以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る通信システムの構成を示すブロック図である。この通信システム1は、ツイストペア線2及びECU3a,3b,3c,3dを備える。
ツイストペア線2は、銅線21,22を撚り合わせた線であり、銅線21,22夫々の両端は、終端抵抗23,24に接続されている。
ECU3a,3b,3c,3d夫々は、ツイストペア線2の銅線21,22に接続しており、ツイストペア線2を介して他のECUと通信する。ECU3aの通信速度は500kbpsであり、ECU3cの通信速度は125kbpsである。ECU3b及び3dは、通信速度500kbps又は125kbpsで通信する。
ECU3a,3b,3c,3d夫々は、通信速度が同じECUと通信する。ECU3a,3b,3d間では通信速度500kbpsで通信が行われ、ECU3b,3c,3d間では通信速度125kbpsで通信が行われる。ECU3aはECU3cと通信しない。
ECU3a,3b,3c,3d夫々が他のECUと通信する場合に使用する周波数帯域は通信速度に対応する。ECU3a,3b,3d夫々が通信速度500kbpsで他のECUと通信する場合に使用する周波数帯域は、例えば22〜26MHzに設定されている。ECU3b,3c,3d夫々が通信速度125kbpsで他のECUと通信する場合に使用する周波数帯域は、例えば7〜11MHzに設定されている。
ECU3a,3b,3d夫々は、通信速度500kbpsで通信する場合、周波数帯域22〜26MHzの中で互いに異なる周波数の搬送波の振幅を変調した信号を生成する。ECU3a,3b,3d夫々は、通信速度500kbpsで通信する場合、周波数帯域22〜26MHzの中の24MHz、24.2MHz及び23.8MHzの搬送波の振幅を変調する。
ECU3b,3c,3d夫々は、通信速度125kbpsで通信する場合、周波数帯域7〜11MHzの中で互いに異なる周波数の搬送波の振幅を変調した信号を生成する。ECU3b,3c,3d夫々は、周波数帯域7〜11MHzの中の9MHz、9.2MHz及び8.8MHzの搬送の振幅を変調する。同一周波数帯域における搬送波の周波数間隔は0.2MHzである。なお、周波数間隔は0.2MHzに限定されない。
ECU3a,3b,3c,3d夫々に固有の搬送波の周波数を設定する方法の一例として、ECU3a,3b,3c,3d夫々に固有に割り当てられる識別情報を元に周波数を設定する方法がある。これにより、ECU3a,3b,3c,3d夫々に、各別の周波数を確実に割り当てることができる。
また、ECU3a,3b,3c,3d夫々は、通信速度500kbpsに対応する周波数帯域の信号、及び/又は、通信速度125kbpsに対応する周波数帯域の信号をツイストペア線2から抽出し、抽出した信号を検波する。ECU3aは周波数帯域22〜26MHzの信号を、ECU3cは周波数帯域7〜11MHzの信号を抽出する。ECU3b,3dは、共に、周波数帯域22〜26MHz及び7〜11MHzの両方の信号を各別に抽出する。
ECU3a,3b,3d夫々は、通信速度500kbpsで通信する場合、周波数が24MHz、24.2MHz及び23.8MHzの搬送波の振幅を変調し、周波数帯域22〜26MHzの信号を抽出して検波する。ECU3b,3c,3d夫々は、通信速度125kbpsで通信する場合、周波数が9MHz、9.2MHz及び8.8MHzの搬送波の振幅を変調し、周波数帯域7〜11MHzの信号を抽出して検波する。このため、通信速度500kbps及び125kbpsの通信を、ツイストペア線2を介して同時的に行うことができる。
ECU3a,3b,3d間で通信速度500kbpsの通信が行われ、ECU3a,3b,3dのうち少なくとも2つが通信速度500kbpsの信号をツイストペア線2に同時的に出力した場合、調停(アービトレーション)が行われ、信号の衝突が回避される。このとき、ECU3a,3b,3dが固有に有する識別情報に基づいて、信号の出力を停止するECUと、信号の出力を継続するECUとが決定される。
ECU3b,3c,3d間で通信速度125kbpsの通信が行われて同時的に通信速度125kbpsの信号が出力された場合にも、同様にアービトレーションが行われる。
なお、ECU3a,3b,3c,3d夫々は、特許請求の範囲における通信装置に該当する。
ツイストペア線2は、銅線21,22が撚り合わさった線であるため、信号の伝播によって銅線21,22の間で発生する電磁界が打ち消し合い、電磁誘導によって引き起こされるノイズが抑制される。
なお、銅線21,22夫々は特許請求の範囲における信号線に該当する。
図2はECU3aの構成を示すブロック図である。ECU3aは、制御部31、発振器32、スイッチ33、インバータ33a、BPF(Band-Pass Filter)34,34、差動増幅器34a及び検波器35を有する。発振器32及びスイッチ33の直列回路において、スイッチ33側の端子は銅線21とインバータ33aの入力端子とに、発振器32側の端子はボディアースに接続され、電位が固定されている。インバータ33aの出力端子は銅線22に接続している。
一方のBPF34は、差動増幅器34aのプラス端子と銅線21との間に、他方のBPF34は、差動増幅器34aのマイナス端子と銅線22との間に接続している。2つのBPF34,34は両方ともボディアースに接続されている。差動増幅器34aの出力端子は、検波器35の一方の端子に接続されている。検波器35の他方の端子は制御部31に接続されている。
制御部31は、図示しないセンサに接続されており、センサから例えば、車両の状態を示すデータを取得する。制御部31は、取得したデータから他のECU、例えば、ECU3bと通信するために信号をツイストペア線2に出力する場合、論理値1(ドミナント)又はゼロ(レセッシブ)で構成されるデータフレームを生成する。制御部31は、論理値が1である場合にスイッチ33をオンに、論理値がゼロである場合にスイッチ33をオフにすることによって、発振器32が出力する周波数24MHzの搬送波の振幅を変調する。これにより、周波数24MHzの搬送波にデータフレームが重畳された信号が生成される。
また、制御部31は、検波器35からデータフレームを受け付け、受け付けたデータフレームの内容に従って、エアーコンディショナ、ヘッドランプ、エンジン又はブレーキ等の図示しないアクチュエータの動作を制御する。
なお、制御部31は、信号をツイストペア線2に出力しない場合、スイッチ33をオフにしている。
発振器32は、固定された電位(以下、固定電位と記載する)を基準とした周波数24MHzの搬送波を出力する。前述したように、周波数帯域22〜26MHzにおける搬送波の周波数は、ECU3a,3b,3dごとに異なり、周波数帯域7〜11MHzにおける搬送波の周波数は、ECU3b,3c,3dごとに異なる。
インバータ33aは、発振器32が出力した搬送波の振幅を変調した信号を反転させて銅線22に出力する。
スイッチ33は、制御部31によってオン/オフされる。これにより、発振器32が出力した搬送波の振幅が変調される。スイッチ33がオンである場合に発振器32から搬送波が出力され、スイッチ33がオフである場合に発振器32から搬送波は出力されない。従って、ツイストペア線2に出力される信号において、論理値が1である期間に搬送波が存在し、論理値がゼロである期間に搬送波は存在しない。
また、搬送波の振幅を変調する時間は、搬送波の周波数又は位相等を変調する時間よりも短い。このため、ECU3aが搬送波の振幅を変調してからツイストペア線2に出力した信号を検知するまでの時間が短く、振幅変調は、ツイストペア線2に伝播する信号を検知して衝突を回避する方式、例えば、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)に適している。搬送波の振幅変調を、図2に示すように、発振器32及びスイッチ33によって行うことができるため、搬送波の振幅を変調する機器の構成が容易であり製造コストが低い。
また、銅線21には発振器32が出力した搬送波の振幅を変調した信号が出力され、銅線22には発振器32が出力した搬送波の振幅を変調した信号を反転した信号が出力される。このため、ツイストペア線2には、銅線21,22夫々に印加される電圧の差で表わされる差動信号が出力される。
一方のBPF34は、銅線21から、他方のBPFは、銅線22から、周波数帯域22〜26MHzの信号又は/及び周波数帯域7〜11MHzの信号を含む信号を受信し、受信した信号から周波数帯域22〜26MHzの信号を抽出する。BPF34,34夫々は、抽出した周波数帯域22〜26MHzの信号を検波器35に出力する。従って、ECU3b,3c,3dがツイストペア線2に出力した周波数帯域7〜11MHzの信号は、BPF34,34によって除去される。
差動増幅器34aは、プラス端子に入力された電圧と、マイナス端子に入力された電圧との差を検波器35に出力する。よって、検波器35には、周波数帯域22〜26MHzの差動信号が入力される。
検波器35は、差動増幅器34aが出力した周波数帯域22〜26MHzの差動信号に含まれている搬送波の有無を検知し、検知した結果に基づいて差動増幅器34aが出力した差動信号を検波し、検波した差動信号、即ちデータフレームを制御部31に出力する。検波器35は、発振器32から出力され、図示しない2値回路によって2値化された搬送波を受け付け、受け付けた搬送波を用いて差動増幅器34aが出力した差動信号を検波する。周波数帯域22〜26MHzの信号がツイストペア線2を伝播している間に同相のノイズを含んだ場合であっても、銅線21及び22の電圧差は変わらないため、差動増幅器34aが出力する差動信号は変わらない。従って、検波器35は誤りなく周波数帯域22〜26MHzの信号を検波することができる。
検波器35の具体的な検波方法ついては後述する。
次に、通信速度500kbps又は125kbpsで通信するECU3bの構成を説明する。図3はECU3bの構成を示すブロック図である。
ECU3bは、ECU3aが有する制御部31、発振器32、スイッチ33、インバータ33a、BPF34,34、差動増幅器34a及び検波器35に加えて、発振器36、スイッチ37、BPF38,38、差動増幅器38a及び検波器39を有する。ECU3bの発振器32が出力する搬送波の周波数は24.2MHzである。
発振器36及びスイッチ37の直列回路において、スイッチ37側の端子は銅線21とインバータ33aの入力端子に、発振器36側の端子はボディアースに接続している。インバータ33aの出力端子は銅線22に接続している。
一方のBPF38は、差動増幅器38aのプラス端子と銅線21との間に、他方のBPF38は、差動増幅器38aのマイナス端子と銅線22との間に接続している。2つのBPF38,38は両方ともボディアースに接続されている。差動増幅器38aの出力端子は、検波器39の一方の端子に接続されている。検波器39の他方の端子は制御部31に接続されている。
発振器36、スイッチ37、BPF38、差動増幅器38a及び検波器39夫々の構成は、発振器32、スイッチ33、BPF34、差動増幅器34a及び検波器35の構成と略同じである。発振器36が出力する搬送波の周波数は9MHzであり、BPF38は周波数帯域7〜11MHzの信号を抽出する。検波器39は、発振器36から出力され、図示しない2値化回路によって2値化された搬送波を受け付ける。
制御部31は、通信速度500kbpsで通信する場合、スイッチ33をオン/オフすることにより、通信速度500kbpsに対応する周波数帯域22〜26MHzにおける周波数24.2MHzの搬送波の振幅を変調する。また、制御部31は、通信速度125kbpsで通信する場合、スイッチ37をオン/オフすることにより、通信速度125kbpsに対応する周波数帯域7〜11MHzにおける周波数9MHzの搬送波の振幅を変調する。
BPF34及び38夫々は周波数帯域22〜26MHz及び7〜11MHzの信号を抽出する。周波数帯域22〜26MHz及び7〜11MHz夫々は通信速度500kbps及び125kbpsに対応するため、検波器35及び39夫々は通信速度500kbps及び125kbpsの差動信号を検波する。検波器35及び39夫々は、検波した差動信号、即ちデータフレームを制御部31に出力する。
なお、ECU3dの構成はECU3bの構成と略同じである。ただし、ECU3dの発振器32及び36夫々が出力する搬送波の周波数は、23.8MHz及び8.8MHzである。
また、ECU3cの構成はECU3aの構成と略同じであり、ECU3cの構成は、ECU3aの構成において発振器32、スイッチ33、BPF34、差動増幅器34a及び検波器35夫々の代わりに発振器36、スイッチ37、BPF38、差動増幅器38a及び検波器39が配された構成である。ECU3cの発振器36が出力する搬送波の周波数は9.2MHzである。
次に、制御部31が生成するデータフレームを説明する。図4は、データフレームのフォーマットを示す模式図である。データフレームは、SOF(Start Of Frame)、アービトレーションフィールド、コントロールフィールド、データフィールド、CRC(Cyclic Redundancy Check)フィールド、ACK(ACKnowledge)及びEOF(End Of Frame)によって構
成される。
SOFは、論理値1(ドミナント)の1つのビットで構成され、データフレームの開始を示す。
アービトレーションフィールドは、ECU3a,3b,3c,3d夫々に固有に割り当てられる識別情報とRTR(Remote Transmission Request)ビットとで構成される。ECU3a,3b,3dの中の2つ以上が通信速度500kbpsの信号を同時的にツイストペア線2に出力した場合、又は、ECU3b,3c,3dの中の2つ以上が通信速度125kbpsの信号を同時的にツイストペア線2に出力した場合、識別情報によって送信の優先度が決定される。RTRビットはデータの送信を要求しているか否かを示す。
コントロールフィールドは、この後に続くデータフィールドの長さを示す。
データフィールドは、センサの検出値又は他のECUへの処理命令等のデータを示す。
CRCフィールドは、データフレームが正しく受け付けられたか否かを検出するために使用される。
ACKは、データフレームが正しく受け付けられたか否かを、信号をツイストペア線2に出力したECUに通知するために使用される。
EOFは、データフレームの終了を示す。
次に、ECU3a,3bが同時的に通信速度500kbpsの信号をツイストペア線2に出力した場合に、ECU3a,3b夫々が行うアービトレーションを説明する。ECU3c,3d夫々が行うアービトレーションは、ECU3a,3b夫々が行うアービトレーションと同じであるため、説明を省略する。
図5は、ECU3a,3bが行うアービトレーションを説明するためのタイミングチャートである。図5には、ECU3a,3bが同時的に出力した信号が示すデータフレームのSOF及びアービトレーションフィールド部分の波形と、ECU3a,3bがツイストペア線2から受信する信号が示すデータフレームのSOF及びアービトレーションフィールド部分の波形とを示している。
ここで、ECU3a,3b,3c,3dが論理値ゼロ(レセッシブ)の信号をツイストペア線2に出力する場合、夫々のスイッチ33又は37がオフであるため、ツイストペア線2には電圧が印加されない。一方、ECU3a,3b,3c,3dが論理値1(ドミナント)の信号をツイストペア線2に出力する場合、夫々のスイッチ33又は37がオンであるため、ツイストペア線2には電圧が印加される。
従って、論理値1(ドミナント)及びゼロ(レセッシブ)の信号がツイストペア線2に同時的に出力された場合、ツイストペア線2の信号は論理値1(ドミナント)を示す。
ECU3aの制御部31は、搬送波に重畳したデータフレームにおけるアービトレーションフィールドの信号と、ツイストペア線2から受け付けたデータフレームにおけるアービトレーションフィールドの信号とを比較する。図5では、1ビット目から8ビット目まで、ツイストペア線2に出力した信号と、ツイストペア線2から受信した信号とが一致している。このため、ECU3aは、1ビット目から8ビット目まで、信号をツイストペア線2に出力し続ける。
ECU3aの制御部31は、9ビット目の信号(レセッシブ)をツイストペア線2に出力した場合、出力した信号(レセッシブ)がツイストペア線2から受信した信号(ドミナント)と異なり、ECU3bが出力した信号を検知する。ECU3aの制御部31は、ECU3bが出力した信号を検知した場合、信号の出力を停止し、信号の受信を継続する。
ECU3bの制御部31は、データフレームのSOF及びアービトレーションフィールドの信号を出力している間、ツイストペア線2に出力した信号と、ツイストペア線2から受信した信号とが一致するため、信号の出力を継続する。
次に、BPF34の回路を説明する。図6はBPF34の回路図である。ここでは、銅線21に接続しているBPF34の回路を説明する。BPF34は、インダクタL1,L2,L3、コンデンサC1,C2,C3及び抵抗R1によって構成されている。インダクタL1及びコンデンサC1の直列回路において、一方の端子は銅線21に接続されており、他方の端子はインダクタL2、コンデンサC2、並びに、コンデンサC3及びインダクタL3の直列回路夫々の一方の端子と接続されている。インダクタL2及びコンデンサC2夫々の他方の端子はボディアースに接続され、電位が固定されている。
コンデンサC3及びインダクタL3の直列回路の他方の端子は抵抗R1の一方の端子に接続されている。抵抗R1の他方の端子もボディアースに接続され、電位が固定されている。
インダクタL1及びコンデンサC1、並びに、コンデンサC3及びインダクタL3は、直列共振回路であり、インダクタL2及びコンデンサC2は並列共振回路である。
周波数が共振周波数である電圧波形が直列共振回路を透過した場合、電圧波形に対するインピーダンスはゼロである。周波数が共振周波数から離れるにつれて、直列共振回路を透過する電圧波形に対するインピーダンスは大きくなる。
周波数が共振周波数である電圧波形が並列共振回路を透過した場合、電圧波形に対するインピーダンスは無限大である。周波数が共振周波数から離れるにつれて、並列共振回路を透過する電圧波形に対するインピーダンスは小さくなる。
インダクタ及びコンデンサの値夫々をL及びCとした場合、インダクタ及びコンデンサで構成される直列共振回路及び並列共振回路の共振周波数は、共に1/(2πLC)Hzである。
インダクタL1及びコンデンサC1、並びに、コンデンサC3及びインダクタL3の直列共振回路、インダクタL2及びコンデンサC2の並列共振回路において、インダクタL1,L2,L3及びコンデンサC1,C2,C3の値は、共振周波数が周波数帯域の中心周波数になる値である。
例えば、ECU3a,3b,3d夫々が有するBPF34では、周波数帯域22〜26MHzの中心周波数24MHzが共振周波数となるように、インダクタL1,L2,L3と、コンデンサC1,C2,C3の値が設定される。
共振周波数近傍の周波数成分を有する信号がBPF34を透過する場合、インダクタL1及びコンデンサC1、並びに、コンデンサC3及びインダクタL3の直列共振回路のインピーダンスは小さく、インダクタL2及びコンデンサC2の並列共振回路のインピーダンスは大きい。このため、共振周波数近傍の周波数成分を有する信号にとって、BPF34の透過によって生じる損失は小さい。
共振周波数から離れた周波数成分を有する信号がBPF34を透過する場合、インダクタL1及びコンデンサC1の直列共振回路、並びに、コンデンサC3及びインダクタL3の直列共振回路のインピーダンスは大きく、インダクタL2及びコンデンサC2の並列共振回路のインピーダンスは小さい。
このため、共振周波数から離れた周波数成分で構成される信号にとって、BPF34の透過によって生じる損失は大きく、インダクタL1及びコンデンサC1の直列共振回路を透過した電流は、インピーダンスが小さいインダクタL2及びコンデンサC2の並列共振回路に流れる。従って、共振周波数から離れた周波数成分で構成される信号程、BPF34を透過しにくい。
抵抗R1は終端抵抗であり、抵抗R1の値は、検波器35とのインピーダンスと適合している。
なお、銅線22に接続しているBPF34の回路の構成及び作用は、銅線21に接続しているBPF34の回路と同様である。また、BPF38の回路はBPF34の回路と略同じである。BPF38におけるインダクタL1,L2,L3及びコンデンサC1,C2,C3夫々の値は、共振周波数が周波数帯域7〜11MHzの中心周波数9MHzになるように設定される。
図7はBPF34の透過特性を示す特性図である。ここで、インダクタL1,L2,L3の値夫々は、2067nH、26.6nH及び2067nHであり、コンデンサC1,C2,C3の値夫々は、21.3pF、1653.9pF及び21.3pFであり、抵抗R1の値は50Ωである。インダクタL1及びコンデンサC1、並びに、コンデンサC3及びインダクタL3の直列共振回路の共振周波数と、インダクタL2及びコンデンサC2の並列共振回路の共振周波数とは、共に24MHzである。
図7に示すように、周波数24MHz近傍における透過損失は略ゼロdBであり、周波数24MHzから離れるほど透過損失が大きくなっている。透過損失が−3〜ゼロdBである使用可能な周波数帯域は22〜26MHzである。
また、周波数帯域7〜11MHzの中心周波数9MHzにおける透過損失と、周波数24MHzにおける透過損失との差は69dBであり、中心周波数9MHzにおける透過損失は、周波数24MHzにおける透過損失の約2818倍である。
従って、BPF34は、周波数帯域7〜11MHzの信号を除去し、周波数帯域22〜26MHzの信号を抽出する。即ち、BPF34は、通信速度125kbpsの信号を除去し、通信速度500kbpsの信号を抽出する。
ここで、BPF34はバタワースフィルタである。即ち、インダクタL1,L2,L3、及び、コンデンサC1,C2,C3夫々の値は、周波数帯域22〜26MHzにおける透過損失が平坦になる値である。バタワースフィルタはマキシマリフラットフィルタとも呼ばれる。
従って、BPF34は、周波数帯域22〜26MHzの周波数成分からなる信号を、波形を歪めることなく、抽出することができる。
なお、通信システム1において使用される複数の周波数帯域の中心周波数における透過損失の差は、50dB以上であることが好ましい。また、インダクタL1,L2,L3及びコンデンサC1,C2,C3の値を適切に設定することによって、透過特性のグラフ形状が図7に示す透過特性と類似し、周波数帯域7〜11MHzの信号を抽出するBPF38を作成することができる。
なお、バタワースフィルタは、図6に示す回路構成と異なる回路でも構成することができ、BPF34及び38はインダクタL1,L2,L3、コンデンサC1,C2,C3及び抵抗R1からなる回路に限定されない。
次に、検波器35を説明する。図8は検波器35の要部構成を示すブロック図である。検波器35は増幅器41、2値化回路(コンパレータ)42、Dフリップフロップ(以下D−FFと記載する。)43,44及びOR回路45を有する。
増幅器41は、差動増幅器34aが出力した周波数帯域22〜26MHzの信号を増幅し、増幅した信号を2値化回路42に出力する。これにより、2値化回路42による信号の2値化が容易になる。
2値化回路42は、増幅器41が増幅した信号を、所定の閾値、例えば、増幅器41が増幅した信号の最大信号レベル及び最小信号レベルの中心値によって、論理値1及びゼロからなる信号に2値化する。2値化回路42は、2値化した信号をD−FF43のD端子、及び、OR回路45に出力する。
ここで、差動増幅器34aが出力した信号では、論理値が1である期間に搬送波が存在し、論理値がゼロである期間に搬送波が存在しないため、2値化回路42が出力する信号は、増幅器41が増幅した信号に含まれる搬送波を2値化した信号である。
D−FF43は、発振器32から出力され、図示しない2値化回路によって2値化された搬送波をクロック信号として受け付け、クロック信号が論理値ゼロから論理値1になる立ち上がり時点で、2値化回路42が出力した信号の論理値を読み取る。D−FF43は、読み取った論理値が1(又はゼロ)を示す場合、論理値1(又はゼロ)に対応する信号をQ端子からD−FF44のD端子、及び、OR回路45に出力する。クロック信号の周波数は搬送波の周波数と略同じである。
なお、D−FF43が、2値化回路42が出力した信号に含まれている搬送波の論理値を読み取る場合、D−FF43が読み取る時点、即ちクロック信号の立ち上がり時点は、搬送波において信号が論理値1を示す期間内にある。
D−FF44は、D−FF43が受け付けたクロック信号と同じクロック信号を受け付け、D−FF43がQ端子から出力した信号の論理値をクロック信号の立ち上がり時点で読み取る。D−FF44は、読み取った論理値が1(又はゼロ)を示す場合、論理値1(又はゼロ)に対応する信号をQ端子からOR回路45に出力する。
OR回路45は、2値化回路42、並びに、D−FF43及び44のQ端子から出力された信号を受け付ける。OR回路45は、3つの信号を受け付けた時点で、受け付けた3つの信号が示す3つの論理値の中で、いずれか1つの論理値が1を示す場合に論理値1に対応する信号を制御部31に出力する。
また、OR回路45は、受け付けた3つの信号が示す3つの論理値の全てがゼロを示す場合に論理値ゼロに対応する信号を制御部31に出力する。OR回路45が出力する信号は、BPF34が抽出した周波数帯域22〜26MHzの信号を検波した信号である。
なお、D−FF43,44が受け付けるクロック信号は発振器32から出力され、図示しない2値化回路によって2値化された搬送波に限定されない。例えば、検波器35は、クロック信号を発生するクロック回路を有し、D−FF43,44夫々はクロック回路からクロックを受け付けてもよい。
次に、検波器35の動作を説明する。図9は検波器35による信号の検波を説明するためのタイミングチャートである。図9は、D−FF43,44夫々に入力されるクロック信号、2値化回路42によって2値化された搬送波、D−FF43,44夫々のQ端子が出力する信号、及び、OR回路45が出力する信号が示されている。
図9は、2値化回路42が、1周期間の波形が除かれた搬送波を出力した場合にOR回路45から出力される信号を示している。D−FF43は、クロック信号の立ち上がり時点t1,t2,t4,t5,t6で搬送波の論理値1を読み取り、論理値1に対応する信号を出力している。一方、D−FF43は、クロック信号の立ち上がり時点t3では、搬送波が存在しないため、論理値ゼロを読み取り、論理値ゼロに対応する信号を出力している。このため、D−FF43は、Q端子から時点t3〜t4の区間に論理値ゼロの信号を出力し、時点t1〜t3の区間、及び、時点t4〜t6の区間に論理値1の信号を出力している。
D−FF44にはD−FF43のQ端子から出力した信号が入力されるため、D−FF44は、時点t1,t4夫々で論理値ゼロを、時点t2,t3,t5,t6夫々で論理値1を読み取る。このため、D−FF44は、時点t1〜t2の区間及び時点t4〜t5の区間に論理値ゼロの信号をQ端子から出力し、時点t2〜t4の区間及び時点t5〜t6の区間に論理値1の信号をQ端子から出力する。
OR回路45は、搬送波、並びに、D−FF43,44夫々のQ端子から出力された信号の内、いずれかの論理値が1を示す場合に論理値1の信号を出力するため、時点t1〜t6区間に論理値1(ドミナント)の信号を出力する。従って、ノイズ等によって1周期間の波形が除かれた搬送波が2値化回路42から出力された場合であっても、検波器35は搬送波の有を検出して論理値1に対応する信号を制御部31へ出力する。
波形が除かれていない搬送波が2値化回路42から出力された場合、検波器35は論理値1に対応する信号を時点t1〜t6区間に出力する。このため、検波器35は、1周期間以下の波形が除かれた搬送波が入力された場合、搬送波が存在するとみなして論理値1(ドミナント)の信号を制御部31に出力する。
図10は検波器35による信号の検波を説明するための他のタイミングチャートである。図10は、図9と同様に、D−FF43,44夫々に入力されるクロック信号、2値化回路42によって2値化された搬送波、D−FF43,44夫々のQ端子が出力する信号、及び、OR回路45が出力する信号が示されている。
図10は、2値化回路42が、2周期間の波形が除かれた搬送波を出力した場合にOR回路45から出力される信号を示している。D−FF43は、クロック信号の立ち上がり時点t1,t2,t5,t6で搬送波の論理値1を読み取り、論理値1に対応する信号を出力している。一方、D−FF43は、クロック信号の立ち上がり時点t3,t4では、搬送波が存在しないため、論理値ゼロに対応する信号を出力する。このため、D−FF43は、Q端子から時点t3〜t5区間に論理値ゼロの信号を出力し、時点t1〜t3の区間、及び、時点t5〜t6の区間に論理値1の信号を出力する。
D−FF44にはD−FF43のQ端子が出力した信号が入力されるため、時点t1,t4,t5夫々で論理値ゼロを、時点t2,t3,t6夫々で論理値1を読み取る。このため、D−FF44は、時点t1〜t2の区間、及び、時点t4〜t6の区間に論理値ゼロの信号をQ端子から出力し、時点t2〜t4の区間に論理値1の信号をQ端子から出力する。
OR回路45は、搬送波、並びに、D−FF43,44夫々のQ端子から出力された信号の内、いずれかの論理値が1を示す場合に論理値1の信号を出力し、いずれの論理値もゼロを示す場合に論理値ゼロの信号を出力する。時点t4〜t5の区間に、搬送波、並びに、D−FF43,44夫々のQ端子から出力された信号の全てが論理値ゼロを示す期間が存在するため、OR回路45は時点t4〜t5の区間に論理値ゼロ(レセッシブ)に対応する信号を出力する。従って、検波器35は、クロック信号の2周期間に搬送波の存在を検知しなかった場合、搬送波が存在しないとみなして論理値ゼロの信号を制御部31に出力する。
波形が除かれている期間が3周期間以上である搬送波が2値化回路42から出力された場合、検波器35は、波形が除かれている期間に応じた期間だけ論理値ゼロの信号を出力する。このため、検波器は、2周期間以上の波形が除かれた搬送波が入力された場合、搬送波が存在しないとみなして、波形が除かれた期間に応じた期間だけ論理値ゼロ(レセッシブ)の信号を制御部31に出力する。
検波器35は、前述したように、差動増幅器34aが出力した信号に含まれる搬送波の有無を検知して、搬送波が有の場合に論理値1(ドミナント)の信号を、搬送波が無の場合に論理値ゼロ(レセッシブ)の信号を出力し、BPF34が抽出した信号を検波する。
検波器35は、搬送波の有無を検知した検知結果に基づいて信号を検波するため、BPF34が抽出した信号を短時間で検波することができる。例えば、ダイオード、80pFのコンデンサ及び10kΩの抵抗で構成された搬送波の包絡線を検波する検波器が、周波数12MHzの搬送波を検波した場合、信号を検波する期間は3000ナノ秒である。一方で、検波器35が周波数12MHzの搬送波を検波した場合、信号を検波する期間は、搬送波の2周期間である167ナノ秒であり、短い。従って、検波器35は、ツイストペア線2を伝播する信号を検知して衝突を回避する方式、例えば、CSMA/CAに適している。
また、検波器35は、ダイオード、抵抗及びコンデンサ等を用いることなく、論理回路によって構成することができる。このため、検波器35を集積化することができ、検波器35の回路規模を小さくすることができる。
なお、検波器35は2つのD−FF43,44を有しているが、3つ以上のD−FFを有してもよい。検波器35がN(自然数)個のD−FFを有する場合、N個のD−FFが図8に示すように直列に接続される。このとき、検波器35は、N−1周期間の波形が除かれた搬送波を受け付けた場合、搬送波が存在するとみなして論理値1(ドミナント)の信号を出力する。検波器35は、N周期間の波形が除かれた搬送波を受け付けた場合、搬送波が存在しないとみなして論理値ゼロ(レセッシブ)の信号を出力する。検波器35が有するD−FFの数は、適宜、BPF34が抽出するノイズに応じて決定される。
なお、検波器39の構成及び動作は、検波器35の構成及び動作と略同じである。検波器39はBPF38から周波数帯域7〜11MHzの信号を受け付ける。
次に、ECU3a,3b,3c,3d夫々が、周波数帯域22〜26MHz及び/又は周波数帯域7〜11MHzにおいて、周波数の異なる搬送波の振幅を変調することによって得られる効果を説明する。
図11は、2つのECU3a,3b夫々が同じ通信速度500kbpsの信号を同時的に出力した場合にツイストペア線2で発生する信号の波形図である。電圧波形5a,5b夫々は、ECU3a,3bがツイストペア線2に出力する信号の波形であり、電圧波形5a,5bの周波数の差は0.2MHzである。電圧波形5cは、電圧波形5a,5bの合成波形であり、ツイストペア線2における電圧波形である。電圧波形5aの初期位相は、電圧波形5bの初期位相と比較してπradだけずれている。
ECU3a,3b夫々が同一の搬送波の振幅を変調した信号をツイストペア線2に出力した場合、初期位相がπradずれている電圧波形5a,5bは互いに打ち消し合い、電圧波形5cは存在しない。しかしながら、ECU3a,3bは同一周波数の搬送波の振幅を変調しないため、例え、位相がπradずれていたとしても、図11に示すように電圧波形5cがツイストペア線2に存在し、信号が完全に打ち消されることはない。
このように、ECU3a,3b,3c,3d夫々が、周波数帯域22〜26MHz及び/又は周波数帯域7〜11MHzにおいて、周波数の異なる搬送波の振幅を変調するので、ツイストペア線2で2つの信号が完全に打ち消し合うことはない。
次に、信号の出力及び受付を行う場合にECU3bが実行する動作の手順を説明する。ECU3dが信号の出力及び受信を行う場合に実行する動作の手順も、ECU3bが信号の出力及び受信を行う場合に実行する動作の手順と同様であるため、説明を省略する。
図12は、信号をツイストペア線2に出力する場合にECU3bが実行する動作の手順を示すフローチャートである。ECU3bは、センサから車両の状態を示すデータを取得し、信号をツイストペア線2に出力する場合、500kbps及び125kpsの中から1つの通信速度を選択する(ステップS1)。そして、ECU3bは、ツイストペア線2においてステップS1で選択した通信速度の信号を検知したか否かを判定する(ステップS2)。
ECU3bは、ツイストペア線2において信号を検知したと判定した場合(ステップS2:YES)、ステップS2の判定を繰り返す。ECU3bは、信号を検知していないと判定した場合(ステップS2:NO)、ステップS1で選択した通信速度の信号をツイストペア線2に出力する(ステップS3)。
次に、ECU3bは信号の出力が完了したか否かを判定する(ステップS4)。ECU3bは、信号の出力が完了していないと判定した場合(ステップS4:NO)、ステップS2を実行し、ツイストペア線2においてステップS1で選択した通信速度の信号を検知していなければ、信号を継続して出力する。
ECU3bは、信号の出力が完了したと判定した場合(ステップS4:YES)、信号をツイストペア線2に出力する動作を終了する。
信号を出力する場合にECU3a,3cが実行する動作の手順は、図12に示すフローチャートにおいて、ステップS1を除いた手順である。ECU3a,3cはステップS2から動作を開始する。
図13は、信号をツイストペア線2から受信する場合にECU3bが実行する動作の手順を示すフローチャートである。ECU3bは、ツイストペア線2から通信速度500kbps又は125kbpsの信号を受信しているか否かを判定する(ステップS11)。ECU3bは、信号を受信していないと判定した場合(ステップS11:NO)、ステップS11の動作を繰り返す。
ECU3bは、通信速度500kbps又は125kbpsの信号を受信していると判定した場合(ステップS11:YES)、受信した信号から、通信速度に対応する周波数帯域の信号を、BPF34,34及び差動増幅器34a、又は、BPF38,38及び差動増幅器38aを用いて抽出する(ステップS12)。
その後、ECU3bは、ステップS12で抽出した信号を、検波器35,39によって検波する(ステップS13)。ECU3bは、ステップS13の動作を実行した後、信号をツイストペア線2から受信する動作を終了する。
なお、信号を受信する場合にECU3a,3cが実行する動作の手順は、ECU3bが実行する動作の手順と同じである。
本実施の形態1にあっては、通信速度500kbps及び125kbpsで通信するECU3b(又はECU3d)は、通信速度500kbps又は125kbpsで通信するECU3a,3c,3d(又はECU3a,3b,3c)と通信することができる。このため、通信速度を変換する必要はなく、中継器を用いる必要はない。
また、通信速度500kbps及び125kbps夫々の信号は、通信速度に対応した周波数帯域の搬送波の振幅を変調することによって生成される。このため、通信速度500kbps及び125kbpsの通信を同一のツイストペア線で行うことができる。従って、ECU3a,3b,3c,3d夫々は、一のツイストペア線を介して種々の通信速度で通信することができる。
(実施の形態2)
図14は、実施の形態2におけるECU3aの構成を示すブロック図である。実施の形態2における通信システムの構成は、実施の形態1における通信システム1の構成(図1参照)と同様であるため説明を省略する。
実施の形態1と同様の部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態2における通信システムは、搬送波の振幅を変調した信号(以下、ASK信号と記載する)をツイストペア線2に出力する方法が、実施の形態1における通信システム1と異なっている。実施の形態2における通信システムが備えるECU3a,3b,3c,3dは、ツイストペア線2を構成する銅線21,22夫々にASK信号を同相で出力する。
図14に示すように、実施の形態2におけるECU3aは、制御部31、発振器32、スイッチ33、BPF34及び検波器35の他に、コンデンサC4,C5を有している。コンデンサC4の一方の端子はコンデンサC5の一方の端子と接続しており、コンデンサC4,C5間の接続ノードは、発振器32及びスイッチ33の直列回路におけるスイッチ33側の端子に接続している。また、コンデンサC4,C5間の接続ノード、及び、検波器35の一方の端子間にBPF34が接続しており、検波器35の他方の端子は制御部31に接続している。発振器32及びスイッチ33の直列回路における発振器32側の端子、並びに、BPF34夫々はボディアースに接続され、電位が固定されている。
制御部31は、実施の形態1におけるECU3aの制御部31と同様の処理を実行する。
発振器32は、固定電位を基準とした周波数24MHzの搬送波を出力する。発振器32が出力した搬送波は、制御部31がスイッチ33をオン/オフすることによって変調され、変調されたASK信号はコンデンサC4,C5夫々を介してツイストペア線2を構成する銅線21,22に同相で出力される。
ECU3aがツイストペア線2から信号を受信する場合、銅線21,22夫々からコンデンサC4,C5に入力した信号は、コンデンサC4,C5によって直流成分を除去され、コンデンサC4,C5の接続ノードで合波される。ここで、合波によって生成された信号は、コンデンサC4,C5によって直流成分を除去された信号である。
ECU3b,3c,3dは、ECU3aと同様にASK信号を同相で銅線21,22夫々に出力する。このため、銅線21,22夫々からコンデンサC4,C5に入力される信号は略同じである。従って、合波によって生成された信号は、銅線21(又は銅線22)からコンデンサC4(又はコンデンサC5)に入力した信号と略同じである。
BPF34は、合波によって生成された信号に、実施の形態1のBPF34が実行する処理と同じ処理を施し、周波数帯域22〜26MHzの信号を検波器35に出力する。従って、検波器35には、BPF34が抽出した周波数帯域22〜26MHzの信号を入力するだけでよく、複雑な処理が不要であるため、ツイストペア線2から周波数帯域22〜26MHzの信号を抽出する回路をBPF34で構成することができ、製造コストが低い。
検波器35は、BPF34によって抽出されて固定電位を基準とする周波数帯域22〜26MHzの信号に、実施の形態1における検波器35が実行する処理と同様の処理を施す。
図15は実施の形態2におけるECU3bの構成を示すブロック図である。
ECU3bは、実施の形態2におけるECU3aが有する制御部31、発振器32、スイッチ33、BPF34、検波器35及びコンデンサC4,C5に加えて、発振器36、スイッチ37、BPF38及び検波器39を有する。ECU3bの発振器32が出力する搬送波の周波数は24.2MHzである。
発振器36、スイッチ37、BPF38及び検波器39夫々の構成は、発振器32、スイッチ33、BPF34及び検波器35の構成と略同じである。発振器36が出力する搬送波の周波数は9MHzであり、BPF38は周波数帯域7〜11MHzの信号を抽出する。検波器39は、発振器36から出力され、図示しない2値化回路によって2値化された搬送波を受け付ける。
発振器36及びスイッチ37の直列回路において、スイッチ37側の端子はコンデンサC4,C5間の接続ノードに、発振器36側の端子はボディアースに接続されている。また、コンデンサC4,C5間の接続ノード、及び、検波器39の一方の端子間にBPF38が接続しており、検波器39の他方の端子は制御部31に接続している。BPF38もボディアースに接続されている。
ECU3bの制御部31は、通信速度500kbpsで通信する場合、スイッチ33をオン/オフすることにより、通信速度500kbpsに対応する周波数帯域22〜26MHzにおける周波数24.2MHzの搬送波の振幅を変調する。また、ECU3bの制御部31は、通信速度125kbpsで通信する場合、スイッチ37をオン/オフすることにより、通信速度125kbpsに対応する周波数帯域7〜11MHzにおける周波数9MHzの搬送波の振幅を変調する。
なお、実施の形態2におけるECU3dの構成は、実施の形態2におけるECU3bの構成と略同じである。ただし、ECU3dの発振器32及び36夫々が出力する搬送波の周波数は、23.8MHz及び8.8MHzである。
また、実施の形態2におけるECU3cの構成は、実施の形態2におけるECU3aの構成と略同じである。実施の形態2におけるECU3cは、実施の形態2におけるECU3aにおいて、発振器32、スイッチ33、BPF34及び検波器35夫々の代わりに発振器36、スイッチ37、BPF38及び検波器39を備える。実施の形態2におけるECU3cの発振器36が出力する搬送波の周波数は9.2MHzである。
実施の形態2において、制御部31が生成するデータフレーム、及び、ECU3a,3b,3c,3d夫々が行うアービトレーションは、実施の形態1の場合と同様であるため、説明を省略する。
次に、実施の形態2におけるBPF34の回路を説明する。図16は実施の形態2におけるBPF34の回路図である。実施の形態2におけるBPF34は、実施の形態1におけるBPF34(図6参照)と同様に、インダクタL1,L2,L3、コンデンサC1,C2,C3及び抵抗R1によって構成される。
インダクタL1及びコンデンサC1の直列回路において、一方の端子は、コンデンサC4,C5間の接続ノードに接続されており、他方の端子はインダクタL2、コンデンサC2、並びに、コンデンサC3及びインダクタL3の直列回路夫々の一方の端子と接続されている。インダクタL2及びコンデンサC2夫々の他方の端子はボディアースに接続されており、電位が固定されている。
コンデンサC3及びインダクタL3の直列回路の他方の端子は抵抗R1の一方の端子及び検波器35に接続されている。抵抗R1の他方の端子もボディアースに接続されており、電位が固定されている。
実施の形態2におけるBPF34を構成するインダクタL1,L2,L3、コンデンサC1,C2,C3及び抵抗R1の作用及び効果は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
なお、実施の形態2におけるBPF38の回路は、実施の形態2におけるBPF34の回路と略同じである。BPF38におけるインダクタL1,L2,L3及びコンデンサC1,C2,C3夫々の値は、共振周波数が周波数帯域7〜11MHzの中心周波数9MHzになるように設定される。
また、実施の形態2におけるBPF34の透過特性は、実施の形態1におけるBPF34の透過特性(図7参照)と同様であるため、説明を省略する。
次に、実施の形態2における検波器35を説明する。図17は実施の形態2における検波器35の要部構成を示すブロック図である。実施の形態2における検波器35は、実施の形態1における検波器35(図8参照)と同様に、増幅器41、2値化回路42、D−FF43,44及びOR回路45を有する。
増幅器41は、BPF34が抽出した周波数帯域22〜26MHzの信号を増幅し、増幅した信号を2値化回路42に出力する。これにより、2値化回路42による信号の2値化が容易になる。
実施の形態2における2値化回路42、D−FF43,44及びOR回路45の作用及び効果は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。実施の形態2における検波器35が実行する処理は、実施の形態1における検波器35が実行する処理と同様であるため、説明を省略する。
また、信号をツイストペア線2に出力する場合、及び、信号を受信する場合に、実施の形態2におけるECU3a,3b,3c,3d夫々が実行する動作の手順は、実施の形態1におけるECU3a,3b,3c,3dが実行する動作の手順(図12及び図13参照)と同様であるため、説明を省略する。ただし、実施の形態2におけるECU3a,3b,3c,3d夫々は、信号を受信して受信した信号から通信速度に対応する周波数の帯域の信号を抽出する場合、BPF34又は38を用いて抽出する。
なお、実施の形態1又は2において、ECU3a,3b,3c,3dの通信速度は500kbps又は125kbpsに限定されない。通信速度によって異なる周波数帯域は7〜11MHz又は22〜26MHzに限定されない。通信速度によって異なる周波数帯域は、別の周波数帯域でもよく、周波数帯域の幅は4MHzよりも狭くてもよく、広くてもよい。
また、ECU3a,3b,3c,3d夫々が、周波数帯域22〜26MHz及び/又は周波数帯域7〜11MHzにおいて、周波数の同一搬送波の振幅を変調してもよい。例えば、ECU3a,3b,3d何れも、通信速度500kbpsの信号を生成する場合に、周波数24MHzの搬送波の振幅を変調してもよい。
また、通信システムにおいて使用される通信速度の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。この場合、通信速度に対応する周波数帯域の数も3つ以上となる。また、1つのECUが3つ以上の通信速度で他のECUと通信してもよい。この場合、ECUが有する発振器、スイッチ、BPF及び検波器夫々の数は通信速度の数と同数となる。
(実施の形態3)
図18は、実施の形態3における通信システム1の構成を示すブロック図である。実施の形態1又は2と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
実施の形態1及び2において、周波数帯域に対応付けるパラメータは通信速度でなくてもよい。実施の形態3では、ECU3a,3b,3c,3d夫々が制御する電子機器に対応して周波数帯域が設定されている場合の通信システム1を説明する。
実施の形態3におけるECU3a,3b,3c,3d夫々は、ツイストペア線2の銅線21,22に接続しており、ツイストペア線2を介して他のECUと通信する。
ECU3aはエンジン又はギア等のパワートレイン系の電子機器を制御する。ECU3b,3d夫々は、パワートレイン系の電子機器に加えて、エアーコンディショナ、ワイパー又はエアバッグ等のボディ系の電子機器を制御する。ECU3cはボディ系の電子機器を制御する。
ECU3a,3b,3c,3d夫々は、制御対象である電子機器が類似するECUと通信する。パワートレイン系の電子機器を制御するECU3a,3b,3d間、及び、ボディ系の電子機器を制御するECU3b,3c,3d間で通信が行われる。ECU3aはECU3cと通信しない。
ECU3a,3b,3dがパワートレイン系の電子機器の制御に係る情報を送受信する場合に使用する周波数帯域は、例えば22〜26MHzに設定される。また、ECU3b,3c,3dがボディ系の電子機器の制御に係る情報を送受信する場合に使用する周波数帯域は、例えば7〜11MHzに設定される。
ECU3a,3b,3d夫々は、パワートレイン系の電子機器の制御に係る情報を送信する場合、周波数帯域22〜26MHzの中の24MHz、24.2MHz及び23.8MHzの搬送波の振幅を変調した信号を生成し、生成した信号をツイストペア線2に出力する。ECU3b,3c,3d夫々は、ボディ系の電子機器の制御に係る情報を送信する場合、周波数帯域7〜11MHzの中の9MHz、9.2MHz及び8.8MHzの搬送波の振幅を変調した信号を生成し、生成した信号をツイストペア線2に出力する。同一周波数帯域における搬送波の周波数間隔は0.2MHzである。なお、周波数間隔は0.2MHzに限定されない。
また、ECU3a,3b,3c,3d夫々は、パワートレイン系の電子機器に対応する周波数帯域の信号、及び/又は、ボディ系の電子機器に対応する周波数帯域の信号をツイストペア線2から抽出し、抽出した信号を検波する。ECU3aは周波数帯域22〜26MHzを、ECU3cは周波数帯域7〜11MHzの信号を抽出する。ECU3b,3dは、共に、周波数帯域22〜26MHz及び7〜11MHzの両方の信号を各別に抽出する。
ECU3a,3b,3d夫々は、パワートレイン系の電子機器に係る情報を送受信する場合、周波数が24MHz、24.2MHz及び23.8MHzの搬送波の振幅を変調し、周波数帯域22〜26MHzの信号を抽出して検波する。ECU3b,3c,3d夫々は、ボディ系の電子機器の制御に係る情報を送受信する場合、周波数が9MHz、9.2MHz及び8.8MHzの搬送波の振幅を変調し、周波数帯域7〜11MHzの信号を抽出して検波する。このため、パワートレイン系及びボディ系の電子機器の制御に係る情報の送受信を、ツイストペア線2を介して同時的に行うことができる。
ECU3a,3b,3dのうち少なくとも2つがパワートレイン系の電子機器に対応する周波数帯域の信号をツイストペア線2に同時的に出力した場合、アービトレーションが行われ、信号の衝突が回避される。このとき、ECU3a,3b,3dが固有に有する識別情報に基づいて、信号の出力を停止するECUと、信号の出力を継続するECUとが決定される。
ECU3b,3c,3dのうち少なくとも2つがボディ系の電子機器に対応する周波数帯域の信号をツイストペア線2に同時的に出力した場合も、アービトレーションが行われ、信号の衝突が回避される。
実施の形態3におけるECU3a,3b,3c,3d夫々の構成は、実施の形態1におけるECU3a,3b,3c,3dの構成と同様であってもよいし、実施の形態2におけるECU3a,3b,3c,3dの構成と同様であってもよい。
図19は、実施の形態3におけるECU3bが信号をツイストペア線2に出力する場合に実行する動作の手順を示すフローチャートである。信号をツイストペア線2に出力する場合において、ECU3bが実行するステップS24は、実施の形態1におけるECU3bが実行するステップS4(図12参照)と同様であるため説明を省略する。
ECU3bは、センサから車両の状態を示すデータを取得し、信号をツイストペア線2に出力する場合、パワートレイン系及びボディ系夫々の電子機器を制御するECUに割り当てられた周波数帯域の中から1つの周波数帯域を選択する(ステップS21)。そして、ECU3bは、ツイストペア線2においてステップS21で選択した周波数帯域の信号を検知したか否かを判定する(ステップS22)。
ECU3bは、ツイストペア線2において信号を検知したと判定した場合(ステップS22:YES)、ステップS22の判定を繰り返す。ECU3bは、ツイストペア線2において信号を検知していないと判定した場合(ステップS22:NO)、ステップS21で選択した周波数帯域の信号をツイストペア線2に出力する(ステップS23)。ECU3bは、ステップS23を実行した後、ステップS24を実行する。
信号を出力する場合にECU3dが実行する動作の手順は、ECU3bが実行する動作の手順と同じである。信号を出力する場合にECU3a,3cが実行する動作の手順は、図19に示すフローチャートにおいて、ステップS21を除いた手順である。ECU3a,3cはステップS22から動作を開始する。
図20は、実施の形態3におけるECU3bが信号をツイストペア線2から受信する場合に実行する動作の手順を示すフローチャートである。ECU3bは、パワートレイン系又はボディ系の電子機器を制御するECUに割り当てられた周波数帯域の信号を受信しているか否かを判定する(ステップS31)。ECU3bは、信号を受信していないと判定した場合(ステップS31:NO)、ステップS31の動作を繰り返す。
ECU3bは、信号を受信していると判定した場合(ステップS31:YES)、受信した信号から、パワートレイン系及びボディ系夫々の電子機器を制御するECUに割り当てられた周波数帯域の信号をBPF34又は38を用いて抽出する(ステップS32)。
その後、ECU3bは、ステップS32で抽出した信号を、検波器35,39によって検波する(ステップS33)。ECU3bは、ステップS33の動作を実行した後、信号をツイストペア線2から受信する動作を終了する。
なお、信号を受信する場合にECU3a,3c,3dが実行する動作の手順は、ECU3bが実行する動作の手順と同じである。
実施の形態3にあっては、パワートレイン系又はボディ系の電子機器を制御するECU3a,3b,3c,3dと通信するECU3b,3dは、パワートレイン系及びボディ系の電子機器に対応する2つの周波数帯域の信号で他のECUと通信する。従って、パワートレイン系(又はボディ系)の電子機器を制御するECUは、ボディ系(又はパワートレイン系)の電子機器を制御するECUと中継器を用いることなく一のツイストペア線2を介して通信することができる。
実施の形態1、2又は3においては、搬送波の振幅を変調する方法は、発振器32(又は発振器36)が出力する搬送波をスイッチ33(又はスイッチ37)のオン/オフによって変調する方法に限定されない。ECU3a,3b,3c,3dは、搬送波の振幅を変調することができればよい。
また、BPF34は、バタワースフィルタに限定されず、例えば、チェビシェフフィルタでもよい。検波器35は、2値化回路42、D−FF43,44及びOR回路45によって構成される検波器に限定されない、他の論理回路によって構成される検波器でもよく、ダイオード、コンデンサ及び抵抗等によって構成され、BPF34が抽出した信号の包絡線を検波する検波器でもよい。
また、ツイストペア線2に接続されるECUの数は4つに限定されない。通信システム1が備えるECUの数は、2、3又は5以上であってもよい。
(実施の形態4)
図21は、実施の形態4における通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態1、2又は3と同様の部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態4における通信システム6は、ASK信号に加えて、ベースバンド信号をツイストペア線2に出力する点が実施の形態1における通信システム1と異なっている。ベースバンド信号は、所定の期間ごとに、ツイストペア線2を構成する銅線21,22夫々に種々の値の直流電圧を印加することによって生成される信号である。
通信システム6は、ツイストペア線2及びECU7a,7b,7c,7dを備える。ECU7a,7b,7c,7d夫々は、ツイストペア線2の銅線21,22に接続しており、ツイストペア線2を介して他のECUと通信する。
ECU7aは、ベースバンド信号、又は、通信速度500kbpsのASK信号で通信する。ECU7bは、ベースバンド信号、又は、通信速度125kbps、250kbps若しくは500kbpsのASK信号で通信する。ECU7cは、ベースバンド信号、又は、通信速度125kbpsのASK信号で通信する。ECU7dは、通信速度250kbps又は500kbpsのASK信号で通信する。
ECU7a,7b,7c間ではベースバンド信号で、ECU7a,7b,7d間では通信速度500kbpsのASK信号で、ECU7b,7c間では125kbpsのASK信号で、ECU7b,7d間では通信速度250kbpsのASK信号で通信する。
ECU7a,7b,7c,7d夫々がASK信号を生成する場合に使用する周波数帯域は通信速度に対応する。通信速度500kbps、250kbps及び125kbps夫々のASK信号を生成する場合に使用される周波数帯域は、例えば4.5〜5.5MHz、2.25〜2.75MHz及び1.125〜1.375MHzに設定される。周波数帯域の幅は通信速度の2倍に設定されている。
ECU7a,7b,7c,7d夫々は、通信速度500kbps、250kbps及び125kbpsのASK信号を生成する場合、周波数が通信速度の10倍である5MHz、2.5MHz及び1.25MHzの搬送波の振幅を変調する。
ECU7a,7b,7c夫々はベースバンド信号を生成する。具体的には、ECU7a,7b,7c夫々は、論理値が1(ドミナント)である場合、銅線21,22夫々に電圧VH及びVLを印加し、論理値がゼロ(レセッシブ)である場合、銅線21,22両方に電圧VRを印加する。ここで、電圧VLが最も低く、電圧VR、VHとなるにつれて高い。ECU7a,7b,7c夫々は、銅線21,22の電圧差を読取り、読取った電圧差が所定電圧以上である場合に論理値1(ドミナント)と判定し、所定電圧未満である場合に論理値ゼロ(レセッシブ)と判定する。
ECU7a,7b,7c,7d夫々は、ASK信号の通信速度に対応する周波数帯域の信号をツイストペア線2から抽出し、抽出した信号を検波する。ECU7aは周波数帯域4.5〜5.5MHzの信号を、ECU7cは周波数帯域1.125〜1.375MHzの信号を抽出する。ECU7bは、周波数帯域1.125〜1.375MHz、2.25〜2.75MHz及び4.5〜5.5MHzの信号を各別に抽出する。ECU7dも、周波数帯域2.25〜2.75MHz及び4.5〜5.5MHzの信号を各別に抽出する。
更に、ECU7a,7b,7c夫々はベースバンド信号を検波する。
ECU7a,7b,7c夫々はベースバンド信号を生成してツイストペア線2に出力し、ツイストペア線2からベースバンド信号を検波する。ECU7a,7b,7d夫々は、通信速度500kbpsのASK信号で通信する場合、周波数が5MHzの搬送波の振幅を変調した信号を生成して出力し、周波数4.5〜5.5MHzの信号を抽出して検波する。ECU7b,7c夫々は、通信速度125kbpsのASK信号で通信する場合、周波数が1.25MHzの搬送波の振幅を変調した信号を生成して出力し、周波数1.125〜1.375MHzの信号を抽出して検波する。ECU7b,7d夫々は、通信速度250kbpsのASK信号で通信する場合、周波数が2.5MHzの搬送波の振幅を変調した信号を生成して出力し、周波数2.25〜2.75MHzの信号を抽出して検波する。
このため、ベースバンド信号による通信、並びに、通信速度125kbps、250kbps及び500kbpsのASK信号による通信を、ツイストペア線2を介して同時的に行うことができる。ECU7a,7b,7cは、ASK信号による通信に加えて、ベースバンド信号による通信も行うことができるため、通信可能な情報量が多い。
ECU7a,7b,7cのうち少なくとも2つがベースバンド信号を、ECU7a,7b,7dのうち少なくとも2つが通信速度500kbpsのASK信号を、ECU7b,7cが共に通信速度125kbpsのASK信号を、ECU7b,7dが共に通信速度250kbpsのASK信号を同時的にツイストペア線2に出力した場合、アービトレーションが行われ、信号の衝突が回避される。アービトレーションでは、ECU7a,7b,7c,7d夫々が固有に有する識別情報に基づいて、信号の出力を停止するECUと、信号の出力を継続するECUとが決定する。
図22は実施の形態4におけるECU7aの構成を示すブロック図である。ECU7aは、制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75、通信部76、コモンモードチョークコイル77及びコンデンサC4,C5を有する。制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75及びコンデンサC4,C5夫々の構成は、実施の形態2における制御部31、発振器32、スイッチ33、BPF34、検波器35及びコンデンサC4,C5夫々の構成と略同じである。
コンデンサC4の一方の端子はコンデンサC5の一方の端子と接続しており、コンデンサC4,C5夫々の他方の端子は銅線21,22に接続している。コンデンサC4,C5間の接続ノードは、発振器72及びスイッチ73の直列回路におけるスイッチ73側の端子に接続している。また、コンデンサC4,C5間の接続ノード、及び、検波器75の一方の端子間にBPF74が接続しており、検波器75の他方の端子は制御部71に接続している。発振器72及びスイッチ73の直列回路における発振器72側の端子、並びに、BPF74夫々はボディアースに接続され、電位が固定されている。通信部76は、コモンモードチョークコイル77を介して銅線21,22夫々に接続し、制御部71に接続している。
制御部71は、実施の形態2におけるECU3aの制御部31が実行する処理に加えて、ベースバンド信号でECU7b又は7cと通信する場合にデータフレームを生成して通信部76に出力する。制御部71は、検波器75に加えて、通信部76からもデータフレームを受け付け、受け付けたデータフレームの内容に従って、エアーコンディショナ、ヘッドランプ、エンジン又はブレーキ等の図示しないアクチュエータの動作を制御する。
発振器72は、実施の形態2における発振器32と同様の処理を実行する。ただし、発振器72は周波数5MHzの搬送波を出力する。
スイッチ73は実施の形態2におけるスイッチ33と同様の処理を実行する。
制御部71は、発振器72が出力した周波数5MHzの搬送波の振幅を、スイッチ73をオン/オフすることによって変調し、変調した信号をコンデンサC4,C5夫々を介して銅線21,22に同相で出力する。ECU7b,7c,7dは、ECU7aと同様にして、ASK信号を同相で銅線21,22夫々に出力する
BPF74は実施の形態2におけるBPF34と同様の処理を実行する。ただし、BPF74は、固定電位を基準とする周波数帯域4.5〜5.5MHzの信号を抽出して、抽出した信号を検波器75に出力する。
検波器75は、BPF74によって抽出された周波数帯域4.5〜5.5MHzの信号に、実施の形態2における検波器35が実行する処理と同様の処理を施す。
通信部76は、制御部71からデータフレームを受け付け、受け付けたデータフレームに従ってベースバンド信号を生成して、生成したベースバンド信号をコモンモードチョークコイル77を介してツイストペア線2に出力する。ここで、通信部76が生成するベースバンド信号はツイストペア線2の銅線21,22夫々に印加される電圧の差で表される差動信号である。
通信部76は、論理値が1(ドミナント)である場合、銅線21,22夫々に電圧VH,VLを印加し、論理値がゼロ(レセッシブ)である場合、銅線21,22両方に電圧VRを印加する。
更に、通信部76は、コモンモードチョークコイル77を介して、ツイストペア線2からベースバンド信号を受信した場合、受信したベースバンド信号を検波する。具体的には、通信部76は、銅線21,22の電圧差が所定電圧以上である場合に論理値1と判定し、銅線21,22の電圧差が所定電圧未満である場合に論理値ゼロと判定する。通信部76は、ベースバンド信号を検波することによって得られるデータフレームを制御部71に出力する。
通信システム6においては、銅線21,22夫々に、差動信号であるベースバンド信号、及び、同相のASK信号を含む多重信号が出力される。ベースバンド信号に同相のASK信号が多重されても、銅線21,22の電圧差は変わらない。同様に、多重信号がツイストペア線2を伝播している間に、同相のノイズが銅線21,22夫々に重畳しても銅線21,22の電圧差は変わらない。よって、通信部76は、銅線21,22の電圧差を読取るので、ベースバンド信号を誤りなく検波することができる。このため、通信システム6においては、ベースバンド信号で重要なデータ、例えば、パワートレイン系の電子機器の制御に係るデータを送受信することが好ましい。
コモンモードチョークコイル77は、環状の磁性体、例えばフェライトに銅線21,22夫々に接続される配線を、磁性体の同一の周方向に対して右回り(又は左回り)に巻きつけることによって構成される。これにより、コモンモードチョークコイル77は、磁性体に巻きつけられた配線夫々に重畳している同相の信号又はノイズにはインダクタとして機能して同相の信号又はノイズを除去する。ツイストペア線2を伝播する差動信号にはインダクタとして機能せずに、差動信号はそのまま出力される。
コモンモードチョークコイル77は、通信部76が生成するベースバンド信号から同相のノイズを除去してツイストペア線2に出力し、ツイストペア線2から受信した信号から同相の信号又はノイズを除去して通信部76に出力する。通信システム6では、銅線21,22に同相のASK信号を出力するため、ECU7a,7b,7c夫々が有するコモンモードチョークコイル77は、ベースバンド信号及びASK信号を含む多重信号から同相のASK信号を除去して、差動信号であるベースバンド信号を抽出することができる。
図23は実施の形態4におけるECU7bの構成を示すブロック図である。ECU7bは、ECU7aと同様に、制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75、通信部76、コモンモードチョークコイル77及びコンデンサC4,C5を有する。これらの構成に加えて、ECU7bは、発振器78,82、スイッチ79,83、BPF80,84及び検波器81,85を更に有する。
発振器78,82夫々は発振器72と、スイッチ79,83夫々はスイッチ73と、BPF80,84夫々はBPF74と、検波器81,85夫々は検波器75と略同様に構成されている。発振器78,82夫々が出力する搬送波の周波数は2.5MHz及び1.25MHzであり、BPF80,84夫々は周波数帯域2.25〜2.75MHz及び1.125〜1.375MHzの信号を抽出する。検波器81,85夫々は、発振器78,82から出力され、図示しない2値化回路によって2値化された搬送波を受け付ける。
発振器78及びスイッチ79の直列回路において、スイッチ79側の端子はコンデンサC4,C5間の接続ノードに、発振器78側の端子はボディアースに接続されている。また、コンデンサC4,C5間の接続ノード、及び、検波器81の一方の端子間にBPF80が接続しており、検波器81の他方の端子は制御部71に接続している。BPF80もボディアースに接続されている。
発振器82及びスイッチ83の直列回路において、スイッチ83側の端子はコンデンサC4,C5間の接続ノードに、発振器82側の端子はボディアースに接続されている。また、コンデンサC4,C5間の接続ノード、及び、検波器85の一方の端子間にBPF84が接続しており、検波器85の他方の端子は制御部71に接続している。BPF84もボディアースに接続されている。
ECU7bの制御部71は、ベースバンド信号で通信する場合、データフレームを通信部76に出力する。ECU7bの制御部71は、搬送波を用いて通信速度500kbps、250kbps及び125kbps夫々で通信する場合、スイッチ73,79,83を各別にオン/オフすることにより、周波数5MHz、2.5MHz及び1.25MHzの搬送波の振幅を変調する。
ECU7cの構成はECU7aの構成と略同じである。ただし、ECU7cは、ECU7aにおいて、発振器72、スイッチ73、BPF74及び検波器75夫々の代わりに、発振器82、スイッチ83、BPF84及び検波器85を備える。
ECU7dの構成は、ECU7bから通信部76、コモンモードチョークコイル77、発振器82、スイッチ83、BPF84及び検波器85を除いた構成である。
制御部71が生成するデータフレームは、実施の形態1における制御部31が生成するデータフレームと同様であるので説明を省略する。
ECU7a,7b,7c,7d夫々が通信速度500kbps、250kbps又は125kbpsのASK信号について行うアービトレーションは、実施の形態1においてECU3a,3b,3c,3dが行うアービトレーションと同様であるため、説明を省略する。
また、ECU7a,7b,7c夫々がベースバンド信号について行うアービトレーションは公知の技術である。ECU7a,7b,7c夫々がデータフレームのアービトレーションフィールド部分の信号を出力している間、銅線21,22夫々に電圧VH及びVLを印加する論理値1(ドミナント)と、銅線21,22両方に電圧VRを印加する論理値ゼロ(レセッシブ)とがツイストペア線2に出力された場合、論理値1が論理値ゼロよりも優先される。
これにより、ECU7a,7b,7c夫々少なくとも2つが同時的にベースバンド信号を出力した場合に、アービトレーションフィールドで出力した論理値と受信した論理値とが異なるECUは、ベースバンド信号の出力を停止する。このようにしてアービトレーションが行われる。
図24は、実施の形態4におけるECU7aの動作を示すタイミングチャートである。図24には、縦軸及び横軸夫々を電圧及び時間として、通信部76が銅線21,22夫々に出力するベースバンド信号、発振器72及びスイッチ73によって生成されて銅線21,22夫々に出力するASK信号、銅線21,22夫々を伝播する多重信号を示している。ここで、ベースバンド信号及びASK信号夫々の論理値は“01010”及び“0101010101”であるとする。
なお、銅線21,22夫々に出力される信号の波形を実線及び破線で示している。また、便宜上、ベースバンド信号の通信速度は、図24では、多重するASK信号の通信速度500kbpsの半分である250kbpsとしている。
通信部76は、論理値がゼロである場合に電圧VRを、論理値が1である場合に電圧VHを銅線21に印加することによって、ベースバンド信号を銅線21に出力している。また、通信部76は、論理値がゼロである場合に電圧VRを、論理値が1である場合に電圧VLを銅線22に印加することによって、ベースバンド信号を銅線22に出力している。250kbpsの逆数、即ち、4マイクロ秒ごとに、通信部76は論理値に応じた電圧を銅線21,22夫々に印加する。
制御部71は、ASK信号を生成する場合、論理値がゼロである期間、スイッチ73をオフとし、論理値が1である期間、スイッチ73をオンにする。従って、銅線21,22夫々に出力されるASK信号では、論理値“0101010101”に従って、論理値1の期間に周波数5MHzの搬送波が出力されている。論理値ゼロ又は1が出力される期間は、500kbpsの逆数、即ち、2マイクロ秒である。
論理値“01010”のベースバンド信号と、論理値“0101010101”のASK信号とが多重された場合、図24に示すように、ベースバンド信号にASK信号が重畳した波形となる。ベースバンド信号が差動信号であり、ASK信号が同相で銅線21,22に出力されているため、ベースバンド信号において、論理値がゼロである期間、銅線21,22夫々に伝播する多重信号の波形は同じであり、論理値が1である期間、銅線21,22夫々の電圧差は(VH−VL)で一定である。
従って、このような多重信号が他のECUに入力された場合、コモンモードチョークコイル77によって同相のASK信号が除去され、図24に示すベースバンド信号が抽出される。更に、銅線21,22夫々の電圧差は同じであるため、通信部76は電圧差から誤りなくベースバンド信号を検波することができる。
また、多重信号に含まれる直流成分、即ち、ベースバンド信号は、コンデンサC4,C5夫々によって除去されるため、BPF74には、図24に示すASK信号が入力される。BPF74は、ベースバンド信号が除去された多重信号から周波数帯域4.5〜5.5MHzのASK信号を抽出し、検波器75はBPF74が抽出したASK信号を検波する。
なお、ECU7cは、ECU7aと同様にしてベースバンド信号及び/又はASK信号を含む多重信号をツイストペア線2に出力する。また、ECU7dは、ベースバンド信号を出力しないため、ECU7dが出力する多重信号は通信速度500kbps及び/又は250kbpsのASK信号を含む。更に、ECU7bは、ベースバンド信号と複数のASK信号とを出力するため、ECU7bが出力する多重信号は、ベースバンド信号、並びに、通信速度500kbps、250kbps及び125kbpsのASK信号のうち少なくとも1つを含む。
図25はBPF74の回路図である。BPF74は、実施の形態2におけるBPF34(図16参照)と略同様であり、コンデンサ及びインダクタからなる直列共振回路又は並列共振回路の数が異なっている。BPF74は、インダクタL6,L7,L8,L9、コンデンサC6,C7,C8,C9及び抵抗R2によって構成されている。
インダクタL6及びコンデンサC6の直列回路において、一方の端子は、コンデンサC4,C5間の接続ノードに接続されており、他方の端子はインダクタL7、コンデンサC7、並びに、コンデンサC8及びインダクタL8の直列回路夫々の一方の端子と接続されている。コンデンサC8及びインダクタL8の直列回路の他方の端子は、インダクタL9、コンデンサC9、抵抗R2の一方の端子、及び、検波器75に接続され、インダクタL7,L9、コンデンサC7,C9及び抵抗R2の他方の端子はボディアースに接続されており、電位が固定されている。
インダクタL6及びコンデンサC6、並びに、インダクタL8及びコンデンサC8は直列共振回路を、インダクタL7及びコンデンサC7、並びに、インダクタL9及びコンデンサC9は、並列共振回路を構成する。直列共振回路又は並列共振回路で共振周波数が5MHzとなるように、インダクタL6,L7,L8,L9及びコンデンサC6,C7,C8,C9夫々の値が設定されている。
BPF74の作用は、実施の形態2におけるBPF34の作用と同じである。共振周波数近傍の周波数成分を有する信号がBPF74を透過する場合、インダクタL6及びコンデンサC6、並びに、コンデンサC8及びインダクタL8の直列共振回路のインピーダンスは小さく、インダクタL7及びコンデンサC7、並びに、インダクタL9及びコンデンサC9の並列共振回路のインピーダンスは大きい。このため、共振周波数近傍の周波数成分を有する信号について、BPF74の透過によって生じる損失は小さい。
共振周波数から離れた周波数成分を有する信号がBPF74を透過する場合、インダクタL6及びコンデンサC6、並びに、コンデンサC8及びインダクタL8の直列共振回路のインピーダンスは大きく、インダクタL7及びコンデンサC7、並びに、インダクタL9及びコンデンサC9の並列共振回路のインピーダンスは小さい。このため、共振周波数から離れた周波数成分を有する信号について、BPF74の透過によって生じる損失は大きい。
これにより、BPF74は周波数帯域4.5〜5.5MHzの信号を抽出することができる。
直列共振回路及び並列共振回路の数を増やす程、共振周波数近傍の周波数帯域4.5〜5.5MHzから離れた同一周波数における損失は大きくなり、BPF74が抽出した信号において、周波数帯域4.5〜5.5MHz以外の周波数成分の強度がより小さくなる。これにより、BPF74が出力した信号から周波数帯域2.25〜2.75MHzの信号を読取られる確率が小さくなる。
しかしながら、直列共振回路及び並列共振回路の数を増やす程、信号がBPF74に入力してBPF74から出力するまでの時間が長くなる。時間が長くなる程、ECU7aが信号を検波する時間が長くなるため、ツイストペア線2を伝播する信号を検知し衝突を回避する方式、例えば、CSMA/CAに適していない。
このため、直列共振回路及び並列共振回路の数は、通信システム6で使用される3つの周波数帯域のうち、抽出する周波数帯域に隣り合う周波数帯域の中心周波数における透過損失が50dB以上を満たす最も少ない数に決定される。BPF74については、周波数帯域2.25〜2.75MHzの中心周波数2.5MHzにおける損失が50dB以上となるように直列共振回路及び並列共振回路の数が決定されている。
抵抗R2は終端抵抗であり、抵抗R2の値は、検波器75とのインピーダンスと適合するように設定されている。
また、BPF74はバタワースフィルタであり、インダクタL6,L7,L8,L9及びコンデンサC6,C7,C8,C9夫々の値は、共振周波数が5MHzとなり、かつ、周波数帯域4.5〜5.5MHzにおける透過損失が平坦になるように設定されている。従って、BPF74は周波数帯域4.5〜5.5MHzの信号を、波形を歪めることなく、抽出することができる。
図26は実施の形態4におけるBPF74の透過特性を示す特性図である。図26に示すように、周波数帯域4.5〜5.5MHzにおける透過損失は略ゼロdBであり、周波数帯域4.5〜5.5MHzから離れるほど透過損失が大きくなっている。透過損失が−3〜ゼロdBである使用可能な周波数帯域は4.4〜5.6MHzである。
また、BPF80が抽出する周波数帯域2.25〜2.75MHzの中心周波数2.5MHzにおける透過損失と、周波数5MHzにおける透過損失との差は59dBであり、中心周波数2.5MHzにおける透過損失は、周波数5MHzにおける透過損失の約891倍である。BPF84が抽出する周波数帯域1.125〜1.375MHzの中心周波数1.25MHzにおける透過損失と周波数5MHzにおける透過損失との差は、周波数1.25MHzが周波数2.5MHzよりも更に周波数5MHzから離れていることから59dB以上である。
従って、BPF74は、周波数帯域2.25〜2.75MHz及び1.125〜1.375MHzの信号を除去し、周波数帯域4.5〜5.5MHzの信号を抽出する。即ち、BPF74は、通信速度250kbps及び125kbpsのASK信号を除去し、通信速度500kbpsのASK信号を抽出する。
また、インダクタL6,L7,L8,L9及びコンデンサC6,C7,C8,C9の値を適切に設定することによって、透過特性のグラフ形状が図26に示す透過特性と類似し、周波数帯域2.25〜2.75MHz及び1.125〜1.375MHz夫々の信号を抽出するBPF80,84を作成することができる。
図27は実施の形態4におけるBPF74の遅延時間を説明するための説明図である。図27は、正弦波がBPF74を透過するのにかかる時間である遅延時間を周波数ごとに示している。図27に示すように、周波数帯域4.5〜5.5MHzの中心周波数5MHzにおける遅延時間は665ナノ秒となっており、非常に短い。
また、BPF80,84夫々における周波数2.5MHz及び1.25MHzの遅延時間は、BPF74における周波数5MHzの遅延時間と同様に短い。
なお、BPF80,84夫々の回路はBPF74の回路と略同じである。BPF80におけるインダクタL6,L7,L8,L9及びコンデンサC6,C7,C8,C9の値は、共振周波数が2.5MHzとなり、かつ、周波数帯域2.25〜2.75MHzにおける透過損失が平坦になるように設定される。同様に、BPF84夫々におけるインダクタL6,L7,L8,L9及びコンデンサC6,C7,C8,C9の値は、共振周波数が1.25MHzとなり、かつ、周波数帯域1.125〜1.375MHzにおける透過損失が平坦になるように設定される。
検波器75,81,85夫々は、実施の形態2における検波器35又は39と同様に構成されているため、説明を省略する。ただし、検波器75,81,85夫々は、周波数5MHz、2.5MHz及び1.25MHzの搬送波の有無を検知するように構成されている。
ツイストペア線2に伝播する信号を検知して衝突を回避する方式、例えば、CSMA/CA方式では、ECU7a,7b,7c,7d夫々は、衝突を回避するために、1ビットの信号をツイストペア線2に出力した後、1ビット期間内にツイストペア線2に出力した信号を検波しなければならない。ECU7a,7b,7d夫々は、例えば、通信速度500kbpsのASK信号をツイストペア線2に出力した場合、2マイクロ秒以内にツイストペア線2に出力した信号を検波する必要がある。
検波器75,81,85は、搬送波が存在する場合、遅延することなく搬送波の有を判定し、搬送波が存在しない場合、2周期間搬送波が存在しないことを確認することによって搬送波の無を判定する。そのため、例えば、検波器75は、通信速度500kbpsのASK信号を検波する場合、周波数5MHzの搬送波を遅延なしに検波することができる。前述したようにBPF74によって生じる遅延時間は665ナノ秒であるため、ECU7a,7b,7d夫々は、通信速度500kbpsのASK信号を出力した後、約0.7マイクロ秒でツイストペア線2を伝播する通信速度500kbpsのASK信号を検波することができる。
図28は、実施の形態4におけるECU7bが信号をツイストペア線2に出力する場合に実行する動作の手順を示すフローチャートである。信号をツイストペア線2に出力する場合において、ECU7bが実行するステップS44は、実施の形態1におけるECU3bが実行するステップS4(図12参照)と同様であるため説明を省略する。
ECU7bは、センサから車両の状態を示すデータを取得し、信号をツイストペア線2に出力する場合、通信速度500kbps、250kbps及び125kbpsのASK信号、並びに、ベースバンド信号の中から1つの信号を選択する(ステップS41)。そして、ECU7bは、ツイストペア線2においてステップS41で選択した信号を検知したか否かを判定する(ステップS42)。
ECU7bは、ツイストペア線2において信号を検知したと判定した場合(ステップS42:YES)、ステップS42の判定を繰り返す。ECU7bは、ツイストペア線2において信号を検知していないと判定した場合(ステップS42:NO)、ステップS41で選択した信号をツイストペア線2に出力する(ステップS43)。ECU7bは、ステップS43を実行した後、ステップS44を実行する。
信号を出力する場合にECU7a,7c,7d夫々が実行する動作の手順は、ECU7bが実行する動作の手順と略同じであるため、説明を省略する。ただし、ステップS41で、ECU7aは通信速度500kbpsのASK信号及びベースバンド信号の中から1つの信号を選択する。また、ステップS41で、ECU7cは通信速度125kbpsのASK信号及びベースバンド信号の中から1つの信号を選択し、ECU7dは通信速度250kbps及び500kbpsのASK信号の中から1つの信号を選択する。
図29は、実施の形態4におけるECU7bが信号をツイストペア線2から受信する場合に実行する動作の手順を示すフローチャートである。ECU7bは、ツイストペア線2から通信速度500kbps、250kbps若しくは125kbpsのASK信号、又は、ベースバンド信号を受信しているか否かを判定する(ステップS51)。ECU7bは、信号を受信していないと判定した場合(ステップS51:NO)、ステップS51の動作を繰り返す。
ECU7bは、信号を受信していると判定した場合(ステップS51:YES)、受信した信号から、通信速度500kbps、250kbps及び125kbps夫々に対応する周波数帯域のASK信号を、BPF74,80,84を用いて抽出する(ステップS52)。
その後、ECU7bは、ステップS52で抽出した信号、又は、ベースバンド信号を、検波器75,81,85又は通信部76によって検波する(ステップS53)。ECU3bは、ステップS53の動作を実行した後、信号をツイストペア線2から受信する動作を終了する。
なお、信号を受信する場合にECU7a,7c,7dが実行する動作の手順は、ECU7bが実行する動作の手順と略同じであるため、説明を省略する。ただし、ステップS51で、ECU7aは通信速度500kbpsのASK信号又はベースバンド信号を受信したか否かを判定する。また、ステップS51で、ECU7cは通信速度125kbpsのASK信号又はベースバンド信号を受信したか否かを判定し、ECU7dは通信速度250kbps又は500kbpsのASK信号を受信したか否かを判定する。
(実施の形態5)
図30は、実施の形態5におけるECU7aの構成を示すブロック図である。実施の形態5における通信システムの構成は、実施の形態4における通信システム6の構成(図21参照)と同様であるため説明を省略する。
実施の形態1から4のいずれか1つと同様の部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態5における通信システムは、ECU7a,7b,7c,7d夫々が、ツイストペア線2に差動のASK信号を出力する点が実施の形態4と異なっている。
実施の形態5におけるECU7aは、実施の形態4におけるECU7aが有する制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75、通信部76、コモンモードチョークコイル77及びコンデンサC4,C5に加えて、BPF74、インバータ86及び差動増幅器87を有する。実施の形態5におけるECU7aは2つのBPF74,74を有する。
実施の形態5における制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75及びコンデンサC4,C5夫々の構成は、実施の形態4における制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75及びコンデンサC4,C5夫々の構成と略同じである。
発振器72及びスイッチ73の直列回路において、スイッチ73側の端子は、コンデンサC4の一方の端子と、インバータ86の入力端子とに、発振器72側の端子はボディアースに接続している。インバータ86の出力端子はコンデンサC5の一方の端子に接続している。コンデンサC4,C5夫々の他方の端子は銅線21,22に接続している。
一方のBPF74は、差動増幅器87のプラス端子と、コンデンサC4の一方の端子との間に、他方のBPF74は、差動増幅器87のマイナス端子と、コンデンサC5の一方の端子との間に接続している。2つのBPF74,74は両方ともボディアースに接続されている。
差動増幅器87の出力端子は検波器75の一方の端子に接続されている。検波器75の他方の端子は制御部71に接続されている。通信部76はコモンモードチョークコイル77を介して銅線21,22夫々に接続している。
インバータ86は、発振器72及びスイッチ73によって生成されたASK信号を反転させてコンデンサC5を介して銅線22に出力する。コンデンサC4を介して銅線21に出力される経路にはインバータ86が設けられていないため、ツイストペア線2にはASK信号が差動で出力される。
BPF74,74夫々は、コンデンサC4,C5を介してツイストペア線2から得られるASK信号から周波数帯域4.5〜5.5MHzのASK信号を抽出し、抽出したASK信号を差動増幅器87のプラス端子及びマイナス端子に出力する。
差動増幅器87は、プラス端子に入力された電圧と、マイナス端子に入力された電圧との差を検波器75に出力する。よって、BPF74,74夫々から出力された周波数帯域4.5〜5.5MHzのASK信号の差動信号が検波器75に出力される。
ECU7aでは、ASK信号がツイストペア線2に差動で出力されるので、差動増幅器87で銅線21,22夫々の電圧差を出力して、出力した電圧差を検波器75が検波することによって、BPF74,74が抽出した信号を検波することができる。同相のノイズが銅線21,22夫々に外部から重畳した場合であっても銅線21,22の電圧差は変わらないため、検波器75は、差動増幅器87が出力した電圧差を検波することによって、誤りなくツイストペア線2からASK信号を検波することができる。
図31は、実施の形態5におけるECU7bの構成を示すブロック図である。実施の形態5におけるECU7bは、実施の形態5におけるECU7aと同様に、制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74,74、検波器75、通信部76、コモンモードチョークコイル77、インバータ86及び差動増幅器87を有する。これらの構成に加えて、ECU7bは、発振器78,82、スイッチ79,83、BPF80,80,84,84、検波器81,85及び差動増幅器88,89を有する。差動増幅器88,89は差動増幅器87と同様の構成をしている。
発振器78及びスイッチ79の直列回路において、スイッチ79側の端子は、コンデンサC4の一方の端子、及び、インバータ86の入力端子に、発振器78側の端子はボディアースに接続されている。同様に、発振器82及びスイッチ83の直列回路において、スイッチ83側の端子は、コンデンサC4の一方の端子、及び、インバータ86の入力端子に、発振器82側の端子はボディアースに接続されている。
一方のBPF80は、差動増幅器88のプラス端子と、コンデンサC4の一方の端子との間に、他方のBPF80は、差動増幅器88のマイナス端子と、コンデンサC5の一方の端子との間に接続している。2つのBPF80は両方ともボディアースに接続されている。同様に、一方のBPF84は、差動増幅器89のプラス端子と、コンデンサC4の一方の端子との間に、他方のBPF84は、差動増幅器89のマイナス端子と、コンデンサC5の一方の端子との間に接続している。2つのBPF84は両方ともボディアースに接続されている。
差動増幅器88,89夫々の出力端子は検波器81,85の一方の端子に接続している。検波器81,85夫々の他方の端子は制御部71に各別に接続している。
実施の形態5におけるECU7bの制御部71は、実施の形態4におけるECU7bの制御部71と同様に動作する。従って、インバータ86によって、通信速度500kbps、250kbps及び125kpbsのASK信号の少なくとも1つを含む信号を差動でツイストペア線2に出力する。また、通信部76はツイストペア線2にベースバンド信号を出力するため、ツイストペア線2にはベースバンド信号、並びに、通信速度500kbps、250kbps及び125kpbsのASK信号の少なくとも1つを含む信号が出力される。
また、BPF80,80、検波器81及び差動増幅器88によって、ツイストペア線2を差動で伝播する周波数帯域2.25〜2.75MHzのASK信号を検波する。同様に、BPF84,84、検波器85及び差動増幅器89によって、ツイストペア線2を差動で伝播する周波数帯域1.125〜1.375MHzのASK信号を検波する。
ECU7cの構成はECU7aの構成と略同じである。ただし、ECU7cは、ECU7aにおいて、発振器72、スイッチ73、BPF74,74、検波器75及び差動増幅器87夫々の代わりに、発振器82、スイッチ83、BPF84,84、検波器85及び差動増幅器89を有する。
ECU7dの構成は、ECU7bから通信部76、コモンモードチョークコイル77、発振器82、スイッチ83、BPF84,84、検波器85及び差動増幅器89を除いた構成である。
実施の形態5において、制御部71が生成するデータフレーム、及び、ECU7a,7b,7c,7d夫々が行うアービトレーションは、実施の形態1において、制御部31が生成するデータフレーム、及び、ECU3a,3b,3c,3d夫々が行うアービトレーションと同様であるので省略する。
図32は実施の形態5におけるECU7aの動作を示すタイミングチャートである。図32には、縦軸及び横軸夫々を電圧及び時間として、通信部76が銅線21,22夫々に出力するベースバンド信号、発振器72及びスイッチ73によって生成されて銅線21,22夫々に出力するASK信号、銅線21,22夫々を伝播する多重信号を示している。ここで、ベースバンド信号及びASK信号夫々の論理値は“01010”及び“0101010101”であるとする。
なお、銅線21,22夫々に出力される信号の波形を実線及び破線で示している。また、便宜上、ベースバンド信号の通信速度は、図32では、多重するASK信号の通信速度500kbpsの半分である250kbpsとしている。
通信部76は、論理値がゼロである場合に銅線21に電圧VRを印加し、論理値が1である場合に銅線21に電圧VHを印加することによって、ベースバンド信号を銅線21に出力している。また、通信部76は、論理値がゼロである場合に銅線22に電圧VRを印加し、論理値が1である場合に銅線22に電圧VLを印加することによって、ベースバンド信号を出力している。250kbpsの逆数、即ち、4マイクロ秒ごとに、通信部76は論理値に応じた電圧を銅線21,22夫々に印加する。
制御部71は、ASK信号を生成する場合、論理値がゼロである期間、スイッチ73をオフとし、論理値が1である期間、スイッチ73をオンにする。従って、銅線21,22夫々に出力されるASK信号では、論理値“0101010101”に従って、論理値1の期間に周波数5MHzの搬送波が出力されている。論理値ゼロ又は1が出力される期間は、500kbpsの逆数、即ち、2マイクロ秒である。インバータ86によって、銅線22に出力されるASK信号は、銅線21に出力されるASK信号を反転した信号になっており、銅線21,22に出力されるASK信号は差動の関係にある。
論理値“01010”のベースバンド信号と、論理値“0101010101”のASK信号とが多重された場合、図32に示すように、ベースバンド信号にASK信号が重畳した波形となる。ベースバンド信号及びASK信号が共に差動で銅線21,22に出力されている。
ECU7a,7b,7c夫々の通信部76がベースバンド信号を読取る場合に使用する閾値は、論理値がゼロである期間に取り得る銅線21,22夫々の電圧差の最大値以上であり、論理値が1である期間に取り得る銅線21,22夫々の電圧差の最小値未満に設定されている。通信部76は、銅線21,22夫々の電圧差が閾値よりも大きいか否かによって、ベースバンド信号及びASK信号が含まれる多重信号からベースバンド信号を読取る。通信部76は、電圧差が閾値よりも高い場合に論理値1を検知し、電圧差が閾値よりも低い場合に論理値ゼロを検知する。
なお、電圧差(VH−VL)がASK信号の(最大電圧−最小電圧)よりも十分大きくなるように電圧VH、VL、及び、ASK信号の振幅を設定することが好ましい。
また、多重信号に含まれる直流成分、即ち、ベースバンド信号は、コンデンサC4,C5夫々によって除去されるため、BPF74,74夫々には、図32に示す銅線21,22を伝播するASK信号が入力される。BPF74,74は、ベースバンド信号が除去された多重信号から周波数帯域4.5〜5.5MHzのASK信号を抽出し、差動増幅器87は、BPF74,74夫々が抽出したASK信号の差動信号を検波器75へ出力し、検波器75は差動増幅器87が出力した差動信号を検波する。
なお、ECU7cは、ECU7aと同様にしてベースバンド信号及び/又はASK信号を含む多重信号をツイストペア線2に出力する。また、ECU7dは、ベースバンド信号を出力しないため、ECU7dが出力する多重信号は通信速度500kbps及び/又は250kbpsのASK信号を含む。更に、ECU7bは、ベースバンド信号と複数のASK信号とを出力するため、ECU7bが出力する多重信号は、ベースバンド信号、並びに、通信速度500kbps、250kbps及び125kbpsのASK信号のうち少なくとも1つを含む。
信号をツイストペア線2に出力する場合、及び、信号を受信する場合に実施の形態5におけるECU7a,7b,7c,7d夫々が実行する動作の手順は、実施の形態4におけるECU7a,7b,7c,7d夫々が実行する動作の手順(図28及び図29参照)と同じであるため、説明を省略する。ただし、実施の形態5におけるECU7a,7b,7c,7d夫々は、信号を受信して受信した信号から通信速度500kbps、250kbps及び125kbps夫々に対応する周波数帯域のASK信号を抽出する場合、BPF74,74及び差動増幅器87、BPF80,80及び差動増幅器88、又は、BPF84,84及び差動増幅器89を用いる。
(実施の形態6)
図33は、実施の形態6におけるECU7aの構成を示すブロック図である。実施の形態6における通信システムの構成は、実施の形態4における通信システム6の構成(図21参照)と同様であるため説明を省略する。
実施の形態1から5のいずれか1つと同様の部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態6における通信システムは、ECU7a,7b,7c,7d夫々が、銅線21,22に同相のベースバンド信号を出力する点が実施の形態4と異なっている。
実施の形態6におけるECU7aは、実施の形態4におけるECU7aが有する制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75、通信部76及びコンデンサC4,C5に加えて、インバータ90を有する。
実施の形態6における制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75及びコンデンサC4,C5夫々の構成は、実施の形態4における制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75及びコンデンサC4,C5夫々の構成と略同じである。
通信部76は銅線21及びインバータ90の一方の端子に接続し、インバータ90の他方の端子は銅線22に接続している。他の接続関係は、実施の形態4におけるECU7a内での接続関係と同じである。
インバータ90は、通信部76が出力した信号を反転させて銅線22に出力し、銅線22を伝播する信号を反転させて通信部76に出力する。通信部76は差動信号を出力するため、インバータ90によりベースバンド信号がツイストペア線2に同相で出力される。
ECU7aでは、ベースバンド信号が銅線21,22夫々に同相で出力されるので、コモンモードチョークコイルが不要となり回路をコンパクトに構成することが可能であり、製造コストが低い。
図34は、実施の形態6におけるECU7bの構成を示すブロック図である。実施の形態6におけるECU7bは、実施の形態6におけるECU7aと同様に、制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74、検波器75、通信部76及びインバータ90を有する。これらの構成に加えて、ECU7bは、発振器78,82、スイッチ79,83、BPF80,84及び検波器81,85を有する。
発振器78及びスイッチ79の直列回路において、スイッチ79側の端子はコンデンサC4,C5間の接続ノードに、発振器78側の端子はボディアースに接続されている。また、コンデンサC4,C5間の接続ノード、及び、検波器81の一方の端子間にBPF80が接続しており、検波器81の他方の端子は制御部71に接続している。BPF80もボディアースに接続されている。
発振器82及びスイッチ83の直列回路において、スイッチ83側の端子はコンデンサC4,C5間の接続ノードに、発振器82側の端子はボディアースに接続されている。また、コンデンサC4,C5間の接続ノード、及び、検波器85の一方の端子間にBPF84が接続しており、検波器85の他方の端子は制御部71に接続している。BPF84もボディアースに接続されている。
実施の形態6におけるECU7bの制御部71は、実施の形態4におけるECU7bの制御部71と同様に動作する。従って、インバータ90によって通信部76から同相のベースバンド信号が銅線21,22夫々に出力される。速度500kbps、250kbps及び125kpbsのASK信号の少なくとも1つを含む信号を同相でツイストペア線2に出力する。その結果、ツイストペア線2にはベースバンド信号、並びに、通信速度500kbps、250kbps及び125kpbsのASK信号の少なくとも1つを含む信号が出力される。
ECU7cの構成はECU7aの構成と略同じである。ただし、ECU7cは、ECU7aにおいて、発振器72、スイッチ73、BPF74及び検波器75夫々の代わりに、発振器82、スイッチ83、BPF84及び検波器85を有する。
ECU7dの構成は、ECU7bから通信部76、発振器82、スイッチ83、BPF84、検波器85及びインバータ90を除いた構成である。
実施の形態6において、制御部71が生成するデータフレーム、及び、ECU7a,7b,7c,7d夫々が行うアービトレーションは、実施の形態1において、制御部31が生成するデータフレーム、及び、ECU3a,3b,3c,3d夫々が行うアービトレーションと同様であるので省略する。
図35は実施の形態6におけるECU7aの動作を示すタイミングチャートである。図35には、縦軸及び横軸夫々を電圧及び時間として、通信部76が銅線21,22夫々に出力するベースバンド信号、発振器72及びスイッチ73によって生成されて銅線21,22夫々に出力するASK信号、銅線21,22夫々を伝播する多重信号を示している。ここで、ベースバンド信号及びASK信号夫々の論理値は“01010”及び“0101010101”であるとする。
なお、銅線21,22夫々に出力される信号の波形を実線及び破線で示している。また、便宜上、ベースバンド信号の通信速度は、図35では、多重するASK信号の通信速度500kbpsの半分である250kbpsとしている。
通信部76は、論理値がゼロである場合に銅線21に電圧VRを印加し、論理値が1である場合に銅線21に電圧VHを印加することによって、ベースバンド信号を銅線21が出力している。また、通信部76及びインバータ90からなる回路は、論理値がゼロである場合に銅線22に電圧VRを印加し、論理値が1である場合に銅線22に電圧VHを印加することによって、ベースバンド信号を出力している。250kbpsの逆数、即ち、4マイクロ秒ごとに、通信部76は論理値に応じた電圧を銅線21,22夫々に印加する。
制御部71は、ASK信号を生成する場合、論理値がゼロである期間、スイッチ73をオフとし、論理値が1である期間、スイッチ73をオンにする。従って、銅線21,22夫々に出力されるASK信号では、論理値“0101010101”に従って、500kbpsの逆数、即ち、2マイクロ秒ごとに周波数5MHzの搬送波が出力されている。
論理値“01010”のベースバンド信号と、論理値“0101010101”のASK信号とが多重された場合、図35に示すように、ベースバンド信号にASK信号が重畳した波形となる。ベースバンド信号及びASK信号が共に同相で銅線21,22夫々に出力されているため、銅線21,22を伝播する多重信号の波形は同じである。
ECU7a,7b,7c夫々の通信部76は、インバータ90を用いて、銅線22に伝播する多重信号を反転させて、銅線21,22から多重信号を受信する。従って、実施の形態5と同様に、ECU7a,7b,7c夫々の通信部76がベースバンド信号を読取る場合に使用する閾値は、論理値がゼロである期間に取り得る銅線21,22夫々の電圧差の最大値以上であり、論理値が1である期間に取り得る銅線21,22夫々の電圧差の最小値未満に設定されている。通信部76は、銅線21,22夫々の電圧差が閾値よりも大きいか否かによって、ベースバンド信号及びASK信号が含まれる多重信号からベースバンド信号を読取る。通信部76は、電圧差が閾値よりも高い場合に論理値1を検知し、電圧差が閾値よりも低い場合に論理値ゼロを検知する。
なお、電圧差(VH−VL)がASK信号の(最大電圧−最小電圧)よりも十分大きくなるように電圧VH、VL、及び、ASK信号の振幅を設定することが好ましい。
また、多重信号に含まれる直流成分、即ち、ベースバンド信号は、コンデンサC4,C5夫々によって除去されるため、BPF74には、図35に示す銅線21,22を伝播するASK信号が入力される。BPF74は、ベースバンド信号が除去された多重信号から周波数帯域4.5〜5.5MHzのASK信号を抽出し、検波器75はBPF74が抽出したASK信号を検波する。
なお、ECU7cは、ECU7aと同様にしてベースバンド信号及びASK信号を含む多重信号をツイストペア線2に出力する。また、ECU7dは、ベースバンド信号を出力しないため、ECU7dが出力する多重信号は通信速度500kbps及び/又は250kbpsのASK信号を含む。更に、ECU7bは、ベースバンド信号と複数のASK信号とを出力するため、ECU7bが出力する多重信号は、ベースバンド信号、並びに、通信速度500kbps、250kbps及び125kbpsのASK信号のうち少なくとも1つを含む。
信号をツイストペア線2に出力する場合、及び、信号を受信する場合に実施の形態6におけるECU7a,7b,7c,7d夫々が実行する動作の手順は、実施の形態4におけるECU7a,7b,7c,7d夫々が実行する動作の手順(図28及び図29参照)と同じであるため、説明を省略する。
(実施の形態7)
図36は、実施の形態7におけるECU7aの構成を示すブロック図である。実施の形態7における通信システムの構成は、実施の形態4における通信システム6の構成(図21参照)と同様であるため説明を省略する。
実施の形態1から6のいずれか1つと同様の部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
実施の形態7における通信システムは、ECU7a,7b,7c,7d夫々が、ツイストペア線2に同相のベースバンド信号と差動のASK信号とを出力する点が実施の形態4と異なっている。
実施の形態7におけるECU7aの構成は、実施の形態5におけるECU7a(図30参照)において、コモンモードチョークコイル77の代わりにインバータ90を有する構成となっている。実施の形態7における制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74,74、検波器75、通信部76、コンデンサC4,C5、インバータ86及び差動増幅器87の構成は、実施の形態5と同様である。また、実施の形態7におけるインバータ90の構成は実施の形態6と同様である。
実施の形態5におけるECU7aの構成(図30参照)から変更している点は、通信部76が銅線21及びインバータ90の一方の端子に接続し、インバータ90の他方の端子が銅線22に接続している点である。
インバータ90は、通信部76が出力した信号を反転させて銅線22に出力し、銅線22を伝播する信号を反転させて通信部76に出力する。通信部76は差動信号を出力するため、インバータ90により同相のベースバンド信号がツイストペア線2に出力される。
図37は、実施の形態7におけるECU7bの構成を示すブロック図である。実施の形態7におけるECU7bは、実施の形態7におけるECU7aと同様に、制御部71、発振器72、スイッチ73、BPF74,74、検波器75、通信部76、インバータ86,90及び差動増幅器87を有する。これらの構成に加えて、ECU7bは、発振器78,82、スイッチ79,83、BPF80,80,84,84、検波器81,85及び差動増幅器88,89を有する。
発振器78及びスイッチ79の直列回路において、スイッチ79側の端子は、コンデンサC4の一方の端子、及び、インバータ86の入力端子に、発振器78側の端子はボディアースに接続されている。同様に、発振器82及びスイッチ83の直列回路において、スイッチ83側の端子は、コンデンサC4の一方の端子、及び、インバータ86の入力端子に、発振器82側の端子はボディアースに接続されている。
一方のBPF80は、差動増幅器88のプラス端子と、コンデンサC4の一方の端子との間に、他方のBPF80は、差動増幅器88のマイナス端子と、コンデンサC5の一方の端子との間に接続している。2つのBPF80は両方ともボディアースに接続されている。同様に、一方のBPF84は、差動増幅器89のプラス端子と、コンデンサC4の一方の端子との間に、他方のBPF84は、差動増幅器89のマイナス端子と、コンデンサC5の一方の端子との間に接続している。2つのBPF84は両方ともボディアースに接続されている。
差動増幅器88,89夫々の出力端子は検波器81,85の一方の端子に接続している。検波器81,85夫々の他方の端子は制御部71に各別に接続している。
実施の形態7におけるECU7bの制御部71は、実施の形態4におけるECU7bの制御部71と同様に動作する。従って、インバータ90によって同相のベースバンド信号が銅線21,22夫々に出力される。また、インバータ86によって、通信速度500kbps、250kbps及び125kpbsのASK信号の少なくとも1つを含む信号を差動でツイストペア線2に出力する。その結果、ツイストペア線2には同相のベースバンド信号、並びに、通信速度500kbps、250kbps及び125kpbsの差動のASK信号の少なくとも1つを含む信号が出力される。
また、通信部76は、インバータ90によって、銅線21,22夫々を同相で伝播するベースバンド信号を差動信号に変換して、変換した差動信号を検波する。
また、BPF74,74、検波器75及び差動増幅器87によって、ツイストペア線2を差動で伝播する周波数帯域4.5〜5.5MHzのASK信号を検波する。BPF80,80、検波器81及び差動増幅器88によって、ツイストペア線2を差動で伝播する周波数帯域2.25〜2.75MHzのASK信号を検波する。同様に、BPF84,84、検波器85及び差動増幅器89によって、ツイストペア線2を差動で伝播する周波数帯域1.125〜1.375MHzのASK信号を検波する。
ECU7cの構成はECU7aの構成と略同じである。ただし、ECU7cは、ECU7aにおいて、発振器72、スイッチ73、BPF74,74、検波器75及び差動増幅器87夫々の代わりに、発振器82、スイッチ83、BPF84,84、検波器85及び差動増幅器89を有する。
ECU7dの構成は、ECU7bから通信部76、発振器82、スイッチ83、BPF84,84、検波器85、差動増幅器89及びインバータ90を除いた構成である。
実施の形態7において、制御部71が生成するデータフレーム、及び、ECU7a,7b,7c,7d夫々が行うアービトレーションは、実施の形態1において、制御部31が生成するデータフレーム、及び、ECU3a,3b,3c,3d夫々が行うアービトレーションと同様であるので省略する。
図38は実施の形態7におけるECU7aの動作を示すタイミングチャートである。図38には、縦軸及び横軸夫々を電圧及び時間として、通信部76が銅線21,22夫々に出力するベースバンド信号、発振器72及びスイッチ73によって生成されて銅線21,22夫々に出力するASK信号、銅線21,22夫々を伝播する多重信号を示している。ここで、ベースバンド信号及びASK信号夫々の論理値は“01010”及び“0101010101”であるとする。
なお、銅線21,22夫々に出力される信号の波形を実線及び破線で示している。また、便宜上、ベースバンド信号の通信速度は、図38では、多重するASK信号の通信速度500kbpsの半分である250kbpsとしている。
通信部76は、論理値がゼロである場合に銅線21に電圧VRを印加し、論理値が1である場合に銅線21に電圧VHを印加することによって、ベースバンド信号を銅線21に出力している。また、通信部76及びインバータ90からなる回路は、論理値がゼロである場合に銅線22に電圧VRを印加し、論理値が1である場合に銅線22に電圧VHを印加することによって、ベースバンド信号を出力している。250kbpsの逆数、即ち、4マイクロ秒ごとに、通信部76は論理値に応じた電圧を銅線21,22夫々に印加する。
制御部71は、論理値がゼロである期間、スイッチ73をオフとし、論理値が1である期間、スイッチ73をオンにする。従って、銅線21,22夫々に出力されるASK信号では、論理値“0101010101”に従って、500kbpsの逆数、即ち、2マイクロ秒ごとに周波数5MHzの搬送波が出力されている。インバータ86によって、銅線22に出力されるASK信号は、銅線21に出力されるASK信号を反転した信号になっており、銅線21,22に出力されるASK信号は差動の関係にある。
論理値“01010”のベースバンド信号と、論理値“0101010101”のASK信号とが多重された場合、図38に示すように、ベースバンド信号にASK信号が重畳した波形となる。ベースバンド信号が同相で、ASK信号が差動で銅線21,22に出力されているため、周波数5MHzの搬送波部分のみが差動になっている。
ECU7a,7b,7c夫々の通信部76は、インバータ90を用いて、銅線22に伝播する多重信号を反転させて、銅線21,22から多重信号を受信する。これにより、ベースバンド信号において、論理値がゼロである期間、銅線21,22夫々に伝播する多重信号の波形は同じであり、論理値が1である期間、銅線21,22夫々の電圧差は(VH−VL)で一定である。従って、ECU7a,7b,7c夫々の通信部76は、実施の形態4と同様に、銅線21,22の電圧差からベースバンド信号を検波する。
また、多重信号に含まれる直流成分、即ち、ベースバンド信号は、コンデンサC4,C5夫々によって除去されるため、BPF74,74夫々には、図38に示す銅線21,22を伝播するASK信号が入力される。BPF74,74は、ベースバンド信号が除去された多重信号から周波数帯域4.5〜5.5MHzのASK信号を抽出し、検波器75はBPF74が抽出したASK信号を検波する。
なお、ECU7cは、ECU7aと同様にしてベースバンド信号及びASK信号を含む多重信号をツイストペア線2に出力する。また、ECU7dは、ベースバンド信号を出力しないため、ECU7dが出力する多重信号は通信速度500kbps及び/又は250kbpsのASK信号を含む。更に、ECU7bは、ベースバンド信号と複数のASK信号とを出力するため、ECU7bが出力する多重信号は、ベースバンド信号、並びに、通信速度500kbps、250kbps及び125kbpsのASK信号のうち少なくとも1つを含む。
信号をツイストペア線2に出力する場合、及び、信号を受信する場合に実施の形態7におけるECU7a,7b,7c,7d夫々が実行する動作の手順は、実施の形態4におけるECU7a,7b,7c,7d夫々が実行する動作の手順(図28及び図29参照)と同じであるため、説明を省略する。ただし、実施の形態7におけるECU7a,7b,7c,7d夫々は、信号を受信して受信した信号から通信速度500kbps、250kbps及び125kbps夫々に対応する周波数帯域のASK信号を抽出する場合、BPF74,74及び差動増幅器87、BPF80,80及び差動増幅器88、又は、BPF84,84及び差動増幅器89を用いる。
なお、実施の形態4から7において、ECU7a,7b,7c,7dの通信速度は500kbps、250kbps又は125kbpsに限定されない。また、通信速度によって異なる周波数帯域は1.125〜1.375MHz、2.25〜2.75MHz又は4.5〜5.5MHzに限定されない。通信速度によって異なる周波数帯域は、別の周波数帯域でもよく、周波数帯域の幅は0.25MHz、0.5MHz又は1MHzに限定されない。
また、通信速度が同じであるASK信号を生成する場合、ECU7a,7b,7c,7dが振幅を変調する搬送波の周波数は同じであったが、実施の形態1、2又は3のようにECUごとに搬送波の周波数を変えてもよい。例えば、通信速度500kbpsのASK信号をツイストペア線2に出力するECU7a,7b,7d夫々が振幅を変調する搬送波を5MHz、4.8MHz及び5.2MHzとしてもよい。
また、ベースバンド信号をツイストペア線2に出力することが可能なECUは、3つに限定されず、少なくとも2つのECUがベースバンド信号をツイストペア線2に出力できればよい。
また、搬送波の振幅を変調する方法は、発振器72、78又は82が出力する搬送波をスイッチ73、79又は83のオン/オフによって変調する方法に限定されない。ECU7a,7b,7c,7dは、搬送波の振幅を変調することができればよい。
また、BPF74,80,84は、バタワースフィルタに限定されず、例えば、チェビシェフフィルタでもよい。検波器75,81,85は、2値化回路42、D−FF43,44及びOR回路45によって構成される検波器に限定されない、他の論理回路によって構成される検波器でもよく、ダイオード、コンデンサ及び抵抗等によって構成され、信号の包絡線を検波する検波器でもよい。
また、実施の形態4、5、6又は7における通信システムにおいて使用される通信速度の数は、3つに限定されず、2つ又は4つ以上であってもよい。この場合、通信速度に対応する周波数帯域の数も2つ又は4つ以上となる。また、1つのECUが4つ以上の通信速度で他のECUと通信してもよい。この場合、ECUが有する発振器、スイッチ、BPF及び検波器夫々の数は通信速度の数と同数となる。
また、ツイストペア線2に接続されるECUの数は4つに限定されない。通信システム6が備えるECUの数は、2、3又は5以上であってもよい。
なお、実施の形態1から7において、ツイストペア線2は、電気信号を伝送することが可能な信号線であればよいので、2本の銅線21,22ではなく、アルミ線、又は、導電性のカーボンナノチューブ等の導体であってもよい。
開示された実施の形態1から7は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。