JP5757608B2 - 遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法 - Google Patents

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Description

本発明は、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。より詳しくは、本発明は、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列とその上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列を少なくとも含む発現ベクターをセレクタ(selector)として使用することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。また、本発明は、前記選択方法に使用する発現ベクターに関する。
遺伝子発現の制御システムは、タンパク質生産、代謝工学、そして合成生物学の基本手段として極めて重要である。遺伝子発現の制御システムを用いたバイオテクノロジは、有用タンパク質の大量生産、代謝工学、そしてホールセル(Whole Cell)型のバイオセンサなど、様々な分野で使用されている。天然から得られたものにせよ、人工的に創られたものにせよ、望む特性をもつ遺伝子発現の制御システムを要求に応じて、そして迅速に制作する技術が求められている。
自然界には、様々な転写および/または翻訳制御機構、そしてセンサ機構がある。近年、遺伝子発現の制御システムとして遺伝子スイッチが報告されている(非特許文献1-5)。遺伝子スイッチは、様々な情報を入力として、特定遺伝子の発現と非発現(ON/OFF)変換行う分子装置である。様々な遺伝子スイッチを集積して遺伝子回路を構成することにより、オシレータやカウンタ、論理回路などを細胞内に構成できるようになりつつある。細胞内に構築する遺伝子回路では、複数の遺伝子スイッチ機構が協同して働き、統合的機能がはじめて成立する。そのためには、その回路をなす全てのスイッチが、それぞれある定められた特性をもって働くことが求められる。任意の遺伝子回路を自由に設計することを可能とするためには、機能や特性の異なる膨大な遺伝子スイッチが必要となる。
例えば、遺伝子スイッチは、有用タンパク質の大量生産に応用できる。有用タンパク質の生産においては、大腸菌などの宿主細胞に異種生物から得た標的タンパク質を強制発現させる手法がしばしば用いられる。しかし、宿主細胞にとって毒性を示すタンパク質は多い。このようなタンパク質を生産させる場合、宿主細胞を充分な数まで増殖させて、適宜時機をもって発現を「誘導」して強制発現させる。このときに、次の2つの条件が求められる。すなわち、(1)非誘導時の基底発現レベルが充分低いこと(すなわち、厳密であること、「漏れ」が小さいこと)、(2)発現が誘導(ON)されたときに充分な遺伝子発現がなされること(すなわち、ON/OFF時の発現レベル比が大きいこと)、の2つである。これを実現するために、様々なプロモータ系、例えばpETシステム(Novagen社製)などが開発されているが、未だに最適な遺伝子スイッチの探索が続いている。
遺伝子スイッチはまた、代謝工学の手段として使用できる。代謝工学では、複数の酵素遺伝子を1つの宿主細胞の中で同時に発現させ、ある目的物質の生合成経路を構築する。構築した人工の生合成経路において最高の成果、例えば、バイオマスあたりの最終生成物の収量最大化、副産物の最少化などを目指すとき、個々の遺伝子の発現レベルをきめ細やかに、できれば独立に調節することおよび検討することが肝要である。そのため、望み通りのON/OFF切り替え特性をもつ多数の遺伝子スイッチが必要となる。特に複数の遺伝子の発現調節をひとつの細胞で同時に行う場合、遺伝子スイッチに求められる機能は、(1)互いに直交性を示すこと、すなわち1つの遺伝子スイッチの誘導物質が別の遺伝子スイッチを誤作動させないこと、(2)それぞれの遺伝子スイッチによる発現量を、連続的に調節できること、などが挙げられる。
遺伝子スイッチはまた、バイオセンサとして使用できる。細胞は、多くの化学情報および/または物理情報を感知し、それに応じて適当な遺伝子群を発現させる。この「物質感知」システムの下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)などのレポータ遺伝子を繋いだ細胞センサ(Whole Cell Sensor)が開発されている。これらを上手く改変するなどして、任意の物質(あるいは物理刺激)に対するセンサの開発が求められている。
上記のような遺伝子スイッチやセンサシステムを多数創出できれば、それらの組み合わせにより、情報の統合および/または演算(判断)機能を付した複雑な遺伝子回路を創作できる。しかし、遺伝子回路内に含まれる遺伝子スイッチには、電子回路では漏電にあたるスイッチの漏れや混線という問題があり、複数の遺伝子スイッチを同時に用いると正しく働かない。遺伝子スイッチのスイッチ特性、例えばON/OFF閾値やダイナミックレンジなどは、これらを組み合わせて複雑な遺伝子回路(genetic circuits)を設計する場合、(1)発現起動を起こす応答閾値を任意に変化させること、(2)非誘導状態における発現「漏出」の抑制、(3)細胞内の他因子との直交性の担保、が強く求められる。複雑な遺伝子回路にこれらの要件をデノボ(de novo)デザインすることは、極めて困難な作業である。そのため、細胞工学における回路の集積限界はきわめて低い現状にある。これらの問題を克服するために、遺伝子スイッチの改良が求められている。
一方、たとえ複雑な回路であっても、全体でみれば、入力条件によって遺伝子起動状態を規定する、ひとつの遺伝子スイッチとみなせる。すなわち、遺伝子回路が、ある条件で下流遺伝子(セット)の発現を起動し、それ以外では抑制する。
したがって、遺伝子回路の構築において、遺伝子発現がONであるべきときに起動状態にあるものおよび/またはOFFであるべき局面で抑制状態にあるものを選択(ON選択/OFF選択)すれば、任意の出力特性をもつ遺伝子回路の選別および/または取得が可能である。このON選択/OFF選択を、簡単に、そして連続して行うことができれば、さまざまな遺伝子スイッチ(あるいは遺伝子回路)を迅速に開発できる。遺伝子スイッチの機能選択には、種々の入力条件において、ON状態とOFF状態のどちらも選択する必要がある(非特許文献6-12)。つまり、ONセレクタと、OFFセレクタの2つのマーカーを出力側、すなわち遺伝子回路の下流側につなぐことによって、遺伝子スイッチあるいはその集積回路である遺伝子回路の機能選択が可能になる。分子遺伝学においては、様々なONセレクタ、OFFセレクタが知られている。
最近、このONセレクタとOFFセレクタの機能を一つの遺伝子に実施させる試みがなされている(非特許文献10-12)。ONセレクタとOFFセレクタの機能をいずれも有するセレクタはデュアルセレクタと呼ばれる。独立したONセレクタとOFFセレクタを使用する「オペロンタイプ」の選択法では、どちらかのセレクタ遺伝子に遺伝子変異が頻発し、その結果擬陽性が多発するという問題があるが、デュアルセレクタはそのような問題がない。遺伝子スイッチの機能選択のためのデュアルセレクタの報告は少ないが、テトラサイクリン耐性遺伝子tetAを用いた系(非特許文献10-11)、クロラムフェニコール耐性遺伝子CATを用いた系(非特許文献12)などの抗生物質耐性を細胞に与える遺伝子を用いた系や、大腸菌の走化性遺伝子cheZを用いた系(非特許文献13)が報告されている。tetAを用いた系は、tetAの転写を制御することで細胞の殺菌機構を利用し、細胞の生死を測定することによりデュアル選択を行う。cheZを用いた系は、cheZの翻訳を制御して、細胞の運動性の有無によりデュアル選択を行う。
ON選択/OFF選択用に使用される選択系は今までに様々なものが開発されているが、いずれも、細胞中に導入した遺伝子回路が正しく出力したときに細胞が増殖できるという、いわゆる選択増殖によって選択を実現するものである。このような選択系はひとつの選択操作に細胞増殖過程を含むため、1回の選択操作におよそ12時間から24時間を要する。そのため、遺伝子回路の選択、特に複雑な遺伝子回路の選択には、多くの日数を必要とする。このように従来の手法は、選択操作に時間がかかるという問題や、選択効率が選択条件に左右されるという問題がある。
Galvao, TC and de Lorenzo, V, Transcriptional regulators a la carte: engineering new effector specificities in bacterial regulatory proteins. Curr Opin Biotechnol, 17, 34-42 (2006) Lutz, R and Bujard, H, Independent and tight regulation of transcriptional units in Escherichia coli via the LacR/O, the TetR/O and AraC/I1-I2 regulatory elements. Nucleic Acids Res, 25, 1203-10 (1997) Cox, RS 3rd, et al., Programming gene expression with combinatorial promoters. Mol Syst Biol, 3, 145 (2007) Eddy, SR, Noncoding RNA genes., Curr Opin Genet Dev., 9, 695-9 (1999) Garst, AD, Batey RT., A switch in time: Detailing the life of a riboswitch., Biochim Biophys Acta. 1789, 584-91 (2009) Yokobayashi, Y, et al., Directed evolution of a genetic circuit. Proc Natl Acad Sci U S A,99, 16587-91 (2002) Yokobayashi, Y, et al., A dual selection module for directed evolution of genetic circuits. Nat. Computing, 4, 245-54 (2005) Tang, SY, et al., AraC regulatory protein mutants with altered effector specificity. J AmChem Soc, 130, 5267-71 (2008) Lynch, SA and Gallivan, JP, A flow cytometry-based screen for synthetic riboswitches. Nucleic Acids Res, 37, 184-92 (2009) Nomura, Y and Yokobayashi, Y, Dual selection of a genetic switch by a single selection marker. Biosystems, 90, 115-20 (2007) Muranaka, N, et al., An efficient platform for genetic selection and screening of gene switches in Escherichia coli. Nucleic Acids Res, 37, e39 (2009) Rackham, O and Chin, JW, A network of orthogonal ribosome mRNA pairs. Nat. Chem. Biol., 1,159-66 (2005) Topp, S and Gallivan, JP, Random walks to synthetic riboswitches--a high-throughput selection based on cell motility. Chembiochem, 9, 210-3 (2008)
遺伝子スイッチやバイオセンサの機能は、複数の要素が複雑に協同して行う高次分子機能であり、望みの機能特性をもつ遺伝子スイッチを合理的に設計するのは極めて困難である。さらに、それらが組み合わさって構築される遺伝子回路の合理的設計は、より大きな困難性を伴う。そこで、多数の遺伝子スイッチ変異体を作成してライブラリとし、その中から、正しく機能する変異体を選別および取得する必要がある。
本発明の課題は、遺伝子スイッチや遺伝子回路の選択を短時間で行うことができ、且つ選択効率の高い効果的な方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行い、1つの遺伝子でONセレクタ/OFFセレクタの両方の機能を担うデュアルセレクタとして、ヒトヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ(hsvTK)に着目した。そして、hsvTKを遺伝子回路の出力側、すなわち下流側で作動させてON選択および/またはOFF選択を行うことにより、所望の特性および/または機能を有する遺伝子スイッチや遺伝子回路を、高速、簡便、かつ確実に取得する方法を見出した。この新しい手法は、ON選択、OFF選択のどちらにおいても、遺伝子スイッチや遺伝子回路の選択において極めて高い選択効率を示した。本発明に係るON選択およびOFF選択を、異なる濃度の遺伝子スイッチ活性化物質を使用して実施することにより、応答閾値の異なる遺伝子スイッチを取得できた。また、異なる種類の遺伝子活性化物質を使用して本発明に係るON選択およびOFF選択を実施することにより、遺伝子活性化物質に対する特異性、すなわちスイッチシグナル選択性を有する遺伝子スイッチを取得することができた。本発明はこのような成果に基づいて完成したものである。
即ち、本発明は、以下の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法および該選択方法に使用する発現ベクターに関する。
1.下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損細胞を使用し、
前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する化合物の非存在下でアデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、若しくは、遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、または
前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する化合物の存在下でアデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、若しくは、遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、
を含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
2.下記工程(1)から(3)を含む、前記1.の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
(1)下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
を、チミジンキナーゼ欠損細胞に導入する工程、
(2)前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で、上記細胞に変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で上記細胞に変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションする工程、および
(3)生細胞を回収する工程。
3.前記工程(3)に続いて、下記工程(4)および(5)をさらに含む前記2.の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
(4)回収した生細胞を、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下でデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で該阻害剤を添加してインキュベーションする工程、および
(5)生細胞を回収する工程。
4.下記工程(6)から(8)を含む、前記1.の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
(6)下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
を、チミジンキナーゼ欠損細胞に導入する工程、
(7)前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で、上記細胞にデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で上記細胞に該阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションする工程、および
(8)生細胞を回収する工程。
5.前記工程(8)に続いて、下記工程(9)および(10)をさらに含む前記4.の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
(9)回収した生細胞を、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、および
(10)生細胞を回収する工程。
6.チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列が、ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列である前記1.から5.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
7.チミジンキナーゼ欠損細胞が、大腸菌のチミジンキナーゼ欠損株である前記1.から6.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
8.変異原性ヌクレオシドが6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)である前記1.から7.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
9.デオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤が5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(5FdU)またはその誘導体である前記1.から8.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
10.前記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクターが、該配列(a)および(b)に加えて蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列をさらに含む発現ベクターである前記1.から9.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
11.下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
12.下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の非存在下で5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
13.下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、AHLの非存在下で5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
14.下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の非存在下で5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、AHLの存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
15.前記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクターが、該配列(a)および(b)に加えて蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列をさらに含む発現ベクターである前記11.から14.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
16.下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、異なる濃度のN-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下およびAHLの非存在下で5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、前記濃度の1/10濃度のAHLの存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することにより、AHLに対する感度の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を取得することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
17.下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、異なる種類のN-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下およびAHLの非存在下で5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、前記種類とは異なるAHLの存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することにより、AHL特異性の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を取得することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
18.遺伝子スイッチ発現配列がLuxR変異体をコードする遺伝子配列である前記16.または前記17.の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
19.前記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクターが、該配列(a)および(b)に加えて蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列をさらに含む発現ベクターである前記1.から18.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
20.チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列とその上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列とを少なくとも含む発現ベクターであって、前記1.から19.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に使用される発現ベクター。
21.チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列および蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列、並びにこれら遺伝子配列の上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列を少なくとも含む発現ベクターであって、前記1.から19.のいずれかの遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に使用される発現ベクター。
22.配列表の配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列で表されるDNAからなる前記21.の発現ベクター。
本発明によれば、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列とその上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列とを少なくとも含む発現ベクターをセレクタとして使用することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法を提供できる。
本発明に係る方法を用いることにより、所望の特性および/または機能を有する遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択および取得が実施できる。本発明に係る方法、特にOFF選択は、効率が極めて高く、且つ迅速であるため、厳密性のより高い遺伝子回路を高速に開発する基盤(platform)として、合成生物学のよきツールとして使用できる。
このように、本発明により、迅速かつ高効率に、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択および取得が可能になる。
大腸菌のチミジンキナーゼ(TK)欠損株はdP存在下でも生育するが、ヒトヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ(hsvTK)を発現させることによりその生存率が著しく低下することを示す図である。図中、「●」はhsvTKを発現させたTK欠損大腸菌株(hsvTK+)を、「○」はhsvTKを発現させていないTK欠損大腸菌株(hsvTK-)を表す。図の縦軸は生菌数(Cell Count)、横軸はdPの濃度(dP conc.)を表す。(実施例1) TK欠損大腸菌株の生存率は5FdUの濃度依存性に低下するが、hsvTKを発現させることによりその生存率の低下が抑制されることを示す図である。図中、「●」はhsvTKを発現させたTK欠損大腸菌株(hsvTK+)を、「○」はhsvTKを発現させていないTK欠損大腸菌株(hsvTK-)を表す。図の縦軸は生菌数(Cell Count)、横軸は5FdUの濃度(5FdU conc.)を表す。(実施例2) hsvTKを発現させたTK欠損大腸菌株は、dPの添加(図中、dPショックと記す)により、該添加から5分以内に死滅することを示す図である。図中、「●」はdPの添加(図中、+dPと記す)を、「○」はdPの非添加(図中、no dPと記す)を示す。図の縦軸は生菌数(Cell Count)、横軸は時間(分)(time [min])を表す。(実施例3) 4種類の遺伝子回路の模式図とその機能を示す図である。左パネルは、遺伝子回路の模式図である。右パネルは、活性化物質N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の有無による各遺伝子回路によるCIタンパク質発現(CI expression)の有無を説明する。(実施例4) 図4-Aに示した遺伝子回路が設計どおりに作動することを確認した結果を示す図である。図中、各記号は図4-Aに示した遺伝子回路を表し、「●」は回路A、「○」は回路B、「▲」は回路C、「△」は回路Dを表す。パネル(a)は、該遺伝子回路と緑色蛍光タンパク質(GFPuv)発現プラスミドとを共発現させたTK欠損大腸菌株において、様々な濃度のAHLの存在下で、GFPuvの発現を測定した結果を示す。パネル(a)の縦軸は相対的蛍光強度(Relative Fluorescence)、横軸はAHL濃度(AHL conc.)を表す。パネル(b)は該遺伝子回路とhsvTK発現プラスミドとを共発現させたTK欠損大腸菌株において、様々な濃度のAHLの存在下で、5FdUを添加することによりON選択を実施し、生菌数を計数した結果を示す。パネル(c)は、該遺伝子回路とhsvTK発現プラスミドとを共発現させたTK欠損大腸菌株において、様々な濃度のAHLの存在下で、dPを添加することによりOFF選択を実施し、生菌数を計数した結果を示す。パネル(b)およびパネル(c)の縦軸は生菌数(Cell Count)、横軸はAHL濃度(AHL conc.)を表す。(実施例4) OFF選択とON選択を組み合わせたデュアル選択の工程およびその結果を説明する模式図である。(a)は寒天培地を用いたデュアル選択法の概略を、(b)は液体培地中で行うデュアル選択法の工程を説明する。(c)は、3種類の遺伝子回路をそれぞれ有する3種類のTK欠損大腸菌株を混合した混合細胞を(a)の方法でデュアル選択した結果である。各細胞の割合を、デュアル選択前、ON選択後、およびデュアル選択後に計測した結果を示す。(実施例5) 図4-Aに示した遺伝子回路の回路Aおよび回路BをPCRにより識別する方法を説明する模式図である。回路Aおよび回路Bともに同じプライマセットによってCI構造遺伝子の一部を含む回路の一定領域がPCR増幅される。回路AはCI構造遺伝子の野生型を含み、一方、回路BはCI構造遺伝子の欠失変異型を含むため、回路Bを鋳型としたPCR産物(367bp)は、回路Aを鋳型としたPCR産物(639bp)よりもその長さが短い。そのため、両者の混合物のPCR解析において2つの異なった長さのバンドが与えられる。そのバンド強度比から、両者の存在比が定まる。 図4-Aに示した遺伝子回路の回路Aを導入したTK欠損大腸菌株(Switch1)および回路Bを導入したTK欠損大腸菌株(Switch2)を混合し、OFF選択後、ON選択を実施した結果を示す図である。各選択工程後、PCRによりSwitch1およびSwitch2を検出した。図中、レーン(Lane)1はSwitch1、レーン2はSwitch2、レーン3は混合細胞、レーン4は混合細胞をOFF選択したもの、レーン5はOFF選択後の細胞をON選択したものの結果を示す。(実施例7) 定常的にhsvTKを発現させるために用いるpTrc-hsvtkの遺伝子構造を示す模式図である。(実施例1および実施例3) 遺伝子スイッチ活性化物質に対する応答閾値(感度)の異なる遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを含む遺伝子回路を選択する工程の概略を示す図である。図中、inputは遺伝子スイッチ活性化物質を示し、outputは遺伝子スイッチの応答性を示す。また、saverは生存を意味し、deathは死を意味する。(実施例8) 本発明に係るON選択およびOFF選択を様々な濃度のAHLの存在下で実施することにより、LuxR変異体群から、様々な応答閾値(AHLに対する異なる感度)を有するLuxR変異体(LuxR variants)を選択できたことを示す図である。図中、wtは野生型LuxRを示し、mut1、mut2、mut3、およびmut4はいずれもLuxR変異体を示す。 本発明に係るON選択およびOFF選択を異なる種類のAHLの存在下で実施することにより、LuxR変異体群から、AHLの種類に対する特異性を有する様々なLuxR変異体(LuxR variants)を選択できたことを示す図である。図中、LuxR wtは野生型LuxRを、AHLsはAHLの種類を示す。パネル(a)は野生型LuxRの各種AHLに対する応答性、および使用したAHLの構造式を示す。パネル(b)は、AHL(3OC8)の存在下でのON選択に続くAHL(3OC6)によるOFF選択により、AHL(3OC8)に特異性を示すLuxR I58N変異体が取得できたことを示す。パネル(c)は、AHL(3OC6)の存在下でのON選択に続くAHL(3OC8)によるOFF選択により、AHL(3OC6)に特異性を示すLuxR Y62H変異体が取得できたことを示す。パネル(d)は、AHL(C8)の存在下でのON選択により、各種AHLに反応性を示すLuxR C245W変異体が取得できたことを示す。(実施例9) Luxプロモータの下流にGFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をタンデムに配置したプラスミドpLux-gfp-hsvTKのプラスミドマップである。(実施例10) CIプロモータ(CIP)であるλPRプロモータの下流にGFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をタンデムに配置したプラスミドpCI-gfp-hsvTKのプラスミドマップである。(実施例10) pLux-gfp-hsvTKをpTrc-LuxRと共にTK欠損大腸菌株JW1226に導入し、様々な濃度のAHL存在下で蛍光を観察した結果、AHLの濃度依存性に蛍光出力が観察されたことを説明する図である。(実施例10) プラスミド内のプロモータの起動状態をGFPの発現の有無により視認するためにセレクタ遺伝子であるhsvTK遺伝子に加えてGFP遺伝子を導入したプラスミド(pLux-gfp-hsvTK)が、ONセレクタおよびOFFセレクタの機能を示したことを説明する図である。pLux-gfp-hsvTKをpTrc-LuxRと共に導入したTK欠損大腸菌株JW1226では、AHL添加によるhsvTKの発現により、dPの存在下で生菌数が著しく減少し(左パネル)、一方、5FdUとチミジンの存在下で生菌数が著しく増加した(右パネル)。(実施例10) hsvTK、大腸菌由来チミジンキナーゼ(ecoTK)およびDrospophilaのヌクレオシドキナーゼ(DmDNK)の各キナーゼを発現させた大腸菌株JW1226がいずれもdP濃度依存的な生菌数の低減を示したことを説明する図である。ネガティブコントロールであるGFPを発現させた大腸菌、hsvTK不活性体(hsvTK(E83K))を発現させた大腸菌、空ベクター(pTrc99a)を導入した大腸菌では、上記キナーゼを発現させた大腸菌が顕著な生菌数の低減を示す103nMのdPの存在下でも生菌数の低減は認められなかった。縦軸は生菌数(cell count)を、横軸はdP濃度(dP conc.)を示す。(実施例11) hsvTK、大腸菌由来チミジンキナーゼ(ecoTK)およびDrospophilaのヌクレオシドキナーゼ(DmDNK)の各キナーゼを発現させたTK欠損大腸菌株JW1226は、5FdU/dT培地(ON選択培地)において、ネガティブコントロールと比較して高い増殖効率を示したことを説明する図である。縦軸は生菌数(cell count)を示す。(実施例11) N末端45アミノ酸を欠失する切断型hsvTKをコードする遺伝子を含むプラスミドpTrc-hsvTK liteのプラスミドマップである。(実施例12) 野生型hsvTK(図中、WTと称する)を発現させた大腸菌およびN末端45アミノ酸を欠失する切断型hsvTK(図中、liteと称する)を発現させた大腸菌のいずれも、dPの存在下では12時間後の生存が認められなかったことを説明する図である。一方、dPの非存在下では、これら2種類の大腸菌のいずれも、hsvTKを発現させていない大腸菌(図中、tk-と称する)と同様に生存した。大腸菌の生存は、OD600で濁度を測定することにより行った。(実施例12) 野生型hsvTK(図中、WTと称する)を発現させた大腸菌およびN末端45アミノ酸を欠失する切断型hsvTK(図中、liteと称する)を発現させた大腸菌のいずれも、5FdUの存在下での24時間後の生育が認められたことを説明する図である。一方、hsvTKを発現させていない大腸菌(図中、tk-と称する)は5FdUの存在下では24時間後の生育はほぼ観察されなかった。大腸菌の生存は、OD600で濁度を測定することにより行った。(実施例12) λPRの下流にGFP遺伝子とhsvTK遺伝子との融合遺伝子を導入したプラスミドpCI-gfp-hsvTK_fusedのプラスミドマップである。(実施例13) GFP遺伝子とhsvTK遺伝子との融合遺伝子を導入したプラスミドpCI-gfp-hsvTK_fusedを導入した大腸菌において、蛍光シグナルが観察されたことを示す図である。図中、gfp-hsvtk fusionはpCI-gfp-hsvTK_fusedを導入した形質転換体を意味し、gfp-はGFPを発現していない大腸菌を意味する。(実施例13) GFP-hsvTK融合タンパク質を定常発現する大腸菌およびhsvTKを定常発現する大腸菌のいずれも、dPの存在下では12時間後の生存がほぼ認められなかったことを説明する図である。大腸菌の生存は、OD600で濁度を測定することにより行った。(実施例13) GFP-hsvTK融合タンパク質を定常発現する大腸菌およびhsvTKを定常発現する大腸菌のいずれも、5FdUの存在下での24時間後の生育が認められたことを説明する図である。大腸菌の生存は、OD600で濁度を測定することにより行った。(実施例13)
本発明は、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列とその上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列とを少なくとも含む発現ベクターをセレクタとして使用することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。また、本発明は、前記選択方法に使用する発現ベクターに関する。
用語「遺伝子スイッチ」は、転写活性化ドメインを含有する分子であって、該分子を活性化し得る物質(活性化物質)が結合する部位を有する分子、好ましくはタンパク質を意味する。このような分子は、活性化物質の結合により活性化され、その機能を変化させる。すなわち、活性化物質の結合により、遺伝子スイッチの標的配列へのその結合が左右され、その結果、目的の遺伝子の発現が阻害または誘導される。「遺伝子スイッチ」は、言い換えれば、転写活性化ドメインを含有する分子であって、該分子を活性化し得る物質が結合する部位を有し、該物質の結合により標的配列への結合が生じる若しくは解除される分子を意味する。用語「遺伝子スイッチ発現配列」は、遺伝子スイッチをコードする核酸配列を意味する。
用語「遺伝子スイッチの活性化物質」は、遺伝子スイッチに結合することにより遺伝子スイッチの機能を変化させ、その結果、遺伝子または多数の遺伝子の直接的または間接的な発現の調節を誘導する物質、例えばそのような化合物を意味する。「遺伝子スイッチの活性化物質」は、「遺伝子スイッチを活性化する化合物」と言うこともできる。活性化物質は、遺伝子スイッチにより異なる。遺伝子スイッチと活性化物質との組み合わせは、例えば、ビブリオ(vibrio)菌由来のホモセリンラクトンセンサでありN-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)受容体タンパク質であるLuxRとAHL、AraCタンパク質とアラビノースなどが例示できる。
用語「遺伝子スイッチの標的配列」は、標的遺伝子をコードする遺伝子またはその活性部分の翻訳開始の5'上流に位置する核酸配列であって、標的遺伝子の転写を制御する核酸配列を意味する。遺伝子スイッチの標的配列は、プロモータ活性を有する。すなわち、「遺伝子スイッチの標的配列」は、プロモータ配列であり得る。好ましくは、エンハンサ活性を有している調節核酸配列が、遺伝子スイッチの標的配列に間接的にまたは直接的に結合されている。遺伝子スイッチの標的配列に遺伝子スイッチが作用しないと、標的遺伝子は発現されない。すなわち、遺伝子スイッチの標的配列への遺伝子スイッチの作用は遺伝子スイッチ活性化物質の添加により調節され、それにより標的遺伝子の発現を制御している。例えば、遺伝子スイッチLuxRは、その活性化物質AHLの添加により、その標的配列Luxプロモータに作用し、該プロモータの下流に位置する標的遺伝子の転写を促進する。
用語「プロモータ」は遺伝子の転写開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼの結合により転写を開始する核酸配列である。プロモータは、使用する宿主細胞の種によって適宜選択して使用される。細菌を宿主として使用する場合、プロモータとして、大腸菌などの宿主細胞中で発現できるものであれば特に限定されず、いずれを使用してもよい。例えば、Luxプロモータを好ましく例示できる。また、λPRプロモータ、PLプロモータ、trpプロモータ、およびlacプロモータなどの、大腸菌やファージに由来するプロモータを例示できる。tacプロモータなどの人為的に設計改変されたプロモータを使用してもよい。酵母を宿主とする場合、プロモータとして、酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、いずれを使用してもよい。例えば、gal1プロモータ、gal10プロモータ、ヒートショックタンパク質プロモータ、MFα1プロモータ、PHO5プロモータ、PGKプロモータ、GAPプロモータ、ADHプロモータ、およびAOX1プロモータなどを例示できる。動物細胞を宿主とする場合は、組換えベクターが該細胞中で自律複製可能であると同時に、プロモータ、RNAスプライス部位、目的遺伝子、ポリアデニル化部位、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、所望により複製起点が含まれていてもよい。プロモータとして、SRαプロモータ、SV40プロモータ、LTRプロモータ、およびCMVプロモータなどを使用することができ、また、サイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモータなどを使用してもよい。
用語「遺伝子回路」は、遺伝子スイッチをコードする核酸配列と遺伝子スイッチの標的配列との組み合わせを含み、遺伝子発現を可能にする、調節可能な遺伝子発現システムを意味する。より具体的には、遺伝子スイッチをコードする核酸配列と、該遺伝子スイッチが作用するプロモータなどの調節DNAエレメントを有する転写翻訳調節領域とを含む核酸を意味する。
遺伝子回路の構築において、遺伝子発現がONであるべきときに起動状態にあるものを選択すること(ON選択)および/またはOFFであるべき局面で抑制状態にあるものを選択すること(OFF選択)により、任意の出力特性をもつ遺伝子回路を選別/取得できる。このON選択/OFF選択を連続して行うことで、さまざまな遺伝子スイッチ(あるいは遺伝子回路)を迅速に開発できる。
用語「ON選択」は、遺伝子発現がONであるべきときに起動状態にあるものを選択することを意味する。言い換えれば、用語「ON選択」は、遺伝子スイッチがON(起動状態)である条件下で、OFF(抑制状態)にある遺伝子スイッチを淘汰除去することによる選択を意味する。ON選択を行うには、選択対象である遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のライブラリの制御下に、「発現しないと宿主細胞が生存できない」遺伝子(ONセレクタ)を配置する。遺伝子スイッチがON(起動状態)である条件下で起動せずに下流のONセレクタを発現できない遺伝子スイッチおよび遺伝子回路は、それを導入した細胞とともに淘汰除去される。すなわち、ON選択では、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の作用により発現調節される遺伝子の発現がONであるときに細胞死が回避される。
用語「OFF選択」は、遺伝子発現がOFFであるべき局面で抑制状態にあるものを選択することを意味する。言い換えれば、用語「OFF選択」は、遺伝子スイッチがOFF(抑制状態)である条件下で、遺伝子発現を許す遺伝子スイッチ、すなわち漏出のある遺伝子スイッチ、を除去する選択を意味する。OFF選択を行うには、選択対象である遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のライブラリの制御下に、「発現すると、宿主細胞の細胞死を起こす」遺伝子(OFFセレクタ)を配置する。遺伝子スイッチがOFF(抑制状態)である条件下で、下流のOFFセレクタを誤って発現させる遺伝子スイッチおよび漏出のある遺伝子回路は、宿主とともに淘汰除去される。すなわち、OFF選択では、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の作用により発現調節される遺伝子の発現がOFFであるときに細胞死が回避される。
用語「デュアル選択」は、ON選択とOFF選択とを組み合わせて実施することを意味する。デュアル選択は、単回のみ実施してもよいし、複数回実施してもよい。好ましくはデュアル選択を複数回連続して実施することが適当である。複数回実施することにより、所望の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のライブラリから高い濃縮率で取得できる。
用語「セレクタ」は、遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択のために使用される手段を意味し、例えば遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の作用により発現調節される遺伝子配列または該遺伝子配列を有する発現ベクターをいう。
用語「ONセレクタ」は、ON選択に使用される手段を意味し、例えば「発現しないと宿主細胞が生存できない」遺伝子または該遺伝子を含む発現ベクターをいう。
用語「OFFセレクタ」は、OFF選択に使用される手段を意味し、例えば「発現すると、宿主細胞の細胞死を起こす」遺伝子または該遺伝子を含む発現ベクターをいう。
用語「デュアルセレクタ」は、ONセレクタの機能およびOFFセレクタの機能の両方を有するセレクタを意味する。したがって、デュアルセレクタは、ON選択およびOFF選択の両方に使用される。
用語「発現ベクター」は、宿主細胞に外部遺伝子を運搬するDNA、言い換えればベクターDNAであって、宿主細胞中で目的遺伝子を発現させ得るDNAをいう。ベクターDNAは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、宿主の種類および使用目的により適宜選択される。ベクターDNAは、天然に存在するDNAを抽出して得られたベクターDNAの他、複製に必要な部分以外のDNAの部分が一部欠落しているベクターDNAでもよい。代表的なベクターDNAとして例えば、プラスミド、バクテリオファージおよびウイルス由来のベクターDNAを挙げることができる。プラスミドDNAとして、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミドなどを例示できる。バクテリオファージDNAとして、λファージなどが挙げられる。ウイルス由来のベクターDNAとして、例えばレトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、パポバウイルス、SV40、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病ウイルスなどの動物ウイルス由来のベクター、あるいはバキュロウイルスなどの昆虫ウイルス由来のベクターを挙げることができる。その他、トランスポゾン由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来のベクターDNAなどを例示できる。あるいは、これらを組み合わせて作成したベクターDNA、例えばプラスミドおよびバクテリオファージの遺伝学的エレメントを組み合わせて作成したベクターDNA(コスミドやファージミドなど)を例示できる。ベクターDNAには、目的遺伝子が発現されるように目的遺伝子を組み込むことが必要であり、少なくとも目的遺伝子と調節DNAエレメント、例えばプロモータとをその構成要素とする。これら要素に加えて、所望によりさらに、複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列を組み合わせて自体公知の方法によりベクターDNAに組み込むことができる。このような遺伝子配列として、例えば、リボソーム結合配列、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、および選択マーカー(ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子など)を例示できる。これらから選択した1種類または複数種類の遺伝子配列をベクターDNAに組み込むことができる。
ベクターDNAに目的遺伝子を組み込む方法は、自体公知の遺伝子工学的技術を適用できる。例えば、目的遺伝子を適当な制限酵素により処理して特定部位で切断し、次いで同様に処理したベクターDNAと混合し、リガーゼにより再結合する方法が用いられる。あるいは、目的遺伝子に適当なリンカーをライゲーションし、これを目的に適したベクターのマルチクローニングサイトへ挿入することによっても所望のベクターDNAが得られる。
宿主細胞への発現ベクターの導入方法は、宿主細胞にベクターDNAを導入して宿主細胞中で目的遺伝子を発現させ得る導入方法であれば特に限定されず、宿主細胞の種により適宜選択した公知の方法のいずれを使用してもよい。例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法などを例示できる。
本発明においては、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列とその上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列とを少なくとも含む発現ベクターを、チミジンキナーゼ欠損細胞に発現させる。前記発現ベクターをトランスフェクションしたチミジンキナーゼ欠損細胞は、デノボのdTTP合成経路を遮断する条件下では死ぬが、該発現ベクターに含まれたチミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現が誘導されると生存する。このような、チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現誘導によるチミジンキナーゼ欠損細胞の生存を利用して、チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現を制御するように配置した遺伝子スイッチや遺伝子回路の選択を実施できる(ON選択)。一方、前記発現ベクターをトランスフェクションしたチミジンキナーゼ欠損細胞は、変異原性ヌクレオシドアナログの存在下で、該発現ベクターに含まれたチミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現が誘導されると死ぬが、該遺伝子の発現が誘導されないと生存する。このような、チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現を誘導しないことによるチミジンキナーゼ欠損細胞の生存を利用して、チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現を制御するように配置した遺伝子スイッチや遺伝子回路の選択を実施できる(OFF選択)。
「チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現を制御するように遺伝子スイッチや遺伝子回路を配置する」には、発現配列と遺伝子スイッチや遺伝子回路とを同一の発現ベクターに含む必要はなく、チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現配列を含む発現ベクターと、遺伝子スイッチや遺伝子回路を含む発現ベクターとを同一の細胞に共形質転換することにより実施できる。
チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現配列を含む発現ベクターは、(a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、および(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列を少なくとも保持する発現ベクターであることが好ましい。また、遺伝子スイッチや遺伝子回路を含む発現ベクターは、(c)前記(b)のプロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、(d)遺伝子スイッチ発現配列、(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的転写調節因子配列、および(f)前記標的転写調節因子配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列を少なくとも保持する発現ベクターであることが好ましい。
用語「転写調節因子」は、本明細書においては調節DNAエレメントに、より具体的にはプロモータに作用して働くタンパク質性因子を意味する。転写調節因子は転写抑制因子(リプレッサとも称される)および転写活性化因子(アクチベータとも称される)に大別することができる。転写抑制因子は調節DNAエレメントに作用して遺伝子の転写を抑制し遺伝子の発現量を低減させる。転写活性化因子は調節DNAエレメントに作用して遺伝子の転写を促進し遺伝子の発現量を増加する。転写抑制因子および転写活性化因子のいずれも本発明で使用することができるが、転写抑制因子の方が転写量の変化を明確に誘導し得るため、転写抑制因子を使用することが好ましい。転写抑制因子および転写活性化因子は公知の各因子をいずれも使用することができる。好ましい転写抑制因子としてCIタンパク質を例示できる。CIタンパク質は、プロモータPLおよびプロモータPRの各プロモータ領域(すなわちOLおよびOR)に結合して、各プロモータからの転写の開始を強力に阻止する。CIタンパク質の作用を受けるプロモータとしてλPRプロモータを例示できる。
用語「転写調節因子により発現調節される遺伝子配列」は、転写調節因子が作用する調節DNAエレメントの下流に配置され、転写調節因子の作用によりその発現が促進または抑制される遺伝子配列を意味する。遺伝子配列の発現とは、遺伝子の情報がmRNAに転写され、さらに該遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列として翻訳される一連の過程を意味する。発現が促進されれば遺伝子によりコードされるタンパク質が産生されてその量が増大し、発現が抑制されれば遺伝子によりコードされるタンパク質は産生されずその量は減少する。
転写調節因子により発現調節される遺伝子配列として、本発明において、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列を使用する。
チミジンキナーゼ(以下、TKと略称することがある)は、デオキシチミジンのリン酸化反応を触媒する酵素であり、DNA合成の調節因子として重要な役割を果たす。DNA合成の直接の前駆物質であるデオキシチミジン三リン酸(dTTP)の細胞内での供給は、デノボ(de novo)経路とサルベージ(salvage)経路により担われている。デノボ経路はデオキシチミジン一リン酸(dTMP)合成を経てdTTPを合成するが、この経路は5-フルオロウラシルを加えると停止することが知られている(Cohen, SS, et al., The Mode of Action of 5-Fluorouracil and Its Derivatives. Proc Natl Acad Sci U S A, 44, 1004-12 (1958); Yagil, E, et al.,Phosphorolysis of 5-fluoro-2'-deoxyuridine in Escherichia coli and its inhibition by nucleosides. J Bacteriol, 108, 760-4 (1971))。5-フルオロウラシルやその誘導体は、細胞内で代謝され、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン一リン酸(5FdUMP)となる。5FdUMPはdTMP合成酵素(ThyA)の阻害剤であり、これが存在すると細胞内のdTMP合成が阻害される。この状況下では、細胞の増殖は、外因性のデオキシチミジン(dT)を用いてdTTPを合成するサルベージ経路に依存する。もし細胞がTKを持っていれば、サルベージ経路によりdTからdTMPを合成することができ生存できるが、TKが無いと増殖は完全に止まる。細胞のTK欠損株にTKを導入すると、そのサルベージ経路は復活する。このようなメカニズムを利用して、チミジンキナーゼやその関連酵素活性の活性機能選択法がなされてきた(Black, ME, et al., Creation of drug-specific herpes simplex virus type1 thymidine kinase mutants for gene therapy. Proc Natl Acad Sci U S A, 93,3525-9 (1996))。
一方、様々なヌクレオシドアナログが、細胞内のヌクレオチド代謝酵素によって活性化して細胞死を引き起こすことが知られており、該酵素の1つであるチミジンキナーゼは遺伝子治療のための自殺遺伝子として長く検討されてきた(Black, ME, et al., Identification of important residues within the putative nucleoside binding site of HSV-1 thymidine kinase by random sequence selection: analysis of selected mutants in vitro. Biochemistry, 32, 11618-26 (1993); Dube, DK, et al., Selection of new biologically active molecules from random nucleotide sequences. Gene, 137, 41-7 (1993))。
人工ヌクレオシドアナログである6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)は、他のヌクレオシドと同様、チミジンのサルベージ経路を経由してゲノムに取り込まれる。他の多くの毒性ヌクレオシドは染色体DNA合成のチェーンターミネータ(chain terminator)であるが、dPはゲノムに取り込まれて遺伝子変異を頻発する変異原性ヌクレオシドである(Negishi,K, et al., Binding specificities of the mismatch binding protein, MutS, to oligonucleotides containing modified bases. Nucleic Acids Res Suppl, 221-2(2001))。したがって、チミジンキナーゼを発現する細胞は、dPの添加により細胞死が誘導されるが、チミジンキナーゼを欠損した細胞では、dPの添加により細胞死は誘導されない。dPの遺伝毒性(genotoxicity)は低く、37μMのdPを与えてはじめて、大腸菌細胞集団の80%が死ぬ程度である(Negishi, K, et al., Saturation of DNA mismatch repair and error catastrophe by a base analogue in Escherichia coli. Genetics, 161, 1363-71(2002))。しかし、dPのゲノムへの取り込み効率を充分あげて致死的突然変異生成の効率を飛躍的に上げることができれば、細胞死を効率的に誘導できる。
本発明の一態様は、下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損細胞を使用し、
前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する化合物の非存在下でアデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、若しくは、遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、または
前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する化合物の存在下でアデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、または、遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、
を含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。
チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列は、特に限定されず、哺乳動物細胞やウイルス由来のチミジンキナーゼをコードする遺伝子配列を挙げることができ、ヒトヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ、大腸菌由来のチミジンキナーゼ、ショウジョウバエ(Drospophila)由来のヌクレオシドキナーゼをコードする遺伝子配列を好ましく例示できる。より好ましくは、ヒトヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ(hsvTK)をコードする遺伝子配列を例示できる。また、野生型チミジンキナーゼの遺伝子配列の他、該遺伝子配列において1個以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1個〜数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入といった変異が存する遺伝子配列であって、野生型チミジンキナーゼと同質のキナーゼ活性を示すタンパク質をコードする遺伝子配列を使用することができる。変異体のキナーゼ活性は、野生型キナーゼと比較して、同等または高いことが好ましい。しかし、低いキナーゼ活性を示す変異体であっても本発明に係るONセレクタおよびOFFセレクタとしての機能を示す限りにおいて使用することができる。変異体をコードする遺伝子配列における変異の程度およびそれらの位置などは、該変異を有する遺伝子配列が野生型チミジンキナーゼの遺伝子配列と同質のキナーゼ活性を示すタンパク質をコードする遺伝子配列である限り特に制限されない。このような変異体として、hsvTKのN末端45アミノ酸を欠失する切断型hsvTKを例示できる。変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する)などを単独でまたは適宜組合せて使用できる。例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(ウルマー(Ulmer, KM)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666-67)を利用することもできる。
チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列の上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列は、チミジンキナーゼをコードする遺伝子を発現させる機能を有し、且つ、試験される遺伝子スイッチや遺伝子回路の遺伝子産物が作用するプロモータ配列であれば特に限定されず、公知のプロモータ配列を使用することができる。
前記チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列と前記プロモータ配列とを、公知の遺伝子工学的技術を用いて、公知の発現ベクターにクローニングすることにより、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択に使用される発現ベクターを作成できる。
チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列および該遺伝子配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列を少なくとも保持する発現ベクターは、これら配列に加えて、蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列をさらに含むことが好ましい。蛍光タンパク質をコードする遺伝子を発現ベクター内に配置することにより、チミジンキナーゼをコードする遺伝子の発現の有無によるON選択およびOFF選択を実施するときに、該発現ベクター内のプロモータの起動状態を蛍光タンパク質の発現の有無により視認することができるため有用である。蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列は、細胞内で蛍光を発することができるタンパク質をコードするものであれば特に限定されないが、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein、GFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescence Protein、YFP)、シアン蛍光タンパク質(Cyan Fluorescence Protein、CFP)、および青色蛍光タンパク質(Blue Fluorescence Protein、CFP)、並びに、これら蛍光タンパク質の変異体、例えば、UV最適化緑色蛍光タンパク質(UV-optimized Green Fluorescence Protein、GFPuv)、強化緑色蛍光タンパク質(Enhanced Green Fluorescence Protein、EGFP)、強化黄色蛍光タンパク質(Enhanced Yellow Fluorescence Protein、EYFP)、強化シアン蛍光タンパク質(Enhanced Cyan Fluorescence Protein、ECFP)、および青色蛍光タンパク質(Enhanced Blue Fluorescence Protein、ECFP)を挙げることができる。チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列および蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列を含む発現ベクターとして、hsvTK遺伝子配列とGFP遺伝子配列とを含むプラスミドを例示できる。より具体的には、luxプロモータの下流にhsvTK遺伝子配列とGFP遺伝子配列とを配置したプラスミドであって、配列表の配列番号1に記載のDNAで示されるプラスミドを例示できる。また、λPRプロモータの下流にhsvTK遺伝子配列とGFP遺伝子配列とを配置したプラスミドであって、配列表の配列番号2に記載のDNAで示されるプラスミドを例示できる。
チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列は、上記蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列と融合させて融合遺伝子配列となして、発現ベクターに導入することもできる。このような融合遺伝子配列を導入した発現ベクターとして、GFP遺伝子配列とhsvTK遺伝子配列とを融合させた融合遺伝子配列をλPRプロモータの下流に配置したプラスミドであって、配列表の配列番号3に記載のDNAで示されるプラスミドを例示できる。
本発明において使用される細胞は、チミジンキナーゼを欠損する細胞であれば特に限定されない。好ましくは、デノボ経路およびサルベージ経路を有する細胞であって、チミジンキナーゼを欠損する細胞を使用する。具体的には、大腸菌のTK欠損株を好ましく例示できる。大腸菌は増殖速度が速いため、迅速な選択方法に有用である。チミジンキナーゼ欠損細胞は、公知の遺伝子工学的技術を用いて、正常細胞から作成することができる。
本発明において、用語「細胞死」は、本発明において、増殖能などの細胞としての機能を消失している状態を意味する。例えば、大腸菌などの細胞を固形培地上で培養したとき、一個の細胞から増殖して可視的に計数できる一定以上の大きさの細胞集落(コロニ)を形成できる能力を消失している状態を本発明において細胞死という。用語「細胞死」には、生理的または病理的な要因により生じた不要な細胞や障害細胞などを積極的に除去する能動的細胞死(アポトーシス)および外的要因への反応による受動的細胞死(ネクローシス)も含まれ得る。
変異原性ヌクレオシドは、遺伝子に取り込まれたときに遺伝子に変異を生じて細胞死を誘導するものであれば特に限定されず、天然に存在する変異原性ヌクレオシドであってもよく、人工的に作成されたものであってもよい。具体的には、人工ヌクレオシドである6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を好ましく例示できる。変異原性ヌクレオシドの濃度は、遺伝子に取り込まれたときに遺伝子に変異を生じて細胞死を誘導する濃度であれば特に限定されず、簡単な繰り返し実験により決定できる。例えば、dPは、50nM−1μM、より好ましくは100nMの濃度で使用する。変異原性ヌクレオシドと細胞とのインキュベーション時間は、特に限定されず、簡単な繰り返し実験により決定できる。変異原性ヌクレオシドによる変異に起因する細胞死は、極めて短時間で惹起されるため、例えば、dPを用いる場合、dPと細胞とのインキュベーションは5分間−12時間、好ましくは5分間−60分間、より好ましくは5分間−30分間、さらに好ましくは30分間でよい。
デオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ合成経路の阻害剤は、該デノボ合成経路を阻害してdTTPの産生を阻害し得る化合物であれば特に限定されず、例えば、該デノボ合成経路に関与する酵素の阻害剤を挙げることができる。具体的には、5-フルオロウラシルおよびその誘導体を好ましく例示できる。より具体的には、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)を例示できる。5-フルオロウラシルおよびその誘導体の濃度は、dTTPのデノボ合成経路を阻害し得る濃度であればよく、簡単な繰り返し実験により決定できる。例えば、5FdUは、10μg/mL−50μg/mL、より好ましくは20μg/mLの濃度で使用する。dTTPのデノボ合成経路の阻害剤と細胞とのインキュベーション時間は、特に限定されず、簡単な繰り返し実験により決定できる。dTTPのデノボ合成経路の阻害剤を用いた選択においては、生存細胞を増殖させる時間を要するため、使用する細胞の増殖速度に応じた時間を要する。例えば、5FdUの存在下でTK欠損大腸菌株を用いて選択を行う場合、インキュベーションは6時間−20時間、好ましくは20時間行う。
本発明において、チミジンキナーゼをコードする遺伝子は、1つの遺伝子でONセレクタ/OFFセレクタの両方の機能を担うデュアルセレクタとして使用できる。すなわち、チミジンキナーゼをコードする遺伝子を使用して、ON選択およびOFF選択の両方の選択を実施することができる。本発明では、ON選択およびOFF選択のどちらも、遺伝子スイッチや遺伝子回路の選択において極めて高い選択効率を示す。ON選択およびOFF選択は、それぞれ単独で実施することができる。また、ON選択およびOFF選択を組み合わせて実施することもできる。すなわち、OFF選択により選択された遺伝子スイッチおよび遺伝子回路について、さらにON選択を実施することができる。また、その逆に、ON選択により選択された遺伝子スイッチおよび遺伝子回路について、さらにOFF選択を実施することができる。遺伝子スイッチにおける「正しく機能する」とは、そのプロモータ機能が、ONであるべきときにON、それ以外のときにOFFであることをいう。つまり、望む機能をもつ遺伝子スイッチの取得には、ON選択およびOFF選択の2つの操作を連続して行うことが好ましい。
本発明の一態様はまた、下記工程(1)から(3)を含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する:
(1)下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
を、チミジンキナーゼ欠損細胞に導入する工程、
(2)前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で、上記細胞に変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で上記細胞に変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションする工程、および
(3)生細胞を回収する工程。
本発明の一態様はまた、上記工程(1)から(3)に続いて、下記工程(4)および(5)をさらに含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法であり得る:
(4)回収した生細胞を、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下でデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で該阻害剤を添加してインキュベーションする工程、および
(5)生細胞を回収する工程。
本発明の一態様はまた、下記工程(6)から(8)を含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する:
(6)下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
を、チミジンキナーゼ欠損細胞に導入する工程、
(7)前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で、上記細胞にデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(de novo)合成経路の阻害剤を添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には、遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で上記細胞に該阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションする工程、および
(8)生細胞を回収する工程。
本発明の一態様はまた、上記工程(6)から(8)に続いて、下記工程(9)および(10)をさらに含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法であり得る:
(9)回収した生細胞を、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写抑制因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子をコードする遺伝子配列が転写活性化因子である場合には遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、および
(10)生細胞を回収する工程。
本発明のより具体的な一態様は、下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、AHLの存在下でdPを添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。
本発明の具体的な一態様はまた、下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、AHLの非存在下で5FdUを添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。
本発明の別の具体的な一態様は、下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、AHLの存在下でdPを添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、AHLの非存在下で5FdUを添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。
本発明のまた別の具体的な一態様は、下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、AHLの非存在下で5FdUを添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、AHLの存在下でdPを添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。
本発明に係る遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法において、ON選択およびOFF選択を様々な濃度の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下で実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる応答閾値(感度)を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。例えば、ON選択を適当な濃度の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下および非存在下で実施し、次いで、該濃度の10倍あるいは1/10の濃度の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下でOFF選択を実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる応答閾値を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。または、OFF選択を適当な濃度の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下で実施し、次いで、該濃度の10倍あるいは1/10の濃度の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下および非存在下でON選択を実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる応答閾値を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。
すなわち、本発明のさらに別の一態様は、下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、異なる濃度のAHLの存在下およびAHLの非存在下で5FdUを添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、前記濃度の1/10濃度のAHLの存在下でdPを添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することにより、AHLに対する感度の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を取得することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。
実際に、LuxR変異体ライブラリを遺伝子スイッチを選択する対象として使用し、該ライブラリを導入したTK欠損大腸菌株を様々な濃度のAHLの存在下またはAHLの非存在下で5FdUを添加しインキュベーションした後に生細胞を回収し、続いて、該濃度とは異なる濃度のAHLの存在下でdPを添加しインキュベーションして生細胞を回収したところ、AHLに対する感度の異なるLuxR変異体が得られた(実施例8参照)。
また、発明に係る遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法において、ON選択およびOFF選択を様々な種類の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下で実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる特異性を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。例えば、ある種類のAHLの存在下および非存在下でON選択を実施し、次いで、該AHLとは別の種類のAHLの存在下でOFF選択を実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる特異性を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。または、ある種類のAHLの存在下でOFF選択を実施し、次いで、該AHLとは別の種類のAHLの存在下および非存在下でON選択を実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる特異性を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。AHLとして、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-hexanoyl)-L-homoserine lactone、3OC6と略称する)、N-(3-オキソ-オクタノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-octanoyl)-L-homoserine lactone、3OC8と略称する)、N-(3-オキソ-デカノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-decanoyl)-L-homoserine lactone、3OC10と略称する)、N-(3-オキソ-ドデカノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-dodecanoyl)-L-homoserine lactone、3OC12と略称する)、N-ヘキサノイル-ホモセリン ラクトン(N-hexanoyl-homoserine lactone、C6と略称する)、およびN-オクタノイル-ホモセリン ラクトン(N-octanoyl-homoserine lactone、C8と略称する)を例示できる。
すなわち、本発明のさらにまた別の一態様は、下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
(a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
(b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ、
並びに、
下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
(c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
(d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
(e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
(f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子であって前記(a)のプロモータ配列に作動するCIタンパク質をコードする遺伝子配列、
を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、異なる種類のAHLの存在下およびAHLの非存在下で5FdUを添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、前記種類とは異なるAHLの存在下でdPを添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することにより、AHL特異性の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を取得することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法に関する。
実際に、LuxR変異体ライブラリを遺伝子スイッチ選択の対象として使用し、該ライブラリを導入したTK欠損大腸菌株を様々な種類のAHLの存在下で5FdUを添加しインキュベーションした後に生細胞を回収し、続いて、使用したAHLとは別の種類のAHLの存在下でdPを添加しインキュベーションして生細胞を回収したところ、AHLの種類に特異性を有するLuxR変異体が得られた(実施例9参照)。
したがって、上記AHL特異性の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を取得することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法は、LuxR変異体ライブラリを遺伝子スイッチ選択の対象として実施されるものであり得る。この場合、該選択方法において、遺伝子スイッチ発現配列はLuxR変異体をコードする遺伝子配列である。
遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法の対象となり得る遺伝子スイッチのライブラリの作製は、エラープローン ポリメラーゼ連鎖反応(Error-Prone PCR, Leung, DW, et al., A method for random mutagenesis of a defined DNA segment using a modified polymerase chain reaction. Techniques, 1, 11-5 (1989))、サチュレーション変異導入法(Miyazaki, K, et al., Exploring nonnatural evolutionary pathways by saturation mutagenesis: Rapid improvement of protein function. J. Mol. Evol., 49, 716-20 (1999).)、DNAシャッフリング(DNA shuffling, Stemmer, WPC., Rapid evolution of a protein in-vitro by DNA shuffling. Nature, 370, 389-91 (1994))など、既に確立された公知のランダム変異導入法により実施できる。
本発明はまた、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列とその上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列とを少なくとも含む発現ベクターであって、上記遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法のいずれかに使用される発現ベクターに関する。この発現ベクターは、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列とその上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列に加えて、蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列を該プロモータの下流にさらに含むものであり得る。すなわち、本発明の発現ベクターは、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列および蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列、並びにこれら遺伝子配列の上流に該遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列を少なくとも含む発現ベクターであって上記遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法のいずれかに使用される発現ベクターであり得る。このような発現ベクターとして、λPRプロモータの下流にhsvTK遺伝子配列とGFP遺伝子配列とを配置したプラスミドベクターであって、配列表の配列番号2に記載のDNAで示されるプラスミドベクターを例示できる。また、本発明の発現ベクターは、チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列と蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列との融合遺伝子配列、並びにこれら遺伝子配列の上流に該融合遺伝子配列に作動可能に連結されたプロモータ配列を少なくとも含む発現ベクターであって上記遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法のいずれかに使用される発現ベクターであり得る。このような発現ベクターとして、GFP遺伝子配列とhsvTK遺伝子配列とを融合させた融合遺伝子配列をλPRプロモータの下流に配置したプラスミドベクターであって、配列表の配列番号3に記載のDNAで示されるプラスミド配列番号3に記載の塩基配列で表されるDNAで示される発現ベクターを例示できる。
上記本発明に係る遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法は、回路選択に求められる要素である高い選択効率を特徴とする。本発明の方法におけるOFF選択およびON選択ともに105-6の選択効率を示す。とくにOFF選択の選択効率はきわめて高い。実際、本発明の方法におけるOFF選択の条件は、細胞を100nMのdP含有培地に1時間暴露することにより、1回の操作で106個以上の細胞の中から、たった一つの正しい遺伝子回路を有する細胞を選択することができた(実施例6参照)。さらに、OFF選択は、わずかなスイッチの出力をゆるさないため、基底漏出レベルを抑えた遺伝子スイッチの開発に最適である。また、OFF選択は、ランダム変異の蓄積による細胞の情報的な死(エラーカタストロフィ)に基づく選択法であり、ある特定の生化学作用を攻撃するものではなく、細胞機能のあらゆる部位が攻撃対象となるため、耐性化(細胞側の適応)が極めておこりにくい。このため、堅牢な選択プラットフォームを提供できる。
また、本発明に係る遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法は、回路セレクタに求められるもう一つの要素である選択操作の迅速さを特徴とする。とくにOFF選択においては、作用時間を5分程度まで短縮できる(実施例3参照)。これは、OFFセレクタの発現、すなわちOFF選択におけるチミジンキナーゼの発現が、従来の選択方法において使用されている選択指標である細胞の「生育阻害」を誘導するのではなく、不可逆的に細胞死をもたらすためであり、細胞の増殖に要する時間を必要としないためである。実際、細胞の生育速度差や生育移動能の差に基づく選択法(非特許文献6,7,10-13)は、ON選択およびOFF選択のいずれも一操作に一晩を要する。選択操作時間の短縮は、ON選択およびOFF選択を複数回繰り返す回路選択には極めて望ましい特質である。とくに、振動回路や遅延時間の短いスイッチなどの開発などを目的とする場合、本発明に係る方法のような迅速性の高い選択手法が必須である。
このように、本発明に係る遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法は、例えば、有用タンパク質の大量生産のための遺伝子スイッチ、代謝工学ツールとしての遺伝子スイッチ、およびバイオセンサとしての遺伝子スイッチ機構の選択および開発に使用することができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
まず、下記実施例に使用した材料および方法について簡単に述べる。
6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)および5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)は、それぞれベリーアンドアソシエーツ(Berry & Associates (MI))社およびシグマアンドアルドリッチ(Sigma & Aldorich)社より購入した。オリゴヌクレオチドは、ファスマック株式会社(FASMAC Co., Ltd.)が合成したものを使用した。
TK欠損大腸菌株JW1226はKEIOコレクション(Baba, T, et al., Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-geneknockout mutants: the Keio collection. Mol Syst Biol, 2, 2006 0008 (2006))より入手した。特に記載しない限り、培養培地は、2% (w/v) LBブロスを含むLB培地(インビトロジェン社製)を使用した。細胞は、ガラス試験管内で37℃にて増殖させた。
hsvTK発現ベクターpPL-hsvtkおよびGFPuv発現ベクターpPL-gfpuvの作成は、pET-hsvtk(Black, ME, et al., Creation ofdrug-specific herpes simplex virus type 1 thymidine kinase mutants for gene therapy.Proc Natl Acad Sci U S A, 93, 3525-9 (1996))、あるいはpGFPuv(クロンテック社製)からそれぞれの読み取り枠をPLプロモータの下流に融合し、pACYC184ベースのプラスミドに導入することにより実施した。
遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のOFF選択法を確立した。
まず、低濃度のdPを含有する培地における変異頻度を指標に、TK、チミジン一リン酸キナーゼ(Tmk)、ヌクレオチド二リン酸キナーゼ(Ndk)の過剰発現を行ったところ、他のヌクレオシドアナログ同様、DNAへのdP取り込みの律速はTKが触媒する最初のリン酸化反応であることを見いだした(未公開データ)。次に、由来の異なるいくつかのtk遺伝子を試したところ、hsvTKが最も高いdP取り込み効率を示した。
TK欠損大腸菌株JW1226を用い、ヒトヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ(hsvTK)をpTrc-hsvtk(図7)を導入することによって発現させ、dP濃度と細胞の生存率(生菌数)の関係を調べた。pTrc-hsvtkは、trcプロモータの下流にhsvTK遺伝子を配置したプラスミドである。
まず、pTrc-hsvtkを導入したJW1226株を、100μg/mLのアンピシリンを含む2mLのLB培地中で37℃にて一晩培養した。次いで、培養物を、dP(最終濃度が0-100nM)の入った1mLの新鮮なLB培地で1000倍に希釈し(106細胞/mL)、37℃にて12時間振蕩撹拌した。培養後、アンピシリン100μg/mLを含むLB-寒天(1.5%w/v)プレート上に播種した。37℃にて12時間インキュベーション後、生育したコロニの数を生菌数として計数した。
hsvTKを発現させたTK欠損大腸菌株(hsvTK+)では、dPの濃度依存性に、その生菌数は大きく低下した(図1)。一方、hsvTKのかわりにコントロールプラスミド(pTrc99A:hsvTKの構造遺伝子を抜いたベクター)を導入したTK欠損大腸菌株(hsvTK-)では、試験した全ての選択条件下で、生存率の減少は認められなかった。
このように、ごく低濃度(10-100nM)のdPをhsvTK+の培養中に加えることにより、hsvTKを発現する細胞だけを、選択的に殺すことができることが明らかになった。
hsvTKの発現の有無によるTK欠損細胞株のdP存在下の生存率の変化を利用して、hsvtk遺伝子発現回路を制御するように設定した遺伝子スイッチや遺伝子回路の機能の選択が可能である。すなわち、遺伝子スイッチや遺伝子回路が作動せずに下流のhsvtk遺伝子が発現しないとTK欠損細胞株のdP存在下の生存率が上がる。したがって、TK欠損細胞株のdP存在下の生存率が高いものを選択することにより、hsvtk遺伝子を発現させないOFF状態の遺伝子スイッチや遺伝子回路を選択できる。
こうして、OFF状態にある遺伝子スイッチ/回路のみを拾い上げる、優れた選択手法が確立できた。
遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のON選択法を確立した。
TK欠損大腸菌株JW1226を用い、ヒトヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ(hsvTK)をpTrc-hsvtk(図7)を導入することによって発現させ、5FdU濃度と細胞の生存率(生菌数)の関係を調べた。
まず、pTrc-hsvtkを導入したJW1226株をOD600が0.002(およそ106細胞/mL)になるように1mLのポジティブ選択培地で希釈し、37℃にて12時間、200rpmで回転させながら培養した。ポジティブ選択培地は、トリプトン(Tryptone)2% w/v、NaCl 0.5% w/v、dT 10μg/mL、アデノシン 1μg/mL、5FdU 0-25μg/mLを含む培地を用いた。培養後、得られた培養物の一部を採取し、アンピシリンを含むLBプレートに植菌して、生育したコロニの数を生菌数として計数した。
hsvTKを発現させていないTK欠損大腸菌株(hsvTK-)は、5FdU濃度の上昇と共に生菌数が低下した(図2)。一方、hsvTKを発現させたTK欠損大腸菌株(hsvTK+)は、hsvTK-に比べて、その下がり方は緩やかであった。5FdU濃度が25μg/mLのとき、hsvTK+はhsvTK-よりも4.8×107倍の生存率を示した。
このように、5FdU存在下のTK欠損大腸菌株の生存率は、hsvTKの発現の有無により著しく変化することが確認できた。
hsvTKの発現の有無によるTK欠損細胞株の5FdU存在下での生存率の変化を利用して、hsvtk遺伝子発現回路を制御するように設定した遺伝子スイッチや遺伝子回路の機能の選択が可能である。すなわち、遺伝子スイッチや遺伝子回路が作動して下流のhsvTKの発現が惹起されるとTK欠損細胞株の5FdU存在下での生存率が上がる。したがって、TK欠損細胞株の5FdU存在下での生存率が高いものを選択することにより、hsvTKの発現を惹起し得るON状態の遺伝子スイッチや遺伝子回路の選択が可能になる。
このように、hsvtk遺伝子を導入したTK欠損細胞を用いて、ON状態にある遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のみを拾い上げる選択手法が確立できた。
実施例1で確立したOFF選択法の迅速性を検討した。
まず、pTrc-hsvtk(図7)の導入によってhsvTKを定常発現するようにしたTK欠損細胞を、ODが0.05(およそ3×107細胞/mL)になるまで37℃にて200rpmで震盪培養した。1mLずつ分取し、dPを加えて(最終濃度1μM)、37℃で培養を続けた。5、30、60分経ったところで、20μL(およそ106細胞)採取し、アンピシリンを含むLBプレートに植菌して、生育したコロニの数を生菌数として計数した。
dPショックを与えたサンプルは、どの作用時間においても、生菌数はほぼゼロであった(図3)。一方、dPショックを与えないと、生菌数は増加した。このことから、OFF選択は、長くとも5分以内の操作で充分完了することが分った。
実施例1および2で確立した、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のOFF選択法およびON選択法の有効性を、遺伝子回路モデルを用いて検証した。
まず、4つの遺伝子回路を作成した(図4-A)。回路Aおよび回路Bは、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)を入力し、それをリプレッサータンパク質CIとして出力する回路である。CIは発現調節因子であり、PLプロモータの下でタンパク質発現を抑制する。したがって、この回路は、その出力状態がONであればCIタンパク質を発現し、細胞内のPLプロモータ制御下の遺伝子発現を強く抑制する。回路AはAHL受容体タンパク質LuxRをTrcプロモータによって常時発現しており、AHLの濃度に応じてLuxプロモータ下流に配置したCI遺伝子を発現する。回路Bは、AHL受容体タンパク質LuxRをTrcプロモータによって常時発現しており、AHLの濃度に応じてLuxプロモータ下流に配置したCItruc遺伝子を発現する。CItruc遺伝子は、CIタンパク質のC末端欠失体をコードする。CItrucは、標的配列への結合能が低下しており、その結果、PLプロモータの抑制能が低下している。これら回路において、LuxRとLuxプロモータは同じ方向をむいており、両者の間には、強い転写ターミネータがある。回路Cは、回路BからCIタンパク質のリボゾーム結合部位(RBS)を除いたものであり、CIタンパク質の翻訳効率は消失している。そのため回路Cは、AHL濃度に拘らずCItrucは発現しない。一方、回路Dは、回路BからLuxR下流の転写ターミネータを除去したものであり、最上流のTrcプロモータのリードスルーにより、CItruc遺伝子が定常的に発現する。このため回路Dは、AHL濃度に拘らずCItrucが常に発現している。
回路Aおよび回路Bの作成は、pTrc99a誘導体にLuxR、転写ターミネータ、Luxプロモータ、およびCI遺伝子の全長若しくはCItrucをクローニングすることにより行った。回路Cの作成は、回路BからCIタンパク質のRBSを除去することにより行った。回路Dの作成は、回路Bの転写ターミネータからプロモータまでの配列を除去することにより行った。
回路A−Dが設計どおりに作動するか確認するため、これらの回路をスクリーニングプラスミドであるpPL-gfpuvとともに、TK欠損大腸菌株JW1226で共発現させた。PLはCIタンパク質によって抑制されるプロモータであり、CIタンパク質の発現レベルが低いとき、蛍光を出力する。つまり、回路Aあるいは回路Bと共存するとき、pPL-gfpuvはAHL入力を反転させて蛍光出力する。100μg/mLのアンピシリンを含み、且つAHL濃度の異なるLB培地で、37℃にて12時間培養した。その培養液の細胞密度(OD600=2)をそろえ、各AHL濃度の培地における蛍光値を測定した(Fluoroskan Ascent (Thermo)、励起(Excitation)フィルタ: 390nm (半値幅20nm)、蛍光(Emission)フィルタ:510nm(半値幅10nm))。
結果を図4-Bのパネル(a)に示す。回路Cを持つ細胞はAHL濃度に依存せず、常時、高い蛍光強度を示した。また、回路Dを持つ細胞は、AHL濃度に依存せず、低い(バックグラウンドレベルの)蛍光強度を常に示した。一方、回路Aと回路Bを形質転換した細胞は、AHL濃度依存性に、GFPuvの蛍光強度が低下した。これは、AHL濃度が上昇するにつれてCIタンパク質の発現量が増加し、そのCIタンパク質の作用によって、PLプロモータ下のgfpuv遺伝子の発現が抑制されたからである。しかし、そのAHLスイッチングの応答閾値は、回路Bを持つ細胞のほうが、回路Aを持つ細胞よりも高かった。
これら4つの遺伝子回路を用いて、実施例2で確立したON選択法の検証を行った。具体的には、これら4つの回路をそれぞれ有するプラスミドを、PLプロモータ制御下におかれたhsvTK遺伝子を有するプラスミドと共に同一のTK欠損細胞に共導入し、AHL濃度の違う培地の中でON選択を行った。
結果を図4-Bのパネル(b)に示す。回路Aでは、AHL濃度10nM以上で急激に生存率が下がった。これはAHLと複合体を形成したLuxRによってCIタンパク質の発現が亢進し、その結果、CIタンパク質によりhsvTKの発現が効果的に抑制されたためサルベージ経路が起動しないことに起因する。図4-Bのパネル(a)とパネル(b)が相似パターンを示していることから、細胞の生存率が、hsvTKの発現の起動状態と1:1に対応していることがわかる。回路Bも回路Aと同様の結果を示したが、回路Bによる生存率はとくに高いAHL濃度域において高かった。これは、CItrucのhsvTKの発現抑制能が野生型CIタンパク質と比較して低いからである。また、回路Aおよび回路Bのいずれも、回路Cよりも100倍程度低い生存率を示した。これは、Luxプロモータが漏れやすい(leaky)こと、つまりCIタンパク質の発現が、高AHL条件下のOFF状態であっても、LuxプロモータがCIタンパク質を少量発現させること、およびそれによって、CIプロモータ下流のhsvTKが部分的な抑制を受けていることに起因する。
さらに、これら4つの遺伝子回路を用いて、実施例1で確立したOFF選択法の検証を行った。具体的には、これら4つの回路をそれぞれ有するプラスミドを、PLプロモータ制御下におかれたhsvTK遺伝子を有するプラスミドと共に同一のTK欠損細胞に共導入し、AHL濃度の違う培地の中でOFF選択を行った。
結果を図4-Bのパネル(c)に示す。回路Aおよび回路Bでは、AHL濃度依存性に生菌数は増加した。これは、AHLと複合体を形成したLuxRによってCIタンパク質の発現が亢進し、その結果、CIタンパク質によりhsvTKの発現が効果的に抑制されたため、dPの取り込みが阻害され、細胞はdP存在下でもその影響を受けずに生存したことに起因する。
上記結果から、作成した4つの遺伝子回路が、実施例1および2で確立したOFF選択法およびON選択法において、設計どおりに作動することが明らかになった。
遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のOFF選択法およびON選択法を用いて、所望の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択を検討した。ON選択およびOFF選択は固形培地を用いて実施した。本検討では、ON選択に続いてOFF選択を連続して行った(デュアル選択)。デュアル選択の工程およびその結果を図5に示した。
具体的には、実施例4で作成した遺伝子回路B、CおよびDを混合し、その中から、回路B、すなわち活性化物質AHLの添加によりCIタンパク質を充分量発現し、AHL非添加のときにCIタンパク質を発現しない回路を検出する検討を行った。まず、回路BとpPL-hsvtkを保持するTK欠損大腸菌株(Switch2細胞と称する)、回路CとpPL-hsvtkを保持するTK欠損大腸菌株(ON細胞と称する)、および回路DとpPL-hsvtkを保持するTK欠損大腸菌株(OFF細胞と称する)を作成し、これらをほぼ1:1:1で混合した。この細胞プールに対してON選択を行い、次いでOFF選択を行った(図5の(a))。ON選択は、AHLを含まないLB培地に混合細胞を植菌し、37℃で12時間培養した後、その培養物を10μg/mLの5FdU、10μg/mLのdT、および10μg/mLのウリジンを含んだトリプトン固体培地に植菌して37℃でさらに20時間温置することによって実施した。ON選択で生き残って形成されたコロニを、LB液体培地で回収し、1μMのAHLを含むLB培地に植菌し37℃で3時間培養した。その培養物を20μL(およそ106細胞)採取しOFF選択を行った。すなわち、100nMのdPおよび1μMのAHLを含むLB固体培地に植菌し、コロニを形成させた。その後、細胞群を回収し、プラスミドを抽出した。抽出したプラスミドをXL10 GoldにpPL-gfpuvと共形質転換し、遺伝子回路の活性をGFPuvの蛍光により評価した。形質転換体は、1μMのAHL添加および非添加の固体培地に植菌した。12時間後に2枚の固体培地上でGFPuvを発現する細胞数と発現しない細胞数を比較し選択効率を測定した。
最初のON選択により、回路Bを保持するSwitch2細胞と回路CをもつON細胞が選択された。さらにOFF選択を行うことにより、回路CをもつON細胞はほぼ消失し、回路Bを保持するSwitch2細胞のみが回収された(図5の(c))。
遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のOFF選択法およびON選択法を用いて、デュアル選択により所望の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択を検討した。OFF選択およびON選択は液体培地を用いて実施した(図5の(b))。デュアル選択を液体培地中で行うことは、操作時間の短縮とオートメーション化には不可欠な要件である。
具体的には、実施例4で作成した遺伝子回路B、CおよびDを混合し、その中から、回路B、すなわち活性化物質AHLの添加によりCIタンパク質を充分量発現し、AHL非添加のときにCIタンパク質を発現しない回路を、その他の回路(C,D)との混合物中から濃縮/取得する検討を行った。まず、実施例5で作成したOFF細胞、ON細胞、およびSwitch2細胞を1000:1000:1あるいは10000:10000:1の割合で混合した。ON細胞、OFF細胞、およびSwitch2細胞はそれぞれ、回路C、DおよびBとpPL-hsvtkを保持する。これらの混合細胞についてOFF選択およびON選択を実施した。より具体的には、混合細胞を一晩培養した後に、100μg/mLのアンピシリンおよび30μg/mLのクロラムフェニコールを含む1mLのLB培地に希釈して、最終OD600が0.002になるように細胞密度を調製した。AHL(1μM)およびdP(100nM)の存在下で1時間インキュベーションすることによりOFF選択を実施した。次いで、OFF選択により得られた細胞を遠心処理にて回収し、1mLの0.9% w/v NaCl溶液で2回洗浄して、1mLのLB培地に再懸濁し、37℃で2時間培養した。その10μLを採取し、AHLを含まない1mLのポジティブ選択培地に加え、200rpmで回転させながら20時間培養することによりON選択を実施した。その後、細胞群を回収し、プラスミドを抽出した。抽出したプラスミドをXL10 GoldにpPL-gfpuvと共形質転換し、遺伝子回路の活性をGFPuvの蛍光により評価した。形質転換体は、1μMのAHL添加および非添加の固体培地に植菌した。12時間後に2枚の固体培地上でGFPuvを発現する細胞数と発現しない細胞数を比較し選択効率を測定した。
結果を表1に示す。OFF細胞、ON細胞、およびSwitch2細胞を1000:1000:1の割合で混合したとき、デュアル選択後前の混合細胞に含まれるSwitch2細胞の割合は、0.05%であったが、デュアル選択後には83.6%に濃縮されており、濃縮率は1.67×103倍であった。また、OFF細胞、ON細胞、およびSwitch2細胞を10000:10000:1の割合で混合したとき、デュアル選択後前の混合細胞に含まれるSwitch2細胞の割合は、0.005%であったが、デュアル選択後には82.0%に濃縮されており、濃縮率は1.64×104倍であった。
上記デュアル選択は、まずOFF選択を実施した後でON選択を実施している。選択法の順番を反対にしても、同様の選択結果が得られる(未公開データ)。
このように、本発明に係るOFF選択およびON選択を用いることにより、多くの非機能遺伝子スイッチおよび遺伝子回路、すなわちOFF細胞およびON細胞、の中にごくわずかに含まれる機能遺伝子スイッチおよび遺伝子回路、すなわちSwitch2細胞、を高効率且つ短時間で選択でき、さらに、濃縮できることが検証された。
実施例1および2で確立した、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路のOFF選択法およびON選択法を用いて、デュアル選択により、出力特性(応用閾性)の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の分離選択を検討した。
具体的には、回路AとpPL-hsvtkを保持するTK欠損大腸菌株(Switch1細胞と称する)、回路BとpPL-hsvtkを保持するTK欠損大腸菌株(Switch2細胞)を1:1の割合で混合し、10nMのAHLを用いてOFF選択を行い、続いてAHLの非存在下で5FdUを用いてON選択を行った。それぞれの選択過程後の培養液を用いてPCRを実施し、それぞれの回路を含む細胞比を測定した。図6-Aに示すように、回路Aと回路BはPCRにより識別することができる。回路Aおよび回路Bはともに同じプライマセットによってCI構造遺伝子の一部を含む回路の一定領域がPCR増幅される。回路AはCI構造遺伝子の野生型を含み、一方、回路BはCI構造遺伝子の欠失変異型を含むため、回路Bを鋳型としたPCR産物(367bp)は、回路Aを鋳型としたPCR産物(639bp)よりもその長さが短い。そのため、両者の混合物のPCRにおいて2つの異なった長さのバンドが与えられる。そのバンド強度比から、両者の存在比が定まる。
結果を図6-Bに示す。選択前の混合細胞では、Switch1細胞とSwitch2細胞のどちらのバンドもほぼ同じ強度で確認することができた(図6-Bのレーン3)。OFF選択後は、Switch1細胞のバンドがより濃くなっていた(図6-Bのレーン4)。10nMのAHLを用いる条件では、Switch1細胞の方がSwitch2細胞よりも、hsvTKの発現を厳格に抑制する(図4-Bのパネル(a))。続くON選択後はSwitch1細胞とSwitch2細胞のバンドの強度は、いずれもOFF選択後のバンドの強度と同等であった(図6-Bのレーン5)。
Switch1細胞とSwitch2細胞の差異は、保持する回路の違いである。Switch1細胞は、全長CIタンパク質をコードする遺伝子を含む回路Aを保持し、Switch2細胞は、CItrucをコードする遺伝子を含む回路Bを保持する。いずれの回路もAHLの濃度依存性にCIタンパク質の発現をON/OFFする遺伝子回路として作用するが、CIタンパク質の発現抑制能は、回路Aの方が回路Bよりも高いため、デュアル選択により、回路Aを保持するSwitch1細胞が効率よく濃縮された。
このように、本発明に係るOFF選択およびON選択を用いることにより、所望の特性機能を有する遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を選択することができる。
遺伝子スイッチ活性化物質に対して様々な応答閾値(異なる感度)を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を検討した。AHLとして、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-hexanoyl)-L-homoserine lactone、3OC6と略称する)およびN-(3-オキソ-オクタノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-octanoyl)-L-homoserine lactone、3OC8と略称する)を使用した。
まず、LuxRタンパク質(vibrio菌由来のホモセリンラクトンセンサ)にランダム変異を蓄積したライブラリを変異PCRを用いて構築した。これらのライブラリを導入したTK欠損大腸菌株JW1226を使用し、様々な濃度のAHLの存在下、実施例2で確立したON選択を行った(図8、図9)。次に、それぞれの濃度のAHLによるON選択で生存した大腸菌を、ON選択時とは異なる濃度のAHLを含む培地に播種し、実施例1で確立したOFF選択を行った(図8、図9)。生存した大腸菌からLuxR遺伝子を含むプラスミドDNAを常法に従って抽出した。得られたプラスミドDNAとpACYC由来のPlux-gfpをもつプラスミドとを大腸菌に共導入し、様々な濃度のAHL存在下における蛍光強度を測定した。
その結果、図9に示すように、ON選択およびOFF選択時のAHL濃度を反映して、様々な応答閾値をもつLuxR変異体を取得できた。
このように、本発明に係るON選択およびOFF選択を様々な濃度の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下で実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる感度を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。
遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の活性化物質に対する選択性の改良を検討した。活性化物質として、様々な構造のAHLを使用した。AHLは様々なグラム陰性菌が細胞間コミュニケーションに使う分子であり、アシル基の長さが異なるもの、3位のOxo基やラクトン環周囲の構造が異なるものなど、構造の異なる様々なAHLが知られている。本実施例では、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-hexanoyl)-L-homoserine lactone、3OC6と略称する)、N-(3-オキソ-オクタノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-octanoyl)-L-homoserine lactone、3OC8と略称する)、N-(3-オキソ-デカノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-decanoyl)-L-homoserine lactone、3OC10と略称する)、N-(3-オキソ-ドデカノイル)-L-ホモセリン ラクトン(N-(3-oxo-dodecanoyl)-L-homoserine lactone、3OC12と略称する)、N-ヘキサノイル-ホモセリン ラクトン(N-hexanoyl-homoserine lactone、C6と略称する)、およびN-オクタノイル-ホモセリン ラクトン(N-octanoyl-homoserine lactone、C8と略称する)を使用した(図10)。
まず、LuxR変異体ライブラリを実施例8と同様の方法で構築した。これらのライブラリを導入したTK欠損大腸菌株JW1226を使用し、様々な種類のAHLの存在下、実施例2で確立したON選択を行った(図8)。次に、それぞれの種類のAHLによるON選択で生存した大腸菌を、ON選択時とは異なる種類のAHLを含む培地に播種し、実施例1で確立したOFF選択を行った(図8)。生存した大腸菌からLuxR遺伝子を含むプラスミドDNAを常法に従って抽出した。得られたプラスミドDNAとpACYC由来のPlux-gfpをもつプラスミドとを大腸菌に共導入し、様々な濃度のAHL存在下における蛍光強度を測定した。
その結果、図10に示すように、ON選択およびOFF選択時のAHLの種類を反映して,様々なリガンド特異性をもつLuxR変異体が得られた。野生型LuxRタンパク質は、3OC6および3OC8のいずれに対しても100nMで高い反応性を示したが、3OC10およびC6に対する反応性は低く、3OC12およびC8に対する反応性はさらに低かった(図10のパネルa)。3OC8の存在下でのON選択および3OC6の存在下でのOFF選択により、3OC8に高い反応性を示すが他の種類のAHLには反応性が低いか反応性を示さない、すなわち3OC8に特異性を有するLuxR変異体I58Nを取得できた(図10のパネルb)。また、3OC6の存在下でのON選択および3OC8の存在下でのOFF選択により、3OC6に高い反応性を示すが他の種類のAHLには反応性が低いか反応性を示さない、すなわち3OC6に特異性を有するLuxR変異体Y62Hを取得できた(図10のパネルC)。さらに、C8の存在下でのON選択により、検討した全ての種類のAHLにほぼ同様に反応性を示すLuxR変異体C245Wを取得できた(図10のパネルd)。I58N変異はTraRというホモログタンパク質でも見出されている変異であり、Y62H変異は3位のケト基の認識に拘わる変異であるという報告がなされている。
このように、本発明に係るON選択およびOFF選択を様々な種類の遺伝子スイッチ活性化物質の存在下で実施することにより、遺伝子スイッチ活性化物質に対して異なる特異性を有する遺伝子スイッチおよび該遺伝子スイッチを有する遺伝子回路の選択を行うことができる。
遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択に加えて、選択された遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の機能の確認を実施することができるように、セレクタの改良を検討した。
Luxプロモータの下流にGFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をタンデムに配置したプラスミドpLux-gfp-hsvTKを作製した。具体的には、GFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をPCRにより増幅し、SOEing PCRにより繋いだ。そのPCR産物をプラスミドluxプロモータの下流にhsvTK遺伝子を配置したプラスミドplux-hsvTKのNcoI-HindIIIサイトにより挿入した。本プラスミドのプラスミドマップを図11-Aに示し、その配列を配列番号1に記載する。また、λPRプロモータ(CIP)の下流にGFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をタンデムに配置したプラスミドpCI-gfp-hsvTKを作製した。具体的には、GFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をPCRにより増幅し、SOEing PCRにより繋いだ。そのPCR産物をλPRプロモータの下流にhsvTK遺伝子を配置したプラスミドpCI-hsvTKのNcoI-HindIIIサイトにより挿入した。本プラスミドのプラスミドマップを図11-Bに示し、その配列を配列番号2に記載する。これらセレクタの機能を検討するために、Trcプロモータの下流にLuxR遺伝子を含むプラスミドpTrc-LuxRを作製した。pTrc-LuxRは、Trcプロモータの作用によりLuxRタンパク質を常時発現している。
まず、pLux-gfp-hsvTKをpTrc-LuxRと共にTK欠損大腸菌株JW1226に導入し、様々な濃度のAHL存在下で蛍光を観察した。
その結果、AHL依存性の蛍光出力が観察された(図11-C)。このように、AHL依存性にLuxRが起動していることが観察できた。pCI-gfp-hsvTKを使用することにより、同様に、AHL依存的なCIPの起動の有無の視認が可能になる。
次いで、これらプラスミドを導入した細胞で、hsvTKのセレクタ機能、すなわちOFFセレクタ機能を担うdPキナーゼ機能およびONセレクタ機能を担うdTキナーゼ活性が保持されているか検討した。hsvTKのdPキナーゼ機能は、pLux-hsvTKおよびpLux-gfp-hsvTKを、それぞれ別々にpTrc-LuxRと共にTK欠損大腸菌株JW1226に導入し、これら形質転換細胞を2mLのLB培地で別々に培養した後、それぞれの培養液を、AHLを添加または非添加の条件下で、1μMのdPを含む1mLのLB培地に1/1000となるように植菌し、37℃で2時間培養後にプレートに播種し生菌数を測定した。また、hsvTKのdTキナーゼ機能は、pLux-hsvTKおよびpLux-gfp-hsvTKを、それぞれ別々にpTrc-LuxRと共にTK欠損大腸菌株JW1226に導入し、これら形質転換細胞を2mLのLB培地で別々に培養した後、それぞれの培養液を、AHLを添加または非添加の条件下で、1mLのTK選択培地(トリプトン 2w/v %、NaCl 0.5w/v %、チミジン 10μg/mL、アデノシン 1μg/mL、5FdU 20μg/mL)に1/1000となるように植菌し、37℃で20時間培養後にプレートに播種し生菌数を測定した。
その結果、pLux-gfp-hsvTKを導入した細胞では、AHL添加によるhsvTKの発現により、細胞の増殖能がdPの存在下で速やかに失われ(図12の左パネル)、5FdUとチミジンの存在下では逆に増加した。このように、Luxプロモータの下流にGFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をタンデムに配置したプラスミドを使用することにより、dPの存在下でこのオペロンを発現しないものを選択すること(OFF選択)、および、5FdUとチミジンの存在下でこのオペロンを発現するものを選択すること(ON選択)ができる。
セレクタ遺伝子に加えて蛍光タンパク質をコードする遺伝子をセレクタプラスミド内に配置することにより、セレクタ遺伝子によるON選択およびOFF選択のみならず、そのセレクタプラスミド内のプロモータの起動状態を蛍光タンパク質の発現の有無により視認することができるようになった。
ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(hsvTK)は非常に優れたdP/dTキナーゼであり、ゆえに遺伝子スイッチや遺伝子回路の強力なデュアルセレクタとして使用することができる。hsvTK以外にデュアルセレクタとして使用することができるキナーゼを探索するために、複数種類の生物由来のヌクレオシドキナーゼのセレクタとしての機能の評価を実施した。
まず、複数種類の生物由来のヌクレオシドキナーゼを発現するプラスミドを作製した。具体的には、Trcプロモータの下流にヌクレオシドキナーゼをコードする遺伝子を配置した次に記載するプラスミドおよびネガティブコントロールプラスミドを常法により作製した:
(1)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ遺伝子を含むプラスミド(pTrc-hsvtk)、
(2)大腸菌由来チミジンキナーゼ遺伝子を含むプラスミド(pTrc-ecotk)、
(3)ショウジョウバエ(Drospophila)由来ヌクレオシドキナーゼ(DmK)遺伝子であって、大腸菌にコドン最適化した遺伝子を含むプラスミド(pTrc-dmdnk)、
(4)hsvTKの不活性体をコードする遺伝子を含むネガティブコントロールプラスミド(pTrc-hsvtk(E83K)) 、
(5)GFP遺伝子を含むネガティブコントロールプラスミド(pTrc-gfp) 、および
(6)Trcプロモータ下に何の遺伝子も含まない空ベクター(pTrc-99a)。
全ての遺伝子はpTrcベクターにて発現されている。LacIを載せたベクターなので、pTrcプロモータの緊縮性はLacPなどのそれに比べると高いが、それでも漏出発現がある。本実験では、IPTGなどの誘導物質を加えず、この漏出発現によって各種キナーゼを細胞内発現させ、そのキナーゼ力価を測定した。
上記作製したプラスミドのOFFセレクタ機能の評価を実施した。プラスミドはそれぞれ別々に大腸菌株JW1226に導入した。形質転換体を2 mLのLB培地に植菌し、37℃で12時間培養した。それぞれの培養液1μLを、dPを0−104nMの濃度で含むLB液体培地1mLに植菌し、37℃で6時間培養した。その培養液から遠心処理により集菌し、新鮮LB培地に再懸濁した。懸濁液をLB固体培地に植菌して培養し、形成されたコロニ数から生菌数を測定した。
上記作製したプラスミドのONセレクタ機能の評価を実施した。プラスミドはそれぞれ別々に大腸菌株JW1226に導入した。形質転換体を2 mLのLB培地に植菌し、37℃で12時間培養した。それぞれの培養液1μLを、1mLのポジティブセレクション培地(トリプトン 2w/v %、デオキシチミジン(dT) 10μg/mL、デオキシアデノシン(dA) 1μg/mL、5FdU 20μg/mLまたは0 μg/mL)に植菌し、37℃で24時間培養した。その培養液から遠心処理により集菌し、新鮮LB培地に再懸濁した。懸濁液をLB固体培地に植菌して培養し、形成されたコロニ数から生菌数を測定した。
図13-Aに示すように、培地へのdP添加を行うと、hsvTK、大腸菌由来チミジンキナーゼおよびDrospophilaのヌクレオシドキナーゼの各キナーゼを発現させた大腸菌はいずれもdPの濃度依存的な生菌数の低減を示した。これらのうち、hsvTKを発現させた大腸菌が最も顕著な生菌数の低減を示した。dP濃度が10nM程度では、大腸菌由来チミジンキナーゼやDrosophilaのヌクレオシドキナーゼを発現する大腸菌は殆ど生菌数に変化がないが、hsvTKを発現する大腸菌は,6-7桁ほど低い生菌数を示した。このことから、hsvTKがOFFセレクタとして最も好ましいdPキナーゼであることが分かった。しかし本実験条件では、dP濃度が十分低いため、GFPや不活性化hsvTKを発現させたネガティブコントロールでは、生菌数の低下はほぼ認められなかった。dP濃度が十分高くなると、大腸菌由来チミジンキナーゼやDrosophilaのヌクレオシドキナーゼを発現させることにより細胞死を効率よく誘起した。したがって、これらもOFF選択に十分使用できることが分かった。
一方、図13-Bに示すように、5FdU/dT培地(ON選択培地)における増殖効率を比べると、、hsvTK、大腸菌由来チミジンキナーゼおよびDrospophilaのヌクレオシドキナーゼの各キナーゼのdTキナーゼとしての力価に大差はないことがわかった。hsvTKのdTキナーゼ活性がわずかに優れている。このように、これら3種類のキナーゼはいずれもONセレクタとしてよい機能を示した。
以上、hsvTK、大腸菌由来チミジンキナーゼおよびDrospophilaのヌクレオシドキナーゼの各キナーゼは、いずれもONセレクタおよびOFFセレクタとして使用できることが示された。これらのうち、hsvTKがONセレクタおよびOFFセレクタの機能が最も高いことが判明した。
hsvTKは優れたデュアルセレクタであるが、その遺伝子サイズが少し大きい(1.1kb)ため、よりコンパクトで同じ機能をもつセレクタの作製を目指し、N末端45アミノ酸を欠失する切断型hsvTK(以下、TKliteと称する)をコードする遺伝子を常法により作製し、そのセレクタ機能を検討した。
TKlite遺伝子を含むプラスミドpTrc-hsvtk liteの作製のため、まず、pTrc-hsvtk(100ng)をテンプレートにして、hsvTKのN末端45アミノ酸を欠失するように、プライマー1(配列表の配列番号5:TTTTCCATGGCCACGCTACTGCGG)とプライマー2(配列表の配列番号6:TTTTAAGCTTTCAGTTAGCCTCCCCCAT)を用いて、所望の5'末端をするhsvtk遺伝子のフラグメントをPCRで増幅した。その後、カラム精製を行い、増幅されたフラグメントと制限酵素(NcoI 10unit/HindIII 10unit)とを混合し、37℃で1時間インキュベートし、カラム精製した。平行して、pTrc-gfp(1μg)と制限酵素(NcoI 10unit/HindIII 10unit)とを混合し、37℃で1時間インキュベートし、ベクター部分をゲル抽出によって精製した。さらにSAP処理を30分間行った。上記のフラグメント(インサート:100 ng)とpTrc-gfpの切断物(ベクター:100 ng)をライゲーションした。得られた産物をLB-Ampプレートに播種して培養した。形成したコロニにおける目的プラスミドの有無を、コロニPCRにより確認し、そのコロニーを単離して培養後、プラスミドを回収した。本プラスミドpTrc-hsvtk liteのプラスミドマップを図14に示し、その配列を配列番号4に記載する。
上記作製したプラスミドpTrc-hsvtk liteのOFFセレクタ機能の評価を実施した。コントロールとして、野生型hsvTK遺伝子を含むプラスミド(本実施例においてpTrc-hsvtk(WT)と称する)およびGFP遺伝子を含むプラスミド(pTrc-gfpと称する)を使用した。プラスミドはそれぞれ別々に大腸菌株JW1226に導入した。形質転換体を2 mLのLB培地に植菌し、37℃で12時間培養した。それぞれの培養液1μLを、dP非添加または1μMのdPを含有するLB液体培地1mLに植菌し、37℃で1時間培養した。その培養液を20μL採取し、2 mLのLB培地(dP非添加)に混合し37℃で12時間培養した。培養中のOD600の変化を測定して大腸菌の濁度の変化を調べることにより、dP感受性を調べた。
上記作製したプラスミドpTrc-hsvtk liteのONセレクタ機能の評価を実施した。コントロールとして、pTrc-hsvtk(WT)およびpTrc-gfpを使用した。プラスミドはそれぞれ別々に大腸菌株JW1226に導入した。形質転換体を2 mLのLB培地に植菌し、37℃で12時間培養した。それぞれの培養液1μLを、2mLのTK選択培地(トリプトン 2w/v %、NaCl 0.5w/v %、チミジン 10μg/mL、アデノシン 1μg/mL、5FdU 20μg/mLまたは非添加)に植菌し、37℃で24時間培養した。培養中のOD600の変化を測定し、5FdU感受性を調べた。
図15-Aに示すように、dPの存在下では、TKliteを発現させた大腸菌および野生型hsvTKを発現させた大腸菌のいずれも、12時間後のOD上昇は認められなかった。dPの非存在下では、これら2種類の大腸菌のいずれも、hsvTKを発現させていない大腸菌と同様にODが上昇した。このように、TKliteを発現させることにより、野生型hsvTKを発現させたときと同様にdPによる細胞死が生じることが判明した。また、hsvTKの発現による細胞毒性も確認できなかった。
図15-Bに示すように、5FdUの存在下では、TKliteを発現させた大腸菌および野生型hsvTKを発現させた大腸菌のいずれでも成育は認められた。しかし、TKliteを発現させた大腸菌び成育速度は野生型hsvTKを発現させた大腸菌と比較して遅いことが判明した。このことから、TKliteはdTキナーゼとしての活性、すなわちONセレクタ機能が野生型hsvTKと比較して低いと考えられる。
上記結果から、TKliteは野生型の全長hsvTKと同様に、ONセレクタおよびOFFセレクタとしての機能を示すことが判明した。TKliteは全長hsvTKと比較してサイズが小さいため、例えばtetAのような公知の他のセレクタと組み合わせてより複雑な選択を実施するとき、コンストラクトサイズを抑えることができるという利点を有する。
セレクタプラスミドの改良を実施した。実施例10では、セレクタ遺伝子に加えて蛍光タンパク質をコードする遺伝子を配置したセレクタプラスミドを作製し、このプラスミドにより、セレクタ遺伝子によるON選択およびOFF選択のみならず、そのセレクタプラスミド内のプロモータの起動状態を蛍光タンパク質の発現の有無により視認することができるようになった。さらに、シス配列への選択や、リボスイッチおよび転写後調節因子などの選択をより効率的に行うため、セレクタ遺伝子と蛍光タンパク質をコードする遺伝子との融合遺伝子を含むセレクタプラスミドを作製した。
まず、実験10で使用したpCI-gfp-hsvtkのgfp終始コドン前のXbaIサイトおよびhsvtkの直前にあるSpeIサイトを利用して常法によりGFP遺伝子とhsvTK遺伝子との融合遺伝子を含むプラスミドを作製した。本プラスミドpCI-gfp-hsvTK_fusedのプラスミドマップを図16に示し、その配列を配列番号3に記載する。
pCI-gfp-hsvTK_fusedをTK欠損大腸菌株JW1226に導入し、LB培地に植菌し、37℃で12時間培養した。それぞれの培養液1μLを、dP非添加またはdP 1μMを含む2 mLのLB液体培地植菌し、37℃で12時間培養した。その培養液を200μL採取し、蛍光強度をEx485nm/Em527nmで測定した。また、遠心処理により集菌し、そのペレットをUV照射下で撮影した。コントロールとして、λPRプロモータの下流にhsvTK遺伝子を配置したプラスミド(pCI-hsvTK)を使用し、JW1226に導入して同様に処理を行い、蛍光強度を測定した。
作製したプラスミドのOFFセレクタ機能の評価を実施した。プラスミドはそれぞれ別々に大腸菌株JW1226に導入した。形質転換体を2 mLのLB培地に植菌し、37℃で12時間培養した。それぞれの培養液1μLを、dP非添加または1μMのdPを含有するLB液体培地2mLに植菌し、37℃で1時間培養した。その培養液を20μL採取し、2 mLのLB培地(dP非添加)に混合し37℃で12時間培養した。培養中のOD600の変化を測定して大腸菌の濁度の変化を調べることにより、dP感受性を調べた。
上記作製したプラスミドのONセレクタ機能の評価を実施した。プラスミドはそれぞれ別々に大腸菌株JW1226に導入した。形質転換体を2 mLのLB培地に植菌し、37℃で12時間培養した。それぞれの培養液1μLを、2mLのTK選択培地(トリプトン 2w/v %、NaCl 0.5w/v %、チミジン 10μg/mL、アデノシン 1μg/mL、5FdU 20μg/mLまたは非添加)に植菌し、37℃で24時間培養した。培養中のOD600の変化を測定し、5FdU感受性を調べた。
図17-Aに示すように、pCI-gfp-hsvTK_fusedを導入した形質転換体における蛍光シグナルは、さほど大きなものではなかったが、その蛍光強度はGFPを発現していないものと比較して5倍程度高かった。GFP遺伝子およびhsvTK遺伝子をタンデムに配置したプラスミドpLux-gfp-hsvTKおよびpCI-gfp-hsvTK(実施例10)と比較して、その蛍光シグナルは小さくなった。
図17-Bに示すように、GFP-hsvTK融合タンパク質を定常発現する大腸菌およびhsvTKを定常発現する大腸菌はいずれも、dPの存在下では12時間後にごくわずかにODが上昇した。しかし、いずれの大腸菌でも、その上昇の程度は、dPを添加していない場合と比較して1/200程度であった。dPによる細胞死が生じたことが明らかになった。このように、GFP-hsvTK融合タンパク質を発現させることにより、hsvTKを発現させたときと同様にdPによる細胞死が生じることが判明した。
図17-Cに示すように、GFP-hsvTK融合タンパク質を定常発現する大腸菌およびhsvTKを定常発現する大腸菌はいずれも、5FdUの存在下でも24時間後にODの上昇が認められた。GFP-hsvTK融合タンパク質を発現する大腸菌では、5FdUの存在下でのODの上昇がhsvTKを発現する大腸菌と比較して遅く、12時間後あってもODは1/10程度であった。24時間後には、GFP-hsvTK融合タンパク質を発現する大腸菌のODはhsvTKを発現する大腸菌のODとほぼ同程度となった。一方、hsvTKを発現させていない大腸菌は5FdUの存在下では24時間後の生育はほぼ観察されなかった。
上記結果から、GFP-hsvTK融合タンパク質は全長hsvTKと同様に、ONセレクタおよびOFFセレクタとしての機能を示すことが判明した。
本発明に係るhsvTK遺伝子をOFFセレクタとして使用するOFF選択の、スタッファー(staffer)としての使用を検討した。cDNAやメタゲノムソースなど、莫大なライブラリをプラスミドにクローニングする際に、正しくそれらがクローニングされたものの割合は高ければ高いほど良い。しかしベクター側のバックライゲーションや、そもそも混入する「制限酵素で切れなかった」プラスミドの混入により、クローニングの際に少なからぬ人為構造(cloning artifacts)が生じる。cloning artifactsの除去方法として、古くはLacZのαサブユニットを用いた青白選択などが使われて来たが、ライブラリの大規模化やプロセスの自動化に伴い、現在では使用するベクターに制限サイトを入れたり、あるいはccdbのような毒性タンパク質をスタッファー(staffer)として用いた除去方法が使用されている。cloning artifactsの除去方法として本発明に係るOFF選択の有用性を調べた。
まず、pTrc-hsvTKをベクターとし、このhsvTKの読み取り枠(ORF)の前後にあるNcoIサイトおよびHindIIIサイトを利用し、GFP遺伝子のサブクローニングを常法により行なった。具体的には、750ngのpTrc-hsvTKと制限酵素NcoI 10 unitおよびHindIII 20 unitとを混合し、37℃で30分間インキュベートした。ゲル抽出は行なわず、カラム精製により精製した。その後、SAP処理を30分間行い、pTrc-hsvTKの切断物を得た。この操作と平行して、750ngのpTrc-gfpのgfp部分をPCRにより増幅し、制限酵素NcoI 10 unitおよびHindIII 20 unitで120分間処理した。ゲル抽出を行い、PCRテンプレートやその他のDNAを除いて、GFP遺伝子を得た。pTrc-hsvTKの切断物(ベクター:100ng)とGFP遺伝子(インサート:50 ng)とをライゲーションした。この産物を大腸菌株XL10-Gold KanR(Stratagene社製)に導入した。形質転換体をdP非添加、または100nM dP若しくは1μM dPを含むLB-Ampプレートに播種し、37℃で12時間培養した。形成したコロニのGFP蛍光の有無を測定し、無蛍光コロニの数に対する蛍光コロニの数の比を算出した。
表2に示すように、dPを含む培地に播種した大腸菌は、正しくインサートが入ったもののみが得られた。こうして、低濃度のdPを添加したLB-Ampプレートでは、正しくhsvTKが切り出されて所望の遺伝子であるGFP遺伝子に置換されたものだけが選択されていることが判明した。
本発明に係るhsvTK遺伝子をOFFセレクタとして使用するOFF選択の効率は極めて高い。しかも本発明に係るOFF選択は、hsvTKそのものには毒性がなく、dPを与えたときに初めて細胞死を誘起するという利点を有する。すなわち、本発明に係るOFF選択は、上記ccdbのような常に毒性を発揮する化合物を使用する方法とは異なり、極めて安定に取り扱える点にも大きな特徴がある。つまり、本発明に係るOFF選択は、遺伝子スイッチの選択法としてだけでなく、プラスミドクローニングの自動化やライブラリ構築における質の向上にも貢献する。
本発明によれば、所望の特性および/または機能を有する遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択および取得を、迅速に、且つ高い効率で実施できる方法を提供できる。
本発明は、タンパク質生産、代謝工学、そして合成生物学などの分野まで広く寄与する極めて有用な発明である。
配列番号1:Luxプロモータの下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子およびヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(hsvTK)遺伝子をタンデムに配置した設計されたプラスミドDNA(pLux-gfp-hsvTKと称する)。
配列番号2:λPRプロモータの下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)およびヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(hsvTK)遺伝子をタンデムに配置した設計されたプラスミドDNA(pCI-gfp-hsvTKと称する)。
配列番号3:λPRプロモータの下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子とヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(hsvTK)遺伝子からなる融合遺伝子を配置した設計されたプラスミドDNA(pCI-gfp-hsvTK_fusedと称する)。
配列番号4:N末端45アミノ酸を欠失する切断型ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子を含む設計されたプラスミドDNA(pTrc-hsvTK liteと称する)。
配列番号5:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド
配列番号6:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。

Claims (17)

  1. 下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって、前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
    を導入したチミジンキナーゼ欠損細胞を使用し、
    前記(f)の転写調節因子が転写抑制因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する化合物の非存在下でデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(denovo)合成経路の阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、若しくは、該遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、または
    前記(f)の転写調節因子が転写活性化因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する化合物の存在下でデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(denovo)合成経路の阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、若しくは、該遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションした後に生細胞を回収すること、
    を含む、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  2. 下記工程(1)から(3)を含む、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
    (1)下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって、前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
    を、チミジンキナーゼ欠損細胞に導入する工程、
    (2)前記(f)の転写調節因子が転写抑制因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で上記細胞に変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子が転写活性化因子である場合には、該遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で上記細胞に変異原性ヌクレオシドを添加して該細胞をインキュベーションする工程、
    および
    (3)生細胞を回収する工程。
  3. 前記工程(3)に続いて、下記工程(4)および(5)をさらに含む請求項2に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
    (4)回収した生細胞を、前記(f)の転写調節因子が転写抑制因子である場合には、前記遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下でデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(denovo)合成経路の阻害剤を添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子が転写活性化因子である場合には、前記遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下でdTTPのdenovo合成経路の阻害剤を添加してインキュベーションする工程、
    および
    (5)生細胞を回収する工程。
  4. 下記工程(6)から(8)を含む、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
    (6)下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列、
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって前記(a)のプロモータ配列に作動する転写調節因子をコードする遺伝子配列、
    を、チミジンキナーゼ欠損細胞に導入する工程、
    (7)前記(f)の転写調節因子が転写抑制因子である場合には、前記遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で上記細胞にデオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(denovo)合成経路の阻害剤を添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子が転写活性化因子である場合には、前記遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で上記細胞にdTTPのdenovo合成経路の阻害剤を添加して該細胞をインキュベーションする工程、
    および
    (8)生細胞を回収する工程。
  5. 前記工程(8)に続いて、下記工程(9)および(10)をさらに含む請求項4に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法:
    (9)回収した生細胞を、前記(f)の転写調節因子が転写抑制因子である場合には前記遺伝子スイッチを活性化する物質の存在下で変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、または、前記(f)の転写調節因子が転写活性化因子である場合には前記遺伝子スイッチを活性化する物質の非存在下で変異原性ヌクレオシドを添加してインキュベーションする工程、
    および
    (10)生細胞を回収する工程。
  6. チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列が、ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列である、請求項1から5のいずれか1項に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  7. チミジンキナーゼ欠損細胞が、大腸菌のチミジンキナーゼ欠損株である、請求項1から6のいずれか1項に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  8. 変異原性ヌクレオシドが、6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)である、請求項1から7のいずれか1項に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  9. デオキシチミジン三リン酸(dTTP)のデノボ(denovo)合成経路の阻害剤が、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)またはその誘導体である、請求項1から8のいずれか1項に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  10. 下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ配列
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって前記(a)のプロモータ配列に作動するリプレッサータンパク質CIをコードする遺伝子配列、
    を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  11. 下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ配列
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって前記(a)のプロモータ配列に作動するリプレッサータンパク質CIをコードする遺伝子配列、
    を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の非存在下で5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  12. 下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ配列
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって前記(a)のプロモータ配列に作動するリプレッサータンパク質CIをコードする遺伝子配列、
    を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、AHLの非存在下で5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  13. 下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ配列
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって前記(a)のプロモータ配列に作動するリプレッサータンパク質CIをコードする遺伝子配列、
    を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、N-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の非存在下で5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、AHLの存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することを含む、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  14. 下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ配列
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって前記(a)のプロモータ配列に作動するリプレッサータンパク質CIをコードする遺伝子配列、
    を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、異なる濃度のN-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下およびAHLの非存在下で5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、前記濃度の1/10濃度のAHLの存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することにより、AHLに対する感度の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を取得することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  15. 下記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (a)ヒトヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼをコードする遺伝子配列、
    (b)前記(a)の配列の上流に該配列に作動可能に連結されたプロモータ配列であってリプレッサータンパク質CIの作用を受けるプロモータ配列
    並びに、
    下記配列(c)から(f)を少なくとも保持する発現ベクター:
    (c)前記プロモータ配列とは異なるプロモータ配列であってその下流の遺伝子スイッチ発現配列に作動可能に連結されたプロモータ配列
    (d)前記遺伝子スイッチ発現配列、
    (e)前記遺伝子スイッチ発現配列によりコードされる遺伝子スイッチの標的配列、
    (f)前記標的配列が作動可能に連結された遺伝子配列であり、かつ、前記標的配列の作動により発現が誘導される遺伝子配列であって前記(a)のプロモータ配列に作動するリプレッサータンパク質CIをコードする遺伝子配列、
    を導入したチミジンキナーゼ欠損大腸菌株を使用し、異なる種類のN-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)の存在下およびAHLの非存在下で5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(5FdU)を添加して該大腸菌株を12時間から20時間インキュベーションした後に生細胞を回収し、次いで、前記種類とは異なるAHLの存在下で6-(β-D-2-デオキシリボ-フラノシル)-3,4-ジヒドロ-8H-ピリミド[4,5-c][1,2]オキザジン-7-オン(dP)を添加して該大腸菌株を5分間から60分間インキュベーションした後に生細胞を回収することにより、AHL特異性の異なる遺伝子スイッチおよび遺伝子回路を取得することを特徴とする、遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  16. 遺伝子スイッチ発現配列がLuxR変異体をコードする遺伝子配列である、請求項14または請求項15に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
  17. 前記配列(a)および(b)を少なくとも保持する発現ベクターが、該配列(a)および(b)に加えて蛍光タンパク質をコードする遺伝子配列をさらに含む発現ベクターである、請求項1から16のいずれか1項に記載の遺伝子スイッチおよび遺伝子回路の選択方法。
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