JP5721312B2 - タイヤ内部故障判定方法、及び、タイヤ内部故障判定装置 - Google Patents
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Description
また、ベルト間のセパレーションはベルトの幅方向両端部のせり上がりを引き起こし、その結果、操縦安定性能が低下する恐れがある。
そこで、タイヤショルダー部に温度センサーを埋め込んで走行中のタイヤの温度を計測し、この温度変化からタイヤの内部故障を検知する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、タイヤショルダー部に、タイヤの周方向の加速度を測定する加速度センサーとタイヤの幅方向の加速度を測定する加速度センサーとを埋設して、走行中のタイヤショルダー部のタイヤ周方向の変形量とタイヤ幅方向の変形量とを算出した後、これら2方向の変形量を用い、タイヤショルダー部の時系列の変形を、タイヤ周方向とタイヤ幅方向をそれぞれx軸及びy軸とした直交座標系での軌跡として表し、この軌跡からタイヤショルダー部の変形の大きさや形態を検知して、タイヤの内部故障を検知する(例えば、特許文献3参照)。
また、センサーをタイヤの転動時に大きな応力が作用するベルト端部に配置した場合には、かえってベルト端部が破壊されてセパレーションを引き起こす可能性が大きい。
なお、「セパレーション」は、一般に、タイヤを構成しているゴムとベルトやゴムとゴムとが剥離損傷する現象を指すもので、コード端部とコーティングゴムとが剥離するソケッティング現象も「セパレーション」に含まれる。
また、本願発明は、前記タイヤ内部故障判定装置であって、前記判定手段がタイヤに内部故障が発生していると判定した場合に、運転者に警報を発する警報手段を設けたことを特徴とする。
したがって、タイヤ内部故障が発生していると判定した場合に、これを運転者に警報するようにすれば、車両の走行安定性を向上させることができる。
タイヤ内部故障判定装置10は加速度センサー11と、加速度波形抽出手段12と、周波数分析手段13と、帯域値演算手段14と、故障判定手段15と、警報手段16とを備える。
同図において、21はビード部、21cはビードコア、22はカーカス層、23は第1ベルト層、24は第2ベルト層、25はトレッド、26はインナーライナーである。
カーカス層22は、タイヤ20の骨格を成す部材であって、ビード部21に配置された1対のビードコア21cにトロイド状をなして跨るように設けられる。カーカス層22のクラウン部のタイヤ径方向外側には、2枚のベルト層(第1及び第2のベルト層)23,24が配置される。第1及び第2のベルト層23,24は、それぞれ、スチールコードもしくは有機繊維を撚ったコードが、赤道方向に対して20°〜70°の角度で交錯するように配置されたもので、タイヤ径方向内側に配置される第1のベルト層23はタイヤ径方向外側に配置される第2のベルト層24よりも幅広に形成されており、第1のベルト層23のコードの延長方向と第2のベルト層24のコードの延長方向とは互いに交錯している。
コード端部とコーティングゴムとが剥離してゴムに亀裂が生じるソケッティングは、主に、第1及び第2のベルト層23,24の端部で発生し、これが進展すると、図3に示すように、タイヤショルダー部27において、第1のベルト層23と第2のベルト層24とが剥離するセパレーションへと発展する。
なお、加速度センサー11は、走行中に小石などが当たらないように、スポーク31sの意匠面の裏側に取付けることが好ましい。
周波数分析手段13は、加速度波形抽出手段12により抽出された幅方向加速度波形を周波数解析して周波数スペクトルを求める。
図5は、スポークに加速度センサーを取付けたホイールに、以下のNo.1〜No.5で示す試験タイヤをそれぞれ搭載し、これらのタイヤを、フラットベルト試験機上で60km/hrで走行させたときに求めたホイール幅方向加速度の周波数スペクトルを示す図である。横軸は周波数(Hz)、縦軸は幅方向加速度レベル(dB)である。
なお、故障の大きさについては、図3に示す、第1ベルト層23と第2ベルト層24とのセパレーションが発生している領域の広さ=(幅方向長さW;mm)×(周方向長さL;mm)で表わす。
No.1のタイヤ(太い実線) ;新品時タイヤ
No.2のタイヤ(一点鎖線) ;W×L=30×200
No.3のタイヤ(破線) ;W×L=30×300
No.4のタイヤ(細かい破線);W×L=30×半周
No.5のタイヤ(太い破線) ;W×L=30×全周
No.の大きい方が故障の大きさが大である。
図6は、セパレーションの周方向長さと周波数スペクトルの350Hz〜390Hzの周波数帯におけるホイール幅方向加速度の大きさ(以下、帯域値Pという)との関係を示す図である。同図から明らかな通り、セパレーションの周方向長さが大きいほど帯域値Pが小さくなることがわかる。
したがって、ホイール幅方向加速度の周波数スペクトルの350Hz〜390Hzの周波数帯域の帯域値Pを求めることにより、タイヤにどの程度の大きさのセパレーションが発生したか否かを推定することができる。
なお、帯域値Pを特定の周波数における幅方向加速度レベルとすると誤差が生じ易いので、帯域値Pとしては、350Hz〜390Hz帯域のうちの複数の周波数における幅方向加速度レベルの平均値か、あるいは、予め設定した350Hz〜390Hz帯域のうちの所定の周波数帯域(例えば、370Hz〜390Hz)における幅方向加速度レベルの総和もしくは積分値を用いることが好ましい。
なお、故障判定のための閾値Kとしては、図5のNo.1の帯域値P(1)〜No.5の帯域値P(5)の間のいずれかの値を選択すればよいが、タイヤ内部故障の早期判定のためには、閾値Kとしては、例えば、図5のNo.2の帯域値P(2)程度のように、セパレーションの程度が小さい時の帯域値Pを用いることが好ましい。
警報手段16は、タイヤ20に内部故障が発生したときに、運転席近傍に配置されるランプなどを点滅させたり、スピーカーから警戒音を発生させたりすることで、運転者に警報を発する。
まず、加速度センサー11にて走行中のホイール30の幅方向の振動を検出し(ステップS11)、その出力信号からホイール幅方向加速度の時系列波形である幅方向加速度波形を抽出する(ステップS12)。
次に、幅方向加速度波形を周波数解析して周波数スペクトルを求め(ステップS13)、この周波数スペクトルから、350Hz〜390Hzの周波数帯域内にある周波数成分の大きさである帯域値Pを演算する(ステップS14)。
そして、この演算した帯域値Pと予め設定した閾値Kとを比較し(ステップS15)、帯域値Pが閾値K未満である場合には、「故障」と判定し、この判定結果を運転者に報知する(ステップS16)。
あるいは、図8に示すように、予め求めておいた正常なタイヤを装着して走行したときの帯域値と、内部に大きさの異なるセパレーションが発生した複数個のタイヤをそれぞれ装着して走行したときの帯域値との関係を示すテーブル41Tを記憶する記憶手段41を設ける。そして、演算された帯域値Pとテーブル41Tとに基づいて、タイヤに生じたセパレーションの大きさ、すなわち、タイヤの内部故障の程度を推定する故障程度推定手段42を設けて、タイヤの内部故障の程度を推定し、この推定されたタイヤの内部故障の程度に応じて、タイヤが故障しているか否かを判定するようにしてもよい。
故障判定手段15では、推定したタイヤの内部故障の程度の推定値と、予め設定した閾値Kとを比較して、タイヤにセパレーションによる内部故障が発生しているか否かを判定する。例えば、閾値Kを3、すなわち、セパレーションがタイヤ周方向に300mmの長さに生じたときを「故障」と設定したとする。そして、故障程度推定手段42で推定した内部故障の程度の推定値が2、すなわち、セパレーションがタイヤ周方向に200mmの長さにわたって生じていると推定された場合には、故障判定手段15は「故障」と判定しない。
逆に、閾値Kを2、すなわち、セパレーションがタイヤ周方向に200mmの長さにわたって生じたときを「故障」と設定した場合には、故障程度推定手段42で推定した内部故障の程度の推定値が3と推定されると、故障判定手段15は「故障」と判定する。
故障判定手段15が「故障」と判定した場合には、この判定結果は警報手段16に送られ、タイヤに内部故障が発生したことが運転者に報知される。
また、帯域値Pを演算する周波数帯域については、タイヤ種、サイズ、車輪速、タイヤ内圧等により変更してもよい。
20 タイヤ、21 ビード部、21c ビードコア、22 カーカス層、
23 第1ベルト層、24 第2ベルト層、25 トレッド、26 インナーライナー、27 タイヤショルダー部、30 ホイール、31 ディスク部、31s スポーク、
32 リム部、32a リムフランジ、32b リムベース部、
41 記憶手段、41T テーブル、42 故障程度推定手段。
Claims (4)
- ホイールのディスク部に設けられたスポークに取付けられた加速度センサーにより走行中の当該ホイールの幅方向の加速度を検出する検出ステップと、
前記加速度センサーの出力信号から得られるホイール幅方向加速度波形の350Hz〜390Hzの周波数帯域内にある周波数成分の大きさである帯域値を演算する演算ステップと、
前記演算ステップで演算された帯域値と、予め測定しておいた正常なタイヤを前記ホイールに装着して走行したときの帯域値及びベルト層の端部にセパレーションが発生したタイヤを前記ホイールに装着して走行したときの帯域値とを比較し、当該タイヤに前記セパレーションによる内部故障が発生しているか否かを判定する判定ステップと、
を備えることを特徴とするタイヤ内部故障判定方法。 - ホイールのディスク部に設けられたスポークに取付けられ、当該ホイールの幅方向の加速度を検出する加速度センサーと、
前記加速度センサーの出力信号からホイール幅方向加速度波形を抽出する幅方向加速度波形抽出手段と、
前記ホイール幅方向加速度波形から、350Hz〜390Hzの周波数帯域内にある周波数成分の大きさである帯域値を演算する帯域値演算手段と、
予め計測しておいた正常なタイヤを前記ホイールに装着して走行したときの帯域値とベルト層の端部にセパレーションが発生したタイヤを前記ホイールに装着して走行したときの帯域値とに基づいて設定された閾値を記憶する記憶手段と、
前記演算された帯域値と前記閾値とを比較し、前記演算された帯域値が前記閾値を超えたときに当該タイヤに前記セパレーションによる内部故障が発生していると判定する判定手段とを備えたことを特徴とするタイヤ内部故障判定装置。 - 前記判定手段がタイヤに内部故障が発生していると判定した場合に、運転者に警報を発する警報手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤ内部故障判定装置。
- ホイールのディスク部に設けられたスポークに取付けられ、当該ホイールの幅方向の加速度を検出する加速度センサーと、
前記加速度センサーの出力信号からホイール幅方向加速度波形を抽出する幅方向加速度波形抽出手段と、
前記ホイール幅方向加速度波形から、350Hz〜390Hzの周波数帯域内にある周波数成分の大きさである帯域値を演算する帯域値演算手段と、
予め作成しておいた正常なタイヤを前記ホイールに装着して走行したときの帯域値とベルト層の端部に大きさの異なるセパレーションが発生した複数個のタイヤをそれぞれ前記ホイールに装着して走行したときの各帯域値との関係を示すテーブルを記憶する記憶手段と、
前記演算された帯域値と前記記憶手段に記憶されたテーブルとに基づいて、当該タイヤに前記セパレーションによる内部故障が発生していると判定する判定手段とを備えたことを特徴とするタイヤ内部故障判定装置。
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