しかしながら、前記従来のような熱交換器では、ケーシングの入水口から流入した水が、該入水口から出水口に到る流路において平板状ヒータの表面で加熱されるが、流路中の水は出水口に近づくにしたがって温度が上昇し、出水口に近い平板状ヒータの表面において局所的な沸騰現象が生じる可能性がある。このように平板状ヒータと水との境界面において局所的な高温部が生じると、流路中の洗浄水に含まれるカルシウム成分等によって、いわゆるスケールが生成され平板状ヒータの表面にスケールが付着する可能性がある。このように熱交換器の平板状ヒータの表面においてスケールが付着した部分は、スケールによって水への熱伝達が阻害される。そのため、平板状ヒータの表面温度の局所的な高温化を招き、スケール付着が助長されることで、堆積したスケールで流路抵抗が高くなり、必要な洗浄水の流量が確保できなくなる可能性がある。また、平板状ヒータがセラミックヒータのような場合には、スケールによって生じる部分的な温度差による熱応力によって平板状ヒータの亀裂や割れなどを招く可能性もある。
また、平板状ヒータの両伝熱面に沿って流路を形成した上記従来の平板型の熱交換器においては、一般に、平板状ヒータの一方の伝熱面側と他方の伝熱面側とで洗浄水への伝熱量がほぼ同じであることを前提として設計する。そのため、仮に両側の伝熱量に大きな相違が生じると、何れか一方側の流路中の洗浄水に局所的な沸騰現象が発生して気泡が生じる可能性がある。このような気泡が生じると、流路中の洗浄水の通流抵抗が高くなり、平板状ヒータの両側での流量バランスが更に崩れて伝熱量の差がより大きくなってしまう。また、熱交換器の出水口近傍に、流出水の温度によって作動するサーミスタが設けられている場合には、大きく成長した気泡によってこのサーミスタの感知する温度が変動し適切に作動しにくくなる可能性もある。
さらに、上記のような気泡が平板状ヒータの伝熱面に付着し、これが大きく成長すると、平板状ヒータの伝熱面と洗浄水との間に気泡が介在して両者を解離させてしまう。この場合、平板状ヒータの熱を洗浄水へ伝達することが困難になり、平板状ヒータの伝熱面の
温度が大きく上昇してしまう。このようにして平板状ヒータの一方の伝熱面だけが大きく温度上昇し、両伝熱面での温度差が大きくなってしまうと、熱応力に起因して平板状ヒータに変形等が生じてしまう可能性がある。
このようなスケールの伝熱面への付着現象は、伝熱面温度が最も支配的な発生要因であり、一般的には伝熱面温度を沸騰が発生する100℃以下、好ましくは80℃以下にするなど、水道水のスケール濃度や、ヒータの所要耐久時間などにより、適宜所要伝熱面温度を決めている。伝熱面温度の一部でも所要温度を超えると、その部分にスケールが付着して伝熱障害要因となるため、これを回避しなくてはならない。これを回避するためには、単純に伝熱面の面積を増やせば良いが、これは熱交換器のコスト増となるため、好ましくない。そこで、熱交換器の伝熱面積を最小にしつつ所要伝熱面温度を満足させるためには、伝熱面の局所温度分布が伝熱面の全面においてほぼ均一になるように、平板状ヒータのワット密度の局所分布、あるいは、熱交換器の局所熱伝達率の分布を設定するように熱交換器を構成する必要がある。
一方、洗浄水の通流速度を更に大きくすることによって、熱伝達率を向上させて気泡の発生を抑制したり、発生した気泡を速やかに出水口から外部へ排出し、更には熱伝達率を向上させることにより伝熱面積を小さくすることが考えられる。しかしながら、一般に温水洗浄便座に使用される熱交換器では、洗浄水の1回当たりの使用水量が少ないため、熱交換器内の流速を高めるためには、流路の厚みを非常に薄く設定して流速を確保する必要がある。通常、この流量の最大値は500cc/min程度に設定され、この流量値に対して、熱交換器の流速をさらに高めるためには、平板状ヒータの伝熱面との間に形成する流路厚みを0.5mm以内に設定する必要がある。しかし、このようにすると流路厚みが非常に薄くなるため、局所的な流速の不均一性が生じやすい構成となる。上記の流路厚みが0.5mmに対して、流路中に形成される速度境界層の厚さは数mmのオーダであり、流路の厚みは速度境界層の厚さよりも小さくなる。速度境界層により流路全域が覆われることになるため、流路厚みにより速度勾配が変化することになるため、流路厚みの不均一による流速の不均一を生じやすい。
また、速度境界層は伝熱面上で流れが付着し、伝熱面上で速度ゼロから所定の流速までの速度勾配を持った流体層であり、伝熱面上に発生した泡を伝熱面上から排出させる力が弱くなる。また流路厚みが薄くなると、流路中に生じた泡の大きさが流路高さよりも大きくなる可能性が高くなり、この場合泡は流路高さに対応して変形し、泡の表面張力で流路中で押し上げ力を発生するため、泡は動きにくくなり発生した泡による流速の不均一も生じやすい構成となる。
このように、局所的な流速の不均一が生じた場合、ヒータのワット密度が30W/cm2以上となるような高ワット密度の熱交換器においては、局所的に大幅な伝熱面の温度上昇が生じ、局所的に高温となった箇所は沸騰による泡が発生するためさらに流れの不均一が助長されて伝熱面がバーンアウトする可能性も発生する。
そして、熱交換器内の洗浄水の流速を高めることは、熱交換器の圧力損失を高めることとなるため、流速の大幅な増大は熱交換器の構成上困難であり、また先に述べたように、さらに流路厚みを薄くすることは、速度の不均一をさらに発生させるため実現不可能であった。また、特許文献1のように水平方向に蛇行させた流路の場合には、入水口から出水口までの距離が長いため、内部で生じた気泡を出水口まで移動させるのに長時間を要する他、流路断面積が小さいために、発生した気泡により洗浄水の流れが滞りやすいという事情もある。
熱交換器をコンパクトに構成するために、伝熱面積がとりやすい平板型のヒータを用い
た熱交換器が使用されているが、伝熱面に強制対流による均一な速い流れを生成して伝熱面温度を下げることが難しかった。そして、平板状のヒータの伝熱面上に速い流れを生成するには、ヒータ表面上の流れの層を薄くする必要があるが、ヒータ表面上の薄い層の流れは流れの流速を均一にすることが難しく、部分的に過熱部を生じやすかった。
この、ヒータ表面上の薄い流れの層に生成された過熱部は、熱が集中して蒸発し泡となり、この発生した泡がスムーズに流出せず、また泡が発生した部分はさらに過熱されて爆発的に泡の領域が広がり、ヒータの破壊につながることがあった。そして、ヒータ表面上に薄く速い流れを形成するためにはヒータ表面に流入する流れを扁平な絞り部を設ける必要があるが、この部分に空気などの泡が溜まりやすく、この溜まった泡が流れの不均一を引き起こす要因となっていた。また、流体中に含まれる空気は、家庭の水道配管中にも存在することがありこの空気などにより発生した泡を、熱交換器内に留まらせることなくスムーズに排出することが課題であった。
そこで本発明は、前記従来の課題を解決するもので、平板状ヒータで熱交流路が垂直方向に設定され、熱交流路の下側より流入させる熱交換器において、熱交流路の入り口に設けた一様流構成のためのヘッダ部に、水道水に混入した空気などの泡が溜まる場合があり、この泡により流れが偏流して、伝熱面の一様な熱交換が阻害されることを防止することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の熱交換器は、
入水口と出水口を具備したケーシングと、
発熱抵抗体を内蔵し鉛直方向に対して略平行に配置されていて互いに対向する2つの主面を伝熱面として有する平板状ヒータと、
前記平板状ヒータの前記2つの伝熱面の夫々に沿って前記平板状ヒータの下端から上端まで液体を導く流路スペースと、
前記入水口と前記流路スペースとの間に設けられたヘッダ部と、
を備え、
前記ヘッダ部は、
ヘッダ部主流路と、
流路断面積が広い前記ヘッダ部主流路から流路断面積が徐々に狭くなるヘッダ部絞り流路と、を有し、
前記ヘッダ部絞り流路の出口は、前記流路スペースに収容された前記平板状ヒータの下端面に対向して延在方向に延びるように開口されている(請求項1)。
これによって、入水口から流入する液体(たとえば水道水)中に空気が混入していても空気は溜まる場所がなくさらに流れが加速されていくため、流れの前の方に運ばれていき、ヘッダ部より入口側流路に流れ込むと、熱交流路は垂直方向に構成されているため、空気の泡は浮力により上方に運ばれ、熱交流路出口より排出される。
つまり、ヘッダ部絞り流路で通路断面積が徐々に狭くなるように構成されており、ヘッダ部絞り流路での流速が先に行くほど次第に速くなるため、気泡が途中に取り残されることはなく高められた流速で平板状ヒータの下端面に流れ込み、平板状ヒータの両側面の流路スペースが上下流で構成された熱交内部に流入するため、気泡は平板状ヒータの下端から上端を経て熱交上部へスムーズに流出される。
したがって、平板状ヒータで熱交流路が垂直方向に設定され、熱交流路の下側より流入させる熱交換器において、熱交流路の入り口に設けた一様流構成のためのヘッダ部に、水道水等に混入した空気などの泡が溜まり、この泡により流れが偏流して、伝熱面の一様な熱交換が阻害されることを防止できる。
この場合、入水口から流入する気泡が途中に取り残されないというだけでなく、ヘッダ部絞り流路で流速が速められ、流路スペースにある平板状ヒータ表面の伝熱面に均一な速
い流れを形成することができるため、平板状ヒータ表面の伝熱面と流体との境界層の速度勾配が大きくなり熱伝達率を向上させ、伝熱面温度を低くできスケール付着の防止ができ、安定した熱交換が可能となる。
また、前記流路スペースは、下部のヘッダ部絞り流路に近い流路厚みが薄い領域である入口側流路と、上部の出水口に近い流路厚みが厚い領域である出口側流路とで構成されていてもよい(請求項2)。
これによって、ケーシングの入水口から流入した流体(例えば、洗浄水)は、熱交換器下部のヘッダ部絞り流路に近い側である流路厚みが薄い領域の流路スペースの入口側流路においては、流速がより速く、平板状ヒータ表面の伝熱面と流体との境界層の速度勾配がより大きくなり熱伝達率を向上させ、伝熱面温度を低くできスケール付着の防止ができる。さらに、上部の出水口に近い側である流路厚みが厚い領域の流路スペースの出口側流路においては、流速が速い入口側流路から噴出した流れが、平板状ヒータ表面に噴流として作用し、熱伝達率を向上させるとともに流路厚みが厚いことから、伝熱面上に発生する気泡が抜けやすく、熱交換が阻害されずに、より安定した熱交換が可能となる。
また、本発明に係る熱交換器において、前記平板状ヒータは、前記出水口に近い側の流路スペースに面した発熱密度が前記ヘッダ部絞り流路に近い側の流路スペースに面した発熱密度より小さく形成されていてもよい(請求項3)。
この場合、ケーシングの入水口から流入した流体は、ヘッダ部のヘッダ部主流路およびヘッダ部絞り流路を経て、流路スペースを流れながら、平板状ヒータ表面の伝熱面により加熱され、出水口に近づくに従って流体の温度が次第に上昇する。そして、下部のヘッダ部絞り流路に近い側の流路スペースに面した平板状ヒータの表面温度は、平板状ヒータの高い発熱密度によって高温になろうとするが、まだ加熱されていない低い温度の流体に熱を多く奪われる(すなわちサブクールの値が大きい)ためと、流路厚みが薄く流速が速いことから、熱伝達率が高く局所的な沸騰現象が生じるほどの高温にはならない。一方、上部の出水口に近い側の流路スペースに面した平板状ヒータの表面温度は、平板状ヒータの表面に接触する流体が既に加熱されているため、入水口に近いヘッダ部絞り流路側に比べて高い温度になりやすい。しかしながら、平板状ヒータの表面から流体に奪われる熱は少なくなりサブクールの値は小さくなるが、平板状ヒータは出水口に近い側の発熱密度が入水口に近いヘッダ部絞り流路側の発熱密度より小さくなるように形成されているので、局所的な沸騰現象が生じるほどの高温にはならない。
このように、平板状ヒータは出水口に近い側の流路スペースに面した発熱密度が入水口に近いヘッダ部絞り流路側の流路スペースに面した発熱密度より小さく形成されていることによって、流体の温度が高くなる出水口に近い側の平板状ヒータと水との境界面においても、局所的な沸騰現象が生じるような高温になることが抑制されて、スケールの生成付着を防止でき、長寿命の熱交換器を提供することができる。一方、流体の温度が相対的に低く、また出水口に近い側の流路スペースに比べて流速が速い入水口に近いヘッダ部絞り流路に近い側の流路スペースに面した平板状ヒータの発熱密度を大きくしているため、該入水口に近いヘッダ部絞り流路側の流路スペース近傍での熱交換効率の向上が図れる。
なお、通常の平板状ヒータで発熱密度の局所的な分布が伝熱面の全面にわたって均一な場合にあっては、平板状ヒータの出水口に近い側が最高温度となり、この部分にまずスケールが生成される。しかしながら、平板状ヒータの発熱密度分布は、出水口に近い側の流路スペース付近が、入水口に近いヘッダ部絞り流路側の流路スペース付近よりも小さくなるように設定されており、その結果、熱交換器の熱流束は、ヒータの発熱密度の大きい箇所では高く、発熱密度が小さい箇所では低くなるため、伝熱面温度の均一化が図られ、局
所的に温度が上昇してそこにスケールが付着することを抑制できる。
このような構成とすることにより、平板状ヒータの熱が表裏の両面に接触して流れる洗浄水に伝熱され、放熱ロスの無駄がほとんどない熱効率の高い熱交換ができ、平板状ヒータの表裏両面とも伝熱面積として活用できるので小型コンパクトにできる。
また、本発明に係る熱交換器において、前記平板状ヒータは、セラミック基体と、該セラミック基体上に抵抗体をパターン印刷して形成された発熱抵抗体と、電極とから成るセラミックヒータであり、印刷パターンのヒータ線幅は、前記入水口に近いヘッダ部絞り流路側の流路スペースに面した部分より前記出水口に近い側の流路スペースに面した部分の方が太く形成されていてもよい(請求項4)。
このような構成とすることにより、発熱抵抗体である印刷パターンの線幅が太いほど、電流を流したときの電気抵抗が小さく発熱量が小さくなる。従って、印刷パターンの線幅が細い入水口に近いヘッダ部絞り流路側の流路スペースに面した部分は発熱量が大きく(即ち、発熱密度が大きく)、印刷パターンの線幅が太い出水口に近い側の流路スペースに面した部分は発熱量が小さい(即ち、発熱密度が小さい)セラミックヒータとなる。そのため、流体の温度が高くなる出水口に近い側の流路スペースに面した部分のセラミックヒータと流体との境界面においても、局所的な沸騰現象が生じるほどの高温になることが抑制され、スケールの生成及び付着を防止できる。その結果、高い熱交換効率を維持できるとともに、金属と比較して熱容量は小さい特長を有するが割れやすいとされるセラミックを用いたヒータにおいて、割れを防止できて長寿命の熱交換器を実現することができる。
また、本発明に係る熱交換器において、前記平板状ヒータは、セラミック基体と、該セラミック基体上に抵抗体をパターン印刷して形成された発熱抵抗体と、電極とから成るセラミックヒータであり、前記印刷パターンの線間の隙間は、前記入水口に近いヘッダ部絞り流路側の流路スペースに面した部分より前記出水口に近い側の流路スペースに面した部分の方が広く形成されていてもよい(請求項5)。
このような構成とすることにより、印刷パターンの線間の隙間が狭い入水口に近いヘッダ部絞り流路側の流路スペースに面した部分は発熱量が大きく(即ち、発熱密度が大きく)、印刷パターンの線間の隙間が広い出水口に近い側の流路スペースに面した部分は発熱量が小さい(即ち、発熱密度が小さい)セラミックヒータとなる。そのため、上述したのと同様の理由から、スケールの生成及び付着を防止できると共に、セラミックヒータの割れを防止できて、長寿命の熱交換器を実現することができる。
また、本発明に係る熱交換器において、前記ヘッダ部に垂直方向の案内リブを設けてもよい(請求項5)。
このような構成とすることにより、まず、流路断面積が徐々に狭くなるヘッダ部絞り流路で流速が先に行くほど次第に速くなるため、気泡が途中に取り残されることはなく、平板状ヒータの両側面の流路スペースが上下流で構成された熱交内部に流入するが、これに加えてヘッダ部に設けられた垂直方向の案内リブが、ヘッダ部主流路に流入する流れの影響を抑えて、垂直方向に均等に分流するように作用し、水の流れは加速されつつ均等に熱交流路に流れ込む。そのため、平板状ヒータの伝熱面で、より一様な熱交換ができるとともに、スケールの生成及び付着を防止でき、セラミックヒータの割れを防止できて、長寿命の熱交換器を実現することができる。
本発明によれば、平板状ヒータで熱交流路が垂直方向に設定され、熱交流路の下側より
流入させる熱交換器において、熱交流路の入り口に設けた一様流構成のためのヘッダ部に、水道水等に混入した空気などの泡が溜まり、この泡により流れが偏流して、伝熱面の一様な熱交換が阻害されることを防止でき、熱伝達率を向上させ、伝熱面温度を低くできスケール付着の防止ができ、安定した熱交換が可能な熱交換器を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る熱交換器について、衛生洗浄装置に適用したものを例にとり、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
[衛生洗浄装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る熱交換器を備える衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。図1に示すように、衛生洗浄装置1は便器2の上面に配設されており、本体部3、便座部4、便蓋部5、および操作部6などを備えている。このうち本体部3は、便座部4の後側(着座した使用者から見て背後側)に配設されており、横長で中空の筐体3a内に、図示しない洗浄ユニット、乾燥ユニット、およびこれらの動作を制御する制御ユニットの他、本実施の形態に係る熱交換器10(破線で図示)などが収納されている。この熱交換器10には、便器2の設置建物に付随の水道設備から水道水(流体,液体,洗浄水)が導入され、内部で適温にまで暖められる。そして、使用者が操作部6を操作して所定の入力を行うと、洗浄ユニットが駆動して、該洗浄ユニットが有するノズルからシャワー状に人体局部に対して洗浄水が噴射されるようになっている。
(実施の形態1)
[熱交換器]
図2〜図5は、熱交換器10(10)の構成を示す図面であり、図2は外観構成を示す正面図、図3は図2の右側面図、図4は図2のA−A線での断面図、図5は図3のB−B線での断面図を夫々示している。図2〜図5に示すように、熱交換器10は厚み寸法が小さく正面視で長方形状を成す平板状の外観形状に構成されており、図4に示すように、矩形平板状を成す平板状ヒータ20と、その一方の面(第一伝熱面)20aに対向配置され
た第一流路形成部材21と、他方の面(第二伝熱面)20bに対向配置された第二流路形成部材22と、これらを収容して入水口23aおよび出水口23bを有するケーシング23とを備えている。このうち平板状ヒータ20はセラミック製であり、第一流路形成部材21および第二流路形成部材22は、ABS樹脂にガラス繊維をコンパウンドした強化ABS樹脂製としている。
なお、以下の説明では特に言及する場合を除き、このような熱交換器10を平板状ヒータ20の伝熱面が鉛直方向に平行になるように縦置きした状態について説明することとする。また、図2に示すように鉛直方向をZ方向とし、これに直交して平板状ヒータ20の伝熱面に平行な方向をX方向、そしてこれら2方向の何れにも直交する方向(第一伝熱面20aに垂直な方向)をY方向とする。
図3,4,5に示すように、第一流路形成部材21は、第一伝熱面20aに対向する矩形平板状のベース部30と、該ベース部30において第一伝熱面20aに対向する面(ベース面)30aより壁面を第一伝熱面20aに接近させた棚段部31が形成してある。同様に、第二流路形成部材22は、第二伝熱面20bに対向する矩形平板状のベース部40と、該ベース部40において第二伝熱面20bに対向する面(ベース面)40aより壁面を第二伝熱面20bに接近させた棚段部41が形成してある。
また、第一流路形成部材21のベース部30の周縁部には壁状のフランジ部32が周設されており、該フランジ部32は、第二流路形成部材22に近接する方向へ向かって所定寸法だけ延設されている。このフランジ部32の先端部には、該フランジ部32に沿って周回する係合溝33が形成されている。一方、第二流路形成部材22のベース部40の周縁部にも壁状のフランジ部42が周設されており、該フランジ部42は、第一流路形成部材21から離隔する方向へ向かって所定寸法だけ延設されている。このフランジ部42の先端部は第一流路形成部材21側へ折り返されており、その端部には、該フランジ部42に沿って周回する係合突起43が形成されている。
このような第一流路形成部材21は、そのベース面30aが第二流路形成部材22のベース面40aに対向するようにして第二流路形成部材22に外嵌装着される。より詳しく説明すると、第一流路形成部材21のフランジ部32が、第二流路形成部材22のフランジ部42に外嵌され、さらに、第一流路形成部材21の係合溝33に第二流路形成部材22の係合突起43が嵌入される(例えば、係合突起43は超音波溶着により係合溝33に固定される)。これにより、第一流路形成部材21と第二流路形成部材22とは液密的に接合され、内部に流路スペース25が形成される。
この流路スペース25は、平板状ヒータ20の第一伝熱面20aと第二伝熱面20bの両面に対称的に形成されるとともに、棚段部31,棚段部41のある下部の入水口23aに近い側は、流路厚みが薄い領域である入口側流路25aが形成され、上部の出水口23bに近い側は、流路厚みが厚い領域である出口側流路25bが形成される。
また、図5に示すように、ケーシング23のX方向の一端下部には入水口23aが設けられ、一端上部には出水口23bが設けられている。そして、入水口23aから流入した液体は、ヘッダ部45を経て、上記した入口側流路25aおよび出口側流路25bを通過する間に、平板状ヒータ20で加熱されて出水口23bから流出する構成である。
このヘッダ部45は、図4の断面図のC部を拡大して図6に示したように、流路断面積が広いヘッダ部主流路45aから流路断面積が徐々に狭められて入口側流路25aに開口されたヘッダ部絞り流路45bが形成されている。
図7は、図4に示す熱交換器の平板状ヒータ20に形成された抵抗体のパターン例を示す平面図である。図7に示すように、平板状ヒータ20は、セラミック基体20kに抵抗体(ヒータ線)パターン20pが印刷された構成となっている。この抵抗体のパターン20pは、平板状ヒータ20の入水口23aに近い側の部分ではヒータ線幅20sが細く、出水口23bに近い側の部分ではヒータ線幅20sが太くなるように構成してある。要するに、この抵抗体のパターン20pによれば、平板状ヒータ20の入水口23aに近い下部ほどヒータ線幅20sが細くなって抵抗値が高くなり、出水口23bに近い上部ほどヒータ線幅20sが太くなって抵抗値が低くなる。換言すれば、平板状ヒータ20は出水口23bに近い側の出口側流路に面する部分の発熱密度が、入水口23aに近い側の入口側流路に面する部分の発熱密度より低くなるように形成されている。
図8は、図4に示す熱交換器の平板状ヒータ20に形成された抵抗体の別のパターン例を示す平面図である。図8に示す抵抗体(ヒータ線)のパターン20pも図7に示したものと同様に、平板状ヒータ20は、セラミック基体20kに抵抗体(ヒータ線)のパターン20pが印刷された構成となっている。一方、図8に示す抵抗体のパターン20pの場合は、平板状ヒータ20の入水口23aに近い側の部分では隣接するヒータ線間隔20hが狭く、出水口23bに近い側の部分では該ヒータ線間隔20hが広くなるように構成してある。つまり、平板状ヒータ20は、入水口23aに近い下部ほどヒータ線間隔20hが狭くなって発熱密度が高くなり、出水口23bに近い上部ほどヒータ線間隔20hが広くなって発熱密度が低くなるように形成されている。
次に、上述した熱交換器10内での洗浄水の流れについて説明する。図4,図5においてに、熱交換器10の流路スペース25の入口側流路25aへは入水口23aから洗浄水が導入され、この洗浄水はヘッダ部45のヘッダ部主流路45aに浸入する。さらにヘッダ部主流路45aに流入した洗浄水は、図6の部分拡大した断面図に示すようにクランク形に形成されたヘッダ部絞り流路45bを経て、流路スペース25の入口側流路25aに流入する。
そして洗浄水は、平板状ヒータ20で加熱されながら、流路スペース25下部の入口側流路25aから流路スペース25上部の出口側流路25bへと流れ、加熱されて出水口23bから流出する。
この場合、ケーシング23の入水口23aから流入した洗浄水は、入水口23aと入口側流路25aの間にヘッダ部45が設けられ、ヘッダ部45は、洗浄水が一様に満たされるヘッダ部主流路45aから流路断面積が徐々に狭くなるヘッダ部絞り流路45bが形成された構成とすることにより、入水口23aから流入する洗浄水中に空気が混入していても空気は溜まる場所がなくさらに流れが加速されていくため、流れの前の方に運ばれていき、ヘッダ部45より入口側流路25aに流れ込むと、熱交流路である流路スペース25は垂直方向に構成されているため、空気の泡は浮力により上方に運ばれ、熱交流路出口である出水口23bより排出される。
つまり、図4の断面図のC部を拡大して図6に断面図で示したように、クランク形に形成されたヘッダ部絞り流路45bは通路断面積が徐々に狭くなるように構成されており、ヘッダ部絞り流路45bでの流速が先に行くほど次第に速くなるように構成されているため、気泡が途中に取り残されることはなく、平板状ヒータ20の両側面の流路スペース25が上下流で構成された熱交換器10内部に流入するため、気泡は熱交換器10上部へスムーズに流出される。
したがって、平板状ヒータ20で熱交流路である流路スペース25が垂直方向に設定され、流路スペース25の下側より流入させる熱交換器10において、熱交流路の入り口に
設けた一様流構成のためのヘッダ部45に、水道水等に混入した空気などの泡が溜まり、この泡により流れが偏流して、伝熱面の一様な熱交換が阻害されることを防止できる。
図6の断面図で、再度詳しく説明すると、入水口23aから流入した洗浄水は、流路断面積が広く洗浄水が一様に満たされるヘッダ部主流路45aから、まずクランク形に形成されたヘッダ部絞り流路45bの垂直部45bb、次に少し狭められた水平部45bc、さらに狭められた垂直部45bdを経て、平板状ヒータ20の下面から両側表面である入口側流路25aおよび出口側流路25bへと流れ、出水口23bより排出される。
すなわち洗浄水は、段階的に流路断面積が狭められている構成により、流速は平板状ヒータ20に近づくにしたがって速められるため、気泡が混入していても気泡がこの速い流速によってヘッダ部絞り流路45bの途中に取り残されることなく、熱交換器10上部へスムーズに流出されるわけである。もし、ヘッダ部絞り流路45bの図5で示したX方向のどこかに気泡が取り残されるようなことがあると、取り残された気泡が洗浄水の流れを阻害し、平板状ヒータ20の表面の伝熱面の洗浄水の流れが不均一となり、平板状ヒータ20の表面の伝熱面が局所的に過熱状態になって、スケール付着やヒータ割れを招くなどの不都合を生じるわけであるが、流路断面積が徐々に狭くなる本実施の形態のヘッダ部絞り流路45bの構成により、ヘッダ部絞り流路45bの途中に取り残されることなくスムーズに流出されるため、滞留した気泡により洗浄水の流れが偏流して、伝熱面の一様な熱交換が阻害されることを防止できるわけである。
かつ、入水口23aから流入する気泡が途中に取り残されないというだけでなく、ヘッダ部絞り流路45bで流速が速められた洗浄水は、流路スペース25にある平板状ヒータ20表面の伝熱面に均一な速い流れを形成することができるため、平板状ヒータ表面の伝熱面と流体との境界層の速度勾配が大きくなり熱伝達率を向上できるとともに、伝熱面温度を低くできるのでスケールの付着を防止することができる。しかも、伝熱面に洗浄水の均一な速い流れが形成されることにより、伝熱面上に発生する気泡が抜けやすく、熱交換が阻害されずに、安定した熱交換が可能となる。
さらに、流路スペース25は、下部のヘッダ部絞り流路45bに近い流路厚みが薄い領域である入口側流路25aと、上部の出水口23bに近い流路厚みが厚い領域である出口側流路25bとで構成されていることにより、ヘッダ部絞り流路45bからの速い流れの洗浄水は、熱交換器10下部の入水口23aに近い側である流路厚みが薄い領域の流路スペース25の入口側流路25aにおいて、流速がより速く、平板状ヒータ20表面の伝熱面と流体との境界層の速度勾配が大きくなり熱伝達率を向上できるとともに、伝熱面温度を低くできるのでスケールの付着を防止することができる。さらに、熱交換器10上部の出水口23bに近い側である流路厚みが厚い領域の流路スペース25の出口側流路25bにおいては、流速が速い入口側流路25aからの速い流れが、平板状ヒータ20表面に作用し、熱伝達率を向上させるとともに流路厚みが厚いことから、伝熱面上に発生する気泡が抜けやすく、熱交換が阻害されずに、より安定した熱交換が可能となる。
さらに、平板状ヒータ20は、出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した発熱密度が、入水口23aに近い側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した発熱密度より小さく形成されており、ケーシング23の入水口23aから流入した流体は、ヘッダ部45のヘッダ部主流路45aおよびヘッダ部絞り流路45bを経て、流路スペース25を流れながら、平板状ヒータ20表面の伝熱面により加熱され、出水口23bに近づくに従って流体の温度が次第に上昇する。そして、下部のヘッダ部絞り流路45bに近い側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した平板状ヒータ20の表面温度は、平板状ヒータ20の高い発熱密度によって高温になろうとするが、まだ加熱されていない低い温度の流体に熱を多く奪われ、すなわちサブクール(水の沸騰温度
に対しての冷却度)の値が大きいためと、流路厚みが薄く流速が速いことから、熱伝達率が高く局所的な沸騰現象が生じるほどの高温にはならない。
一方、出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した平板状ヒータ20の表面温度は、平板状ヒータ20の表面に接触する流体が既に加熱されているため、入水口23aに近い側に比べて高い温度になりやすい。しかしながら、平板状ヒータ20の表面から流体に奪われる熱は少なくなりサブクールの値は小さくなるが、平板状ヒータ20は出水口23bに近い側の発熱密度が入水口23aに近い下部のヘッダ部絞り流路45bに近い側の発熱密度より小さくなるように形成されているので、局所的な沸騰現象が生じるほどの高温にはならない。
このように、平板状ヒータ20は出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した発熱密度が、ヘッダ部絞り流路45bに近い側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した発熱密度より小さく形成されていることによって、流体の温度が高くなる出水口23bに近い側の平板状ヒータ20と水との境界面においても、局所的な沸騰現象が生じるような高温になることが抑制されて、スケールの生成付着を防止でき、長寿命の熱交換器を提供することができる。一方、流体の温度が相対的に低く、また出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に比べて流速が速い入水口23aに近い側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した平板状ヒータ20の発熱密度を大きくしているため、該入水口23aに近いヘッダ部絞り流路45b側の流路スペース25(入口側流路25a)近傍での熱交換効率の向上が図れる。
なお、通常の平板状ヒータで発熱密度の局所的な分布が伝熱面の全面にわたって均一な場合にあっては、平板状ヒータの出水口に近い側が最高温度となり、伝熱面温度が100℃を超えて核沸騰熱伝達状態となった場合、この部分にスケールが生成される可能性がある。しかしながら、下部の入口側流路25a(上流側)から上部の出口側流路25b(下流側)には、流速の速い水が噴流状態で流入するため、上部の出口側流路25b(下流側)においても熱伝達率の向上が図れるとともに、伝熱面温度を100℃以下に制御できる可能性がある。さらに、熱交流路の上側(下流側)である出口側流路25bの流路厚みが厚く設定されていることにより、伝熱面上に発生する気泡が抜けやすく、平板状ヒータの伝熱面上で泡が発生しやすいことによる熱交換の悪化、伝熱面の損傷を回避することができる。
この平板状ヒータ20は、出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した発熱密度が、入水口23aに近い側のヘッダ部絞り流路45b側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した発熱密度より小さく形成された構成とすることにより、平板状ヒータ20の熱が表裏の両面に接触して流れる洗浄水に伝熱され、放熱ロスの無駄がほとんどない熱効率の高い熱交換ができ、平板状ヒータ20の表裏両面とも伝熱面積として活用できるので小型コンパクトにできる。
また、平板状ヒータ20は、セラミック基体20kと、該セラミック基体20k上に抵抗体をパターン印刷して形成された発熱抵抗体と、電極とから成るセラミックヒータで、印刷パターンのヒータ線幅20sは、入水口23aに近い側のヘッダ部絞り流路45b側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した部分より出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した部分の方が太く形成された構成の場合、発熱抵抗体である印刷パターンのヒータ線幅20sが太いほど、電流を流したときの電気抵抗が小さく発熱量が小さくなる。従って、印刷パターンのヒータ線幅20sが細い入水口23aに近い側のヘッダ部絞り流路45b側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した部分は発熱量が大きく(即ち、発熱密度が大きく)、印刷パターンのヒータ線幅20sが太い出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した部分は
発熱量が小さい(即ち、発熱密度が小さい)セラミックヒータとなる。
そのため、流体の温度が高くなる出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した部分のセラミックヒータと流体との境界面においても、局所的な沸騰現象が生じるほどの高温になることが抑制され、スケールの生成及び付着を防止できる。その結果、高い熱交換効率を維持できるとともに、金属と比較して熱容量は小さい特長を有するが割れやすいとされるセラミックを用いたヒータにおいて、割れを防止できて長寿命の熱交換器を実現することができる。
また、平板状ヒータ20は、セラミック基体20kと、該セラミック基体20k上に抵抗体をパターン印刷して形成された発熱抵抗体と、電極とから成るセラミックヒータであり、印刷パターンのヒータ線間隔20hの隙間は、入水口23aに近い側のヘッダ部絞り流路45b側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した部分より出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した部分の方が広く形成された構成の場合、印刷パターンのヒータ線間隔20hの隙間が狭い入水口23aに近い側のヘッダ部絞り流路45b側の流路スペース25(入口側流路25a)に面した部分は発熱量が大きく(即ち、発熱密度が大きく)、印刷パターンのヒータ線間隔20hの隙間が広い出水口23bに近い側の流路スペース25(出口側流路25b)に面した部分は発熱量が小さい(即ち、発熱密度が小さい)セラミックヒータとなる。そのため、上述したのと同様の理由から、スケールの生成及び付着を防止できると共に、セラミックヒータの割れを防止できて、長寿命の熱交換器を実現することができる。
なお、本実施の形態において、流路断面積が徐々に狭められた本実施の形態のヘッダ部絞り流路45bについて、流路断面積が段階的に狭められた断面が略クランク形状に形成された構成で説明したが、まず断面形状が略クランク形に限定されるものではない。たとえば、図6で垂直部45bb−水平部45bc−垂直部45bdと説明した垂直部45bb−水平部45bcの2辺のかぎ型を1辺の傾斜部として、傾斜部−垂直部の略「く」の字形状に形成された構成であってもよい。また、流路断面積も段階的に狭められるものに限定されるものではない。たとえば、上記した傾斜部がテーパ状に連続的に次第狭められるものであってもよい。
(実施の形態2)
図9、図10は、本発明の実施の形態2に係る熱交換器の断面図である。実施の形態2の熱交換器の構成において、前記実施の形態1の熱交換器と異なる点は、ヘッダ部45に垂直方向の案内リブ45c,45dを設けた構成である。
なお、前記実施の形態1の熱交換器で説明した構成と同等の構成要素は同じ符号を付し、説明を省略する。また、垂直方向の案内リブ45c,45dが見えやすくするために、図10に図9の部分Cを拡大して示してある。さらに、構成についてイメージしやすいように、図9の部分Cにおける斜視図を図11に示した。
図10において、ヘッダ部45の流路断面積が広いヘッダ部主流路45aから流路断面積が徐々に狭められて入口側流路25aに開口されたヘッダ部絞り流路45bが形成されている構成は、実施の形態1で説明した図4、図6と同様である。
本実施の形態2の図9、図10が、前記実施の形態1で説明した図4、図6と異なる点は、ヘッダ部主流路45aから流路断面積が段階的に徐々に狭められたヘッダ部絞り流路45bに、垂直方向の案内リブ45c,45dが設けられた構成にある。
なお、垂直方向の案内リブ45cは、図12の斜視図および図13の平面図のように、第二流路形成部材22の内面に形成されている。
また、垂直方向の案内リブ45dは、図14の斜視図および図15の平面図のように、第一流路形成部材21の内面に形成されている。
実施の形態2に係る以上の構成の熱交換器は、実施の形態1の熱交換器と同様に、流路断面積が徐々に狭くなるヘッダ部絞り流路45bで流速が先に行くほど次第に速くなるため、水道水等に混入している気泡が途中に取り残されることはなく、平板状ヒータ20の両側面の流路スペース25が上下流で構成された熱交内部に流入する。これに加えて、ヘッダ部45に設けられた垂直方向の案内リブ45c,45dが、ヘッダ部主流路45aに流入する流れの影響を抑えて、垂直方向に均等に分流するように作用し、水の流れは加速されつつ均等に熱交流路である流路スペース25に流れ込む。そのため、平板状ヒータ20の伝熱面で、より一様な熱交換ができるとともに、スケールの生成及び付着を防止でき、セラミックヒータの割れを防止できて、長寿命の熱交換器を実現することができる。
ちなみに、垂直方向の案内リブ45c,45dが無い場合と有る場合の平板状ヒータ20の温度分布を、図16と図17に示した。図17の垂直方向の案内リブ45c,45dが有る場合の結果は、図16の垂直方向の案内リブ45c,45dが無い場合よりも温度分布がより均一になり、平板状ヒータ20の最高温度が約163℃である。これに対し、図16の垂直方向の案内リブ45c,45dが無い場合は、温度分布がやや不均一で、平板状ヒータ20の最高温度が約170℃まで上昇している。
以上の結果からも、ヘッダ部45に垂直方向の案内リブ45c,45dを設けた構成により、ヘッダ部主流路45aに流入する流れの影響を抑えて、垂直方向に均等に分流するように作用し、水の流れは加速されつつ均等に熱交流路である流路スペース25に流れ込み、平板状ヒータ20の伝熱面で、より一様な熱交換ができることが裏づけられる。
なお、本実施の形態2において、案内リブ45cは第二流路形成部材22の内面に形成し、案内リブ45dは第一流路形成部材21の内面に形成した構成で説明したが、これに限らず、案内リブ45c,45dの両方とも第二流路形成部材22の内面に形成してもよい。また、案内リブ45cだけで案内リブ45dが無い構成や、逆に案内リブ45dだけで案内リブ45cが無い構成であっても、同様の効果を得ることができる。
また、案内リブ45c(45d)は以上のような効果だけにとどまらない。実施の形態1で説明したように、第一流路形成部材21と第二流路形成部材22とを係合して超音波溶着等により一体化され、内部に流路スペース25やヘッダ部絞り流路45bなどが形成される。この際、ヘッダ部絞り流路45bの流路幅は第一流路形成部材21と第二流路形成部材22との内壁面の間隔で決まるスキマ寸法であり、このスキマ寸法の精度が熱交換器の性能に影響する重要な要素である。案内リブ45c(45d)が、超音波溶着等により一体化する際に、このスキマ寸法の精度を確保する治具の役割を兼ねることができる。したがって、ヘッダ部45に垂直方向の案内リブを設けた構成により、熱交換器の重要寸法であるヘッダ部絞り流路45bの流路幅の寸法精度を確保でき、性能品質が安定した組立て生産ができるといった特有の効果を得ることができる。