JP5733654B2 - セルロースの糖化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースの糖化方法に関する。より詳しくは、セルロース含有繊維製品やそれらの製品屑等のセルロース含有物に前処理を施すことにより、セルロース分解酵素によるセルロースの加水分解反応速度を向上させたセルロースの糖化方法に関する。
化石燃料の枯渇問題や地球温暖化をはじめとした環境問題を背景に、石油代替原料を用いた燃料開発、化学品・樹脂群への転換が進められている。たとえば、米国、ブラジル等ではトウモロコシやサトウキビを原料にしたバイオエタノール製造が大規模に進められている。しかしこれらは食糧資源と競合関係にあるため、近年、その供給に関して国際的な議論の対象となった。このような背景を受け、食糧資源と競合しないセルロース系バイオマス原料(木質系・草本系等)からのバイオエタノール合成が注目を集めており、各国がその商用化を競っている。しかし、製造技術面とコスト面が障害となり未だ大規模には実用化出来ていない。一方、セルロース系バイオマス原料としては、上記の木質系・草本系以外にも、不要品として廃棄・回収された紙資源や衣料品等のセルロース含有繊維廃棄物もその対象として検討が始められている。
セルロース含有物のセルロースは、1000個以上のグルコースがβ−グリコシド結合でつながった多糖類である。セルロースを加水分解することにより、単糖であるグルコースのほか、グルコースが2〜6個つながった水溶性のオリゴ糖類(セロオリゴ糖)を得ることができる。これらの水溶性糖類の中でもグルコースは、微生物を用いた発酵法によるエタノール生産等に有用であることから、セルロースを含有する物からグルコース等の糖類を効率よく製造できる糖化技術が望まれている。
セルロースを糖化する従来の方法としては、熱分解法、硫酸等を触媒とする酸触媒法(例えばアルケノール法)、超臨界または亜臨界状態の水溶液で加水分解する加圧熱水法(特許文献1参照)、酵素反応によって加水分解する酵素反応法(特許文献2参照)等が知られている。
熱分解法は、熱エネルギーによりセルロース分子鎖を切断する方法であり、セルロースを低分子化することが出来る。しかし、熱反応であるために反応の選択性が乏しく、グルコースの収率は低い。
酸触媒法は高濃度の硫酸でセルロースを加水分解処理した後に希硫酸で後処理をしてグルコースを得るものであるが、酸による設備腐食の問題と共に硫酸含有残渣処理・硫酸回収等の工程が必要となる問題がある。
水は超臨界または亜臨界状態においてイオン積が増大し、あたかも酸性水溶液として挙動することが知られている。これを利用すれば酸触媒を添加しなくても効率よくしかも速やかにセルロースを加水分解する事ができるはずである。例えば、超臨界水または亜臨界水を用いることでセルロースからグルコースが20%以上の収率で得られるという報告がなされている(特許文献1参照)。温度・圧力条件を制御することによりグルコースの収率をある程度向上しうる。しかし、加水分解の効率を優先し過ぎると、生成したグルコースが熱分解反応して収率が低下してしまう。また、この際にエタノール発酵工程の阻害物質であるフルフラール類が生成される問題がある。
酵素反応法はセルロースを加水分解する酵素(セルラーゼ)により処理する方法であり、穏和な反応条件(室温〜70℃)で処理できることが特徴である。近年、国内外の多くのメーカーが遺伝子操作技術を駆使して新規なセルラーゼ開発に力を入れている。しかし、一般にセルラーゼ自身が高価であることに加え、原料である高分子量のセルロースをグルコースに加水分解する効率が低く、生産性に劣る。例えば、数日から1週間程度の長時間の加水分解処理を行っても、グルコースへの転換率は30%未満である。このように反応速度が小さいのは、セルロースが固体状態でありかつ結晶性であるためにセルラーゼとの反応が固液反応となっているからだと考えられる。
前記セルラーゼの低い加水分解効率の問題を解決するために、原料であるセルロースの前処理を工夫して加水分解効率を向上させる方法が提案されている(特許文献2参照)。すなわち、セルロースを超臨界水または亜臨界水で一時的に可溶化し、反応物が溶液中に溶解している間にセルラーゼで加水分解処理を行なう方法である。
特開平5−31000号公報 特開2001−95594号公報
しかしながら、上記の超臨界水処理における反応条件は320〜500℃で圧力が20〜50MPaと極めて厳しい条件であり、特殊な装置・設備を要するとともにエネルギーコストが高くなる問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、セルロース含有物に含まれるセルロースを酵素によって加水分解する際の反応速度を向上させることができるセルロースの糖化方法を提供することを課題とする。
本発明の請求項1に記載のセルロースの糖化方法は、セルロースを加水分解して水溶性オリゴ糖又はグルコースを含む水溶液を得るセルロースの糖化方法であって、綿を含有する繊維と水酸化ナトリウム水溶液とを接触させるアルカリ処理を行い、前記水酸化ナトリウム水溶液を含む前記繊維を酢酸でアルカリ中和した後、該繊維とセルロース分解酵素を含む水溶液とを0〜250mMの緩衝液濃度の範囲で接触させる酵素処理を行う方法において、前記酵素処理における水溶液の緩衝液濃度を、酢酸及び酢酸NaからなるpH緩衝剤を用いて調整することを特徴とする。
本発明の請求項に記載のセルロースの糖化方法は、請求項1おいて、前記アルカリ処理において、−10℃〜50℃の温度範囲で、0.1〜10Nの前記アルカリ水溶液に、前記セルロース含有物を、0.1〜60分の時間範囲で接触させることを特徴とする。
本発明の請求項に記載のセルロースの糖化方法は、請求項1又は2おいて、前記酵素処理における酵素反応をpH3〜pH10の範囲で行うことを特徴とする。
本発明の請求項に記載のセルロースの糖化方法は、請求項1〜のいずれか一項において、前記綿を含有する繊維の長さが1mm以上1m以下であることを特徴とする。

本発明のセルロースの糖化方法によれば、高温高圧の前処理を必要とせず、アルカリによる前処理を行い、後段の酵素処理における反応溶液のpH緩衝剤の濃度を0〜250mMの範囲に調整することによって、セルロースの加水分解速度を向上させることができる。また、該酵素処理では、穏和な条件下でセルロースの加水分解を行うことにより、糖類の過分解物を発生させず、目的の生成物である水溶性オリゴ糖又はグルコースを高純度で得ることができる。得られた高純度の水溶性オリゴ糖又はグルコースは、エタノール発酵や乳酸発酵等の原料として有用である。
酵素処理における緩衝液濃度と糖化率(%)の関係を示すグラフである。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のセルロースの糖化方法は、セルロース含有物を加水分解して糖化する方法であって、セルロース含有物とアルカリ水溶液とを接触させるアルカリ処理を行い(工程A)、該セルロース含有物を水及び/又は酸性水溶液で洗浄した後(工程B)、該セルロース含有物とセルロース分解酵素及びpH緩衝剤を含む水溶液とを0〜250mMの緩衝液濃度の範囲で接触させる酵素処理を行って、水溶性オリゴ糖又はグルコースを含む水溶液を得る(工程C)、という工程A〜Cを有する。本発明のセルロースの糖化方法は上記工程A〜Cを含むものであればよく、他の操作を行う工程を含むものであってもよい。
前記工程Aにおいて、前記セルロース含有物と前記アルカリ水溶液とを接触させる方法は特に制限されない。例えば、前記セルロース含有物を前記アルカリ水溶液に浸漬して接触させる方法を採用しても良いし、前記セルロース含有物を静置したところに、前記アルカリ水溶液を通液させて接触させても良い。より具体的な例として、アルカリ耐性のカゴに前記セルロース含有物を入れて、そのカゴを前記アルカリ水溶液中に浸漬して揺り動かすことにより前記アルカリ処理を行うこと方法が挙げられる。
本発明におけるセルロース含有物としては、本発明の効果が十分に得られることから、セルロース含有繊維が好ましく、綿を含有する繊維がより好ましい。
前記セルロース含有繊維としては、セルロースを含有する繊維状の物であれば特に限定されず、例えば、衣料品等の繊維として用いられている綿、麻(苧麻、亜麻、マニラ麻、ザイザル麻、ケナフ麻等)、テンセル、レーヨン、キュブラ等や、コピー紙や包装紙、段ボール等の紙製品等が好適なものとして挙げられる。また、前記衣料品等の繊維として、ポリエステル等の合成繊維やシルク等のセルロースを含有していない繊維と混紡された繊維であってもよい。
前記セルロース含有繊維の形態は特に制限されず、綿状、糸状、綱状、布状、平面・立体状等に加工されたものを用いることができる。
また、前記セルロース含有繊維の長さは、1mm以上1m以下が好ましく、5mm以上50cm以下がより好ましく、1cm以上30cm以下がさらに好ましい。
この範囲の長さであると、セルロース含有繊維の取り扱いが容易となる。特に、本発明の各工程においてセルロース含有繊維を脱水する場合に、セルロース含有繊維が通過し難い篩(ふるい)を用いて行う際の取り扱い性に優れる。
セルロースから糖類への転化率を高める観点から、該セルロース含有物には糖化反応を阻害するような不純物はなるべく含まれていない方が好ましい。すなわち、本発明において用いられるセルロース含有物のセルロース含有率は高いほど好ましい。
前記工程Aにおいて、本発明のアルカリ処理におけるアルカリ水溶液としては、前記セルロース含有物の吸水量を高めて膨潤させることができるものであれば特に制限されず、水酸化ナトリウム、アンモニア水等が挙げられる。
これらのなかでも、水酸化ナトリウムが好ましい。水酸化ナトリウムを用いることにより、当該セルロース含有物中のセルロース(セルロース結晶)の吸水量を高めて膨潤することができ、さらに、後段の工程Bの水及び/又は酸性水溶液による洗浄後に該セルロースをNaイオンが吸着したセルロースNa塩とすることができる。その結果、後段の工程Cの酵素処理における反応系に酢酸を所定の量で添加すると、セルロースに吸着したNaイオン及び酢酸がpH緩衝剤として機能して、該反応系を酵素反応に好ましいpHで安定化することができる。
また、綿繊維等のセルロース含有繊維を、水酸化ナトリウム等でアルカリ処理することによって、該セルロース含有繊維が膨潤してセルロースの非晶領域が3倍以上増加しうる。さらに、X線回折によって測定される該セルロースの結晶格子の大きさも変化することから、セルロースの分子間相互作用が当該アルカリ処理によって変化させられると考えられる。その要因として、例えば、Naイオンの吸着によってセルロースの水酸基間の水素結合が切れて分子間の結合力が低下することが考えられる。
このように、アルカリ処理によって膨潤して吸水量が増加した綿繊維等のセルロース含有物は、後段の工程Cの酵素処理において、セルロース分解酵素が前記セルロース含有物のセルロースにアタックし易くなっているため、酵素反応の効率を著しく向上させることができる。
前記工程Aにおいて、アルカリ水溶液が水酸化ナトリウム水溶液である場合には、その濃度(規定度)は、0.1〜10Nが好ましく、1〜5Nがより好ましい。
上記範囲の下限値以上及び上限値以下であると、前記セルロース含有物におけるセルロース(セルロース結晶)の膨潤及び吸水量を高めて、後段の酵素反応をより効率良く行うことができる。
一方、上記範囲の下限値未満及び上限値超であると、前記セルロース含有物におけるセルロースの膨潤及び吸水量が低下してしまう傾向がある。
前記工程Aにおいて、前記セルロース含有物と前記アルカリ水溶液とを接触させる際の温度は、−10〜50℃が好ましく、−5〜30℃がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上及び上限値以下であると、前記セルロース含有物におけるセルロースの膨潤及び吸水量を高めて、後段の酵素反応をより効率良く行うことができる。
一方、上記範囲の下限値未満及び上限値超であると、前記セルロース含有物におけるセルロースの膨潤及び吸水量が低下してしまう傾向がある。
なお、前記膨潤及び吸水量をさらに向上させる温度としては、4〜20℃が良く、4〜15℃がさらに良く、4〜10℃が最も良い。しかし、アルカリ処理における温度を室温付近に設定することにより、冷却のためのエネルギーコストを不要とすることができる。
前記工程Aにおいて、前記セルロース含有物と前記アルカリ水溶液とを接触させる際の処理時間の範囲は、通常48時間以下で行うことができ、0.1分〜60分が好ましく、1分〜30分がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上及び上限値以下であると、前記セルロース含有物におけるセルロースの膨潤及び吸水量を高めて、後段の酵素反応をより効率良く行うことができる。
一方、上記範囲の下限値未満であると、前記セルロース含有物におけるセルロースの膨潤及び吸水量が低下してしまう傾向がある。また、48時間を超えてアルカリ処理を行った場合には、アルカリ濃度にもよるが、概して変化の程度が少なくなり、膨潤及び吸水量は頭打ちとなる傾向がある。
前記工程Bにおいて、前記アルカリ処理を行った前記セルロース含有物を水及び/又は酸性水溶液で洗浄する方法としては、該セルロース含有物からアルカリを水及び/又は酸性水溶液で洗い流すことができるものであれば特に制限されない。例えば、該セルロース含有物を脱イオン水及び/又は酸性水溶液に浸漬して洗浄する方法を採用しても良いし、該セルロース含有物を静置したところに、脱イオン水及び/又は酸性水溶液を通液させて洗浄しても良い。より具体的な例として、アルカリ耐性のカゴに前記セルロース含有物を入れて、そのカゴを脱イオン水及び/又は酸性水溶液中に浸漬して揺り動かし、適宜、該脱イオン水及び/又は酸性水溶液を交換することにより前記アルカリを該セルロース含有物から除去する方法が挙げられる。
前記酸性水溶液は、後段の工程Cにおける酵素反応を阻害しないものであれば特に制限されず、例えば酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等が好適に用いられる。
前記酸性水溶液のpHの範囲は、後段の工程Cにおける酵素反応を阻害しない範囲であればよく、pH2.0〜6.9が好ましく、pH3.0〜pH6.9がより好ましく、pH4.0〜pH6.0がさらに好ましい。
この範囲のpHであると、洗浄したセルロース含有物に含まれる水溶液のpHを、後段の工程Cにおける酵素反応の至適pH(一般にpH4〜6)に合わせることができるので好ましい。
なお、前記酸性水溶液の濃度は、前記アルカリ処理におけるアルカリの濃度によって適宜調整される。
前記水及び/又は酸性水溶液で洗浄した後の前記セルロース含有物に残存するアルカリは、該セルロース含有物に含まれる水又は酸性水溶液のpHが酸性〜中性付近となるように、できる限り少ない量であることが望ましい。しかし、後段の工程Cにおける酵素反応を阻害しない程度であれば、該アルカリが残存していてもよい。また、塩酸等の酸を用いて残存したアルカリを中和してもよい。
より具体的な前記工程A、並びに前記工程Bにおける酢酸による洗浄及びアルカリ中和の方法として、次の操作が例示できる。
まず、アルカリ耐性の容器(チーズ染色機)内において、木綿1kgに水を含ませてから脱水し、4N(15.8質量%)の水酸化ナトリウム水溶液9Lを投入して、前記アルカリ処理を所定時間行った後、該水酸化ナトリウム水溶液を排水する。該容器中に残ったアルカリを含む木綿に対して、4質量%の酢酸6Lを投入し、これを排水した後、再度4質量%の酢酸6Lを投入して排水する。このとき、1回目の排水はpH13以上であるが、2回目の排水はpH4〜5となっていることから、2度の酢酸投入後の木綿に含まれる水溶液は、酢酸と酢酸ナトリウムで構成されるpH4〜5の酢酸緩衝液に調製されていることがわかる。なお、このアルカリの中和反応は、CHCOOH+NaOH→CHCOONa+HOの反応式で表される。このようにpH調整された木綿は脱水しなくても、後段の工程Cに使用することができる。
前記工程Cにおいて、前記水及び/又は酸性水溶液で洗浄したセルロース含有物とセルロース分解酵素を含む水溶液とを接触させる方法は、特に制限されない。例えば、前記セルロース含有物をセルロース分解酵素を含む水溶液に浸漬して接触させる方法を採用しても良いし、前記セルロース含有物を静置したところに、前記セルロース分解酵素を含む水溶液を通液させて接触させても良い。より具体的な例として、カゴに前記セルロース含有物を入れて、そのカゴを前記セルロース分解酵素を含む水溶液中に浸漬して揺り動かすことにより前記酵素処理を行う方法が挙げられる。
本発明における工程Cでは、前記セルロース含有物とセルロース分解酵素を含む水溶液とを接触させる際の酵素反応溶液の緩衝液濃度を、0〜250mMに調整する。
その緩衝液濃度の調整に用いるpH緩衝剤としては、前記セルロース分解酵素の酵素活性を阻害するものでなければ特に制限されず、例えば酢酸及び酢酸Na、クエン酸及びクエン酸Na、並びにリン酸及びリン酸Na等が挙げられる。これらのナトリウム(Na)塩は、カリウム塩に代えてもよい。
酵素反応溶液の緩衝液濃度を上記範囲に調製することによって、糖化反応速度が向上するメカニズムとしては、溶液のpHが安定すること、塩析によりセルロース分解酵素が基質であるセルロース含有物に吸着しやすくなること等が考えられる。
前記工程Cにおけるセルロース分解酵素としては、セルロースを加水分解して水溶性オリゴ糖又はグルコースを生成できるものであれば特に制限されず、公知のセルロース分解酵素(セルラーゼ)を所定の量で用いればよい。ここで、該水溶性オリゴ糖は、2〜6分子程度のグルコースが縮合してつながった分子構造を有する水溶性のセロオリゴ糖をいう。
前記工程Cにおけるセルロース分解酵素を含む水溶液には、pHを安定させるためのpH緩衝剤を含ませることが好ましい。該水溶液のpHとしては、該セルロース分解酵素の至適pH(酵素活性が高くなるpH)付近であることが望ましい。一般に、該至適pHは酸性〜中性であることが多いので、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等が好適に用いられる。
前述したように、水酸化ナトリウム水溶液を用いてアルカリ処理を行ったセルロース含有物の水酸基のプロトンの一部はNaカチオンに変換されている可能性があるので、前記セルロース分解酵素を含む水溶液に酢酸、クエン酸、リン酸等の酸を所定の量加えて該セルロース含有物に接触させることにより水酸基に戻すと共に、セルロース分解酵素によるセルロースの加水分解に適した酸性〜中性付近のpHに調整することにより、当該酵素処理を効率よく行うことができる。
前記工程Cにおける酵素処理において、前記セルロース含有物と前記セルロース分解酵素を含む水溶液とを接触させる際の温度は、該セルロース分解酵素の至適温度(酵素活性が高くなる温度)付近であることが望ましい。一般には、該至適温度は10〜80℃の範囲であり、40〜70℃がより好ましく、50〜65℃がさらに好ましい。
前記工程Cにおける酵素処理において、前記セルロース含有物と前記セルロース分解酵素を含む水溶液とを接触させる際の処理時間の範囲は、適切な酵素濃度、pH、温度であれば、14日以下で行うことができる。多くの場合、反応開始後1日間が最も反応速度が高く、その後2〜6日間で反応速度が徐々に低下し、反応開始10日後以降では反応がほぼ停止してセルロース含有物に含まれるセルロースのグルコースへの転換率が頭打ちになる傾向がある。
ここで、前記転換率とは、セルロース含有物に含まれるセルロースの質量に対する、糖化反応により得られた糖類の質量の割合をいう。該糖類とは、前記水溶性オリゴ糖又はグルコースをいう。
前記工程Cでは、セルロースの加水分解を酵素を用いて比較的穏やかな条件で行うため、生成した前記糖類の過分解がほとんど起こらず、純度の高い糖類を得ることができる。生成した前記糖類は前記セルロース分解酵素を含む水溶液中に溶解している。該糖類を該水溶液から回収して得る方法は特に制限されず、クロマトグラフィー等の公知の方法で行えばよい。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[試験例1]
セルロース含有物である綿糸5gと、4Nの水酸化ナトリウム水溶液200gとをガラス製ビーカー(300mL)で混合して、5℃で30分間、接触させた(工程A)。
つぎに、ビーカーから前記水酸化ナトリウム水溶液を除去して、脱イオン水を加え、アルカリ処理した前記セルロース含有物を水洗し8時間放置した(工程B)。その後、脱水を行い乾燥を行った。
つづいて、上記処理済み乾燥木綿0.5gを、6本のポリプロピレン試験管中にそれぞれ取り、酢酸−酢酸Na緩衝液(pH5.0)を投入し、その緩衝液濃度を0,10,50,250,1000,2000mMに調製した9.975mlの溶液A〜Fを得た。
次いで、セルロース分解酵素であるセルラーゼSS(ナガセケムテック株式会社製;活性1600CUN/g以上)の酵素溶液0.025mlを各溶液A〜Fに添加した。この反応溶液における酵素溶液濃度は5.0%{%:ml(酵素溶液)/g(基質)×100}である。この反応溶液をよく攪拌した後、静置した状態で、5日間、50℃で糖化反応を行った。
この酵素処理の開始後、所定日数経過後における反応液に含まれるグルコース量をHPLCにより測定し、「グルコース転換率(質量%)=生成したグルコースの質量/綿繊維の質量(0.5g)」の計算を行った。
その結果、反応開始5日後の各溶液のグルコース転換率は、59%(溶液A),67%(溶液B),68%(溶液C),59%(溶液D),40%(溶液E),28%(溶液F),となった。この結果を図1に示す。
以上の結果から、糖化反応速度を速めるために、反応溶液の緩衝液濃度を0〜250mMの範囲とすることが好ましく、10mM〜200mMの範囲とすることがより好ましいことが明らかである。
本発明のセルロースの糖化方法は、セルロース含有物から糖類を製造するために広く利用することが可能である。

Claims (4)

  1. セルロースを加水分解して水溶性オリゴ糖又はグルコースを含む水溶液を得るセルロースの糖化方法であって、
    綿を含有する繊維と水酸化ナトリウム水溶液とを接触させるアルカリ処理を行い、前記水酸化ナトリウム水溶液を含む前記繊維を酢酸でアルカリ中和した後、該繊維とセルロース分解酵素を含む水溶液とを0〜250mMの緩衝液濃度の範囲で接触させる酵素処理を行う方法において、
    前記酵素処理における水溶液の緩衝液濃度を、酢酸及び酢酸NaからなるpH緩衝剤を用いて調整することを特徴とするセルロースの糖化方法。
  2. 前記アルカリ処理において、−10℃〜50℃の温度範囲で、0.1〜10Nの前記アルカリ水溶液に、前記セルロース含有物を、0.1〜60分の時間範囲で接触させることを特徴とする請求項1記載のセルロースの糖化方法。
  3. 前記酵素処理における酵素反応をpH3〜pH10の範囲で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースの糖化方法。
  4. 前記綿を含有する繊維の長さが1mm以上1m以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のセルロースの糖化方法。
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