以下、図面を参照して、本発明を説明するが、本発明は図面に記載されたものに限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態の吸収性物品の部分破断平面図であり、図2は図1のA−A線断面を示す概略断面図である。吸収性物品1は、肌側(肌当接側)に設けられた液透過性のトップシート2、着衣側(非肌当接側)に設けられた液不透過性のバックシート3およびトップシート2とバックシート3との間に設けられた液保持性の吸収体4を備える本体部10と、本体部10の両側縁から幅方向に延出するトップシート2およびバックシート3を備えた一対のウイング部6とを含む。符号61はウイング部6の付け根(本体部10とウイング部6との間の境界)を示す。たとえば、ウイング部6の長手方向両側において、吸収性物品1の幅が急に大きくなる2つの点を結んだ直線がウイング部6の付け根61と見なすことができる。ウイング部6における着衣側の面の反対側の面は、トップシート2で構成されている。本体部10およびウイング部6の着衣側の面には粘着部7がそれぞれ設けられている。なお、図1において、吸収性物品1の幅方向はX方向であり、長手方向はY方向である。また、吸収性物品1の平面方向は、XY方向である。
本体部10の形状は、長方形、楕円型、砂時計型など、女性の身体および下着の形状に適合する形状であればとくに限定されない。本体部10の外形における長手方向の延べ寸法は、好ましくは100〜500mmであり、より好ましくは150〜350mmである。また、本体部10の外形における幅方向の延べ寸法は、好ましくは30〜200mmであり、より好ましくは40〜180mmである。
トップシート2は、本体部10では、着用者から排出された尿、経血などの体液を、吸収体4へ移動させる。また、本体部10では、トップシート2の少なくとも一部は液透過性を有し、体液を透過するための多数の開口部を有する。一方、ウイング部6では、トップシート2は、着用者がウイング部6を折り曲げるのに適するとともに、下着に取り付けられた後も着用者に違和感を与えないような適度な剛性を、後述のバックシート3と一緒になってウイング部6に付与する。
トップシート2は、好ましくは樹脂フィルムから作製される。トップシート2として使用される樹脂フィルムは、オレフィンとアクリル酸エステル、酢酸ビニルなどの他モノマーとの共重合体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、酢酸セルロースなどから作製される。柔軟性が高く肌に対する刺激が少ない点から、トップシート2として使用される樹脂フィルムは、好ましくはオレフィンと他モノマーとの共重合体、またはポリオレフィンである。
トップシート2の坪量は、好ましくは1g/m2以上、40g/m2以下であり、より好ましくは10g/m2以上、35g/m2以下である。また、トップシート2を構成する樹脂フィルムの厚さは、好ましくは0.01mm以上、0.4mm以下であり、より好ましくは0.1mm以上、0.35mm以下である。トップシート2を構成する樹脂フィルムの厚さが0.01mm未満の場合には、トップシート2の後述の隠ぺい性が小さくなりすぎる場合があり、トップシート2を構成する樹脂フィルムの厚さが0.4mmを超える場合には、トップシート2の剛性が高くなり、着用者の肌に対するトップシート2の刺激が強くなりすぎる場合がある。トップシート2は後述する第1の山折り部、第2の山折り部および谷折り部を有するので、トップシート2の見かけ上の厚さは、トップシート2を構成する樹脂フィルムの厚さよりも大きい。トップシート2の見かけ上の厚さは、好ましくは0.01mm以上、1mm以下であり、より好ましくは0.1mm以上、0.5mm以下である。
トップシート2は、吸収体4に吸収された体液が外部から見えないようにするため、隠ぺい性を有する。トップシート2の隠ぺい性は、酸化チタンなどのフィラーを樹脂に混ぜることによって生ずる。フィラーが酸化チタンの場合、酸化チタンの含有量は、樹脂フィルムの重量に対して、好ましくは1%以上、50%以下であり、より好ましくは3%以上、15%以下である。酸化チタンの含有量が樹脂フィルムの重量に対して1%未満であると、トップシート2における吸収体4に吸収された体液を隠ぺいする効果が小さすぎる場合がある。酸化チタンの含有量が樹脂フィルムの重量に対して50%を超えると、酸化チタンを含有した樹脂のシート成形が困難になる場合がある。
トップシート2は、長手方向に延在し、幅方向に交互に並ぶ第1の山折り部21および谷折り部と、第1の山折り部21に交差する方向に延在する第2の山折り部22とを有する。本体部10の吸収体4が設けられている領域12のトップシート2には、後述の開口部がさらに形成されている。また、吸収体4が設けられている領域12の中の排泄口当接域16には、トップシート2の表面に後述の血液改質剤層が設けられている。ここで、排泄口当接域16とは、着用者の体液の排泄口に当接する位置を中心とした長手方向の長さが、好ましくは50〜200mmであり、より好ましくは70〜150mmであり、幅方向の長さが、好ましくは10〜80mmであり、より好ましくは20〜50mmである、吸収性物品1の領域である。吸収性物品1を包装するために、一対のウイング部6の幅方向外側の縁62がお互いに接するように一対のウイング部6を幅方向内側に折り畳むと、排泄口当接域16の大部分またはすべての部分が折り畳んだウイング部6によって覆い隠される(図5および図7参照)。
図3および図4を参照して、トップシート2に設けられた第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23を詳細に説明する。図3は、本体部10のトップシート2における吸収体4の幅方向の両側面41の外側の領域14およびウイング部6のトップシート2に形成した(図1参照)第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23を説明するための図である。
図3に示すように、吸収体4の幅方向の両側面41の外側の領域14およびウイング部6において、トップシート2は、長手方向(Y方向)に延在しており、幅方向(X方向)に交互に並ぶ第1の山折り部21および谷折り部23を含む。第1の山折り部21および谷折り部23の断面の形状は、たとえば、略U字形状である。略U字形状には、U字形状の他に、角を丸めたり、直線を曲線に変えたりするなどの変形を加えるとU字形状になる形状も含まれる。たとえば、略U字形状には、V字形状、M字形状、台形およびΩ形状も含まれる。
第2の山折り部22は、長手方向(Y方向)に延びる第1の山折り部21に対して交差する方向に延びていることが好ましい。たとえば、第1の山折り部21が延びる方向と第2の山折り部22が延びる方向との間のなす角度は、好ましくは10°以上、170°以下である。第2の山折り部22が延びる方向に対して直交する方向で第2の山折り部22を切断したときの第2の山折り部22の断面の形状は、たとえば略U字形状である。なお、第2の山折り部22をトップシート2に設けなくてもよいが、第2の山折り部22を形成することによって第1の山折り部21はつぶれにくくなるので、第2の山折り部22をトップシート2に設けることが好ましい。
幅方向における1cm当たりの第1の山折り部21の数は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、5以上である。幅方向における1cm当たりの第1の山折り部21の数が2以下であると、ウイング部6における谷折り部23の底が排泄口当接域16の後述の血液改質剤層に接触する場合がある。
第2の山折り部22の長手方向(Y方向)の長さは、好ましくは0.3mm以上、5mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上、3mm以下である。第2の山折り部22の長手方向(Y方向)の長さが0.3mmよりも小さい場合、第1の山折り部21をつぶれにくくする効果が現れない場合がある。また、第2の山折り部22の長手方向(Y方向)の長さが5mmよりも大きい場合、ウイング部6におけるトップシート2と、排泄口当接域16における後述の血液改質剤層との間の接触面積があまり小さくならない場合がある。
ウイング部5において、トップシート2は後述の開口部を含まない。
図4は、本発明の一実施形態の吸収性物品1のトップシート2における排泄口当接域16に形成した第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23を説明するための図である。図4に示すように、排泄口当接域16のトップシート2は、本体部10の吸収体4の幅方向の両側面41の外側の領域14およびウイング部5におけるトップシート2と同様に、第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23を含む。しかし、排泄口当接域16のトップシート2の第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23は、肌側の表面に後述の血液改質剤層24をさらに含む。また、排泄口当接域16のトップシート2の第1の山折り部21および谷折り部23は、開口部25を側面26にさらに含む。
排泄口当接域16のトップシート2の第1の山折り部21および谷折り部23は、その両側面26に、長手方向(Y方向)に並ぶ複数の開口部25を有する。排泄口当接域16のトップシート2に排出された着用者の体液は、開口部25を通過して吸収体4へ移動する。また、谷折り部23によって形成される幅方向(X方向)の略U字形状によって、トップシート2に排出された着用者の体液は、谷折り部23の底の方に向かって素早く集まる。開口部25は、第1の山折り部21および谷折り部23の側面26に設けられているので、谷折り部23の底の方に向かって流れる体液は、谷折り部23の底に到達する前に、第1の山折り部21および谷折り部23の側面26に設けられた開口部25を通過し、吸収体4に流れる。また、谷折り部23に溜まった体液も第1の山折り部21および谷折り部23の側面26に設けられた開口部25を通過し、吸収体4に流れる。したがって、第1の山折り部21および谷折り部23の側面26に設けられた開口部25によって、着用者の体液は、吸収体4に素早く吸収される。また、第1の山折り部21および谷折り部23の側面26に設けられた開口部25によって、トップシート2に残留する体液の量を減少させることができる。
排泄口当接域16のトップシート2の肌側の表面に血液改質剤を塗布して、トップシート2の肌当接側の表面に血液改質剤層24を設ける。血液改質剤層24は、一対のウイング部6の幅方向外側の縁62がお互いに接するように一対のウイング部6を幅方向内側に折り畳むと、折り畳んだウイング部6によって覆い隠される範囲内に設けられていることが好ましい。これにより、吸収性物品1を包装するとき、折り畳んだウイング部6によって血液改質剤層24が保護される。この血液改質剤層24によって、トップシート2の表面に、着用者の体液、とくに粘度の高い体液(たとえば粘度の高い経血)が残留することを抑制できる。なお、血液改質剤層24は、トップシート2の少なくとも排泄口当接域16に設けられていれば、排泄口当接域16以外の領域にも血液改質剤層24を設けてもよいし、設けなくてもよい。この血液改質剤層24は、後で詳細に説明する。
排泄口当接域16のトップシート2に設けられた第1の山折り部21によって着用者の肌とトップシート2との間の接触面積が小さくなるので、トップシート2の肌触りが良好になる。なお、排泄口当接域16のトップシート2に第1の山折り部および谷折り部のみを形成し、第2の山折り部を形成しなくてもよい。この場合も着用者の肌とトップシート2との間の接触面積が小さくなるので、トップシート2の肌触りが良好になる。しかし、第2の山折り部を設けることによって、第1の山折り部はつぶれにくくなるので、排泄口当接域16のトップシート2に、第1の山折り部、第2の山折り部および谷折り部を設けることが好ましい。
本体部10の吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域においても、排泄口当接域16と同様に、トップシート2に、側面に開口部が形成された第1の山折り部21および谷折り部23ならびに第2の山折り部22は設けられている。しかし、本体部10の吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域では、トップシート2の表面に血液改質剤層24が設けられていない。
なお、本体部10の吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域の一部または全部のトップシート2の表面に血液改質剤層24を設けてもよい。これにより、排泄口当接域16から流出した着用者の体液が、吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域に残留することを抑制できる。
本体部10の吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域に設けられた第1の山折り部21によって着用者の肌とトップシート2との間の接触面積が小さくなるので、トップシート2の肌触りが良好になる。なお、本体部10の吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域のトップシート2に第1の山折り部および谷折り部23のみを形成し、第2の山折り部を形成しなくてもよい。この場合も着用者の肌とトップシート2との間の接触面積が小さくなるので、トップシート2の肌触りが良好になる。しかし、第2の山折り部を設けることによって、第1の山折り部はつぶれにくくなるので、本体部10の吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域のトップシート2に、第1の山折り部、第2の山折り部および谷折り部23を設けることが好ましい。
トップシート2の少なくとも排泄口当接域16に開口部25が設けられていれば、吸収体4が設けられている領域12における排泄口当接域16以外の領域の一部または全部に開口部25を設けなくてもよい。トップシート2の表面において、着用者から排出された体液が排泄口当接域16から流出しなければ、排泄口当接域16以外の領域に開口部25を形成する必要がない場合があるからである。また、本体部10のトップシート2における吸収体4の幅方向の両縁41の外側の領域14の一部に開口部25を設けてもよい。これにより、トップシート2の表面において、本体部10の吸収体4が設けられている領域12から流出した体液は、吸収体4の幅方向の両縁41の外側の領域14に設けた開口部を通って吸収体4に吸収されるので、着用者から排出された体液が吸収性物品1の縁から外へ漏れることをさらに抑制できる。
図1および図2に示すバックシート3は、吸収体4に吸収された体液が外へ漏れ出すのを防止する。バックシート3には、体液を透過しない材料が使用される。たとえば、バックシート3として、疎水性の不織布、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの不透水性のプラスチックフィルムまたは不織布と不透水性プラスチックフィルムとのラミネートシートなどが使用される。また、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)繊維不織布をバックシート3として使用してもよい。体液は通さない通気性を有する材料をバックシート3として使用することにより、着用時のムレを低減させることができる。バックシート3はホットメルト接着剤などの接着剤を使用してトップシート2の谷折り部23の底と接合する。
吸収体4は体液を吸収して保持する。吸収体4は、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。たとえば、吸収体4として、フラッフ状パルプもしくはエアレイド不織布と高吸収性ポリマー(SAP)とからなる複合吸収体が使用される。この複合吸収体は、ティッシュなどの液透過性の材料で覆われていてもよい。
また、上記複合吸収体のフラッフ状パルプの代わりに、たとえば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨンおよびアセテートなどの人工セルロース繊維を使用してもよい。上記複合吸収体中のパルプなどの吸収性繊維の坪量は、好ましくは100g/m2以上、800g/m2以下であり、上記複合吸収体中の高吸収性ポリマーの質量比は、吸収性繊維を100%として好ましくは10%以上、65%以下である。上記複合混合体を覆うティッシュなど液透過性の材料の坪量は、好ましくは12g/m2以上、30g/m2以下である。
上記複合混合体のエアレイド不織布として、たとえば、パルプと合成繊維とを熱融着させた不織布またはパルプと合成繊維とをバインダーで固着させた不織布を使用することができる。
上記複合吸収体の高吸収性ポリマーは、水溶性高分子が適度に架橋した三次元網目構造を有する。この吸収性ポリマーは、水を吸収する前の吸収性ポリマーの体積に対して30〜60倍の水を吸収する。しかし、この吸収性ポリマーは本質的に水不溶性である。また、この吸収性ポリマーは、多少の圧力を加えられても、一旦吸収された水を離水しない。この吸収性ポリマーとして、たとえば、デンプン系、アクリル酸系またはアミノ酸系の粒子状または繊維状のポリマーが使用される。
吸収体4の形状および構造は必要に応じて変えることができるが、吸収体4の全吸収量は、吸収性物品1としての設計挿入量および所望の用途に対応させる必要がある。また、吸収体4のサイズや吸収能力などは用途に応じて変わる。
ホットメルト接着剤を使用して吸収体4はトップシート2と接着している。これによりトップシート2が吸収体4から剥がれることを抑制できる。
上述したように、ウイング部6は、吸収性物品1を下着に安定して固定するために吸収性物品1に設けられている。ウイング部6を下着の外面側に折り曲げた後、粘着部7を介して下着のクロッチ域に張り付けることによって、吸収性物品1を下着に安定して固定することができる。また、本体部10にも粘着部7が設けられており、下着のクロッチ域において本体部10がズレて動くことを防止する。
図2に示す吸収性物品1の粘着部7は、吸収性物品1を下着のクロッチ域に固定する。粘着部7を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体などが挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。
また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などが挙げられ、前記可塑剤ではたとえば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどのモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
図1および図2に示すように、トップシート2および吸収体4は、エンボス加工により厚み方向に圧縮して形成された、トップシート2から吸収体4の内部に至る圧搾溝8を有する。圧搾溝8は、吸収性物品1の中心部分(着用者の体液の排泄口に当接する部分)に排出された体液が幅方向(X方向)に拡散するのを抑制する。また、これにより吸収体4からトップシート2が剥がれることを抑制できる。圧搾溝8は、吸収性物品1の中心部分を囲み、連続的な略環状の形状を有する。なお、吸収性物品1の中央部を囲む圧搾溝8は、部分的に途切れていてもよい。すなわち、圧搾溝8は、非連続的な略環状の形状を有していてもよい。
また、ヒートエンボス加工によりトップシート2をバックシート3に圧縮接合させることによって、本体部10の長手方向両側の縁の部分およびウイング部6の幅方向外側の縁の部分にシール部9が形成される。これにより、トップシート2がバックシート3から剥がれないようにできる。
次に、上述の血液改質剤層24を詳細に説明する。血液改質剤層24の血液改質剤は、血液改質剤は、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.00〜約0.05gの水溶解度とを有する。
IOB(Inorganic Organic Balance)は、親水性および親油性のバランスを示す指標であり、本明細書では、小田らによる次式:
IOB=無機性値/有機性値
により算出される値を意味する。
上記無機性値と、有機性値とは、藤田穆「有機化合物の予測と有機概念図」化学の領域Vol.11,No.10(1957)p.719−725)に記載される有機概念図に基づく。藤田氏による、主要な基の有機性値および無機性値を、下記表1にまとめる。
たとえば、炭素数14のテトラデカン酸と、炭素数12のドデシルアルコールとのエステルの場合には、有機性値が520(CH2,20×26個)、無機性値が60(−COOR,60×1個)となるため、IOB=0.12となる。
上記血液改質剤において、IOBは、約0.00〜約0.60であり、約0.00〜約0.50であることが好ましく、約0.00〜約0.40であることがより好ましく、そして約0〜約0.30であることがさらに好ましい。IOBが低いほど、有機性が高く、血球との親和性が高くなると考えられるからである。
本明細書において、「融点」は、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で測定した場合の、固形状から液状に変化する際の吸熱ピークのピークトップ温度を意味する。上記融点は、たとえば、島津製作所社製のDSC−60型DSC測定装置を用いて測定することができる。
上記血液改質剤は、約45℃以下の融点を有すれば、室温で液体であっても、または固体であってもよい、すなわち、融点が約25℃以上でも、または約25℃未満でもよく、そしてたとえば、約−5℃、約−20℃等の融点を有することができる。上記血液改質剤の融点が約45℃以下である根拠は、後述する。
上記血液改質剤は、その融点に下限は存在しないが、その蒸気圧が低いことが好ましい。上記血液改質剤の蒸気圧は、1気圧および25℃で約0.00〜約0.01Paであることが好ましく、約0.000〜約0.001Paであることがより好ましく、そして約0.0000〜約0.0001Paであることがさらに好ましい。本開示の吸収性物品が、人体に接して用いられることを考慮すると、上記蒸気圧は、1気圧および40℃で約0.00〜約0.01Paであることが好ましく、約0.000〜約0.001Paであることがより好ましく、そして約0.0000〜約0.0001Paであることがさらに好ましい。蒸気圧が高いと、保存中に気化し、血液改質剤の量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合があるからである。
また、血液改質剤の融点を、気候、着用時間の長さ等に応じて、使い分けることができる。たとえば、平均気温が約10℃以下の地域では、約10℃以下の融点を有する血液改質剤を採用することにより、経血が排泄された後、周囲温度によって冷却された場合であっても、血液改質剤が、安定して血液を改質することができると考えられる。また、吸収性物品が長時間にわたって使用される場合には、血液改質剤の融点は、45℃以下の範囲で高い方が好ましい。汗、着用時の摩擦等の影響を受けにくく、長時間着用した場合であっても、血液改質剤が移動しにくいからである。
0.00〜0.05gの水溶解度は、25℃において、100gの脱イオン水に、0.05gの試料を添加し、24時間静置し、24時間後に、必要に応じて軽く攪拌し、次いで、試料が溶解したか否か目視で評価することにより測定することができる。なお、本明細書では、水溶解度に関して、「溶解」には、試料が脱イオン水に完全に溶解し、均一混合物を形成した場合と、試料が完全にエマルション化した場合とが含まれる。なお、「完全」とは、脱イオン水に、試料の塊が存在しないことを意味する。
当技術分野では、血液の表面張力等を変化させ、血液を迅速に吸収することを目的として、トップシートの表面を、界面活性剤でコーティングすることが行われている。しかし、界面活性剤は、一般に水溶解度が高いため、界面活性剤がコーティングされたトップシートは、血液中の親水性成分(血漿等)となじみがよく、むしろ血液をトップシートに残存させるようにはたらく傾向がある。上記血液改質剤は、水溶解度が低いため、従来公知の界面活性剤と異なり、血液をトップシートに残存させず、迅速に吸収体に移行させることができると考えられる。
本明細書において、25℃における、100gの水に対する溶解度を、単に、「水溶解度」と称する場合がある。
本明細書において、「重量平均分子量」は、多分散系の化合物(たとえば、逐次重合により製造された化合物、複数の脂肪酸と、複数の脂肪族1価アルコールとから生成されたエステル)と、単一化合物(たとえば、1種の脂肪酸と、1種の脂肪族1価アルコールから生成されたエステル)とを含む概念であり、Ni個の分子量Miの分子(i=1、またはi=1,2・・・)からなる系において、次の式:
Mw=ΣNiMi 2/ΣNiMi
により求められるMwを意味する。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる、ポリスチレン換算の値を意味する。GPCの測定条件としては、たとえば、以下が挙げられる。
機種:(株)日立ハイテクノロジーズ製 高速液体クロマトグラム Lachrom Elite
カラム:昭和電工(株)製 SHODEX KF−801、KF−803およびKF−804
溶離液:THF
流量 :1.0mL/分
打込み量:100μL
検出:RI(示差屈折計)
なお、本明細書の実施例に記載される重量平均分子量は、上記条件により測定したものである。
上記血液改質剤は、好ましくは、次の(i)〜(iii)、
(i)炭化水素、
(ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)およびオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一または複数の、同一または異なる基とを有する化合物、および
(iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)およびオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一または複数の、同一または異なる基と、(iii−3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)およびヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一または複数の、同一または異なる基とを有する化合物、
ならびにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
本明細書において、「炭化水素」は、炭素と水素とから成る化合物を意味し、鎖状炭化水素、たとえば、パラフィン系炭化水素(二重結合および三重結合を含まない、アルカンとも称される)、オレフィン系炭化水素(二重結合を1つ含む、アルケンとも称される)、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含む、アルキンとも称される)、および二重結合および三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素、ならびに環状炭化水素、たとえば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素が挙げられる。
上記炭化水素としては、鎖状炭化水素および脂環式炭化水素であることが好ましく、鎖状炭化水素であることがより好ましく、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、および二重結合を2つ以上含む炭化水素(三重結合を含まない)であることがさらに好ましく、そしてパラフィン系炭化水素であることがさらに好ましい。上記鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素が含まれる。
上記(ii)および(iii)の化合物において、オキシ基(−O−)が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基(−O−)は隣接していない。したがって、上記(ii)および(iii)の化合物には、オキシ基が連続する化合物(いわゆる、過酸化物)は含まれない。
また、上記(iii)の化合物では、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)で置換された化合物よりも、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物の方が好ましい。表1に示すように、カルボキシル基は、経血中の金属等と結合し、無機性値が150から、400以上へと大幅に上昇するため、カルボキシル基を有する血液改質剤は、使用時にIOBの値が約0.60を上回り、血球との親和性が低下する可能性があるからである。
上記血液改質剤は、より好ましくは、次の(i’)〜(iii’)、
(i’)炭化水素、
(ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、およびエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一または複数の、同一または異なる結合とを有する化合物、および
(iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、およびエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一または複数の、同一または異なる結合と、(iii’−3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)およびヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一または複数の、同一または異なる基とを有する化合物、
ならびにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
上記(ii’)および(iii’)の化合物において、2以上の同一または異なる結合が挿入されている場合、すなわち、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)およびエーテル結合(−O−)から選択される2以上の同一または異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接しておらず、各結合の間には、少なくとも、炭素原子が1つ介在する。
上記血液改質剤は、さらに好ましくは、炭化水素部分中に、炭素原子10個当たり、カルボニル結合(−CO−)を約1.8個以下、エステル結合(−COO−)を2個以下、カーボネート結合(−OCOO−)を約1.5個以下、エーテル結合(−O−)を約6個以下、カルボキシル基(−COOH)を約0.8個以下、そして/またはヒドロキシル基(−OH)を約1.2個以下有する化合物であることができる。
上記血液改質剤は、さらに好ましくは、次の(A)〜(F)、
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル、
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル、
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル、
(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、およびカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物、
(E)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール、またはそのアルキルエステルもしくはアルキルエーテル、および
(F)鎖状炭化水素、
ならびにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。以下、(A)〜(F)に従う血液改質剤について詳細に説明する。
[(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル]
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(A)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点および水溶解度を有する限り、全てのヒドロキシル基がエステル化されていなくともよい。
(A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(A1)」と称する場合がある)としては、たとえば、鎖状炭化水素テトラオール、たとえば、アルカンテトラオール、たとえば、ペンタエリトリトール、鎖状炭化水素トリオール、たとえば、アルカントリオール、たとえば、グリセリン、および鎖状炭化水素ジオール、たとえば、アルカンジオール、たとえば、グリコールが挙げられる。
(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(A2)」と称する場合がある)としては、たとえば、炭化水素上の1つの水素原子が、1つのカルボキシル基(−COOH)で置換された化合物、たとえば、脂肪酸が挙げられる。
化合物(A)としては、たとえば、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、および(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
[(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、たとえば、次の式(1):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステル、次の式(2):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステル、次の式(3):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステル、次の式(4):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
(式中、R1〜R4は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R1COOH、R2COOH,R3COOH,およびR4COOH)としては、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点および水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されないが、たとえば、飽和脂肪酸、たとえば、C2〜C30の飽和脂肪酸、たとえば、酢酸(C2)(C2は、炭素数を示し、R1C、R2C,R3CまたはR4Cの炭素数に相当する、以下同じ)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)およびその異性体、たとえば、2−メチルプロパン酸(C4)、ペンタン酸(C5)およびその異性体、たとえば、2−メチルブタン酸(C5)、2,2−ジメチルプロパン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)およびその異性体、たとえば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等、ならびにこれらの異性体(上述のものを除く)が挙げられる。
上記脂肪酸はまた、不飽和脂肪酸であることができる。上記不飽和脂肪酸としては、たとえば、C3〜C20の不飽和脂肪酸、たとえば、モノ不飽和脂肪酸、たとえば、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)等、ジ不飽和脂肪酸、たとえば、リノール酸(C18)、エイコサジエン酸(C20)等、トリ不飽和脂肪酸、たとえば、リノレン酸、たとえば、α-リノレン酸(C18)およびγ-リノレン酸(C18)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸、たとえば、α-エレオステアリン酸(C18)およびβ-エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20)、エイコサトリエン酸(C20)等、テトラ不飽和脂肪酸、たとえば、ステアリドン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコサテトラエン酸(C20)等、ペンタ不飽和脂肪酸、たとえば、ボセオペンタエン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)等、ならびにこれらの部分水素付加物が挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステル、すなわち、ペンタエリトリトールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。また、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステル、トリエステルまたはテトラエステルであることが好ましく、トリエステルまたはテトラエステルであることがより好ましく、そしてテトラエステルであることがさらに好ましい。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(1)において、R1C、R2C、R3CおよびR4C部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、上記炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、たとえば、ペンタエリトリトールと、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、たとえば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)および/またはドデカン酸(C12)とのテトラエステルが挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(2)において、R1C、R2CおよびR3C部分の炭素数の合計が19の場合にIOBが0.58となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約19以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(3)において、R1CおよびR2C部分の炭素数の合計が22の場合にIOBが0.59となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約22以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、上記式(4)において、R1C部分の炭素数が25の場合にIOBが0.60となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約25以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。なお、上記計算に当たっては、二重結合、三重結合、iso分岐、およびtert分岐の影響は、考慮していない。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、ユニスター H−408BRS、H−2408BRS−22(混合品)等(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、たとえば、次の式(5):
のグリセリンと脂肪酸とのトリエステル、次の式(6):
のグリセリンと脂肪酸とのジエステル、および次の式(7):
(式中、R5〜R7は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のグリセリンと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R5COOH、R6COOHおよびR7COOH)としては、グリセリンと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点および水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、たとえば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙される脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、グリセリンと脂肪酸とのエステル、すなわち、グリセリンと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記グリセリンと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステルまたはトリエステルであることが好ましく、そしてトリエステルであることがより好ましい。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、トリグリセリドとも称され、たとえば、グリセリンとオクタン酸(C8)とのトリエステル、グリセリンとデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのトリエステル、およびグリセリンと、2種または3種の脂肪酸とのトリエステル、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
上記グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのトリエステルとしては、たとえば、グリセリンと、オクタン酸(C8)およびデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)およびドデカン酸(C12)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)およびオクタデカン酸(C18)とのトリエステル等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルとしては、融点を約45℃以下とするために、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6CおよびR7C部分の炭素数の合計が、約40以下であることが好ましい。
また、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6CおよびR7C部分の炭素数の合計が12の場合にIOBが0.60となる。したがって、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約12以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いわゆる、脂肪であり、人体を構成しうる成分であるため、安全性の観点から好ましい。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルの市販品としては、トリヤシ油脂肪酸グリセリド、NA36、パナセート800、パナセート800Bおよびパナセート810S、ならびにトリC2L油脂肪酸グリセリドおよびトリCL油脂肪酸グリセリド(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルは、ジグリセリドとも称され、たとえば、グリセリンとデカン酸(C10)とのジエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのジエステル、グリセリンとヘキサデカン酸(C16)とのジエステル、およびグリセリンと、2種の脂肪酸とのジエステル、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(6)において、R5CおよびR6C部分の炭素数の合計が16の場合にIOBが0.58となる。したがって、上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約16以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルは、モノグリセリドとも称され、たとえば、グリセリンのイコサン酸(C20)モノエステル、グリセリンのドコサン酸(C22)モノエステル等が挙げられる。上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、式(7)において、R5C部分の炭素数が19の場合にIOBが0.59となる。したがって、上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約19以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、たとえば、C2〜C6の鎖状炭化水素ジオール、たとえば、C2〜C6のグリコール、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールまたはヘキシレングリコールと、脂肪酸とのモノエステルまたはジエステルが挙げられる。
具体的には、上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、たとえば、次の式(8):
R8COOCkH2kOCOR9 (8)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8およびR9は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのジエステル、および次の式(9):
R8COOCkH2kOH (9)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸(式(8)および式(9)において、R8COOHおよびR9COOHに相当する)としては、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点および水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、たとえば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、R8CおよびR9C部分の炭素数の合計が6の場合に、IOBが、0.60となる。したがって、式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、上記炭素数の合計が約6以上の場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。また、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、R8C部分の炭素数が12の場合に、IOBが0.57となる。したがって、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約12以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステル、すわなち、C2〜C6グリコールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、炭素数の大きいグリコールに由来する、グリコールと脂肪酸とのエステル、たとえば、ブチレングリコール、ペンチレングリコールまたはヘキシレングリコールに由来するグリコールと脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
さらに、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステルであることが好ましい。上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、たとえば、コムポールBL、コムポールBS(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
[(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル]
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル(以下、「化合物(B)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点および水溶解度を有する限り、全てのヒドロキシル基がエーテル化されていなくともよい。
(B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物としては、「化合物(A)」において化合物(A1)として列挙されるもの、たとえば、ペンタエリトリトール、グリセリン、およびグリコールが挙げられる。
(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(B2)」と称する場合がある)としては、たとえば、炭化水素の1個の水素原子が、1個のヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、たとえば、脂肪族1価アルコール、たとえば、飽和脂肪族1価アルコールおよび不飽和脂肪族1価アルコールが挙げられる。
上記飽和脂肪族1価アルコールとしては、たとえば、C1〜C20の飽和脂肪族1価アルコール、たとえば、メチルアルコール(C1)(C1は、炭素数を示す、以下同じ)、エチルアルコール(C2)、プロピルアルコール(C3)およびその異性体、たとえば、イソプロピルアルコール(C3)、ブチルアルコール(C4)およびその異性体、たとえば、sec−ブチルアルコール(C4)およびtert−ブチルアルコール(C4)、ペンチルアルコール(C5)、ヘキシルアルコール(C6)、ヘプチルアルコール(C7)、オクチルアルコール(C8)およびその異性体、たとえば、2−エチルヘキシルアルコール(C8)、ノニルアルコール(C9)、デシルアルコール(C10)、ドデシルアルコール(C12)、テトラデシルアルコール(C14)、ヘキサデシルアルコール(C16)、へプラデシルアルコール(C17)、オクタデシルアルコール(C18)、およびエイコシルアルコール(C20)、ならびにこれらの列挙されていない異性体が挙げられる。
上記不飽和脂肪族1価アルコールとしては、上記飽和脂肪族1価アルコールのC−C単結合の1つを、C=C二重結合で置換したもの、たとえば、オレイルアルコールが挙げられ、たとえば、新日本理化株式会社から、リカコールシリーズおよびアンジェコオールシリーズの名称で市販されている。
化合物(B)としては、たとえば、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、たとえば、モノエーテル、ジエーテル、トリエーテルおよびテトラエーテル、好ましくはジエーテル、トリエーテルおよびテトラエーテル、より好ましくはトリエーテルおよびテトラエーテル、そしてさらに好ましくはテトラエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、たとえば、モノエーテル、ジエーテルおよびトリエーテル、好ましくはジエーテルおよびトリエーテル、そしてより好ましくはトリエーテル、ならびに(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、たとえば、モノエーテルおよびジエーテル、そして好ましくはジエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、たとえば、次の式(10)〜(13):
(式中、R10〜R13は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテル、トリエーテル、ジエーテルおよびモノエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、たとえば、次の式(14)〜(16):
(式中、R14〜R16は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテル、ジエーテルおよびモノエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(17):
R17OCnH2nOR18 (17)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17およびR18は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのジエーテル、および次の式(18):
R17OCnH2nOH (18)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルが挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(10)において、R10、R11、R12およびR13部分の炭素数の合計が4の場合にIOBが0.44となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約4以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(11)において、R10、R11およびR12部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.57となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(12)において、R10およびR11部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、上記式(13)において、R10部分の炭素数が22の場合にIOBが0.59となる。したがって、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約22以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
また、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(14)において、R14、R15およびR16部分の炭素数の合計が3の場合にIOBが0.50となる。したがって、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約3以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(15)において、R14およびR15部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.58となる。したがって、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、式(16)において、R14部分の炭素数が16の場合にIOBが0.58となる。したがって、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約16以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、R17およびR18部分の炭素数の合計が2の場合に、IOBが、0.33となる。したがって、式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が2以上の場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。また、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、R17部分の炭素数が8の場合に、IOBが0.60となる。したがって、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約8以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
化合物(B)としては、化合物(B1)と、化合物(B2)とを、酸触媒の存在下で、脱水縮合することにより生成することができる。
[(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル]
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(C)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点および水溶解度を有する限り、全てのカルボキシル基がエステル化されていなくともよい。
(C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸(以下、「化合物(C1)」と称する場合がある)としては、たとえば、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素カルボン酸、たとえば、鎖状炭化水素ジカルボン酸、たとえば、アルカンジカルボン酸、たとえば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸およびデカン二酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、たとえば、アルカントリカルボン酸、たとえば、プロパン三酸、ブタン三酸、ペンタン三酸、ヘキサン三酸、ヘプタン三酸、オクタン三酸、ノナン三酸およびデカン三酸、ならびに鎖状炭化水素テトラカルボン酸、たとえば、アルカンテトラカルボン酸、たとえば、ブタン四酸、ペンタン四酸、ヘキサン四酸、ヘプタン四酸、オクタン四酸、ノナン四酸およびデカン四酸が挙げられる。
また、化合物(C1)には、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ヒドロキシ酸、たとえば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素アルコキシ酸、たとえば、O−アセチルクエン酸、および2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素オキソ酸が含まれる。(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物としては、「化合物(B)」の項で列挙されるもの、たとえば、脂肪族1価アルコールが挙げられる。
化合物(C)としては、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、たとえば、モノエステル、ジエステル、トリエステルおよびテトラエステル、好ましくはジエステル、トリエステルおよびテトラエステル、より好ましくはトリエステルおよびテトラエステル、そしてさらに好ましくはテトラエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、たとえば、モノエステル、ジエステルおよびトリエステル、好ましくはジエステルおよびトリエステル、そしてより好ましくはトリエステル、ならびに(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、たとえば、モノエステルおよびジエステル、好ましくはジエステルが挙げられる。化合物(C)の例としては、アジピン酸ジオクチル、O−アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられ、そして市販されている。
[(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、およびカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物]
(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、およびカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物(以下、「化合物(D)」と称する場合がある)としては、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、および(d4)ジアルキルカーボネートが挙げられる。
[(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(19):
R19OR20 (19)
(式中、R19およびR20は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
上記エーテルを構成する脂肪族1価アルコール(式(19)において、R19OHおよびR20OHに相当する)としては、上記エーテルが、上記IOB、融点および水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、たとえば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルでは、当該エーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(19)において、R19およびR20部分の炭素数の合計が2の場合にIOBが0.50となるため、当該炭素数の合計が約2以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が6程度では、水溶解度が約2gと高く、蒸気圧の観点からも問題がある。水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。
[(d2)ジアルキルケトン]
上記ジアルキルケトンとしては、次の式(20):
R21COR22 (20)
(式中、R21およびR22は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルケトンでは、R21およびR22の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.54となるため、当該炭素数の合計が約5以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が5程度では、水溶解度が約2gと高い。したがって、水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。また、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数は、約10以上であることが好ましく、そして約12以上であることが好ましい。なお、上記炭素数の合計が約8の場合、たとえば、5−ノナノンでは、融点は約−50℃であり、蒸気圧は20℃で約230Paである。上記ジアルキルケトンは、市販されている他、公知の方法、たとえば、第二級アルコールを、クロム酸等で酸化することにより得ることができる。
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、たとえば、次の式(21):
R23COOR24 (21)
(式中、R23およびR24は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
上記エステルを構成する脂肪酸(式(21)において、R23COOHに相当する)としては、たとえば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。上記エステルを構成する脂肪族1価アルコール(式(21)において、R24OHに相当する)としては、たとえば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
なお、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルでは、脂肪酸および脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(21)において、R23CおよびR24部分の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.60となるため、R23CおよびR24部分の炭素数の合計が約5以上である場合に、上記IOBの要件を満たす。しかし、たとえば、上記炭素数の合計が6の酢酸ブチルでは、蒸気圧が2,000Pa超と高い。したがって、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数の合計が約12以上であることが好ましい。なお、上記炭素数の合計が約11以上であれば、水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすことができる。
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの例としては、たとえば、ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル、テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル等が挙げられ、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの市販品としては、たとえば、エレクトールWE20、およびエレクトールWE40(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(d4)ジアルキルカーボネート]
上記ジアルキルカーボネートとしては、次の式(22):
R25OC(=O)OR26 (22)
(式中、R25およびR26は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルカーボネートでは、R25およびR26の炭素数の合計が6の場合にIOBが0.57となるため、R25およびR26の炭素数の合計が、約6以上であれば、IOBの要件を満たす。水溶解度を考慮すると、R25およびR26の炭素数の合計が約7以上であることが好ましく、そして約9以上であることがより好ましい。上記ジアルキルカーボネートは、市販されている他、ホスゲンとアルコールとの反応、塩化ギ酸エステルとアルコールまたはアルコラートとの反応、および炭酸銀とヨウ化アルキルとの反応により合成することができる。
[(E)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール、またはそのエステルもしくはエーテル]
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール、またはそのエステルもしくはエーテル(以下、化合物(E)と称する場合がある)としては、(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(e4)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、または鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、および(e5)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、または鎖状炭化水素ジオールとのエーテルが挙げられる。以下、説明する。
[(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール]
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールは、i)オキシC2〜C6アルキレン骨格、すなわち、オキシエチレン骨格、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、およびオキシヘキシレン骨格からなる群から選択されるいずれか1種の骨格を有しかつ両末端にヒドロキシ基を有するホモポリマー、ii)上記群から選択される2種以上の骨格を有しかつ両末端にヒドロキシ基を有するブロックコポリマー、またはiii)上記群から選択される2種以上の骨格を有しかつ両末端にヒドロキシ基を有するランダムコポリマーを意味する。
上記オキシC2〜C6アルキレン骨格は、ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールのIOBを低くする観点から、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、又はオキシヘキシレン骨格であることが好ましく、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、又はオキシヘキシレン骨格であることがより好ましい。
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールは、次の式(23):
HO−(CmH2mO)n−H (23)
(式中、mは2〜6の整数である)
により表わされうる。
なお、本発明者が確認したところ、ポリエチレングリコール(式(23)において、m=2のホモポリマーに相当する)は、n≧45(重量平均分子量約2,000超)の場合に、約0.00〜約0.60のIOBの要件を満たすものの、重量平均分子量が約4,000を超えた場合であっても、水溶解度の要件を満たさなかった。したがって、(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールには、エチレングリコールのホモポリマーは含まれないと考えられ、エチレングリコールは、他のグリコールとのブロックコポリマー又はランダムコポリマーとして、(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールに含まれるべきである。
したがって、式(23)のホモポリマーには、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールのホモポリマーが含まれうる。以上より、式(23)において、mは、約3〜約6であり、そして約4〜約6であることがより好ましく、そしてnは2以上である。
上記式(23)において、nの値は、ポリC2〜C6アルキレングリコールが、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度とを有するような値である。たとえば、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3のホモポリマー)である場合には、n=12の場合に、IOBが0.58となる。したがって、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3のホモポリマー)である場合には、m≧約12の場合に、上記IOBの要件を満たす。また、式(21)がポリブチレングリコール(m=4のホモポリマー)である場合には、n=7の場合に、IOBが0.57となる。したがって、式(23)がポリブチレングリコール(m=4のホモポリマー)である場合には、n≧約7の場合に、上記IOBの要件を満たす。
IOB、融点および水溶解度の観点から、ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約200〜約10,000、より好ましくは約250〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約250〜約5,000の範囲にある。また、IOB、融点および水溶解度の観点から、ポリC3アルキレングリコール、すなわち、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約1,000〜約10,000、より好ましくは約3,000〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約4,000〜約5,000の範囲にある。上記重量平均分子量が約1,000未満では、水溶解度が要件を満たさず、そして重量平均分子量が大きいほど、特に、吸収体移行速度およびトップシートの白さが向上する傾向があるからである。
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールの市販品としては、たとえば、ユニオール(商標)D−1000,D−1200,D−2000,D−3000,D−4000,PB−500,PB−700,PB−1000およびPB−2000(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(e2)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、「(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2〜C6アルキレングリコールのOH末端の一方または両方が、脂肪酸によりエステル化されているもの、すなわち、モノエステルおよびジエステルが挙げられる。
ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸としては、たとえば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、たとえば、ウィルブライトcp9(日油株式会社製)が挙げられる。
[(e3)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、「(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2〜C6アルキレングリコールのOH末端の一方または両方が、脂肪族1価アルコールによりエーテル化されているもの、すなわち、モノエーテルおよびジエーテルが挙げられる。ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルにおいて、エーテル化すべき脂肪族1価アルコールとしては、たとえば、「化合物(B)」の項で列挙されている脂肪族1価アルコールが挙げられる。
[(e4)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、または鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル]
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、または鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルにおいて、エステル化すべきポリオキシC2〜C6アルキレングリコールとしては、「(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2〜C6アルキレングリコールが挙げられる。また、エステル化すべき鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、および鎖状炭化水素ジカルボン酸としては、「化合物(C)」の項で説明されるものが挙げられる。
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、または鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルは、市販されているほか、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、または鎖状炭化水素ジカルボン酸に、C2〜C6アルキレングリコールを、公知の条件で重縮合させることにより製造することができる。
[(e5)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、または鎖状炭化水素ジオールとのエーテル]
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、または鎖状炭化水素ジオールとのエーテルにおいて、エーテル化すべきポリオキシC2〜C6アルキレングリコールとしては、「(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2〜C6アルキレングリコールが挙げられる。また、エーテル化すべき鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、および鎖状炭化水素ジオールとしては、「化合物(A)」の項で説明されるもの、たとえば、ペンタエリトリトール、グリセリン、およびグリコールが挙げられる。
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、または鎖状炭化水素ジオールとのエーテルの市販品としては、たとえば、ユニルーブ(商標)5TP−300KB,ならびにユニオール(商標)TG−3000およびTG−4000(日油株式会社製)が挙げられる。ユニルーブ(商標)5TP−300KBは、ペンタエリトリトール1モルに、プロピレングリコール65モルと、エチレングリコール5モルとを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.39であり、融点は45℃未満であり、そして水溶解度は0.05g未満であった。
ユニオール(商標)TG−3000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール50モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.42であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約3,000であった。ユニオール(商標)TG−4000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール70モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.40であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約4,000であった。
上記ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、または鎖状炭化水素ジオールとのエーテルはまた、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、または鎖状炭化水素ジオールに、C2〜C6アルキレンオキシドを、公知の条件で付加させることにより製造することができる。
[(F)鎖状炭化水素]
上記鎖状炭化水素は、上記無機性値が0であることから、IOBが0.00であり、そして水溶解度がほぼ0gであるので、融点が約45℃以下のものであれば、上記血液改質剤に含まれうる。上記鎖状炭化水素としては、たとえば、(f1)鎖状アルカン、たとえば、直鎖アルカンおよび分岐鎖アルカンが挙げられ、たとえば、直鎖アルカンの場合には、融点が約45℃以下であることを考慮すると、おおむね、炭素数が22以下のものが含まれる。また、蒸気圧を考慮すると、おおむね、炭素数が13以上のものが含まれる。分岐鎖アルカンの場合には、直鎖アルカンよりも、同一炭素数において、融点が低くなる場合があるため、炭素数が22以上のものも含まれうる。上記炭化水素の市販品としては、たとえば、パールリーム6(日油株式会社)が挙げられる。
上記血液改質剤は、実施例と共に詳細に考察するが、血液の粘度および表面張力を下げる作用を少なくとも有することが見いだされた。吸収性物品が吸収すべき経血は、通常の血液と比較して、子宮内膜壁等のタンパク質を含むため、それらが血球同士を繋ぐように作用して、血球が連銭した状態をとりやすい。そのため、吸収性物品が吸収すべき経血は、高粘度となりやすく、トップシートが不織布または織布である場合には、経血が繊維の間に目詰まりしやすく、着用者はベタつき感を覚えやすく、そしてトップシートの表面で経血が拡散し、漏れやすくなる。
また、IOBが約0.00〜約0.60である血液改質剤は、有機性が高く、血球の間に入り込みやすいので、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることができると考えられる。上記改質剤が、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることにより、吸収体が経血を吸収しやすくなると考えられる。たとえば、アクリル系高吸収ポリマー、いわゆる、SAPを含む吸収性物品では、経血を吸収すると、連銭した血球がSAP表面を覆い、SAPが吸収性能を発揮しにくくなることが知られているが、血球を安定化することにより、SAPが吸収性能を発揮しやすくなると考えられる。また、赤血球と親和性の高い血液改質剤が、赤血球膜を保護するため、赤血球が破壊されにくくなると考えられる。
図5は、包装するためにウイング部6が折り畳まれた吸収性物品1を説明するための図であるである。以上の構成要素を有する吸収性物品1を包装する場合、図5に示すように一対のウイング部6を幅方向内側に折り畳む。
粘着部7は剥離シート33によって被覆される。これにより、吸収性物品1の使用前の粘着部7を保護することができる。剥離シート33は、粘着部7の粘着剤に対して剥離可能であるシートであればとくに限定されない。剥離シート33には、たとえば、剥離剤を基材に塗布したものを使用することができる。剥離剤を塗布する基材には、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどのフィルム、不織布、紙などがあり、剥離剤には、シリコーン系、フッ素系、イソシアネートなどがある。
図5に示すように、吸収性物品1を包装するとき、ウイング部6を折り畳んだ吸収性物品1を、包装材31の上に配置する。包装材31は、たとえば樹脂フィルムおよび不織布などによって作製される。また、包装材31の長手方向の一方の端には、止着テープ32が設けられている。包装材31上に配置された吸収性物品1は、包装材31と一緒に、B−B線およびC−C線に沿って長手方向(Y方向)に折り畳まれる。そして、止着テープ32を使用して、吸収性物品1の折り畳まれた状態を維持する。そして、吸収性物品1と一緒に折り畳んだ包装材31の幅方向の両側31aをヒートエンボス加工によって接合する。これにより、吸収性物品1を含む、図6に示す包装品30が作製される。図6は、吸収性物品を含む包装品30の斜視図である。
図7は、図5のD−D線断面を示す概略断面図である。図7に示すように、ウイング部6を折り畳んだときのウイング部6におけるトップシート2は、排泄口当接域16(図1および図2参照)のトップシート2と接触する。排泄口当接域16のトップシート2には、血液改質剤層24が形成されているので、ウイング部6におけるトップシート2は、血液改質剤層24と接触することになる。しかし、第1の山折り部21および/または第2の山折り部22によって、ウイング部6におけるトップシート2と血液改質剤層24との接触面積は小さくなる。また、ウイング部6におけるトップシート2には開口部が形成されていない。これにより、血液改質剤層24の血液改質剤がウイング部6に浸透して、ウイング部6におけるトップシート2とバックシート3との間の接合力が弱まることを抑制できる。また、血液改質剤層24の血液改質剤がウイング部6のトップシート2に転写されて、排泄口当接域16のトップシート2に形成した血液改質剤層24の血液改質剤の量が減少することを抑制できる。
第1の山折り部21および/または第2の山折り部22が設けられているウイング部6の幅方向外側の縁の部分にシール部9を形成することによって、図7に示すように、ウイング部6の縁62(図1および図2参照)を、血液改質剤層が形成されている排泄口当接域16のトップシート2から離隔できる。これにより、ウイング部2の端62においてトップシート2とバックシート3と間に血液改質剤層24の血液改質剤が浸透して、ウイング部2におけるトップシート2とバックシート3との間の接合力が弱まることを抑制できる。
さらに、血液改質剤層が形成されている排泄口当接域16のトップシート2に第1の山折り部21が設けられているので、ウイング部6におけるトップシート2と血液改質剤層24との接触面積はさらに小さくなる。これにより、血液改質剤層24の血液改質剤がウイング部6に浸透して、ウイング部6におけるトップシート2とバックシート3との間の接合力が弱まることをさらに抑制できる。また、血液改質剤層24の血液改質剤がウイング部6のトップシート2に転写されて、排泄口当接域16のトップシート2に形成した血液改質剤層24の血液改質剤の量が減少することを抑制できる。
次に、図8を参照して、本発明の一実施形態における吸収性物品1の製造方法を説明する。図8は、本発明の一実施形態における吸収性物品1の製造方法に使用する吸収性物品製造装置100を説明するための図である。吸収性物品1の製造方法は、吸収体を形成する工程、トップシート用シートを用意する工程、積層体に圧搾溝を形成する工程、バックシート用シートを用意する工程、吸収性物品の連続体を切断する工程および吸収性物品に血液改質剤を塗布する工程を含む。また、トップシート用シートを用意する工程で使用されるトップシート用シートは、樹脂フィルムシートを用意する工程、樹脂フィルムシートに凹部を形成する工程および樹脂フィルムシートにギア延伸する工程を含むトップシート用シートの製造方法によって製造される。
吸収体を形成する工程では、吸収体128をベルト110上に形成する。不図示の粉砕パルプ供給装置から粉砕パルプ122をパターンドラム120に供給する。パターンドラム120の外周部には粉砕パルプを詰める型として凹部124が形成されている。パターンドラム120の内部は吸引126されており、パターンドラム120に供給された粉砕パルプ122は、凹部124の中に吸い込まれ、圧縮される。そして、凹部124の中でパルプ122は吸収体128に成形される。吸収体128はベルト上に載置される。
トップシート用シートを用意する工程では、後述するトップシート用シートの製造方法によって製造したトップシート用シート216を吸収体128の上に配置して、トップシート用シート216を吸収体128に接着する。
積層体に圧搾溝を形成する工程では、エンボス加工装置130を使用して、トップシート用シート216および吸収体128の積層体262に圧搾溝を形成する。積層体262は、エンボス加工装置130の上段ロール131と下段ロール132との間を通過する。上段ロール131の外周の表面には、図1に示す吸収性物品1の圧搾溝8に対応する形状の凸部(不図示)が設けられている。下段ロール132は、外周の表面が平滑であるプレーンロールである。エンボス加工装置130の上段ロール131と下段ロール132との間に積層体262を通過させることによって、積層体262における、図1に示す吸収性物品1の圧搾溝8に対応する部分が厚さ方向に圧縮され、圧搾溝が積層体262に形成される。
バックシート用シートを用意する工程では、バックシート用シートロール140から供給されたバックシート用シート142を、不図示の塗布装置を使用して接着剤を塗布した後、圧搾溝が形成された積層体134のトップシート用シート側とは反対側の面に重ねて接着し、吸収性物品の連続体144を形成する。
吸収性物品の連続体を切断する工程では、カッタ150を使用して吸収性物品の連続体144を吸収性物品の形状となるように切断して吸収性物品を作製する。
吸収性物品に血液改質剤を塗布する工程では、改質剤塗布スプレー160を使用して吸収性物品の中央の領域に上述の血液改質剤161を塗布して、トップシートの排泄口当接域の表面に血液改質剤層を形成する。
吸収性物品の連続体を切断する工程の後で、血液改質剤を塗布したが、後述のトップシート用シートの製造工程で血液改質剤を塗布してもよい。吸収性物品を製造する途中に、塗布した血液改質剤が吸収性物品から落ちることを抑制するために、吸収性物品の製造工程の川下の段階、たとえば、吸収性物品を包装する直前に血液改質剤を吸収性物品に塗布することが好ましい。
吸収性物品1の製造方法には、他に、吸収性物品の連続体144に粘着部を形成する工程および吸収性物品の連続体144にシール部を形成する工程などを含む。また、製造された吸収性物品1は、上述の包装材を使用して包装される。
次に、トップシート用シートの製造方法を説明する。
樹脂フィルムシートを用意する工程では、図8に示すように、樹脂フィルムシートのロール210から供給された樹脂フィルムシート212を凹部形成ロール220に供給する。
樹脂フィルムシートに凹部を形成する工程では、樹脂フィルムシート212を凹部形成ロール220に通過させて、凹部2141が形成された樹脂フィルムシート214(図10参照)を作製する。凹部形成ロール220は、ローレットロール221と平滑な表面を有する予熱ロール222とからなる。
図9(a)および(b)は、ローレットロール221の一例を示す図である。図9(a)は、ローレットロール221の全体を示す図であり、図9(b)は、ローレットロール221の外周表面の凹凸を有する部分223を拡大した図である。図9(c)は、平滑な表面を有する予熱ロール222の一例を示す図である。ローレットロール221の表面223には、格子状の凸部224が設けられている。これにより、ローレットロール221の表面に菱形の凹部225が形成される。なお、ローレットロール221の凹部225の形状は菱形に限定されず、正方形、長方形、平行四辺形、台形、三角形、六角形などの形状であってもよい。
格子状の凸部224において平行に並ぶ凸部224の中心線間隔、すなわち格子状の凸部224のピッチは、好ましくは0.2mm以上、10mm以下であり、より好ましくは0.4mm以上、2mm以下である。格子状の凸部224のピッチが0.2mm未満、または10mmより大きい場合、樹脂フィルムに凹部が形成されない場合がある。また、格子状の凸部224の幅は、好ましくは0.01mm以上、1mm以下であり、より好ましくは0.03mm以上、0.1以下である。また、菱形の凹部225の一辺の長さは、好ましくは0.1mm以上、5mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上、1mm以下である。格子状の凸部224の幅が0.01mm未満もしくは1mmより大きい場合、または菱形の凹部225の一辺の長さが0.1mm未満もしくは5mmより大きい場合、樹脂フィルムに凹部が形成されない場合がある。
平滑な表面を有する予熱ロール222は、70℃以上、100℃以下の温度に保持されており、供給された樹脂フィルムシート212を加熱する。これにより、樹脂フィルムシート212は柔らかくなり、成形しやすくなる。
樹脂フィルムシート212が、ローレットロール221と平滑な表面を有するロール222との間を通過するとき、格子状の凸部224と接する部分では、樹脂フィルムシート212は厚さ方向に強い圧力を受ける。これにより、図10に示すように、樹脂フィルムシート214に細かい凹部2141が形成される。なお、実際に、樹脂フィルムシート212に形成される凹部2141は、図10に示されているよりも小さく、単位面積当たりの凹部2141の数も図10に示されているよりもずっと多い。凹部2141は、樹脂フィルムシート214における、本体部10の吸収体4が設けられている領域12(図1参照)に対応する範囲2143のみに形成される。ここで、樹脂フィルムシート214における、吸収性物品1に対応する範囲は、符号2142の点線で示される範囲である。
樹脂フィルムシートにギア延伸する工程では、図8に示す延伸ギアロール230に凹部を形成した樹脂フィルムシート214を通過させることによって、トップシート2の第1の山折り部、第2の山折り部および谷折り部を樹脂フィルムシート214に形成する。符号216は、第1の山折り部、第2の山折り部および谷折り部を形成した樹脂フィルムシートである。
延伸ギアロール230は、上段ロール231と下段ロール232とを含む。図11(a)は、延伸ギアロール230の上段ロール231を説明するための図であり、図11(b)は、上段ロール231の外周面上に配置されたギア歯233を説明するための図であり、図11(c)は、図11(b)のE−E線断面図である。ギア歯233は、上段ロール231の円周方向に非連続的に延びている。すなわち、上段ロール231の円周方向に延びているギア歯233は、途中で複数箇所途切れている。このギア歯233が途切れている箇所234により、樹脂フィルムシート214に第2の山折り部が形成される。
ギア歯233の幅は、たとえば0.3mm以上、0.5mm以下であり、隣接するギア歯233の中心間の距離は、たとえば1.0mm以上、1.2mm以下である。
図12(a)は、延伸ギアロール230の下段ロール232を説明するための図であり、図12(b)は、下段ロール232の外周面上に配置されたギア歯235を説明するための図であり、図12(c)は、図12(b)のF−F線断面図である。ギア歯235は、下段ロール232の円周方向に延びている。下段ロール232は、上段ロール231のように途中で複数箇所途切れていない。ギア歯235の幅は、たとえば上段ロール231のギア歯233の幅と等しく、隣接するギア歯235の中心間の距離は、たとえば上段ロール231のギア歯233の中心間の距離と等しい。
上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っている部分における上段ロール231の径方向の長さ、すなわち噛み込み深さは、たとえば1.25mmである。上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っているときの上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235との間の隙間は、たとえば、0.25mm以上、0.45mm以下である。
図8に示すように樹脂フィルムシート214が延伸ギアロール230を通過するとき、樹脂フィルム214は略波状に折り曲げられ、樹脂フィルム214にトップシート2の第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23が形成される。また、樹脂フィルムシート214の凹部2141が形成された領域2143(図10参照)には、トップシート2の開口部25(図4参照)がさらに形成される。
次に、図13を参照して、延伸ギアロール230に樹脂フィルムシート214を通過させたとき、樹脂フィルムシート214に開口部が形成される原理を説明する。なお、この原理は、本発明を限定するものではない。
樹脂フィルムシート214は、上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っている部分236で大きく延伸される。上述の凹部形成工程で凹部2141(図10参照)が形成された部分は、樹脂フィルムシート214が薄くなっており、さらにローレットロール221の格子状の凸部224により傷が付与されている部分であるので、強度が弱く、樹脂フィルムシート214の凹部2141は、延伸を受けると破れる。このため、樹脂フィルムシート214の延伸を受けた部分236では、樹脂フィルムシート214の凹部2141が破れて、樹脂フィルムシート214の破れた部分が広がり、樹脂フィルムシート214の破れた部分に開口部が形成される。
樹脂フィルムシート214は、上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っていない部分237,238ではあまり延伸されない。このため、樹脂フィルムシート241における上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っていない部分237,238では、樹脂フィルムシート214が延伸ギアロール230を通過しても、上述の凹部形成工程で形成された凹部2141は、破れず開口部にならない。
樹脂フィルムシート214の凹部2141が形成されていない領域では、上段ロール231のギア歯233と下段ロール232のギア歯235とが噛み合っている部分236で樹脂フィルムシート214が大きく延伸されても樹脂フィルムシート214は破れない。このため、樹脂フィルムシート214における、本体部10の吸収体4の幅方向の両側面41の外側の領域14およびウイング部6にそれぞれ対応する領域には開口部は形成されない。
以上の本発明の一実施形態の吸収性物品1を次のように変形することができる。
(1)本体部10のトップシート2に設けられた血液改質剤層24とウイング部6のトップシート2との間の接触面積を低減することができれば、ウイング部6のトップシートに形成する突部は、第1の山折り部および第2の山折り部に限定されない。たとえば、幅方向(X方向)に延在する山折り部をウイング部6のトップシートに設けてもよい。また、波状の形態で長手方向(Y方向)または幅方向(X方向)に延在する山折り部をウイング部6のトップシートに設けてもよい。さらに、円柱、角柱、半球などの形状の突部をウイング部6のトップシートに設けてもよい。
(2)図14に示す吸収性物品1Aのように、トップシート2Aの両側にサイドシート18Aを配置してもよい。この場合、ウイング部6はサイドシート18Aとバックシートとを備える。この場合も、サイドシート18Aは樹脂フィルムであり、サイドシート18Aは、ウイング部6において開口部を有さないとともに、第1の山折り部21および第2の山折り部などの突部を備える。これにより、本体部10のトップシート2に塗布された血液改質剤がウイング部6に浸透することによりウイング部6を構成するサイドシート18Aがバックシートから剥離することを抑制できる。
サイドシート18Aには、第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23を設け、トップシート2Aには、第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23を設けないようにしてもよい。また、トップシート2Aに不織布を用いてもよい。これらの場合も、本体部10のトップシート2に塗布された血液改質剤がウイング部6に浸透することによりウイング部6を構成するサイドシート18Aがバックシートから剥離することを抑制できる。
トップシート2Aに不織布を用いる場合、トップシート2Aに用いる不織布は、天然繊維でも化学繊維でもよい。トップシート2Aに用いる天然繊維には、粉砕パルプ、コットンなどのセルロースが挙げられる。トップシート2Aに用いる化学繊維には、レーヨン、フィブリルレーヨンなどの再生セルロース、アセテート、トリアセテートなどの半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維、および親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維などが挙げられる。トップシート2Aに用いる熱可塑性疎水性化学繊維には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの単繊維、ポリエチレンとポリプロピレンをグラフト重合してなる繊維および芯鞘構造などの複合繊維が挙げられる。
なお、トップシート2Aの両側にサイドシート18Aを設ける場合も、第1の山折り部21、第2の山折り部22および谷折り部23をトップシート2Aに設けてもよい。
(3)本体部10のトップシート2に設けられた血液改質剤層24とウイング部6のトップシート2との間の接触面積を低減することができれば、血液改質剤層が形成されている排出口対向領域16のトップシート2に形成する突部は、第1の突条部に限定されない。たとえば、幅方向(X方向)に延在する突条部を血液改質剤層が形成されている排出口対向領域16のトップシートに設けてもよい。また、波状の形態で長手方向(Y方向)または幅方向(X方向)に延在する突条部を血液改質剤層が形成されている排出口対向領域16のトップシートに設けてもよい。さらに、円柱、角柱、半球などの形状の突部を血液改質剤層が形成されている排出口対向領域16のトップシートに設けてもよい。これらの場合も、血液改質剤層の血液改質剤がウイング部に浸透して、ウイング部におけるトップシートとバックシートとの間の接合力が弱まることを抑制できる。また、血液改質剤層の血液改質剤がウイング部のトップシートに転写されて、排出口対向領域のトップシートに形成した血液改質剤層の血液改質剤の量が減少することを抑制できる。
(4)トップシートの肌側の面における少なくとも着用者の排泄口に当接する排泄当接域に形成する層は、所定の組成物が塗布された組成物塗布層であれば、血液改質剤層に限定されない。たとえば、トップシートの肌側の面における少なくとも着用者の排泄口に当接する排泄口当接域に、肌荒れを防ぐローションが塗布されたローション塗布層を設けてもよい。
本発明では、血液改質剤が、血液の粘度および表面張力を下げるメカニズムを有するために、体液が、血液改質剤層24によってトップシート2に残存せずに吸収体4へ移動し吸収体4に吸収されることができる。以下の実施例によって、血液改質剤が、血液の粘度および表面張力を下げるメカニズムを有することを確認した。この確認は、樹脂フィルムに比べて体液が残存しやすい不織布を用いて行った。
[例1]
[リウェット率および吸収体移行速度の評価]
[血液改質剤のデータ]
市販の生理用ナプキンを準備した。当該生理用ナプキンは、親水剤で処理されたエアスルー不織布(ポリエステルおよびポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートと、エアスルー不織布(ポリエステルおよびポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:30g/m2)から形成されたセカンドシートと、パルプ(坪量:150〜450g/m2、中央部ほど多い)、アクリル系高吸収ポリマー(坪量:15g/m2)およびコアラップとしてのティッシュを含む吸収体と、撥水剤処理されたサイドシートと、ポリエチレンフィルムから成るバックシートとから形成されていた。
以下に、実験に用いられた血液改質剤を列挙する。
[(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ユニスター H−408BRS,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール,重量平均分子量:約640
・ユニスター H−2408BRS−22,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトールと、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールとの混合物(58:42,重量比),重量平均分子量:約520
[(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・Cetiol SB45DEO,コグニスジャパン株式会社製
脂肪酸が、オレイン酸またはステアリル酸である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・SOY42,日油株式会社製
C14の脂肪酸:C16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ0.2:11:88:0.8の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:880
・トリC2L油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ37:7:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・トリCL油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ44:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・パナセート810s,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約480
・パナセート800,日油株式会社製
脂肪酸が全てオクタン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・パナセート800B,日油株式会社製
脂肪酸が全て2−エチルヘキサン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・NA36,日油株式会社製
C16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ5:92:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・トリヤシ油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸:C14の脂肪酸:C16の脂肪酸(飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ4:8:60:25:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:670
・カプリル酸ジグリセリド,日油株式会社製
脂肪酸がオクタン酸である、グリセリンと脂肪酸とのジエステル,重量平均分子量:340
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・コムポールBL,日油株式会社製
ブチレングリコールのドデカン酸(C12)モノエステル,重量平均分子量:約270
・コムポールBS,日油株式会社製
ブチレングリコールのオクタデカン酸(C18)モノエステル,重量平均分子量:約350
・ユニスター H−208BRS,日油株式会社製
ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール,重量平均分子量:約360
[(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・O−アセチルクエン酸トリブチル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約400
[(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸またはオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・アジピン酸ジオクチル,和光純薬工業製
重量平均分子量:約380
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
・エレクトールWE20,日油株式会社製
ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約360
・エレクトールWE40,日油株式会社製
テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約390
[(e1)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコール]
・ユニオールD−1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,000
・ユニオールD−1200,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,200
・ユニオールD−3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約3,000
・ユニオールD−4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約4,000
・ユニオールPB500,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約500
・ユニオールPB700,日油株式会社製
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール,重量平均分子量:約700
・ユニオールPB1000R,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約1000
[(e2)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ウィルブライトcp9,日油株式会社製
ポリブチレングリコールの両末端のOH基が、ヘキサデカン酸(C16)によりエステル化された化合物,重量平均分子量:約1,150
[(e3)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエーテル]
・ユニルーブMS−70K,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのステアリルエーテル,約15の繰返し単位,重量平均分子量:約1,140
[(e5)ポリオキシC2〜C6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、または鎖状炭化水素ジオールとのエーテル]
・ユニルーブ5TP−300KB
ペンタエリトリトール1モルに、エチレンオキシド5モルと、プロピレンオキシド65モルとを付加させることにより生成した、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル,重量平均分子量:4,130
・ユニオール TG−3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約3,000
・ユニオール TG−4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約4,000
[(f1)鎖状アルカン]
・パールリーム6,日油株式会社製
流動イソパラフィン、イソブテンおよびn-ブテンを共重合し、次いで水素を付加することにより生成された分岐鎖炭化水素、重合度:約5〜約10,重量平均分子量:約330
[その他の材料]
・NA50,日油株式会社製
NA36に水素を付加し、原料である不飽和脂肪酸に由来する二重結合の比率を下げたグリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・(カプリル酸/カプリン酸)モノグリセリド,日油株式会社製
オクタン酸(C8)およびデカン酸(C10)がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのモノエステル,重量平均分子量:約220
・Monomuls 90−L2ラウリン酸モノグリセリド,コグニスジャパン株式会社製
・クエン酸イソプロピル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約230
・リンゴ酸ジイソステアリル
重量平均分子量:約640
・ユニオールD−400,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約400
・PEG1500,日油株式会社製
ポリエチレングリコール,重量平均分子量:約1,500〜約1,600
・ノニオンS−6,日油株式会社製
ポリオキシエチレンモノステアレート、約7の繰返し単位、重量平均分子量:約880
・ウィルブライトs753,日油株式会社製
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレングリセリン,重量平均分子量:約960
・ユニオール TG−330,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約6の繰返し単位,重量平均分子量:約330
・ユニオール TG−1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約1,000
・ユニルーブ DGP−700,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのジグリセリルエーテル,約9の繰返し単位,重量平均分子量:約700
・ユニオックスHC60,日油株式会社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,重量平均分子量:約3,570
・ワセリン,コグニスジャパン株式会社製
石油に由来する炭化水素、半固形
上記試料の、IOB,融点および水溶解度を、下記表2に示す。なお、水溶解度は、上述の方法にしたがって測定したが、100gの脱塩水に、20.0gを添加し、24時間後に溶解した試料は、「20g<」と評価し、そして100gの脱塩水に、0.05gは溶解したが、1.00gは溶解しなかった試料は、0.05〜1.00gと評価した。また、融点に関し、「<45」は、融点が45℃未満であることを意味する。
上記生理用ナプキンのトップシートの肌当接面を、上述の血液改質剤で塗工した。各血液改質剤を、血液改質剤が室温で液体である場合にはそのまま、そして血液改質剤が室温で固体である場合には、融点+20℃まで加熱し、次いで、コントロールシームHMAガンを用いて、各血液改質剤を微粒化し、トップシートの肌当接面の全体に、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布した。
図15は、トップシートがトリC2L油脂肪酸グリセリドを含む生理用ナプキン(No.2−5)における、トップシートの肌当接面の電子顕微鏡写真である。図15から明らかなように、トリC2L油脂肪酸グリセリドは、微粒子状で、繊維の表面に付着している。
上述の手順にしたがって、リウェット率と、吸収体移行速度とを測定した。結果を、下記表2に示す。
[試験方法]
各血液改質剤を含むトップシートの上に、穴の開いたアクリル板(200mm×100mm,125g,中央に、40mm×10mmの穴が開いている)を置き、上記穴から、37±1℃のウマEDTA血(ウマの血液に、凝結防止のため、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」と称する)が添加されたもの)3gを、ピペットを用いて滴下(1回目)し、1分後、37±1℃のウマEDTA血3gを、アクリル板の穴から、ピペットで再度滴下した(2回目)。
2回目の血液の滴下後、直ちに上記アクリル板を外し、血液を滴下した場所に、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙 No.2,50mm×35mm)10枚を置き、その上から、圧力が30g/cm2となるようにおもりを置いた。1分後、上記ろ紙を取出し、以下の式に従って、「リウェット率」を算出した。
リウェット率(%)=100×(試験後のろ紙質量−当初のろ紙質量)/6
また、リウェット率の評価とは別に、2回目の血液の滴下後、血液がトップシートから吸収体に移行する時間である「吸収体移行速度」を測定した。上記吸収体移行速度は、トップシートに血液を投入してから、トップシートの表面及び内部に、血液の赤さが見られなくなるまでの時間を意味する。
リウェット率と、吸収体移行速度の結果を、以下の表2に示す。
次いで、吸収体移行速度の試験後のトップシートの肌当接面の白さを、以下の基準にしたがって、目視で評価した。
◎:血液の赤さがほとんど残っておらず、血液が存在した場所と、存在していない場所の区別がつかない
○:血液の赤さが若干残っているが、血液の存在した場所と、存在していない場所の区別がつきいにくい
△:血液の赤さが若干残っており、血液が存在した場所が分かる
×:血液の赤さがそのまま残っている
結果を、併せて下記表2に示す。
血液改質剤を有しない場合には、リウェット率は22.7%であり、そして吸収体移行速度は60秒超であったが、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いずれも、リウェット率が7.0%以下であり、そして吸収体移行速度が8秒以下であることから、吸収性能が大幅に改善されていることが分かる。しかし、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルのうち、融点が45℃を超えるNA50では、吸収性能に大きな改善はみられなかった。
同様に、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度を有する血液改質剤では、吸収性能が大きく改善されることが分かった。
次に、No.2−1〜2−47の生理用ナプキンを、複数のボランティアの被験者に着用してもらったところ、No.2−1〜2−32の血液改質剤を含む生理用ナプキンでは、経血を吸収した後であってもトップシートにべたつき感がなく、トップシートがサラサラしているとの回答を得た。
また、No.2−1〜No.2−32の生理用ナプキンでは、そして特に、No.2−1〜11,15〜19および32の血液改質剤を含む生理用ナプキンでは、経血を吸収後のトップシートの肌当接面が、血液で赤く染まっておらず、不快感が少ないとの回答を得た。
[例2]
動物の各種血液に関して、上述の手順にしたがって、リウェット率を評価した。実験に用いられた血液は、以下の通りである。
[動物種]
(1)ヒト
(2)ウマ
(3)ヒツジ
[血液種]
・脱繊維血:血液を採取後、ガラスビーズと共に、三角フラスコ内で約5分間撹拌したもの
・EDTA血:静脈血65mLに、12%EDTA・2K生理食塩液0.5mLを添加したもの
[分画]
血清または血漿:それぞれ、脱繊維血またはEDTA血を、室温下で、約1900Gで10分間遠心分離した後の上清
血球:血液から血清を除去し、残差をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、次いで除去した血清分のリン酸緩衝生理食塩液を加えたもの
トリC2L油脂肪酸グリセリドが、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布されている以外は、例2と同様にして吸収性物品を製造し、上述の各種血液に関して、リウェット率を評価した。各血液に関して測定を3回行い、その平均値を採用した。
結果を、下記表3に示す。
例2で得られた、ウマEDTA血と同様の傾向が、ヒトおよびヒツジの血液でも得られた。また、脱繊維血およびEDTA血においても、同様の傾向が観察された。
[例3]
[血液保持性の評価]
血液改質剤を含むトップシートと、血液改質剤を含まないトップシートとにおける血液保持性を評価した。
[試験方法]
(1)エアスルー不織布(ポリエステルおよびポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートの肌当接面に、トリC2L油脂肪酸グリセリドを、コントロールシームHMAガンを用いて微粒化し、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布する。また、比較のため、トリC2L油脂肪酸グリセリドを塗布していないものも準備する。次いで、トリC2L油脂肪酸グリセリドが塗布されているトップシートと、塗布されていないトップシートとの両方を、0.2gの大きさにカットし、セルストレイナー+トップシートの質量(a)を正確に測定する。
(2)ウマEDTA血約2mLを、肌当接面側から添加し、1分間静置する。
(3)セルストレイナーを、遠心管にセットし、スピンダウンして、余剰のウマEDTA血を取り除く。
(4)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(b)を測定する。
(5)下式にしたがって、トップシート1g当たりの当初吸収量(g)を算出する。
当初吸収量=[重量(b)−重量(a)]/0.2
(6)セルストレイナーを、遠心管に再セットし、室温下、約1200Gで1分間遠心分離する。
(7)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(c)を測定する。
(8)下式にしたがって、トップシート1g当たりの試験後吸収量(g)を算出する。
試験後吸収量=[重量(c)−重量(a)]/0.2
(9)下式にしたがって血液保持率(%)を算出した。
血液保持率(%)=100×試験後吸収量/当初吸収量
なお、測定は3回行い、その平均値を採用した。結果を、下記表4に示す。
血液改質剤を含むトップシートは、血液保持性が低く、血液を吸収後、迅速に吸収体に移行させることができることが示唆される。
[例4]
[血液改質剤を含む血液の粘性]
血液改質剤を含む血液の粘性を、Rheometric Expansion System ARES(Rheometric Scientific,Inc)を用いて測定した。ウマ脱繊維血に、パナセート810sを2質量%添加し、軽く撹拌して試料を形成し、直径50mmのパラレルプレートに試料を載せ、ギャップを100μmとし、37±0.5℃で粘度を測定した。パラレルプレートゆえ、試料に均一なせん断速度はかかっていないが、機器に表示された平均せん断速度は、10s-1であった。
パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血の粘度は、5.9mPa・sであり、一方、血液改質剤を含まないウマ脱繊維血の粘度は、50.4mPa・sであった。したがって、パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血は、血液改質剤を含まない場合と比較して、約90%粘度を下げることが分かる。血液は、血球等の成分を含み、チキソトロピーの性質を有することが知られているが、本開示の血液改質剤は、低粘度域で、血液の粘度を下げることができると考えられる。血液の粘度を下げることにより、吸収した経血を、トップシートから吸収体に速やかに移行させることができると考えられる。
[例5]
[血液改質剤を含む血液の顕微鏡写真]
健常ボランティアの経血をサランラップ(商標)上に採取し、その一部に、10倍の質量のリン酸緩衝生理食塩水中に分散されたパナセート810sを、パナセート810sの濃度が1質量%となるように添加した。経血を、スライドグラスに適下し、カバーグラスをかけ、光学顕微鏡にて、赤血球の状態を観察した。血液改質剤を含まない経血の顕微鏡写真を図16(a)に、そしてパナセート810sを含む経血の顕微鏡写真を図16(b)に示す。
図16から、血液改質剤を含まない経血では、赤血球が連銭等の集合塊を形成しているが、パナセート810sを含む経血では、赤血球が、それぞれ、安定に分散していることが分かる。したがって、血液改質剤は、血液の中で、赤血球を安定化させる働きをしていることが示唆される。
[例6]
[血液改質剤を含む血液の表面張力]
血液改質剤を含む血液の表面張力を、協和界面科学社製接触角計 Drop Master500を用い、ペンダントドロップ法にて測定した。表面張力は、ヒツジ脱繊維血に、所定の量の血液改質剤を添加し、十分振とうした後に測定した。測定は、機器が自動で行うが、表面張力γは、以下の式により求められる(図17を参照)。
γ=g×ρ×(de)2×1/H
g:重力定数
1/H:ds/deから求められる補正項
ρ:密度
de:最大直径
ds:滴下端よりdeだけ上がった位置での径
密度ρは、JIS K 2249−1995の「密度試験方法および密度・質量・容量換算表」の5.振動式密度試験方法に準拠し、下記表5に示される温度で測定した。測定には、京都電子工業株式会社のDA−505を用いた。結果を、表5に示す。
表5から、血液改質剤は、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度を有することからも明らかなように、水への溶解性が非常に低いが、血液の表面張力を下げることができることが分かる。血液の表面張力を下げることにより、吸収した血液をトップシートの繊維間に保持せず、速やかに吸収体に移行させることができると考えられる。
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることは可能である。変形例同士を組み合わせることも可能である。
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。