JP5742059B2 - 電子発生方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子発生方法に関するものである。
特許文献1には、荷電粒子ビーム発生装置が記載されている。この荷電粒子ビーム発生装置は、分割された引出電極と、この引出電極の中央部の空隙に対向する電極チップとを備える。引出電極の各々とチップとの間には高電圧が印加され、これにより荷電粒子ビームの射出方向が制御される。電極チップの表面には液体金属(リチウム)が配置されている。
特開平1−289057号公報
一般的に、電子ビームを発生させる際には、電子放出電極の周囲を排気して真空状態とする。しかし、完全な真空状態にすることは困難であり、通常は、窒素、水、二酸化炭素、及び酸素といった大気中の成分が電子放出電極の周囲に残留する。
一方、上述した特許文献1に記載された装置のように、電子放出源として液体金属電子源、例えば液体リチウムを用いる場合がある。しかし、液体リチウムはほぼ真空の状態にあっても残留窒素と反応し易い。液体リチウムが窒素と反応すると、リチウムが液相から固相に変化する。リチウムの固相化が進むと、残留気体の分子によるスパッタリングの影響を受けるようになり、放出される電流量が安定しないという問題が生じる。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、電子放出源として液体リチウムを用いる電子発生方法において、放出電流量を安定させることを目的とする。
本発明の一実施形態に係る電子発生方法は、筐体の内部にアルゴンを導入する第1導入ステップと、筐体の内部を排気する排気ステップと、排気ステップにより排気された後のアルゴン含有雰囲気下で、筐体の内部に配置された電極の表面を覆う液状のリチウムから電子を放出させる電子放出ステップとを備えることを特徴とする。
本発明者らの研究において、アルゴン含有雰囲気下で液体リチウムから電子を放出させることにより、アルゴンを含まない雰囲気下で電子を放出させる場合と比較して、放出電流量が格段に安定することが判明した。上記電子発生方法では、筐体の内部にアルゴンを導入し(第1導入ステップ)、その後、筐体内部を排気している(排気ステップ)。これにより、ほぼ真空状態か又はそれに近い状態で、且つアルゴンを含有する雰囲気を好適に実現できる。そして、このような雰囲気下で、電極の表面を覆う液体リチウムから電子を放出させることにより、放出電流量を格段に安定させることができる。
また、電子発生方法は、筐体の内部が所定の圧力に近づくように筐体の内部にアルゴンを導入する第2導入ステップを、排気ステップと電子放出ステップとの間に更に備えることを特徴としてもよい。これにより、筐体内部のアルゴン分圧を保持し、液体リチウムから放出される電流量を更に安定させることができる。この場合、所定の圧力は1×10−4Pa以下であることが好ましい。
また、電子発生方法は、第1導入ステップと排気ステップとを複数回繰り返し行うことを特徴としてもよい。これにより、筐体内部に残留する窒素、水、二酸化炭素、及び酸素といった大気中の成分をより少なくすることでアルゴン分圧を高め、液体リチウムから放出される電流量を更に安定させることができる。
また、電子発生方法は、筐体が、電極を収容している電子銃室と、該電子銃室との間を電子が通過するように仕切られた第二室とを有しており、第1導入ステップ及び第2導入ステップのうち少なくとも一方において、電子銃室に設けられた第1のアルゴン導入口から筐体の内部にアルゴンを導入することを特徴としてもよい。これにより、電子放出電極の周囲のアルゴン分圧を高くすることができる。
また、電子発生方法は、第1のアルゴン導入口の中心軸線の延長上にリチウムを配置することを特徴としてもよい。これにより、さらに電子放出電極(特にリチウム)の周囲のアルゴン分圧を高くすることができる。
また、電子発生方法は、第1導入ステップにおいて、第1のアルゴン導入口、及び該第1のアルゴン導入口とは別の位置に設けられた第2のアルゴン導入口から筐体の内部にアルゴンを導入することを特徴としてもよい。この場合、電子発生方法は、第2のアルゴン導入口を第二室に設けることが好ましい。これにより、筐体内部全体に残留する窒素、水、二酸化炭素、及び酸素といった大気中の成分をより少なくすることでアルゴン分圧を高めることができる。
また、電子発生方法では、電子放出ステップのアルゴン含有雰囲気における窒素分圧及び水分圧それぞれが1×10−7Pa以下、より好ましくは5×10−8Pa以下であるとよい。これにより、液体リチウムから放出される電流量を更に安定させることができる。
本発明によれば、電子放出源として液体リチウムを用いる電子発生方法において、放出電流量を安定させることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子発生方法に使用されるX線検査装置の構成を示す図である。 図2は、液体金属陰極のリチウム被覆方法の一例を示す図である。 図3(a)は、液体金属陰極の縦断面図である。図3(b)は、液状のリチウムに電界が印加された状態を示している。 図4は、電子発生方法のうち第1の方法を示すフローチャートである。 図5は、電子発生方法のうち第2の方法を示すフローチャートである。 図6は、電子発生方法のうち第3の方法を示すフローチャートである。 図7は、電子発生方法のうち第4の方法を示すフローチャートである。 図8(a)は、筐体内を10−8Paの超高真空まで排気した後、窒素ガス及びアルゴンガスを、それぞれ筐体内の圧力が10−5Paになるように導入し続けたときの、液体金属陰極の放出電流変化を示すグラフである。図8(b)は、筐体内を10−8Paの超高真空まで排気した後、アルゴンガスを、筐体内の圧力が10−4Paになるように導入し続けたときの液体金属陰極の放出電流変化を示すグラフである。 図9は、図8(a)に、グラフG32及びG33を追加したものである。グラフG32及びG33は、筐体の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した状態で液体金属陰極から電子を放出した場合における、放出電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。 図10は、アルゴンによって筐体内をパージした後に真空排気を行った場合と、アルゴンによるパージをしないで真空排気を行った場合とにおける、その後の筐体内の残留ガス成分の分析結果を示す図である。 図11は、筐体の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した後、第2導入ステップにおいて筐体の内部圧力が1×10−5Pa、1×10−6Pa、及び1×10−7Paのそれぞれに近づくようにアルゴンを導入し続けた場合における、液体金属陰極から放出される電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。 図12は、筐体の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した場合と、その後に筐体内部の圧力が10−4Paとなるようにアルゴンガスを導入した場合とにおける、放出電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。 図13は、筐体の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した後、第2導入ステップにおいて筐体内の圧力が10−4Pa又は10−3Paになるようにアルゴンガスを導入し続けた場合における、放出電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。 図14は、第2導入ステップにおける筐体内の全圧力を変化させた場合における、窒素分圧及び水分圧の計測結果を示す図表である。 図15は、電子発生方法に好適に使用される電子顕微鏡の構成を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明による電子発生方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る電子発生方法に好適に使用されるX線発生装置1Aを備えたX線検査装置1の構成を示す図である。図1に示されるX線検査装置1は、筐体10、液体金属陰極11、引出電極12、コンデンサレンズ13、コンデンサ絞り14、仕切り弁15、ビームアライメントコイル16、対物絞り17、対物レンズ18、ターゲット19、及び窓材20を備えるX線発生装置1Aと、被検査試料21のX線像を検出するX線カメラ22とによって構成されている。
筐体10は、上述したX線発生装置1Aの各部品を収容している。筐体10は、電子銃室(第一室)10a、中間室10b、及び電子光学系室(第二室)10cを有する。電子銃室10a、中間室10b、及び電子光学系室10cは、それぞれ電子ビームEの通過経路となる開口を除いて境界壁で仕切られている。電子銃室10aは、電子銃の液体金属陰極11、引出電極12、及びコンデンサレンズ13を収容している。中間室10bは、電子銃室10aと電子光学系室10cとの間に配置されている。電子銃室10aと中間室10bとの間の境界壁には開口が形成されており、該開口にはコンデンサ絞り14が配置されている。中間室10bと電子光学系室10cとの間の境界壁には開口が形成されており、該開口には仕切り弁15が配置されている。すなわち、電子光学系室10cは、コンデンサ絞り14、中間室10b及び仕切り弁15を介して電子ビームEが通過するように、境界壁によって電子銃室10aと仕切られている。この仕切り弁15を、電子発生時には開放し、部材交換等のメンテナンス等の際には閉鎖することで、メンテナンス等を行わない方の室の雰囲気を保持することができる。電子光学系室10cは、ビームアライメントコイル16、対物絞り17、及び対物レンズ18を収容している。そして、検査室10dとの間の境界壁(筐体10における検査室10dとの対向面)には開口が形成されており、該開口を塞ぐように、ターゲット19を保持する窓材20が配置されている。ターゲット19はタングステンからなり、窓材20はベリリウムからなる。
X線カメラ22は、X線発生装置1AのX線出射部(窓材20)と対向するように配置されている。被検査試料21は、窓材20とX線カメラ22との間に配置される。
電子銃室10a、中間室10b、及び電子光学系室10cを備えた筐体10は、気密性が高められた真空容器を構成する。電子銃室10aの側壁には、真空排気のための排気口10fと、アルゴンガスを電子銃室10aに供給するためのアルゴン導入口(第1のアルゴン導入口)10gとが設けられている。排気口10fには排気管23が取り付けられており、アルゴン導入口10gには導入管24が取り付けられている。ここで、電子銃室10a内における電子放出方向(すなわち、電子ビームEの中心軸方向)におけるアルゴン導入口10gの位置は、該電子放出方向における液体金属陰極11(特に、後述するリチウム)の位置と略一致していることが好ましい。つまり、アルゴン導入口10gの中心線の延長線上に液体金属陰極11が位置するように、導入管24及び液体金属陰極11が配置されることが好ましい。
また、電子光学系室10cの側壁には、真空排気のための排気口10hと、アルゴンガスを電子光学系室10cに供給するためのアルゴン導入口(第2のアルゴン導入口)10iとが設けられている。このように、本実施形態の電子光学系室10cは、アルゴン導入口10gとは別の位置に設けられたアルゴン導入口10iを有する。排気口10hには排気管25が取り付けられており、アルゴン導入口10iには導入管26が取り付けられている。排気管23,25の先には排気ポンプが接続されている。導入管24はバルブ28を介してアルゴンガス供給源27に接続されており、導入管26はバルブ29を介してアルゴンガス供給源27に接続されている。
液体金属陰極11は、固体電極(タングステンからなる針状部材)の先端部分の表面に、リチウムが蒸着されて成る。固体電極には、筐体10の外部から高電圧が印加される。また、リチウムは、電子発生時には固体電極への通電過熱によって液状に融解される。液体金属陰極11は、液状のリチウムから所定の方向に電子ビームEを放出する。この所定の方向は、電子銃室10a、中間室10b、電子光学系室10c、及び検査室10dの並び方向と一致している。
引出電極12及びコンデンサレンズ13は、液体金属陰極11に対して電子ビームEの放出方向に並んで配置されている。引出電極12は所定の電位に設定され、この引出電極12と液体金属陰極11との間の電位差によって、液体金属陰極11から電子ビームEが引き出される。電子ビームEの拡がりはコンデンサレンズ13によって集束され、その後、電子ビームEはコンデンサ絞り14及び仕切弁15を通過する。
ビームアライメントコイル16、対物絞り17、及び対物レンズ18は、電子光学系室10cの内部において、電子ビームEの放出方向に沿ってこの順に並んで配置されている。ビームアライメントコイル16は、電子ビームEの軸合わせを行うための偏向コイルである。対物絞り17は、画像形成に必要のない電子ビームEを遮蔽する。対物レンズ18は、ターゲット19へ向けて電子ビームEを集束する。
窓材20は、X線の透過率に優れた板状のベリリウムからなり、電子光学系室10cと検査室10dとの間の境界壁の開口を気密に封止する。窓材20の液体金属陰極11と対向する表面には電子をX線に変換するための、タングステンからなるターゲット19が膜状に形成されている。ターゲット19は、電子ビームEを受けてX線Xrを生成する。X線Xrは、窓材20を通して大気中に取り出され、検査室10dへ向けて放射される。
検査室10dにおいて、X線カメラ22は、その撮像面が窓材20の裏面(液体金属陰極11と対向する表面とは反対側の面)と対向するように配置されている。被検査試料21は、窓材20とX線カメラ22との間に配置される。ターゲット19から出射されたX線Xrは、被検査試料21を透過してX線像となり、X線カメラ22に入射する。
ここで、液体金属陰極11の構成について詳細に説明する。図2は、液体金属陰極11のリチウム被覆方法(供給方法)の一例を示す図である。図2に示すように、液体金属陰極11の固体電極(タングステンからなる針状部材)11aは、屈曲された金属線の屈曲部に固定され、金属線の両端部と、絶縁部材35を介して離間した二本の電極棒30a,30bとが電気的に接続されることで、陰極アセンブリ33が形成されている。電極棒30a,30bは、直流電流源を介して高圧電源31の負電極と電気的に接続される。一方、固体電極11aの近傍には蒸着ボート32が配置される。蒸着ボート32の内部にはリチウムが配置される。蒸着ボートから気化したリチウムが、固体電極11aの表面に蒸着され、液体金属陰極11の表面がリチウムで被覆される。
図3(a)は、液体金属陰極11の縦断面図である。図3(a)に示されるように、液体金属陰極11は、固体電極11a及びリチウム11bを有する。リチウム11bは、固体電極11aの表面に膜状に蒸着され、固体電極11aを被覆している。X線発生装置1Aを使用する際には、リチウムの融点である180.5℃以上に液体金属陰極11を通電加熱してリチウム11bを融解させる。そして、融解したリチウム11bに負電圧を印加することによって引出電極12(図1)との間に電位差が発生すると、液状のリチウム11bの形状は、次の数式(1)で表される表面張力Sと、数式(2)で表される電界応力Fとが釣り合う電圧条件(閾値電圧)の時に、テーラーコーンと呼ばれる頂角98.6°の円錐形状へと変化する。図3(b)は、表面張力S及び電界応力Fの向きと、これらによって生じるテーラーコーン11cとを示している。
なお、固体電極11aへのリチウム11bの供給方法は上述した方法に限られない。例えば、リチウム含浸材を電子銃室10aの内部に設けたり、或いはリチウム及びリチウム化合物リザーバを電子銃室10aの内部に設けるといった方法でもよい。
以上に説明したX線発生装置1Aを用いた電子発生方法について説明する。この電子発生方法には4つのバリエーションがあり、そのそれぞれについて順に説明する。
(第1の方法)
図4は、本実施形態に係る電子発生方法のうち第1の方法を示すフローチャートである。図4に示すように、この方法では、まず筐体10の内部にアルゴンガスを導入する(第1導入ステップS11)。本実施形態では、この第1導入ステップS11において、図1に示したバルブ28及び29を開き、アルゴンガス供給源27からアルゴン導入口10g及び10iを介して電子銃室10a及び電子光学系室10cにアルゴンガスを導入する。これにより、筐体10(電子銃室10a、中間室10b、及び電子光学系室10c)の内部をアルゴンガスによってパージする。
続いて、バルブ28及び29を閉じて筐体10内部の真空排気を行う(排気ステップS12)。本実施形態では、この排気ステップS12において、二つの排気口10f,10hから筐体10の内部を排気する。そして、バルブ28を開き、アルゴン導入口10gから筐体10の内部にアルゴンガスを再び導入する(第1導入ステップS13)。このステップS13では、筐体10内部の圧力値が、大気圧近くの0.09MPaに近づくようにアルゴンガスを導入することが好ましい。以後、排気ステップS12及び第1導入ステップS13を、筐体10内部の水および窒素の分圧が下がらなくなるまで、つまり可能な限り筐体10内部の水および窒素の分圧を低下させるように、複数回繰り返す(ステップS14)。
筐体10内部の水および窒素の分圧が殆ど下がらなくなったら、筐体10内部の真空排気を行う(排気ステップS15)。そして、筐体10の内部が所定の圧力に近づくように、筐体10の内部にアルゴンガスを導入し続ける(第2導入ステップS16)。その際、真空排気も同時に行うことで、より適切なアルゴン分圧を保つことができる。本実施形態では、この第2導入ステップS16において、図1に示した排気口10fを介して排気管23から真空排気を行いつつ、バルブ28を開き、アルゴンガス供給源27からアルゴン導入口10gを介して電子銃室10aにアルゴンガスを導入し続ける。
そして、第2導入ステップS16によるアルゴン含有雰囲気のもと、固体電極11aの表面をリチウム11bで覆う(被覆ステップS17)。このときの被覆方法としては、例えば図2を参照して説明した方法が好適である。その後、液体金属陰極11および引出電極12に所定の電圧を印加して、液状のリチウム11bから電子ビームEを放出させる(電子放出ステップS18)。なお、電子放出ステップS18の際も第2導入ステップS16を継続的に行うことで適切な雰囲気を保持しているが、それに加え、消耗したリチウムを補うための被覆ステップS17を適宜行うことで、より好ましい状態での連続した電子放出が可能となる。
(第2の方法)
図5は、本実施形態に係る電子発生方法のうち第2の方法を示すフローチャートである。図5に示すように、まず筐体10の内部にアルゴンガスを導入する(第1導入ステップS21)。この第1導入ステップS21では、図1に示したバルブ28及び29を開き、アルゴンガス供給源27からアルゴン導入口10g及び10iを介して電子銃室10a及び電子光学系室10cにアルゴンガスを導入する。これにより、筐体10の内部をアルゴンガスによってパージする。
続いて、バルブ28及び29を閉じて筐体10内部の真空排気を行う(排気ステップS22)。この排気ステップS22では、二つの排気口10f,10hから筐体10の内部を排気する。そして、筐体10の内部が所定の圧力に近づくように、筐体10の内部にアルゴンガスを導入し続ける(第2導入ステップS23)。その際、真空排気も同時に行うことで、より適切なアルゴン分圧を保つことができる。この第2導入ステップS23では、図1に示した排気口10fを介して排気管23から真空排気を行いつつ、バルブ28を開き、アルゴンガス供給源27からアルゴン導入口10gを介して電子銃室10aにアルゴンガスを導入し続ける。
そして、第2導入ステップS23によるアルゴン含有雰囲気のもと、固体電極11aの表面をリチウム11bで覆う(被覆ステップS24)。このときの被覆方法としては、例えば図2を参照して説明した方法が好適である。その後、液体金属陰極11および引出電極12に所定の電圧を印加して、液状のリチウム11bから電子ビームEを放出させる(電子放出ステップS25)。なお、電子放出ステップS25の際も第2導入ステップS23を継続的に行うことで適切な雰囲気を保持しているが、それに加え、消耗したリチウムを補うための被覆ステップS24を適宜行うことで、より好ましい状態での連続した電子放出が可能となる。
(第3の方法)
図6は、本実施形態に係る電子発生方法のうち第3の方法を示すフローチャートである。図6に示すように、まず筐体10の内部にアルゴンガスを導入する(第1導入ステップS31)。この第1導入ステップS31では、図1に示したバルブ28及び29を開き、アルゴンガス供給源27からアルゴン導入口10g及び10iを介して電子銃室10a及び電子光学系室10cにアルゴンガスを導入する。これにより、筐体10の内部をアルゴンガスによってパージする。
続いて、バルブ28及び29を閉じて筐体10内部の真空排気を行う(排気ステップS32)。この排気ステップS32では、二つの排気口10f,10hから筐体10の内部を排気する。そして、バルブ28を開き、アルゴン導入口10gから筐体10の内部にアルゴンガスを再び導入する(第1導入ステップS33)。このステップS33では、筐体10内部の圧力値が、大気圧近くの0.09MPaに近づくようにアルゴンガスを導入することが好ましい。以後、排気ステップS32及び第1導入ステップS33を、筐体10内部の水および窒素の分圧が下がらなくなるまで、つまり可能な限り筐体10内部の水および窒素の分圧を低下させるように、複数回繰り返す(ステップS34)。
筐体10内部の水および窒素の分圧が殆ど下がらなくなったら、筐体10内部の真空排気を行う(排気ステップS35)。そして、排気ステップS35により真空排気された後のアルゴン含有雰囲気のもと、固体電極11aの表面をリチウム11bで覆う(被覆ステップS36)。このときの被覆方法としては、例えば図2を参照して説明した方法が好適である。その後、液体金属陰極11および引出電極12に所定の電圧を印加して、液状のリチウム11bから電子ビームEを放出させる(電子放出ステップS37)。
(第4の方法)
図7は、本実施形態に係る電子発生方法のうち第4の方法を示すフローチャートである。図7に示すように、まず筐体10の内部にアルゴンガスを導入する(第1導入ステップS41)。この第1導入ステップS41では、図1に示したバルブ28及び29を開き、アルゴンガス供給源27からアルゴン導入口10g及び10iを介して電子銃室10a及び電子光学系室10cにアルゴンガスを導入する。これにより、筐体10の内部をアルゴンガスによってパージする。
続いて、バルブ28及び29を閉じて筐体10内部の真空排気を行う(排気ステップS42)。この排気ステップS42では、二つの排気口10f,10hから筐体10の内部を排気する。そして、排気ステップS42により真空排気された後のアルゴン含有雰囲気のもと、固体電極11aの表面をリチウム11bで覆う(被覆ステップS43)。このときの被覆方法としては、例えば図2を参照して説明した方法が好適である。その後、液体金属陰極11および引出電極12に所定の電圧を印加して、液状のリチウム11bから電子ビームEを放出させる(電子放出ステップS44)。
以上に説明した本実施形態による電子発生方法の効果について説明する。図8(a)は、筐体10の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した後、筐体10内の圧力が10−5Paになるようにアルゴンガスを導入し続けた場合(グラフG11)、及び、筐体10内の圧力が10−5Paになるように窒素ガスを導入し続けた場合(グラフG12)のそれぞれにおける、液体金属陰極11から放出される電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。また、図8(b)は、筐体10の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した後、筐体10内の圧力が10−4Paになるようにアルゴンガスを導入し続けた場合における、液体金属陰極11から放出される電流量の時間変化を示すグラフである。なお、図8において、縦軸は放出電流量(μA)を示し、横軸は時間(秒)を示している。
図8(a)に示されるように、アルゴンガスを導入した場合(グラフG11)には、窒素ガスを導入した場合(グラフG12)と比較して、長時間にわたって放出電流量が一定値で推移し、安定していることがわかる。また、液体金属陰極11が電界放射陰極であるにもかかわらず、10−5Paといった比較的高い圧力の下でも好適に動作している。また、従来の電界放射陰極の場合、10−4Paといった高い圧力の下では動作が不安定になり、ガス吸着やスパッタリングにより放電を引き起こす可能性が非常に高い。これに対し、筐体10内を10−8Paといった超高真空まで排気した後、筐体10内の圧力が10−4Paという更に高い圧力になるようにアルゴンガスを導入し続けた場合であっても、図8(b)に示されるように、液体金属陰極11は極めて安定に動作する。
図9は、図8(a)に示されたグラフG11及びG12に、グラフG32及びG33を追加したものである。グラフG32及びG33は、筐体10の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した状態で液体金属陰極11から電子を放出した場合における、放出電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。図9に示されるように、アルゴンガスを導入した場合(グラフG11)、筐体10の内部が10−5Paといった比較的高い圧力であっても、超高真空下と同等に放出電流量を安定させ得ることがわかる。
図10は、アルゴンによるパージをしないで真空排気を行った場合(グラフG21、実線)と、アルゴンによって筐体10内をパージした後に真空排気を行った場合(グラフG22、破線)とにおける、その後の筐体10内の残留ガス成分の分析結果を示す図である。なお、図10において、縦軸はイオン電流(nA)を示し、横軸は質量数(amu:原子質量単位)を示している。
筐体10の内部に一旦大気を導入した後に再度真空排気するような場合には、アルゴンガスで筐体10内をパージしたのちに真空排気を行うことにより(グラフG22)、そのまま真空排気を行う場合(グラフG21)と比較して、アルゴンガスを含有しているほか、水や窒素ガス等の残留ガス成分が減じていることが図10からわかる。このように、アルゴンガスを含有し、残留ガス成分が低減されることによって、液体金属陰極11の安定性を高め、且つ液体金属陰極11の寿命を延ばすことが可能となる。
上述したように、本発明者らの研究において、アルゴン含有雰囲気下で液状のリチウム11bから電子ビームEを放出させることにより、アルゴンを含まない雰囲気下で電子ビームを放出させる場合と比較して、放出電流量が格段に安定することが判明した。上述した第1ないし第4の方法においては、筐体10の内部にアルゴンを導入し、その後、筐体10の内部を排気している。これにより、ほぼ真空状態か又はそれに近い状態で、且つアルゴンを含有する雰囲気を好適に実現できる。そして、このような雰囲気下で固体電極11aを覆う液状のリチウム11bから電子ビームEを放出させることにより、放出電流量を格段に安定させることができる。なお、いずれの方法においても、固体電極11aへのリチウムの被覆は電子放出の直前に行っており、それが最も好ましいが、真空排気またはアルゴンで置換された状態であれば、他の段階で行っても良い。
また、上述した第1及び第2の方法のように、電子発生方法は、筐体10の内部を真空排気した後、筐体10の内部が所定の圧力に近づくようにアルゴンを導入する第2導入ステップを備えることが好ましい。ここで、図11は、筐体10の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した後、第2導入ステップにおいて筐体10の内部圧力が1×10−5Pa、1×10−6Pa、及び1×10−7Paのそれぞれに近づくようにアルゴンを導入し続けた場合における、液体金属陰極11から放出される電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。第2導入ステップを設けることにより、筐体10内部のアルゴン分圧を保持することができるので、図11や先の図8(a),図8(b)に示されるように、リチウム11bから放出される電流量を更に安定させることができる。なお、図11において各グラフが或る周期をもって上下に変化しているのは、消費されたリチウム11bを周期的に補ったためである。
また、図12に示すグラフG41は、筐体10の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した後にX線発生装置1Aを動作させた場合に、液体金属陰極11から放出される電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。なお、図12において、縦軸は放出電流量(μA)を示し、横軸は時間(秒)を示している。このように、筐体10の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した場合であっても、電子が衝突した電極などから窒素などのガスが多く放出され、グラフG41に示されるように放出電流量が不安定となる場合がある。しかし、このような状況下であっても、筐体10内部の圧力が10−4Paとなるようにアルゴンガスを導入すると、図12のグラフG42に示されるように、放出電流量が安定した。すなわち、本実施形態の電子発生方法は、第2導入ステップを備えることによって、リチウム11bから放出される電流量を更に安定させることができる。
なお、筐体10内部のアルゴン分圧の好適な範囲は、1×10−7Pa以上1×10−4Pa以下である。但し、導入するアルゴンガス中に含まれる水及び窒素ガスの分圧が1×10−8Pa以下であれば、アルゴン分圧は1×10−3Pa以下でもよい。
図13は、筐体10の内部を超高真空(10−8Pa)まで排気した後、第2導入ステップにおいて筐体10内の圧力が10−4Paになるようにアルゴンガスを導入し続けた場合(グラフG51)、及び、筐体10内の圧力が10−3Paになるようにアルゴンガスを導入し続けた場合(グラフG52)のそれぞれにおける、液体金属陰極11から放出される電流量の時間変化を測定した結果を示すグラフである。なお、図13において、縦軸は放出電流量(μA)を示し、横軸は時間(秒)を示している。
図13に示されるように、筐体10内の圧力が10−4Paになるようにアルゴンガスを導入し続けた場合(グラフG51)には、筐体10内の圧力が10−3Paになるようにアルゴンガスを導入し続けた場合(グラフG52)と比較して、長時間にわたって放出電流量が一定値で推移し、安定していることがわかる。このことから、筐体10内の圧力が10−4Pa以下となるようにアルゴンガスを導入することにより、リチウム11bから放出される電流量を更に安定させ得ることが明らかとなった。
また、発明者は、筐体10内部に含まれる水及び窒素ガスによる影響を調べるために、第2導入ステップ、つまり筐体10内が所定の全圧力になるようにアルゴンガスを導入し続けた場合における筐体10内の全圧力を1×10−7Pa、1×10−6Pa、1×10−5Pa、1×10−4Pa、及び1×10−3Paとした場合のそれぞれにおける窒素分圧及び水分圧を計測した。図14は、その結果を示す図表である。
図14に示されるように、筐体10内の圧力が10−5Paとなるようにアルゴンガスを導入した場合、10−6Pa以下の場合と比較して水及び窒素ガスの各分圧が増加していることがわかる。これは、筐体10内へアルゴンガスを導入すると、液体リチウムに対して活性である窒素ガスや水分も同時に導入されてしまうからである。そして、図13に示されたように、筐体10内の圧力が10−4Pa以下になるようにアルゴンガスを導入し続けた場合には放出電流量が安定しており、このときの水及び窒素ガスの各分圧がそれぞれ1×10−7Paより小さいことから、水及び窒素ガスの各分圧が1×10−7Pa以下であれば、リチウム11bから放出される電流量を安定させ得ると考えられる。また、図8(a)のグラフG11に示されたように、筐体10内の圧力が10−5Pa以下になるようにアルゴンガスを導入し続けた場合であれば放出電流量が更に安定し、このときの水及び窒素ガスの各分圧がそれぞれ5×10−8Paより小さいことから、水及び窒素ガスの各分圧が5×10−8Pa以下であれば、リチウム11bから放出される電流量を更に安定させ得ると考えられる。
なお、図13のグラフG52に示されたように、筐体10内の圧力を10−3Paとした場合に放出電流量が安定しなかったのも、水及び窒素ガスの各分圧が図14に示されるように大きな値となっていたことによるものであると考えられる。
また、上述した第1及び第3の方法のように、電子発生方法は、筐体10の内部にアルゴンを導入する第1導入ステップと、筐体10の内部を排気する排気ステップとを複数回繰り返し行うことが好ましい。これにより、筐体10の内部に残留する窒素、水、二酸化炭素、及び酸素といった大気中の成分をより少なくすることでアルゴン分圧を高め、リチウム11bの固相化を効果的に抑えることができる。
また、本実施形態のように、筐体10は、液体金属陰極11を収容する電子銃室10aと、この電子銃室10aとの間を電子が通過するように仕切られた電子光学系室10cとを有することが好ましく、第1及び第2の方法の第2導入ステップにおいて、電子銃室10aに設けられたアルゴン導入口10gから筐体10の内部にアルゴンを導入することが好ましい。これにより、液体金属陰極11の周囲のアルゴン分圧を高めることができる。また、本実施形態においてはアルゴン導入口10gの中心線は導入管24の中心線でもあるので、アルゴン導入口10gに到るアルゴンガスの流れに乱れが生じることなく、よりスムーズにアルゴンガスを液体金属陰極11の周囲に導くことができる。なお、第1ないし第4の方法の第1導入ステップにおいて、アルゴン導入口10gから筐体10の内部にアルゴンを導入することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態では液体金属陰極11にリチウム11bを使用しているが、リチウムは、例えばガリウムといった他の金属と比較して、電子放出源として極めて有用である。その理由は次の通りである。リチウムは、ガリウム等と比べて、下地(固体電極)を構成するタングステンとの濡れ性が良く、かつ表面張力が小さいので、より薄い膜状とすることができる。従って、図3(b)に示したテーラーコーン11cを形成するために必要な液体リチウムの量が少なくて済み、また、テーラーコーン11cの幾何学的寸法を小さくできるので、DC動作が可能となる。これに対し、ガリウムはタングステンとの濡れ性が悪く、表面張力が大きい。従って、テーラーコーン11cの寸法が大きくなり、放電を起こして動作不能となるか、或いは動作しても大電流のパルスモードでしか動作できない。
また、電子発生方法がX線源に使用される場合、電子放出陰極として放出電流が大きいものが求められるので、電子放出陰極の仕事関数は低いことが好ましい。ガリウムの仕事関数が4.1eVであるのに対し、リチウムの仕事関数は2.4eVと低い。従って、液体金属陰極11にリチウム11bを使用することにより、大きな放出電流(例えば、DC動作での大電流)を実現することができる。
また、本実施形態では筐体10に導入するガスとしてアルゴンガスを使用しているが、アルゴンは、例えばヘリウムやネオンと比較して、原子半径や質量が大きいため、衝突断面積や運動量が大きく、窒素を排気する能力が優れている。また、他の希ガスと比較すると、アルゴンの絶縁耐力は高い。従って、窒素の分圧を下げることが重要な、リチウムを用いた電子源において、より安定して高い出力を得るためには、アルゴンガスが好適である。
図15は、上述した電子発生方法に好適に使用される電子顕微鏡2の構成を示す図である。図15に示される電子顕微鏡2が備える電子線発生装置2Aと図1に示したX線発生装置1Aとは、筐体の構成が互いに異なる。すなわち、電子線発生装置2Aが備える筐体40は、電子銃室(第一室)40a、中間室40b、及び試料室(第二室)40cを有する。電子銃室40aは、電子銃の液体金属陰極11、引出電極12、及びコンデンサレンズ13を収容している。中間室40bは、電子銃室40aと試料室40cとの間に配置されている。電子銃室40aと中間室40bとの間の境界壁には開口が形成されており、該開口にはコンデンサ絞り14が配置されている。中間室40bと試料室40cとの間の境界壁には開口が形成されており、該開口には仕切り弁15が配置されている。すなわち、試料室40cは、コンデンサ絞り14、中間室40b及び仕切り弁15を介して電子ビームEが通過するように、境界壁によって電子銃室40aと仕切られている。試料室40cは、図1に示した電子光学系室10cと同様に、ビームアライメントコイル16、対物絞り17、及び対物レンズ18を収容している。また、試料室40cには、これらに加えて、試料台41、二次電子検出器42、及びX線検出器43が設置されている。試料台41は電子ビームEの中心軸上に設置されており、二次電子検出器42及びX線検出器43は、試料台41へ向けて設置されている。対物レンズ18は、試料台41へ向けて電子ビームEを集束する。
電子銃室40a、中間室40b、及び試料室40cは、気密性が高められた真空容器40dを構成する。電子銃室40aの側壁には、真空排気のための排気口40fと、アルゴンガスを電子銃室40aに供給するためのアルゴン導入口(第1のアルゴン導入口)40gとが設けられている。排気口40fには排気管23が取り付けられており、アルゴン導入口40gには導入管24が取り付けられている。電子銃室40a内の電子放出方向におけるアルゴン導入口40gの位置は、該電子放出方向における液体金属陰極11の位置と略一致していることが好ましい。つまり、アルゴン導入口40g(導入管24)の中心軸線の延長線上に液体金属陰極11が位置するように、導入管24及び液体金属陰極11が配置されることが好ましい。
また、試料室40cの側壁には、真空排気のための排気口40hと、アルゴンガスを試料室40cに供給するためのアルゴン導入口(第2のアルゴン導入口)40iとが設けられている。このように、試料室40cは、アルゴン導入口40gとは別の位置に設けられたアルゴン導入口40iを有する。排気口40hには排気管25が取り付けられており、アルゴン導入口40iには導入管26が取り付けられている。排気管23,25の先には排気ポンプが接続される。導入管24はバルブ28を介してアルゴンガス供給源27に接続されており、導入管26はバルブ29を介してアルゴンガス供給源27に接続されている。
上述した電子発生方法は、このような構成を備える電子顕微鏡2においても好適に使用できる。すなわち、筐体40(真空容器40d)の内部にアルゴンを導入し、その後、真空容器40dの内部を排気することによって、アルゴンを含有する雰囲気を好適に実現できる。そして、このような雰囲気下で液体金属陰極11のリチウムから電子ビームEを放出させることにより、放出電流量を格段に安定させることができる。
本発明の電子発生方法は、例えば、X線による非破壊検査に使用できる。X線による非破壊検査が必要となる半導体デバイスの製造プロセスでは、線幅が数十ナノメートルの回路パターンの量産化が行われている。また、検査の分解能が数ナノメートル〜数十ナノメートルに達すれば、ナノテクノロジーにおいて使用されている様々な先端材料の特徴的な構造や化学結合状態、或いは生物細胞内部のたんぱく質の分布を直接観察できる。
ナノオーダーの分解能をもつX線源には、高い放射角電流密度と微小なソースサイズとを実現できる電子源が必要となる。液体リチウムによるテーラーコーンを用いた電子源によれば、高輝度陰極として知られるZrO/W陰極より2桁高い放射角電流密度を実現できる。また、ナノオーダーの電子ソースサイズで、明るいX線画像を撮るために必要な数百マイクロアンペアの電流値を得ることができる。以上のことから、液体金属陰極に液体リチウムを用いた電子発生方法は、X線源の分解能をナノメートルサイズまで向上させるために有益である。
1…X線検査装置、1A…X線発生装置、2…電子顕微鏡、2A…電子線発生装置、10…筐体、10a…電子銃室、10b…中間室、10c…電子光学系室、10d…検査室、10f,10h…排気口、10g…(第1の)アルゴン導入口、10i…(第2の)アルゴン導入口、11…液体金属陰極、11a…固体電極、11b…リチウム、11c…テーラーコーン、12…引出電極、13…コンデンサレンズ、14…コンデンサ絞り、15…仕切り弁、16…ビームアライメントコイル、17…対物絞り、18…対物レンズ、19…ターゲット、20…ベリリウム窓材、21…被検査試料、22…X線カメラ、23,25…排気管、24,26…導入管、27…アルゴンガス供給源、28,29…バルブ、41…試料台、42…二次電子検出器、43…X線検出器、E…電子ビーム、F…電界応力、S…表面張力。

Claims (10)

  1. 筐体の内部にアルゴンを導入する第1導入ステップと、
    前記筐体の内部を排気する排気ステップと、
    前記排気ステップにより排気された後のアルゴン含有雰囲気下で、前記筐体の内部に配置された電極の表面を覆う液状のリチウムから電子を放出させる電子放出ステップと
    を備えることを特徴とする、電子発生方法。
  2. 前記筐体の内部が所定の圧力に近づくように前記筐体の内部にアルゴンを導入する第2導入ステップを、前記排気ステップと前記電子放出ステップとの間に更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の電子発生方法。
  3. 前記所定の圧力が1×10−4Pa以下であることを特徴とする、請求項2に記載の電子発生方法。
  4. 前記第1導入ステップと前記排気ステップとを複数回繰り返し行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の電子発生方法。
  5. 前記筐体が、前記電極を収容している電子銃室と、該電子銃室との間を電子が通過するように仕切られた第二室とを有しており、
    前記第1導入ステップ及び前記第2導入ステップのうち少なくとも一方において、前記電子銃室に設けられた第1のアルゴン導入口から前記筐体の内部にアルゴンを導入することを特徴とする、請求項2または3に記載の電子発生方法。
  6. 前記第1のアルゴン導入口の中心軸線の延長上に前記リチウムを配置することを特徴とする、請求項に記載の電子発生方法。
  7. 前記第1導入ステップにおいて、前記第1のアルゴン導入口、及び該第1のアルゴン導入口とは別の位置に設けられた第2のアルゴン導入口から前記筐体の内部にアルゴンを導入することを特徴とする、請求項またはに記載の電子発生方法。
  8. 前記第2のアルゴン導入口を前記第二室に設けることを特徴とする、請求項に記載の電子発生方法。
  9. 前記電子放出ステップの前記アルゴン含有雰囲気における窒素分圧及び水分圧それぞれが1×10−7Pa以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子発生方法。
  10. 前記電子放出ステップの前記アルゴン含有雰囲気における窒素分圧及び水分圧それぞれが5×10−8Pa以下であることを特徴とする、請求項9に記載の電子発生方法。
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