JP5757518B2 - 薄膜アクチュエータの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜アクチュエータの製造方法に関する。特に、形状記憶合金薄膜と樹脂薄膜とを有し、二方向性形状記憶効果を有する薄膜アクチュエータの製造方法に関する。
近年、形状記憶合金薄膜と樹脂を積層した積層型アクチュエータの研究が活発になされている。
例えば、非特許文献1は、形状記憶合金薄膜と樹脂を積層した積層型アクチュエータに関するものであり、形状記憶合金の成膜温度からの冷却過程で発生する熱ひずみを利用して、積層型アクチュエータに二方向性形状記憶効果を与える方法が記載されている。
二方向性形状記憶効果とは、加熱・冷却により2つの異なる形状を再現する効果である。
この方法で形成された積層型アクチュエータの高温時と低温時の形状は、(形状記憶合金と樹脂の間の熱膨張係数の差)×(成膜温度−室温)で決まる。しかし、成膜温度はほとんど固定されているので、積層型アクチュエータの高温時と低温時の間の形状の変化はほとんど変えることができない。
前記の形状の変化は、基材となる樹脂に熱膨張係数の大きいタイプの樹脂を用いることにより大きくすることができる。しかし、熱膨張係数の大きいタイプの樹脂を用いると、基板ホルダーに室温で固定した樹脂を成膜温度まで加熱する際に撓み等の変形が生じるので、積層型アクチュエータの形状を一定に保つことができず、形状変化の制御が難しいという問題があった。
特許文献1は、二方向性形状記憶合金薄膜アクチュエータとそれに使用される形状記憶合金薄膜の製造方法に関するものであり、積層型アクチュエータに二方向性形状記憶効果を与える別な方法として、形状記憶合金薄膜のバリアント再配列変形域内で、基板に塑性変形を与える方法が記載されている。
しかし、この場合は使用時にも積層型アクチュエータに塑性変形が導入されることになり、使用とともに積層型アクチュエータの性能が劣化するという問題があった。
また、この方法では、形状記憶合金薄膜がマルテンサイト相を示す低温度域で基板が塑性変形する必要があり、室温で大きい弾性変形を示すポリイミド等を前記基板として用いることができないという問題もあった。
再表2008−142980号公報
A.Ishida,M.Sato:Thin Solid Films 516(2008)7836−7839.
本発明は、形状の変化が大きく、形状変化の大きさや方向の制御が容易であるとともに、使用による性能の劣化を抑制した薄膜アクチュエータの製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の構成を有する。
(1)樹脂薄膜と形状記憶合金薄膜とを積層してなる積層薄膜を拘束加熱する薄膜アクチュエータの製造方法であって、前記拘束加熱が、前記積層薄膜を型部材の一面に固定した状態で、前記樹脂薄膜の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満の熱処理温度で加熱する処理であり、前記積層薄膜のひずみが2%以下となるように拘束することを特徴とする薄膜アクチュエータの製造方法。
)前記型部材の一面に前記積層薄膜を押し付けた状態で、固定部材により前記積層薄膜を型部材の一面に固定することを特徴とする()に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
) 前記型部材の一面に凸部が備えられるとともに、前記固定部材に凹部が備えられており、前記型部材の一面に前記積層薄膜を押し付けた状態で、前記凹部を前記凸部に嵌合させて前記積層薄膜を型部材の一面に固定することを特徴とする()に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
)前記樹脂薄膜に前記形状記憶合金薄膜を成膜して、前記積層薄膜を形成することを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
)前記形状記憶合金薄膜に前記樹脂薄膜を塗布して又は接着剤で貼り付けて、前記積層薄膜を形成することを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
)前記樹脂薄膜がポリイミドフィルムであることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
)前記拘束加熱の温度が60℃以上450℃未満の温度範囲のいずれかの温度であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
)前記形状記憶合金薄膜がTiNiCu合金薄膜であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
)前記形状記憶合金薄膜と樹脂薄膜の膜厚の総和が400μm以下であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
10)前記積層薄膜に、別の薄膜が1層以上積層されていることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
本発明の薄膜アクチュエータの製造方法は、樹脂薄膜と形状記憶合金薄膜とを積層してなる積層薄膜を拘束加熱する構成なので、拘束加熱の過程で塑性変形を受けて形状が変化した樹脂薄膜と、弾性変形のみで形状変化の起きていない形状記憶合金薄膜の間に拘束を解放した後にも形状の差異に起因した内部応力が発生し、これがバイアス力となって積層薄膜に2方向性形状記憶効果を与えるために、形状の変化が大きく、形状変化の大きさや方向の制御が容易であるとともに、使用による性能の劣化を抑制した薄膜アクチュエータの製造方法を提供することができる。
成膜直後の積層薄膜の一例を示す図である。 型部材に固定した積層薄膜の一例を示す図である。 型部材に固定した積層薄膜の別の一例を示す図である。 湾曲させた薄膜に発生するひずみを示す図である。 ポリイミドフィルム(カプトン100EN)の2%引張り変形を維持する負荷荷重の温度変化を示すグラフである。 ポリイミドフィルム(カプトン100EN)の2%引張り変形を200℃で維持する負荷荷重の時間変化を示すグラフである。 93℃、143℃及び194℃でのTi48.5Ni51.5合金薄膜の応力−ひずみ曲線を示すグラフである。 本発明の薄膜アクチュエータの動作を示す側面図である。 本発明の薄膜アクチュエータの別の一例を示す斜視図である。 本発明の薄膜アクチュエータの更に別の一例を示す斜視図である。 試験例1〜4を示す写真である。 試験例5〜8を示す写真である。 成膜直後の積層薄膜を示す写真である。 実施例を示す写真である。
(本発明の第1の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態である薄膜アクチュエータの製造方法について説明する。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータの製造方法は、樹脂薄膜と形状記憶合金薄膜とを積層して形成した積層薄膜を拘束加熱する工程を有する。
樹脂薄膜及び形状記憶合金薄膜としては、例えば、ポリイミド及びTiNiCu合金薄膜を用いる。
樹脂薄膜と形状記憶合金薄膜とを積層して積層薄膜を形成する方法としては、例えば、樹脂薄膜に形状記憶合金薄膜を成膜する方法、形状記憶合金薄膜に樹脂薄膜を塗布する又は接着剤で貼り付ける方法等を挙げることができる。
樹脂薄膜に形状記憶合金薄膜を成膜する方法として、例えばスパッタ法がある。合金ターゲットあるいは複数の純金属ターゲットを低圧のArガス雰囲気でスパッタリングすることによりポリイミド基板上に形状記憶合金薄膜を成膜する。
また、形状記憶合金薄膜に樹脂薄膜を塗布する方法では、まず、形状記憶合金を圧延したり、急冷凝固したりすることにより形状記憶合金薄膜を作成する。
次に、前記形状記憶合金薄膜の一面に、スピンコーティング法又はデッピング法等により、樹脂を塗布し、これを乾燥させて、積層薄膜を形成する。
更に、形状記憶合金薄膜に樹脂薄膜を接着剤で貼り付ける方法では、まず、塗布法と同様にして、形状記憶合金薄膜を作成する。
次に、前記形状記憶合金薄膜の一面に、接着剤を塗布し、この上に樹脂薄膜を配置して、押し付けた後、これを乾燥させて、積層薄膜を形成する。
図1は、形成直後の積層薄膜の図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は側面図である。
図1に示すように、形成直後の積層薄膜23は、平面視長方形状の樹脂薄膜21と平面視長方形状の形状記憶合金薄膜22とが積層されてなり、熱ひずみが存在しない場合は樹脂薄膜21と形状記憶合金薄膜22との間に力が働かないために、フラットな形状である。
形状記憶合金薄膜22は、拘束加熱時に弾性変形可能な材料からなる。また、形状記憶合金薄膜22の変態温度は、後述の樹脂の塑性変形開始温度以下であることが望ましい。
形状記憶合金薄膜22として、TiNiCu合金薄膜が好ましい。TiNiCu合金薄膜の変態温度はポリイミド樹脂の塑性変形開始温度である60℃よりも低く、30〜50℃にあるからである。
樹脂薄膜21はポリイミドであることが好ましい。ポリイミドは耐熱温度が450℃と高いので高温での拘束加熱が可能である。また、塑性変形開始温度が60℃であるので、アクチュエータの使用時に塑性変形が導入されることがなく、使用とともに発生する薄膜アクチュエータの性能の劣化を抑制することができる。
なお、前記積層薄膜に、形状記憶合金薄膜や金属薄膜などの別の薄膜が1層以上積層されていてもよい。
次に、形成直後の積層薄膜23を拘束加熱する工程を説明する。
拘束加熱は、積層薄膜を型部材の一面に固定した状態で、樹脂薄膜の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満の温度まで加熱する処理である。
まず、図2に示すように、円柱状の型部材31の側面に積層薄膜23を巻きつけて固定部材36で端部を押さえつけてから、固定部材36をねじ35a、35bにより固定する。なお、図2では省略しているが、積層薄膜23の反対側の端部も同様に固定部材及びねじにより固定されている。
なお、固定方法は、上記に限られるものではない。図3は、別の固定方法を説明する図である。図3(a)、(b)は、型部材に積層薄膜を配置した時点の図であって、それぞれ平面図と側面図である。まず、型部材31の凸部31aを覆うように、成膜直後の積層薄膜23を配置する。次に、図3(c)に示すように、積層薄膜23を型部材31の一面に配置した状態で、固定部材32の凹部32bを凸部31aに嵌合させて、積層薄膜23を型部材31の一面に固定する。複雑な形状の薄膜アクチュエータを形成する場合は、この方法の方が好ましい。
拘束する形状は特に限定されず、任意の形状とすることができる。
しかし、積層薄膜の変形時のひずみは2%以下となるように拘束することが好ましい。積層薄膜のひずみを2%以下とすることにより、形状記憶合金薄膜22に塑性変形させることなく、弾性変形領域にとどめて、塑性変形させた樹脂薄膜と組み合わせて、2方向形状記憶効果を発現させることができる。なお、薄膜アクチュエータ23の形状変化の大きさは、拘束加熱時の変形量によって制御することができる。拘束時の変形量を大きくするほど、薄膜アクチュエータの形状変化は大きくなる。
前記変形量が2%を超える場合は、形状記憶合金薄膜22に塑性変形が導入され、拘束加熱の効果が徐々に失われるおそれが発生し、好ましくない。
厚さtの薄膜を曲率半径rの形状に湾曲させて拘束した場合、最大のひずみεは図4に示すように薄膜の表面で発生し、大きさはε=t/2rで求められる。拘束加熱によって与えるひずみは2%以下とすることが望ましいことからt/2r<0.02、即ち形状記憶合金薄膜22と樹脂薄膜21を合わせた積層薄膜23の厚さtは拘束の曲率半径rの4%以下であることが望ましい。
従来の熱ひずみを利用した積層薄膜の形状変化は図13にもあるように曲率半径で10mm程度であるので、より大きい形状変化を得るためには10mmよりも小さい曲率半径で拘束することが望ましく、その場合は形状記憶合金薄膜と樹脂膜を合わせた積層薄膜の厚さを400μm以下とすることが望ましい。
次に、型部材31で固定された積層薄膜23を、オーブンの中に配置し、樹脂薄膜21の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満まで加熱する。特に高温で保持する必要はないが、高温での保持は樹脂薄膜のクリープ変形を促進させ、拘束加熱の効果をさらに大きくする。
拘束時の温度は、樹脂薄膜21の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満とすることが好ましい。塑性変形開始温度以上の温度範囲とすることにより、樹脂薄膜21は急速に塑性変形しやすくなり、樹脂薄膜21を容易に塑性変形できる。また、樹脂薄膜21の耐熱温度未満とすることにより、樹脂薄膜21の構造を破壊することなく、安定な構造を保たせることができる。
樹脂薄膜21としてポリイミドを用いた場合には、拘束加熱の温度を60℃以上450℃未満の温度範囲にすることが好ましい。
熱処理温度の上限は、ポリイミドの耐熱温度が約450℃であるためである。また、熱処理温度の下限は、図5のグラフから得られた塑性変形開始温度から決定した。
図5は、ポリイミドフィルム(カプトン100EN)の2%引張り変形を維持する負荷荷重の温度変化を示すグラフである。図5には、実測値(太い実線)の他に、応力緩和がない場合の値(破線)と、50℃以下の実測値から推定される熱膨張による応力緩和を示す値(点線)が示され、熱膨張による応力緩和の割合と、塑性変形による応力緩和の割合が矢印で示されている。50℃〜100℃の範囲の実測値の傾きから導き出される線と、50℃以下の実測値から推定される熱膨張による応力緩和を示す値(点線)とが重なる点が塑性変形開始温度であり、60℃である。熱処理温度を高くすれば、塑性ひずみをより増大させることができる。
図6は、ポリイミドフィルム(カプトン100EN)の2%引張り変形を200℃で維持する負荷荷重の時間変化を示すグラフである。
図6に示すように、ポリイミドフィルムは200℃で負荷荷重の印加を続けることにより、徐々にクリープ変形が起き、塑性変形が導入されることが分かる。つまり、熱処理温度で保持することにより、塑性ひずみをより増大させることができる。
樹脂薄膜21の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満の温度範囲では、形状記憶合金薄膜22は弾性変形領域に属する。
図7は、93℃、143℃及び194℃でのTi48.5Ni51.5合金薄膜の応力−ひずみ曲線を示すグラフである。図7に示すように、各温度の応力−ひずみ曲線は、弾性変形から塑性変形に移る時のひずみ(以下、弾性限)を有する。143℃及び194℃での弾性限は、塑性変形により、ひずみ約2.0%で生じる。一方、93℃では弾性変形の途中で応力誘起マルテンサイト変態による変形が始まり、ひずみ約2.0%では塑性変形が導入されない。つまり、ひずみが約2%以下であれば、93℃〜194℃の範囲では形状記憶合金薄膜は弾性変形領域に属する。
TiNiCu合金薄膜も同様の特性を有し、樹脂薄膜21の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満の温度範囲では、弾性変形領域に属する。
なお、後述する試験例5〜8の図12に示すように、形状記憶合金薄膜の形状は400℃まで不変であるので、樹脂薄膜21の耐熱温度未満の温度範囲では、形状記憶合金薄膜22が樹脂薄膜21と同程度までに塑性変形をすることは考えられない。
拘束時の温度を樹脂薄膜21の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満とした場合には、形成記憶合金薄膜22は弾性変形領域にあるが、樹脂薄膜21は塑性変形される。
そのため、拘束から解放したとき、変態温度以上では、母相状態の形状記憶合金薄膜22と樹脂薄膜21の間には形状の違いから内部応力が発生して積層薄膜23は図8に示すように湾曲する(湾曲形状10a)。次に、形状記憶合金薄膜22を変態温度未満に冷却してマルテンサイト相にすると、前記の内部応力がバイアス力となってひずみを緩和するように形状記憶合金薄膜22の形状が変化する結果、薄膜アクチュエータ10は、図8に示すようにフラットに近い形状になる(フラット形状10b)。この相変態に伴う積層薄膜23の形状変化は、加熱・冷却を行うことにより可逆であり、二方向形状記憶効果を発現させる。
なお、図8では、積層薄膜23は、曲率中心が樹脂薄膜21側となるように、湾曲されているが、曲げ方向はこれに限られるものではなく、形状記憶合金薄膜22側に曲率中心があるように湾曲させてもよい。
一方、熱処理温度を樹脂薄膜21の塑性変形開始温度未満とした場合には、樹脂薄膜21を塑性変形させることができず、形状記憶合金薄膜と樹脂薄膜は共に弾性変形領域にあるので、拘束状態から解放すると拘束加熱前の大きさと形状に戻る。
また、樹脂薄膜21を塑性変形させなければ、形状記憶合金薄膜22に内部応力が働かないので、加熱・冷却しても、積層薄膜23の形状を変化させることができない。
また、拘束時の温度を樹脂薄膜21の耐熱温度以上とした場合には、樹脂薄膜21の構造を破壊し、樹脂薄膜21を不安定な構造とする。その結果、積層薄膜23の形状変化を制御できない。
以上の工程により、形成直後の内部応力を有しないフラット形状の積層薄膜23を、樹脂薄膜21と形状記憶合金薄膜22の間に内部応力を有し、そのバイアス力によって図8に示すような2方向性形状記憶効果を示す薄膜アクチュエータを製造することができる。
(本発明の第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態である薄膜アクチュエータについて説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態である薄膜アクチュエータを示す斜視図である。
図9に示すように、薄膜アクチュエータ11は、平面視長方形状の樹脂薄膜21と平面視長方形状の形状記憶合金薄膜22とが積層されてなる積層薄膜23から構成されている。
薄膜アクチュエータ11は、形状記憶合金薄膜22の変態温度以上では、長軸と短軸からなる面に垂直な方向に対して突出する凸部と窪む凹部が、長軸方向に交互に配置される波形形状11aとされている。この凸部と凹部は、薄膜アクチュエータ11を形状記憶合金薄膜22の変態温度未満とすることにより、平坦形状11bとなる。この変形は加熱冷却により可逆であり、二方向性形状記憶効果を発現する。
(本発明の第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態である薄膜アクチュエータについて説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態である薄膜アクチュエータを示す斜視図である。
図10に示すように、薄膜アクチュエータ12は、円板状の樹脂薄膜21と円板状の形状記憶合金薄膜22とが積層されてなる積層薄膜23から構成されている。
薄膜アクチュエータ12は、形状記憶合金薄膜22の変態温度以上では、中心部に形状記憶合金薄膜22側に突出する半球状の突出部を有する形状12aとされている。この突出部は、薄膜アクチュエータ12を形状記憶合金薄膜22の変態温度未満とすることにより、平坦形状12bとなる。この変形は加熱冷却により可逆であり、二方向性形状記憶効果を発現する。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、樹脂薄膜21と形状記憶合金薄膜22とを積層してなる積層薄膜23を拘束加熱する構成なので、塑性変形によって形状が変化した樹脂薄膜21と、弾性変形のみで形状が変化していない形状記憶合金薄膜22とが積層された積層薄膜23からなる薄膜アクチュエータ10、11、12を製造することができ、形状の変化が大きく、形状変化の大きさや方向の制御が容易であるとともに、使用による性能の劣化を抑制した薄膜アクチュエータを提供することができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、型部材31の一面に積層薄膜23を押し付けた状態で、固定部材36により積層薄膜23を型部材31の一面に固定する構成なので、任意の形状の薄膜アクチュエータを容易に形成できる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、型部材31の一面に凸部31aが備えられるとともに、固定部材32に凹部32bが備えられており、型部材31の一面に積層薄膜23を押し付けた状態で、凹部32bを凸部31aに嵌合させて積層薄膜23を型部材31の一面に固定する構成なので、複雑な形状の薄膜アクチュエータをより容易に形成できる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、積層薄膜23の変形量が2%以下となるように拘束する構成なので、形状記憶合金薄膜を塑性変形させることがなく、薄膜アクチュエータの形状変化の方向、動きを正確に制御することができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、樹脂薄膜21に形状記憶合金薄膜22を成膜して、積層薄膜23を形成する構成なので、形状変化の方向、動きを正確に制御した積層型薄膜アクチュエータを容易に形成できる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、形状記憶合金薄膜22に樹脂薄膜21を塗布して又は接着剤で貼り付けて、積層薄膜23を形成する構成なので、膜厚を正確に制御することができるとともに、膜厚の面内バラつきを抑制して、薄膜アクチュエータの形状変化の方向、動きを正確に制御することができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、樹脂薄膜21がポリイミドフィルムである構成なので、塑性変形された樹脂薄膜を容易に形成でき、かつ、使用による性能の劣化を抑制した薄膜アクチュエータとすることができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、前記拘束加熱の温度が60℃以上450℃未満の温度である構成なので、塑性変形によって形状が変化した樹脂薄膜と、弾性変形のみで形状が変化していない形状記憶合金薄膜とからなる積層薄膜を形成して、形状の変化が大きく、形状変化の大きさや方向の制御が容易な薄膜アクチュエータを提供することができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12の製造方法は、形状記憶合金薄膜22がTiNiCu合金薄膜である構成なので、形状記憶合金薄膜を塑性変形させることがなく、薄膜アクチュエータの形状変化の方向、動きを正確に制御することができるとともに、使用による性能の劣化を抑制した薄膜アクチュエータとすることができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12は、形状記憶合金薄膜と樹脂薄膜の厚さの総和が400μm以下である構成なので、形状記憶合金薄膜を塑性変形させることなく大きい形状変化が得られ、形状変化の大きさや方向の制御が容易な薄膜アクチュエータを提供することができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータ10、11、12は、積層薄膜23に、別の薄膜が1層以上積層されている構成なので、電極層を付加したり、変形を多段階化した薄膜アクチュエータを提供することができる。
本発明の実施形態である薄膜アクチュエータの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試験例1〜4)
[樹脂薄膜]
まず、樹脂薄膜として、長さ20mm、幅3mm、厚さ25μmの平面視長方形状のポリイミドフィルム(カプトンEN)を4本用意した。
次に、外径7mmの円柱状のステンレス管に前記樹脂薄膜の1本を巻きつけて固定した状態で、室温で1時間放置してから、前記ステンレス管から前記樹脂薄膜を解放して、試験例1を作成した。
次に、98℃としたオーブン内で1時間放置した他は第1の試験例と同様にして、試験例2を作成した。
次に、190℃としたオーブン内で1時間放置した他は第1の試験例と同様にして、試験例3を作成した。
次に、370℃としたオーブン内で1時間放置した他は第1の試験例と同様にして、試験例4を作成した。
次に、各樹脂薄膜の形状を撮影した。
図11は、各樹脂薄膜(試験例1〜4)の形状の写真である。室温で処理した第1の試験例は拘束加熱前の形状に戻った。しかし、98℃、190℃、370℃で熱処理した試験例2〜4は塑性変形した。370℃で熱処理した試験例4が最も拘束時の形状に近いものとなった。
(試験例5〜8)
[形状記憶合金薄膜]
次に、形状記憶合金薄膜として、長さ20mm、幅3mm、厚さ8μmの平面視長方形状のTi49.6Ni34.9Cu15.5合金薄膜を4本用意した。
次に、外径7mmの円柱状のステンレス管に前記形状記憶合金薄膜の1本を巻きつけて固定した状態で、室温で1時間放置してから、前記ステンレス管から前記形状記憶合金薄膜を解放した。これにより、試験例5を作成した。
次に、前記ステンレス管に前記形状記憶合金薄膜の別の1本を巻きつけて固定した状態で、98℃としたオーブン内で1時間放置してから、前記ステンレス管から前記形状記憶合金薄膜を解放した。次に、母相状態での形状を見るために、100℃まで加熱して冷却し、これを試験例6とした。
次に、200℃としたオーブン内で1時間放置した他は試験例6と同様にして、試験例7を作成した。
次に、400℃としたオーブン内で1時間放置した他は試験例6と同様にして、試験例8を作成した。
次に、各形状記憶合金薄膜の形状を撮影した。
図12は、各形状記憶合金薄膜(試験例5〜8)の形状の写真である。各形状記憶合金薄膜は拘束加熱前のフラットな形状に戻った。
(実施例)
[積層薄膜]
次に、厚さ25μmのポリイミド(カプトン100EN)フィルムを用意し、Ti,Ni,Cuターゲットを備えたカルーセル型多元マグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内の基板ホルダーに取り付けてから、前記チャンバー内を減圧した。
次に、前記ポリイミドフィルムを310℃まで加熱し、60rpmで前記基板ホルダーを回転させた状態で、150分間、Ti,Ni,Cuターゲットを所定の電力でスパッタして、前記ポリイミドフィルム上に厚さ8μmの結晶性のTi48.5Ni33.5Cu18合金薄膜を成膜した。このとき、Ti,Ni,Cuターゲットの所定の電力は、それぞれ1000,219,82Wとした。
以上の工程により、厚さ25μmのポリイミド(カプトン100EN)フィルムと厚さ8μmのTi48.5Ni33.5Cu18合金薄膜とが積層された積層薄膜を作成した。
なお、前記合金組成はICP(原子吸光分析)によって同定した。
図13は、成膜後の積層薄膜の写真である。
図13(a)は、成膜後の積層薄膜を室温(26℃)で上面から撮影した写真である。積層薄膜は湾曲せず、フラットであった。
図13(b)は、積層薄膜を100℃に加熱して側面から撮影した写真である。積層薄膜はポリイミド側に曲率中心を有するようにわずかに湾曲し、室温(26℃)と100℃の間の加熱・冷却により二方向性形状記憶効果を示した。しかし、100℃にした時の形状変化は曲率半径で10.5mmと小さかった。図13に見られる二方向形状記憶効果は積層薄膜を成膜温度から室温まで冷却した際に発生した熱ひずみによって得られたものである。
次に、前記積層薄膜を外径7mmのステンレス管に巻きつけた状態(曲率半径3.5mmで拘束)で、150℃で20分間保持して、拘束加熱を行った積層薄膜(実施例の薄膜アクチュエータ)を作成した。
図14(a)は、実施例の薄膜アクチュエータを室温(26℃)で側面から撮影した写真である。積層薄膜はわずかに湾曲したが、ほとんどフラットであった。
図14(b)は、実施例の薄膜アクチュエータを100℃に加熱して側面から撮影した写真である。積層薄膜はポリイミド側に曲率中心を有するように湾曲した。この時の曲率半径は7.5mmであり、成膜後の積層薄膜に比べて形状の変化は大きくなった。
即ち、拘束加熱によって実施例の薄膜アクチュエータの形状変化を大きくすることができた。
また、実施例の薄膜アクチュエータは、室温(26℃)と100℃の間の加熱・冷却により可逆変形し、二方向性形状記憶効果を示した。
本発明の薄膜アクチュエータの製造方法は、形状の変化が大きく、形状変化の大きさや方向の制御が容易であるとともに、使用による性能の劣化を抑制した薄膜アクチュエータの製造方法に関するものであり、薄膜アクチュエータを製造・利用するデバイス産業等において利用可能性がある。
10…薄膜アクチュエータ、10a…湾曲形状、10b…フラット形状、11…薄膜アクチュエータ、11a…波形形状、11b…平坦形状、12…薄膜アクチュエータ、12a…突出部を有する形状、12b…平坦形状、21…樹脂薄膜、22…形状記憶合金薄膜、23…積層薄膜、31…型部材、31a…凸部、32…固定部材、32b…凹部、35a,b…ねじ、36…固定部材、ε…最大のひずみ、t…薄膜の厚さ、r…曲率半径。

Claims (10)

  1. 樹脂薄膜と形状記憶合金薄膜とを積層してなる積層薄膜を拘束加熱する薄膜アクチュエータの製造方法であって、
    前記拘束加熱が、前記積層薄膜を型部材の一面に固定した状態で、前記樹脂薄膜の塑性変形開始温度以上耐熱温度未満の熱処理温度で加熱する処理であり、
    前記積層薄膜のひずみが2%以下となるように拘束することを特徴とする薄膜アクチュエータの製造方法。
  2. 前記型部材の一面に前記積層薄膜を押し付けた状態で、固定部材により前記積層薄膜を型部材の一面に固定することを特徴とする請求項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  3. 前記型部材の一面に凸部が備えられるとともに、前記固定部材に凹部が備えられており、前記型部材の一面に前記積層薄膜を押し付けた状態で、前記凹部を前記凸部に嵌合させて前記積層薄膜を型部材の一面に固定することを特徴とする請求項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  4. 前記樹脂薄膜に前記形状記憶合金薄膜を成膜して、前記積層薄膜を形成することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  5. 前記形状記憶合金薄膜に前記樹脂薄膜を塗布して又は接着剤で貼り付けて、前記積層薄膜を形成することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  6. 前記樹脂薄膜がポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  7. 前記拘束加熱の温度が60℃以上450℃未満の温度範囲のいずれかの温度であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  8. 前記形状記憶合金薄膜がTiNiCu合金薄膜であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  9. 前記形状記憶合金薄膜と樹脂薄膜の膜厚の総和が400μm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
  10. 前記積層薄膜に、別の薄膜が1層以上積層されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の薄膜アクチュエータの製造方法。
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