JP5740997B2 - 遠赤外線検出素子及び遠赤外線検出装置 - Google Patents

遠赤外線検出素子及び遠赤外線検出装置 Download PDF

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Description

本発明は、遠赤外線検出素子及び遠赤外線検出装置に関する。
近年、防犯用の小型監視カメラや自動車に搭載される暗視カメラなど、暗闇において生体や物体像を画像として認識できる赤外線検出器の開発が急速に進められている。特に、7μm〜15μmの波長領域にある遠赤外線は大気を良く透過し、かつ人体や生体からの黒体輻射に多く含まれる波長領域にあるため、この領域の光を検出できる赤外線センサーは重要になってきている。
赤外線センサーには焦電型、熱起電力型、熱抵抗型など様々な方式があり、様々な素子が実用化されている。しかしながら、それらの多くは熱源を単純に感知するためのセンサーであり、熱源の形状把握や熱源の存在位置を検出できるような画像認識装置として利用できるものは数少ない。
赤外線による画像認識装置としては、ボロメータが良く知られている。近年では、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた小型の熱抵抗型赤外線センサーであるマイクロボロメータが開発され、赤外線撮像素子に多く用いられるようになってきた。しかしながら、マイクロボロメータはMEMS技術でしか用いられない特殊な半導体プロセス技術で形成されるために、初期投資が大きく、素子自体がコスト高になってしまう。また、電気回路を同時に形成するために、電気回路自体の発熱による雑音発生の抑制の課題や、電流を流す金属導電部が熱伝導を大きくするために、それを抑えるための熱的アイソレーションにも課題がある。
そこで、赤外線の受光による温度変化を異なる波長の光によって検出する方式が考案されている。これらは遠赤外線を受けることによる温度上昇による特性の変化を、波長が異なる光で読み取る方式である。このような方式であると、特殊な電子回路設計が必要なく、かつ比較的安価な部品で構成できるために、システム全体の低コスト化を図ることができる。特に、近年のデジタルカメラの普及に伴い、可視光から近赤外の波長に感度を持つCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型やCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサーも、低コスト化が進んできていることからもシステム化することによる高コスト化を避けることができる点で注目されている。
例えば、特許文献1にあるように、誘電体状ブロック上に金属膜及び熱光学効果を有する薄膜を形成し、熱変化によってプラズモン共鳴波長領域がシフトすることを利用した放射温度測定装置が提案されている。しかしながら、この構成では波長分散や角度分散を精密に制御する必要があり、システム化することが困難である。また、全反射を発生させるためには基板がプリズム状又は回折構造を有している必要があり、構造が複雑化するという問題があった。
特許文献2では、多層膜フィルターを細かい画素に分離して、その熱光学効果による変化を近赤外光で読み取る方式である。しかしながら、この方式では遠赤外線の吸収層を新たに設ける必要があるため、成膜とエッチングとを繰り返し行うマイクロボロメータのようなMEMS製作プロセスを必要とし、低コストな生産が難しいという問題がある。
特許文献3では、遠赤外線を吸収する膜に微小な凹凸構造を設けた光学フィルターを用いて、熱による共振ピークのシフトを利用したシステムが提案されている。しかしながら、ここで用いられている共鳴反射構造は原理的に角度分散に弱い。特許文献3ではそれを改善する方法として、片持ち梁を用いた入力角度調整構造等を提案しているが、このような構成では構造が複雑になってしまうという問題がある。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、低コスト生産が比較的容易で角度分散や波長分散に対するトレランスが得られやすい遠赤外線検出素子及び遠赤外線検出装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明における遠赤外線検出素子は、基板に互いに異なる材料からなる第一の層と第二の層とが積層された遠赤外線検出素子において、前記第一の層は遠赤外線を吸収する材料で構成され、前記第二の層の内部には、前記第一の層より屈折率が大なる材料であって、かつ前記遠赤外線とは異なる波長を有する光線に対して共振する微細構造が形成されており、前記微細構造は前記第二の層より小なる屈折率を有する材料で構成され、前記第二の層の面方向において周期的に配置されており、かつ、前記第二の層の層方向において前記第二の層を構成する材料の一部又は全部が、前記微細構造の材料に周期的に置き換えて配置されており、前記第一の層における前記遠赤外線の受光領域を熱的に分離する断熱溝を含むことを特徴とする。
また、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項1に記載の遠赤外線検出素子において、前記微細構造が1次元の周期構造からなることを特徴とし、また、前記微細構造が2次元の周期構造からなることを特徴とし、そして、前記基板はシリコンオンインシュレータ(SOI)基板からなり、前記第一の層はSiO2であり、前記第二の層はSiであることを特徴とする。
さらに、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項1から4のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子において、前記第二の層の層方向において、前記基板を構成する基板材料の一部又は全部が除去されていることを特徴とする。
また、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項1から5のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子が、アレー状に配置されていることを特徴とする。
そして、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項6に記載の遠赤外線検出素子において、前記アレー上に配置された前記遠赤外線素子を構成する前記微細構造のパターンが、前記遠赤外線素子の各々において異なることを特徴とする。
また、本発明の遠赤外線検出素子は、請求項1から5のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子において、前記遠赤外線検出素子を上下方向から挟み込む第一及び第二の基板を設け、前記第一の基板は遠赤外線の波長を透過する材料からなり、前記第二の基板は、前記遠赤外線とは異なる波長を有する光線の波長を透過する材料からなることを特徴とする。
さらに、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項8に記載の遠赤外線検出素子において、前記第一の基板の表面にマイクロレンズが形成されたことを特徴とする。
また、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項9に記載の遠赤外線素子において、前記マイクロレンズは、異なる間隔で同心円状の溝が形成されたサブ波長構造であることを特徴とする。
そして、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項1から5のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子において、前記第二の層を挟んで、前記第一の層と反対側に前記第一の層とは異なる第三の層を設けたことを特徴とする。
また、本発明における遠赤外線検出素子は、請求項11に記載の遠赤外線検出素子において、前記第三の層は、前記遠赤外線の波長に対して共振する構造であることを特徴とする。
さらに、本発明における遠赤外線検出装置は、請求項1から7のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子を含むことを特徴とする。
本発明によれば、遠赤外線を吸収する層と、微細構造が形成された反射層とを一括で形成する基板を用いることにより、低コスト生産が可能でかつ反射層での角度依存性と波長依存性との変化が小さい遠赤外線検出素子及び遠赤外線検出装置を提供することができる。
本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の遠赤外線を受光する部分の拡大図であり、(a)正面図、(b)断面図である。 本発明の実施形態における微細構造に2次元フォトニック結晶配列を用いたときの特性をシミュレーションした結果を示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の反射光のスペクトルを示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出素子のシリコンの熱光学効果の係数とスペクトルの変化を表した図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の波長に対する反射率の差分を計算したものを示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の入射角度を変化させたときのスペクトル変化のシミュレーション結果を示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の、(a)微細構造であるフォトニック結晶の性能を特徴付けるフォトニックバンド図を3次元のFDTDシミュレーションで求めたものを示す図、(b)実空間、波数空間の方向を示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出素子のフォトニック結晶の周期と半径をパラメータとして、ΔT=50mKのときのピーク波長をプロットした図である。 本発明に実施形態における遠赤外線検出素子のピーク波長と同様にΔT=50mKとして、フォトニック結晶の周期と半径をパラメータとしたときのスペクトル幅を示す図である。 本発明の他の実施形態における遠赤外線検出素子をアレー状に配置したものであり、(a)が正面図であり、(b)が側面の断面図である。 本発明の他の実施形態における遠赤外線検出素子の画素を1つの領域として、そこの部分に異なる4つのパターンを1組として、わずかに異なるパターンを配置する例を示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線素子を用いて遠赤外線を検出する検出装置の動作原理を模式的に示した図である。 本発明の実施形態における遠赤外線素子の両側を封止基板で封止する例を示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出装置の封止基板の表面にマイクロレンズを製作した構造として、(a)基板表面に曲面を形成してレンズとする形状、(b)基板表面に凹凸形状を形成して屈折率分布をつけるような形状を示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出装置の上部に、新たな層を設ける例として、(a)近赤外線反射層の上に層が形成されている構成、(b)微細加工されたホール部分が第三の層の材料で埋め込まれた構成、(c)第三の層を形成後、微細加工を第三の層と反射層に同時に形成する構成、(d)第三の層を形成後、第一から第三の層すべてに微細構造を形成する構成をそれぞれ示す図である。 本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の吸収効率を高める構造の例として、(a)第三の層に遠赤外線で共振する凹凸構造を付加した構成、(b)第三の層に金属構造を付加し、遠赤外線を第三の層に残す構成をそれぞれ示す図である。
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化乃至省略する。まず始めに、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子について説明する。
(デバイス構成の説明)
図1は、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の遠赤外線を受光する部分の拡大図であり、(a)正面図と、(b)断面図を記載してある。遠赤外線を受光する領域101と、基板102の上に第一の層103と、第二の層104が形成されている。第一の層103は、波長10μm近辺の遠赤外線を吸収する材料からなる。具体的な材料としては、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiN)が挙げられる。第二の層104には、微細構造105が形成されている。(b)断面図のように微細構造105は第二の層104の内部に形成され、第二の層104の材料とは異なる材料が埋め込まれている。さらに、微細構造105は遠赤外線とは異なる波長を強く反射するように、一次元又は二次元に周期的に配置されている。図1では円形形状の微細構造105を、層厚方向に対して単純に第二の層104の材料を除去することで形成したホールを2次元的に配置している。このとき、微細構造105の屈折率は第二の層104の材料の屈折率よりも小さいことが特徴であり、必ずしも屈折率の小さい材料で埋め込まれている必要はなく、図1のように空気又は真空であるものでもよい。
詳細は後述するが、第二の層104には、温度が上昇すると屈折率が変化する材料を用いる。例えば、第二の層104の材料として、シリコン(Si)、ガリウム燐(GaP)、セレン化亜鉛(ZnSe)などの半導体やポリメタクリル酸メチル(PMMA)のような有機材料を用いる。これらの材料は、通常の光学ガラスなどと比較して1桁以上の熱光学係数(1Kの温度変化に対する屈折率の変化量)を持つ。
図1のように遠赤外線107が第一の層103で吸収されると、第一の層103の温度が上昇し、密着してある第二の層104の温度も同時に上昇する。このとき熱光学効果により第二の層104の屈折率が変化する。第二の層104の微細構造105は遠赤外線107以外の波長、例えば波長1μm程度の近赤外光108に対して強く反射する構造である。屈折率が変化すると、微細構造105の近赤外光108に対する反射率が変化し、この変化を検出器で読み取ることにより、遠赤外線を間接的に検出することが可能となる。
(SOI基板の構造)
以下では、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板を用い、2次元の周期構造を形成した場合を例にとり、より詳しく説明する。
SOI基板には、シリコン基板上に二酸化珪素(SiO2)層と、シリコン(Si)層が形成されており、本発明の第一の層としてSiO2層を、第二の層としてSiを用いることができる。SiO2層は遠赤外線を吸収する層として利用し、Si層に微細構造を形成する。SOI基板は半導体チップ作製に用いられる基板であり、Si層とSiO2層の厚みを高精度に制御されたものが比較的容易に入手することが可能であるため、応用範囲が広い基板である。Siへの微細構造の作製も半導体プロセスを転用することが可能である。
2次元の周期構造として、半径rのホールが、周期aで正方形配列されているフォトニック結晶配列を用いた。このフォトニック結晶配列はSi層内に形成されており、半導体プロセスによってSi層を除去することによりホール配列を形成する。このとき、Siと空気又は真空の屈折率の差が2.5程度となることから、フォトニック結晶の効果を得ることができる。微細構造の層厚方向から入射する波長1ミクロン程度の近赤外光に対して、わずかな屈折率変化や波長変化に対して、大きく反射率が変化するようにフォトニック結晶の構造を調整しておくと、遠赤外線によって温められたSiO2層の影響を受けたSi層の屈折率が変化し、それを近赤外光によって検出することが可能となる。
この反射率が変化する遠赤外線を受光する領域101(図1)は、遠赤外線による温度上昇が効果的に起こるように、熱容量を大きくしておく必要がある。そこで、断熱溝106によって遠赤外線を受光する領域101は他の部分と熱的に分離されている。また、SOI基板のSiO2の活性層とは反対側にはシリコンによる支持部分があるが、シリコンの熱伝導率は比較的大きいために、図1のようにシリコン部分は除去し、空気又は真空となっている。このような構成により熱容量を大きくすることができ、遠赤外線が入射することで温度上昇された遠赤外線を受光する領域101は、第一の層103で吸収された熱の保持力が高まり、わずかな遠赤外線の吸収によっても第一の層103と第二の層104の温度を上昇させることができる。
(デバイス特性の説明)
以下では上述の微細構造に2次元フォトニック結晶配列を用いたときの特性をシミュレーション結果を用いてより詳細に説明する。
図2は、本発明の実施例形態における遠赤外線検出素子の微細構造に2次元フォトニック結晶配列を用いたときの特性をシミュレーションした結果を示す図である。空気又は真空層201とシリコン層202、SiO2層203の層構成からなるモデルを設定した。シリコン層202には、ホールからなる直径2rのフォトニック結晶を、周期aで正方配列で配置した。ホール内部の屈折率は空気又は真空層201と同じと仮定する。
シリコンの屈折率は3.59、厚さを220nm、SiO2の屈折率は1.45、厚さを2000nmとした。入射する光の波長は近赤外光として、950nm付近と仮定して、その近辺の反射光のスペクトルを求めた。この近赤外線は半導体レーザからの照射されるコヒーレント光を仮定しているので、スペクトル幅は0.1nm以下の単色光であり、偏光は図2に示すような周期方向に平行な直線偏光を仮定してある。反射率を求めるためのシミュレーションには、3次元の有限差分法(FDTD:Finite Difference Time Domain method)を用いて、時間領域の反射強度からフーリエ変換によりスペクトルを求める方法を用いた。周期構造であるので周期境界条件を利用して計算してある。
図3は、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の反射光のスペクトルを示す図である。
ここでは、周期a=620nm、直径2r=280nmのフォトニック結晶配列で、波長950nm近辺で反射率が大きく変わる部分を抽出した。波長950nmでは、シリコンの吸収がわずかにあるために、反射率の最大値が80%で留まっている。シミュレーションには吸収係数を0.0011cm-1と仮定してある。図3から、波長が949nmから951nmに変化すと、反射率が80%から1%以下に急激に変化していることがわかる。
シリコン部分が加熱されて温度が上昇すると、屈折率変化をおこし、スペクトルが長波長側にシフトする。このとき、波長が固定されたレーザ光を照射すると反射率が変化するために、検出器での光量を観測することで、温度上昇を間接的に測定することができる。
図4は、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子におけるシリコンの熱光学効果の係数を2*10-4 [1/K]とし、温度変化が20mK、50mK、100mK、150mK、200mKとしたときにスペクトルの変化を図4の左から順に表した図である。近赤外光の波長を固定したとき、温度が変化すると反射率が変化することがわかる。波長950.4nmでは、200mK変化したときに反射率が0.5%程度変化することが分かる。近赤外光を受光するイメージセンサーによって、反射率の変化を0.1%程度まで感知できるとすると、200mKの温度変化を十分に感知することが可能となることがわかる。
より詳細に変化率を観察するために、反射率をR(T)としたときに、温度がΔT変化したときの反射率の差分ΔRを、ΔR=R(T+ΔT)−R(T)と定義し、波長に対する反射率の差分を求めた。反射率の差分を計算したものを図5に示す。図5は、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子における波長に対する反射率の差分を計算したものを示す図である。反射率変化は波長950.65nmのときに最大値を示し、温度変化(ΔT)が大きくなるにつれて反射率変化も大きくなることがわかる。
イメージセンサーによって反射率の差を0.1%までの反射率変化を受けることができるとすると、ΔT=50mKの変化まで観察することが可能となる。さらに、0.1%以上の変化範囲が0.8nm程度であるので、この範囲で近赤外波長レーザの発振波長が変化したとしても差を検出することが十分可能であることを示している。さらに、200mKの変化であれば、波長範囲が1.5nmとなるので、レーザの波長変化がおこることによる特性劣化に対してさらに耐性が強くなることを示している。
レーザの温度変化による波長シフト量は、波長安定化レーザで0.06nm/Kであることから、温度変化が13K程度起きても50mKの温度変化を感知することが可能となる。また、レーザを形成する材料と、シリコンとの熱膨張係数が近いことから、レーザと本発明の赤外線検出素子が同じように温度が変化したときには、同じような波長シフトを起こすことが予想されるので、上記波長許容度はさらに広がることが予想される。
本発明のフィルターの特長として、入射角度の変化に対する共振波長の変化が鈍感であることがあげられる。図6は、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の入射角度を変化させたときのスペクトル変化のシミュレーション結果を示す図である。図6に入射角度を0度、0.5度、1.0度に変化させたときのスペクトル変化のシミュレーション結果を示す。入射角度が1.0度変化した場合でも反射率50%に対して、その波長変化は0.1nm以下であることが分かる。レーザと本発明の赤外線検出素子の組み付け精度は1度以下に抑えることが可能であるので、十分に製作可能である。従来例で示される方式では上記のような角度依存性が抑えられた特性を得ることは困難であり、本発明に特有の特長である。
以下で、このようなことが可能である原理を説明する。図7は、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子の、(a)微細構造であるフォトニック結晶の性能を特徴付けるフォトニックバンド図を3次元のFDTDシミュレーションで求めたものを示す図、(b)実空間、波数空間の方向を示す図である。図7(a)に微細構造であるフォトニック結晶の性能を特徴付けるフォトニックバンド図を3次元のFDTDシミュレーションで求めたものを示す。横軸が波数ベクトルであり、図7(b)に示す波数空間の方向に対応している。縦軸は規格化周波数であり、a/λで表される。ここで、aはフォトニック結晶の周期であり、λは真空中の波長である。
このバンド図7(a)はフォトニック結晶が形成されている面内での光の伝搬を記述しているが、本発明の遠赤外線検出素子に利用する構成では、フォトニック結晶が形成されている面へ光が垂直に入射する場合を考えているので、図7(a)で示すΓ軸での振る舞い(共振現象)のみを考えればよい。バンド図はΓ軸上と複数の点で交差するが、それぞれの部分の規格化周波数で共振を起こす。規格化周波数は波長と周期に対応するので、周期が固定されている場合には、共振波長の変化を表す。
このバンド図7(a)で特徴的なことは、Γ点からわずかに波数ベクトルがずれたところでの規格化周波数の値はほとんど変化していない点が存在していることである。例えば、図7(a)中のA点での共振を考えた場合、バンド曲線がほとんど波数ベクトル軸と平行であるために、Γ点から波数がずれたとしても規格化周波数がほとんど変化しないことがわかる。波数ベクトルがΓ点から外れた波数ベクトルが存在するということは、本発明の構成では、垂直入射からずれて光が入射してくるために面内成分の波数を有することを意味する。つまり、垂直成分はΓ点での共振に対応するが、水平成分が存在することによりΓ点からX点又はM点へずれた波数成分をもち、それが影響を与えて共振波長がずれる。本発明の素子では、この変化が少ないために、入射角度が変化に対して波長変化は鈍感になる。
通常の多層膜による共振や、屈折率変調が小さい微細構造であると、入射角度に対してきわめて敏感であり、機器への組み付け精度が極めてシビアになるが、本発明の素子のように屈折率変調が十分に大きいと、上記理由により入射角度に対する依存性が緩和されることとなる。
(様々なパラメータに対する特性)
ここで、ΔT[K]の温度差があったときに、反射率差を波長に対してプロットしたグラフで、その最大値を与える波長をピーク波長λp(ΔT)と定義する。図8は、本発明の実施形態における遠赤外線検出素子のフォトニック結晶の周期と半径をパラメータとして、ΔT=50mKのときのピーク波長をプロットした図である。周期と半径を調整することにより、ピーク波長を柔軟に設定することが可能であることがわかる。
また、反射率変化の絶対量が0.1%の差を与える波長幅をスペクトル幅Δλ(ΔT)と定義する。ピーク波長と同様にΔT=50mKとして、フォトニック結晶の周期と半径をパラメータとしたときのスペクトル幅を図9に示す。図9は、本発明に実施形態における遠赤外線検出素子のピーク波長と同様にΔT=50mKとして、フォトニック結晶の周期と半径をパラメータとしたときのスペクトル幅を示す図である。Δλはおおむね0.5nm程度から、1nm程度であることがわかる。このスペクトル幅であれば、半導体レーザのスペクトル幅よりも十分大きいので半導体レーザを用いて検出することが可能である。パラメータによっては同一の共振ピーク波長を示す組み合わせは複数存在するが、実際には素子の作りやすさやスペクトル幅等の他の特性とのバランスから、適切なものを選ぶ必要がある。
(プロセス方法)
以下ではSOI基板を用いた本発明の遠赤外線検出素子の製作方法を述べる。
まず、反射層と吸収層が形成されているSOI基板を用意する。SOI基板は電子デバイスに使用されている基板であるので、8インチ程度の大きさの基板を比較的容易にかつ低コストで入手することができる。SOI基板に不純物をドープすることで、屈折率を調整することや、吸収係数を調整することが可能である。
SOI基板にリソグラフィーによりパターンを形成する。ここで、リソグラフィーには、フォトリソグラフィー、電子ビーム描画、ナノインプリント等を用いることができる。ホールパターンによる2次元フォトニック結晶配列をパターニングする場合、ホールのサイズは200nm程度、周期が400nmから800nm程度であるので、現在半導体プロセスで使用されているリソグラフィーの最小線幅よりも広いので、パターニングは可能である。
このリソグラフィーで形成したパターンをドライエッチングにより、SOI基板のシリコン層(反射層)に転写する。シリコンへのドライエッチングにはリアクティブイオンエッチング(RIE)や誘導結合プラズマ(ICP)エッチング法を用い、使用するガスにはCF系、SF系ガスなどの反応性ガスを基本とする混合ガスが使用される。このようなシリコンに対するエッチングも半導体プロセスを応用することで十分製作可能である。
その後、反射層が形成されている側と反対側のシリコン基板を除去する。反対側のシリコン層は、研削研磨により50μm程度まで薄くした後に、ウェットエッチングやドライエッチングによって除去する。これらも半導体プロセスで確立した方法を用いることが可能である。このときシリコン層を完全に除去することも可能であるが、放熱調整と隣のピクセルとのクロストークを抑制、機械的な強度の増強のために、一部を残しておくことも可能である。製作された素子は保護層によって挟み込むことにより、減圧封止や機械的強度増強が可能となる。これらに対する詳しい説明は後述する。
(2Dアレー構造)
図10に本発明の他の実施形態を示す。図10は、本発明の他の実施形態における遠赤外線検出素子をアレー状に配置したものであり、(a)が正面図であり、(b)が側面の断面図である。
ピーク波長と同様にΔT=50mKとして、フォトニック結晶の周期と半径をパラメータとしたときのスペクトル幅を示す図である。前述の遠赤外線検出素子をアレー状に配置したものである。
微細構造が形成されている領域301が画素(ピクセル)となる。図10ではこの画素が16個配置したものを例として記述してある。この画素のサイズは一辺が10μmから100μm程度の大きさである。これらの画素は遠赤外線を吸収する層302と、微細構造が形成されている層303により形成されている。また、図10(b)に示すように、個々のピクセルは層302部分まで分離されている。こうすることでピクセルへの熱の保持力を大きくすることが可能である。
遠赤外線が照射される領域の材料は除去されているが、ピクセルを分離するための切り込みを入れているために、それぞれの画素が分離しないように、一部基板材料を残した梁構造304を設けてある。この部分の厚みと大きさを調整することにより、熱の保持力を調整することが可能である。熱の保持と開放は画像の感度と画像形成スピードに関係するので、適切に調整する必要がある。
遠赤外線305が面内分布を持って画素に照射されると、それぞれの強度に応じて微細構造が形成されている層303に吸収が起こり、画素全体の温度を上昇させる。このとき、微細構造が形成されている層303に、検出用の光が照射されると、それぞれの部分での温度上昇に対応した反射率によって反射されるので、その光を検出器で検出することにより、間接的に赤外線分布を表した画像を得ることができる。
基本的にはアレーにした場合、同一パターンで形成されたそれぞれのピクセルには、角度成分をほとんど持たない平行光を照射してその反射特性を検出することが望ましい。しかしながら、照射するレーザビームを完全にコリメートすることは困難であり、ビームのエッジ部分は角度成分を持つことになる。十分にビーム径を広げれば、平行光にかなり近づけることができるが、その分レーザビームのロスが大きくなってしまう。そこで、微細構造アレーの最外周部分に、中央部分のパターンとは少しパラメータをシフトさせたパターンを配置することによって、その角度成分による影響を補償することができる。このような補償は本発明のように、平面にパターンを形成することにより共振を起こすことができる構造では、比較的容易に実現することができる。例えば、2次元フォトニック結晶配列で共振を起こす場合であれば、ビームが角度成分を持つために共振ピークがシフトしたときには、その周期と半径を調整することによって、中央部分を共振スペクトルと同様な形状に微調することができる。
また、複数の画素を1つの領域として、そこの部分に異なるパターンを形成することも可能である。たとえば、図11のように4パターンを1組として、わずかに異なるパターンを配置することにより、外的要因によりレーザの波長がシフトした場合でも、4パターンのうちいずれか1つが、反射率変化をカバーするようにパターンを設定しておけば、反射率のズレを補償することが可能となる。領域311、312、313、314はそれぞれ同じ半径を持ち、徐々に大きくなる周期で配置しているホールが配置されている微細構造であるとすると、その反射スペクトルは(b)のように長波長側にシフトする。通常ではレーザ光源の波長が外的要因で図(b)の矢印のようにシフトしたとき、どれかの領域で赤外線を検出することが可能となる。
(装置の説明)
図12は本発明の実施形態における遠赤外線素子を用いて遠赤外線を検出する検出装置の動作原理を模式的に示した図である。遠赤外線受光領域401と、遠赤外線検知領域402と、信号処理領域403とから構成される。遠赤外線412を集光するレンズ群404は、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイドガラス等遠赤外線を透過する材料により形成されている。基本的にこれらの材料は屈折率が大きいために表面での反射が大きく、無反射コートがされているものを使用する。外部から放出されている遠赤外線412は、このレンズ群404により集光され、遠赤外線検出素子405に照射される。ここでの遠赤外線検出素子405は、前述の例えばSOI基板をもとに形成された素子であり、遠赤外線412を吸収する層を遠赤外線レンズ側に向けて配置しておく。また、遠赤外線検出素子405の遠赤外線412が集光される側と反対側には、反射ミラー408、近赤外波長を発光する半導体レーザ406、遠赤外線検出素子405で反射された光を受光するイメージセンサー410が配置されている。
この近赤外線光レーザ406の波長範囲としては800nmから1600nmであり、このような波長を発生する光源としては、光通信や光ディスクなどで実用化している半導体レーザを用いることができる。またイメージセンサー410には、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーが使える。特にCMOSイメージセンサーは、赤外線カットフィルターを外すと、1μm近辺の感度が高くなる性質を利用することが可能である。さらに、デジタルカメラの普及による低コスト化が進み、利用がさらに容易になっている。
この近赤外光レーザ406から出力された近赤外光413は、レンズ407を介してビームを整形され、反射ミラー408によって光路を変化され遠赤外線検出素子405に照射される。遠赤外線検出素子405には前述のように、近赤外波長が入力する側に微細構造が形成され、かつそれらがアレー構造となっていることにより画素を形成している。遠赤外線がこのアレー構造のいくつかのピクセルに照射されると、吸収層で吸収され、微細構造が形成されているシリコン層と同時に温度が上昇する。この温度上昇がシリコン層の屈折変化をもたらし、近赤外光に対する反射率が変化し、その反射率の変化をイメージセンサー410で読み取る。このように反射率の変化量をイメージセンサー410で計測することにより、遠赤外線検出素子405上での遠赤外線分布を検出することができる。それらのイメージセンサー410で受光された光は電気信号に変換されて、画像処理装置411を介して外部の出力装置に接続される。
(封止基板による保護)
本発明の遠赤外線検出素子405は極めて微弱な遠赤外線を感度良く検出する必要がある。空気が対流することによる熱の移動も大きく影響を与えるために、高感度に検出するためには、この素子は減圧パッケージする必要がある。しかしながら、減圧パッケージはチップを1つずつパッケージングする必要があるために、コストがかかる。そこで、図13のように素子の両側を封止基板で封止する方法を用いる。図13は、本発明の実施形態における遠赤外線素子の両側を封止基板で封止する例を示す図である。
本発明の遠赤外線検出素子501には、微細構造が形成されているピクセル502が形成してあり、反対側の基板材料は除去された状態である。この基板の上下両側を封止基板503、504で封止する。このとき、減圧状態を維持して封止するために接着又は接合材料505を用いている。封止基板503には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイドガラスなどの遠赤外線508を透過する材料を用いる。これらの材料は一般的に2.5以上の非常に高い屈折率を持つため、空気界面での反射により数10%の損失が生じてしまう。それを回避するために無反射コート層506を基板503、504の両側に設けてある。また封止基板504には、近赤外線波長509を透過する材料として、石英やガラス等を用いることができ、ここでは、一例としてガラス基板を用いる。ガラス基板も空気との界面での反射による数%の損失が生じるために、基板の両面に無反射コート層507を設けてある。無反射コート層は、界面を形成している2つの材料の中間の屈折率を持つ材料を、波長の1/4程度の厚みで成膜することで形成可能である。
接合にはシールガラス接合技術を用いることができる。布着用の低融点ガラスをスクリーン印刷工程で塗布し、熱処理後、加圧接合により基板を接合する。このとき、減圧環境での封止が可能である。その他、接合には直接接合や陽極接合等の基板接合技術を用いることも可能である。陽極接合は主にシリコンとガラスとの接合として用いることができるので、図13の構成では封止基板504との接合に利用することが可能である。
ガラスやシリコン基板は0.3mmから0.5mm程度の厚みであるので、このような基板封止よって、全体の厚みを1mm以下にすることが可能であり、半導体プロセスで用いられるダイシング技術によってチップ化が容易である。この基板プロセスにより減圧封止されたチップを基板ごと一括で製作することが可能となり、本発明の遠赤外線検出素子の低コスト生産が可能となる。
(遠赤外線側にマイクロレンズ作成)
図14は、本発明の実施形態における遠赤外線検出装置の封止基板の表面にマイクロレンズを製作した構造を示す図である。このようにピクセルに対してマイクロレンズを形成することにより、外部からの遠赤外線の集光効率を上げることができる。マイクロレンズは(a)のように基板表面に曲面を形成してレンズとする形状602や、(b)のように基板表面に凹凸形状を形成して屈折率分布をつけるような形状603を採用することができる。遠赤外線601はこれらの屈折率分布影響を受けて集光されながら、それぞれの画素に入射する。
図14(b)における凹凸形状は、屈折率分布をつけるために、フレネルレンズ形状することや、図14(b)のように幅が異なる間隔で同心円状の溝を形成したサブ波長構造で作成する。サブ波長構造は波長の1/2程度の幅で溝を形成することで作成可能であるが、本発明では集光される遠赤外線の波長が10μm程度であるので、溝の幅が5μm以下となり、半導体リソグラフィー技術で十分製作可能である。また図14(b)のような同心円形状だけでなく、縦横の間隔が同じ、又は異なるメッシュ構造によって屈折力を持たせた構造であっても良い。
(微細構造が形成されている層の上部に第三の層を設ける)
遠赤外線を吸収する層と微細構造により近赤外線を反射する層が形成されている本発明の遠赤外線検出領域の上部に、新たな層を設けることも可能である。図15に一例を示す。図15(a)では吸収層701、微細構造702が形成されている近赤外線反射層703の上に層704が形成されている。それぞれの画素は分離されており、熱の保持力を高めるような構成になっている。
ここで、層704は、吸収層で吸収しきれなかった遠赤外線を吸収する役割を果たす。また、反射層の上下の屈折率差が異なることによる反射特性の変化を緩和する役割も同時に果たす。微細構造の内部にまで層704の材料で埋め込まれていても良い。材料としてはSiO2、SiNxなどの無機材料や、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の有機材料等を採用することができる。
図15(b)のように、微細加工されたホール部分が第三の層の材料で埋め込まれた構造も可能である。微細構造を形成後、成膜プロセスを用いるだけで(b)の構造を形成することが可能である。また、図15(c)のように第三の層を形成後、微細加工を第三の層と反射層に同時に形成する構造も可能である。さらには、図15(d)のように第三の層を形成後、第一から第三の層すべてに微細構造を形成することも可能である。このように微細構造を吸収層にまで設けることで、遠赤外線の界面での反射を抑制することができ、吸収効率を上げることができる。
(遠赤外線の吸収効率を高める構造を付加する)
図16に遠赤外線の吸収効率を高める構造の一例を示す。図16(a)には第三の層801に遠赤外線で共振する凹凸構造802を付加している。ここでは遠赤外線805の波長の1/2程度のサイズで凹凸構造を形成することにより実現している。入射されてくる波長は10μm付近の比較的帯域が広く、角度分散も大きいインコヒーレント光であるので、強い共振は期待できないが、上記凹凸を設けることで層内に残る遠赤外線を増やすことができ、吸収効率を上げることが可能となる。
また、図16(b)では、第三の層801に金属構造803を付加し、表面プラズモン共鳴を利用することで、遠赤外線を第三の層801に残すことで吸収効率を上げる構造である。表面プラズモンとは、金属のように自由電荷を持つ物質表面での表面電荷の集団振動現象であり、境界面にある特定の電磁波が入射したときに起こる共鳴現象が表面プラズモン共鳴現象である。
プラズモン共鳴を起こす金属構造を第三の層に膜として形成しても良いし、図16(b)のように、それらを遠赤外線の波長よりも十分小さい構造の周期配列として形成しても良い。このような構成は、半導体プロセス等の方法を用いることで容易に作成することができる。
以上説明してきたように、本発明における遠赤外線検出素子は、遠赤外線を吸収する層と、1次元又は2次元の周期構造の微細構造が形成された反射層とが一括で形成できるような構造をもち、かつ反射層材料を完全に除去した微細構造を設けることで構成される。また、本発明における遠赤外線検出素子は、遠赤外線を吸収する層と微細構造が形成された反射層が予め作られている基板を用いることにより構成される。そして、本発明における遠赤外線検出素子は、複数の構造に分割したアレー構造とすることや、パターンが異なるアレー構造を形成することにより構成される。
また、本発明における遠赤外線検出素子は、遠赤外線を検出する部分が形成されている基板を2つの封止基板で挟み込むことで構成され、封止基板の一部にマイクロレンズを形成することで構成されている。さらに、本発明における遠赤外線検出素子は、遠赤外線を検出する部分が形成されている部分に第三の層を設ける構成とすることもでき、さらには、その第三の層に凹凸を形成する構成とすることもできる。
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正及び変更が可能である。
101、401 遠赤外線受光領域
102 基板
103 第一の層
104 第二の層
105、702 微細構造
106 断熱溝
107、305、508、601、805 遠赤外線
108、413 近赤外光
201 空気又は真空層
202 シリコン層
203 SiO2
301 領域
302 遠赤外線を吸収する層
303 微細構造が形成されている層
304 梁構造
311、312、313、314 領域
402 遠赤外線検知領域
403 信号処理領域
404 レンズ群
405、501 遠赤外線検出素子
406 半導体レーザ
407 レンズ
408 反射ミラー
410 イメージセンサー
411 画像処理装置
502 ピクセル
503、504 封止基板
505 接着又は接合材料
506、507 無反射コート層
509 近赤外線波長
602、603 形状
701 吸収層
703 近赤外線反射層
704 層
801 第三の層
802 凹凸構造
803 金属構造
特開2004−245674号公報 特表2007−503622号公報 特開2009−264888号公報

Claims (13)

  1. 基板に互いに異なる材料からなる第一の層と第二の層とが積層された遠赤外線検出素子において、
    前記第一の層は遠赤外線を吸収する材料で構成され、
    前記第二の層の内部には、前記第一の層より屈折率が大なる材料であって、かつ前記遠
    赤外線とは異なる波長を有する光線に対して共振する微細構造が形成されており、
    前記微細構造は前記第二の層より小なる屈折率を有する材料で構成され、前記第二の層
    の面方向において周期的に配置されており、かつ、前記第二の層の層厚方向において前記
    第二の層を構成する材料の一部又は全部が、前記微細構造の材料に周期的に置き換えて配
    置されており、
    前記第一の層における前記遠赤外線の受光領域を熱的に分離する断熱溝を含むことを特徴とする遠赤外線検出素子。
  2. 前記微細構造が1次元の周期構造からなることを特徴とする請求項1に記載の遠赤外線検出素子。
  3. 前記微細構造が2次元の周期構造からなることを特徴とする請求項1に記載の遠赤外線検出素子。
  4. 前記基板はシリコンオンインシュレータ(SOI)基板からなり、前記第一の層はSiO2であり、前記第二の層はSiであることを特徴とする請求項1に記載の遠赤外線検出素子。
  5. 前記第二の層の層方向において、前記基板を構成する基板材料の一部又は全部が除去されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子が、アレー状に配置されていることを特徴とする遠赤外線検出素子。
  7. 前記アレー上に配置された前記遠赤外線素子を構成する前記微細構造のパターンが、前記遠赤外線素子の各々において異なることを特徴とする請求項6に記載の遠赤外線検出素子。
  8. 前記遠赤外線検出素子を上下方向から挟み込む第一及び第二の基板を設け、前記第一の基板は遠赤外線の波長を透過する材料からなり、前記第二の基板は、前記遠赤外線とは異なる波長を有する光線の波長を透過する材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子。
  9. 前記第一の基板の表面にマイクロレンズが形成されたことを特徴とする請求項8に記載の遠赤外線検出素子。
  10. 前記マイクロレンズは、異なる間隔で同心円状の溝が形成されたサブ波長構造であることを特徴とする請求項9に記載の遠赤外線素子。
  11. 請求項1から5のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子において、前記第二の層を挟んで、前記第一の層と反対側に前記第一の層とは異なる第三の層を設けたことを特徴とする遠赤外線検出素子。
  12. 前記第三の層は、前記遠赤外線の波長に対して共振する構造であることを特徴とする請求項11に記載の遠赤外線検出素子。
  13. 請求項1から7のいずれか1項に記載の遠赤外線検出素子を含むことを特徴とする遠赤外線検出装置。
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