JP5742369B2 - 脈波計、および信号処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脈波計、およびこの脈波計の信号処理方法に関する。
特定の波長の光を発し、反射または透過光を計測する光電センサーを用い、波形を解析することで人体の内部などの状態を知ることができる。一例としては、血液が存在する生体の部分では血液の吸光特性を利用して人体の脈や血液に関する情報を得ることができる。
たとえば、脈波を精度よく捉えることができれば、心臓動態に関する情報を取得することができる。脈波の間隔は心電図のRR間隔と同等に使用されることもあり、一部不整脈の判断に用いられる他、長期データが取得できれば、周波数解析することで自律神経指標を導き出し睡眠状態判定に利用されており、またRR間隔のゆらぎから心機能の分析にも用いられている場合もある。
特許文献1では、光電センサーで脈波計を取得することで、心電R−R間隔に相当する脈のピーク間隔を捕らえようとしている。また、ノイズとなる反射波や切痕を除去するノイズ除去処理を行っている。
しかし、上記の方法においては、たとえば検体が安静にしていない場合など、信号処理的に言い換えれば光電センサー出力信号の直流成分が安定していない場合には体動等ノイズ除去が不十分であって、高周波ノイズ、低周波ノイズ、直流成分の変化にも対応できる信号処理が必要となる。そのような信号処理法の例としては、脈波特有のスペクトルを取り出す適応フィルター(たとえば、特許文献2参照)、独立成分分析法の応用(たとえば、特許文献3参照)などさまざまなものが提案されている。
特開2008−253579号公報 米国特許第4955379号明細書 米国特許第6701170号明細書
しかしながら、処理能力・電源性能に制限がある組み込み機器(脈波計)において、日常連続で脈拍を計測するような場合、特許文献2や特許文献3の信号処理は複雑である。したがって組み込み機器などの演算処理能力が低い機器でこれらの信号処理を行うことが十分にできない。
その点、特許文献1の信号処理は単純なものが実現可能であるが、ノイズに対する十分な処理ができないため、測定結果の信頼性が無くなる課題がある。したがって、お互いに補完するように複数の信号処理結果を保存する必要があるが、組み込み機器では保存するための記憶容量も限られる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る脈波計は、人体からの放出光量を検出し電気信号を出力する光電センサー部と、前記光電センサー部の出力信号を信号処理する第一の信号処理部と、前記センサー部の出力信号を信号処理するものであって、第一の信号処理部と処理方式が異なる第二の信号処理部と、前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断する信号処理選択部と、前記第一の信号処理部と前記第二の信号処理部との信号処理結果のうち前記信号処理選択部で選択されたものを保存する信号処理結果保存部とを有することを特徴とする。
本適用例によれば、光電センサー部で検出された人体からの放出光量の変化を電気信号のとして第一の信号処理部で処理を行い、処理結果を信号処理結果保存部に保存できる一方、信号処理選択部が必要に応じて第二の信号処理部を動作させることにより、前記電気信号を第二の信号処理部で処理し、信号処理結果を第一の信号処理結果と同時に保存することが可能となる。したがって、本適用例に記載の脈波計は、常時第一の信号処理部による信号処理結果を保存できる上、必要時に第二の信号処理部の結果も保存することが可能となる。
[適用例2]上記適用例に記載の脈波計において、前記信号処理選択部は、人体の動き量を検出し信号を出力する動きセンサー部と前記動きセンサー部の出力信号を信号処理する動き信号処理部とを有し、前記動き信号処理部の出力値に応じて前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断することを特徴とする。
本適用例によれば、信号処理選択部は、動きセンサー部で検出した人体の動き量を入力信号として動き信号処理部が動き量の信号処理を行い、動き信号処理部の出力信号を用いて第一の信号処理部に加え第二の信号処理部処理部を同時に動作させるかを判断することができる。したがって、本適用例に記載の脈波計は、常時第一の信号処理部による信号処理結果を保存できる上、人体の動きに応じて第二の信号処理部の動作を可能とし第二の信号処理部の信号処理結果を第一の信号処理結果と同時に保存することができ、より体動に強い信号処理の結果を利用することが可能になり、また第一の信号処理結果の検証や補正も可能になる。
[適用例3]上記適用例に記載の脈波計において、前記信号処理選択部は、前記光電センサーの人体からのずれ量を検出し信号を出力するずれセンサー部と、前記ずれセンサー部の出力信号を信号処理するずれ信号処理部とを有し、前記ずれ信号処理部の出力値に応じて前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断することを特徴とする。
本適用例によれば、信号処理選択部は、ずれセンサー部で検出したセンサーのずれ量を入力信号としてずれ信号処理部がずれ量の信号処理を行い、ずれ信号処理部の出力信号を用いて第一の信号処理部に加え第二の信号処理部処理部を同時に動作させるかを判断することができる。したがって、本適用例に記載の脈波計は、常時第一の信号処理部による信号処理結果を保存できる上、光電センサーのずれに応じて第二の信号処理部の動作を可能とし第二の信号処理部の信号処理結果を第一の信号処理結果と同時に保存することが可能となり、第一の信号処理部の処理結果の検証や補正が可能になる。
[適用例4]上記適用例に記載の脈波計において、前記信号処理選択部は、前記第一の信号処理部と第二の信号処理部との少なくとも一方の信号処理結果を解析する解析部と
前記解析部の出力値に応じて前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断することを特徴とする。
本適用例によれば、信号処理選択部は、第一の信号処理部と第二の信号処理部との少なくとも一方の信号処理結果を解析部で解析し、前記解析部の出力値を用いて第一の信号処理部に加え第二の信号処理部処理部を同時に動作させるかを判断することができる。したがって、本適用例に記載の脈波計は、常時第一の信号処理部による信号処理結果を保存できる上、前記第一の信号処理部と第二の信号処理部との少なくとも一方の信号処理結果から、たとえば脈波波形の直流成分変動が大きい場合や、例えば不整脈と疑われる脈を検出した場合といったさらにより詳細な解析が必要な場合に、第二の信号処理部の動作を可能とし第二の信号処理部の信号処理結果を第一の信号処理結果と同時に保存することが可能となるため、脈のより詳細な情報を得ることができる。
[適用例5]上記適用例に記載の脈波計において、前記第一の信号処理部は、前記光電センサー部の出力信号から特徴点を抽出し、前記特徴点を前記第一の信号処理部の信号処理結果とし、前記第二の信号処理部は、前記光電センサー部の出力信号をデジタル信号に変換し信号振幅値系列として信号処理結果とすることを特徴とする。
本適用例によれば、前記第一の信号処理部は、光電センサー部の出力信号から特徴点を抽出して、前記第一の信号処理部は特徴点を信号処理結果とする。また、前記第二の信号処理部は、前記光電センサー部の出力信号をデジタル信号に変換し、信号振幅値の時系列として信号処理結果を出力する。したがって、本適用例に記載の脈波計は、前記第一の信号処理部として特徴点を前記信号処理結果保存部に保存することができ、前記信号処理結果保存部に保存されるデータ量を軽減することができる。また、信号処理選択部によって、体動やセンサーずれなどノイズ除去や不整脈による脈の乱れを検出し詳細な解析が必要な場合、前記第一の信号処理部の信号処理結果に加えて前記第二の信号処理部の信号処理結果として脈波波形を記録できるため、後に詳細な解析が可能となる。
[適用例6]本適用例に係るプログラムは、コンピューターを、人体からの放出光量を検出し電気信号を出力する光電センサー部からの出力信号を第一の信号処理部と、第一の信号処理部と処理方式が異なる第二の信号処理部と、前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断する信号処理選択部と、前記第一の信号処理部と前記第二の信号処理部との信号処理結果のうち前記信号処理選択部で選択されたものを保存する信号処理結果保存部と、して機能させる。
本適用例に記載のプログラムによれば、光電センサー部で検出された人体からの放出光量の変化を電気信号のとして第一の信号処理部で処理を行い、処理結果を信号処理結果保存部に保存できる一方、信号処理選択部が必要に応じて第二の信号処理部を動作させることにより、前記電気信号を第二の信号処理部で処理し、信号処理結果を第一の信号処理結果と同時に保存することが可能となる。したがって、本適用例に記載のプログラムを用いたコンピューターは、常時第一の信号処理部による信号処理結果を保存できる上、必要時に第二の信号処理部の結果も保存することが可能となる。
本発明の一実施形態である脈波計の処理機能のブロック図である。 同脈波計の構成を示すブロック図である。 同脈波計の外観を示す図である。 同脈波計の脈波センサーで取得した脈波データの一例である。 同脈波計で処理される極点時刻列データの一例を示す図である。 同脈波計で処理されるピーク時系列データの一例を示す図である。 同脈波計で処理されるRR間隔列の一例を示す図である。 同脈波計がPCと通信する場合のデータ伝送処理のフローチャート図である。 同脈波計がPCと通信をする場合の構成図である。 同脈波計と通信するPCの構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態(実施例として説明する)は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
図1に、本発明に係る実施例1における脈波計の機能構成図を示す。また実施例1における脈波計のブロック図を図2に示す。ここで、モジュールとは機能構成図で示される各機能が実現される部品を表す。
脈波計は、AD変換部2、データバッファー3、信号処理選択部4、信号処理部5、信号処理部6、データバッファー7、データバッファー8、保存データ生成部9、および保存用メモリー10を備える。
AD変換部2はA/D変換回路120を制御し、AD変換部2、信号処理選択部4、信号処理部5、信号処理部6、および保存データ生成部9は、ROM1317に記録されたプログラムの一部として保存されており、CPU1315で実行される。データバッファー3、データバッファー7、およびデータバッファー8は、RAM1316の特定領域に確保されCPU1315によって管理されている。メモリー1318は、例えば32メガバイト程度の大容量の不揮発性書き換え可能メモリーで、保存用メモリー10として使用される。
図3は、脈波計1の外観を示す図である。図3に示すように、脈波計1は、脈波センサー30と、装置本体100と、これらを接続するケーブル20とを有する。脈波センサー30は、利用者の左手人差指を測定部位とし、この部位の血管への血液の流入によって生じる血管の容積変化を生体情報として検出する検出手段としての役割を果たす。脈波センサー30は、左手人差指の幅よりも小さな寸法を持った扁平な板状をなしている。脈波センサー30は、発光素子32aと受光素子32bを併有している。発光素子32aは、血液に吸収され易い波長の発光色(例えば、青色とする)を持ったLED(Light Emitting Diode)である。受光素子32bは、フォドダイオードである。脈波センサー30には、センサー固定用バンド34が取り付けられている。
脈波センサー30は、測定部位に発光素子32a及び受光素子32bを向けるようにして測定部位の周りにセンサー固定用バンド34を巻きつけることにより、利用者の身体に装着される。この装着状態において、脈波センサー30の発光素子32aは、装置本体100からケーブル20を介して当該発光素子32aに供給される電流に応じた強度の光を測定部位に向けて照射する。発光素子32aから照射された光は、測定部位の表皮を透過してその奥の真皮の毛細血管に到達する。血管に到達した光の一部は血管内を流れる血液により吸収される。また、血管に到達した光のうち血管内の血液により吸収されなかった光は、一部は測定部位を透過し、残りは生体組織における散乱等を経た後に反射光として受光素子32bに到達する。受光素子32bには、この反射光の受光強度に応じた大きさの電流が流れる。ここで、測定部位における血管は、心拍と同じ周期で膨張と収縮を繰り返している。そして、血管の膨張と収縮の周期と同じ周期で光の吸収量が増減し、これに合わせて反射光の強度も変化する。このため、受光素子32bに流れる電流は、測定部位における血管の容積変化を示す成分をもったものとなる。
装置本体100は、腕時計を模した形状を有している。装置本体100の表面には、長方形状の表示面を持った表示部14が設けられている。表示部14には、当該脈波計1による計測結果である脈間隔、脈拍数、その他の各種情報が表示される。装置本体100の筐体の外周部にはボタンスイッチ16が設けられている。ボタンスイッチ16は、脈波の計測開始や計測終了、計測結果のリセットなどの各種指示の入力に用いられる。装置本体100の外周部における表示部14を挟んで対向する部分には、リストバンド12の一端と他端が取り付けられている。装置本体100は、リストバンド12を利用者の手首に巻きつけることにより、利用者の身体に装着される。
図2に示すように、脈波計1の装置本体100には、通信インターフェース150、アナログ回路部110、A/D変換回路120、3軸加速度センサー160、圧力センサー170、および制御回路部130が内蔵されている。通信インターフェース150は、Bluetooth(登録商標)に準拠した無線通信を行う装置である。装置本体100は、この通信インターフェース150によりパーソナルコンピューターと接続される。アナログ回路部110は、駆動回路1120、IV変換回路1112、およびアンプ1116を有する。駆動回路1120は、脈波センサー30の発光素子32aを駆動させる回路である。この駆動回路1120は、制御回路部130による制御の下、脈波センサー30の発光素子32aに電流を供給する。これにより、発光素子32aから測定部位に向けて光が照射され、その反射光の受光強度に応じて受光素子32bを流れる電流が変化する。受光素子32bを流れる電流が測定部位における血管の容積変化を示す成分をもったものとなることは、上述した通りである。IV変換回路1112は、受光素子32bに流れる電流に応じた電圧をアンプ1116へ出力する。アンプ1116は、IV変換回路1112の出力電圧を増幅し、増幅した信号をA/D変換回路120に出力する。
A/D変換回路120は、アンプ1116の出力信号をデジタル形式に変換し、変換した信号を制御回路部130に出力する。制御回路部130は、脈波計1の制御中枢としての役割を果たす装置である。制御回路部130は、CPU(Central Processing Unit)1315、RAM(Random Access Memory)1316、ROM(Read Only Memory)1317、及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)1318を含んでいる。
A/D変換回路120はAD変換部2によって制御されるタイミングでデジタルデータに変換される。AD変換部2は、例えば50ヘルツのサンプリングレートで量子化度は10Bitなどを用いる。
3軸加速度センサー160は、内部に錘となる可動部を持ち、中立位置にゆるく固定されている構造を持ち、その錘の変位を静電容量やピエゾ抵抗として検出する加速度センサーであって検出軸が3軸のものである。検出された変位は電気信号として取り出されるが、A/D変換によって、CPU1315が処理可能なデジタルデータに変換して出力される。たとえば、X軸、Y軸、Z軸の加速度を10Bit符号なし整数を出力する。3軸加速度センサー160は、脈波計1に内蔵されており、脈波計1の変位を検出するために使用される。
圧力センサー170は、固定された電極と可動式の電極(可動極)を対向させて外部からの圧力によって可動極が変形して発生する静電容量の変化を電気信号に変換するものである。さらにA/D変換によって、CPU1315が処理可能なデジタルデータに変換し出力される。たとえば、10Bit符号なし整数を出力する。圧力センサー170は、脈波センサー30の指接触側に指と脈波センサー30の接触圧力を計測できるように配置される。
この脈波計1は、測定モードと通信モードと待機モードの3つのモードを持っている。これらのモードはボタンスイッチ16によって、切り替えることができる。ちなみに、待機モードとは特に何も処理は行わないモードである。
以下では、ボタンスイッチ16によって測定モードに切り替えられたのちの動作を説明する。
AD変換部2の出力データは、サンプリングする毎にデータバッファー3に記録される。この動作の詳細を説明する。
CPU1315では20ミリ秒ごとにAD変換部2を動作させる。AD変換部2はA/D変換回路120にAD変換の処理を行う命令をレジスタに書き込むとAD変換を開始し結果をレジスタに書き込む。A/D変換回路120とCPU1315は割り込み信号線でも結ばれており、CPU1315はA/D変換回路120の処理が終了したことをA/D変換回路120からの終了割り込み信号線によって検知する。CPU1315はA/D変換回路120の終了割り込みを検知するとAD変換部2によりAD変換器のレジスタより変換結果データを読み出し、RAM1316に設けられているデータバッファー3に保存する。一例として、A/D変換回路120に備えられているレジスタは、メモリーマップドIO方式でCPU11およびプログラムからはRAMアクセスと同様のアドレス方式でデータにアクセスできるものとする。
AD変換部2は、データバッファー3にデータを保存するにあたり、データバッファー3のサブデータバッファー301と302の役割を確認し、AD変換記録用領域の役割を持ったサブデータバッファーにデータを保存する。サブデータバッファーの役割の記述は、RAM1316の領域に変数として保持される。データバッファー3に一定量Aのデータサイズが保存されると信号処理選択部4に信号保存終了を通知する。
ここで、一定量Aとは、データバッファー3に割り当てられたメモリーサイズの半分以内であって、測定時間区切りのよいサイズが望ましい。例えば、データバッファー3の容量が2キロバイトであった場合この領域を1キロバイトずつ二つに分ける。便宜上、それらの領域をサブデータバッファー301、サブデータバッファー302とする。仮にある時点でサブデータバッファー301をAD変換部2が保存するための領域、サブデータバッファー302を信号処理データ領域とした場合、なおかつデータバッファー3にAD変換の結果を記録するフォーマットとして、10BitのAD変換結果を16ビット拡張して、AD変換を20Hzで行う場合、10秒分のデータに相当する1000バイトを一定量Aと規定するのが望ましい。
次に信号処理選択部4の動作について説明する。
信号処理選択部4は、AD変換部2からの信号保存終了の通知を受けると信号保存中フラグをクリアする。信号保存中フラグはRAM1316の領域に変数として保持される。同様に、信号処理部5または信号処理部6の信号処理がともに終了した場合、信号処理部5および信号処理部6から信号処理終了通知を一つまたは二つ必要なだけ受け取ることで信号処理中フラグをクリアする。信号処理中フラグもRAM1316の領域に変数として保持される。
信号処理選択部4は、信号処理中フラグおよび信号保存中フラグが両方ともクリアされた場合、データバッファー3のサブデータバッファー301とサブデータバッファー302の役割を切り替える。具体的には、サブデータバッファー301がAD変換記録用領域の役割を割り当てられており、サブデータバッファー302は信号処理用データ領域と役割を割り当てられている場合、このタイミングで、サブデータバッファー301を信号処理用データ領域とし、サブデータバッファー302をAD変換記録用領域とする。もしサブデータバッファー301と302の役割が逆の状態で役割を切り替える場合は、サブデータバッファー301をAD変換記録用領域、302を信号処理用データ領域とすることになる。役割は前述のとおり、RAM1316の領域に変数として保持されているため、これの値を設定することで実現される。このサブデータバッファーの役割変更と同時に、信号処理部5および信号処理部6に信号処理選択方式に従い信号処理の開始を指示し、信号処理中フラグおよび信号保存中フラグをセットする。
以下に、信号処理選択部4の信号処理選択方式について動作の詳細を説明する。
信号処理選択部4は、3軸加速度計160を制御し、20ミリ秒ごとに加速度データを取得する。ある時刻tミリ秒のX軸の加速度、Y軸の加速度、Z軸の加速度をXg(t)、Yg(t)、Zg(t)とすると、信号処理選択部4は、加速度指標G(t)として都度次式(1)を計算する。
G(t)=f(Ax×Xg(t)×Xg(t)+Ay×Yg(t)×Yg(t)+Az×Zg(t)×Zg(t))・・・(1)
ここで関数f(x)はxの平方根とする。重みづけ係数Ax、Ay、Azは取り付け方向に応じて、軸の優先度を変えるための値であるが、仮にAx=Ay=Az=1としてよい。また、これと同時に時刻tを含む最新の50個のG(t−980)、G(t−960)、・・・G(t)の平均値GAveSecを計算する。また時刻tを含む最新の3000個のG(t−59980)、G(t−59960)、・・・、G(t)の平均値GAveMinを計算する。同時に、信号処理選択部4は、一秒間のG()の平均値GAveSecが1以上のとき、第二処理部動作要求フラグFL1をセットする。逆にGAveSecが1未満の時第二処理部動作要求フラグFL1をクリアする。同時に、信号処理選択部4は、一分間のG()の平均値GAveMinが0.001を下回るとき第二処理部動作要求フラグFL2をセットする。逆にGAveMinが0.001以上とき第二処理部動作要求フラグFL2をクリアする。この第二処理部動作要求フラグFL1と第二処理部動作要求フラグFL2はRAM1316の領域に確保される変数である。
信号処理選択部4は、信号処理部6に信号処理開始を指示するか否かを以下の方法で判定する。
(C1)第二処理部動作要求フラグFL1がセットされている場合、
(C2)第二処理部動作要求フラグFL2がセットされている場合、
の条件による組み合わせに対して動作を記述する。
(A1)C1成立かつC2非成立の場合、信号処理部6に対して信号処理開始を指示する。
(A2)C1成立かつC2成立の場合、なおかつ信号処理選択部4はRAM1316に確保されている変数であるFL2Countが30以下ならば、FL2Countに1を足し、信号処理部6に対して信号処理開始を指示する。
(A3)C1非成立かつC2非成立の場合、FL2Countを0にする。信号処理部6に対して信号処理開始を指示しない。
(A4)C1非成立かつC2成立の場合、FL2Countが30以下ならば、FL2Countに1を足し、信号処理部6に対して信号処理開始を指示する。
信号処理選択部4は、信号処理部5については常に信号処理開始を指示するものとする。
また、信号処理選択部4は、圧力センサー170を制御し、20ミリ秒ごとに圧力データを取得する。ある時刻tミリ秒の圧力をP(t)とする。信号処理選択部4は、P(t)が10mmHg以下あるいは30mmHg以上のとき、第二処理部動作要求フラグFL3をセットする。それ以外の時はFL3をクリアする。この第二処理部動作要求フラグFL3はRAM1316の領域に確保される変数である。
信号処理選択部4は、信号処理部6に信号処理開始を指示するか否かを以下の方法で判定する。ただし、加速度計の判定による信号処理開始指示が有効の場合はこの限りではない。
第二処理部動作要求フラグFL3がセットされている場合、信号処理部6に対して信号処理開始を指示する。第二処理部動作要求フラグFL3がクリアされている場合、信号処理部6に対して信号処理開始を指示しない。
また、信号処理選択部4は、信号処理部5によってデータバッファー7に出力されたRR間隔列を解析し、RR間隔データ列の標準偏差が100ミリ秒を超える場合、第二処理部動作要求フラグFL4をセットする。それ以外の時はFL4をクリアする。この第二処理部動作要求フラグFL4はRAM1316の領域に確保される変数である。
信号処理選択部4は、信号処理部6に信号処理開始を指示するか否かを以下の方法で判定する。ただし、加速度計および圧力センサーの判定による信号処理開始指示が有効の場合はこの限りではない。
第二処理部動作要求フラグFL4がセットされている場合、信号処理部6に対して信号処理開始を指示する。第二処理部動作要求フラグFL4がクリアされている場合、信号処理部6に対して信号処理開始を指示しない。
次に、信号処理選択部4の信号処理開始指示を受けた信号処理部5および信号処理部6はそれぞれデータバッファー3のサブデータバッファー301または302のうち、信号処理データ領域に該当する方のデータを信号処理しデータバッファー7とデータバッファー8に信号処理結果を保存する。信号処理部5および信号処理部6はそれぞれデータバッファー3の該当データの処理が終わると信号処理選択部4に終了を通知する。
以下に、信号処理部5および信号処理部6の信号処理の詳細を示す。一例として信号処理部5はピーク間隔検出処理、信号処理部6は脈波成分信号検出処理として説明を行う。
まず、信号処理部5のピーク検出処理の説明を行う。処理対象となるサブデータバッファーの信号処理データ領域のデータは、10秒間のデータである。このデータを先頭から16ビット整数値の時系列サンプルとして解釈し、全サンプルをまず平滑化処理する。平滑化処理にはSavitzky−Golayアルゴリズムを用いればよい。平滑化後、全サンプルを一階微分データ列を作成し、微分値が0になる時刻を全部求める。求める時刻は計測開始最初のサンプル時刻を0としサンプル間の時間は20ミリ秒であることを考慮した時刻で求め、極点時刻列として保存する。たとえば、今信号処理用領域にあるデータは、NcycleをAD変換2がデータ保存用バッファーを埋めた積算回数とするならば、(0+10×Ncycle)秒が先頭サンプルの該当時刻である。
ここで、零点の求め方の例を示す。時刻tから始まる長さ3のサンプル列が(1、0、−1)である場合は、t+20ミリ秒を微分値が0となる時刻とする。また、複数(N個)連続する0を挟む非零サンプルを含む長さN+2サンプル列や、0がなく符号が反転する長さ2のサンプル列では、そのサンプル列先頭の時刻t、サンプル列長さMとするならば、次式(2)に従って求めたTzeroを微分値が0となる時刻とする。
Tzero=t+(0+20×(M−1))/2・・・(2)
同時に、全サンプルを二階微分処理を行い二階微分データ列を作成し、極点時間列の各時刻において、二階微分値が負の値の場合のみ抽出する。抽出後の時刻列をピーク時刻列をする。次に、ピーク時刻列の時刻間隔を求め、RR間隔列を作成する。このとき、最後のピーク時刻を「前回の最終ピーク時刻」としてRAM1316上に記録しておく。「前回の最終ピーク時刻」が保存されている場合、最初のピーク時刻から最初のRR間隔を計算し、RR間隔列の先頭にデータを追加する。このRR間隔列はデータバッファー7に記録するものである。
たとえば、図4にプロットできるようなサンプルデータ列があった場合、図5のような極点時刻列を生成する。次に図6に示されるようなピークを抽出したピーク時刻列を生成する。図6の最後のピーク時刻(6−Xの位置のデータ。Xは場合によって先頭からの位置は変化する。)は、次のサイクルにおいて先頭のピーク時刻として6−Aの位置で用いられる。図7は、図6のピーク時刻列から求めたRR間隔列である。
信号部処理のピーク検出処理としては、上記のサンプルの一階微分データ列を作成した後、一回微分データの極大点となる時刻を求め、その時刻列(一回微分極大時刻列)を作成し、その時刻列の間隔をRR間隔列としてもよい。
信号処理部6の脈波成分信号検出処理の説明を行う。処理対象となるサブデータバッファーの信号処理データ領域のデータは、10秒間のデータである。このデータを先頭から16ビット整数値の時系列サンプルとして解釈し、全サンプルに対しSavitzky−Golayアルゴリズムをおこなう。このときパラメーター調整で3Hz以上の高周波数成分を除去するように調整したアルゴリズムが望ましい。この処理の結果をデータバッファー8に記録する。信号処理部6がデータバッファー8に生成するデータのサンプル数とデータフォーマットは元のデータと変わらないが、値のみが異なったものとなる。
ここで、信号処理部5および信号処理部6は、AD変換部2がデータ保存用バッファーを満たし信号保存中フラグをクリアするより前の時点で信号処理を終了し信号処理中フラグをクリアするようにすることが望ましい。そうすることで、AD変換部が連続してデータ保存用バッファーを利用することができるため、データを欠損することなく生体データを取得することが可能となる。
信号処理部5においては、平滑化を行う前にスプライン補完法等によるデータの高密度化を行ってもよい。こうすることでピーク時刻検出の精度を向上させることができる。しかし、前記の通りAD変換部2の処理時間よりも速い処理を行うことの方が優先されるため十分処理が簡単な高密度化法が望ましい。
次に、データバッファー7とデータバッファー8に一定量のデータの処理結果が保存された後の信号処理選択部4と保存データ生成部9の動作について説明する。信号処理選択部4が信号処理部5または信号処理部6の処理が終了している状態を信号処理中フラグがクリアされていることで検知すると、保存データ生成部9に保存開始を指示する。保存データ生成部9は、指示を受けるとデータバッファー7に対応するファイル7−F、データバッファー8に対応するファイル8−Fにデータを追加する。このファイル7−Fとファイル8−Fはボタンスイッチ16の操作によって測定モードに変更され測定が開始した直後の保存開始の指示の際に保存データ生成部9によって作成される。
次に、脈波計1がボタンスイッチ16によって通信モードとなり、PCと通信を行う動作について説明する。なお、図9は、脈波計1とPC400の関係を示しており、脈波計1とPC400はたとえばBluetoothのSPP(シリアルポートプロファイル)によって接続されている。そのうえで、脈波計1に保存されている生体情報データをPC400に転送をする。
図10は、PC400の構成を示すブロック図である。PC400は、制御部4010、ハードディスク4005、ディスプレイ4004、キーボード4001、マウス4002およびBluetooth(登録商標)コントローラー4003を有する。制御部4010は、CPU4011、RAM4012、およびROM4013を有する。CPU4011はRAM4012をワークエリアとして利用しつつ、ROM4013やハードディスク4005に記憶された各種プログラムを実行する。ハードディスク4005には制御プログラムが記憶されている。この制御プログラムがデータ転送処理を行う。
脈波計1の制御部130は、脈波計1を通信待ちモードにすると、通信インターフェース150を接続待ち状態にする。この状態において、PC400のキーボード4001やマウス4002によってデータ伝送を指示する操作が行われるとPC400の制御部4010はBluetoothコントローラー4003を通信可能状態にし、Bluetoothコントローラー4003が通信インターフェース150と接続されると、通信インターフェース150は接続状態となり、Bluetoothコントローラー4003も接続状態となる。なお、このときBluetoothの通信仕様SPPに従い、脈波計1とPC400がシリアルポート接続されているものとする。
図8は、データ転送処理を示すフローチャートである。
データ伝送処理において、PC400のCPU4011はデータ伝送を指示する操作が行われると、コマンドCMを脈波計1に伝送する(S1011)。脈波計1のCPU1315は、保存用メモリー10のファイル7−Fもしくはファイル8−Fをメモリー1318から読み出し無線区間を介してPC400に伝送する(S1012)。この伝送は、XMODEMなどのバイナリー転送プロトコルに従って行うがこれに限らない。PC400のCPU4011は脈波計1から伝送されてくる生体情報ファイル7−Fもしくはファイル8−Fをハードディスク4005に保存する(S1013)。
データ転送処理において、Bluetoothを用いた説明を行ったが、この部分はUSBを用いてもよいし、他でもバイナリーファイルが転送できる通信手段であればよい。
また、Bluetoothを含めた通信手段で説明したが、脈波計1のメモリー1318は、取り外し可能なメディア例えばSDカードであってもよい。この場合、PC400にSDカードメディア読み込み装置を備えれば、ファイル7−F、ファイル8−Fをメディア読み込み装置から直接読み込むことができる。
1…脈波計、2…AD変換部、3,7,8…データバッファー、4…信号処理選択部、5,6…信号処理部、9…保存データ生成部、10…保存用メモリー、12…リストバンド、14…表示部、16…ボタンスイッチ、20…ケーブル、30…脈波センサー、32a…発光素子、32b…受光素子、34…センサー固定用バンド、100…装置本体、110…アナログ回路部、1112…IV変換回路、1116…アンプ、1120…駆動回路、120…A/D変換回路、130…制御回路部、1315、4011…CPU、1316、4012…RAM、1317、4013…ROM、1318…メモリー、150…通信インターフェース、160…3軸加速度センサー、170…圧力センサー、400…PC、4001…キーボード、4002…マウス、4003…Bluetoothコントローラー、4004…ディスプレイ、4005…ハードディスク、4010…制御部。

Claims (6)

  1. 人体に対して光を照射し、前記人体によって反射された反射光の受光強度に応じて電気信号を出力する光電センサー部と、
    前記光電センサー部の出力信号を信号処理する第一の信号処理部と、
    前記光電センサー部の出力信号を信号処理するものであって、第一の信号処理部と処理方式が異なる第二の信号処理部と、
    前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断する信号処理選択部と、
    を有することを特徴とする脈波計。
  2. 前記信号処理選択部は、人体の動き量を検出し信号を出力する動きセンサー部と、
    前記動きセンサー部の出力信号を信号処理する動き信号処理部とを有し
    前記動き信号処理部の出力値に応じて前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の脈波計。
  3. 前記信号処理選択部は、前記光電センサーの人体からのずれ量を検出し信号を出力するずれセンサー部と、
    前記ずれセンサー部の出力信号を信号処理するずれ信号処理部とを有し、
    前記ずれ信号処理部の出力値に応じて、前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脈波計。
  4. 前記信号処理選択部は、前記第一の信号処理部と第二の信号処理部との少なくとも一方の信号処理結果を解析する解析部と、
    前記解析部の出力値に応じて、前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の脈波計。
  5. 前記第一の信号処理部は、前記光電センサー部の出力信号から特徴点を抽出し、
    前記特徴点を前記第一の信号処理部の信号処理結果とし、
    前記第二の信号処理部は、前記光電センサー部の出力信号をデジタル信号に変換し信号振幅値系列として信号処理結果とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の脈波計。
  6. コンピューターを、
    人体に対して光を照射し、前記人体によって反射された反射光の受光強度に応じて電気信号を出力する光電センサー部からの出力信号を第一の信号処理部と、
    第一の信号処理部と処理方式が異なる第二の信号処理部と、
    前記第一の信号処理部に加え前記第二の信号処理部も同時に動作させるか否かを判断する信号処理選択部、として機能させるためのプログラム。
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