以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明が繰返さない。
図1は、本発明の実施の形態による充電制御装置が適用される電動車両の代表例として示されるハイブリッド車両1の概略構成図である。なお、電動車両は、ハイブリッド車両、電気自動車や燃料電池車両等の電気エネルギによって車両駆動力を発生する自動車をいうものとする。
図1を参照して、ハイブリッド車両1は、エンジンとモータとを併用する車両である。ハイブリッド車両1は、前輪20R,20Lと、後輪22R,22Lと、エンジン2と、プラネタリギヤ16と、ディファレンシャルギヤ18と、ギヤ4,6と、制御装置14とを備える。
ハイブリッド車両1は、さらに、車両後方に配置されるバッテリBと、バッテリBの充電状態を監視する監視ユニット10と、バッテリBの出力する直流電力を昇圧する昇圧ユニット32と、昇圧ユニット32との間で直流電力を授受するインバータ36と、プラネタリギヤ16を介してエンジン2と結合され主として発電を行なうモータジェネレータMG1と、回転軸がプラネタリギヤ16に接続されるモータジェネレータMG2とを備える。インバータ36は、モータジェネレータMG1,MG2に接続され、交流電力と昇圧ユニット32からの直流電力との変換を行なう。
プラネタリギヤ16は、第1〜第3の回転軸を有する。第1の回転軸はエンジン2に接続され、第2の回転軸はモータジェネレータMG1に接続され、第3の回転軸はモータジェネレータMG2に接続される。
この第3の回転軸にはギヤ4が取り付けられ、このギヤ4はギヤ6を駆動することにより、ディファレンシャルギヤ18に動力を伝達する。ディファレンシャルギヤ18は、ギヤ6から受ける動力を前輪20R,20Lに伝達するとともに、ギヤ6,4を介して前輪20R,20Lの回転力をプラネタリギヤ16の第3の回転軸に伝達する。
プラネタリギヤ16は、エンジン2と、モータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分割する役割を果たす。すなわち、プラネタリギヤ16の3つの回転軸のうち2つの回転軸の回転が定まれば、残る1つの回転軸の回転が強制的に決定される。従って、エンジン2を最も効率のよい領域で動作させつつ、モータジェネレータMG1の発電量を制御してモータジェネレータMG2を駆動させることにより車速の制御を行ない、全体としてエネルギ効率のよい自動車を実現している。
なお、モータジェネレータMG2の回転を減速してプラネタリギヤ16に伝達する減速ギヤを設けてもよく、その減速ギヤの減速比を変更可能にした変速ギヤを設けてもよい。
バッテリBは、再充電可能な蓄電装置の代表例であり、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池により構成される。バッテリBは、直流電力を昇圧ユニット32に供給するとともに、昇圧ユニット32からの直流電力によって充電される。バッテリBは、組電池であり、直列に接続された複数の電池ブロックB0〜Bnを含む。電池ブロックB0〜Bnの各々は、直列に接続された複数の電池セルを含む。
監視ユニット10は、電圧センサ11と、電流センサ12と、異常検知部13とを含む。電圧センサ11は、複数の電池ブロックB0〜Bnのそれぞれの電圧値V0〜Vn(端子間電圧)を検出して、その検出結果を制御装置14に出力する。電流センサ12は、バッテリBに流れる電流値IBを検出して、その検出結果を制御装置14に出力する。異常検知部13は、電池ブロックB0〜Bnに含まれる電池セルのいずれかの電圧値が予め定められた範囲の上限値を超える場合には、フラグFLGをオン状態にして制御装置14に異常通知を行なう。
昇圧ユニット32は、バッテリBから受ける直流電圧を昇圧してその昇圧された直流電圧をインバータ36に供給する。インバータ36は、供給された直流電圧を交流電圧に変換してエンジン始動時にはモータジェネレータMG1を駆動制御する。また、エンジン始動後には、モータジェネレータMG1が発電した交流電力はインバータ36によって直流電力に変換され、昇圧ユニット32によってバッテリBの充電に適切な電圧に変換されてバッテリBが充電される。
また、インバータ36は、モータジェネレータMG2を駆動する。モータジェネレータMG2は、エンジン2を補助して前輪20R,20Lを駆動する。制動時には、モータジェネレータMG2は回生運転を行ない、車輪の回転エネルギを電気エネルギに変換する。得られた電気エネルギは、インバータ36および昇圧ユニット32を経由してバッテリBに戻される。昇圧ユニット32とバッテリBとの間には車両運転時にバッテリBと昇圧ユニット32とを接続するシステムメインリレー28,30が設けられる。車両非運転時にはシステムメインリレー28,30が非導通状態となり高電圧が遮断される。
制御装置14は、運転者の指示および車両に取り付けられた各種センサからの出力に応じてエンジン2、インバータ36、昇圧ユニット32およびシステムメインリレー28,30の制御を行なうとともに、バッテリBの充放電制御を行なう。
図2は、図1の制御装置14における制御構造を示すブロック図である。図2に示す各機能ブロックは、代表的にECU30が予め格納されたプログラムを実行することで実現されるが、その機能の一部または全部を専用のハードウェアとして実装してもよい。
図2を参照して、制御装置14は、ハイブリッド制御部52と、エンジン制御部58とを含む。
エンジン制御部58は、エンジン2のスロットル制御を行なうとともに、エンジン2のエンジン回転数Neを検出してハイブリッド制御部52に送信する。
ハイブリッド制御部52は、アクセルポジションセンサ42の出力信号Accと車速センサ44で検出された車速Vとに基づいて、運転者の要求する出力(要求パワー)を算出する。ハイブリッド制御部52は、この運転者の要求パワーに加え、バッテリBの充電状態を考慮して必要な駆動力(トータルパワー)を算出し、エンジン2に要求する回転数およびエンジン2に要求するパワーをさらに算出する。
ハイブリッド制御部52は、エンジン制御部58に要求回転数および要求パワーを送信し、エンジン制御部58にエンジン2のスロットル制御を行なわせる。
エンジン2の駆動力は、車輪を直接駆動する分とモータジェネレータMG1を駆動する分とに分配される。モータジェネレータMG2の駆動力とエンジン2の直接駆動分との合計が車両の駆動力となる。
ハイブリッド制御部52は、電圧センサ11から受ける電圧値V0〜Vn、および、電流センサ12から受ける電流値IB等に基づきバッテリBの充電状態(SOC)を算出する。ハイブリッド制御部52は、算出したSOCに基づいて昇圧ユニット32およびインバータ36を制御してバッテリBを充放電させる。ハイブリッド制御部52は、フラグFLGがオン状態になると、後述する充電制御を実行する。
図3は、バッテリBおよびその周辺の構成を詳細に説明するための図である。図3を参照して、バッテリBは直列に接続された複数の電池ブロックB0〜Bnを含む。電池ブロックB0は、直列に接続される複数の電池セルCLを含む。電池ブロックB1〜Bnは、電池ブロックB0と同様の構成を有するので、以後の説明は繰り返さない。
電圧センサ11は、電池ブロックB0〜Bnのそれぞれに対応して設けられ、対応する電池ブロックの電圧を検知する電圧検知部710〜71nを含む。電圧検知部710〜71nは、電圧値V0〜Vnをそれぞれ出力する。
異常検知部13は、電池ブロックB0〜Bnのそれぞれに対応して設けられる過充電/過放電検知部750〜75nと、過充電/過放電検知部750〜75nの出力をOR演算(論理和演算)するOR回路76とを含む。
過充電/過放電検知部750は、複数の電池セルCLに対応してそれぞれ設けられる複数の異常判定部78を含む。複数の異常判定部78は、対応する電池セルCLの電圧値が上限値を上回る場合、および、下限値を下回る場合には、その電池セルが異常であることを示すために、出力の論理値を「0」から「1」に変化させる。過充電/過放電検知部751〜75nは、過充電/過放電検知部750と同様の構成を有するので以後の説明は繰り返さない。
OR回路76は、複数の異常判定部78のいずれかの出力の論理値が「1」の場合、フラグFLGをオン(フラグFLGの論理値を「1」に設定)し、そうでない場合、すなわち、複数の異常判定部78の出力の論理値がすべて「0」の場合にはフラグFLGをオフ(フラグFLGの論理値を「0」に設定)する。
図4は、バッテリBの充電制御を説明するための図である。図4においてグラフの縦軸はセル電圧を示し、グラフの横軸は時間を示す。電圧値BVn_maxcは電圧値V0〜Vnのうちの最大の電圧値をセル数で割ることにより求められるセル電圧の平均値である。電圧値VMAXは、電圧BVn_maxcに1つの電池セルあたりのオフセット値を加算することにより得られる電圧値である。時刻t1以前はオフセット値が0であるので、電圧値VMAXは電圧値BVn_maxcに等しい。なお、バッテリBの充電時には、オフセット値は正の値に設定される。
バッテリBの充電に伴ないセル電圧は上昇する。電圧値Vcell_maxは複数の電池セルの電圧値のうちの最大値である。ただし本実施の形態では電圧値Vcell_maxは測定されない(電圧値は電池ブロック単位で測定される)。時刻t1において電圧値Vcell_maxが上限値(4.25(V))に達するとフラグFLGがオンする。時刻t1において、ハイブリッド制御部52(図2)は、上限値(4.25(V))と電圧値BVn_maxcとの差である電圧差ΔVtagを算出する。電圧差ΔVtagは、1つの電池セルあたりのオフセット値に相当する。
ハイブリッド制御部52は、ΔVtag×(1つの電池ブロックあたりの電池セルの個数)により求められるオフセット値を電圧値V0〜Vnに加算して、電圧値V0A〜VnAを算出する。そして、ハイブリッド制御部52は、電圧値V0A〜VnAに基づいてバッテリBの充電制御を行なう。ただし、ハイブリッド制御部52は、電圧差ΔVtagが大きすぎる(電圧値VMAXが4.25Vを超えている)と判定した場合には、電圧差ΔVtagを少しずつ小さくする。時刻t1〜t2の期間は、バッテリBへの充電電力が徐々に小さくなるため、電圧値VMAXは一旦上昇して下降する。
時刻t2〜t3の期間ではフラグFLGがオン状態であり、かつ、電圧値BVn_maxcが電圧値Vtg_mxより小さいため、ハイブリッド制御部52は、電圧差ΔVtagの算出、および電圧値V0〜Vnのオフセット値の算出を継続する。電圧値ΔVtagが所定の期間ごとに算出されるので電圧値VMAXが更新される。ただし、ΔVtag=(4.25−BVn_maxc)、かつ、VMAX=BVn_maxc+ΔVtagであるため、電圧値VMAXは4.25(V)となる。
時刻t2〜t3の期間では、フラグFLGはオン状態であり、かつ、電圧値BVn_maxcが電圧値Vtg_mxより小さいため、ハイブリッド制御部52は、電圧差ΔVtagの算出、およびオフセット値の算出を行なう。時刻t3〜t4の期間でも、電圧差ΔVtagが所定の期間ごとに算出される。ただし、電圧差ΔVtagには上限が設定されているため、時刻t3において電圧差ΔVtagが予め定められた最大値ΔVmax(たとえば0.2V)に達する。以後は電圧値BVn_maxcと電圧値VMAXとの差が最大値ΔVmaxに保たれたまま、電圧値BVn_maxc,VMAXが低下する。
ここで、電圧差ΔVtagに上限がなければ、電圧値VMAXが4.25Vのまま保たれるため、バッテリBに充電される電力の制限値が小さいままとなる。この場合には車両の制動時にモータジェネレータの回生運転による制動力も小さくなるとともに、モータジェネレータの回生運転により得られるエネルギ量が少なくなる。これに対して、電圧差ΔVtagに上限を設けることにより、電圧値BVn_maxcの低下に応じて電圧値VMAXが低下するので、電圧値BVn_maxcが低下するとバッテリBに充電される電力を増やすことができる。
時刻t4以後においては、ハイブリッド制御部52は、オフセット値を少しずつ減らして0に近づける。これにより、電圧値VMAXは電圧値BVn_maxcに少しずつ近づく。
時刻t4において電圧値Vcell_maxが、所定の電圧値(4.25Vよりも少し低い値)に達すると、フラグFLGがオフ状態になる。フラグFLGをオフするときのセル電圧値をフラグFLGがオンするときのセル電圧値と異ならせることにより、セル電圧値が上限値付近で微小に変動した場合にもフラグFLGをオン状態またはオフ状態のいずれかに確定できる。
オフセット値を0にすることで電圧値VMAXの最大範囲が予め設定された範囲(フラグFLGがオフ状態となる電圧値の範囲)と等しくなるようにバッテリBの充電制御を行なうことができるので、バッテリBの能力を有効に活用することができる。
なお、フラグFLGがオフ状態になると同時にオフセット値を0にする(電圧差ΔVttagを0にする)と、バッテリBに入力される電力の制限値が不連続に変化することによって昇圧ユニット32やインバータ36の動作が急に変化する虞がある。したがって、ハイブリッド制御部52は、フラグFLGがオフ状態になると、一定の時間をかけて電圧差ΔVtagを0に近づける。
図5は、図4に示す充電制御処理を説明するフローチャートである。図5に示すフローチャートの各ステップは、ハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
図5を参照して、ステップS1において、ハイブリッド制御部52は、異常検知部13からのフラグFLGに基づき、電池セルの過充電が発生したか否かを判定する。フラグFLGがオン状態の場合、すなわち、電池セルの過充電が発生した場合(ステップS1においてYES)には、ハイブリッド制御部52は、ステップS2により、電圧値VMAXが4.25V以下か否かを判定する。一方、フラグFLGがオフ状態の場合、すなわち、過充電が生じていない場合(ステップS1においてNO)には、後述するステップS9の処理が実行される。
電圧値VMAXが4.25V以下の場合(ステップS2においてYES)には、ハイブリッド制御部52は、ステップS3により、電圧差ΔVtagを算出する。なお、電圧値VMAXが4.25Vを超える場合(ステップS2においてNO)、後述するステップS9の処理が実行される。
ステップS5では、ハイブリッド制御部52は、ステップS3で算出した電圧差ΔVtagが最大値ΔVmax以下であるか否かを判定する。電圧差ΔVtagが最大値ΔVmax以下の場合(ステップS5においてYES)、ステップS6により、電圧差ΔVtagはステップS3における算出値に設定される。一方、ステップS3で算出した電圧差ΔVtagが最大値ΔVmaxより大きい場合(ステップS5においてNO)、ステップS7により、電圧差ΔVtagは最大値ΔVmaxに設定される。ステップS6,S7のいずれかの処理が終了すると、ハイブリッド制御部52は、ステップS8により、電圧差ΔVtagと電池ブロックのセル数とにより定まるオフセット値を電圧値V0〜Vnに加算するVMAXシフト処理を行なう。ハイブリッド制御部52は、VMAXシフト処理により算出された電圧値V0A〜VnAに基づいて充電制御を行なう。
ステップS9において、ハイブリッド制御部52は、電圧値VMAXが電圧値BVn_maxcより大きいか否かを判定する。電圧値VMAXが電圧値BVn_maxc以下の場合(ステップS9においてNO)、全体の処理は終了する。一方、電圧値VMAXが電圧値BVn_maxcより大きい場合(ステップS9においてYES)、ステップS10により、ハイブリッド制御部52は、解除処理を実行する。なお、このときも、ハイブリッド制御部52は、電圧値V0A〜VnAに基づいて充電制御を行なう。ステップS10の処理が終了すると、全体の処理が終了する。
以上のように、本実施の形態では、異常検知部13が複数の電池セルの少なくとも1つに過充電が発生したことを検知して、フラグFLGをオンにすると、電圧センサ11の検出値にオフセット値を加えた値に基づいてバッテリBの充電を制御する。これにより、バッテリ電圧を電池ブロック単位で検知していてもセル単位で電圧値を制御することが可能となる。これにより、電池セル単位で電圧センサを設けることなく、各電池セルの過充電による劣化を抑制することができる。
ここで、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両1において、バッテリBは、車両のシステム起動状態において、エンジン2の作動により生じる動力を受けて充電可能であるとともに、車両のシステム停止中において、充電インレット42(図6)を介して外部電源と電気的に接続されて充電可能に構成されている。以下の説明では、車両の走行中におけるバッテリBの充電動作と区別するために、外部電源によるバッテリBの充電を「外部充電」とも記す。
(車載バッテリの外部充電)
図6は、本実施の形態に係るハイブリッド車両1に搭載されたバッテリBを外部充電するときの全体構成図である。
図6を参照して、ハイブリッド車両1は、充電インレット42と、充電器40と、リレー46とを備える。
充電インレット42は、外部電源の一例である交流電源60に接続されるコネクタ62と接続可能に構成される。交流電源60は、たとえば商用電源である。充電インレット42は、交流電源60から供給される交流電力を受ける。なお、充電インレット42を介してハイブリッド車両1に供給される外部電源は、住宅の屋根などに設置された太陽電池パネルによる発電電力などであってもよい。
充電器40は、制御装置14から受ける制御信号PWDに従って、交流電源60から供給される交流電力を所定の充電電圧(直流)に変換する。そして、充電器40によって電圧変換された直流電力は、リレー46を介してバッテリBに供給される。充電器40は、たとえばAC/DCコンバータによって構成される。リレー46は、外部充電時にオンし、外部充電の非実行時はオフする。
制御装置14は、外部充電時には、監視ユニット10内部の電圧センサ11から複数の電池ブロックB0〜Bnのそれぞれの電圧V0〜Vnを受け、電流センサ12からバッテリBに流れる電流IBを受け、異常検知部13からフラグFLGを受ける。そして、制御装置14は、これらの入力情報に基づいて、充電器40を制御するための制御信号PWDを生成して充電器40へ出力する。
図7は、図6に示した制御装置14におけるハイブリッド制御部52の機能ブロック図である。
図7を参照して、ハイブリッド制御部52は、オフセット加算部520と、電力演算部522と、充電制御部524と、制御信号生成部526とを含む。
オフセット加算部520は、電圧センサ11から電圧値V0〜VnおよびフラグFLGを受ける。オフセット加算部520は、ΔVtag×(1つの電池ブロックあたりの電池セルの個数)により求められるオフセット値を電圧値V0〜Vnに加算して、電圧値V0A〜VnAを算出する。
電力演算部522は、電流値IBを受けるとともに、オフセット加算部520から電圧値V0A〜VnAを受けると、これらの入力値に基づいてバッテリBへの充電電力を示す電力PBを算出する。電力演算部522は、算出された電力PBを充電制御部524へ出力する。
充電制御部524は、電力演算部522から受ける電力PBに基づいて、バッテリBを所定の満充電状態(たとえばSOC=80%)に充電するための満充電制御を実行する。具体的には、充電制御部524は、電力演算部522によって算出される電力PBに基づいて、充電器40からバッテリBへ供給される充電電力が所定の一定値となるように、供給電力の増加/低減を指示する指令を制御信号生成部526へ出力する。
そして、充電制御部524は、バッテリBの充電電力が一定値のときの電圧値VMAXに基づいてバッテリBのSOCを後述の方法により推定し、SOCが所定の満充電状態に達すると、充電の停止を指示する指令を制御信号生成部526へ出力する。なお、電圧値VMAXは、図4で示したように、電圧BVn_maxc(電圧値V0〜Vnのうちの最大の電圧値をセル数で割ることにより求められるセル電圧の平均値に相当)に1つの電池セルあたりのオフセット量を加算することにより得られる電圧値である。電圧値VMAXに基づいて満充電制御を行なうことにより、バッテリBの外部充電時においても各電池セルの過充電による劣化を抑制することができる。
制御信号生成部526は、充電制御部524から受ける指令に従って制御信号PWDを生成し、その生成された制御信号PWDを充電器40へ出力する。
以上に示す構成において、バッテリBの充電電力が一定値のときの電圧値VMAXは、バッテリBに電流が流れている状態での電圧値V0〜Vnに基づいた電圧値である。バッテリBに電流が流れている状態での電圧値V0〜Vnは、閉回路電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)に相当する。これに対して、バッテリBに電流が流れていない状態での電圧値V0〜Vnは、開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)に相当する。バッテリBには一般的に内部抵抗Rが存在しており、バッテリBに電流が流れている状態か否かによって電圧値が異なる値となる。詳細には、バッテリBのOCVとCCVとの間には、理論上、CCV=OCV−Ib×Rの関係式が成立する。すなわち、充電時におけるバッテリBのCCVは、OCVよりも(Ib×R)だけ高くなる。
図8は、バッテリBのOCVとSOCとの関係を示す図である。図8を参照して、バッテリBのSOCは、バッテリBのOCVと一意の関係にある。したがって、所定の満充電状態をSFとすると、SOC=SFに対応するVFにOCVが達したときに、SOCがSFに達したと判定することができる。
図9は、バッテリBを外部充電しているときのバッテリBのOCVとCCVとの関係を示す図である。図9を参照して、外部充電の実行中に電圧センサ11により検出される電圧V0〜VnはCCVであり、電圧値VMAXは複数の電池ブロックB0〜BnのCCVに基づいて算出される。よって、電圧値VMAXは、複数の電池ブロックB0〜BnのOCVよりも電圧差(Ib×R)だけ高くなる。
本実施の形態では、充電電力が一定値のときのΔVを予め求めておき、電圧値VMAXに基づいてOCVを推定する。具体的には、SOC=SFに対応するOCV(図中の電圧値VF(OCV)に相当)に対して電圧差(Ib×R)を加算した電圧値(図中の電圧値VF(CCV)に相当)を、バッテリBが満充電状態となっているか否かを判定するための判定値に設定する。そして、電圧値VMAXが判定値VF(CCV)に達したときには、満充電判定カウンタを起動する。満充電判定カウンタは、充電制御部524が内蔵しているカウンタであり、電圧値VMAXが判定値VF(CCV)に達している状態が継続している時間を計時するために用いられる。一定時間ごとに電圧値VMAXが判定値VF(CCV)に達しているか否かが判定され、電圧値VMAXが判定値VF(CCV)に達している場合には、カウント値に1が加算される。そして、カウント値が所定の満充電閾値に達したときには、バッテリBのSOCが所定の満充電状態SFに達したものと判定されて外部充電が終了する。
ここで、図9において、電圧値VMAXは、充電器40内部のAC/DCコンバータのスイッチング動作による変動(リプル)を含んでいる。このリプルは、AC/DCコンバータを構成するスイッチング素子のスイッチング周波数に依存する。なお、AC/DCコンバータのスイッチング周波数は、外部電源である交流電源60から供給される交流電力の周波数に応じて変化する。そして、電圧値VMAXがリプルを含んでいると、CCVである電圧値VMAXに基づいてOCVを推定することが困難となる。そのため、バッテリBのOCVが電圧値VF(OCV)に達するタイミングと、バッテリBのSOCが所定の満充電状態に達したものと判定されるタイミングとの間のずれが大きくなり、バッテリBのSOCが所定の満充電状態に達したと判定されたタイミングでは、バッテリBのOCVの電圧値VF(OCV)に対する偏差ΔVが大きくなる虞がある。この結果、バッテリBの満充電制御を精度良く行なうことができない虞がある。
そこで、このような充電器40の動作に起因したリプルの影響を低減するため、外部充電の実行時には、電圧値VMAXに対して「なまし処理」を施す。「なまし処理」とは、所定のサンプリング周期ごとにサンプリングされる複数の電圧値VMAXの間の散らばりを平均化するための処理である。この処理により、電圧値VMAXの変化を緩やかにすることができる。図10に、図9に示す電圧値VMAX(図中の点線)に対してなまし処理を施した後の電圧値VMAX(図中の実線)を示す。図10を参照して、なまし処理を施した後の電圧値VMAXが判定値VF(CCV)に達したときに満充電判定カウンタが起動する。ただし、図10では、図9と比較して電圧値VMAXの変動が少ないために、電圧値VMAXが判定値VF(CCV)を挟んで変化するのが抑えられている。これにより、バッテリBのOCVが電圧値VF(OCV)に達するタイミングと、バッテリBのSOCが所定の満充電状態に達したものと判定されるタイミングとの間のずれが小さくなっている。その結果、バッテリBのSOCが所定の満充電状態に達したと判定されたタイミングにおいて、バッテリBのOCVの電圧値VF(OCV)に対する偏差ΔVを低減できるため、電圧値VMAXからバッテリBのOCVを推定する精度を高めることができる。
以上に述べたように、本実施の形態では、バッテリBのSOCが所定の満充電状態に達しているか否かの判定に電圧値VMAXを用いることにより、各電池セルの過充電を抑制しつつバッテリBの満充電制御を行なうことができる。さらには、この電圧値VMAXになまし処理を施すことにより、電圧値VMAXに重畳したリプルが上記の満充電状態の判定処理に与える影響を低減して、満充電の制御精度を高めることが可能となる。
以下に、図面を参照して、本実施の形態に係る電圧値VMAXのなまし処理の手法について説明する。なまし処理の具体的な手法としては、たとえば移動平均処理や一次遅れ処理を用いることができる。以下では、主に、なまし処理として移動平均処理を用いる場合について説明する。
図11は、電圧値VMAXのなまし処理の手法を説明する概念図である。図11では、交流電源60から供給される交流電力の周波数f=f1のときの電圧値VMAXの波形k1と、交流電源60から供給される交流電力の周波数f=f2のときの電圧値VMAXの波形k2とが例示されている。なお、周波数f2は、周波数f1よりも低い周波数である。たとえば日本国であれば、交流電源60としての商用電源から供給される交流電力の周波数f1,f2は、f1=60Hzおよびf2=50Hzである。図中の波形k1,k2に示される電圧値VMAXはいずれも、充電器40のスイッチング動作によるリプルを含んでいる。このリプルは交流電力の周波数に依存するため、波形k1と波形k2とでは、電圧値VMAXの変動周期が異なっている。
電圧値VMAXのなまし処理において、充電制御部524(図8)は、所定のサンプリング周期で電圧値VMAXをサンプリングする。図11では、1周期前からN周期前までの合計N個の電圧値VMAXの波形を加えた値(=V1+V2+V3+・・・+VN)をNで割った値を平均値として算出する。そして、充電制御部524は、今回周期の電圧値VMAXと、前回周期の実電圧値VMAX♯と、上記平均値とに基づいて、今回周期の実電圧値VMAX♯を算出する。具体的には、充電制御部524は、前回周期の実電圧値VMAX♯と平均値とを所定の比率k:(1−k)で内分した値を、今回周期の実電圧値VMAX♯として算出する。すなわち、VMAX♯(今回周期)は、VMAX♯(前回周期)×(1−k)と平均値×kとを加算した値となる。
このように電圧値VMAXになまし処理を施した値を実電圧値VMAX♯として算出することにより、実電圧値VMAX♯を、リプルの影響が除かれた真のCCVの波形に近づけることができる。なお、なまし処理の強度を大きくするほど、実電圧値VMAX♯は真のCCVの波形に近づいていくので、リプルの影響を受け難くなる。本実施の形態では、移動平均処理に用いる電圧値VMAXのサンプル数をN個よりも多くする。また、なまし処理として一次遅れ処理を行なう場合には、時定数を長くすればよい。
しかしながら、なまし処理の強度を大きくすると、すなわち、移動平均処理に用いる電圧値VMAXのサンプル数を多くすると、真のCCVの変化に対する平均値の応答性が悪くなる。その結果、上記のように各電池セルの過充電を抑制する観点からバッテリBの満充電制御に電圧値VMAXを用いているにも拘らず、バッテリBの充電電力が急激な増加に対する応答が遅れることによって、バッテリBを過充電から十分に保護できなくなる虞がある。したがって、本実施の形態では、充電電力の急激な変化にも対応し得る範囲内で移動平均処理に用いる電圧値VMAXのサンプル数を予め設定しておくものとする。
その一方で、図11に示したように、外部電源から供給される交流電力の周波数に応じて電圧値VMAXの変動周期も異なってくる。そのため、なまし処理の強度が等しい(移動平均処理に用いるサンプル数が等しい)場合であっても、交流電力の周波数の違いに起因して実電圧値VMAX♯と真のCCVとの間のずれにばらつきが生じる可能性がある。これにより、実電圧値VMAX♯から推定されるOCVがばらついてしまうため、所定の満充電状態に達したと判定されたときのバッテリBのSOCにもばらつきが生じることとなる。
このような交流電力の周波数の違いによるSOCのばらつきを低減するため、本実施の形態では、外部電源から供給される交流電力の周波数に応じて移動平均処理に用いる電圧値VMAXのサンプル数を可変に設定するものとする。これにより、交流電力の周波数に拘らず、なまし処理によって実電圧値VMAX♯を真のCCVに近づける。
図12は、図11における充電制御部524の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図12を参照して、充電制御部524は、なまし処理部530と、周波数推定部532と、満充電判定部534と、満充電制御部536とを含む。
満充電制御部536は、電力演算部522(図11)によって算出される電力PBに基づいて、充電器40からバッテリBへ供給される充電電力が所定の一定値となるように、供給電力の増加/低減を指示する指令を制御信号生成部526へ出力する。
周波数推定部532は、オフセット加算部520から出力される電圧値VMAXを受けると、電圧値VMAXを所定のサンプリング周期でサンプリングした値に基づいて、交流電力の周波数を推定する。そして、周波数推定部532は、交流電力の周波数の推定値fをなまし処理部530へ出力する。
なまし処理部530は、オフセット加算部520から出力される電圧値VMAXに対してなまし処理を施した値を実電圧値VMAX♯として算出する。図11で示したように、なまし処理部530は、1周期前からN周期前までの合計N個の電圧値VMAXを加えた値をN個で割った値を平均値として算出する。そして、なまし処理部530は、前回周期の実電圧値VMAX♯と上記の平均値とを所定の比率k:(1−k)で内分した値を、今回周期の実電圧値VMAX♯として算出する。
この移動平均処理において、なまし処理部530は、周波数推定部532から送信される交流電力の周波数の推定値fに応じて、移動平均処理に用いる電圧値VMAXのサンプル数Nを設定する。図13は、交流電力の周波数fと電圧値VMAXのサンプル数Nとの関係を示す図である。図13に示すように、交流電力の周波数ごとに移動平均処理に用いる電圧値VMAXのサンプル数が定められている。なお、図中に示すサンプル数N1,N2は、真のCCVの変化に対する平均値の応答性を考慮しつつリプルの影響を低減できるように、予め実験等によって交流電力の周波数fごとに最適なサンプル数に適合したものである。
なまし処理部530は、図13に示す交流電力の周波数fと電圧値VMAXのサンプル数Nとの関係を予めサンプル数設定用マップとして記憶している。そして、なまし処理部530は、周波数推定部532から交流電力の周波数の推定値fが与えられると、記憶したマップを参照して、対応するサンプル数Nを設定する。なまし処理部530は、設定したサンプル数Nの電圧値VMAXを用いてなまし処理を実行することにより、実電圧値VMAX♯を算出する。
満充電判定部534は、なまし処理部530から与えられる実電圧値VMAX♯と、判定値VF(CCV)とを比較し、実電圧値VMAX♯が判定値VF(CCV)に達したときには、満充電判定カウンタを起動させる。そして、満充電判定カウンタのカウント値が所定の満充電閾値に達したときには、満充電判定部534は、バッテリBのSOCが所定の満充電状態SFに達したものと判定し、充電の停止を指示する指令を制御信号生成部526へ出力する。
以上のような制御構造によって、本実施の形態に従うバッテリBの外部充電が実行される。これらの処理は、次のような処理フローにまとめることができる。
図14は、本発明の実施の形態に従うバッテリBの外部充電に係るフローチャートである。なお、図14に示すフローチャートは、ハイブリッド制御部52において予め格納したプログラムを実行することで実現できる。
図14を参照して、まず、ステップS11により、充電制御部524は、オフセット加算部520から出力される電圧値VMAXを取得すると、電圧値VMAXのなまし処理を実行するために、ステップS12により、電圧値VMAXをサンプリングした値に基づいて、交流電源60から供給される交流電力の周波数fを推定する。このステップS12の処理は、図12における周波数推定部532の機能に対応する。
次に、充電制御部524は、ステップS13により、図13に示すサンプル数設定用マップを参照して、交流電力の周波数の推定値fに対応するサンプル数Nを設定する。そして、充電制御部524は、ステップS14により、設定したサンプル数Nの電圧値VMAXを用いてなまし処理を実行することにより実電圧値VMAX♯を算出する。このステップS13,S14の処理は、図12におけるなまし処理部530の機能に対応する。
次に、充電制御部524は、ステップS15により、実電圧値VMAX♯が判定値VF(CCV)を達したか否かを判定する。実電圧値VMAX♯が判定値VF(CCV)に達した場合(ステップS15においてYES)には、ステップS16により、充電制御部524は、満充電判定カウンタのカウント値に1を加算する。一方、実電圧値VMAX♯が判定値VF(CCV)に達していない場合(ステップS15においてNO)には、充電制御部524は、ステップS17により、満充電判定カウンタのカウント値をリセットする。そして、充電制御部524は、ステップS18により、満充電判定カウンタのカウント値が所定の満充電閾値に達しているか否かを判定する。カウント値が所定の満充電閾値に達していない場合(ステップS18においてNO)には、処理はステップS15に戻される。
一方、カウント値が所定の満充電閾値に達している場合(ステップS18においてYES)には、充電制御部524は、ステップS19により、バッテリBのSOCが所定の満充電状態SFに達したものと判定して、制御信号生成部526に充電の停止を指示することにより、外部充電に係る処理を終了する。
以上のように、本発明の実施の形態によれば、バッテリBのSOCが所定の満充電状態に達しているか否かの判定に、電圧センサ11の検出値にオフセット値を加えた値である電圧値VMAXを用いることにより、各電池セルの過充電を抑制しつつバッテリBの満充電制御を行なうことができる。
また、この電圧値VMAXになまし処理を施すことにより、電圧値VMAXに重畳したリプルが上記の満充電状態の判定処理に与える影響を低減して、満充電の制御精度を高めることが可能となる。
さらに、電圧値VMAXのなまし処理(電圧値VMAXの移動平均処理)に用いる電圧値VMAXのサンプル数を外部電源から供給される交流電力の周波数に応じて可変に設定することにより、交流電力の周波数によらず、なまし処理後の実電圧値VMAX♯を真のCCVに近づけることができるため、所定の満充電状態に対するSOCのばらつきを低減することができる。この結果、満充電の制御精度をさらに向上できる。よって、過充電による劣化を抑制しつつ、EV走行での走行可能距離を拡大することが可能となる。
なお、上述の実施の形態では、本発明に係る充電制御装置が適用される電動車両の代表例としてハイブリッド車両について例示したが、本願発明は、車両外部の交流電源によって充電可能に構成された蓄電装置を搭載した車両に適用することが可能である。たとえば、電気自動車、燃料電池自動車等についても本願発明は適用可能である。また、ハイブリッド車両に適用する場合には、図1の構成とは異なる構成のハイブリッド構成のハイブリッド車両(たとえば、いわゆるシリーズハイブリッド構成や、電気分配式のハイブリッド構成)であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。