JP5756370B2 - 皮膚の角層の性状の評価方法 - Google Patents

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本発明は、皮膚の角層の性状の評価方法に関する。
化粧品や皮膚洗浄料等の販売において、顧客に最も適した製品を推奨するために、顧客の皮膚の水分量・油分量・色調・形態等を店頭で測定するサービスが広く行われている。また、こういった化粧品や皮膚洗浄料の研究開発の過程においても、皮膚の状態を機器計測によって数値化することは、より効果の高い化粧品や皮膚洗浄料等を長期の開発期間をかけずに開発する上で必要不可欠のものとなっている。そのため、皮膚の水分量・油分量・色調・形態等を客観的に評価するための種々の技術開発が行われている。
例えば特許文献1には、皮膚の角層中の酸化蛋白質を指標とする肌の柔軟性・弾力性を評価するための方法が提案されている。この方法では、皮膚から採取した角層試料中の酸化蛋白質のカルボニル基を特異的に蛍光標識し、その蛍光を検出することで角層酸化蛋白質の検出を行っている。
またヒトの皮膚の角層における蛋白質二次構造をアクロレイン処理によって変化させ、皮膚の蛋白質に由来する波数領域であるアミドI吸収帯の赤外吸収スペクトルの強度変化を測定することも提案されている(非特許文献1参照)。
特開2006−349372号公報
Iwai I, Ikuta K, Murayama K, Hirao T, Int. J. Cosmet. Sci., 2008 Feb;30(1):41-6
しかし、上述の各技術は非侵襲な方法ではなく、かつ測定に時間を要するという点で改良の余地がある。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る皮膚の角層の性状の評価方法を提供することにある。
前記の課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討した結果、肌理等の皮膚の角層の性状は、角層を構成する蛋白質の構造と相関があることを知見し、本発明を完成するに至った。
本発明は前記の知見に基づきなされたものであり、ヒトの皮膚の角層を対象として赤外分光法によって赤外吸収スペクトルを測定し、
該赤外吸収スペクトルにおける蛋白質二次構造に由来するアミドI吸収帯のピークから、αへリックスとランダムコイルの重畳したピーク及びβシートのピークを分割し、
αへリックスとランダムコイルの重畳したピークの面積及びβシートのピーク面積を算出して、〔βシートのピーク面積〕/〔αへリックスとランダムコイルの重畳したピークの面積〕で定義されるピーク面積比β/αを算出し、
算出された比β/αの値を指標として皮膚の角層の性状を、医療行為以外の目的で評価する、皮膚の角層の性状の評価方法を提供するものである。
本発明によれば、非侵襲で、かつ迅速に皮膚の角層の性状を容易に評価することができる。
図1は、本発明の方法に好適に用いられる全反射吸収スペクトル測定用プローブの構造を示す模式図である。 図2(a)ないし(d)は、図1に示す全反射吸収スペクトル測定用プローブにおける測定ヘッド部の種々の態様を示す模式図である。 図3は、図1に示す全反射吸収スペクトル測定用プローブを備えた全反射赤外吸収スペクトル測定装置の概略図である。 図4は、皮膚の角層の赤外吸収スペクトルを表す図である。 図5は、図4に示す赤外吸収スペクトルのうち、蛋白質二次構造に由来するアミドI吸収帯のピークを分割した状態を示す図である。 図6は、モデル実験としてヒトの前腕の皮膚の角層の赤外吸収スペクトルを測定した結果、及び該赤外吸収スペクトルのカーブフィッティングの計算結果を表す図である。 図7(a)ないし(e)は、比β/αと身体の各部位における水分蒸散量との関係を示すグラフである。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の方法においては、ヒトの皮膚の角層を測定対象として赤外分光法によって赤外吸収スペクトルを測定する。赤外吸収スペクトルの測定には、ヒトの皮膚の表面の測定が可能な公知の装置を特に制限なく用いることができる。そのような装置としては、例えば図1に示す全反射吸収スペクトル測定用プローブを備えた装置が挙げられる。
図1において、符号1は、赤外光a及び皮膚による吸収によって減光された全反射光bを導くための赤外光ファイバーである。赤外光ファイバー1としては、カルコゲナイトで形成されたものや、AgClとAgBrの混晶で形成されたもの、AgCl単独のもの、あるいはAgBr単独のもの等を利用することができる。
赤外光ファイバー1の一部は湾曲しており、それによって該赤外光ファイバー1自体にATR(減衰全反射)プリズムの機能が付与されるようになっている。湾曲した赤外光ファイバー1は、図1に示すように凸状の測定ヘッド部2を形成している。
測定ヘッド部2における赤外光ファイバーは、そのコア層が露出している。露出したコア層を皮膚に密着させることにより、この部分に導かれた赤外光が皮膚との界面で全反射する。そして、皮膚の吸収によって減光された全反射光が再び赤外光ファイバーに導かれて、皮膚の赤外吸収スペクトルが測定される。
測定ヘッド部2の形状は、ATRプリズムの機能が発揮され、皮膚表面に十分接触できるものであればよい。例えば図2(a)に示すように滑らかなループ状のものの他、図2(b)に示すような2カ所の角部を有する四角いもの、図2(c)に示すような尖ったもの、又は図2(d)に示すようなコイル状に巻かれたもの等を用いることができる。
再び図1に戻ると、赤外光ファイバー1は、測定ヘッド部2においてのみファイバーが露出していればよく、通常それ以外の部分はクラッド層で被覆され、また保持部材3によって収納・保持されていることが好ましい。保持部材3としては、例えば絶縁性のポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、合成ゴム等で成形されたチューブ又は筒状シースのようなものが挙げられる。
図1における符号4は測定ヘッドを支持する支持体である。支持体4は、測定ヘッド部先端の凸面の曲率が負の面、すなわち赤外光ファイバー1が凸状をなす測定ヘッド部2において、皮膚との接触面と反対側に設置される。支持体4の素材は、赤外光ファイバー1及び皮膚を傷害するものでなければ特に制限はない。例えば、発泡剤、軟質ゴム、ウレタン等の弾力性素材を用いることができる。
図3には、図1に示すプローブを備えた全反射赤外吸収スペクトル測定装置の概略図が示されている。同図中、符号5は赤外光を発生照射するための赤外光照射部であり、符号6は干渉計部である。また符号7は皮膚から反射した赤外光を検出するための検出部である。符号8は演算部であり、吸光度の変動を補正する等の演算手段が備えられている。この測定装置においては、赤外光照射部5から赤外光ファイバー1を通して測定ヘッド部2に赤外光が導かれる。赤外光ファイバープローブと皮膚との界面で全反射した赤外光は、再び赤外光ファイバー1に導かれて検出部7に到達する。検出部7に到達した赤外光は電気信号に変換され、該電気信号は演算部8において処理されて、赤外吸収スペクトルが算出される。赤外光照射部5としては、一般の赤外分光器の赤外光照射部と同様の構造のものが挙げられる。すなわち、赤外光源と干渉計を組み合わせたものや、赤外光源と分光器を組み合わせたものが挙げられる。
以上の構造を有するプローブ及び全反射赤外吸収スペクトル測定装置の詳細は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2008−241593号公報に記載されている。また、同公報に記載の装置に代えて、本出願人の先の出願に係る特開2009−109282号公報に記載の装置を用いることもできる。更に前記のプローブとして市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えばPIR光ファイバー型IR−ATRプローブ(システムズエンジニアリング社製)などが挙げられる。
また同様の測定は、赤外光ファイバーの先端部にATRプリズムを取り付けたタイプのプローブを用いても行うことができる。このときのプリズムの材質としては、例えばGe、ZnSe、ダイヤモンド、Si、石英等が挙げられる。
測定は一般に20〜30℃・30〜60%RHの環境下で行われるが、これに限られない。後述するように、測定に際して被験者の馴化は必要ない。また、測定部位に何らかの前処理を施す必要もない。
以上のプローブ及び全反射赤外吸収スペクトル測定装置を用いて測定されたヒトの皮膚のIR−ATR(赤外減衰全反射)スペクトルは例えば図4に示すとおりとなる。同図に示すとおり、赤外吸収スペクトルにおいては、最も高波数側である1744cm-1付近にピークが観察される。このピークは皮膚中の皮脂のうちエステル型脂肪酸のOCOにおけるCO伸縮振動に由来するものである。その隣に観察される1711cm-1付近のピークは皮膚中の皮脂のうち遊離脂肪酸のCOOHにおけるCO伸縮振動に由来するものである。このピークよりも低波数側に観察される1651cm-1付近の大きなピークは、皮膚中の蛋白質二次構造に由来するアミドI吸収帯に帰属される。このピークよりも低波数側には、天然保湿因子(NMF)に由来する1603cm-1付近のピークが観察される。
図4に示す赤外吸収スペクトルのうち、蛋白質二次構造に由来するアミドI吸収帯に帰属される1651cm-1付近の大きなピークは、実際には複数の蛋白質二次構造に由来する複数のピークが重畳されたものである。詳細には図5に示すように、アミドI吸収帯に帰属されるピークは、蛋白質二次構造のαへリックス及びβシートを含む複数のピークが重畳されたものである。本発明においては、アミドI吸収帯に帰属されるピークからαへリックスとランダムコイルの重畳したピーク及びβシートのピークを分割し、これらのピークの面積比β/α、すなわち〔βシートのピーク面積〕/〔αへリックスとランダムコイルの重畳したピークの面積〕を算出する。そして、この比β/αの値が皮膚の角層の性状を反映する指標となることを本発明者らは見いだした。比β/αは、角層を構成する蛋白質の二次構造を反映するものである。
蛋白質二次構造に由来するアミドI吸収帯に帰属されるピークからαへリックスとランダムコイルの重畳したピーク及びβシートのピークを分割する手段に特に制限はなく、従来公知の手段を適宜用いることができる。そのような手段としては、例えばカーブフィッティング法、差スペクトル法、スペクトル合成法などが挙げられる。特に本発明において好ましい手段はカーブフィッティング法である。
カーブフィッティング法は、皮膚の角層の赤外吸収スペクトルを、適切な関数の重ね合わせで表現し、各信号成分の寄与を定量的に見積もる方法である。カーブフィッティング法を用いることにより、各成分の吸収バンドを分離し、各々の吸収バンドの正確な位置や面積を計算することができる。カーブフィッティング法に用いられる関数形としては、ガウス関数、ローレンツ関数、フォークト関数等が挙げられる。皮膚は蛋白質、脂質、NMF等で構成されており、その赤外線吸収スペクトルは極めて複雑であるが、適切な関数(例えばガウス関数)の重ね合わせで、そのスペクトル形状を良く表現することが可能である。
実際にカーブフィッティングを行うには、市販の数値解析ソフトウェアを使用してもよいし、専用ソフトウェアを作成してもよい。市販ソフトウェアとしては、例えばIGOR Pro 6.0(株式会社ヒューリンクス)やOrigin8.0(株式会社ライトストーン)が利用できる。例えば分光学の分野で現在広く普及しているIGOR Pro 6.0では、回帰分析 (カーブフィッティングと同じ)用の組み込み回帰関数として、線形、多項式、サイン、指数、二重指数、ガウス、ローレンツ、ヒルの微分方程式、シグモイド、ログノーマル、ガウス2D(2次元ガウスピーク)、多項式2D(2次元多項式)が用意されている。解析したい赤外吸収スペクトルをIGOR Pro 6.0に読み込み、スペクトル形状を最も良く表現できる波数位置に任意の関数(例えばガウス関数)を必要な個数だけ配置し、固定するパラメーター(例えばピーク位置やピーク幅等)と、可変とするパラメーター(例えばピーク高さ)を指定する。その後に回帰分析機能を実行すれば、関数の重ね合わせにより合成したスペクトルと、実測の赤外吸収スペクトルの各データ点における、二乗誤差の総和が最小になる可変パラメーター値群を本ソフトウェアは出力する。
専用ソフトウェアを作成する場合は、例えば代表的なプログラミング言語であるVisual Basic6.0やVisual C++上で作成することができる。解析したい赤外吸収スペクトルの形状を、前記の市販ソフトウェアの場合と同様に、ガウス関数のような非線形関数の重ね合わせで最小二乗近似するソフトを記述することになる。最小二乗近似法としては、例えば最小二乗Taylor微分補正法を用いることで、関数の重ね合わせにより合成したスペクトルと、実測の赤外吸収スペクトルの各データ点における二乗誤差の総和が最小になる可変パラメーター値群を算出することができる。最小二乗Taylor微分補正法のプログラミング方法については、以下の書籍が参考となる。
「科学計測のための波形データ処理」,南 著,CQ出版社
「最小二乗法による実験データ解析」,中川,小柳 著,東京大学出版会
“Numerical Recipes in C" by H.w.Press,S.A.Teukolsky,W.T.Vetterling,and B.P.Flannery,Cambrige University Press(1988)
邦訳:「C言語による数値計算のレシピ」、技術評論社
上述の手段を採用して蛋白質二次構造に由来するアミドI吸収帯に帰属されるピークからαへリックスとランダムコイルの重畳したピーク及びβシートのピークを分割すると、αへリックスとランダムコイルの重畳したピークは1649cm-1付近に帰属され、βシートのピークは1629cm-1付近に帰属される。そしてこれらのピークの面積を算出し、ピーク面積比β/αを算出する。ピーク面積比β/αの具体的な算出方法は、以下に述べるとおりである。以下の説明は、モデル実験としてヒトの前腕の皮膚を測定対象としたものである。
赤外吸収スペクトルの測定は、例えば以下の装置構成によって行う。
(1)FTIR:Nicolet380(商品名)、サーモサイエンティフィック社製
(2)光ファイバーカップリングユニット:FiberMate(商品名)、システムズエンジニアリング社製
(3)PIR光ファイバー型IR−ATRプローブ:システムズエンジニアリング社製
(4)装置制御・データ処理用コンピュータ
前記の構成の装置を用いてヒトの前腕皮膚のIR−ATR測定を行った。測定結果は図6に示すとおりである。通常IR−ATR測定の分析深さは1μm程度であり、これは一般的なヒト皮膚の角層(約15μm)よりも十分に浅い。そのため本装置構成で得られる皮膚のIR−ATRスペクトルは、角層のIR−ATRスペクトルとみなすことができる。
得られたIR−ATRスペクトルにおける1000〜1800cm-1の領域を、30個のガウス関数の重ね合わせで表現される関数によってフィッティングした。この関数は以下の式(1)で表される。
前記の式(1)において、フィッティングに用いた30個のガウス関数のピーク位置及びピーク幅に相当するパラメーターを以下の表1に示す。フィッティングは、上述した「科学計測のための波形データ処理」に記されている最小二乗Taylor微分補正法により行った。フィッティングのプログラムは、Visual Basic 6.0によって記述した。
フィッティングした結果を、測定されたIR−ATRスペクトルとともに図6示す。同図における1650cm-1付近の強い吸収帯は蛋白質のアミドIと呼ばれる吸収帯である
。本フィッティングでは、アミドIの吸収帯は3つのガウス関数(中心位置:1668c
-1,1649cm-1,1629cm-1)から構成されている。一般に1649cm-1付近の吸収はα−ヘリックス構造をとった蛋白質のアミド結合の吸収と、ランダムコイル構造をとった蛋白質のアミド結合の吸収とが重畳した吸収であると言われており、1629cm-1付近の吸収はβ−シート構造をとった蛋白質のアミド結合の吸収であると言われている。そこで1629cm-1のガウス関数の面積と、1649cm-1のガウス関数の面積の比α/βを、以下の式(2)を用いて算出した。
α/β=(C(1629cm-1)×W(1629cm-1))/(C(1649cm-1)×W(1649cm-1)) (2)
(式中、C(1629cm-1)及びC(1649cm-1)は、各波数でのガウス関数の係数を表し、W(1629cm-1)及びW(1649cm-1)は、各波数でのガウス関数の幅を反映するパラメーターを表す。
一般に皮膚のIRスペクトルは、主成分である蛋白質を主体とした信号に、脂質やNMF(アミノ酸類)等が重畳した形状を示す。蛋白質、脂質、アミノ酸類等の赤外吸収の位置及びその振動モードについては、既に詳細な検討が行われており、多数の知見が蓄積されている。これらの知見に基づいて、1000〜1800cm-1の領域の皮膚のIRスペクトルを表現できる最小限の数のガウスピークの重ね合わせを本発明者らが検討したところ、以下の表1に示すような30個の振動モードを反映した30個のガウス関数の組み合わせを選ぶことができた。
次にこれらの30個のガウス関数のピーク幅・ピーク位置の組み合わせを定数と置き、各ピーク強度を変数として、最小二乗法によって皮膚IRスペクトルに対するフィッティングを行った。このときの実測スペクトルとシミュレーションスペクトルの残差二乗和が最小になるように、ピーク幅・ピーク位置の組み合わせを繰り返し検討した。この検討を多様な皮膚IRスペクトルに対して行い、1000〜1800cm-1の領域の皮膚のIRスペクトルを最も良く表現できる30個のガウス関数のピーク幅・ピーク位置の組み合わせとして、以下の表1に示すパラメーター群を得た。
以上の方法に基づき、被験者の身体の特定の部位を対象として測定された赤外吸収スペクトルから得られた比β/αと、当該部位における角層の性状との関係を調べた結果を図7(a)〜(e)に示す。同図においては、角層の性状の一つである水分蒸散量に着目している。また同図における具体的な測定部位は、頬部、手掌部、手指部、脛部及び臀部である。被験者数は40人である。図7(a)〜(e)に示す結果から明らかなように、測定部位によって多少のばらつきがあるものの、比β/αと水分蒸散量との間には正の相関があることが判る。これらの結果から、赤外吸収スペクトルの測定から得られた比β/αの値の大小に基づき水分蒸散量を評価できることが判る。具体的には、比β/αの値が大きいほど水分蒸散量が多く、比β/αの値が小さいほど水分蒸散量が少ないと評価することができる。
水分蒸散量は、皮膚から体外へ向けて水分が蒸散する程度の尺度である。したがって、水分蒸散量が少ないことは、皮膚の水分のバリア能が高いことを意味する。それゆえ本発明によれば、皮膚の角層の性状としての水分バリア能を、比β/αの値の大小に基づき評価することができる。
水分蒸散量は、次の方法で測定される。装置として、上下が開口した円筒体の内部に、上部湿度センサーと下部湿度センサーの二本を設置して構成した装置を用いる。この円筒体の下部の開口端を被験者の肌に気密に密接させ、この状態下に上部湿度センサー及び下部湿度センサーで円筒体内の水分濃度を測定する。そして、当該二本の湿度センサーの測定値の差から単位時間及び単位面積当たりの水分蒸散量を求める。この測定は、円筒体内の下部から上方に向かうにしたがって水分濃度が減少することを利用したものである。具体的な装置としては、一般に市販されている機器、例えば、密閉式水分蒸発量測定器(Evaporimeter)や水分蒸散量測定器(Tewameter)を用いることができる。また、斯かる従来装置によって測定するときには、風等の外部環境の影響を受け易いため、測定場所が限定されると共に、そもそも安定したデータが得にくいという問題がある。そこで、この問題点を解消した水分蒸散量測定装置、例えば特開2001−190502号公報や特開平10−286238号公報に記載の装置を用いて測定してもよい。
前記の測定方法から明らかなように、本発明の評価方法は被験者の馴化が必要ないので、比β/αと水分蒸散量との関係の検量線を予め作成しておけば、被験者の馴化を行うことなく比β/αを測定するだけの簡単な操作で皮膚からの水分蒸散量や皮膚のバリア能を予測することができる。
また本発明によれば、皮膚からの水分蒸散量を指標とする皮膚のバリア能だけでなく、角層の性状としての肌の肌理なども評価することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の方法は、角層の性状の評価に基づく化粧品や医薬品の開発及び化粧品の対面販売における適切な化粧品の選択などの医療行為以外の目的で好適に用いられる。
1 赤外光ファイバー
2 測定ヘッド部
3 保持部材
4 支持体
5 赤外光照射部
6 干渉計部
7 検出部
8 演算部

Claims (3)

  1. ヒトの身体に赤外光を照射して、皮膚から反射した赤外光を検出することで、ヒトの皮膚の角層を対象として赤外分光法によって赤外吸収スペクトルを測定し、
    該赤外吸収スペクトルにおける蛋白質二次構造に由来するアミドI吸収帯のピークから、αへリックスとランダムコイルの重畳したピーク及びβシートのピークを分割し、
    αへリックスとランダムコイルの重畳したピークの面積及びβシートのピーク面積を算出して、〔βシートのピーク面積〕/〔αへリックスとランダムコイルの重畳したピークの面積〕で定義されるピーク面積比β/αを算出し、
    算出された比β/αの値を指標として皮膚の角層の性状を、医療行為以外の目的で評価する、皮膚の角層の性状の評価方法。
  2. 皮膚の角層の性状としての水分蒸散量を、比β/αの値の大小に基づき評価する請求項1に記載の評価方法。
  3. 比β/αの値が大きいほど水分蒸散量が多く、比β/αの値が小さいほど水分蒸散量が少ないと評価する請求項2に記載の評価方法。
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