JP5761146B2 - 鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法 - Google Patents

鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法 Download PDF

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Description

この発明は、鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法に関し、詳しくは、鉄鋼スラグに含まれるカルシウム化合物の水への溶出を抑制して、溶出水のpHが上昇するのを防止する土木建設材料の処理方法に関する。
製鉄所での製鉄過程や精錬過程において発生するスラグは鉄鋼スラグと呼ばれ、高炉から発生する高炉スラグと、精錬過程で生成する製鋼スラグとがある。また、製鋼スラグはそれぞれ発生する精錬工程により分類でき、予備処理スラグや転炉スラグ、二次精錬スラグ、電気炉還元スラグ、電気炉酸化スラグ等がある。このような鉄鋼スラグは、路盤材、舗装材、土壌改良材、地盤改良材、盛土材、セメントやコンクリートの骨材をはじめ、河川や海域での埋め戻し材、干潟や浅場造成用のマウンド材、肥料用途など、道路・土工・港湾工事や環境改善用途を含めた様々な分野で利用されている(これらの用途をまとめて土木建設材料と呼ぶ)。
ところが、鉄鋼スラグは成分としてCaOを多量に含んでおり、また、Ca(OH)2やCaO、Ca2SiO4、CaCO3などのCaを主成分とする鉱物を含有する。これらのカルシウム化合物は水と接触すると溶解し、接触した水(溶出水)はpHが11〜13程度に上昇してしまう。そのため、鉄鋼スラグを利用した土木建設材料は、例えば、降雨によって高pHの溶出水を周辺環境に流出させてしまうといった問題がある。
そこで、鉄鋼スラグに接触した水のpH上昇を抑制する手段として、アルミナやシリカを含有した物質を混ぜる方法や、CO2のような酸による中和処理等が行われている。
例えば、潜在水硬性を有するシリカ含有物質やポゾラン反応性を有するシリカ含有物質と製鋼スラグとを混合することで、表面積の小さい塊状にして水との接触を少なくすると共に、固化時のポゾラン反応によってカルシウム化合物を消費してpHを抑える手段が知られている(特許文献1参照)。
一方の酸による中和処理について、例えば、製鋼スラグに自由水が存在し始める水分値未満であって、かつ、その水分値よりも10質量%少ない値以上の水分量に調整した後、炭酸ガスを含有して相対湿度が75〜100%のガスを流して炭酸化する方法(特許文献2参照)や、炭酸を含有してpHが3.5〜5.4に調整された自由水にエージング処理したスラグを浸漬して、炭酸化する方法(特許文献3参照)が知られている。これらの方法によれば、スラグに含まれるCaOやCa(OH)2等をCO2と反応させて、難溶性のCaCO3にすることが可能である。
ところで、鉄鋼スラグには肥料成分である石灰、ケイ酸、苦土(酸化マグネシウム)が含まれるため、土木建設材料としての利用以外に、肥料としての用途があり、鉄鋼スラグに含まれるアルカリ分の作用によって土壌の酸性を改善することができる。但し、製鋼スラグ中にはフッ素を含有する場合があり、これを除去することが必要となる。そこで、製鋼スラグに石膏(主成分はCaSO4)、硫化カルシウム(CaS)、塩化カルシウム(CaCl2)等の非酸化物系カルシウム化合物とフライアッシュ(主成分はSiO2、Al2O3)とを所定の割合で混合することで、製鋼スラグからのフッ素溶出を防止する方法が知られている(特許文献4参照)。
これは、製鋼プロセス中に使用される脱燐剤や脱硫剤に含まれる蛍石(主成分はCaF2)に起因したフッ素が製鋼スラグから溶出すると、土壌環境基準(環境庁告示第46号試験においてフッ素溶出量が0.8mg/L以下)を超える可能性があることから、それを抑制する技術に関する。すなわち、特許文献4記載の発明は、フッ素の溶出挙動は溶出試験時のpHに大きく支配されることから、非酸化物系カルシウム化合物の共通イオン効果によってスラグから水中へのカルシウムイオン(Ca2+)の溶解を抑制すると共に、フライアッシュに含まれるSiO2とAl23との水中でのH+イオンの放出を伴う反応によってpHを低下させ、かつ、形成されるフッ素固定物質であるCaO−SiO2−H2O及びCaO−Al23−H2O化合物により、フッ素の溶出を抑えるようにするものである。
特開2003−34562号公報 特開2005−97076号公報 特開2010−13315号公報 特開2009−67646号公報
しかしながら、特許文献1記載の発明においては、スラグの固化を前提とする処理のため、路盤材等のように粒度分布が規定されている土木建設材料に対しては適用し難い。また、ポゾラン反応で生成する鉱物のなかにはpHが11程度を呈するものが含まれ、根本的な解決手段にならない。また、特許文献2、3記載の発明においては、いずれも専用の設備を構える必要があるほか、これらの処理ではスラグの粒子内部まで完全に中和させることが難しく、土木建設材料として路盤等を形成した場合、長期に亘って使用するうちに雨水に晒されたり、水域環境下で使用されるなどして、残存したカルシウム化合物が徐々に溶け出し、高いpHの溶出水を発生させてしまうおそれがあった。更には、特許文献4記載の発明においては、非酸化物系カルシウム化合物とフライアッシュの両方が必須であり、この場合にもポゾラン反応が起きて固化し易いため、処理後の製鋼スラグを所定の粒度分布が必要とされる土木建設材料に利用するのは難しいという問題があった。
上述したように、鉄鋼スラグを土木建設材料として利用するには、カルシウム化合物の水への溶解に起因するpH上昇を防がなければならない。しかしながら、従来の方法では、専用の処理設備を必要とするほか、長期に亘ってpHの上昇を十分に抑制するのが困難である。また、盛土や路盤、埋め戻し等の土木建築施設体を形成する上では良好な締固め性能が求められるところ、粒度分布を有した製鋼スラグを塊状にしてしまうような処理であると破砕等の別処理が必要になったり、固化を伴うことから長期安定して土木建設材料を保管するのが難しいという問題がある。
そこで、本発明者らは、鉄鋼スラグを利用した土木建設材料から高pHの溶出水が発生するのを確実に、かつ、簡便に防止することができる処理方法について鋭意検討した結果、塩化カルシウムを含んだ添加剤を土木建設材料に添加することで、カルシウム化合物の水への溶出を確実に抑制することができると共に、簡便かつ低コストで処理することができることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、土木建設材料からの高pH溶出水の発生を長期に亘って抑制することができ、しかも、工業的に即した方法で処理することができる土木建設材料の処理方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)鉄鋼スラグを利用した土木建設材料からカルシウム化合物が水に溶け出して、溶出水のpHが上昇するのを抑制する土木建設材料の処理方法であって、塩化カルシウムを含んだ添加剤を土木建設材料に添加して、カルシウム化合物の溶出を抑制することを特徴とする鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
(2)土木建設材料から形成した施工体に対して、粉状の添加剤を撒布するか、又は液状の添加剤を撒水することを特徴とする(1)に記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
(3)硫酸カルシウムを更に含んだ添加剤を用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
(4)土木建設材料に用いる鉄鋼スラグが、当該スラグに質量比で10倍量の水を加えて24時間撹拌した後のpHが11.5以下のものであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
(5)鉄鋼スラグが、所定の粒径領域を有するものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
(6)土木建設材料から形成した施工体が、路盤、路床、覆土、盛土、舗装、埋め戻し、又は仮設路盤である(1)〜(5)のいずれかに記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
本発明によれば、土木建設材料に利用される鉄鋼スラグに含まれたカルシウム化合物の水への溶出を確実に抑制することができることから、周辺環境への高pH溶出水の流出を長期に亘って防止することができる。しかも、土木建設材料を処理するにあたって特に専用の設備を構築する必要性もなく、低コストで簡便に行うことができ、工業的に有利に土木建設材料を処理することができる。
図1は、製鋼スラグ、及び各種カルシウム化合物に対して、それぞれ所定量のCaCl2を添加して蒸留水で溶出した際のpHの変化を示すグラフである。 図2は、初期溶出pHの異なる5種類の製鋼スラグに対してCaCl2を添加した時のpHの変化を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
鉄鋼スラグに含まれるカルシウム化合物のうち、水に溶けて溶出水のpHを上昇させる原因になる可能性のあるものとして、代表的にはCa(OH)2、Ca2SiO4、CaSiO3、CaCO3等が挙げられる。これらは下記に示した反応式により水に溶解すると考えられる。
Ca(OH)2 ⇔ Ca2+ + 2OH-
Ca2SiO4 + 3H2O ⇔ 2Ca2+ + H3SiO4 - + 3OH-
CaSiO3 + 2H2O ⇔ Ca2+ + H3SiO4 - + OH-
CaCO3 + H2O ⇔ Ca2+ + HCO3 - + OH-
そこで、本発明においては、鉄鋼スラグを利用した土木建設材料からカルシウム化合物が水に溶け出して、溶出水のpHが上昇するのを防ぐために、塩化カルシウムを含んだ添加剤を土木建設材料に添加する。すなわち、鉄鋼スラグを利用した土木建設材料に対して、カルシウムイオン(Ca2+)を放出する添加剤を外界から加えることで、共通イオン効果によって、先に記した鉄鋼スラグに含まれるカルシウム化合物の水への溶解反応が、カルシウムイオン濃度を減少させる方向に系全体の平衡が移動し、それらのカルシウム化合物の水への溶解を抑制することができる。
ここで、上記のような共通イオン効果を発現させる物質としては、それ自体がOH-を放出せず、かつ、中性であるのが望ましい。具体的には、塩化カルシウム(CaCl2)以外にも、特許文献4に挙げられるような石膏(主成分はCaSO4)や硫化カルシウム(CaS)等についても選択肢としては含み得る。ところが、表1に示したように、CaSO4やCaSは、CaCl2に比べて水(純水)への溶解度が低い。また、一般的には、溶出を抑制する対象である、鉄鋼スラグに含まれたカルシウム化合物よりも共通イオン効果を発現させる物質の方が高い溶解度を示すほど、溶出水のpH上昇を防ぐ効果に優れると考えられる。そこで、鉄鋼スラグに対して、CaSO4、CaS、CaCl2をそれぞれ適用した試験を行ったところ、CaSO4又はCaSだけでは、溶出水のpH抑制効果は低く、本発明の課題は解決できないことが判った。すなわち、上記特許文献4において、具体的に実施例で開示されている非酸化物系カルシウム化合物である石膏を取り上げ、当該石膏(硫酸カルシウム)を含んだ添加剤を使用した場合には、鉄鋼スラグを利用した土木建設材料から高pHの溶出水が発生するのを確実に防止することは困難である。そのため、本発明においては、塩化カルシウムを含んだ添加剤を土木建設材料に添加して、溶出水のpH上昇を防ぐようにする。
Figure 0005761146
ここで、鉄鋼スラグ(製鋼スラグ)、Ca(OH)2、CaSiO3、CaCO3に対して、それぞれCaCl2を所定量添加し、質量比で10倍の蒸留水で24時間溶出した際のpHの変化を図1に示す。この図1によれば、CaCl2の添加量が多くなるにつれて、いずれのカルシウム化合物でも溶出水のpHが低減していくことが分かる。なかでも、溶解度が低く、初期pHが低くいものほど、少量のCaCl2添加量でより大きなpH低減効果が得られている。
塩化カルシウムを含んだ添加剤を土木建設材料に添加するにあたっては、土木建設材料を用いて路盤、盛土、舗装等を形成するのに先駆けて、土木建設材料に添加剤を加えるようにしてもよく、施工体を形成した後に添加するようにしてもよい。周辺環境への高pH溶出水の流出を防ぐ観点から、好適には、路盤等の施工を行う直前に添加剤を添加するのがよく、或いは、土木建設材料から形成した路盤、盛土、舗装等の施工体に対して、添加剤を添加するようにするのがよい。施工体を形成する前に添加剤を加える場合には、例えば、ミキサーや重機等を用いて添加剤を添加するようにしたり、土木建設材料に利用する鉄鋼スラグを所定の粒径に破砕する破砕ライン等に添加剤を加えるなどの方法がある。
一方で、高pH溶出水の発生が問題となるのは、その多くが土木建設材料を用いて所定の工事を終えた後である。そのため、施工体を形成した後に、粉状の塩化カルシウムを用いて、それを添加剤として施工体の表面に撒布(散布)したり、塩化カルシウムの水溶液や塩化カルシウムを分散させたスラリー等のような液状の添加剤を施工体の表面に撒水(散水)することで、雨水に晒されたりするなどして施工体に水が浸み込んだ際に共通イオン効果が発現されて、鉄鋼スラグに含まれたカルシウム化合物の水への溶出を抑制することができる。その際、好適には、施工体の表面を粉状の添加剤で被覆するように撒布したり、液状の添加剤を施工体の表面に満遍なく均一に撒水するのがよく、或いは、添加剤の添加を定期的に繰り返すようにしてもよい。なお、粉状の添加剤や液状の添加剤の撒布・撒水には、手動によるほか公知の散水車等を用いて行うことができる。
また、本発明においては、塩化カルシウムに加えて硫酸カルシウムを更に含んだ添加剤を用いるようにしてもよい。先の表1に示したとおり、硫酸カルシウムは塩化カルシウムに比べて水への溶解度が低いが、塩化カルシウムと共に使用して溶解度の異なる物質を添加剤に含めておくことで、共通イオン効果の発現時期を相互に補完して、高pH溶出水の抑制効果を更に延長させることができる。この硫酸カルシウムは、市販の試薬を用いることができるほか、硫酸カルシウムを主成分として含む石膏を用いることができ、資源の再利用の観点から、石膏ボードを破砕したものを利用するようにしてもよい。また、硫酸カルシウムは、塩化カルシウムの場合と同様、粉状又は液状にして土木建設材料に添加することができる。その際、塩化カルシウムと混合して使用してもよく、それぞれ個別に土木建設材料に添加するようにしてもよい。
土木建設材料に対する添加剤の添加量について、添加剤中のCaCl2濃度が100〜1000mmol/L程度であると、溶出水のpHを約1〜2低減できることになる。一般に、鉄鋼スラグの保水量(間隙水量)は10質量%程度であり、鉄鋼スラグ質量に対して外掛けで0.2〜1.5%以上のCaCl2が存在すれば、少なくともこの間隙水のpHを低減することができ、また、この間隙水に対する飽和濃度を想定すると、CaCl2は鉄鋼スラグ質量に対して外掛けで8%程度になる。これらの量的関係をひとつの目安にして、土木建設材料に対する添加剤の添加量を決めることができるが、実際には、土木建設材料による施工体の種類、形状、周辺環境等の影響や、添加剤に更にCaSO4を含める場合を考慮する必要があるほか、高pH溶出水の抑制効果を発現させる時期や期間等の設計もあるため、一概に特定するのは難しい。そのため、使用する土木建設材料によって供試体を作製し、想定される施工体の使用態様を模した溶出試験を事前に行うようにするなどして、添加剤の添加量を決定するようにしてもよい。
また、先に述べたように、土木建設材料に利用する鉄鋼スラグの初期pHによって、添加剤のpH低減効果は変化する。そこで、鉄鋼スラグの10倍量(質量比)の純水で24時間撹拌した後の溶出水のpHを測定して、初期溶出pHの異なる5種類の鉄鋼スラグ(製鋼スラグ)を用意し、CaCl2を添加した時のpHの変化を調べた結果を図2に示す。ここでは、5種類の鉄鋼スラグに対して、十分pH低減効果を発揮するよう、それぞれ外掛けの質量割合で3%の試薬のCaCl2粉末を加えてミキサーで混合したものと、CaCl2を加えなかったものとを準備し、直径5cmのカラムに20cmの高さとなるように装入して、降雨を模擬した1Lの水をそれぞれのカラムに通して浸出水(溶出水)のpHを測定した。
図2から分かるように、CaCl2を添加したものは未添加の場合に比べて、いずれも浸出水のpHが低減した。特に、鉄鋼スラグの初期溶出pHが11.4、11.1、10.5の場合では、CaCl2の添加によるpH低減効果が大きいことが分かる。これは、鉄鋼スラグに含まれるカルシウム化合物のうち、溶解度が比較的低いものほど添加剤による共通イオン効果が大きいためであり、CaOやCa(OH)2等のカルシウム化合物が少ない鉄鋼スラグであれば、CaCl2による共通イオン効果が大きくなると考えられる。すなわち、これらの結果より、土木建設材料に用いる鉄鋼スラグが、質量比で10倍量の水で24時間撹拌した後のpHが11.5以下のものであれば、本発明による高pH溶出水の抑制効果がより顕著になると言える。
本発明による高pH溶出水の抑制効果がより顕著になると考えられる鉄鋼スラグとしては、例えば、CO2と反応させて中和処理を行った炭酸化スラグのほか、CaO/SiO2が1.5以下であるような低塩基度スラグや、CaO/SiO2が1.5以下となるように成分調整を行った改質スラグ等が挙げられる。例えば、炭酸化スラグから溶出するカルシウム化合物は、主にCaSiO3、Ca2SiO4、Ca2Fe25、CaCO3であり、これらはいずれも水への溶解度が低いため、CaCl2によるpH低減効果がより顕著に現れる。また、土木建設材料に用いる鉄鋼スラグが、質量比で10倍量の水で24時間撹拌した後のpHが11.5超であった場合は、炭酸化処理等を行って、当該pHが11.5以下になるように調整した後、本発明を適用することが好ましい。
土木建設材料に利用される鉄鋼スラグとしては、高炉スラグ、製鋼スラグ、予備処理スラグや転炉スラグ、二次精錬スラグ、電気炉還元スラグ、電気炉酸化スラグ等が挙げられる。なかでも、土木建設材料に利用される鉄鋼スラグでは、それぞれの用途で粒径領域が定められているため、それに見合って調整された粒径領域を有する鉄鋼スラグをそのまま使用することができる。例えば、鉄鋼スラグをアスファルト混合物の骨材や路盤材として利用する場合には、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」の規格が定められていることから、所定の粒度分布を有した鉄鋼スラグを用いるようにする。実用的には、JIS Z 8801に規定する網ふるいの呼び寸法で粒径の異なる鉄鋼スラグを調整したもの(HMS-25,MS-25,CS-40,CS-30,CS-20等の呼び名の鉄鋼スラグ)を用いるのがよい。また、護岸の裏込め、軟弱地盤対策用の覆土、路床、盛土等の土工用には、例えば、粒度4.75mm以下の土工用水砕スラグや、建材試験センター規格(JSTM H8001)で定められた土工用製鋼スラグが用いられる。これら以外にも、例えば、製鋼スラグと高炉スラグ微粉末等を練り混ぜてなる港湾工事用の人工石材においても、埋立材や裏込め石等の用途に応じて粒度範囲が定められている。
すなわち、本発明では、鉄鋼スラグを利用した土木建設材料を従来技術にあるように固化させることを必要としないため、施工体を形成する前に添加剤を加えたとしても、別途破砕処理が必要になるようなことはない。また、施工体を形成した後に添加剤を添加しても、施工体の機能を損ねてしまうようなこともない。そのため、本発明の処理方法は、土木建設材料の用途が特に制限されるものではないが、所定の粒径領域を有することを必要とするような用途、例えば、路盤、路床、覆土、盛土、舗装、埋め戻し、仮設路盤等のような施工体を形成する土木建設材料からの高pH溶出水の発生を防止する方法として好適である。
また、鉄鋼スラグのうち、製鋼スラグは、通常、数か月大気中に暴露する大気エージングや、水蒸気に数日暴露する蒸気エージングといった前処理が行われる場合があるが、これは製鋼スラグに含まれた遊離CaOによる膨張を抑制するためである。そのため、製鋼スラグを利用した土木建設材料が、膨張性による問題が予想されるような施工体に使用される場合には、エージング処理を行うようにすればよい。その際のエージング処理は、添加剤を添加する前でもよく、添加剤を添加した後でも構わないが、添加した添加剤の流出を避けることなどを考慮すると、添加剤を添加する前に行うのが望ましい。なお、製鋼スラグのエージング処理は、遊離CaOがH2Oと反応しCa(OH)2を生成する反応であるため、本発明における添加剤による溶出水のpHの低減効果に特段の影響を与えることはない。
以下、本発明の土木建設材料料の処理方法について、実験例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、下記実験例の内容に制限されるものではない。
(実験例1)
JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」の規格に定められた粒度範囲が0−30mmの製鋼スラグAと、同じく粒度範囲が0−30mmであって、かつ、炭酸化処理が施された製鋼スラグBとを用意した。この炭酸化処理については、特許文献1(特開2005-97076号公報)に記載された方法に基づき、炭酸ガスを含有する相対湿度が75〜100%の範囲のガスを流して炭酸化を行う方法であって、CO2濃度100%を相対湿度100%に加水したガスを500gの製鋼スラグに対して24時間フローして処理を行った後、110℃恒温槽で24時間乾燥させたものである。また、試薬の塩化カルシウム(CaCl2・2H2O;関東化学株式会社製、特級)と、石膏ボードを0.425mm以下に粉砕したもの(主成分はCaSO4)とを用意した。
そして、製鋼スラグAを単独で直径5cmのカラムに20cmの高さとなるように装入した場合(No.1-1)、製鋼スラグAに対して質量割合で3%のCaCl2を加えてミキサーで混合したもの同様にカラムに装入した場合(No.1-2)、製鋼スラグAに対して、それぞれ質量割合で3%のCaCl2と2%の石膏とを加えてミキサーで混合したもの同様にカラムに装入した場合(No.1-3)、製鋼スラグAに対して質量割合で2%の石膏を加えてミキサーで混合したもの同様にカラムに装入した場合(No.1-4)、製鋼スラグBを単独で同様にカラムに装入した場合(No.1-5)、製鋼スラグBに対して質量割合で3%のCaCl2を加えてミキサーで混合したもの同様にカラムに装入した場合(No.1-6)、及び、製鋼スラグBに対して、それぞれ質量割合で3%のCaCl2と2%の石膏とを加えてミキサーで混合したもの同様にカラムに装入した場合(No.1-7)について、以下のようにして自然環境を模した通水試験を行い、溶出水のpHを測定した。すなわち、自然環境では乾燥と降雨が繰り返されることから、それぞれのカラムに50mmの水を通水して室温下で1日乾燥させるようにし、カラムに対する合計通水量が1600mm(1年間の平均降水量に相当)になるまで通水と乾燥を繰り返し、通水開始直後に得られた溶出水のpHと、合計通水量が1600mmになったところでの溶出水のpHを測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005761146
表2に示した合計通水量1600mm時の溶出水のpHを比較して分かるように、製鋼スラグA単独の場合(No.1-1)のpHに対して、塩化カルシウムを加えた場合(No.1-2)や塩化カルシウムと石膏とを加えた場合(No.1-3)には、いずれも溶出水のpHが低減した。なかでも、No.1−3の方が、pH低減効果が高いことが分かる。これは、CaSO4はCaCl2よりも水への溶解度が低く、pH低減効果はCaCl2に比べて劣るが(No.1-4を参照)、溶解度が低いために雨で流されにくく、CaCl2と併用することでより長期間のpH低減効果が得られたと考えられる。一方の製鋼スラグBに対する試験結果についても上記と同様のpH低減効果が確認された。
(実験例2)
実験例1と同様の製鋼スラグBと、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」の規格に定められた粒度範囲が0−30mmであって、かつ、蒸気エージング処理が施されている製鋼スラグCとを用意し、製鋼スラグ1トン当たり50kgの塩化カルシウムが200Lの水に溶解して存在するように、それぞれの製鋼スラグB、Cに対して塩化カルシウム水溶液を加えてミキサーで混合した。次いで、これらの混合物をランマーを用いて転圧して、それぞれ縦10m×横8m×高さ2mの試験用盛土を施工した(No.2-2、No.2-4)。また、比較対象とするため、塩化カルシウム水溶液を添加せずに、製鋼スラグB、Cをそれぞれ単独で用いて同様の試験用盛土を形成した(No.2-1、No.2-3)。
次いで、各試験用盛土の下方に塩化ビニル製のパイプを中心まで差し込み水路を設けて、盛土の上方から、その表面に対して約10トンの水を満遍なく浸透させて、水路から採取した浸透水(溶出水)のpHを測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005761146
表3に示した結果から分かるように、CaCl2を添加していない盛土からの浸透水のpHは、蒸気エージング処理を施した製鋼スラグCを用いた場合がpH=12.3であり、炭酸化処理を施した製鋼スラグBを用いた場合がpH=9.6であったのに対し、CaCl2を添加した盛土の場合には、それぞれpH=10.9、pH=8.1まで低下し、浸透水のpH低減効果が確認された。
(実験例3)
実験例2と同様の蒸気エージング処理が施された製鋼スラグCを用い、縦2m×横2m×高さ30cmの仮設路盤を2つ施工した。そして、一方の仮設路盤の表面に対しては、塩化カルシウムと破砕した石膏ボードとを質量比で塩化カルシウム:石膏ボード=2:1となる割合で混合した添加剤を撒布し、表層部分に厚さ約5cmの添加剤被覆層を形成した。
次いで、仮設路盤の上方から、その表面に対して約200Lの水を満遍なく浸透させ、仮設路盤の下方側面に沿って形成したそれぞれの側溝へ流れ込む浸透水(溶出水)のpHを測定した。その結果、添加剤を添加しない仮設路盤の場合がpH=11.9であったに対し、添加剤被覆層を形成した仮設路盤の場合はpH=9.4であり、浸透水のpH低減効果が確認された。
(実験例4)
実験例1と同様の炭酸化処理が施された製鋼スラグBを用いて、実験例3と同様にして仮設路盤を2つ形成した。そして、一方の仮設路盤の表面に対しては、水1Lに対して塩化カルシウムを500g溶解させた塩化カルシウム水溶液を用いて、仮設路盤の上方からその表面に対して1m2当たり1L程度の割合で撒水した。そして、実験例3と同様にして仮設路盤に浸透させた浸透水を採取してpHを測定したところ、塩化カルシウム水溶液を撒水していない仮設路盤の場合がpH=9.3であったに対し、塩化カルシウム水溶液を撒水した仮設路盤の場合はpH=8.3であり、浸透水のpH低減効果が確認された。

Claims (6)

  1. 鉄鋼スラグを利用した土木建設材料からカルシウム化合物が水に溶け出して、溶出水のpHが上昇するのを抑制する土木建設材料の処理方法であって、塩化カルシウムを含んだ添加剤を土木建設材料に添加して、カルシウム化合物の溶出を抑制することを特徴とする鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
  2. 土木建設材料から形成した施工体に対して、粉状の添加剤を撒布するか、又は液状の添加剤を撒水することを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
  3. 硫酸カルシウムを更に含んだ添加剤を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
  4. 土木建設材料に用いる鉄鋼スラグが、当該スラグに質量比で10倍量の水を加えて24時間撹拌した後のpHが11.5以下のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
  5. 鉄鋼スラグが、所定の粒径領域を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
  6. 土木建設材料から形成した施工体が、路盤、路床、覆土、盛土、舗装、埋め戻し、又は仮設路盤である請求項1〜5のいずれかに記載の鉄鋼スラグを利用した土木建設材料の処理方法。
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