JP5759245B2 - エルボの製造方法 - Google Patents

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本発明は管部材の接続に用いられるエルボの製造方法に関する。
管部材を直線的にではなく屈曲させて接続する場合には、鋼製のエルボが一般的に用いられている。エルボの製造方法としては、非特許文献1に記載されているように、鋼管をマンドレル成形または押曲げ成形してから整形(re-forming)を行い、その後に熱処理する方法がある。また、非特許文献1と特許文献1に記載されているように、鋼板を整形(re-forming)して半割形の半製品を製造し、2つの半製品を互いに溶接してから熱処理する方法がある。
また、所望のエルボの外形に沿った形状のキャビティを有する金型を用いて、太い円柱状または厚い板状の鋼材を対象とした鍛造を行い、半製品を作製し、その半製品に対して切削加工を施してエルボの形状を整える方法もある。
これらの方法のいずれにおいても、材料である鋼管または鋼板を加熱して行ういわゆる熱間加工を行うことが必須である。すなわち、非特許文献1に加熱することが明記されているマンドレル加工のみならず、押曲げ加工や整形加工や鍛造加工においても鋼管や鋼板の加熱を伴うことは、本願出願時の技術常識である。
特開昭61−199528号公報
住友機工株式会社、「エルボ 製造工程」、[online]、平成23年3月1日検索、インターネット<URL:http://www.smikikoh.co.jp/fit/fit03.html>
鋼板からなる半割形の半製品を溶接して製造したエルボは、あまり高い強度が得られない。また、鋼管を材料として作製したエルボでも、必ずしも十分な強度が得られるとは言えない。
太い円柱状または厚い板状の鋼材を鍛造し、その後に切削加工することによって製造したエルボは、比較的高い強度が得られるものの、鍛造を行うためには少なくともキャビティ全体よりも一回り鋼材を用意する必要があり、材料の無駄が大きい場合がある。
また、前記した従来の方法のいずれにおいても、熱間加工が必ず行われ、熱間加工を行うためには、鋼材の加熱と、次工程への移行を可能にするための冷却とが常に必要である。従って、加熱装置が必要であり、場合によっては冷却装置も用いられるため、製造装置が大がかりになり製造コストが高い。さらに、エルボの製造に要する作業時間が長く、効率が悪い。
そこで本発明の目的は、製造装置の簡略化と製造コストの低下に加え、作業時間を短くして効率を向上させることができるエルボの製造方法を提供することにある。
本発明の、管部材を接続するエルボの製造方法は、六角柱状の鋼材を非加熱状態で第1のチャックに固定して、鋼材の一方の端部側に、外周面に切削工具を押し当てて切削する加工と、穴開け工具によって一端部側開口を形成する加工とを施して、一方の端部側のみを所望の形状に形成するステップと、非加熱状態のまま、一方の端部側加工のみが施された鋼材を第1のチャックから取り外してから、所望の形状に形成された一方の端部側を第2のチャックに固定するステップと、一方の端部側が第2のチャックに固定された鋼材の他方の端部側に、外周面に切削工具を押し当てて切削する加工と、穴開け工具によって、一端部側開口と連通する他端部側開口を形成する加工とを施すステップと、を含み、第1のチャックが鋼材を保持する際の鋼材の長手方向と、第2のチャックが鋼材を保持する際の鋼材の長手方向とは異なっており、両方向のなす角度αは30度以下であり、鋼材の一端部側が他端部側に対して角度αだけ傾くようにする。鋼材は冷間引き抜き鋼材である。
本発明によると、エルボの材料である鋼材の加熱や冷却が不要であるため、簡単な製造装置を用いて低コストかつ短時間で、効率良く高精度かつ高強度のエルボを製造できる。
(a)は本発明によって製造されたエルボの一部断面正面図、(b)はその側面図である。 (a)〜(d)は、本発明のエルボの製造方法を工程順に示す一部断面正面図である。 図1に示すエルボによって管部材を接続する状態を概略的に示す正面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明の製造方法によって製造されるエルボ1の一例を示している。このエルボ1は、中空の管状であり、一方の端部が他方の端部に対して30度以下の角度αだけ傾いた形状である。そして、中空部2は一方の端部から他方の端部まで連通している。エルボ1の外周部には、一方の端部に位置する2つの雄ねじ部3,4と、他方の端部に位置する雄ねじ部5が設けられている。そして、一方の端部と他方の端部の中間位置に、六角部6が存在する。この六角部6は、角度αに対応して、エルボの長手方向に沿って連続的に幅の厚い部分から薄い部分へ移行する形状である。
このエルボ1の製造方法を図2に示している。本発明では、エルボの材料として、六角柱状の中実の鋼材1a、具体的には冷間引き抜き鋼材を用意する。そしてこの六角柱状の鋼材1aを、第1のチャック7に取り付ける。第1のチャック7は、六角柱状の鋼材1aを水平にしっかりと保持可能なごく一般的なものである。
第1のチャック7に保持された六角柱状の鋼材1aに対して、図示しない穴開け工具や切削工具を用いて、一方の端部側の加工を行う。具体的には、第1のチャック7に保持した状態で六角柱状の鋼材1aを回転させつつ、一方の端部側の外周面に切削工具を押し当てることにより太さを細くし、また、2つの雄ねじ部3,4を形成する。さらに、第1のチャック7に保持された六角柱状の鋼材1aの半径方向中心に向かって、図示しない穴開け工具を進入させることによって、中空部2の一部を構成する一端部側開口2aを形成する。このようにして一方の端部側のみを所望の形状に形成した鋼材1aを第1のチャック7から取り外す。
次に、一方の端部側の加工のみを行って第1のチャック7から取り外した鋼材1aの他方の端部側を、第2のチャック8によって保持する。第2のチャック8は、製造すべきエルボの角度α(図1参照)に対応した形状であり、鋼材1aを保持する保持部が水平方向に対して角度αだけ傾いている。さらに、加工済みの一方の端部側と未加工の他方の端部側の太さの違いに対応するように、保持部には段部が形成されている。
第2のチャック8に取り付けられ、水平方向に対して角度αだけ傾いた状態に保持されている鋼材1aを回転させつつ、その他方の端部側の外周面に切削工具を押し当てることにより太さを細くし、また、雄ねじ部5を形成する。さらに、図示しない穴開け工具によって、中空部2の一部を構成する他端部側開口2bを形成し、一端部側開口2aと連通させて中空部を完成させる。さらに、一方の端部と他方の端部の中間位置の外周面を未加工のまま残すことにより、六角部6を存在させる。このようにしてエルボ1を完成させる。
この製造方法において行う切削加工や穴開け加工は、本願出願時の技術水準において、非常に高い精度を実現可能であるため、さらなる後加工は不要である。そして、本発明のエルボ1の製造方法は全て冷間加工(切削加工や穴開け加工)で行われるため、鋼材1aの加熱や冷却が不要である。従って、加熱装置や冷却装置が不要であり、一般的な切削工具や穴開け工具を含む旋盤装置のみで製造できる。製造装置が大がかりになることがないため、製造コストを低く抑えられる。そして、エルボ1の製造に要する作業時間が短くなり、効率良く製造できる。また、本実施形態のエルボ1は、冷間引き抜き鋼材である六角柱状の鋼材1aを材料としているため、十分な強度が確保できる。
次に、このエルボ1を用いた管部材の接続について説明する。本実施形態では、図3に模式的に示す、何らかの流体の供給や排出を行う機能を持つ機械10に、ホース11を接続するために用いられる。
具体的には、まず、機械10に付属するロックナット12を手動で回して、エルボ1の六角部6に密着させる。次いで、エルボ1の一方の端部の雄ねじ部3を機械10のねじ穴(図示せず)に完全にねじ込み、しっかりと固定する。この固定時に、エルボ1の他方の端部が一方の端部に対して所望の方向に向いて傾いているとは限らない。そこで、エルボ1の一方の端部の雄ねじ部3を逆回転させて、エルボ1の他方の端部が一方の端部に対して所望の方向に向いて傾くようにする。このときの逆回転は1回転未満である。そして、ロックナット12を手動で再度回して、エルボ1の六角部6との密着を確保する。そして、エルボ1を、他方の端部が一方の端部に対して所望の方向に向いて傾いた状態に保持したまま、必要に応じて器具等を使って、ロックナット12を機械10側に向けてしっかりとねじ込んで固定し、Oリング15を押しつぶして隙間が生じないようにする。こうして、エルボ1の機械10への取り付けを行う。
機械10に取り付けられたエルボ1の他方の端部に対しては、ホース11を取り付ける。このホース11の先端には、エルボ1の六角部6の傾きに合わせた傾きを有するテーパリング13が固定されている。また、ホース11の外周には、ナット14が、ホース11の長手方向に移動可能かつその他の方向にもある程度移動可能に遊びを持って緩く取り付けられている。このナット14は、先端側に位置する中空形状部14aと、雌ねじ部14bを有している。ホース11の取り付け時には、まず、ホース11の先端のテーパリング13をエルボ1の六角部6に嵌合させる。そして、ナット14をホース11の先端側に移動させ、中空形状部14aの内部空間に六角部6およびテーパリング13やロックナット12を収容した状態で、雌ねじ部14bをエルボ1の雄ねじ部5にしっかりとねじ込む。こうすると、テーパリング13と六角部6の嵌合によってホース11とエルボ1の姿勢を適切に保持した状態で、ナット14を雄ねじ部5にねじ込むことによってホース11とエルボ1とをしっかりと固定する。
以上のようにして、本発明の方法によって製造されたエルボ1を用いて、機械10とホース11とを接続する。ただし、本発明は、図示されている例に限られず、あらゆる管部材を接続する様々なエルボ1に広く適用可能である。
なお、材料の無駄を小さくするためには、第1のチャック7が鋼材1aを保持する際の鋼材1aの長手方向と、第2のチャック8が鋼材1aを保持する際の鋼材1aの長手方向がなす角度は、エルボ1の一方の端部と他方の端部がなす角度αと等しく、30度以下であることが好ましい。
1 エルボ
1a 六角柱状の鋼材
2 中空部
2a 一端部側開口
2b 他端部側開口
3,4,5 雄ねじ部
6 六角部
7 第1のチャック
8 第2のチャック
10 機械
11 ホース
12 ロックナット
13 テーパリング
14 ナット
14a 中空形状部
14b 雌ねじ部
15 Oリング

Claims (4)

  1. 管部材を接続するエルボの製造方法であって、
    六角柱状の鋼材を非加熱状態で第1のチャックに固定して、前記鋼材の一方の端部側に、外周面に切削工具を押し当てて切削する加工と、穴開け工具によって一端部側開口を形成する加工とを施して、前記一方の端部側のみを所望の形状に形成するステップと、
    非加熱状態のまま、前記一方の端部側加工のみが施された前記鋼材を前記第1のチャックから取り外してから、所望の形状に形成された前記一方の端部側を第2のチャックに固定するステップと、
    前記一方の端部側が前記第2のチャックに固定された前記鋼材の他方の端部側に、外周面に切削工具を押し当てて切削する加工と、穴開け工具によって、前記一端部側開口と連通する他端部側開口を形成する加工とを施すステップと、
    を含み、
    前記第1のチャックが前記鋼材を保持する際の前記鋼材の長手方向と、前記第2のチャックが前記鋼材を保持する際の前記鋼材の長手方向とは異なっており、両方向のなす角度αは30度以下であり、前記鋼材の前記一端部側が前記他端部側に対して前記角度αだけ傾くようにする、エルボの製造方法。
  2. 前記鋼材は冷間引き抜き鋼材である、請求項1に記載のエルボの製造方法。
  3. 前記鋼材の一方の端部側と他方の端部側の間の中間位置に、外周面が未加工の六角部を設ける、請求項1または2に記載のエルボの製造方法。
  4. 前記六角部は、幅の厚い部分から薄い部分に連続的に移行する形状である、請求項3に記載のエルボの製造方法。
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