形時に、張力が直接加わらない伸張性領域に液体透過孔が形成されている一方、張力が直接加わる可撓性領域に液体透過孔が形成されていないので、張力により液体透過孔が引き伸ばされて吸収体が露出することが防止される。
本発明の吸収性物品において、液体被供給領域の周縁部に圧搾溝が形成されていることが好ましい(態様6)。圧搾溝は、液体被供給領域の周縁部及び吸収体を圧縮して一体化することにより形成される凹部である。態様6では、圧搾溝を起点として吸収性物品が安定して凸状変形しやすくなるので、吸収性物品の凸状変形時に、吸収体の過剰圧縮を防止する伸張性領域の伸張及び液体透過性シートの撓みを防止する可撓性領域の弾性復元力が効果的に生じる。
本発明の吸収性物品において、液体透過性シートが、0.00〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.00〜0.05gの水溶解度とを有する血液改質剤を含むことが好ましい(態様7)。態様7では、吸収性物品の吸収対象が経血である場合、液体透過性シートに到達した経血が血液改質剤と接触して改質されるので、液体透過性シートに粘度の高い経血が残存しにくく、液体透過性シートのべたつき感が減少し、サラサラ感が向上するとともに、着用者が視覚的に不快感を覚えにくい。
態様7において、血液改質剤は、例えば、下記(i)〜(iii):
(i)炭化水素;
(ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;及び
(iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない(態様8)。
態様7又は8において、血液改質剤は、例えば、下記(i’)〜(iii’):
(i’)炭化水素;
(ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物;及び
(iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない(態様9)。
態様7〜9において、血液改質剤は、例えば、下記(A)〜(F):
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル;
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル;
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル;
(D)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物;
(E)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル;及び
(F)鎖状炭化水素;
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される(態様10)。
態様7〜10において、血液改質剤は、例えば、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d4)ジアルキルカーボネート、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(e4)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、(e5)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル、及び(f1)鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される(態様11)。
本発明の吸収性物品において、態様1〜11のうち2以上の態様を組み合わせてもよい。
本発明の吸収性物品の種類及び用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、生理用ナプキン、パンティーライナ、使い捨てオムツ、失禁パッド、失禁ライナ、汗取りシート等の衛生用品・生理用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されず、例えば、使用者の液状排泄物、体液等が挙げられる。
以下、生理用ナプキンを例として、本発明の吸収性物品の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る生理用ナプキン1は、液体透過性のトップシート2と、液体不透過性のバックシート3と、トップシート2及びバックシート3の間に設けられた吸収体4とを備えている。
図1において、X軸方向は生理用ナプキン1の幅方向に、Y軸方向は生理用ナプキン1の長手方向に、X軸Y軸に広がる平面の方向は生理用ナプキン1の平面方向に相当する。他の図においても同様である。図2は、模式断面図であり、トップシート2に形成されている蛇腹部210は省略されている。
生理用ナプキン1は、液状排泄物(特に経血)を吸収する目的で、使用者に着用される。この際、トップシート2が使用者の肌側に、バックシート3が使用者の着衣(下着)側に位置するように、使用者に着用される。液状排泄物は、トップシート2を透過して吸収体4に至り、吸収体4に吸収・保持される。吸収体4に吸収・保持される液状排泄物の漏れは、バックシート3によって防止される。
図1及び図2に示すように、トップシート2及びバックシート3は、長手方向の端部同士がシール部7a,7bによって接合され、本体部11を形成するとともに、幅方向の端部同士がシール部8a,8bによって接合され、本体部11から幅方向に延出する略矩形状のウイング部12a,12bを形成している。トップシート2及びバックシート3の周縁部がシール部7a,7b,8a,8bによって接合されることにより、生理用ナプキン1の変形時における両シートの離間が防止される。
本体部11の形状は、女性の身体、下着等に適合する範囲で適宜変更可能であり、例えば、略長方形、略楕円形、略瓢箪形等であってもよい。本体部11の長手方向の延べ寸法は、通常100〜500mm、好ましくは150〜350mmであり、本体部11の幅方向の延べ寸法は、通常30〜200mm、好ましくは40〜180mmである。
シール部7a,7b,8a,8bによる接合様式としては、例えば、エンボス加工、超音波、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。接合強度を高めるために、2種以上の接合様式を組み合わせてもよい(例えば、ホットメルト型接着剤による接合後に、エンボス加工を施す等)。
エンボス加工としては、例えば、パターニングされたエンボスロールとフラットロールとの間に、トップシート2及びバックシート3を合わせて通過させてエンボス加工する方法(いわゆるラウンドシールと呼ばれる方法)等が挙げられる。この方法では、エンボスロール及び/又はフラットロールの加熱により、各シートが軟化するため、シール部が明瞭になりやすい。エンボスパターンとしては、例えば、格子状パターン、千鳥状パターン、波状パターン等が挙げられる。シール部の境界で生理用ナプキン1が折り曲がりにくくなるように、エンボスパターンは間欠で細長状であることが好ましい。
ホットメルト接着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。接着剤の塗布方法としては、例えば、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等が挙げられる。
図2に示すように、ウイング部12a,12bを形成するバックシート3の着衣側には、粘着部9a,9bが設けられており、本体部11を形成するバックシート3の着衣側には、粘着部9cが設けられている。粘着部9cが下着のクロッチ部に貼付されるとともに、ウイング部12a,12bが下着の外面側に折り曲げられ、粘着部9a,9bが下着のクロッチ部に貼付されることにより、生理用ナプキン1は下着に安定して固定される。
粘着部9a,9b,9cに含有される粘着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の粘着付与剤;リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤;ビニル重合体、ポリエステル等のポリマー可塑剤等が挙げられる。
トップシート2は、使用者が生理用ナプキン1を着用した時の肌触りを向上させる目的で、使用者の肌と接触する面に設けられている。
トップシート2は、可撓性材料で構成されている。可撓性材料は、変形に対する弾性復元力(反発力)を有する材料である。可撓性材料は、変形時に加わる力によって伸張してもよいが、変形に対する弾性復元力を高める点から、変形時に加わる力によって実質的に伸張しないことが好ましい。
可撓性材料としては、例えば、合成樹脂が挙げられ、合成樹脂としては、例えば、オレフィンとアクリル酸エステル、酢酸ビニル等の他モノマーとの共重合体;低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリアミド;酢酸セルロース等が挙げられ、これらのうち、柔軟性が高く肌に対する刺激が少ない点から、オレフィンと他モノマーとの共重合体、ポリオレフィン等が好ましい。可撓性材料は、2種以上の合成樹脂の混合材料、例えば、低密度ポリエチレン20〜60%、直鎖状低密度ポリエチレン30〜60%及び高密度ポリエチレン5〜20%の混合材料であってもよい。
図1及び図2に示すように、トップシート2には、使用者から液状排泄物の供給を受ける排泄物被供給領域20aと、その周辺に位置する周辺領域20bとが設定されている。排泄物被供給領域20aは、使用者の排泄口(例えば、小陰唇、大陰唇、膣口等)が当接する第1領域201と、第1領域201の周囲に位置する第2領域202とを含み、排泄物被供給領域20aの長さは通常50〜200mm、好ましくは70〜150mmであり、幅は通常10〜80mm、好ましくは20〜50mmである。第1領域201は、液状排泄物の吸収性を向上させるために、使用者の排泄口が実際に当接する領域よりも広くなっている。第2領域202は、第1領域201から吸収されなかった液状排泄物の漏れを防止するために、第1領域201の周囲に配置されている。第2領域202は、第1領域201から吸収されなかった液状排泄物の漏れのうち、特に、生理用ナプキン1の幅方向からの漏れを効果的に防止する。
図1及び図3に示すように、トップシート2には、排泄物被供給領域20a及び周辺領域20bを含む略全体に、可撓性領域22が網目状に形成されており、各網目の内側には伸張性領域21が形成されている。伸張性領域21は、蛇腹部210の伸張に起因する伸張性を有し、可撓性領域22は、トップシート2を構成する可撓性材料に起因する可撓性(変形に対する弾性復元力)を有する。なお、図3に示すように、可撓性領域22は、略平坦状であり、伸張性領域21のような構造に起因する伸張性を有しない。
図3に示すように、伸張性領域21には、山折り部及び谷折り部の繰り返し構造を有する蛇腹部210が形成されている。蛇腹部210の山折り部及び谷折り部が引き伸ばされることにより、伸張性領域21は、生理用ナプキン1の幅方向及びに厚さ方向に伸張可能である。なお、図3において、トップシート2側を上側、バックシート3側を下側とした時、上側に凸であるものが山折り部であり、下側に凸であるものが谷折り部である。
図1及び図3に示すように、蛇腹部210の山折り部及び谷折り部は、生理用ナプキン1の長手方向に延設されるとともに、生理用ナプキン1の幅方向に並設されている。このような配置により、生理用ナプキン1が長手方向に沿って折り曲げられ、トップシート2側に向けて凸状変形した時、吸収体4の過剰圧縮を防止する蛇腹部210の伸張(生理用ナプキン1の幅方向への伸張)が効果的に生じる。
図3に示すように、生理用ナプキン1の幅方向に沿った蛇腹部210の断面は略波状となっている。略波状には、U字状の曲線を直線にする、U字状をコの字状にする、U字状をV字状にする等の変形が加えられた形状が含まれる。
山折り部の最上部の幅及び谷折り部の最下部の幅は、通常0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.5mmであり、山折り部の高さ及び谷折り部の深さは、通常0.3〜3.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、隣り合う山折り部の最上部同士の幅及び隣り合う谷折り部の最下部同士の幅は、通常0.3〜3.0mm、好ましくは0.5〜2.0mmである。
蛇腹部210は、伸張性に加えて収縮性を有していてもよい。但し、蛇腹部210が収縮性を有する場合であっても、蛇腹部210の材質、蛇腹の数等によっては、伸張していた蛇腹部210が完全には元の状態に収縮せず、元の状態よりも若干伸張した状態を維持する場合がある。
蛇腹部210に収縮性を付与する場合、トップシート2を構成する可撓性材料にエラストマー材料を混合すればよい。エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系、ウレタン系、オレフィン系、スチレン系、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー、メタロセン触媒を用いた低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィンコポリマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、芳香族ポリエステルをハードセグメントに、非晶性ポリエーテル、脂肪族ポリエステル等をソフトセグメントとして含むものが挙げられ、ウレタン系エラストマーとしては、例えば、熱可塑性エラストマーとしての、ポリエステル、低分子グリコール、メチレンビスフェニルイソシアネート等からなるポリウレタンが挙げられ、オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレンと、α−オレフィンとのランダムコポリマー、エチレンと、α−オレフィンと、ジエンとのランダムコポリマー等が挙げられ、スチレン系エラストマーとしては、例えば、SEBS、SIS、SEPS、SBS等のブロックコポリマーが挙げられ、ポリアミド系エラストマーとしては、ハードセグメントとしてのナイロンと、ソフトセグメントとしてのポリエステル又はポリオールとを含むものが挙げられる。
図1及び図3に示すように、可撓性領域22は、生理用ナプキン1の長手方向と交差する方向に延設され、略平行に並設された略直線状のm個の領域(以下「領域A1-m」という)と、領域A1-mと交差する方向に延設され、略平行に並設された略直線状のn個の領域(以下「領域B1-n」という)とを有し、領域A1-m及び領域B1-nが交差することにより網目状となっている。
領域A1-mが生理用ナプキン1の長手方向と交差する角度α1は、通常1°≦α1≦90°、好ましくは10°≦α1≦80°、さらに好ましくは30°≦α1≦60°である。領域B1-nが生理用ナプキン1の長手方向と交差する角度α2(但し、領域B1-nが領域A1-mと交差する角度をα1+α2とする)は、通常1°≦α2≦90°、好ましくは10°≦α2≦80°、さらに好ましくは30°≦α2≦60°である。但し、α1及びα2は、α1+α2が180°とならないように選択される。α1及びα2が上記範囲にあると、領域A1-m及び領域B1-nが、生理用ナプキン1の長手方向を挟んで両側に位置するので、生理用ナプキン1が長手方向に沿って折り曲げられて凸状変形した際、凸状変形に対する可撓性領域22の弾性復元力(反発力)が発揮されやすくなるとともに、伸張性領域21の蛇腹部210の形成に必要な各網目の寸法が確保される。
領域A1-mの数(m)及び領域B1-nの数(n)は、図1に示す数に限定されず、生理用ナプキン1の大きさ等に応じて適宜変更可能である。m及びnは、同一又は異なる数値であり、m及びnの数値範囲は、通常4〜60、好ましくは8〜40、さらに好ましくは10〜35である。
領域A1-m及び領域B1-nの各領域の幅は、通常0.1〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mmである。領域A1-m及び領域B1-nの幅が上記範囲にあると、凸状変形に対する可撓性領域22の弾性復元力(反発力)が発揮されやすくなるとともに、伸張性領域21の蛇腹部210の形成に必要な各網目の寸法が確保される。
図1及び図3に示すように、領域A1-m及び領域B1-nの交差によって形成される各網目の形状は略菱形状である。本実施形態に変更を加えて、各網目の形状を、略三角形状、略四角形状、略五角形状等の略多角形状としてもよい。略多角形状には、角を丸くする、一辺を構成する直線を曲線とする等の変形が加えられた形状が含まれる。また、本実施形態に変更を加えて、領域A1-m及び領域B1-nを曲線状とし、各網目の形状を略円形状、略楕円形状等としてもよい。
生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向における各網目の大きさは、通常3〜40mm、好ましくは5〜30mm、さらに好ましくは10〜20mmである。各網目の大きさが上記範囲にあると、凸状変形に対する可撓性領域22の弾性復元力(反発力)が発揮されやすくなるとともに、伸張性領域21の蛇腹部210の形成に必要な各網目の寸法が確保される。
各網目に形成される山折り部及び谷折り部の合計数は、通常3以上であり、好ましくは5〜19であり、さらに好ましくは7〜15である。但し、山折り部及び谷折り部の合計数は奇数である。蛇腹部210の山折り部及び谷折り部の合計数が上記範囲にあると、生理用ナプキン1が凸状変形した際、吸収体4の過剰圧縮を防止する蛇腹部210の伸張が効果的に生じる。
図1及び図3に示すように、可撓性領域22は、伸張性領域21の周囲全体を包囲しており、隣接する伸張性領域同士の接続は可撓性領域22によって遮断されている。本実施形態に変更を加えて、伸張性領域21の周囲の一部を可撓性領域22で包囲してもよい。この場合、生理用ナプキン1の凸状変形時に、吸収体4の過剰圧縮を防止する伸張性領域21の伸張及びトップシート2の撓みを防止する可撓性領域22の弾性復元力を効果的に生じさせる点から、可撓性領域22は、伸張性領域21の周囲全体のうち30%以上を包囲することが好ましく、50%以上を包囲することがさらに好ましい。
図1及び図3に示すように、可撓性領域22は、伸張性領域21の周縁部と連続している。また、図3に示すように、可撓性領域22は、蛇腹部210の山折り部の最上部と連続している。本実施形態に変更を加えて、可撓性領域22を蛇腹部210の谷折り部の最下部と連続させてもよい。但し、可撓性領域22が肌面側にあるとトップシート2の肌触りが滑らかになる点から、図3に示すように、可撓性領域22は、蛇腹部210の山折り部の最上部と連続していることが好ましい。
図3に示すように、トップシート2には、複数の液体透過孔26が形成されており、液状排泄物は、液体透過孔26を通じて吸収体4に浸透可能である。図3に示すように、液体透過孔26は、トップシート2の排泄物被供給領域20aのうち、凸状変形時に張力が直接加わらない伸張性領域21(蛇腹部210において、山折り部の最上部と谷折り部の最下部とを接続する側面部25)には形成されているが、凸状変形時に張力が直接加わる可撓性領域22には形成されていない。したがって、張力により液体透過孔26が引き伸ばされにくく、液状排泄物を吸収した吸収体4が露出して使用者の肌に接触し、使用者にベタツキ感及び不快感を与えることが防止される。
1個の液体透過孔26の開口面積は、好ましくは0.001〜1mm2、さらに好ましくは0.01〜0.1mm2である。1個の液体透過孔26の開口面積が0.001mm2よりも小さいと、液状排泄物が透過しにくくなる場合があり、1mm2を超えると、吸収体4に一旦吸収された液状排泄物がトップシート2の液体透過孔26を通って逆戻りする場合や、トップシート2の隠ぺい性が小さくなる場合がある。
トップシート2の面積に対する総開口面積の割合、すなわち、トップシート2の開口率は、好ましくは5〜20%である。トップシート2の開口率が5%未満であると、トップシート2における体液の透過性が悪くなる場合があり、トップシート2の開口率が20%を超えると、吸収体4に一旦吸収された体液がトップシート2の液体透過孔26を通って逆戻りしたり、液体透過孔26を通して吸収体4に吸収された液状排泄物が見えたりする場合がある。
トップシート2の厚み、坪量等は、伸張性領域21の蛇腹部210の形成性、可撓性領域22の可撓性等の点から、適宜調節される。トップシート2の坪量は、通常10g/m2以上、好ましくは10〜40g/m2、さらに好ましくは20〜30g/m2であり、トップシート2の厚さは、通常0.01〜3.0mm、好ましくは0.1〜1.5mmである。
トップシート2の隠ぺい性を高める点から、トップシート2に酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーを含有させてもよい。
トップシート2は積層フィルムであってもよい。積層フィルムとしては、例えば、合成樹脂フィルム層とその着衣側の面に設けられた繊維集合層との積層フィルムが挙げられる。繊維集合層は、例えば、親水性繊維の集合体である紙、不織布等を含有する。繊維集合層として使用される不織布は、好ましくはティッシュである。ここで、ティッシュとは、クラフトパルプ、レーヨン等を主成分として湿潤強度が与えられた坪量が10g/m2以上、20g/m2以下の薄葉紙をいう。繊維集合層の厚さは、好ましくは0.1〜0.5mmである。繊維集合層は、トップシート2に親水性及び柔軟性を付与することができる。繊維集合層にティッシュを使用する場合、ティッシュは、他の紙及び不織布に比べて、価格が安く、また、市場に多く出回っているので調達しやすい。ティッシュ層の強度は低いが、合成樹脂フィルム層とともに使用することにより、トップシート2の強度が確保される。
バックシート3は、吸収体4に吸収された液状排泄物の漏れを防止する目的で、使用者の着衣(下着)と接触する面に設けられている。バックシート3は、着用時のムレを低減させるために、液体不透過性に加えて、透湿性を有することが好ましい。
バックシート3は、例えば、防水処理を施した不織布、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート(例えば、スパンボンド、スパンレース等の不織布に通気性の合成樹脂フィルムが接合された複合フィルム)、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布等である。
図1及び図2に示すように、トップシート2のうち、排泄物被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202の周縁部には、それぞれ、圧搾溝5a,5bが形成されている。圧搾溝5a,5bを起点として生理用ナプキン1が安定して凸状変形するので、生理用ナプキン1の凸状変形時に、吸収体4の過剰圧縮を防止する伸張性領域21の伸張及びトップシート2の撓みを防止する可撓性領域22の弾性復元力が効果的に生じる。
圧搾溝5a,5bは、例えば、加熱ローラを用いたエンボス加工により、排泄物被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202の周縁部及び吸収体4を圧縮して一体化することにより形成される。
図1及び図2に示すように、圧搾溝5a,5bは、それぞれ、液体被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202の周縁部全体に形成されている。本実施形態に変更を加えて、圧搾溝5a,5bを、それぞれ、液体被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202の周縁部の一部に形成してもよい。
吸収体4は、圧搾溝5a,5bによって、排泄物被供給領域20aの第1領域201のバックシート3側に位置する吸収体4aと、排泄物被供給領域20aの第2領域202のバックシート3側に位置する吸収体4bと、周辺領域20bのバックシート3側に位置する吸収体4cとに分断されている。吸収体4aによって排泄物被供給領域20aの厚みが予め出ており、圧搾溝5a,5bによって安定した排泄物被供給領域20aの凸状変形を誘導できるため、使用者に対する排泄物被供給領域20aのフィット性が向上している。吸収体4bは、吸収体4aよりも高密度化しており、排泄物吸収後であっても剛性を維持しやすいので、排泄物吸収後の生理用ナプキン1全体のヨレが防止される。
図2に示すように、排泄物被供給領域20aの第1領域201と吸収体4aとの間、及び排泄物被供給領域20aの第2領域202と吸収体4bとの間には、接着剤層S1が形成されている。接着剤層S1は、排泄物被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202と吸収体4a及び4bとを剥離可能に接着する接着剤層であり、生理用ナプキン1が凸状変形すると、排泄物被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202は、それぞれ、吸収体4a及び4bから剥離して、離間する。本実施形態では、排泄物被供給領域20aの第1領域201と吸収体4aとの接合面、及び排泄物被供給領域20aの第2領域202と吸収体4bとの接合面の略全体に接着剤層S1を形成しているが、本実施形態に変更を加えて、接合面の一部に接着剤層S1を形成してもよいし、接着剤層S1を形成しなくてもよい。
図2に示すように、周辺領域20bと吸収体4cとの間には接着剤層S2が形成されている。接着剤層S2は、接着剤層S1よりも接着強度が大きい接着剤層である。接着剤層S2は、接着剤層S1よりも接着強度が大きい限り、生理用ナプキン1の変形時に、周辺領域20bと吸収体4cとの剥離を防止してもよいし、剥離を許容してもよい。本実施形態では、周辺領域20bと吸収体4cとの接合面の略全体に接着剤層S2を形成しているが、本実施形態に変更を加えて、接合面の一部に接着剤層S2を形成してもよい。
接着剤層S1,S2に含有される接着剤は、好ましくはホットメルト接着剤であり、ホットメルト接着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。生理用ナプキン1から接着剤が滲み出した時に使用者に不快感を与えにくい点から、感圧型接着剤よりも相対的にタック性の低い感熱型接着剤が好ましい。
接着剤層S1,S2の接着強度は、例えば、接着剤の種類、目付量等によって調整可能である。
接着剤の種類により接着強度を調整する場合、接着剤層S1に含有される接着剤として、低タック性接着剤が選択され、接着剤層S2に含有される接着剤として、それよりもタック性が大きい接着剤が選択される。低タック性接着剤としては、ゴム系又はオレフィン系のホットメルト接着剤が挙げられるが、生理用ナプキン1の製造工程において、タンク中で長時間加熱された状態にあっても炭化物が発生しにくい点から、ゴム系が好ましい。
接着剤のタック性の高低は、例えば、粘着調整剤としてのパラフィンワックスの添加の有無又は添加量の増減により、調整可能である。粘着調整剤としてのパラフィンワックスを添加するか、その添加量を増加させると、接着剤のタック性は減少する。このように調整した低タック性ホットメルト接着剤としては、例えば、SBS(10〜30%)と、粘度調整剤としてのパラフィンオイル(5〜15%)と、粘着調整剤としてのパラフィンワックス(5〜30%)と、粘着付与剤としての水素添加ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂(40〜60%)と、酸化防止剤、紫外線吸収剤等のその他の成分(微量)とを溶融混合したものが挙げられ、高タック性ホットメルト接着剤としては、例えば、SBS(20〜40%)と、粘度調整剤としてのパラフィンオイル(10〜20%)と、粘着付与剤としての水素添加ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂(40〜60%)と、酸化防止剤、紫外線吸収剤等のその他の成分(微量)とを溶融混合したものが挙げられる。
接着剤の目付量により接着強度を調整する場合、接着剤層S1の目付量は、通常0〜30g/m2、好ましくは2〜20g/m2、さらに好ましくは3〜10g/m2であり、接着剤層S2の目付は、通常2〜30g/m2、好ましくは3〜20g/m2、さらに好ましくは5〜10g/m2である。
接着剤層S1及びS2の形成方法(接着剤の塗布方法)としては、例えば、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等が挙げられる。接着剤層S1,S2を形成する際、トップシート2及び吸収体4のいずれに接着剤を塗布してもよいが、トップシート2に接着剤を塗布する場合、トップシート2がフィルムである点から、非接触式のスパイラル塗工又はサミットガン塗工が好ましい。
接着剤層S2の接着強度は、接着剤層S1よりも大きい。接着剤層S2の接着強度は、接着剤層S1の通常110%以上、好ましくは110〜1000%、さらに好ましくは150〜500%である。接着剤層S2の接着強度が上記範囲にあると、排泄物被供給領域20aの伸張性領域21が、生理用ナプキン1の厚さ方向に伸張しやすく、吸収体4a,4bから離間しやすい。
なお、「接着強度」とは、接着剤層を介してトップシート2と接合された部材との剥離最大強度である。例えば、トップシート2が、その裏面側に不織布を貼り合わせた構造である場合、トップシート2と不織布との剥離強度(部材が材破した数値ではなく剥離した数値)である。貼り合せる部材によって数値は変動してしまうため目安ではあるが、接着剤層S2による周辺領域20bと吸収体4cとの接着強度は、通常0.4N/25mm以上、好ましくは0.5〜5N/25mmであり、接着剤層S1による排泄物被供給領域20aの第1領域201と吸収体4aとの接着強度、及び排泄物被供給領域20aの第2領域202と吸収体4bとの接着強度は、通常0.3N/25mm以下、好ましくは0〜0.3N/25mmである。なお、接着強度が0である場合は、接着剤層が形成されていない場合である。
具体的な目安として、以下の例が挙げられる。
[例1](周辺領域20bの数値例)トップシートとしてのエアースルー不織布30g/m2と、セカンドシートとしてのエアースルー不織布30g/m2との間に、通常のホットメルト接着剤をスパイラル塗工にて5g/m2塗布した際の剥離最大強度は0.56N/25mmである。
[例2](排泄物被供給領域20aの数値例)トップシートとしてのエアースルー不織布30g/m2と、セカンドシートとしてのエアースルー不織布30g/m2との間に、低タック性ホットメルト接着剤をスパイラル塗工にて5g/m2塗布した際の剥離最大強度は0.11N/25mmである。
[例3](周辺領域20bの数値例)トップシートとしてのエアースルー不織布30g/m2とセカンドシートとしてのエアースルー不織布30g/m2との間に、低タック性ホットメルト接着剤をスパイラル塗工にて5g/m2塗布し、セカンドシートの裏面に、ティッシュ14g/m2で被覆したパルプ300g/m2を吸収体として配置し、セカンドシートと吸収体との間に、通常のホットメルト接着剤をスパイラル塗工にて5g/m2塗布した状態で、トップシート及び吸収体に圧搾溝(ヒンジ)を形成し、圧搾溝を形成した箇所における、トップシートとセカンドシートとの剥離最大強度は2.30N/25mmである。
なお、上記数値は、インストロンジャパンカンパニーリミテッド型式5564を使用して、上下のそれぞれのチャックに、トップシート及びセカンドシートを挟み、チャック間距離10mm、剥離距離60mm、チャックスピード100mm/分で測定された数値である。
吸収体4は、吸収性材料層を有する。吸収性材料層に含有される吸収性材料は、使用者の液状排泄物を吸収可能である限り特に限定されない。吸収性材料としては、例えば、吸水性繊維、高吸水性材料(例えば、高吸水性樹脂、高吸水性繊維等)が挙げられる。吸収性材料層は、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、その他の各種改良剤を含有してもよい。
吸水性繊維としては、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ(例えば、砕木パルプ、リファイナーグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;クラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ等の化学パルプ;半化学パルプ等);木材パルプに化学処理を施して得られるマーセル化パルプ又は架橋パルプ;バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えばコットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース等が挙げられるが、コストが低く、成形しやすいこと点から、粉砕パルプが好ましい。
高吸水性材料としては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸水性材料が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性材料としては、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられ、合成ポリマー系の高吸水性材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer:SAP)等が挙げられるが、これらのうちポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)の高吸水性樹脂が好ましい。高吸水性材料の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、鱗片状等が挙げられ、粒子状である場合、粒径は、好ましくは50〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜600μmである。
吸収性材料層に含有される高吸水性材料の量は、生理用ナプキン1が備えるべき特性(例えば吸収性、軽量性等)に応じて適宜変更可能であるが、吸収性材料層の通常0〜50質量%、好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。
吸収性材料層の厚み、目付、密度等は、生理用ナプキン1が備えるべき特性(例えば吸収性、軽量性等)に応じて適宜変更可能である。吸収性材料層の厚みは、通常1〜20mm、好ましくは2〜15mm、さらに好ましくは2〜10mmであり、目付は、通常100〜1000g/m2、好ましくは150〜700g/m2、さらに好ましくは200〜500g/m2であり、密度は、通常0.005〜0.5g/cm3、好ましくは0.01〜0.2g/cm3、さらに好ましくは0.01〜0.1g/cm3である。なお、圧搾溝5a,5bの形成前後で、吸収性材料層の厚み、目付、密度等は変化する場合がある(例えば、吸収性材料層の厚みは減少し、目付及び密度は増加する)。
吸収体4は被覆材で被覆されていてもよいが、排泄物被供給領域20aのバックシート3側に位置する部分(吸収体4a,4b)は、被覆されていないことが好ましい。被覆材は液体透過性及び吸収体保持性を有する限り特に限定されないが、低コスト性及び吸収体保持性の点から、粉砕パルプを主材料とし湿式法で成形されるティッシュが好ましい。
生理用ナプキン1が、使用者の内股に挟まれて、トップシート2の排泄物被供給領域20aで折り曲げられ、排泄物被供給領域20a側に向けて凸状変形する時、以下の作用効果を発揮する。
図4に示すように、生理用ナプキン1の凸状変形時に、接着剤層S1を介して接着していた排泄物被供給領域20aと吸収体4a,4bとが剥離し、排泄物被供給領域20aの伸張性領域21が伸張する。したがって、吸収体4a,4bが排泄物被供給領域20aによる押圧を受けにくくなり、生理用ナプキン1の凸状変形に起因する吸収体4a,4bの過度な圧縮及びこれに伴うリウェットが防止される。
特に、排泄物被供給領域20aの周辺には、接着剤層S1よりも接着強度の大きい接着剤層S2によって吸収体4cと接着している周辺領域20bが存在するため、排泄物被供給領域20aの伸張性領域21は、生理用ナプキン1の厚さ方向に伸張しやすく、吸収体4a,4bから離間しやすい。したがって、生理用ナプキン1の凸状変形に起因する吸収体4a,4bの過度な圧縮及びこれに伴うリウェットが効果的に防止される。
また、生理用ナプキン1の着用者が体勢を変化させることにより、生理用ナプキン1の折れ曲がる角度が鋭角になったり、鈍角になったりする場合、可撓性領域22の弾性復元力(反発力)により、トップシート2が生理用ナプキン1の変形に追従しやいので、トップシート2の撓み及び撓んだシートの肌への貼り付きが防止される。
本実施形態に変形を加えて、排泄物被供給領域20aの第1領域201と吸収体4aとの間、及び排泄物被供給領域20aの第2領域202と吸収体4bとの間に接着剤層S1が形成しない場合にも、同様の作用効果が発揮される。
<第2実施形態>
第2実施形態では、トップシート2の表面に血液改質剤が塗布されている。
トップシート2に排出された経血は、その粘度及び表面張力が血液改質剤によって下げられるので、トップシート2から吸収体4へ速やかに移行し、吸収体4に吸収される。吸収体4の経血吸収速度の向上により、トップシート2に粘度の高い経血が残存しにくくなるので、トップシート2のべたつき感が低減し、トップシート2の表面ドライ性が向上するとともに、着用者が視覚的に不快感を覚えにくくなる。さらに、トップシート2に排出された経血の、生理用ナプキン1cの幅方向側からの漏れ出しが防止される。
血液改質剤が塗布される領域は、トップシート2の表面全体であってもよいし一部であってもよいが、少なくとも使用者の排泄口(膣口)に当接する領域を含むことが好ましい。血液改質剤は、トップシート2の液体透過孔を閉塞しないように、血液改質剤を液滴状又は粒子状でトップシート2に付着させることが好ましい。
トップシート2への血液改質剤の塗工目付は、好ましくは1〜30g/m2であり、さらに好ましくは3〜10g/m2である。血液改質剤の塗工目付が1g/m2よりも小さいと、血液改質剤をトップシート2に安定的に塗布することが難しい場合があり、血液改質剤の塗工目付が30g/m2よりも大きいと、トップシート2がヌルヌルする場合がある。
血液改質剤の塗布方法としては、例えば、所望の温度に加熱した後、スロットコーター等の接触式コーター、スプレーコーター、カーテンコーター、スパイラルコーター等の非接触式コーターを使用して塗布する方法が挙げられる。トップシート2に液滴状の血液改質剤を均一に分散できる点、トップシート2にダメージを与えない点等から、非接触式コーターを使用して塗布する方法が好ましい。
トップシート2に血液改質剤を塗布する時点は特に限定されないが、設備投資の抑制等の点から、生理用ナプキン1の製造工程で血液改質剤をトップシート2に塗布することが好ましい。生理用ナプキン1の製造工程で血液改質剤をトップシート2に塗布する場合、血液改質剤の減少抑制等の点から、最終工程に近い工程で血液改質剤をトップシート2に塗布することが好ましい。例えば、生理用ナプキン1の包装工程の直前に、血液改質剤をトップシート2に塗布してもよい。
トップシート2のうち、血液改質剤が塗布される領域を、親水剤、撥水剤等でコーティングしてもよいし、コロナ処理、プラズマ処理等によって親水性を付与してもよい。これにより、血液改質剤が親油性の場合、血液改質剤塗布領域に親水性の箇所と親油性の箇所とがまばらに共存することになり、経血の親水性成分(主に血しょう)及び親油性成分(主に血球)の両方がトップシート2から吸収体4へ速やかに移行する。
なお、血液改質剤の詳細について、別項目で説明する。
<吸収性物品の製造方法>
以下、生理用ナプキンの製造方法を例として、吸収性物品の製造方法の実施形態を説明する。
本実施形態に係る製造方法は、吸収体4を形成する工程(工程1A)と、吸収体4にトップシート2を積層する工程(工程2A)と、積層体に圧搾溝を形成する工程(工程3A)と、バックシート3を積層する工程(工程4A)と、生理用ナプキン1を切り出す工程(工程5A)と、生理用ナプキン1に血液改質剤を塗布する工程(工程6A)とを含み、図5に示す製造装置100が使用される。
[工程1A]
機械方向MDへ回転するサクションドラム120の周面には、吸収体材料122を詰める型として凹部124が周方向に所要のピッチで形成されている。サクションドラム120が回転して凹部124が材料供給部121へ進入すると、サクション部126が凹部124に作用し、材料供給部121から供給された吸収体材料122は凹部124に真空吸引される。材料供給部121は、サクションドラム120を覆うように形成されており、材料供給部121は、吸収体材料122を空気搬送により凹部124に対して供給し、凹部124には吸収体4が形成される。凹部124に形成された吸収体4は、機械方向MDに向かって進むキャリアシート110上に転写される。
[工程2A]
トップシート2が吸収体4に積層され、積層体262が形成される。この際、トップシート2のうち、排泄物被供給領域20aに対応する表面には、排泄物被供給領域20aと吸収体4とを剥離可能に接着する接着剤層S1が形成され、周辺領域20bに対応する表面には、接着剤層S1よりも接着強度が大きい接着剤層S2が形成される。排泄物被供給領域20aに対応する表面には、接着剤層S1が形成されなくてもよい。
[工程3A]
積層体262が、エンボス加工装置130の上段ロール131と下段ロール132との間を通過することにより、積層体262に圧搾溝が形成される。上段ロール131の外周の表面には、圧搾溝に対応する形状の凸部(不図示)が設けられている。下段ロール132は、外周の表面が平滑であるプレーンロールである。積層体262が、エンボス加工装置130の上段ロール131と下段ロール132との間を通過する際、積層体262が厚さ方向に圧縮され、圧搾溝5a,5bが積層体262に形成される。圧搾溝5a,5bは、トップシート2のうち、それぞれ、排泄物被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202の周縁部に形成され、圧搾溝5a,5bの形成により、排泄物被供給領域20aの第1領域201及び第2領域202の周縁部は吸収体4と一体化される。
[工程4A]
バックシートロール140から供給されたバックシート3を、圧搾溝が形成された積層体134の下側(トップシートと反対側)の面に、接着剤層を介して積層し、生理用ナプキン1の連続体144を形成する。
[工程5A]
カッタ150を使用して生理用ナプキン1の連続体144を切断し、生理用ナプキン1を切り出す。
[工程6A]
血液改質剤塗布スプレー160を使用して生理用ナプキン1の中央の領域に血液改質剤161を塗布して、トップシート2の表面に血液改質剤層を形成する。
血液改質剤層は、トップシート2の排泄物被供給領域20aのうち、少なくとも第1領域201に形成されることが好ましい。
本実施形態では、生理用ナプキン1を切り出した後に、血液改質剤を塗布したが、切り出す前のいずれの段階で塗布してもよいし、後述するトップシート2の製造工程で塗布してもよい。製造途中で塗布した血液改質剤が流れ落ちることを防止するために、製造工程の川下の段階、例えば、生理用ナプキン1を包装する直前に血液改質剤を塗布することが好ましい。
生理用ナプキン1の製造方法は、工程1A〜6Aの他、シール部シール部7a,7b,8a及び8bを形成する工程、粘着部9a,9b及び9cを形成する工程等を含む。
<液体透過性シートの製造方法>
以下、生理用ナプキン1のトップシート2の製造方法を例として、本発明の液体透過性シートの製造方法の実施形態を説明する。
本実施形態に係る製造方法は、合成樹脂フィルムシートに凹部を形成する工程(1B)と、合成樹脂フィルムシートをギア延伸する工程(2B)とを含む。
[工程1B]
図5に示すように、ロール210から供給された合成樹脂フィルムシート212は、凹部形成ロール220を通過し、合成樹脂フィルムシート212に凹部2141が形成される(図7参照)。凹部形成ロール220は、ローレットロール221と平滑な表面を有する予熱ロール222とからなる。
図6(a)および(b)は、ローレットロール221の一例を示す図である。図6(a)は、ローレットロール221の全体を示す図であり、図6(b)は、ローレットロール221の外周表面の凹凸を有する部分223を拡大した図である。図6(c)は、平滑な表面を有する予熱ロール222の一例を示す図である。ローレットロール221の表面223には、格子状の凸部224が設けられている。これにより、ローレットロール221の表面に菱形の凹部225が形成される。なお、ローレットロール221の凹部225の形状は菱形に限定されず、正方形、長方形、平行四辺形、台形、三角形、六角形等の形状であってもよい。
格子状の凸部224において平行に並ぶ凸部224の中心線間隔、すなわち格子状の凸部224のピッチは、好ましくは通常0.2〜10mm、さらに好ましくは0.4〜2mmである。格子状の凸部224の幅は、好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.03〜0.1mmである。菱形の凹部225の一辺の長さは、好ましくは0.1〜5mm、さらに好ましくは0.2〜1mmである。これらの範囲は、合成樹脂フィルムシートへの凹部の形成性を向上させる点で好ましい。
平滑な表面を有する予熱ロール222は、70℃〜100℃の温度に保持されており、供給された合成樹脂フィルムシート212を加熱する。これにより、合成樹脂フィルムシート212は柔らかくなり、成形しやすくなる。
合成樹脂フィルムシート212がロール221及び222の間を通過する時、合成樹脂フィルムシート212のうち、格子状の凸部224と接する部分は、厚さ方向に強い圧力を受ける。これにより、図7に示すように、合成樹脂フィルムシート214に細かい凹部2141が形成される。なお、実際に合成樹脂フィルムシート214に形成される凹部2141は、図7に示されているよりも小さく、単位面積当たりの凹部2141の数は図7に示されているよりも多い。凹部2141は、合成樹脂フィルムシート214のうち、生理用ナプキン1の中央領域に対応する領域2143に形成される。なお、合成樹脂フィルムシート214のうち、生理用ナプキン1に対応する領域は、符号2142の点線で示される領域である。
[工程2B]
延伸ギアロール230に、凹部を形成した合成樹脂フィルムシート214を通過させることによって、合成樹脂フィルムシート214のうち、トップシート2の伸張性領域21に対応する領域が折り曲げられ、蛇腹部210が形成された合成樹脂フィルムシート216が作製される。合成樹脂フィルムシート216において、蛇腹部210は、機械方向(MD)に延設され、幅方向に並設されており、幅方向に沿った断面の形状は、略U字状の曲線が組み合わせられた波状である。合成樹脂フィルムシート216において、機械方向に延びている蛇腹部210は複数箇所で途切れている。すなわち、合成樹脂フィルムシート216において、蛇腹部210は非連続に形成されており、非連続部分では、合成樹脂フィルムシート214は折り曲げられていない。この非連続部分が、トップシート2の可撓性領域22に対応する。
延伸ギアロール230は、上段ロール231と下段ロール232とを含む。図8(a)は、延伸ギアロール230の上段ロール231を説明するための図であり、図8(b)は、上段ロール231の外周面上に配置されたギア歯233を説明するための図であり、図8(c)は、図8(b)のB−B線断面図である。ギア歯233は、上段ロール231の円周方向に非連続的に延びている。すなわち、上段ロール231の円周方向に延びているギア歯233は、途中で複数箇所途切れている。このギア歯233が途切れている箇所234により、トップシート2の可撓性領域22に対応する非連続部分が形成される。ギア歯233が途切れている箇所234は、ギア歯233が延びる方向に対して斜めの方向の直線上に並ぶように配置されている。
ギア歯233の幅は、例えば0.3〜0.5mmであり、隣接するギア歯233の中心間の距離は、例えば1.0〜1.2mmである。
図9(a)は、延伸ギアロール230の下段ロール232を説明するための図であり、図9(b)は、下段ロール232の外周面上に配置されたギア歯235を説明するための図であり、図9(c)は、図9(b)のC−C線断面図である。ギア歯235は、下段ロール232の円周方向に延びている。下段ロール232は、上段ロール231のように途中で複数箇所途切れていない。ギア歯235の幅は、例えば上段ロール231のギア歯233の幅と等しく、隣接するギア歯235の中心間の距離は、例えば上段ロール231のギア歯233の中心間の距離と等しい。
上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っている部分における上段ロール231の径方向の長さ、すなわち噛み込み深さは、例えば1.25mmである。上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っている時の上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235との間の隙間は、例えば、0.25〜0.45mmである。
合成樹脂フィルムシート214が延伸ギアロール230を通過する時、合成樹脂フィルムシート214の凹部2141が形成された領域2143(図7参照)には、トップシート2の液体透過孔26(図3参照)に対応する開口部が形成される。
図10を参照して、延伸ギアロール230に合成樹脂フィルムシート214を通過させた時、合成樹脂フィルムシート214に開口部が形成される原理を説明する。なお、この原理は、本発明を限定するものではない。
合成樹脂フィルムシート214は、上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っている部分236で大きく延伸される。上述の凹部形成工程で凹部2141(図7参照)が形成された部分は、合成樹脂フィルムシート214が薄くなっており、さらにローレットロール221の格子状の凸部224により傷が付与されている部分であるので、強度が弱く、合成樹脂フィルムシート214の凹部2141は、延伸を受けると破れる。このため、合成樹脂フィルムシート214の延伸を受けた部分236では、合成樹脂フィルムシート214の凹部2141が破れて、合成樹脂フィルムシート214の破れた部分が広がり開口部が形成される。
合成樹脂フィルムシート214は、上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っていない部分237,238ではあまり延伸されない。このため、合成樹脂フィルムシート214における上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っていない部分237,238では、合成樹脂フィルムシート214が延伸ギアロール230を通過しても、上述の凹部形成工程で形成された凹部2141は、破れず開口部にならない。
合成樹脂フィルムシート214の凹部2141が形成されていない領域では、上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っている部分236で合成樹脂フィルムシート214が大きく延伸されても合成樹脂フィルムシート214は破れないため、開口部は形成されない。
<血液改質剤>
本発明の血液改質剤は、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度とを有する血液改質剤である。
IOB(Inorganic Organic Balance)は、親水性及び親油性のバランスを示す指標であり、本明細書では、小田らによる次式:
IOB=無機性値/有機性値
により算出される値を意味する。なお、無機性値及び有機性値は、藤田穆「有機化合物の予測と有機概念図」化学の領域Vol.11,No.10(1957)p.719−725)に記載される有機概念図に基づく。
藤田氏による、主要な基の有機性値及び無機性値を、下記表1にまとめる。
例えば、炭素数14のテトラデカン酸と、炭素数12のドデシルアルコールとのエステルの場合には、有機性値が520(CH2,20×26個)、無機性値が60(−COOR,60×1個)となるため、IOB=0.12となる。
本発明の血液改質剤において、IOBは、約0.00〜約0.60であるが、約0.00〜約0.50であることが好ましく、約0.00〜約0.40であることがさらに好ましく、約0〜約0.30であることがさらに一層好ましい。IOBが低いほど、有機性が高く、血球との親和性が高くなると考えられる。
本明細書において、「融点」は、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で測定した場合の、固形状から液状に変化する際の吸熱ピークのピークトップ温度を意味する。融点は、例えば、島津製作所社製のDSC−60型DSC測定装置を用いて測定することができる。
本発明の血液改質剤は、約45℃以下の融点を有すれば、室温で液体であっても、又は固体であってもよい、すなわち、融点が約25℃以上でも、又は約25℃未満でもよく、そして例えば、約−5℃、約−20℃等の融点を有することができる。本発明の血液改質剤の融点が約45℃以下である根拠は、後述する。
本発明の血液改質剤は、その融点に下限は存在しないが、その蒸気圧が低いことが好ましい。本発明の血液改質剤の蒸気圧は、1気圧及び25℃で約0.00〜約0.01Paであることが好ましく、約0.000〜約0.001Paであることがさらに好ましく、約0.0000〜約0.0001Paであることがさらに一層好ましい。吸収性物品が人体に接して用いられることを考慮すると、蒸気圧は、1気圧及び40℃で約0.00〜約0.01Paであることが好ましく、約0.000〜約0.001Paであることがさらに好ましく、約0.0000〜約0.0001Paであることがさらに一層好ましい。蒸気圧が高いと、保存中に気化し、血液改質剤の量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合がある。
本発明の血液改質剤の融点を、気候、着用時間の長さ等に応じて、使い分けることができる。例えば、平均気温が約10℃以下の地域では、約10℃以下の融点を有する血液改質剤を採用することにより、経血が排泄された後、周囲温度によって冷却された場合であっても、血液改質剤が、安定して血液を改質することができると考えられる。
吸収性物品が長時間にわたって使用される場合には、本発明の血液改質剤の融点は、45℃以下の範囲で高い方が好ましい。汗、着用時の摩擦等の影響を受けにくく、長時間着用した場合であっても、血液改質剤が移動しにくいからである。
0.00〜0.05gの水溶解度は、25℃において、100gの脱イオン水に、0.05gの試料を添加し、24時間静置し、24時間後に、必要に応じて軽く攪拌し、次いで、試料が溶解したか否か目視で評価することにより測定することができる。
なお、本明細書では、水溶解度に関して、「溶解」には、試料が脱イオン水に完全に溶解し、均一混合物を形成した場合と、試料が完全にエマルション化した場合とが含まれる。なお、「完全」とは、脱イオン水に、試料の塊が存在しないことを意味する。
当技術分野では、血液の表面張力等を変化させ、血液を迅速に吸収することを目的として、トップシートの表面を、界面活性剤でコーティングすることが行われている。しかし、界面活性剤は、一般に水溶解度が高いため、界面活性剤がコーティングされたトップシートは、血液中の親水性成分(血漿等)となじみがよく、むしろ血液をトップシートに残存させるようにはたらく傾向がある。本発明の血液改質剤は、水溶解度が低いため、従来公知の界面活性剤と異なり、血液をトップシートに残存させず、迅速に吸収体に移行させることができると考えられる。
本明細書において、25℃における、100gの水に対する溶解度を、単に、「水溶解度」と称する場合がある。
本明細書において、「重量平均分子量」は、多分散系の化合物(例えば、逐次重合により製造された化合物、複数の脂肪酸と、複数の脂肪族1価アルコールとから生成されたエステル)と、単一化合物(例えば、1種の脂肪酸と、1種の脂肪族1価アルコールから生成されたエステル)とを含む概念であり、Ni個の分子量Miの分子(i=1、又はi=1,2・・・)からなる系において、次の式:
Mw=ΣNiMi 2/ΣNiMi
により求められるMwを意味する。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる、ポリスチレン換算の値を意味する。
GPCの測定条件としては、例えば、以下が挙げられる。
機種:(株)日立ハイテクノロジーズ製 高速液体クロマトグラム Lachrom Elite
カラム:昭和電工(株)製 SHODEX KF−801、KF−803及びKF−804
溶離液:THF
流量 :1.0mL/分
打込み量:100μL
検出:RI(示差屈折計)
なお、本明細書の実施例に記載される重量平均分子量は、上記条件により測定したものである。
本発明の血液改質剤は、好ましくは、次の(i)〜(iii)、
(i)炭化水素、
(ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び
(iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii−3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
本明細書において、「炭化水素」は、炭素と水素とから成る化合物を意味し、鎖状炭化水素、例えば、パラフィン系炭化水素(二重結合及び三重結合を含まない、アルカンとも称される)、オレフィン系炭化水素(二重結合を1つ含む、アルケンとも称される)、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含む、アルキンとも称される)、及び二重結合及び三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素、並びに環状炭化水素、例えば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素が挙げられる。
上記炭化水素としては、鎖状炭化水素及び脂環式炭化水素であることが好ましく、鎖状炭化水素であることがより好ましく、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、及び二重結合を2つ以上含む炭化水素(三重結合を含まない)であることがさらに好ましく、そしてパラフィン系炭化水素であることがさらに好ましい。
上記鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素が含まれる。
上記(ii)及び(iii)の化合物において、オキシ基(−O−)が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基(−O−)は隣接していない。従って、上記(ii)及び(iii)の化合物には、オキシ基が連続する化合物(いわゆる、過酸化物)は含まれない。
また、上記(iii)の化合物では、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)で置換された化合物よりも、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物の方が好ましい。表1に示すように、カルボキシル基は、経血中の金属等と結合し、無機性値が150から、400以上へと大幅に上昇するため、カルボキシル基を有する血液改質剤は、使用時にIOBの値が約0.60を上回り、血球との親和性が低下する可能性があるからである。
本発明の血液改質剤は、より好ましくは、次の(i’)〜(iii’)、
(i’)炭化水素、
(ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び
(iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’−3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
上記(ii’)及び(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合、すなわち、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)及びエーテル結合(−O−)から選択される2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接しておらず、各結合の間には、少なくとも、炭素原子が1つ介在する。
本発明の血液改質剤は、さらに好ましくは、炭化水素部分中に、炭素原子10個当たり、カルボニル結合(−CO−)を約1.8個以下、エステル結合(−COO−)を2個以下、カーボネート結合(−OCOO−)を約1.5個以下、エーテル結合(−O−)を約6個以下、カルボキシル基(−COOH)を約0.8個以下、そして/又はヒドロキシル基(−OH)を約1.2個以下有する化合物であることができる。
本発明の血液改質剤は、さらに好ましくは、次の(A)〜(F)、
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル、
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル、
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル、
(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物、
(E)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル、及び
(F)鎖状炭化水素、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
以下、(A)〜(F)に従う血液改質剤について詳細に説明する。
[(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル]
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(A)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する限り、全てのヒドロキシル基がエステル化されていなくともよい。
(A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(A1)」と称する場合がある)としては、例えば、鎖状炭化水素テトラオール、例えば、アルカンテトラオール、例えば、ペンタエリトリトール、鎖状炭化水素トリオール、例えば、アルカントリオール、例えば、グリセリン、及び鎖状炭化水素ジオール、例えば、アルカンジオール、例えば、グリコールが挙げられる。
(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(A2)」と称する場合がある)としては、例えば、炭化水素上の1つの水素原子が、1つのカルボキシル基(−COOH)で置換された化合物、例えば、脂肪酸が挙げられる。
化合物(A)としては、例えば、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、及び(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
[(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(1):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステル、次の式(2):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステル、次の式(3):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステル、次の式(4):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
(式中、R1〜R4は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R1COOH、R2COOH,R3COOH,及びR4COOH)としては、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されないが、例えば、飽和脂肪酸、例えば、C2〜C30の飽和脂肪酸、例えば、酢酸(C2)(C2は、炭素数を示し、R1C、R2C,R3C又はR4Cの炭素数に相当する、以下同じ)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)及びその異性体、例えば、2−メチルプロパン酸(C4)、ペンタン酸(C5)及びその異性体、例えば、2−メチルブタン酸(C5)、2,2−ジメチルプロパン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等、並びにこれらの異性体(上述のものを除く)が挙げられる。
上記脂肪酸はまた、不飽和脂肪酸であることができる。上記不飽和脂肪酸としては、例えば、C3〜C20の不飽和脂肪酸、例えば、モノ不飽和脂肪酸、例えば、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)等、ジ不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸(C18)、エイコサジエン酸(C20)等、トリ不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、例えば、α-リノレン酸(C18)及びγ-リノレン酸(C18)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸、例えば、α-エレオステアリン酸(C18)及びβ-エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20)、エイコサトリエン酸(C20)等、テトラ不飽和脂肪酸、例えば、ステアリドン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコサテトラエン酸(C20)等、ペンタ不飽和脂肪酸、例えば、ボセオペンタエン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)等、並びにこれらの部分水素付加物が挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステル、すなわち、ペンタエリトリトールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステル、トリエステル又はテトラエステルであることが好ましく、トリエステル又はテトラエステルであることがより好ましく、そしてテトラエステルであることがさらに好ましい。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(1)において、R1C、R2C、R3C及びR4C部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、上記炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、例えば、ペンタエリトリトールと、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)及び/又はドデカン酸(C12)とのテトラエステルが挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(2)において、R1C、R2C及びR3C部分の炭素数の合計が19の場合にIOBが0.58となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約19以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(3)において、R1C及びR2C部分の炭素数の合計が22の場合にIOBが0.59となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約22以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、上記式(4)において、R1C部分の炭素数が25の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約25以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
なお、上記計算に当たっては、二重結合、三重結合、iso分岐、及びtert分岐の影響は、考慮していない。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、ユニスター H−408BRS、H−2408BRS−22(混合品)等(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(5):
のグリセリンと脂肪酸とのトリエステル、次の式(6):
のグリセリンと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(7):
(式中、R5〜R7は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のグリセリンと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R5COOH、R6COOH及びR7COOH)としては、グリセリンと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙される脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、グリセリンと脂肪酸とのエステル、すなわち、グリセリンと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記グリセリンと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステル又はトリエステルであることが好ましく、そしてトリエステルであることがより好ましい。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、トリグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとオクタン酸(C8)とのトリエステル、グリセリンとデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのトリエステル、及びグリセリンと、2種又は3種の脂肪酸とのトリエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
上記グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのトリエステルとしては、例えば、グリセリンと、オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)及びドデカン酸(C12)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)及びオクタデカン酸(C18)とのトリエステル等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルとしては、融点を約45℃以下とするために、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が、約40以下であることが好ましい。
また、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が12の場合にIOBが0.60となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約12以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いわゆる、脂肪であり、人体を構成しうる成分であるため、安全性の観点から好ましい。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルの市販品としては、トリヤシ油脂肪酸グリセリド、NA36、パナセート800、パナセート800B及びパナセート810S、並びにトリC2L油脂肪酸グリセリド及びトリCL油脂肪酸グリセリド(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルは、ジグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとデカン酸(C10)とのジエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのジエステル、グリセリンとヘキサデカン酸(C16)とのジエステル、及びグリセリンと、2種の脂肪酸とのジエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(6)において、R5C及びR6C部分の炭素数の合計が16の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約16以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルは、モノグリセリドとも称され、例えば、グリセリンのイコサン酸(C20)モノエステル、グリセリンのドコサン酸(C22)モノエステル等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、式(7)において、R5C部分の炭素数が19の場合にIOBが0.59となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約19以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、C2〜C6の鎖状炭化水素ジオール、例えば、C2〜C6のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールと、脂肪酸とのモノエステル又はジエステルが挙げられる。
具体的には、上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(8):
R8COOCkH2kOCOR9 (8)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8及びR9は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(9):
R8COOCkH2kOH (9)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸(式(8)及び式(9)において、R8COOH及びR9COOHに相当する)としては、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、R8C及びR9C部分の炭素数の合計が6の場合に、IOBが、0.60となる。従って、式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、上記炭素数の合計が約6以上の場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。また、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、R8C部分の炭素数が12の場合に、IOBが0.57となる。従って、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約12以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステル、すわなち、C2〜C6グリコールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、炭素数の大きいグリコールに由来する、グリコールと脂肪酸とのエステル、例えば、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールに由来するグリコールと脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
さらに、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステルであることが好ましい。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、コムポールBL、コムポールBS(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
[(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル]
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル(以下、「化合物(B)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する限り、全てのヒドロキシル基がエーテル化されていなくともよい。
(B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物としては、「化合物(A)」において化合物(A1)として列挙されるもの、例えば、ペンタエリトリトール、グリセリン、及びグリコールが挙げられる。
(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(B2)」と称する場合がある)としては、例えば、炭化水素の1個の水素原子が、1個のヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、例えば、脂肪族1価アルコール、例えば、飽和脂肪族1価アルコール及び不飽和脂肪族1価アルコールが挙げられる。
上記飽和脂肪族1価アルコールとしては、例えば、C1〜C20の飽和脂肪族1価アルコール、例えば、メチルアルコール(C1)(C1は、炭素数を示す、以下同じ)、エチルアルコール(C2)、プロピルアルコール(C3)及びその異性体、例えば、イソプロピルアルコール(C3)、ブチルアルコール(C4)及びその異性体、例えば、sec−ブチルアルコール(C4)及びtert−ブチルアルコール(C4)、ペンチルアルコール(C5)、ヘキシルアルコール(C6)、ヘプチルアルコール(C7)、オクチルアルコール(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキシルアルコール(C8)、ノニルアルコール(C9)、デシルアルコール(C10)、ドデシルアルコール(C12)、テトラデシルアルコール(C14)、ヘキサデシルアルコール(C16)、へプラデシルアルコール(C17)、オクタデシルアルコール(C18)、及びエイコシルアルコール(C20)、並びにこれらの列挙されていない異性体が挙げられる。
上記不飽和脂肪族1価アルコールとしては、上記飽和脂肪族1価アルコールのC−C単結合の1つを、C=C二重結合で置換したもの、例えば、オレイルアルコールが挙げられ、例えば、新日本理化株式会社から、リカコールシリーズ及びアンジェコオールシリーズの名称で市販されている。
化合物(B)としては、例えば、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、好ましくはジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、より好ましくはトリエーテル及びテトラエーテル、そしてさらに好ましくはテトラエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル及びトリエーテル、好ましくはジエーテル及びトリエーテル、そしてより好ましくはトリエーテル、並びに(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル及びジエーテル、そして好ましくはジエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(10)〜(13):
(式中、R10〜R13は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテル、トリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(14)〜(16):
(式中、R14〜R16は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(17):
R17OCnH2nOR18 (17)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17及びR18は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのジエーテル、及び次の式(18):
R17OCnH2nOH (18)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルが挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(10)において、R10、R11、R12及びR13部分の炭素数の合計が4の場合にIOBが0.44となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約4以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(11)において、R10、R11及びR12部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.57となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(12)において、R10及びR11部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、上記式(13)において、R10部分の炭素数が22の場合にIOBが0.59となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約22以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
また、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(14)において、R14、R15及びR16部分の炭素数の合計が3の場合にIOBが0.50となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約3以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(15)において、R14及びR15部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、式(16)において、R14部分の炭素数が16の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約16以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、R17及びR18部分の炭素数の合計が2の場合に、IOBが、0.33となる。従って、式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が2以上の場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。また、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、R17部分の炭素数が8の場合に、IOBが0.60となる。従って、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約8以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
化合物(B)としては、化合物(B1)と、化合物(B2)とを、酸触媒の存在下で、脱水縮合することにより生成することができる。
[(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル]
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(C)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する限り、全てのカルボキシル基がエステル化されていなくともよい。
(C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸(以下、「化合物(C1)」と称する場合がある)としては、例えば、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素カルボン酸、例えば、鎖状炭化水素ジカルボン酸、例えば、アルカンジカルボン酸、例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸及びデカン二酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、例えば、アルカントリカルボン酸、例えば、プロパン三酸、ブタン三酸、ペンタン三酸、ヘキサン三酸、ヘプタン三酸、オクタン三酸、ノナン三酸及びデカン三酸、並びに鎖状炭化水素テトラカルボン酸、例えば、アルカンテトラカルボン酸、例えば、ブタン四酸、ペンタン四酸、ヘキサン四酸、ヘプタン四酸、オクタン四酸、ノナン四酸及びデカン四酸が挙げられる。
また、化合物(C1)には、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ヒドロキシ酸、例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素アルコキシ酸、例えば、O−アセチルクエン酸、及び2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素オキソ酸が含まれる。
(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物としては、「化合物(B)」の項で列挙されるもの、例えば、脂肪族1価アルコールが挙げられる。
化合物(C)としては、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステル、好ましくはジエステル、トリエステル及びテトラエステル、より好ましくはトリエステル及びテトラエステル、そしてさらに好ましくはテトラエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル及びトリエステル、好ましくはジエステル及びトリエステル、そしてより好ましくはトリエステル、並びに(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル及びジエステル、好ましくはジエステルが挙げられる。
化合物(C)の例としては、アジピン酸ジオクチル、O−アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられ、そして市販されている。
[(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物]
(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物(以下、「化合物(D)」と称する場合がある)としては、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、及び(d4)ジアルキルカーボネートが挙げられる。
[(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(19):
R19OR20 (19)
(式中、R19及びR20は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
上記エーテルを構成する脂肪族1価アルコール(式(19)において、R19OH及びR20OHに相当する)としては、上記エーテルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルでは、当該エーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(19)において、R19及びR20部分の炭素数の合計が2の場合にIOBが0.50となるため、当該炭素数の合計が約2以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が6程度では、水溶解度が約2gと高く、蒸気圧の観点からも問題がある。水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。
[(d2)ジアルキルケトン]
上記ジアルキルケトンとしては、次の式(20):
R21COR22 (20)
(式中、R21及びR22は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルケトンでは、R21及びR22の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.54となるため、当該炭素数の合計が約5以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が5程度では、水溶解度が約2gと高い。従って、水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。また、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数は、約10以上であることが好ましく、そして約12以上であることが好ましい。
なお、上記炭素数の合計が約8の場合、例えば、5−ノナノンでは、融点は約−50℃であり、蒸気圧は20℃で約230Paである。
上記ジアルキルケトンは、市販されている他、公知の方法、例えば、第二級アルコールを、クロム酸等で酸化することにより得ることができる。
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、次の式(21):
R23COOR24 (21)
(式中、R23及びR24は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
上記エステルを構成する脂肪酸(式(21)において、R23COOHに相当する)としては、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。上記エステルを構成する脂肪族1価アルコール(式(21)において、R24OHに相当する)としては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
なお、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルでは、脂肪酸及び脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(21)において、R23C及びR24部分の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.60となるため、R23C及びR24部分の炭素数の合計が約5以上である場合に、上記IOBの要件を満たす。しかし、例えば、上記炭素数の合計が6の酢酸ブチルでは、蒸気圧が2,000Pa超と高い。従って、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数の合計が約12以上であることが好ましい。なお、上記炭素数の合計が約11以上であれば、水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすことができる。
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの例としては、例えば、ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル、テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル等が挙げられ、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの市販品としては、例えば、エレクトールWE20、及びエレクトールWE40(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(d4)ジアルキルカーボネート]
上記ジアルキルカーボネートとしては、次の式(22):
R25OC(=O)OR26 (22)
(式中、R25及びR26は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルカーボネートでは、R25及びR26の炭素数の合計が6の場合にIOBが0.57となるため、R25及びR26の炭素数の合計が、約6以上であれば、IOBの要件を満たす。
水溶解度を考慮すると、R25及びR26の炭素数の合計が約7以上であることが好ましく、そして約9以上であることがより好ましい。
上記ジアルキルカーボネートは、市販されている他、ホスゲンとアルコールとの反応、塩化ギ酸エステルとアルコール又はアルコラートとの反応、及び炭酸銀とヨウ化アルキルとの反応により合成することができる。
[(E)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル(以下、化合物(E)と称する場合がある)としては、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(e4)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、及び(e5)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルが挙げられる。以下、説明する。
[(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールは、i)オキシC2~6アルキレン骨格、すなわち、オキシエチレン骨格、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、及びオキシヘキシレン骨格から成る群から選択されるいずれか1種の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するホモポリマー、ii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するブロックコポリマー、又はiii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するランダムコポリマーを意味する。
上記オキシC2~6アルキレン骨格は、ポリオキシC2~6アルキレングリコールのIOBを低くする観点から、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、又はオキシヘキシレン骨格であることが好ましく、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、又はオキシヘキシレン骨格であることがより好ましい。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールは、次の式(23):
HO−(CmH2mO)n−H (23)
(式中、mは2〜6の整数である)
により表わされうる。
なお、本発明者が確認したところ、ポリエチレングリコール(式(23)において、m=2のホモポリマーに相当する)は、n≧45(重量平均分子量約2,000超)の場合に、約0.00〜約0.60のIOBの要件を満たすものの、重量平均分子量が約4,000を超えた場合であっても、水溶解度の要件を満たさなかった。従って、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコールには、エチレングリコールのホモポリマーは含まれないと考えられ、エチレングリコールは、他のグリコールとのブロックコポリマー又はランダムコポリマーとして、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコールに含まれるべきである。
従って、式(23)のホモポリマーには、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールのホモポリマーが含まれうる。
以上より、式(23)において、mは、約3〜約6であり、そして約4〜約6であることがより好ましく、そしてnは2以上である。
上記式(23)において、nの値は、ポリC2~6アルキレングリコールが、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度とを有するような値である。
例えば、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3のホモポリマー)である場合には、n=12の場合に、IOBが0.58となる。従って、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3のホモポリマー)である場合には、m≧約12の場合に、上記IOBの要件を満たす。
また、式(21)がポリブチレングリコール(m=4のホモポリマー)である場合には、n=7の場合に、IOBが0.57となる。従って、式(23)がポリブチレングリコール(m=4のホモポリマー)である場合には、n≧約7の場合に、上記IOBの要件を満たす。
IOB、融点及び水溶解度の観点から、ポリオキシC4~6アルキレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約200〜約10,000、より好ましくは約250〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約250〜約5,000の範囲にある。
また、IOB、融点及び水溶解度の観点から、ポリオキシC3アルキレングリコール、すなわち、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約1,000〜約10,000、より好ましくは約3,000〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約4,000〜約5,000の範囲にある。上記重量平均分子量が約1,000未満では、水溶解度が要件を満たさず、そして重量平均分子量が大きいほど、特に、吸収体移行速度及びトップシートの白さが向上する傾向があるからである。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールの市販品としては、例えば、ユニオール(商標)D−1000,D−1200,D−2000,D−3000,D−4000,PB−500,PB−700,PB−1000及びPB−2000(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(e2)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪酸によりエステル化されているもの、すなわち、モノエステル及びジエステルが挙げられる。
ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸としては、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、ウィルブライトcp9(日油株式会社製)が挙げられる。
[(e3)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪族1価アルコールによりエーテル化されているもの、すなわち、モノエーテル及びジエーテルが挙げられる。
ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルにおいて、エーテル化すべき脂肪族1価アルコールとしては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙されている脂肪族1価アルコールが挙げられる。
[(e4)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルにおいて、エステル化すべきポリオキシC2~6アルキレングリコールとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールが挙げられる。また、エステル化すべき鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、及び鎖状炭化水素ジカルボン酸としては、「化合物(C)」の項で説明されるものが挙げられる。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルは、市販されているほか、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸に、オキシC2~6アルキレングリコールを、公知の条件で重縮合させることにより製造することができる。
[(e5)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルにおいて、エーテル化すべきポリオキシC2~6アルキレングリコールとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールが挙げられる。また、エーテル化すべき鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、及び鎖状炭化水素ジオールとしては、「化合物(A)」の項で説明されるもの、例えば、ペンタエリトリトール、グリセリン、及びグリコールが挙げられる。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルの市販品としては、例えば、ユニルーブ(商標)5TP−300KB,並びにユニオール(商標)TG−3000及びTG−4000(日油株式会社製)が挙げられる。
ユニルーブ(商標)5TP−300KBは、ペンタエリトリトール1モルに、プロピレングリコール65モルと、エチレングリコール5モルとを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.39であり、融点は45℃未満であり、そして水溶解度は0.05g未満であった。
ユニオール(商標)TG−3000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール50モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.42であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約3,000であった。
ユニオール(商標)TG−4000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール70モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.40であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約4,000であった。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルはまた、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールに、C2~6アルキレンオキシドを、公知の条件で付加させることにより製造することができる。
[(F)鎖状炭化水素]
上記鎖状炭化水素は、上記無機性値が0であることから、IOBが0.00であり、そして水溶解度がほぼ0gであるので、融点が約45℃以下のものであれば、上記血液改質剤に含まれうる。上記鎖状炭化水素としては、例えば、(f1)鎖状アルカン、例えば、直鎖アルカン及び分岐鎖アルカンが挙げられ、例えば、直鎖アルカンの場合には、融点が約45℃以下であることを考慮すると、おおむね、炭素数が22以下のものが含まれる。また、蒸気圧を考慮すると、おおむね、炭素数が13以上のものが含まれる。分岐鎖アルカンの場合には、直鎖アルカンよりも、同一炭素数において、融点が低くなる場合があるため、炭素数が22以上のものも含まれうる。
上記炭化水素の市販品としては、例えば、パールリーム6(日油株式会社)が挙げられる。
本発明の血液改質剤は、実施例と共に詳細に考察するが、血液の粘度及び表面張力を下げる作用を少なくとも有することが見いだされた。吸収性物品が吸収すべき経血は、通常の血液と比較して、子宮内膜壁等のタンパク質を含むため、それらが血球同士を繋ぐように作用して、血球が連銭した状態をとりやすい。そのため、吸収性物品が吸収すべき経血は、高粘度となりやすく、トップシートが不織布又は織布である場合には、経血が繊維の間に目詰まりしやすく、着用者はベタつき感を覚えやすく、そしてトップシートの表面で経血が拡散し、漏れやすくなる。これに対して、本発明の血液改質剤をトップシートに塗布することにより、トップシートの繊維の間で経血が目詰まりしにくく、経血をトップシートから吸収体に迅速に移行させることが可能となる。
IOBが約0.00〜約0.60である本発明の血液改質剤は、有機性が高く、血球の間に入り込みやすいので、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることができると考えられる。本発明の血液改質剤が、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることにより、吸収体が経血を吸収しやすくなると考えられる。例えば、アクリル系高吸収ポリマー、いわゆる、SAPを含む吸収性物品では、経血を吸収すると、連銭した血球がSAP表面を覆い、SAPが吸収性能を発揮しにくくなることが知られているが、血球を安定化することにより、SAPが吸収性能を発揮しやすくなると考えられる。また、赤血球と親和性の高い血液改質剤が、赤血球膜を保護するため、赤血球が破壊されにくくなると考えられる。
本発明の血液改質剤は、約2,000以下の重量平均分子量を有することが好ましく、そして1,000以下の重量平均分子量を有することがより好ましい。重量平均分子量が大きくなると、血液改質剤の粘度を、塗工に適した粘度に下げることが難しくなり、溶媒で希釈すべき場合が生ずるからである。また、重量平均分子量が大きくなると、血液改質剤にタック性が生じ、着用者に不快感を与える場合があるからである。
以下の実施例によって、血液改質剤が、血液の粘度および表面張力を下げるメカニズムを有することを確認した。
以下、例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[例1]
[血液改質剤のデータ]
市販の生理用ナプキンを準備した。当該生理用ナプキンは、親水剤で処理されたエアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートと、エアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:30g/m2)から形成されたセカンドシートと、パルプ(坪量:150〜450g/m2、中央部ほど多い)、アクリル系高吸収ポリマー(坪量:15g/m2)及びコアラップとしてのティッシュを含む吸収体と、撥水剤処理されたサイドシートと、ポリエチレンフィルムから成るバックシートとから形成されていた。
以下に、実験に用いられた血液改質剤を列挙する。
[(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ユニスター H−408BRS,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール,重量平均分子量:約640
・ユニスター H−2408BRS−22,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトールと、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールとの混合物(58:42,重量比),重量平均分子量:約520
[(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・Cetiol SB45DEO,コグニスジャパン株式会社製
脂肪酸が、オレイン酸又はステアリル酸である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・SOY42,日油株式会社製
C14の脂肪酸:C16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ0.2:11:88:0.8の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:880
・トリC2L油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ37:7:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・トリCL油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ44:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・パナセート810s,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約480
・パナセート800,日油株式会社製
脂肪酸が全てオクタン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・パナセート800B,日油株式会社製
脂肪酸が全て2−エチルヘキサン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・NA36,日油株式会社製
C16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ5:92:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・トリヤシ油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸:C14の脂肪酸:C16の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ4:8:60:25:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:670
・カプリル酸ジグリセリド,日油株式会社製
脂肪酸がオクタン酸である、グリセリンと脂肪酸とのジエステル,重量平均分子量:340
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・コムポールBL,日油株式会社製
ブチレングリコールのドデカン酸(C12)モノエステル,重量平均分子量:約270
・コムポールBS,日油株式会社製
ブチレングリコールのオクタデカン酸(C18)モノエステル,重量平均分子量:約350
・ユニスター H−208BRS,日油株式会社製
ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール,重量平均分子量:約360
[(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・O−アセチルクエン酸トリブチル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約400
[(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・アジピン酸ジオクチル,和光純薬工業製
重量平均分子量:約380
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
・エレクトールWE20,日油株式会社製
ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約360
・エレクトールWE40,日油株式会社製
テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約390
[(e1)ポリオキシC2〜6アルキレングリコール]
・ユニオールD−1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,000
・ユニオールD−1200,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,200
・ユニオールD−3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約3,000
・ユニオールD−4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約4,000
・ユニオールPB500,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約500
・ユニオールPB700,日油株式会社製
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール,重量平均分子量:約700
・ユニオールPB1000R,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約1000
[(e2)ポリオキシC2〜6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ウィルブライトcp9,日油株式会社製
ポリブチレングリコールの両末端のOH基が、ヘキサデカン酸(C16)によりエステル化された化合物,重量平均分子量:約1,150
[(e3)ポリオキシC2〜6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエーテル]
・ユニルーブMS−70K,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのステアリルエーテル,約15の繰返し単位,重量平均分子量:約1,140
[(e5)ポリオキシC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル]
・ユニルーブ5TP−300KB
ペンタエリトリトール1モルに、エチレンオキシド5モルと、プロピレンオキシド65モルとを付加させることにより生成した、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル,重量平均分子量:4,130
・ユニオール TG−3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約3,000
・ユニオール TG−4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約4,000
[(f1)鎖状アルカン]
・パールリーム6,日油株式会社製
流動イソパラフィン、イソブテン及びn-ブテンを共重合し、次いで水素を付加することにより生成された分岐鎖炭化水素、重合度:約5〜約10,重量平均分子量:約330
[その他の材料]
・NA50,日油株式会社製
NA36に水素を付加し、原料である不飽和脂肪酸に由来する二重結合の比率を下げたグリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・(カプリル酸/カプリン酸)モノグリセリド,日油株式会社製
オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのモノエステル,重量平均分子量:約220
・Monomuls 90−L2ラウリン酸モノグリセリド,コグニスジャパン株式会社製
・クエン酸イソプロピル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約230
・リンゴ酸ジイソステアリル
重量平均分子量:約640
・ユニオールD−400,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約400
・PEG1500,日油株式会社製
ポリエチレングリコール,重量平均分子量:約1,500〜約1,600
・ノニオンS−6,日油株式会社製
ポリオキシエチレンモノステアレート、約7の繰返し単位、重量平均分子量:約880
・ウィルブライトs753,日油株式会社製
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレングリセリン,重量平均分子量:約960
・ユニオール TG−330,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約6の繰返し単位,重量平均分子量:約330
・ユニオール TG−1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約1,000
・ユニルーブ DGP−700,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのジグリセリルエーテル,約9の繰返し単位,重量平均分子量:約700
・ユニオックスHC60,日油株式会社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,重量平均分子量:約3,570
・ワセリン,コグニスジャパン株式会社製
石油に由来する炭化水素、半固形
上記試料の、IOB,融点及び水溶解度を、下記表2に示す。
なお、水溶解度は、上述の方法に従って測定したが、100gの脱塩水に、20.0gを添加し、24時間後に溶解した試料は、「20g<」と評価し、そして100gの脱塩水に、0.05gは溶解したが、1.00gは溶解しなかった試料は、0.05〜1.00gと評価した。
また、融点に関し、「<45」は、融点が45℃未満であることを意味する。
上記生理用ナプキンのトップシートの肌当接面を、上述の血液改質剤で塗工した。各血液改質剤を、血液改質剤が室温で液体である場合にはそのまま、そして血液改質剤が室温で固体である場合には、融点+20℃まで加熱し、次いで、コントロールシームHMAガンを用いて、各血液改質剤を微粒化し、トップシートの肌当接面の全体に、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布した。
図12は、トップシートがトリC2L油脂肪酸グリセリドを含む生理用ナプキン(No.2−5)における、トップシートの肌当接面の電子顕微鏡写真である。図12から明らかなように、トリC2L油脂肪酸グリセリドは、微粒子状で、繊維の表面に付着している。
上述の手順に従って、リウェット率と、吸収体移行速度とを測定した。結果を、下記表2に示す。
[試験方法]
各血液改質剤を含むトップシートの上に、穴の開いたアクリル板(200mm×100mm,125g,中央に、40mm×10mmの穴が開いている)を置き、上記穴から、37±1℃のウマEDTA血(ウマの血液に、凝結防止のため、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」と称する)が添加されたもの)3gを、ピペットを用いて滴下(1回目)し、1分後、37±1℃のウマEDTA血3gを、アクリル板の穴から、ピペットで再度滴下した(2回目)。
2回目の血液の滴下後、直ちに上記アクリル板を外し、血液を滴下した場所に、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙 No.2,50mm×35mm)10枚を置き、その上から、圧力が30g/cm2となるようにおもりを置いた。1分後、上記ろ紙を取出し、以下の式に従って、「リウェット率」を算出した。
リウェット率(%)=100×(試験後のろ紙質量−当初のろ紙質量)/6
また、リウェット率の評価とは別に、2回目の血液の滴下後、血液がトップシートから吸収体に移行する時間である「吸収体移行速度」を測定した。上記吸収体移行速度は、トップシートに血液を投入してから、トップシートの表面及び内部に、血液の赤さが見られなくなるまでの時間を意味する。
リウェット率と、吸収体移行速度の結果を、以下の表2に示す。
次いで、吸収体移行速度の試験後のトップシートの肌当接面の白さを、以下の基準に従って、目視で評価した。
◎:血液の赤さがほとんど残っておらず、血液が存在した場所と、存在していない場所の区別がつかない
○:血液の赤さが若干残っているが、血液の存在した場所と、存在していない場所の区別がつきいにくい
△:血液の赤さが若干残っており、血液が存在した場所が分かる
×:血液の赤さがそのまま残っている
結果を、併せて下記表2に示す。
血液改質剤を有しない場合には、リウェット率は22.7%であり、そして吸収体移行速度は60秒超であったが、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いずれも、リウェット率が7.0%以下であり、そして吸収体移行速度が8秒以下であることから、吸収性能が大幅に改善されていることが分かる。しかし、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルのうち、融点が45℃を超えるNA50では、吸収性能に大きな改善はみられなかった。
同様に、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度を有する血液改質剤では、吸収性能が大きく改善されることが分かった。
[例2]
動物の各種血液に関して、上述の手順に従って、リウェット率を評価した。実験に用いられた血液は、以下の通りである。
[動物種]
(1)ヒト
(2)ウマ
(3)ヒツジ
[血液種]
・脱繊維血:血液を採取後、ガラスビーズと共に、三角フラスコ内で約5分間撹拌したもの
・EDTA血:静脈血65mLに、12%EDTA・2K生理食塩液0.5mLを添加したもの
[分画]
血清又は血漿:それぞれ、脱繊維血又はEDTA血を、室温下で、約1900Gで10分間遠心分離した後の上清
血球:血液から血清を除去し、残差をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、次いで除去した血清分のリン酸緩衝生理食塩液を加えたもの
トリC2L油脂肪酸グリセリドが、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布されている以外は、例2と同様にして吸収性物品を製造し、上述の各種血液に関して、リウェット率を評価した。各血液に関して測定を3回行い、その平均値を採用した。
結果を、下記表3に示す。
例2で得られた、ウマEDTA血と同様の傾向が、ヒト及びヒツジの血液でも得られた。また、脱繊維血及びEDTA血においても、同様の傾向が観察された。
[例3]
[血液保持性の評価]
血液改質剤を含むトップシートと、血液改質剤を含まないトップシートとにおける血液保持性を評価した。
[試験方法]
(1)エアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートの肌当接面に、トリC2L油脂肪酸グリセリドを、コントロールシームHMAガンを用いて微粒化し、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布する。また、比較のため、トリC2L油脂肪酸グリセリドを塗布していないものも準備する。次いで、トリC2L油脂肪酸グリセリドが塗布されているトップシートと、塗布されていないトップシートとの両方を、0.2gの大きさにカットし、セルストレイナー+トップシートの質量(a)を正確に測定する。
(2)ウマEDTA血約2mLを、肌当接面側から添加し、1分間静置する。
(3)セルストレイナーを、遠心管にセットし、スピンダウンして、余剰のウマEDTA血を取り除く。
(4)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(b)を測定する。
(5)下式に従って、トップシート1g当たりの当初吸収量(g)を算出する。
当初吸収量=[重量(b)−重量(a)]/0.2
(6)セルストレイナーを、遠心管に再セットし、室温下、約1200Gで1分間遠心分離する。
(7)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(c)を測定する。
(8)下式に従って、トップシート1g当たりの試験後吸収量(g)を算出する。
試験後吸収量=[重量(c)−重量(a)]/0.2
(9)下式に従って血液保持率(%)を算出した。
血液保持率(%)=100×試験後吸収量/当初吸収量
なお、測定は3回行い、その平均値を採用した。
結果を、下記表4に示す。
血液改質剤を含むトップシートは、血液保持性が低く、血液を吸収後、迅速に吸収体に移行させることができることが示唆される。
[例4]
[血液改質剤を含む血液の粘性]
血液改質剤を含む血液の粘性を、Rheometric Expansion System ARES(Rheometric Scientific,Inc)を用いて測定した。ウマ脱繊維血に、パナセート810sを2質量%添加し、軽く撹拌して試料を形成し、直径50mmのパラレルプレートに試料を載せ、ギャップを100μmとし、37±0.5℃で粘度を測定した。パラレルプレートゆえ、試料に均一なせん断速度はかかっていないが、機器に表示された平均せん断速度は、10s-1であった。
パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血の粘度は、5.9mPa・sであり、一方、血液改質剤を含まないウマ脱繊維血の粘度は、50.4mPa・sであった。従って、パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血は、血液改質剤を含まない場合と比較して、約90%粘度を下げることが分かる。
血液は、血球等の成分を含み、チキソトロピーの性質を有することが知られているが、本開示の血液改質剤は、低粘度域で、血液の粘度を下げることができると考えられる。血液の粘度を下げることにより、吸収した経血を、トップシートから吸収体に速やかに移行させることができると考えられる。
[例5]
[血液改質剤を含む血液の顕微鏡写真]
健常ボランティアの経血をサランラップ(商標)上に採取し、その一部に、10倍の質量のリン酸緩衝生理食塩水中に分散されたパナセート810sを、パナセート810sの濃度が1質量%となるように添加した。経血を、スライドグラスに適下し、カバーグラスをかけ、光学顕微鏡にて、赤血球の状態を観察した。血液改質剤を含まない経血の顕微鏡写真を図13(a)に、そしてパナセート810sを含む経血の顕微鏡写真を図13(b)に示す。
図13から、血液改質剤を含まない経血では、赤血球が連銭等の集合塊を形成しているが、パナセート810sを含む経血では、赤血球が、それぞれ、安定に分散していることが分かる。従って、血液改質剤は、血液の中で、赤血球を安定化させる働きをしていることが示唆される。
[例6]
[血液改質剤を含む血液の表面張力]
血液改質剤を含む血液の表面張力を、協和界面科学社製接触角計 Drop Master500を用い、ペンダントドロップ法にて測定した。表面張力は、ヒツジ脱繊維血に、所定の量の血液改質剤を添加し、十分振とうした後に測定した。
測定は、機器が自動で行うが、表面張力γは、以下の式により求められる(図14を参照)。
γ=g×ρ×(de)2×1/H
g:重力定数
1/H:ds/deから求められる補正項
ρ:密度
de:最大直径
ds:滴下端よりdeだけ上がった位置での径
密度ρは、JIS K 2249−1995の「密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」の5.振動式密度試験方法に準拠し、下記表5に示される温度で測定した。
測定には、京都電子工業株式会社のDA−505を用いた。
結果を、表5に示す。
表5から、血液改質剤は、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度を有することからも明らかなように、水への溶解性が非常に低いが、血液の表面張力を下げることができることが分かる。
血液の表面張力を下げることにより、吸収した血液をトップシートの繊維間に保持せず、速やかに吸収体に移行させることができると考えられる。