JP5441658B2 - タイヤ内部故障判定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、走行中のタイヤにセパレーションなどの内部故障が発生したか否かを判定する方法に関するものである。
タイヤは、カーカスプライやベルトなどの繊維または金属のコードをゴムでコーティングした部材を積層した構造を有している。このため、車両走行中に前記部材の接着部に過大な負荷が入力すると、コード端部とコーティングゴムとが剥離してゴムに亀裂が生じるソケッティングと呼ばれる現象が発生する。タイヤ周上の各部に発生したソケッティングが結合していくと、積層した部材同士が剥離するセパレーションへと発展する。
また、ベルト間のセパレーションはベルトの幅方向両端部のせり上がりを引き起こし、その結果、操縦安定性能が低下する恐れがある。
タイヤにセパレーションなどの内部故障が発生すると故障箇所の発熱が多くなって、故障箇所近傍の温度が上昇する。
そこで、内部故障が発生が発生しやすいタイヤショルダー部に温度センサーを埋め込んで走行中のタイヤの温度を計測し、この温度変化からタイヤの内部故障を検知する方法(例えば、特許文献1参照)や、タイヤの環状部分に所定温度範囲にキューリー点を有する感温フェライトを周方向に沿って所定ピッチで配設するとともに、車体側に環状部分と交差する環状磁路を形成する磁石と環状磁路の外周に巻き付けられたコイルを設けて、タイヤの回転に伴う磁束密度変化によりコイルに励起される起電力を測定し、この測定波形からタイヤのショルダー部の変形を間接的に検出して、タイヤの内部故障を検知する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
また、走行中のタイヤのショルダー部の変形を直接検出してタイヤの内部故障を検出する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
具体的には、タイヤショルダー部に、タイヤの周方向の加速度を測定する加速度センサーとタイヤの幅方向の加速度を測定する加速度センサーとを埋設して、走行中のタイヤショルダー部のタイヤ周方向の変形量とタイヤ幅方向の変形量とを検出した後、これら2方向の変形量を用い、タイヤショルダー部の加速度の時系列の変形を、タイヤ周方向とタイヤ幅方向をそれぞれx軸及びy軸とした直交座標系での軌跡として表し、この軌跡からタイヤショルダー部の変形の大きさや形態を検知して、タイヤの内部故障を検知する。
特開2005−67447号公報 特開2004−69462号公報 特開2007−191038号公報
しかしながら、従来のタイヤ内部故障の検知方法では、センサーをセパレーションの発生するベルト端部の近傍であるタイヤショルダー部のゴムに埋設しているので、センサーと周りのゴムとの境界面が新たなゴムの亀裂の核となってタイヤ故障を誘発する恐れがあった。
また、センサーをタイヤの転動時に大きな応力が作用するベルト端部に配置した場合には、かえってベルト端部が破壊されてセパレーションを引き起こす可能性が大きい。
逆に、故障箇所から離れた箇所にセンサーを設置した場合には、検出感度が低下する可能性がある。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤの挙動に影響を与えることなく、セパレーションによるタイヤ内部故障が発生しているかどうかを精度よく判定することのできるタイヤ内部故障判定方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、セパレーションなどのタイヤの内部故障が発生すると、走行中にトレッドの故障発生箇所が膨れ変形し、この変形した部分が踏面に達する際にバネ下に入力が発生し、その結果として、車両バネ下の振動の特定回転次数レベルが正常なタイヤに比べて大幅に増加することから、走行中の車両バネ下の振動を検出して回転次数レベルを求め、この回転次数レベルと正常なタイヤの回転次数レベルとの差をタイヤの内部故障のメジャーに用いれば、タイヤ内部故障が発生しているか否かを精度よく判定できることを見出し本発明に到ったものである。
すなわち、本願発明は、走行中のタイヤにセパレーションなどのタイヤ内部故障が発生したか否かを判定する方法であって、車両のバネ下に取付けられた加速度センサーにより走行中の車両バネ下の加速度を検出する第1のステップと、車輪速を検出する第2のステップと、前記検出された加速度と車輪速とから前記加速度のタイヤ回転次数レベルを演算する第3のステップと、前記演算されたタイヤ回転次数レベルと予め設定された閾値とを比較し、前記タイヤ回転次数レベルが前記閾値を超えたときにタイヤ内部に故障が発生していると判定する第4のステップと、前記タイヤ回転次数レベルのピーク位置を検出する第5のステップと、前記検出されたピーク位置からタイヤ内部に発生している故障の大きさを推定する第6のステップとを有することを特徴とする。
「セパレーション」は、一般に、タイヤを構成しているゴムとベルトやゴムとゴムとが剥離損傷する現象を指すが、コード端部とコーティングゴムとが剥離するソケッティング現象も、「セパレーション」に含まれるものとする。
なお、タイヤ回転次数レベルは、横軸をタイヤ回転次数としたときの振動スペクトルである回転次数スペクトルにおける回転次数成分の大きさをいう。また、タイヤが1回転したときに1周期となる回転次数成分を回転1次成分、n周期となる回転次数成分を回転n次成分という。
回転次数スペクトルは、タイヤ振動を周波数分析して求めた振動スペクトル(横軸;周波数、縦軸;振動レベル)を、タイヤ回転速度を用いて、横軸が回転次数となる振動スペクトルに変換する方法や、タイヤなどの回転体の振動をタイヤ回転速度に同期させてサンプリングした信号を高速フーリエ変換する方法がある。
タイヤ回転次数レベルは、回転角度に対する周期成分の位相が固定されているので、時間単位で計測する周波数分析で求めた振動レベルと比較して、振動レベルを精度良く検出することができる。
このように、例えば、ナックルやホイールハブなどの車両バネ下に配置された部品(車両バネ下部品)に取付けた加速度センサーから出力される加速度波形の回転次数スペクトルの所定の回転次数レベルと、予め求めておいた閾値とを比較して、タイヤ内部故障が発生しているか否かを判定するとともに、タイヤ回転次数レベルのピーク位置を検出し、検出されたピーク位置からタイヤ内部に発生している故障の大きさを推定するようにしたので、タイヤの挙動に影響を与えることなく、タイヤ内部故障が発生しているか否かを確実に判定することができる
また、セパレーションがタイヤ周方向に拡大すると、周波数スペクトルにおける振動のピークも低周波側に移動するが、本発明では、回転次数レベルが大きくなる位置(ピーク位置)を検出して、故障の大きさを推定するようにしているので、タイヤ内部故障の発生だけでなく、故障の大きさについても推定できる。したがって、車両の走行安全性を向上させることができる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
本実施の形態に係るタイヤ内部故障判定装置の構成を示す図である。 タイヤの構成を示す断面図である。 セパレーションの発生箇所を示す図である。 タイヤトレッドの変形状態を示す模式図である。 タイヤトレッドの変形に伴う入力インパルス信号を示す図である。 入力インパルス信号を回転次数分析した結果を示す図である。 車両バネ下部における上下方向の加速度波形を回転次数分析して得られた回転次数スペクトルの一例を示す図である。 タイヤ内部故障判定方法を示すフローチャートである。 回転次数スペクトルの一例を示す図である。 予め求めておいた正常なタイヤを装着したときのタイヤ回転次数レベルと、故障したタイヤを装着したときのタイヤ回転次数レベルと、閾値となる回転次数レベルとを回転次数毎にプロットしたグラフである。 車両バネ下部の幅方向加速度波形を回転次数分析して得られた回転次数スペクトルの一例を示す図である。 セパレーションがタイヤ周方向に拡大したときの入力インパルス信号とこの入力インパルス信号を回転次数分析した結果を示す図である。 セパレーションの大きさによる回転次数レベルの推移を示す図である。 回転次数レベル抽出手段の他の構成を示す図である。
図1は、タイヤ内部故障判定装置10の構成を示す図である。
タイヤ内部故障判定装置10は加速度センサー11と、車輪速センサー12と、加速度波形抽出手段13と、回転次数レベル抽出手段14と、記憶手段15と、故障判定手段16と、警報手段17とを備える。
加速度センサー11は、図1に示すように、ナックル21に取付けられて、タイヤ30が装着されたホイール22及びホイールハブ23を介して、路面40からタイヤ30に入力してナックル21に伝播されるタイヤ振動を検出する。本例では、加速度センサー11の検出方向を、路面40に垂直な方向である上下方向とした。
ナックル21はホイール22とともに回転するホイールハブ23と軸受けを介して連結された車輪部20の非回転側部品(車両バネ下部品)で、このナックル21に図示しないブレーキ装置などが装着される。ナックル21はサスペンション部材24を備えた車両懸架装置の上下のアーム25,26と、ゴムブッシュなどの緩衝部材27,28を介して連結されている。
なお、加速度センサー11を、上下のアーム25,26などの、ホイール22と緩衝部材27,28を介して連結されている部材に取付けると、緩衝部材27,28のダンパー効果によりタイヤ振動の検出精度が低下する。したがって、加速度センサー11の取付け箇所としては、車両バネ下であっても、ナックル21やホイールハブ23などのような、緩衝部材27,28よりもホイール22側にある部品に設置した方が車両バネ下に伝播される振動を精度良く検出することができる。
車輪速センサー12は車輪の回転速度(以下、車輪速という)を検出するもので、本例では、外周部に歯車が形成され車輪とともに回転するローターと、このローターと磁気回路を構成するヨークと、磁気回路の磁束変化を検出するコイルとを備え、車輪の回転角度を検出する周知の電磁誘導型の車輪速センサーを用いている。ヨークとコイルとはナックル21に装着される。なお、車輪速センサー12としては、リング多極マグネットと磁気抵抗素子とを組み合わせたものなど、他の構成の車輪速センサーを用いてもよい。あるいは、図示しないトランスミッションの回転速度を検出し、これを車輪速としてもよい。
加速度波形抽出手段13は、加速度センサー11の出力信号から車両バネ下部の上下方向加速度の時系列波形(以下、加速度波形という)を抽出する。
回転次数レベル抽出手段14は、周波数分析手段14aと回転次数スペクトル演算手段14bと、レベル抽出手段14cとを備える。
周波数分析手段14aは、加速度波形抽出手段13により抽出された加速度波形を周波数解析し、横軸が周波数で縦軸が加速度の大きさである、加速度波形の周波数スペクトル(振動スペクトル)を求める。
回転次数スペクトル演算手段14bは、前記加速度波形の周波数スペクトルを、車輪速センサー12で検出した車輪速を用いて、横軸が回転次数で縦軸が加速度の大きさである回転次数スペクトルに変換する。
レベル抽出手段14cは、前記回転次数スペクトルから予め設定された所定の回転次数成分の大きさである回転次数レベルを検出して抽出する。
記憶手段15は、後述する故障判定手段16において使用する閾値を記憶して保存する。この閾値としては、予め求めておいた正常なタイヤを装着したときのタイヤ回転次数レベルよりも、3dB〜7dBぐらい大きな値とすることが好ましい。
故障判定手段16は、回転次数レベル抽出手段14で抽出した当該タイヤ30の回転次数レベルと、記憶手段15に記憶されている閾値とを比較して、走行中のタイヤ30にセパレーションなどの内部故障が発生しているか否かを判定するとともに、内部故障が発生していると判定した場合に、警報手段17に、タイヤ内部故障が発生しているという信号(故障信号)を出力する。
警報手段17は運転席近傍に設置されて、故障信号が入力されたときに、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーにタイヤ内部故障が発生していることを認識させる。なお、警報用のブザーを駆動し、警報音により、タイヤ内部故障が発生していることを認識させてもよいし、警報用のブザーとLEDとを併用してもよい。
次に、タイヤ内部故障について説明する。
図2は、タイヤ30の構成を示す断面図である。同図において、31はビード部、31Cはビードコア、32はカーカス層、33は第1ベルト層、34は第2ベルト層、35はトレッド、36はインナーライナーである。
カーカス層32は当該タイヤ30の骨格を成す部材であって、ビード部31に配置された1対のビードコア31Cにトロイド状をなして跨るように設けられる。このカーカス層32のクラウン部のタイヤ径方向外側に、2枚のベルト層(第1及び第2のベルト層)33,34が配置される。第1及び第2のベルト層33,34は、それぞれ、スチールコードもしくは有機繊維を撚ったコードが、赤道方向に対して20°〜70°の角度で交錯するように配置されたものである。タイヤ径方向内側に配置される第1のベルト層33はタイヤ径方向外側に配置される第2のベルト層34よりも幅広に形成されており、第1のベルト層33のコードの延長方向と第2のベルト層34のコードの延長方向とは互いに交錯している。
コード端部とコーティングゴムとが剥離してゴムに亀裂が生じるソケッティングは、主に、第1及び第2のベルト層33,34の端部で発生し、これが進展すると、図3に示すように、タイヤショルダー部37において、第1のベルト層33と第2のベルト層34とが剥離するセパレーションへと発展する。
ここで、セパレーションが発生し、第1のベルト層33の端部と第2のベルト層34の端部とが剥離したとすると、2つのベルト層33,34間には互いを拘束する力がなくなるため、ベルト角度による変形がトレッド35に現れる。この変形は、図4の矢印に示す変形部分のように、トレッド35が、タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に広がるような変形である。これに伴って、周上の一箇所(トレッド35が変形した箇所)において、路面40からタイヤ30に入力が発生する。
このような周上の一箇所において発生する入力は、図5に示すような、インパルス信号となる。図5において、横軸は時間[msec]、縦軸は入力レベル[a.u.]である。この入力インパルスを回転次数分析すると、図6に示すような、入力の回転次数スペクトルが得られる。図6において、横軸は回転次数、縦軸は入力レベル[dB]である。このように、入力インパルスは、特定の回転次数n(ここでは、n=10,20,30近傍)でピークを持つ入力となる(なお、n=10近傍のピークは、路面凹凸などに起因する不規則な振動のため見えにくくなっている)。
タイヤ30にこのような入力が発生すると、タイヤ30は振動し、この振動が車両バネ下に伝搬する。
図7は、ナックル21に取付けられた加速度センサー11で検出した車両バネ下部における上下方向の加速度波形を回転次数分析して得られた回転次数スペクトルの一例を示す図で、破線は正常タイヤの回転次数スペクトル、実線は故障タイヤの回転次数スペクトルである。故障タイヤでは、同図の矢印に示すように、回転次数の10次付近に顕著なピークが発生している。なお、図7のデータは、車両の速度は40km/hrにおけるデータである。また、車両の速度は車輪速センサー12の出力から求めた。
したがって、正常タイヤの回転次数スペクトルにおける所定の回転次数レベルと故障タイヤの同じ回転次数レベルとを比較し、その差が所定の大きさを超えていれば、タイヤ30にセパレーションなどの内部故障が発生していると判定することができる。
次に、タイヤ内部故障判定装置10を用いてタイヤの内部故障を判定する方法について、図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、加速度センサー11にてバネ下加速度情報である走行中のタイヤ30の車両バネ下部(ナックル21)の上下方向の振動を検出し、その検出信号を加速度波形抽出手段13に出力する(ステップS11)とともに、車輪速センサー12にてタイヤ回転情報である車輪速を検出し、その検出信号を回転次数レベル抽出手段14に設けられた回転次数スペクトル演算手段14bに出力する(ステップS12)。
次に、加速度波形抽出手段13にて、加速度センサー11の出力波形から車両バネ下部の上下方向の加速度の時系列波形である加速度波形を抽出し、これを回転次数レベル抽出手段14に出力する(ステップS13)。
回転次数レベル抽出手段14では、抽出された加速度波形を周波数分析して周波数スペクトルを求め(ステップS14)た後、車輪速を用いて、周波数スペクトルを、図9に示すような回転次数スペクトルに変換する(ステップS15)。そして、この回転次数スペクトルから20次までの回転次数レベルを抽出する(ステップS16)。なお、図9において、破線は正常タイヤの回転次数スペクトル、実線は故障タイヤの回転次数スペクトルである。故障タイヤでは、同図の丸印に示すように、回転次数の10次付近に顕著なピークが発生している。なお、図7のデータは、車両の速度は40km/hrにおけるデータである。
次に、抽出されたタイヤ回転次数レベルと予め記憶手段15に記憶しておいた閾値とを比較し、タイヤ回転次数レベルが閾値を超えているか否かを調べる(ステップS17)。タイヤ回転次数レベルが閾値を超えている場合には、タイヤ内部に故障が発生していると判定し、故障信号を警報手段17に送って、タイヤ30に内部故障が発生したことを運転者に報知して、運転者に注意を促す(ステップS18)。タイヤ30にセパレーションによる内部故障が発生していないと判定された場合には、ステップS11に戻って、ステップS11〜ステップS17までの操作を繰り返す。
図10は、予め求めておいた正常なタイヤを装着したときのタイヤ回転次数レベルと、故障したタイヤを装着したときのタイヤ回転次数レベルと閾値となる回転次数レベルを各回転次数毎にプロットしたグラフで、同図の◆が正常タイヤのデータで、同図の■が故障タイヤのデータで、同図の▲が閾値を示す。
このように、回転次数毎に正常タイヤのデータよりも高いレベルの閾値を設定することにより、演算されたタイヤ回転次数レベルが閾値を超えたときにタイヤ内部に故障が発生していると判定するようにすれば、タイヤが故障タイヤであるか否かを精度よく算出することができる。この閾値としては、正常タイヤのデータよりも3dB〜7dB程度高い位置に設定することが好ましい。閾値と正常タイヤのデータとの差が3dB未満であれば、安全性の点からは好ましいが、セパレーションが発生しない場合も警報を発するケースが増えるといった問題点がある。一方、閾値と正常タイヤのデータとの差が7dBを超えると、セパレーションの初期にはセパレーションを検知できないので、この閾値は、正常タイヤのデータよりも3dB〜7dB程度高い位置がよい。
このように、本実施の形態によれば、ナックル21に取付けられた加速度センサー11と、車輪の回転速度を検出する車輪速センサー12と、加速度センサー11の出力信号から車両バネ下部の上下方向加速度の時系列波形を抽出する加速度波形抽出手段13と、上下方向加速度の時系列波形を抽出して周波数分析するとともに、周波数分析して得られた周波数スペクトルを車輪速を用いて回転次数スペクトルに変換して所定の回転次数成分の大きさである回転次数レベルを求める回転次数レベル抽出手段14と、故障判定のための閾値を記憶する記憶手段15と、回転次数レベルと予め設定された閾値とを比較して、タイヤ30にセパレーションによる内部故障が発生しているかどうかを判定する故障判定手段16とを備えたタイヤ内部故障判定装置10を用いて、タイヤ30にセパレーションによる内部故障が発生しているかどうかを判定するようにしたので、タイヤの挙動に影響を与えることなく、セパレーションによるタイヤ内部故障が発生しているかどうかを判定することができる。
また、一つの加速度センサー11でタイヤ内部故障の判定を行うことができるので、装置を簡素化できる。
更に、タイヤ30にセパレーションによる内部故障が発生していると判定した場合には、警報手段17により、タイヤ30に内部故障が発生したことを運転者に報知して、運転者に注意を促すようにしたので、車両の走行安定性を向上させることができる。
なお、前記実施の形態では、車両バネ下部の上下方向の振動の回転次数スペクトルからタイヤ30に内部故障が発生したか否か判定したが、車両バネ下部の幅方向(車両幅方向)の振動の回転次数スペクトルの振動の回転次数スペクトル、もしくは、前後方向の振動の回転次数スペクトルを用いて、タイヤ30に内部故障が発生したか否か判定することも可能である。
図11は、車両バネ下部の幅方向振動の回転次数スペクトルの一例を示す図で、同図に示すように、幅方向振動の回転次数スペクトルにおいても、故障タイヤでは、10次近傍に、正常タイヤよりも10dB以上大きいピークが発生するので、タイヤ30に内部故障が発生したか否かを判定することができる。
また、前記例では、回転次数レベルからセパレーションが発生したか否かについて判定したが、回転次数レベルが大きくなる位置を検出することで、セパレーションの大きさについて推定することも可能である。
セパレーションがタイヤ周方向に拡大すると、故障部分の1周あたりの入力時間が長くなるので、図12(a)の実線に示すように、入力インパルス信号の幅は拡大する。なお、同図の破線は、セパレーションが周方向に拡大する前の入力インパルス信号である。
この入力インパルス信号を回転次数分析すると、入力のピークは低周波側に移動する。その結果、図13(a)〜(c)に示すように、周波数スペクトルにおける振動のピークも低周波側に移動する。
セパレーションの大きさを、図3に示す幅方向長さと周方向長さを用いて、(幅方向×周方向)と表わしたとき、図13(a)は、セパレーションの大きさが(55×100)のタイヤである。また、図13(b)は、セパレーションの大きさが(55×300)のタイヤ、図13(c)は、セパレーションの大きさが(55×1000)のタイヤである。なお、セパレーションの大きさの単位は[mm]で、1000[mm]はタイヤ半周分の長さである。
図13(a)〜(c)に示すように、セパレーションの周方向の大きさが100mmのタイヤでは、ピーク位置が50Hz近傍にあるが、周方向の大きさが300mmのタイヤではピークが35Hz近傍に移動してきている。そして、周方向の大きさが半周のタイヤでは、ピークは5Hz近傍になっていることがわかる。
前記各データは、車輪速が一定のデータであるので、バネ下振動の加速度の回転次数スペクトルにおいても、ピークとなる回転次数が小さくなることが予想される。
したがって、バネ下振動の加速度の回転次数スペクトルにおいて、回転次数レベルが大きくなる位置を検出すれば、セパレーションの大きさが推定できる。
また、前記例では、周波数分析手段14aと回転次数スペクトル演算手段14bとを用いて加速度波形抽出手段13で抽出された加速度波形を周波数解析して周波数スペクトルを求め、この周波数スペクトルを、車輪速を用いて回転次数スペクトルに変換したが、図14に示すように、回転信号生成手段13Zと回転次数比分析手段15Zとを備えた回転次数レベル抽出手段14Zを設け、前記加速度波形をタイヤ回転速度に同期させてサンプリングした後高速フーリエ変換して回転次数スペクトルを求め、実施の形態と同じ構成のレベル抽出手段14cにより、前記回転次数スペクトルから予め設定された所定の回転次数成分の大きさである回転次数レベルを検出して抽出するようにしてもよい。
回転信号生成手段13Zは、車輪速センサー12の出力のゼロクロス点で立ち上がるパルス信号を生成して出力するもので、パルス数を計数することで車輪速を検出することができるとともに、回転信号生成手段13Zから出力されるパルス信号をサンプリングクロックとして使用して加速度波形抽出手段13で抽出された加速度波形をサンプリングする。サンプリングクロックは、回転速度に同期しているので、このサンプリングクロックを用いて加速度センサー11で検出したタイヤ振動をサンプリングすれば、1回転あたりのサンプル数が車輪速に関わらず一定となる。
回転次数比分析手段15Zは、ローパスフィルタ15xと、サンプリング手段15yと、分析手段15zとを備えている。ローパスフィルタ15xは、加速度センサー11で検出したタイヤ振動の高周波成分を除去するとともに、回転次数比分析におけるエリアジング現象(折り返し)の発生を抑制する。
サンプリング手段15yは、回転信号生成手段13Zから出力されるサンプリングクロックを用いて加速度センサー11で検出したタイヤ振動をサンプリングする。
分析手段15zは、このサンプリングされたタイヤ振動の振動波形をFFT処理して回転次数スペクトルを求める。
図3に示すような、タイヤ内部故障が発生しているタイヤと(故障タイヤ)と新品タイヤ(正常タイヤ)とを準備し、これらのタイヤをそれぞれ試験車両の左前輪に装着して、車両バネ下振動の回転次数スペクトルをそれぞれ求めたところ、図7に示すように、故障タイヤでは、10次近傍に、顕著なピークが発生していることがわかった。
なお、タイヤサイズが225/55R17、車両の速度は40km/hrである。また、加速度センサーは、左前輪のナックルに、検出方向が車両上下方向になるよう取付けた。
故障タイヤの回転次数スペクトルに現れたピークは、正常タイヤよりも10dB以上大きいので、タイヤの回転次数スペクトルからセパレーションの進展によるタイヤ内部故障を判定することができることが確認された。
また、セパレーションの周方向の大きさの異なるタイヤを試験車両に搭載して、車両バネ下部の振動スペクトルをそれぞれ求めたところ、図13(a)〜(c)に示すように、セパレーションがタイヤ周方向に拡大するにつれて、ピークが低周波側に移動することも確認された。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
本発明によれば、タイヤの挙動に影響を与えることなく、タイヤ内部の破壊を精度よく検知することができるので、タイヤの故障を事前に検出することができ、車両の安全性を向上させることができる。
10 タイヤ内部故障判定装置、11 加速度センサー、12 車輪速センサー、
13 加速度波形抽出手段、14 回転次数レベル抽出手段、15 記憶手段、
16 故障判定手段、17 警報手段、
20 車輪部、21 ナックル、22 ホイール、23 ホイールハブ、
24 サスペンション部材、25,26 アーム、27,28 緩衝部材、
30 タイヤ、31 ビード部、31C ビードコア、32 カーカス層、
33 第1ベルト層、34 第2ベルト層、35 トレッド、
36 インナーライナー。

Claims (1)

  1. 車両のバネ下に取付けられた加速度センサーにより走行中の車両バネ下の加速度を検出する第1のステップと、
    車輪速を検出する第2のステップと、
    前記検出された加速度と車輪速とから前記加速度のタイヤ回転次数レベルを演算する第3のステップと、
    前記演算されたタイヤ回転次数レベルと予め設定された閾値とを比較し、前記タイヤ回転次数レベルが前記閾値を超えたときにタイヤ内部に故障が発生していると判定する第4のステップと
    前記タイヤ回転次数レベルのピーク位置を検出する第5のステップと、
    前記検出されたピーク位置からタイヤ内部に発生している故障の大きさを推定する第6のステップとを有することを特徴とするタイヤ内部故障判定方法
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