以下、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態について説明する。なお、図2、図17、図18は、この発明が理解できる程度に、各構成要素の形状、大きさ、及び配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。また、以下に説明する実施の形態は、単なる好適例にすぎず、従って、この発明の構成は、以下に説明する図示の構成例のみに何ら限定されるものではなく、この発明の範囲を逸脱することなく、多くの変形や変更を行い得ることが明らかである。
〈第1の実施の形態〉
第1の実施の形態では、熱蛍光体とエポキシ樹脂とを含んで構成された熱蛍光板状体及びその製造方法について説明する。
第1の実施の形態による熱蛍光板状体の製造方法は、第1工程から第4工程までを含んでいる。以下、図1及び図2を参照して、第1工程から順に各工程につき説明する。
図1は、この発明の第1の実施の形態を説明するための図であり、第1の実施の形態に係る熱蛍光板状体の製造方法のフローチャートある。
また、図2は、この第1の実施の形態による熱蛍光板状体の製造方法を説明する工程図であり、この第1の実施の形態による熱蛍光板状体の製造方法の第4工程において得られる構造体を概略的な斜視図で示してある。
まず、第1工程では、四ホウ酸リチウム(Li2B4O5)、酸化ホウ素(B2O3)、及び酸化銅(II)(CuO)を粉砕混合することによって第1混合体を形成する(図1に示すS1参照)。
この第1の実施の形態では、上述した第1混合体の各材料のうちの四ホウ酸リチウム及び酸化ホウ素から、形成すべき熱蛍光体の母体となる七ホウ酸リチウムを形成する。
そして、四ホウ酸リチウム及び酸化ホウ素を材料として用いて七ホウ酸リチウムを収率良く、すなわち四ホウ酸リチウム及び酸化ホウ素から形成される七ホウ酸リチウムとは別の不純物の含有量を抑えて形成するために、これら四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを、好ましくは例えば四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1、6:1、または2:1のいずれかのモル比で混合する。より好ましくは、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを、四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で混合することによって、他のモル比で混合した場合と比して良好な収率で七ホウ酸リチウムを形成することができる。
表1に、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とのモル比の各好適例における四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素の添加量を示す。なお、表1には、それぞれ後述する、各モル比における酸化銅(II)の添加量の好適例、各モル比で熱蛍光体を製造した際の実効原子番号、及び製造される熱蛍光板状体の実効原子番号についても並べて示してある。
四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で混合するために、例えば507.3gの四ホウ酸リチウムと69.6gの酸化ホウ素とを混合するのが好ましい。
また、四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=6:1のモル比で混合するために、例えば1014.6gの四ホウ酸リチウムと69.6gの酸化ホウ素とを混合するのが好ましい。
また、四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=2:1のモル比で混合するために、例えば338.2gの四ホウ酸リチウムと69.6gの酸化ホウ素とを混合するのが好ましい。
また、酸化銅(II)に含まれる銅は、製造される熱蛍光体において、母体中に存在する発光中心として作用する。
ここで、続く第2工程において形成すべき熱蛍光体は、この第1工程において混合する酸化銅(II)の添加量に応じて熱蛍光の発光強度が変化する。
そこで、熱蛍光の発光強度を高くするために酸化銅(II)を、第1混合体(すなわちこの酸化銅(II)と四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素との混合体)に対して例えば0.10〜0.35wt%の範囲内の割合となるように混合するのが好ましい。
従って、第1混合体を形成するために上述したように例えば507.3gの四ホウ酸リチウム及び69.6gの酸化ホウ素を添加する場合には、酸化銅(II)を例えば0.58〜2.02gの範囲内の質量で混合するのが好ましい。
また、1014.6gの四ホウ酸リチウム及び69.6gの酸化ホウ素を添加する場合には、酸化銅(II)を例えば1.08〜3.79gの範囲内の質量で混合するのが好ましい。
また、338.2gの四ホウ酸リチウム及び69.6gの酸化ホウ素を添加する場合には、酸化銅(II)を例えば0.41〜1.42gの範囲内の質量で混合するのが好ましい。
次に、第2工程では、上述した第1工程において得た第1混合体を熱処理することによって、この第1混合体に含まれている四ホウ酸リチウム及び酸化ホウ素から七ホウ酸リチウムを形成する。その結果、第1混合体を、母体としての七ホウ酸リチウムと、前記母体中に存在する発光中心としての銅とを含む熱蛍光体に変える(図1に示すS2参照)。
この熱処理の温度は、この第1混合体から七ホウ酸リチウムが生成される温度であれば良く、例えば800〜850℃の範囲内の温度で、より好適には850℃の温度で6時間程度熱処理を行うのが好ましい。ここで得られた七ホウ酸リチウムには、発光中心としての銅が含まれている。
その結果、四ホウ酸リチウム及び酸化ホウ素から形成された母体としての七ホウ酸リチウムと、酸化銅(II)由来の、母体中に存在する発光中心としての銅とを含む粉末状の熱蛍光物質、すなわち熱蛍光体を得ることができる。
なお、発光中心である銅は、例えば、単体の銅としてのみではなく、酸化物の状態で、または熱蛍光体に含まれるその他の物質との化合物等の状態で含まれている場合もあり得る。
このようにして得られる熱蛍光体を、人体に対する放射線の被曝線量に関するデータを取得するための線量計の材料として利用するためには、熱蛍光体の実効原子番号Zeffが人体の実効原子番号と近似な値に調整されているのが好ましい。
一般に、人体の筋肉組織の実効原子番号は、7.42程度である(例えば、「医療科学社 改訂版 放射線計測学 日本放射線技術学会監修 P.136(ファイルNo.1−2)」参照)。従って、実効原子番号の算出方法や、その決定時のバラツキを考慮すると、第1の実施の形態による熱蛍光板状体を、実効原子番号が7.3〜7.6程度までの範囲内の値、またはその近傍の値に調整されているのが好ましい。
以下、この点についてより具体的に説明する。
すなわち、この第1の実施の形態では、上述した第1工程において、507.3gの四ホウ酸リチウム、69.6gの酸化ホウ素、及び第1混合体に対して0.10wt%の酸化銅(II)を混合して第1混合体を形成した場合には、実効原子番号が約7.32に調整された熱蛍光体が得られる。
また、上述した第1工程において、507.3gの四ホウ酸リチウム、69.6gの酸化ホウ素、及び第1混合体に対して0.35wt%の酸化銅(II)を混合して第1混合体を形成した場合には、実効原子番号が約7.59に調整された熱蛍光体が得られる。
従って、第2工程において形成される熱蛍光体は、第1工程において四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で形成した第1混合体に対して0.10wt%の割合で酸化銅(II)を混合した場合、及び第1混合体に対して0.35wt%の割合で酸化銅(II)を混合した場合において、実効原子番号が人体に近似な値として望まれる7.3〜7.6の範囲内に収まる。
また、表1に示すように、上述した第1工程において、1014.6gの四ホウ酸リチウム、69.6gの酸化ホウ素、及び第1混合体に対して0.10wt%の酸化銅(II)を混合して第1混合体を形成した場合には、実効原子番号が約7.32に調整された熱蛍光体が得られる。
また、上述した第1工程において、1014.6gの四ホウ酸リチウム、69.6gの酸化ホウ素、及び第1混合体に対して0.35wt%の酸化銅(II)を混合して第1混合体を形成した場合には、実効原子番号が約7.59に調整された熱蛍光体が得られる。
また、上述した第1工程において、338.2gの四ホウ酸リチウム、69.6gの酸化ホウ素、及び第1混合体に対して0.10wt%の酸化銅(II)を混合して第1混合体を形成した場合には、実効原子番号が約7.33に調整された熱蛍光体が得られる。
また、上述した第1工程において、338.2gの四ホウ酸リチウム、69.6gの酸化ホウ素、及び第1混合体に対して0.35wt%の酸化銅(II)を混合して第1混合体を形成した場合には、実効原子番号が約7.60に調整された熱蛍光体が得られる。
なお、熱蛍光体の実効原子番号Zeffは、例えば「福田覚、前川昌之著、放射線物理学演習(第2版)P63−64、東洋書店、2005年」等に記載されている、下式(1)から算出することができる。
Zeff=(a1Z1 2.94+a2Z2 2.94+a3Z3 2.94+…)1/2.94=(ΣaiZi2.94)1/2.94 ・・・(1)
この式(1)において、a1、a2、a3、…は、化合物または混合物に含まれる各原子の原子番号Z1、Z2、Z3、…に属する電子の全電子数に対する割合を示す。
次に、第3工程では、上述した第2工程において得られた粉末状である熱蛍光体、セルロース、酸化ケイ素、及びエポキシ樹脂を混合することによって第2混合体を形成する(図1に示すS3参照)。
エポキシ樹脂は、この実施の形態において製造される熱蛍光板状体において、当該熱蛍光板状体が平板状の板状体としての形状を維持するためのバインダとして機能する。
そして、製造すべき熱蛍光板状体の実効原子番号を人体と近似な値に調整するために、エポキシ樹脂として例えばブレニー技研GM−9005(商標名)を用いるのが好ましい。
また、セルロース及び酸化ケイ素は、製造すべき熱蛍光板状体の実効原子番号を人体と近似な値に調整するために添加する。
そして、製造する熱蛍光板状体の実効原子番号を人体と近似な値に調整するためには、第2混合体を構成する熱蛍光体、セルロース、酸化ケイ素、及びエポキシ樹脂の各重量を例えば以下のように調整するのが好適である。
すなわち、熱蛍光体を13.2g、セルロースを1.3g、酸化ケイ素を0.6g、及びエポキシ樹脂を3.2gに各々調整して第2混合体を形成するのが好ましい。
そして、熱蛍光体として、上述した第1工程において、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1で混合し、かつ混合体に対して0.10wt%の酸化銅(II)を混合して得た混合体から形成した熱蛍光体を用いる場合には、第2混合体、及びこの第2混合体から形成される熱蛍光板状体を構成する実験式はC3.10H3.46O6.08Li1.35Si0.10B3.16Cu0.0015となり、熱蛍光板状体全体の実効原子番号は上述した式(1)に示すように7.25となる(表1参照)。
従って、このとき製造される熱蛍光板状体の実効原子番号は、人体に近似な値として望まれる7.3〜7.5の範囲の近傍の値となる。
また、表1に示すように、熱蛍光体として、上述した第1工程において、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1で混合し、かつ混合体に対して0.35wt%の酸化銅(II)を混合して得た混合体から形成した熱蛍光体を用いる場合には、製造される熱蛍光板状体全体の実効原子番号は7.40となる。また、熱蛍光体として、上述した第1工程において、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=6:1で混合し、かつ混合体に対して0.01wt%の酸化銅(II)を混合して得た混合体から形成した熱蛍光体を用いる場合には、製造される熱蛍光板状体全体の実効原子番号は7.24となる。また、熱蛍光体として、上述した第1工程において、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=6:1で混合し、かつ混合体に対して0.35wt%の酸化銅(II)を混合して得た混合体から形成した熱蛍光体を用いる場合には、製造される熱蛍光板状体全体の実効原子番号は7.38となる。また、熱蛍光体として、上述した第1工程において、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=2:1で混合し、かつ混合体に対して0.01wt%の酸化銅(II)を混合して得た混合体から形成した熱蛍光体を用いる場合には、製造される熱蛍光板状体全体の実効原子番号は7.25となる。また、熱蛍光体として、上述した第1工程において、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=2:1で混合し、かつ混合体に対して0.35wt%の酸化銅(II)を混合して得た混合体から形成した熱蛍光体を用いる場合には、製造される熱蛍光板状体全体の実効原子番号は7.39となる。
また、この第1の実施の形態では、上述した各重量で熱蛍光体、セルロース、酸化ケイ素、及びエポキシ樹脂を混合して第2混合体を形成することによって、製造すべく熱蛍光板状体を、実効原子番号のみでなく、さらに密度についても人体と近似な値に調整して形成することができる。
すなわち、例えば、上述した第1工程において、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1で混合し、かつ混合体に対して0.10wt%の酸化銅(II)を混合して得た混合体から形成した熱蛍光体を用いる場合において、熱蛍光体、セルロース、酸化ケイ素、及びエポキシ樹脂を上述した各重量(すなわち、熱蛍光体:13.2g、セルロース:1.3g、酸化ケイ素:0.6g、及びエポキシ樹脂:3.2g)で第2混合体を形成することによって、製造する熱蛍光板状体の密度を1g/cm3に調整することができる。周知の通り人体の筋肉組織の密度は1gcm−3程度であるため、この実施の形態において製造される熱蛍光板状体を、実効原子番号のみならず密度についても人体と近似な値に調整することができる。
次に、第4工程では、第2混合体を熱処理することによって熱蛍光板状体105を形成する(図2及び図1に示すS4参照)。
この熱処理は、第2混合体を固化させることによって熱蛍光板状体105に変える目的で行われる。そのために、この熱処理を例えば80℃程度の温度で24時間程度熱処理を行うのが好ましい。
さらに、その後、より確実に熱蛍光板状体105を乾燥固化させるために、追加的に例えば130℃程度の温度で30分程度熱処理を行うのが好ましい。
また、熱処理を行うに際して、この第4工程を行う前に、第2混合体を熱蛍光板状体105の仕様用途に応じた任意の形状、例えば平板状に予め圧迫成型しておくのが好ましい。より具体的には、一例として、厚みを2.5mm程度に、またこの厚み方向に直交する面の平面形状を一辺が85mm程度の略正方形に成形しておくのが好ましい。
このような熱蛍光板状体105は、放射線が照射されると、被照射箇所、すなわち被曝箇所の熱蛍光体が熱により蛍光を発生する。この熱蛍光の光強度は、背景技術の項で既に説明したように、被曝箇所における被曝線量と一定の関係にある。従って、この熱蛍光板状体105に対して放射線を照射し、被曝した面、すなわち被照射面に沿った熱蛍光の光強度分布を測定すれば、その2次元光強度分布に対応した、被照射面内での2次元線量分布を測定することができる。
また、この第1の実施の形態による熱蛍光板状体105は、放射線の3次元線量分布を取得するために、複数枚積層されることによって、熱蛍光積層体として使用されることが想定されている。そこで、第1の実施の形態による熱蛍光板状体105は、複数枚積層され、放射線が照射されたときに、その照射による詳細な3次元線量分布を取得可能とするために、熱蛍光板状体の積層面、すなわち熱蛍光板状体105の表面105a及び裏面105bの平面形状、及び厚みを、例えば、測定する放射線の線質、線形、または用途に応じて、適宜設定しておくのが好ましい。
ここで、発明者らは、上述した第1工程において混合体を形成する際の四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とのモル比、及び上述した第2工程において混合体を熱処理する際の温度について、それらの好適値を確認するための実験を行った。
この実験では、第1工程における混合体を、四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とのモル比をそれぞれ異なる値として製造した複数の熱蛍光体、または、第2工程における熱処理を互いに異なる温度で行って形成した複数の熱蛍光体を試料として用意した。
表2に各試料の作成条件を示す。
試料a1、a2、a3、a4、a5、及びa6は、第2工程において混合体に対して700℃の温度で熱処理を行って作成した。
また、試料b1、b2、b3、b4、b5、及びb6は、第2工程において混合体に対して750℃の温度で熱処理を行って作成した。
また、試料c1、c2、c3、c4、c5、及びc6は、第2工程において混合体に対して800℃の温度で熱処理を行って作成した。
また、試料d1、d2、d3、及びd4は、第2工程において混合体に対して850℃の温度で熱処理を行って作成した。
また、試料e1及びe2は、第2工程において混合体に対して900℃の温度で熱処理を行って作成した。
また、試料a1、b1、c1、d1、及びe1は、第1工程において酸化ホウ素を添加せず、四ホウ酸リチウム及び酸化銅(II)のみを混合して混合体を形成して作成した。
また、試料a2、b2、c2、d2、及びe2は、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=6:1のモル比で混合して作成した。
また、試料a3、b3、c3、及びd3は、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で混合して作成した。
また、試料a4、b4、c4、及びd4は、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=2:1のモル比で混合して作成した。
また、試料a5、b5、及びc5は、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=1:1のモル比で混合して作成した。
また、試料a6、b6、及びc6は、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=1:2のモル比で混合して作成した。
なお、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で混合し、かつ第2工程において混合体に対して900℃の熱処理を行って作成した試料、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=2:1のモル比で混合し、かつ第2工程において混合体に対して900℃の熱処理を行って作成した試料、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=1:1のモル比で混合し、かつ第2工程において混合体に対して850℃の熱処理を行って作成した試料、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=1:1のモル比で混合し、かつ第2工程において混合体に対して900℃の熱処理を行って作成した試料、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=1:2のモル比で混合し、かつ第2工程において混合体に対して850℃の熱処理を行って作成した試料、及び第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=1:2のモル比で混合し、かつ第2工程において混合体に対して900℃の熱処理を行って作成した試料については、第2工程における熱処理において生成物が融解したため、これら試料を熱蛍光体として得ることができないことが確認された。その他の試料は融解しなかった。
そして、これら各試料に対してX線管電圧を6MVとした照射装置を用いて1GyのX線を照射したその後、暗箱中に収容し、CCDカメラの露光を開始してから、20秒で135℃まで加熱し、135℃の温度を保った状態で280秒間それぞれの発光強度を観測した。なお、X線照射装置としてElecta社製のSYNERGY型リニアックを用いた。
なお、この実験では、用意した各試料を一枚の金属板(例えばアルミ製)上に並べて載置し、上述したX線の照射、加熱、及び熱蛍光の観測を各試料に対して同一条件で(一括して)同時に行った。また、各試料は、それぞれ第1工程において混合物に対して0.35wt%の割合で酸化銅(II)を混合して作成した。
以下、この実験の結果につき説明する。
図3(A)及び(B)は、この実験の結果を示す図である。
図3(A)は、上述した各試料の熱蛍光による発光の様子を撮影した画像である。なお、これら画像を撮影するために冷却CCDカメラ(ATIK Instruments社製のATK−314L)を用いた。
なお、図3(A)にa1〜a6、b1〜b6、c1〜c6、d1〜d4、e1、及びe2の各符号を付して示した各発光は、上述した各試料a1〜a6、b1〜b6、c1〜c6、d1〜d4、e1、及びe2の発光に各々対応している。すなわち、この実験を行うに当たり金属板に載置した各試料の配置関係は、表2に示す通りであって、かつ図3(A)に示す各符号の配置に対応している。
また、図3(B)は、各試料の熱蛍光による発光強度を比較する図であり、この図3(B)において、縦軸は発光強度の相対値を示し、また、横軸は図3(A)に各々符号を付して示してある各試料の配列方向の距離に対応している。すなわち、図3(B)に示す強度分布線11は試料a1〜a6の発光強度に係る強度分布を、強度分布線13は試料b1〜b6の発光強度に係る強度分布を、強度分布線15は試料c1〜c6の発光強度に係る強度分布を、強度分布線17は試料d1〜d4の発光強度に係る強度分布を、強度分布線19は試料e1及びe2の発光強度に係る強度分布を、それぞれ示している。なお、これらの発光強度は、上述した冷却CCDカメラ(ATIK Instruments社製のATK−314L)を用い撮影した熱蛍光を、周知の画像ソフトであるImageJ(登録商標)を用いて画像解析することによって得た。
図3(A)の結果から明らかなように、試料c2、c3、c4、d2、d3、及びd4は、他の試料と比して著しく高い発光強度で発光していることが確認できる。
また、図3(B)の各強度分布線から明らかなように、試料c2の発光強度を示すピーク10、試料c3の発光強度を示すピーク12、試料c4の発光強度を示すピーク14、試料d2の発光強度を示すピーク16、試料d3の発光強度を示すピーク18、及び試料d4の発光強度を示すピーク20は、他の試料と比して高い発光強度を示している。そして、この図3(B)から、特に試料d3の発光強度のピークが最も高い発光強度を示していることが確認できる。
この結果から、第1の実施の形態では、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1、6:1、または2:1のいずれかのモル比で混合し、第2工程において、800〜850℃の範囲内の任意の温度で熱処理を行うことによって、形成すべき熱蛍光体の熱蛍光の発光強度を高めることができることが確認された。
特に、第1の実施の形態では、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で混合し、第2工程において、850℃の温度で熱処理を行うことによって、形成される熱蛍光体の熱蛍光の発光強度が最も高くなることが確認された。
次に、発明者は、上述した図3(A)及び(B)に係る実験において用意した試料a1、b5、c2、c3、c4、d2、d3、d4、及びe2について、これら各熱蛍光体がどのような物質で構成されているかを確認するための実験を行った。
この実験では、これら試料a1、b5、c2、c3、c4、d2、d3、d4、及びe2に対してXRD(X−ray diffraction:X線回折)測定を行い、得られたスペクトルからこれら各熱蛍光体に含まれる物質を特定した。用いたX線回折装置はRIGAKU社製のRINT2000型である。
図4(A)及び(B)は、上述した試料d3の熱蛍光体を構成する物質を特定するための図である。
図4(A)は、試料d3のXRDスペクトルを示す図である。また、図4(B)は、例えば「J.Aidong,L.Shirong,H.Qingzhen,C.Tianbin,and Acta Crystallogr.,Sec.C,.46,1999(1990)」に開示されている七ホウ酸リチウムのXRDスペクトルを示す図である。そして、これら各図の縦軸は回折強度の相対値を示し、また、横軸は回折角度を°単位で目盛ってある。
これら図4(A)及び(B)から明らかなように、各XRDスペクトルにおけるピークの存在する回折角度及び各ピークの相対回折強度が実験的に一致していることがわかる。
この結果から、試料d3は七ホウ酸リチウムを主な構成物質として含有した熱蛍光体であることが確認された。
また、図5(A)及び(B)は、上述した試料a1の熱蛍光体を構成する物質を特定するための図である。
図5(A)は、試料a1のXRDスペクトルを示す図である。また、図5(B)は、例えば「JCPDS−ICDD Card No.18−717」に開示されている四ホウ酸リチウムのXRDスペクトルを示す図である。そして、これら各図の縦軸は回折強度の相対値を、また、横軸は回折角度を°単位で目盛ってある。
これら図5(A)及び(B)から明らかなように、各XRDスペクトルにおけるピークの存在する回折角度及び各ピークの相対回折強度が実験的に一致していることがわかる。
この結果から、試料a1は四ホウ酸リチウムを主な構成物質として含有した熱蛍光体であることが確認された。
また、図6(A)及び(B)は、上述した試料e2の熱蛍光体を構成する物質を特定するための図である。
図6(A)は、試料e2のXRDスペクトルを示す図である。また、図6(B)は上述した図5(B)と同じ四ホウ酸リチウムのXRDスペクトルを示す図である。そして、これら各図の縦軸は回折強度の相対値を示し、また、横軸は回折角度を°単位で目盛ってある。
これら図6(A)及び(B)から明らかなように、各XRDスペクトルにおけるピークの存在する回折角度及び各ピークの相対回折強度が実験的に一致していることがわかる。
この結果から、試料e2は四ホウ酸リチウムを主な構成物質として含有した熱蛍光体であることが確認された。
また、図7(A)及び(B)は、上述した試料b5の熱蛍光体を構成する物質を特定するための図である。
図7(A)は、試料b5のXRDスペクトルを示す図である。また、図7(B)は例えば「JCPDS−ICDD Card No.32−549」に開示されている三ホウ酸リチウムのXRDスペクトルを示す図である。そして、これら各図の縦軸は回折強度の相対値を示し、また、横軸は回折角度を°単位で目盛ってある。
これら図7(A)及び(B)から明らかなように、各XRDスペクトルにおけるピークの存在する回折角度及び各ピークの相対回折強度が実験的に一致していることがわかる。
この結果から、試料b5は三ホウ酸リチウムを主な構成物質として含有した熱蛍光体であることが確認された。
また、図8は試料c2のXRDスペクトルを、図9は試料c3のXRDスペクトルを、図10は試料c4のXRDスペクトルを、図11は試料d2のXRDスペクトルを、及び図12は試料d4のXRDスペクトルを、それぞれXRDスペクトルを示す図である。これら各図の縦軸は回折強度の相対値を示し、また、横軸は回折角度を°単位で目盛ってある。
そして、図8、図9、図10、図11、及び図12のXRDスペクトルでは、上述した図4(B)に示す七ホウ酸リチウムのXRDスペクトル、図5(B)に示す四ホウ酸リチウムのXRDスペクトル、及び図7(B)に示す三ホウ酸リチウムのXRDスペクトルに基づいて、七ホウ酸リチウムのピークには○を、四ホウ酸リチウムのピークには×を、及び三ホウ酸リチウムのピークには△を、それぞれ付してある。
これら図8、図9、図10、図11、及び図12から、試料c2、c3、c4、d2、及びd4の各XRDスペクトルでは、いずれも七ホウ酸リチウムのピークが四ホウ酸リチウム及び三ホウ酸リチウムのピークと比して高い回折強度を示している。
従って、試料c2、c3、c4、d2、及びd4は、七ホウ酸リチウムを最も含有量の多い主な構成物質として含有し、四ホウ酸リチウム及び三ホウ酸リチウムの一方または双方を含む熱蛍光体であることが確認された。
そして、図9に係る試料c3、図11に係る試料d2、及び図12に係る試料d4では、特に七ホウ酸リチウムのピークが四ホウ酸リチウム及び三ホウ酸リチウムと比して高い回折強度を示していることから、熱蛍光体を構成する七ホウ酸リチウムの含有量が多いことがわかった。
図4(A)及び(B)、図5(A)及び(B)、図6(A)及び(B)、図7(A)及び(B)、図8、図9、図10、図11、及び図12の結果から、第1の実施の形態では、試料c2、c3、c4、d2、d3、d4に係る条件、すなわち第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1、6:1、または2:1のいずれかのモル比で混合し、第2工程において、800〜850℃の範囲内の温度で熱処理を行うことによって、七ホウ酸リチウムを構成物質に含む熱蛍光体を形成できることが確認された。
さらに、試料c3、d2、d3、d4、特に試料d3において七ホウ酸リチウムの収率が高くなることから、第1の実施の形態では、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で混合し、第2工程において、850℃の温度で熱処理を行うことによって、七ホウ酸リチウムの収率を向上できることが確認された。
また、既に説明したように、試料c2、c3、c4、d2、d3、及びd4、特に試料d3の熱蛍光体に係る熱蛍光の発光強度が高い値を示すことから(図3(A)及び(B)参照)、熱蛍光体の構成物質として七ホウ酸リチウムの含有率を大きく調製することで、四ホウ酸リチウム及び三ホウ酸リチウムの含有率が大きい場合と比して熱蛍光の発光強度を向上させられることが確認された。
特に、四ホウ酸リチウムを主な構成物質とする試料a1及びe2、または三ホウ酸リチウムを主な構成物質とする試料b5と、七ホウ酸リチウムを主な構成物質とするd3との各発光強度を比較した場合、上述した図3(A)及び(B)から試料d3が高い発光強度を示していることが明らかである。
従って、七ホウ酸リチウムを母体として熱蛍光体を構成することは、四ホウ酸リチウム及び三ホウ酸リチウムを母体とする場合と比して有利である。
また、発明者らは、上述した第1工程において混合体を形成する際に、材料として混合する酸化銅(II)の好適な添加量を確認するための実験を行った。
以下、この実験につき図13を参照して説明する。
この実験では、第1工程において、混合物に対して互いに異なる割合となるように酸化銅(II)を混合して形成した複数の熱蛍光体を試料として用意した。
具体的には、試料f1は、第1工程において酸化銅(II)を添加せずに混合体を形成した。また、試料f2は混合体に対して0.01wt%の割合で、試料f3は混合体に対して0.03wt%の割合で、試料f4は混合体に対して0.05wt%の割合で、試料f5は混合体に対して0.07wt%の割合で、試料f6は混合体に対して0.10wt%の割合で、試料f7は試料f6と同様に混合体に対して0.10wt%の割合で、試料f8は混合体に対して0.35wt%の割合で、試料f9は混合体に対して0.70wt%の割合で、試料f10は混合体に対して1.00wt%の割合で、試料f11は混合体に対して2.00wt%の割合で、及び試料f12は混合体に対して5.00wt%の割合で、各々酸化銅(II)を添加して混合体を形成した。
また、これら各試料は、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で混合し、第2工程において混合体に対して850℃の熱処理を行って作成した。
そして、これら各試料に対してX線管電圧を6MVとした照射装置を用いて1GyのX線を照射した。その後、暗箱中に収容し、CCDカメラの露光を開始してから、20秒で135℃まで加熱し、135℃の温度を保った状態で280秒間それぞれの発光強度を観測した。
なお、この実験では、試料f1〜f6を一つの金属板上に並べて載置して、上述したX線の照射、加熱、及び熱蛍光の観測を各試料に対して同時に行った。同様に、試料f7〜f12を一つの金属板(例えばアルミ製)上に並べて載置して、X線の照射、加熱、及び熱蛍光の観測を各試料に対して同時に行った。
図13(A)及び(B)は、この実験の結果を示す図である。
図13(A)は、上述した各試料の熱蛍光による発光の様子を撮影した画像である。なお、これら画像を撮影するために冷却CCDカメラ(ATIK Instruments社製のATK−314L)を用いた。
なお、図13(A)にf1〜f12の各符号を付して示した各発光は、上述した各試料f1〜f12の発光に各々対応している。すなわち、この実験を行うに当たり金属板に載置した各試料の配置関係は、図13(A)に示す各符号の配置に対応している。
また、図13(B)は、各試料の熱蛍光による発光強度を比較する図であり、この図13(B)において、縦軸は発光強度の相対値を示し、また、横軸は図13(A)に各々符号を付して示してある各試料の配列方向の距離に対応している。すなわち、図13(B)の上図に示す強度分布線111は試料f1〜f6の発光強度に係る強度分布を、また、図13(B)の下図に示す強度分布線113は試料f7〜f12の発光強度に係る強度分布をそれぞれ示している。これらの発光強度は、上述した冷却CCDカメラ(ATIK Instruments社製のATK−314L)を用いて撮影した熱蛍光を、周知の画像ソフトであるImageJ(登録商標)を用いて画像解析することによって得た。
なお、既に説明したように、試料f6及び試料f7は、第1工程及び第2工程ともに同一条件において作成されている。従って、試料f6の発光強度を示すピーク115と試料f7の発光強度を示すピーク117とは、実質的に同程度の発光強度である。
図13(A)の結果から明らかなように、試料f6、f7、及びf8は、他の試料と比して高い発光強度で発光していることが確認できる。
また、図13(B)の各強度分布線から明らかなように、試料f6の発光強度を示すピーク115、試料f7の発光強度を示すピーク117、及び試料f8の発光強度を示すピーク119は、他の試料と比して高い発光強度を示している。この結果から、第1の実施の形態では、第1工程において、混合体に対して0.10〜0.35wt%の範囲内の割合で酸化銅(II)を添加することによって、形成する熱蛍光体の熱蛍光の発光強度を高めることができることが確認された。
次に、発明者らは、この第1の実施の形態の第2工程において形成される熱蛍光体の熱蛍光の発光強度分布の温度特性及び波長特性を確認する実験を行った。
以下、この実験につき図14及び図15を参照して説明する。
この実験では、第1工程において四ホウ酸リチウムと酸化ホウ素とを四ホウ酸リチウム:酸化ホウ素=3:1のモル比で、かつ混合体に対する酸化銅(II)を0.35wt%の割合で、それぞれ混合し、第2工程において混合体に対して850℃の熱処理を行って作成した熱蛍光体を試料として用いた。そして、温度に対する熱蛍光の発光強度を確認するために、熱蛍光体に対して、RIGAKU社製のRINT2000型X線分析装置によって20GyのX線を照射した後、0.5℃/secで加熱しながら熱蛍光の発光強度を測定した。また、蛍光の発光の波長を確認するために、熱蛍光体に対して、RIGAKU社製のSZX型X線分析装置によって20GyのX線を照射した後、1℃/secで加熱しながら、浜松ホトニクス社PMA−11型マルチチャンネル検出器を用いて熱蛍光の発光の波長を測定した。
図14は、この実験の結果を説明するための図であり、第1の実施の形態において製造される熱蛍光体の発光強度分布の温度特性を示す図である。図14において、縦軸は発光強度の相対値を示し、また、横軸は熱蛍光体の温度を℃単位で目盛ってある。
また、図15(A)及び(B)は、この実験の結果を説明するための図であり、第1の実施の形態において形成される熱蛍光体と、従来技術による熱蛍光体、すなわち上述した特許文献1に開示されているマンガン含有四ホウ酸リチウムによって構成された熱蛍光体とについての、発光強度分布の波長特性及び温度特性をそれぞれ比較する図である。そして、図15(A)は第1の実施の形態による熱蛍光体の発光強度分布の波長特性及び温度特性を、また、図15(B)は特許文献1による熱蛍光体の発光強度分布の波長特性及び温度特性をそれぞれ示している。図15(A)及び(B)において、x軸は熱蛍光の波長をnm単位で、また、y軸は熱蛍光体の温度を℃単位で目盛ってある。そして、z軸は発光強度の相対値を示している。
なお、図15(B)に係るマンガン含有四ホウ酸リチウムは、特許文献1に開示されている通り、発光強度を向上する目的でアルミニウム(III)が添加されている。
図14及び図15(A)から明らかなように、第1の実施の形態による熱蛍光体の熱蛍光の発光強度は、45〜130℃の温度範囲内に唯一のかつ単峰型の発光強度分布を有しているのみであり、かつ98℃付近にピークが存在することが確認された。なお、これらの測定には浜松ホトニクス社PMA−11型マルチチャンネル検出器を用いた。
そして、この温度に関する発光強度分布が存在する45〜130℃の温度範囲は、この第1の実施の形態による熱蛍光板状体105において、バインダとして機能するエポキシ樹脂(例えばブレニー技研のGM−9005)が機械的に耐熱可能な、すなわち形状が崩壊しない温度範囲であって、かつ光学的に耐熱可能な、すなわち変色しない温度範囲に存在する。
そのため、第1の実施の形態による熱蛍光板状体105では、熱蛍光の測定時において、熱蛍光体を発光させるための加熱中に形状が崩壊する恐れがなく、また、エポキシ樹脂によって熱蛍光の発光が吸収される恐れがない。
また、この熱蛍光体は、熱蛍光の発光強度分布は単峰型であるのでピークが一つである。
そのため、被曝線量と熱蛍光の発光強度との関係が単純であり、その結果、測定された熱蛍光の発光強度から被曝線量を算出する際に複雑な補正を行う必要がない。なお、この詳細は図16を参照して後述する。
また、図15(A)から、第1の実施の形態において形成される熱蛍光体の熱蛍光の発光強度では、熱蛍光の波長に対する発光強度分布が、可視領域において唯一かつ単峰型の分布であり、しかも、その分布が600nmよりも短波長の領域内、より具体的には、400〜550nmの範囲内の波長領域に存在することが確認された。
これに対して、図15(B)から、特許文献1による熱蛍光体では、熱蛍光の発光強度分布が550〜750nmの範囲内の波長領域に存在することが確認された。
既に説明したように、加熱に起因するマンガン含有四ホウ酸リチウム自体の発光強度分布は、短波長側のボトムが600nm付近の波長領域に存在する。従って、特許文献1による熱蛍光体では、加熱に起因する発光が生じる温度まで温度を上昇させた場合、例えば近赤外線カットフィルタを用いて熱蛍光による発光と加熱に起因する発光とを分離する必要がある。
これに対して、第1の実施の形態による熱蛍光体では、熱蛍光の発光強度分布が600nmよりも短波長である可視の波長領域に存在するため、上述した加熱に起因する発光を考慮する必要がなく、そのため例えば近赤外線カットフィルタを用いる必要がない。
また、第1の実施の形態による熱蛍光体では、熱蛍光の発光強度分布が可視領域の範囲内の波長領域に存在する。そのため、熱蛍光板状体105において、バインダとしてエポキシ樹脂を用いても、熱蛍光体から発せする熱蛍光がエポキシ樹脂に吸収されることなく、従って、熱蛍光の発光強度が低下することがない。
次に、発明者らは、この第1の実施の形態の第2工程において形成される熱蛍光体における、熱蛍光の発光強度と被曝線量との関係を確認するための実験を行った。
この実験では、上述した図14と図15(A)に係るのと同様の熱蛍光体に対して、X線管電圧を6MVとした照射装置を用いて異なる線量のX線(0.25Gy、0.5Gy、1Gy、2Gy)を照射し、各々の被曝線量に対応する熱蛍光の発光強度を観測した。なお、発光強度を観測するに当たり、X線照射後の熱蛍光体を暗箱中において0.5℃/secで135℃まで加熱した。
図16は、この実験の結果を示す図であり、第1の実施の形態において形成される熱蛍光体における、熱蛍光の発光強度と被曝線量との関係を示す図である。図16において、縦軸は発光強度の相対値を示し、また、横軸は照射したX線の線量、すなわち熱蛍光体の被曝線量をGy単位で目盛ってある。なお、この実験では、X線照射装置としてElekta社製のSYNERGY型リニアックを、また、発光強度の測定には冷却CCDカメラ(ATIK Instruments社製のATK−314L)を用いた。
図16から、第1の実施の形態による熱蛍光体では、被曝線量が0.25Gyのとき相対値7、被曝線量が0.50Gyのとき相対値15、被曝線量が1.0Gyのとき相対値30、及び被曝線量が2.0Gyのとき相対値60であるので、被曝線量の増加に対して、直線的に熱蛍光の発光強度が増大することが確認できる。
従って、この結果から、第1の実施の形態による熱蛍光板状体105では、測定された熱蛍光の発光強度を用いて複雑な補正を行うことなく被曝線量を算出できることが確認された。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、熱蛍光板状体を利用した線量計であって、かつ放射線の3次元線量分布を取得することができる線量計として、上述した第1の実施の形態による熱蛍光板状体が、複数枚積層されて形成されている熱蛍光積層体、及びその製造方法について説明する。
第2の実施の形態による熱蛍光積層体の製造方法は、第1工程及び第2工程を含んでいる。以下、図17(A)及び(B)を参照して、第1工程から順に各工程につき説明する。
図17(A)及び(B)は、第2の実施の形態による熱蛍光積層体の製造方法を説明する工程図である。これらの各図は、それぞれ、各製造段階で得られた構造体を概略的な斜視図で示してある。
まず、第1工程では、図17(A)に示すように、上述した第1の実施の形態による熱蛍光板状体105を複数枚用意する。
これら各熱蛍光板状体105は、上述したように実効原子番号及び密度が、人体に近似な値に調整されている。
また、この第1工程において用意する熱蛍光板状体105の数、及び積層方向に沿った平面形状、すなわち熱蛍光板状体105の表面105a及び裏面105bの平面形状を、例えば、測定する放射線の線質、線形、または用途に応じて適宜設定しておく。熱蛍光板状体105は、例えばスライサ等によって裁断することが可能であるため、予め各々の平面形状を、測定する放射線に応じて適宜成型しておく。なお、図17(A)では、一例として、10枚の熱蛍光板状体105を用意した場合の構成例であって、各熱蛍光板状体105の平面形状を略正方形とした場合の構成例を示している。
次に、第2工程では、第1工程において用意した複数枚の熱蛍光板状体105を積層することによって図17(B)に示すような構造体、すなわち熱蛍光積層体107を形成する。
このとき、複数の熱蛍光板状体105を、接着剤を用いることなく、各熱蛍光板状体105の各表面105aと裏面105bとを順次重ね合わせて積層する。その結果、熱蛍光板状体105が複数枚積層されて形成された熱蛍光積層体107が得られる。
なお、図17(B)では、一例として、10枚の熱蛍光板状体105を積層して熱蛍光積層体107を形成した場合の構成例を示している。
この第2の実施の形態による熱蛍光積層体107を構成する各熱蛍光板状体105は既に説明したように、実効原子番号及び密度が人体に近似な値に設定されている。従って、第2の実施の形態による熱蛍光積層体107を線量計として用いた場合には、種々の補正を行うことなく、得られた測定値を以って、人体に対する放射線の被曝線量に関するデータを取得することができる。なお、第2の実施の形態による熱蛍光積層体107を用いて取得されたデータは、これを構成する熱蛍光板状体105と近似な実効原子番号を有する物質であれば、人体以外の物質に対する被曝線量に関するデータとして利用することもできる。
また、この第2の実施の形態による熱蛍光積層体107を構成する各熱蛍光板状体105は、既に説明したように、放射線を照射することによって、その被照射面に沿った放射線の平面的な線量分布、すなわち2次元線量分布を測定することができる。従って、このような熱蛍光板状体105を重ね合わせて構成されている熱蛍光積層体107に対して放射線を照射することによって、各熱蛍光板状体105からそれぞれ放射線の2次元線量分布を測定することができる。このとき、各熱蛍光板状体105からは、これら各熱蛍光板状体105の被曝位置、及びこれら被曝位置における放射線の強度及び線形に対応した熱蛍光の光強度分布を以って、2次元線量分布がそれぞれ測定される。従って、各熱蛍光板状体105から得られた各2次元線量分布を重ね合わせることによって、熱蛍光積層体107に照射された放射線の立体的な、すなわち3次元線量分布を測定することができる。
以下、図18(A)及び(B)を参照して、第2の実施の形態による熱蛍光積層体107を利用した3次元線量分布の測定方法について説明する。
図18(A)及び(B)は、この3次元線量分布の測定方法を説明する過程図であり、これらの各図は、それぞれ各過程における熱蛍光積層体107を概略的な斜視図で示してある。
熱蛍光積層体107を用いて放射線の3次元線量分布を測定する際には、まず、測定すべき放射線110を、熱蛍光積層体107に対して照射することによって、熱蛍光積層体107を被曝させる(図18(A)参照)。なお、図18(A)では、一例として、放射線110を、熱蛍光積層体107の表面107a、すなわち熱蛍光板状体105を積層した積層方向109に直交する表面107aに対して照射した場合の構成例を示している。
次に、熱蛍光積層体107を、これを構成するそれぞれの熱蛍光板状体105にバラす(図18(B)参照)。
そして、これら熱蛍光板状体105の各々から加熱により発生する熱蛍光を、熱蛍光板状体105の表面105aに正対する方向からそれぞれ撮影することによって、熱蛍光板状体105の表面105aに沿った平面的な光強度分布情報、すなわち2次元光強度分布情報を各々取得する。
ここで、熱蛍光を撮影する際には、熱蛍光積層体107からバラした熱蛍光板状体105を各々暗箱中に収容して加熱することによって、発する熱蛍光を例えばCCDカメラを用いて撮影する。
既に説明したように、この熱蛍光板状体105を構成する熱蛍光体は、熱蛍光のピークトップが98℃付近に存在する。そこで、熱蛍光板状体105から熱蛍光を撮影するに当たり、暗箱中に収容した熱蛍光板状体105を加熱する。そして、この加熱の開始の時点からCCDカメラの露光を開始し、熱蛍光板状体105を例えば20秒で135℃まで加熱し、135℃の温度を保った状態で例えば280秒間熱蛍光を撮影する。
また、この撮影して得られた光強度分布情報を、可視化された光強度分布に関する情報として得るためには、例えば周知のソフトであるimageJ(商標名)、OpenDX(商標名)、及びPhotoshop(商標名)を利用し、コンピュータによって画像の処理を行うのが好ましい。その結果、熱蛍光板状体105の表面105aに沿った被曝箇所の線量分布が、線量に応じた光強度の熱蛍光として画像化される。
次に、画像化された光強度分布情報としての線量分布情報を、熱蛍光積層体107を被曝させたときの積層順に積層方向109(図18(A)参照)に沿って順次重ね合わせることによって、立体的なすなわち3次元線量分布に関する画像を取得する。
そのために、例えばVisualFortran(商標名)及びOpenDX(商標名)を利用し、コンピュータによって画像処理するのが好ましい。
そして、各熱蛍光板状体105から得られた各画像を重ね合わせることによって、各熱蛍光板状体105の各表面105aに沿った各被曝箇所に対応する2次元光強度分布情報の画像が立体的に積層される。その結果、積層された各画像を、熱蛍光積層体107の立体的な被曝箇所、実質的に、照射された放射線の3次元線量分布とみなすことができる。
なお、ここでは、図18(A)を参照して、一例として、放射線110を、熱蛍光積層体107の表面107aに対して照射した場合の3次元線量分布の測定方法を説明したが、例えば、放射線110を、熱蛍光積層体107の積層方向109に沿った各側面107bに対して照射した場合においても、上述したのと同様の方法によって放射線の3次元線量分布を取得することができる。
ここで、発明者らは、この第2の実施の形態による熱蛍光積層体107における測定精度を確認するための実験を行った。
以下、この実験につき図19及び図20を参照して説明する。
この実験では、第2の実施の形態による熱蛍光積層体107と、従来周知の線量計である電離箱(Scanditronix Wellhofer社製のCC19型)とで、同一条件の照射装置から照射される同一線量のX線に対する測定結果を比較した。なお、この実験では、照射装置としてVarian社製のCLINAC−21EX型直線加速器リニアックを用いた。
熱蛍光積層体107を利用した測定では、熱蛍光積層体107の表面107aに対して、積層方向109に沿ったX線を照射した(図18(A)参照)。そして、冷却CCDカメラ(ATIK Instruments社製のATK−314L)を用いて熱蛍光積層体107の熱蛍光を撮影し発光強度を測定した。また、この実験においては、熱蛍光積層体107を、厚みを2.5mm、及び平面形状を一辺が86mmの略正方形とした熱蛍光板状体105を64枚積層させて構成した。
また、電離箱を利用した測定では、ファントムとして機能する水で満たした水槽内に電離箱を収容し、この水槽の外側からX線を照射した。そして、X線の照射位置を固定した状態で、電離箱を水槽内で任意の位置に移動させることによって、水槽内の各位置における電離箱の電離度を測定した。
また、この実験では、照射装置のX線管電圧を4MVに、また、照射野を40×40mmに設定し、熱蛍光積層体107及び電離箱を利用したそれぞれの測定において、2GyのX線を照射した。
図19(A)及び(B)は、この実験の結果を示す図であり、X線の照射方向に直交する面内における、照射中心位置からの離間距離と、その各距離における発光強度または電離度との関係を示す図である。
そして、図19(A)は、熱蛍光積層体107における、X線の照射方向に直交する面内の直線に沿った、照射中心位置からの離間距離と、各距離における熱蛍光の発光強度との関係を示す図である。図19(A)において、縦軸は熱蛍光の発光強度の相対値を示し、また、横軸は照射中心位置からの離間距離をmm単位で示している。そして、この横軸における0mmの点は照射中心位置を意味している。なお、図19(A)は、熱蛍光積層体107の表面107a、すなわち被照射面から80mmの深さにおける測定結果を示している。
また、図19(B)は、電離箱を収容した水槽内における、X線の照射方向に直交する面内の直線に沿った、照射中心位置からの離間距離と、各距離において測定した電離箱の電離度との関係を示す図である。図19(B)において、縦軸は電離度の相対値を示し、また、横軸は照射中心位置からの離間距離をmm単位で示している。そして、この横軸における0mmの点は照射中心位置を意味している。なお、図19(B)は、電離箱を収容した水槽のX線を照射した壁面、すなわち被照射面から80mmの距離における測定結果を示している。
図19(A)の結果から、熱蛍光積層体107を利用した測定では、照射中心位置から両側に25mm離間した範囲内において、発光強度の相対値が100程度で最大(すなわち被曝線量が最大)となり、この範囲から外れた位置において極端に発光強度が低くなることが分かる。
また、図19(B)の結果から、電離箱を利用した測定では、熱蛍光積層体107を利用した測定と同様に、照射中心位置から両側に25mm離間した範囲内において、電離度の相対値が100程度で最大(すなわち被曝線量が最大)となり、この範囲から外れた位置において極端に電離度が低くなることが分かる。
これらの結果から、熱蛍光積層体107を利用した測定と電離箱を利用した測定とでは、X線の照射方向に直交する面内における、照射中心位置からの離間距離と、その各距離において測定される線量との関係が、実験的に一致することが明らかである。
また、図20(A)及び(B)は、この実験の結果を示す図であり、X線の照射方向に沿った距離と、その各距離における発光強度または電離度との関係を示す図である。
そして、図20(A)は、熱蛍光積層体107の照射中心位置における、X線の照射方向に沿った、被照射面(すなわち熱蛍光積層体107の表面107a)からの離間距離と、各距離における熱蛍光の発光強度との関係を示す図である。図20(A)において、縦軸は熱蛍光の発光強度の相対値を示し、また、横軸は被照射面からの離間距離をmm単位で示している。
また、図20(B)は、電離箱を収容した水槽内の照射中心位置における、X線の照射方向に沿った、被照射面(すなわち電離箱を収容した水槽のX線を照射した壁面)からの離間距離と、各距離において測定した電離箱の電離度との関係を示す図である。図20(B)において、縦軸は電離度の相対値を示し、また、横軸は被照射面からの離間距離をmm単位で示している。
図20(A)の結果から、熱蛍光積層体107を利用した測定では、被照射面から10mm程度離間した位置において、発光強度の相対値が100程度で最大(すなわち被曝線量が最大)となり、10mmよりも大きく離間した位置では、被照射面から離間するに従って緩やかに発光強度が低くなっていくことが分かる。
また、図20(B)の結果から、電離箱を利用した測定では、熱蛍光積層体107を利用した測定と同様に、被照射面から10mm程度離間した位置において、電離度の相対値が100程度で最大(すなわち被曝線量が最大)となり、10mmよりも大きく離間した位置では、被照射面から離間するに従って緩やかに電離度が低くなっていくことが分かる。
これらの結果から、熱蛍光積層体107を利用した測定と電離箱を利用した測定とでは、X線の照射方向に沿った距離と、その各距離において測定される線量との関係が、実験的に一致することが明らかである。
なお、図20(A)及び(B)の結果を比較すると、被照射面から0mm離間した位置、すなわち被照射面の表面において、電離箱の電離度の相対値が、熱蛍光積層体107の発光強度の相対値と比して大きくなっている。これは、電離箱を利用した測定では、この実験において電離箱を収容した水槽の壁面の厚み、及び電離箱自体の外壁の厚みによって、厳密に被照射面から0mm離間した位置による電離度が測定できないことによる誤差であると考えられる。
以上に説明したように、図19(A)及び(B)、図20(A)及び(B)の結果から明らかなように、同一条件のX線の線量を測定する場合において、第2の実施の形態による熱蛍光積層体107は、周知の線量計である電離箱と同様の精度で利用可能であることが確認された。
また、発明者らは、この第2の実施の形態による熱蛍光積層体107について、表面107a(図18(A)参照)に対して照射した放射線を測定する場合と、側面107b(図18(A)参照)に対して放射線を測定する場合との測定精度を確認するための実験を行った。
以下、この実験につき図21を参照して説明する。
この実験では、第2の実施の形態による熱蛍光積層体107を用いて、同一条件の照射装置から照射される同一線量のX線を、この熱蛍光積層体107の表面107aに対して照射して測定した場合と、側面107bに対して照射して測定した場合との測定結果を比較した。なお、この実験では、照射装置としてVarian社製のCLINAC−21EX型直線加速器リニアックを用いた。
なお、この実験では、冷却CCDカメラ(ATIK Instruments社製のATK−314L)を用いて熱蛍光積層体107の熱蛍光を撮影し発光強度を測定した。また、表面107aに対して照射する場合、及び側面107bに対して照射する場合ともに、厚みを2.5mm、及び平面形状を一辺が86mmの略正方形とした熱蛍光板状体105を64枚積層させて構成した熱蛍光積層体107を用いた。
また、図21は、この実験の結果を示す図であり、X線の照射方向に沿った被照射面からの離間距離と、その各距離における発光強度との関係を示す図である。
図21において、縦軸は熱蛍光の発光強度の相対値を示し、また、横軸は被照射面からの離間距離をmm単位で示している。
そして、図21に示した黒三角形のドットは、熱蛍光積層体107の表面107a(図18(A)参照)に対して照射した場合の結果を示している。従って、黒三角形のドットに対しては、横軸は、被照射面である表面107aからの離間距離を意味する。
また、図21に示した黒菱形のドットは、熱蛍光積層体107の側面107bに対して照射した場合の結果を示している。従って、黒菱形のドットに対しては、横軸は、被照射面である側面107bからの離間距離を意味する。
図21に示す結果から、熱蛍光積層体107の表面107aに対して照射して測定した場合と、側面107bに対して照射して測定した場合とでは、X線の照射方向に直交する面内における、照射中心位置からの離間距離と、その各距離において測定される線量との関係が、実験的に一致することが明らかである。
従って、この第2の実施の形態による熱蛍光積層体107では、放射線を表面107aに対して照射した場合と、側面107bに対して照射した場合との双方において、同等の精度を以って放射線の線量を測定できることが確認された。