このようなインクジェット方式の三次元造型機では、精度の良い造形を行うために、各層の形成において高さ方向にマージンをもってモデル材やサポート材等の造形材料を吐出する。そして樹脂の吐出後には、ノズルから吐出された樹脂の余剰分を、余剰樹脂回収機構で回収しながら造形を行う。このような余剰樹脂回収機構には、ローラ部25が用いられる。図24に、ローラ部25で造形材の余剰分を除去する状態の斜視図を示す。この例では、造形プレート40上に吐出された樹脂の表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図24において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。また吸引パイプ29は廃液経路に接続されており、ポンプ等を用いてバス28に溜まった造形材を吸引して、廃液タンク(図示せず)に溜める。
このような余剰樹脂回収機構を用いたインクジェット方式の三次元造形機では、造形物を安定して作るためには、これらの部品を一定期間毎に表面状態を確認したり清掃する等のメンテナンス作業が必要である。従来の構成では、これら部品の装着はネジの締結によって行われていたため、脱着作業は容易ではなく、ネジの脱落や締め忘れ、繰り返しの使用による欠損等を生じるおそれがあった。
また、上述の通り造形のために余分に吐出された液体状の樹脂を回収するために、ローラ本体26表面に付着した樹脂をブレード27で掻き取って、掻き取られた樹脂を受け皿となるバス28に集めている。ここで、ブレード27で掻き取られた樹脂中に硬化した樹脂が混入していると、吸引パイプ29で回収できずにバス28中に残ることがある。このような残留樹脂が増えると、バス28に蓄えることのできる樹脂量が低減し、樹脂があふれる可能性もある。このようなことから、バス28を定期的に清掃する必要が生じる。このとき、バスの清掃作業を簡素化するため、バスを着脱式とすることが考えられる。
一方で、バスの内部には、バスに蓄えられた液体状の回収樹脂を吸引するための吸引パイプ29の先端が延長されている。このため、バス28の着脱の際には、図25に示すように、吸引パイプ29を一旦上昇させる、すなわち吸引パイプ29を、実線で示す吸引位置から破線で示す待機位置まで移動させる必要がある。この場合において、ユーザがバス28を清掃するために吸引パイプ29を待機位置に移動後、バスを洗浄し再度装着した際、不注意により吸引パイプ29を吸引位置に戻すことを忘れることがある。この状態では、バス28に蓄えられた回収樹脂を吸引パイプ29で吸引することができなくなり、バス28の容量を超えた回収樹脂があふれ出してしまい、装置や造形物に付着するなどのトラブルを生じることがあった。
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、樹脂余剰分の回収を行うバスの着脱時におけるトラブルを回避可能とした三次元造形装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記造形材を吐出するための造形材吐出手段と、回転自在に支承され、前記造形材が流動可能な状態でこれを上面から回転しながら押圧して、該造形材の余剰分を掻き取るためのローラ部25と、前記造形材吐出手段及びローラ部25を支承するヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出を制御する制御手段10と、前記ローラ部25で回収した余剰分の造形材を蓄える、取り外し自在のバス28と、前記バス28に蓄えられた余剰造形材を吸い出すための吸引パイプ29であって、前記バス28を装着した状態で、余剰造形材の吸引を可能とする位置に近接させた吸引位置と、前記バス28を取り外すために離間させた待避位置とに移動可能とした吸引パイプ29と、前記吸引パイプ29の位置が吸引位置か待避位置かに応じて、前記吸引パイプ29を吸引位置にした状態で、造形材の吐出を許容する一方、前記吸引パイプ29を待避位置にした状態では、造形材の吐出を阻害するよう構成された動作阻害機構とを備えることができる。これにより、吸引パイプが吸引位置にないと造形材が吐出されないように構成することで、吸引パイプで余剰樹脂を吸引できない状態で造形材を吐出させてしまう誤動作を防止できる。
また第2の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記ローラ部25、バス28及び吸引パイプ29を装着した装着プレート37と、前記装着プレート37の少なくとも一部を開放させて、前記バス28の取り外しのためのアクセスを可能とするための開閉自在な開閉カバー38とを備えており、前記動作阻害機構が、前記吸引パイプ29を吸引位置又は待避位置に移動させるための切替レバー34を含み、前記切替レバー34を吸引位置にした状態では、前記開閉カバー38を前記装着プレート37に閉塞可能とすると共に、前記切替レバー34を待避位置にした状態では、前記開閉カバー38を前記装着プレート37に閉塞しようとすると前記切替レバー34が前記開閉カバー38と抵触して閉塞を妨げ、前記開閉カバー38が装着プレート37に閉塞されないと造形材の吐出が行われないように構成できる。これにより、切替レバーが待避位置にある状態で造形材を吐出してしまう事態を物理的に回避して、吸引パイプで余剰樹脂を吸引できない状態で動作させてしまうミスを防止できる。
さらに第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吸引パイプ29は、前記切替レバー34によって上下移動可能に構成されてなり、上位置が待避位置、下位置が吸引位置に設定され、前記切替レバー34は、上方に移動させると、前記吸引パイプ29が待避位置に、下方に移動させると前記吸引パイプ29が吸引位置に、それぞれ切り替え可能に構成できる。これにより、切替レバーが上方にあるとき、吸引パイプも上方の待避位置にあり、切替レバーが下方にあるとき、吸引パイプも下位置の吸引位置にあるため、ユーザは視覚的に吸引パイプの現在位置を把握でき、誤動作を回避しやすくできる利点が得られる。
さらにまた実施の形態に係る三次元造形装置によれば、前記切替レバー34は、前記吸引パイプ29をリンク機構35によって上下動可能に構成できる。これにより、切替レバーによる吸引パイプの位置切替機構を簡素な構成で実現できる。
さらにまた第4の側面に係る三次元造形装置によれば、前記開閉カバー38は、ガイド板36を備えており、前記ガイド板36は、前記切替レバー34が吸引位置にあるとき、前記装着プレート37と前記開閉カバー38とを閉塞することで、該切替レバー34を保持し、前記切替レバー34が待機位置にあるとき、前記装着プレート37と前記開閉カバー38とを閉塞する際に、該切替レバー34と抵触する姿勢となるように、前記開閉カバー38に固定することができる。これによって、ガイド板でもって吸引位置にある切替レバーを保持する一方、待機位置にある切替レバーとは抵触して閉塞を阻害することができる。
さらにまた実施の形態に係る三次元造形装置によれば、前記開閉カバー38は、ヒンジ式に開閉可能に構成することができる。これにより、ヒンジ式に開閉される開閉カバーに切替レバーが抵触して、開閉カバーの閉塞を物理的に阻害するため、構造的に誤動作を把握、認識しやすくできる。
さらにまた第5の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記造形材を硬化させるための硬化手段24を備えており、前記硬化手段24を、前記開閉カバー38側に設けることができる。
さらにまた第6の側面に係る三次元造形装置によれば、前記切替レバー34を、上方に移動させると、前記装着プレート37又は開閉カバー38の外部に突出するように構成できる。これにより、切替レバーが上方にある間は、装着プレート又は開閉カバーからはみ出すために物理的に閉塞が不可能となるため、ユーザに対して現状のままでは装置の利用ができないことを容易に理解させることができる。
さらにまた実施の形態に係る三次元造形装置によれば、前記バス28を、位置決めピン39を介して装着することができる。これにより、位置決めピンによってバスを容易に位置決めして装着することができる。
さらにまた第7の側面に係る三次元造形装置によれば、前記ローラ部25の表面に付着した余剰分の造形材を掻き取って、前記バス28に案内するためのブレード27を備えており、前記ブレード27を、前記バス28に固定することができる。これにより、バスを位置決めピンによって位置決めして装着することで、ブレードの位置決めも同時に行うことができ、ローラ部に付着した樹脂余剰分の掻き取り状態を一定量に規定することができる。また、ブレードをバスごと交換式として、メンテナンス時の作業性を向上できる副次的効果も得られる。
さらにまた第8の側面に係る三次元造形装置によれば、前記バス28を、前記ローラ部25側に装着することができる。
さらにまた第9の側面に係る三次元造形装置によれば、造形材が、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を含み、前記造形材吐出手段が、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させることができる。
さらにまた第10の側面に係る三次元造形装置によれば、前記制御手段10が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部20を一方向に往復走査させて、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材MA又はサポート材SAの一方を前記造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記ローラ部25により流動状態のモデル材MA又はサポート材SAの一方の余剰分を回収し、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段24により前記モデル材MA又はサポート材SAの一方を硬化させることにより、さらに該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材MA又はサポート材SAの他方を前記造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記ローラ部25により流動状態のモデル材MA又はサポート材SAの他方の余剰分を回収し、該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段24により前記モデル材MA又はサポート材SAの他方を硬化させることにより、前記スライスを生成し、前記垂直駆動手段で高さ方向に前記造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行するよう制御できる。
さらにまた実施の形態に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAを同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させることができる。
さらにまた実施の形態に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAとを吐出させ、又は硬化させることができる。
さらにまた第11の側面に係る三次元造形装置によれば、前記動作阻害機構が、前記吸引パイプ29が吸引位置又は待避位置にあることを検出可能な位置検出手段41を含み、前記位置検出手段41が、前記切替レバー34の位置が吸引位置か待避位置かに応じて、前記切替レバー34が吸引位置にあることを検出した状態では、造形材の吐出を許容する一方、前記切替レバー34を待避位置にあることを検出した状態では、造形材の吐出を阻害するよう制御することができる。これにより、吸引パイプが吸引位置にないと造形材が吐出されないように構成でき、吸引パイプで余剰樹脂を吸引できない状態で造形材を吐出させてしまう誤動作を防止できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置を例示するものであって、本発明は三次元造形装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。ただ、本発明は三次元造形装置をインクジェット方式に特定するものでなく、他の方式、例えば粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等の積層造形法を用いた三次元造形装置に対しても利用できる。この三次元造形システム100は、造形材を流動状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に造形データならびに造形条件である設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることにより、その時点での造形物の最上層の厚みの適正化を図ると共に、造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。ここで、Y方向とはモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズルが有する複数のオリフィスが配列した並び方向であり、X方向は水平面内においてこのY方向と直交する方向である。
コンピュータPCは、三次元形状の造形物の基礎データ、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材MAにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、ローラ回転速度制御手段12と、吐出制御手段13を備える。ローラ回転速度制御手段12は、ローラ本体26がモデル材MA又はサポート材SAを個別に回収する際に、各吐出ノズルから吐出されるモデル材MA又はサポート材SAの物理的特性に応じて、ローラ本体26の回転速度を変化させることができる。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。なお、スライスデータは、三次元造形装置2側で生成してもよいが、その際においても、各スライス層の厚み等のオペレータが決定しなくてはならない造形パラメータはコンピュータPC側から三次元造形装置2へ送信しなければならない。
(スライス)
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向(ヘッド部20の主走査方向)に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が未硬化の状態にて、少なくとも往路又は復路にてその未硬化の造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。なお、造形に用いる造形材料が、所定の温度によって硬化するものであれば、本発明においては硬化手段24を冷却または加熱手段とすることもでき、また自然硬化できる場合には硬化手段を省略することもできる。
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
また、造形物がZ方向(つまり高さ方向)において下方に位置する造形部分よりX−Y平面で張り出した、いわゆるオーバーハング形状を有する場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。ヘッド部20は、図において上下にそれぞれ配置された一対のX方向(主走査方向)ガイド機構であるX方向移動レール43に支持される。ヘッド部20を支持する基台側には、X方向への駆動部(図示せず)が、一方のX方向移動レール43に沿って設けられている。また、ヘッド部20をX方向移動レール43上に載置する門型のフレームに、ヘッド部20をY方向(副走査方向)に移動させるためのY方向移動レール44が設けられる。またヘッド部20をY方向移動レール44に沿って駆動するための駆動部(図示せず)が載置される。これらの駆動部によってヘッド部20は、XならびにY方向に移動することが可能となっている。
さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形データに対応した造形物の生成を行う。
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20をX方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
この制御手段10は、一回のX方向への往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化と余剰分の除去を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を未硬化の状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
なお、この例では先にモデル材MAを吐出し、次いでサポート材SAを吐出させる例を説明したが、逆にサポート材を先に吐出させ、次いでモデル材を吐出させてもよい。また、この例ではいずれか一方の造形材をまず吐出して、これを硬化させた後に、他方の造形材を吐出して硬化させるという、モデル材とサポート材を個別に吐出、硬化させて造形する方法を説明した。ただ、この方法に限られず、モデル材とサポート材を同時に吐出させることも可能である。
(造形材)
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。
(硬化手段24)
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材SAも紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
またモデル材MAとして、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
サポート材SAは、基本的には、上述したモデル材と同様な材料を用いることができる。ただ、サポート材は最終的に容易に除去できる材料としたいとの観点から、モデル材と類似した材料に更に除去可能な材料を添加することが望ましい。このため、具体的には水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
(ヘッド部20)
図4に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23を設けており、これらのノズル列23は、図5の平面図に示すように半ノズル分ずらして配置することで、分解能を向上させている。またオフセット状態に配置された各ノズル列23は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とで、それぞれ同一ライン上に一致するように配置することで、モデル材とサポート材の分解能を一致させている。
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が一体的に設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
図4の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)では造形材の最表面からローラ部25にて余剰樹脂を掻き取り、平滑化を図った後、平滑化された樹脂を硬化手段24で硬化させている。
さらに図4の例に示すヘッド部20は、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aと、ローラ部及び硬化手段を設けた回収硬化ヘッドユニット20Bとに分割されている。吐出ヘッドユニット20Aと回収硬化ヘッドユニット20Bとの間には、ヘッド部20を移動させるためのY方向移動レール44を通すレールガイド45が設けられている。ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、Y方向移動レール44に沿ってY方向に往復移動する。さらにY方向移動レール44の両端は、ヘッド移動手段30で支承されている。ヘッド移動手段30は、造形プレート40を上下方向に跨ぐように、造形プレートの上下に沿って平行に設けた一対のX方向移動レール43に沿ってX方向に往復移動する。これによってヘッド部20は、造形プレート上でXY平面上の任意の位置に移動できる。
(余剰樹脂回収機構)
ヘッド部20はさらに、余剰に吐出された樹脂を回収するための余剰樹脂回収機構を備えている。すなわち、インクジェット方式の三次元造型機においては、精度の良い造形を行うために、余分にモデル材やサポート材等の造形材を吐出し、造形プレート40上に吐出された樹脂の余剰分を、余剰樹脂回収機構で回収しながら造形を行っている。このような余剰樹脂回収機構を図6の模式図に示す。この図に示す余剰樹脂回収機構は、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を未硬化の状態で押圧し、造形材の余剰分を除去し、かつ造形材表面を平滑化するためのローラ部25で構成される。図6の例では、吐出されたモデル材MAの表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。
(ローラ部25)
ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26は回転自在に支承されており、未硬化の樹脂を回転しながら押圧することにより、樹脂の表面を均しつつ、余剰分を掻き取って回収する。このローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図6において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、ローラ本体26が樹脂表面に当接する際の進行方向に対して、ローラ本体26の後方の位置に配置され、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。同様に、バス(槽)28もローラ本体26に対してブレート27と同様な側に配置され、且つブレード27の下方に配置されている。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度、回転速度を10回転/s程度としている。
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えでは、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
なお硬化手段24の光源は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22より進行方向に対して前方に配置されるため、光源を点灯していても、吐出され、ローラ部25によって平滑化される前の流動可能な樹脂に照射を行うことはない。その一方で、硬化手段24の光源を積極的に必要なタイミング以外は消灯することはもちろん可能である。また一方で、硬化手段を複数設ける構成としてもよい。例えば、硬化手段として第一硬化手段と第二硬化手段とを設け、吐出後の樹脂に対して第一硬化手段で予備的に硬化を行い、次いで第二硬化手段で樹脂をより一層硬化させる。このように硬化手段を多段構成とすることで、樹脂の硬化能力を十分に発揮させることができる。またこのような場合において、第一硬化手段が予備的な硬化に留まり、第一硬化手段を経ても樹脂に未だ十分な流動性が残っている場合は、第一硬化手段による予備硬化後に、ローラ部で樹脂余剰分の掻き取りを行い、その後に第二硬化手段で硬化を行うように構成してもよい。すなわち、すべての硬化手段がローラ部の次段側に配置されることを必ずしも要しない。
図1、図4に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に未硬化の造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
なお、X軸方向に沿うサポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25及び硬化手段24の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッド部20の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルのレイアウトに対して、ローラ部25ならびに硬化手段24は、ローラの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置し、ローラの作用を復路で行いたい場合は、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の復路の進行方向において後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置すればよい。
また、上記実施例においては、ヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
ただ、この構成以外にも、上述の通り硬化手段を多段で構成することもできる。例えばヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、硬化手段24によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためUV光を照射する方法もある。この場合、硬化手段24は、ヘッド部20において、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向で、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21を挟む前後方向に一対の硬化手段を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラ部25による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため本明細書においては、ローラ部25による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
(バス28)
バス28は、メンテナンスの利便性を考慮して、取り外し自在としている。すなわち、ブレード27で掻き取られた樹脂中に、液体の樹脂以外に、硬化済みの樹脂が混入していると、吸引パイプ29で回収できずにバス28中に残留、堆積することがあり、これを放置しておくとバス28の実質的な容量が低減して、溜まった液状の樹脂があふれ易くなる可能性がある。このため、バス28を定期的に洗浄する必要があることから、バス28を着脱式とすることで、このような洗浄作業を容易に行うことができる。
(吸引パイプ29の昇降機構)
一方で、バス28は、上方を開放したコ字状の断面を有する形状を有し、開放した上方からブレード27にて掻き取られた樹脂を受け入れるようにしている。このためバス28の内部には吸引パイプ29が上方から挿入されているため、バス28を取り外す際には、吸引パイプ29をバス28内部からバス28に干渉しない程度の上方に引き上げる必要がある。このため吸引パイプ29は、これを上下に移動させるための昇降機構を設けている。この例を、図7(a)、(b)の模式図に示す。これらの図に示す吸引パイプ29は、バス28を装着した状態で、余剰造形材の吸引を可能とする位置に近接させた吸引位置と、バス28を取り外すために離間させた待避位置とに移動可能としている。
(切替レバー34)
この吸引パイプ29を上下に移動させるための昇降機構として、図7(a)、(b)に示すように、吸引パイプ29と連結した切替レバー34を設けている。切替レバー34は、吸引パイプ29を吸引位置(図7(a))と待避位置(図7(b))とに切り替え式に移動させる。図7(a)の吸引位置にある吸引パイプ29は、先端をバス28の内部に挿入しているため、このバス28に蓄えられた余剰造形材を吸い出すことができる。一方、図7(a)の吸引位置から、切替レバー34を操作して図7(b)の待機位置に吸引パイプ29を移動させることで、吸引パイプ29の先端をバス28から引き抜き、バス28の取り外しが可能となる。
(リンク機構35)
この図に示す切替レバー34は、リンク機構35を介して吸引パイプ29と接続されており、切替レバー34を上げると吸引パイプ29も引き上げられ、切替レバー34を下げると吸引パイプ29も降下される。ユーザは手動で切替レバー34を操作することによって、吸引パイプ29を吸引位置と待機位置に切り替えることができ、バス28の交換作業を容易に行える。また切替レバー34の上下位置と、吸引パイプ29の上下動とを連動させることで、ユーザは切替レバー34の位置によって視覚的に吸引パイプ29の現在位置を把握できる。
さらに切替レバー34は、ユーザが把持して操作し易いよう、先端に把持部34aを設けている。また把持部34aは、ユーザに対して把持する部位であることを目立たせるため、目立つ色、例えば赤色に着色される。これにより、ユーザは操作すべき部位を容易に把握できると共に、上述の通り切替レバー34の位置に基づいて、現在の吸引パイプ29の位置も把握しやすくできる利点が得られる。
(バス28)
バス28の斜視図を、図8に示す。この図に示すバス28は、有底で上面を開口した樋状に形成される。桶状のバス本体部分28aには、ブレード27で掻き取られた樹脂が蓄えられる。バス本体部分28aの両端には、それぞれ固定片28bが設けられると共に、各固定片28bにはピン挿入穴28cが開口されている。図9の断面図に示すように、装着プレート37に設けられた位置決めピン39に、ピン挿入穴28cを通すことで、バス28は装着プレート37に装着できる。このように、位置決めピン39をピン挿入穴28cに挿入するという極めて単純な構造でバス28を固定できることは、例えばねじを用いた螺合等に比べて、作業性の点で有利となる。また、本実施例においては、バス28に対してブレード27が位置決め固定されているため、ブレード27の樹脂掻き取り性能が低下した場合は、バス28ごと交換するか、または図に示すように、バス28に対してブレードを固定しているボルトを外すことにより、交換することができる。もちろん、ブレード27をバス28に位置決め、固定する必要はなく、ヘッド部20に対して別途位置決めし、固定しても良い。
バス28のピン挿入穴28cは、図8、図9に示すように固定片28bを貫通する貫通孔であり、下方を上方よりも広く開口している。一方、位置決めピン39はピン挿入穴28cに応じた円錐状又はテーパ状としている。このようなテーパ状を採用することで、位置決めピン39をピン挿入穴28cに誘い込み易くでき、スムーズに装着できる。一般に、三次元造形装置は、造形材に紫外線硬化樹脂などを利用することから、暗所に設置されることが多く、このため細かな穴などの視認は容易でないことがある。そこで、このように位置決めピン39をピン挿入穴28cに挿入しやすくする物理的な構造を設けることで、暗所での作業を容易にしてユーザの利便性を向上できる。加えて、上述の通りねじなどを使用しないピンの挿入という簡単な作業としたことで、作業自体の効率を高めると共に、例えばねじを紛失したり、あるいは三次元造形装置の内部にねじを落とすといったトラブルを未然に回避できる点においても優れている。
図8、図9に示すピン挿入穴28cは、好ましくは長穴とする。長穴は、図において横方向に延長される。これにより、ローラ本体26の接触面と平行移動が可能となり、樹脂の掻き取り能力に柔軟性を持たせる一方、ローラ本体26とブレード27との距離は一定に維持して、掻き取り量にむらが発生することを阻止する。
またこのバス28は、アルミニウム製等、耐薬品性の材質で構成することで、洗浄を容易とできる。さらに、バス28にはブレード27が固定されている。ブレード27は、ここで掻き取られた樹脂をバス本体部分28aに案内できるような角度をもって、バス本体部分28aの側面に固定される。このように、ブレード27をバス28と一体化することで、バス28を位置決めすればブレード27も位置決めされ、ローラ本体26に対して正確な位置にブレード27を配置する作業が容易に行える。このことは、ローラ本体26の表面に付着した樹脂余剰分の掻き取り量を一定に規定する上で重要となる。また、ブレード27をバス28ごと交換式とすることで、メンテナンス時の作業性を向上できる利点もある。
このような余剰樹脂回収機構は、ヘッド部に固定されている。図10に、ヘッド部の外観を示す。この図は、三次元造形装置のフロントカバーを開けた状態を示しており、装置の内部で、造形プレート上にXYZ方向に移動自在に支承されたヘッド部が確認できる。
このヘッド部の内、主にローラ部25と余剰樹脂回収機構と硬化手段とを設けた部位を斜め下方から見た斜視図を、図11に示す。この図に示すように、ヘッド部は装着プレート37と、開閉カバー38とを開閉自在に連結している。装着プレート37と開閉カバー38とは、ヒンジ33を介してピボット式に開閉可能としている。また装着プレート37側には、ローラ部25と余剰樹脂回収機構とを備えている。また開閉カバー38側には、硬化手段24を設けている。
ここで、装着プレート37からバス28を取り外す手順を、図12〜図16に基づいて説明する。図12は、ヘッド部の一部である装着プレート37を開閉カバー38で閉じた状態を示している。この状態から図に示す装着プレート37に開閉カバー38を固定しているボルト38bを緩めて、開閉カバー38を開くと、図13に示すように、装着プレート37に装着されたパンや吸引パイプ29、切替レバー34等にアクセスできる状態となる。ここでは、切替レバー34は下向きに倒されており、吸引パイプ29が吸引位置にセットされている。
図13の状態から、ユーザが手動で切替レバー34を上向きに倒すように切り替えると、図14に示すように、吸引パイプ29が引き上げられて待機位置に移動される。この状態では、吸引パイプ29の先端がバス28から引き出されるため、バス28の取り外しが可能となる。
まず図15に示すように、ユーザが手でバス28を下から押し上げて、位置決めピン39からバス28のピン挿入穴28cを抜く。この状態で、図16に示すようにバス28を手前側に引き出すことで、バス28を装着プレート37から取り外すことが可能となる。
なお、上記実施例では、バス28の交換または清掃の際、吸引パイプ29側を上方に移動させることにより、バス28の取り出しを容易としたが、これは、バス28がヘッド部20に設けられ、造形プレート40と近接しているため、バス28を下方に移動させることにより、吸引パイプとの干渉を回避させることが困難なためである。
(動作阻害機構)
さらに三次元造形装置は、樹脂余剰分の回収機構に加えて、吸引パイプ29の降下忘れを防止するための動作阻害機構を備えている。すなわち、吸引パイプ29を一旦待機位置に移動させてバス28を取り外し、バス28を洗浄、交換等した後に再びセットした状態で、吸引パイプ29を吸引位置に戻すことをユーザが忘れた場合は、吸引パイプ29の先端がバス28に届かない以上、樹脂余剰分の吸引が行えず、バス28に溜まった樹脂余剰分があふれ出してヘッド部を汚したり、造形物に垂れることが考えられる。そこで、このようなトラブルを回避するために、吸引パイプ29が吸引位置に戻されない限りは、樹脂の吐出が行われないような動作阻害機構を設けている。
×これにより、吸引パイプ29が吸引位置にない限り動作できないようにされるため、吸引パイプ29で余剰樹脂を吸引できない状態では造形材が吐出されることがなく、バス28からあふれ出す事態も回避される。
具体的には、吸引パイプ29を吸引位置と待避位置とに切り替える切替レバー34を、吸引位置にした状態では、造形材の吐出を許容する一方で、待避位置にした状態では、造形材の吐出ができないように物理的に緩衝させている。ここでは、図14に示すように、吸引パイプ29を待避位置にしたまま、すなわち切替レバー34を上げたまま開閉カバー38を閉塞しようとすると、切替レバー34が開閉カバー38と抵触して閉塞を妨げられる。この結果、切替レバー34が待避位置にある状態で三次元造型機を動作させる事態が物理的に回避され、吸引パイプ29で余剰樹脂を吸引できない状態で樹脂が吐出されるミスを防止できる。また、切替レバー34が上がったままでは開閉カバー38が閉塞できなくすることで、ユーザは切替レバー34の位置が正しくないことを認識でき、切替レバー34の押し下げて吸引パイプ29を吸引位置に戻すことを促される。
また、好ましくは切替レバー34を上方に移動させた状態では、装着プレート37又は開閉カバー38の外部に突出するように構成することが好ましい。このようにすれば、切替レバー34が上方にある間は、装着プレート37と開閉カバー38との接合面からはみ出し、物理的に閉塞が不可能であることが視覚的に理解できるため、ユーザに対して切替レバー34を元に戻す必要があることを即座に把握させることができる。
(ガイド板36)
また図13〜図16等に示す開閉カバー38は、ガイド板36を備えている。このガイド板36は、図17の断面図に示すように、斜めの姿勢で開閉カバー38に固定されている。すなわち、切替レバー34が吸引位置にある状態で開閉カバー38を装着プレート37に閉塞すると、ガイド板36が切替レバー34の上面で、切替レバー34の角度に沿うように配置される。この結果、ガイド板36が切替レバー34を上面から押し当てるような姿勢となり、開閉カバー38を閉塞した状態で切替レバー34が誤って上方に移動する事態を防止できる。このことは、三次元造形装置の動作中に、振動等何らかの理由で吸引パイプ29の先端がバス28の内部から離れてしまう事態を防ぎ、余剰樹脂回収機構の動作を信頼性を高めることにも寄与する。
またガイド板36の先端は、図16等に示すように、その先端を水平姿勢から跳ね上がる方向に多少折曲させた折曲部36aを設けている。例えば切替レバー34を途中まで降下させているものの、その押し込みが不完全で、完全に吸引パイプ29の先端がバス28の内部まで挿入されていないような場合は、開閉カバー38を閉めるに従い、ガイド板36の折曲部36aが切替レバー34に当接して、折曲部36aの下面に当たると、そのまま折曲部36aの下面に沿って下方に押し込まれ、開閉カバー38を完全に閉塞すると切替レバー34も完全に下方向に押し下げされて、吸引パイプ29が正しく吸引位置に移動される。逆に、中途半端な位置に押し下げられた切替レバー34がガイド板36の折曲部36aの上面にあたると、切替レバー34が上方向に押し上げられて、開閉カバー38の閉塞を阻害するように働く。このように、ガイド板36は吸引パイプ29を吸引位置で保持する機能と、吸引位置にない吸引パイプ29すなわち切替レバー34に対して、開閉カバー38の閉塞を阻害し、ユーザに対して切替レバー34の押し下げを促すことができる。
ここで、動作阻害機構が不正確な切替レバー34の位置に対して開閉カバー38の閉塞を阻害する様子を、図18〜図22に示す斜め上方から見た斜視図に基づいて説明する。まず図18に示すように、切替レバー34を押し上げた状態で、開閉カバー38を閉塞しようとすると、図19に示すように開閉カバー38の端縁、あるいはガイド板36の折曲部36aが切替レバー34に当接、緩衝して、物理的に閉塞できない状態となる。そして、切替レバー34の異常に気付いたユーザが図20に示すように切替レバー34を下方に戻すと、図21及び図22に示すように、切替レバー34が緩衝することなく、閉塞カバーと装着プレート37とを正常に接合して閉塞できる。
(実施例2)
また上記は一例であり、吸引パイプ29が本来の位置にないことで余剰樹脂を吸い上げられない事態を防止する動作阻害機構は、他の形態で利用することも可能である。例えば、吸引パイプ29の位置を検出する位置検出手段41を設けて、この検出結果に基づいて動作を制御する構成が挙げられる。このような例を実施例2として図23に示す。この図に示す三次元造形装置は、吸引パイプ29に位置検出手段41を設けている。位置検出手段41は、吸引パイプ29が吸引位置又は待避位置にあることを検出し、制御部に送出する。制御部は、吸引パイプ29が吸引位置に無い場合は、造形材吐出手段の動作を許可しないように制御する。この方法であれば、既存の三次元造形装置に対しても位置検出手段41を付加することで、吸引パイプ29が本来の位置に無い限り動作させない動作阻害機能を実現できる。位置検出手段41には、センサやマイクロスイッチなどが適宜利用できる。
あるいは、バスが所定位置にセットされているかどうかを検出するバス検出センサを設けることもできる。これによって、バスをセットし忘れて三次元造形装置を動作させるミスを回避できるようになる。
さらに、バス検出手段がバス28を所定位置に置いたことを検出すると、自動的に吸引パイプ29を降下させる構成としてもよい。
さらに動作阻害機構は、バス28をセットしない状態で吸引パイプ29を吸引位置に戻して三次元造形装置を動作させるミスを回避するため、例えばバス28をセットしない状態では、切替レバー34を吸引位置に戻せないような機構を付加することもできる。これにより、さらにユーザによるミスを回避して、意図しない樹脂の散乱などの事故を回避できる。