JP5720968B2 - 前方地山の探査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主として山岳トンネルの切羽前方に拡がる地山の地盤性状を探査する際に適用される前方地山の探査方法に関する。
山岳トンネルを掘削するにあたり、切羽前方に拡がる地山の性状を適切かつ高い精度で把握することは、支保工及び補助工を含めた掘削工事全体を効率よくかつ安全に進めていく上で非常に重要である。
トンネル切羽の前方探査を行う技術として、ドリルジャンボ(パーカッション型削孔機)やノンコア先進ボーリングマシン(ロータリー・パーカッション型削孔機)を利用したノンコア削孔による穿孔探査が知られているが、最近では、水圧ハンマーを用いた穿孔探査も試みられるようになってきた(特許文献1,2)。
水圧ハンマーは、削孔ロッドを介してボーリングマシンから伝達される給進力及び回転トルクを削孔面に作用させつつ、内蔵されたハンマーピストンを高圧水で往復動させることで該削孔面に打撃力を作用させることができる先端打撃式の削孔機であって、削孔ロッドの基端側で打撃力を与えるトップハンマー式の削孔機に比べ、削孔ロッド同士の継目でエネルギーロスが生じないため、削孔可能な深度が大きく、削孔速度も大きい。
そのため、水圧ハンマーによる前方探査が可能になれば、より遠くの地山を調査できる。
水圧ハンマーを用いたトンネル切羽の前方探査としては、水圧ハンマーへの送水流量Q及び送水圧Pと掘進速度Vから削孔エネルギーの指標値Eを算出し、これを給進力(フィード圧)で補正することで、切羽前方の地山における空洞部や割れ目の検出が試みられている(特許文献2)。
特開2012−193592号公報 特開2007−277940号公報
しかしながら、水圧ハンマーは、ある程度の大きさの反力を削孔面から受けないと、打撃が開始されない構造になっており、軟らかい地盤では、反力が得られずに打撃が行われない場合があるが、打撃が行われていないときにも、構造上、ビット先端から水が排出されるようになっている。
そのため、送水流量から打撃回数を推定するには限度があり、送水流量と打撃回数が比例することを前提とした上述の評価方法では判定精度が不十分で、信頼性の高い前方探査を行うことが困難であるという問題を生じていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、水圧ハンマーを用いて前方地山の地盤性状を探査する場合に信頼性を向上させることが可能な前方地山の探査方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る前方地山の探査方法は請求項1に記載したように、ボーリングマシンに装着した削孔ロッドの先端に水圧ハンマーを取り付け、該水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔することにより、該前方地山の地盤性状を探査する前方地山の探査方法において、
前記水圧ハンマーによる打撃エネルギーをE2、その打撃効率をKとしたとき、該水圧ハンマーによる削孔エネルギーE1を、次式、
E1=E2・K (1)
で、前記打撃エネルギーE2を、次式、
E2=P・√(F)・f/V (2)
P;水圧ハンマーへの送水圧
F;給進力
f;水圧ハンマーの打撃数(Hz)
V;削孔速度
でそれぞれ表すとともに、値が大きいほど地盤性状が良好であることを示す地山評価指標をXとしたとき、前記打撃効率Kを、該地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数K(X)として定義し、
互いに地盤性状が異なる複数の地山に対して得られた前記X及び前記E2を、次式、
X=E2・K(X)・c+d (3)
に適用することでc,d及びK(X)をそれぞれc′,d′,K′(X)として求め、
探査対象となる地山に対して得られた前記E2を、次式、
X=E2・K′(X)・c′+d′ (4)
に適用することで、該探査対象となる地山のXを推定するものである。
また、本発明に係る前方地山の探査方法は、前記打撃効率K(X)を、
K(X)=1/{1+exp(−a(X−b))} (5)
として定義するとともに、該(5)式が前記(3)式に代入されてなる次式、
X=E2・c/{1+exp(−a(X−b))}+d (3′)
に前記X及び前記E2を適用する際、a,bをa′,b′として求めることで、前記K′(X)を求めるものである。
本発明に係る前方地山の探査方法においては、水圧ハンマーによる打撃エネルギーをE2、その打撃効率をKとしたとき、該水圧ハンマーによる削孔エネルギーE1を、次式、
E1=E2・K (1)
で、打撃エネルギーE2を、次式、
E2=P・√(F)・f/V (2)
P;水圧ハンマーへの送水圧
F;給進力
f;水圧ハンマーの打撃数(Hz)
V;削孔速度
でそれぞれ表すが、削孔機を用いて前方探査を行うにあたり、削孔機で発生させた打撃エネルギーE2は、削孔面に伝達されるまでの間に熱、振動等の形で消費され、該打撃エネルギーが全て削孔エネルギーE1に用いられるものではない点を打撃効率Kという形で考慮する必要があり、トップハンマー式の削孔機であれば、主として削孔ロッド同士の継ぎ目で発生するエネルギーロスの影響が打撃効率に組み込まれる。
一方、水圧ハンマーの場合、該水圧ハンマーに内蔵されたハンマーピストンによって先端で衝撃力が発生するため、削孔ロッド同士の継ぎ目でエネルギーロスが発生することはほとんどないが、水圧ハンマーの構造特性として、ある程度の大きさの反力を削孔面から受けないと、打撃が開始されない構造になっており、軟らかい地盤では、反力が得られずに打撃が行われない場合がある。
したがって、本発明においては、値が大きいほど地盤性状が良好であることを示す地山評価指標をXとし、打撃効率Kを、この地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数K(X)として定義する。
このようにすれば、水圧ハンマー特有の性質が反映された打撃効率K(X)で削孔エネルギーE1が評価される。
本発明に係る前方地山の探査方法を用いて前方地山を探査するには、まず、互いに地盤性状が異なる複数の地山に対し、地山評価指標X及び打撃エネルギーE2を複数組のデータとして取得し、得られたX及びE2を、次式、
X=E2・K(X)・c+d (3)
に適用することでc,d及びK(X)をそれぞれc′,d′,K′(X)として求める。
(3)式は、地山評価指標Xと削孔エネルギーE1との間に強い正の相関、すなわち直線関係があることを根拠としたものであって、複数組のX及びE2を取得してこれらを(3)式に代入することで、未知数であるc,dを既知数のc′,d′として求めるとともに、未知関数であるK(X)をK′(X)として定める。
ここで、打撃エネルギーE2は、ボーリングマシンや水圧ハンマーから出力される計測データを(2)式に適用することで求めることが可能であり、地山評価指標Xは、水圧ハンマーによる削孔の後、通常のトンネル掘削を行うことによって、上述した削孔面が切羽の一部として露出したときにその切羽を観察することによって取得することが可能である。
このようないわば予備工程によって地山評価指標Xと打撃エネルギーE2との関係が定められたならば、次に、探査対象となる地山に対して水圧ハンマーを用いた削孔を行い、そのときの打撃エネルギーE2を予備工程のときと同様に求める。
次に、求められた打撃エネルギーE2を、次式、
X=E2・K′(X)・c′+d′ (4)
に適用することで、探査対象地山に対する地山評価指標Xを推定する。
本発明の対象となる地山は、主としてトンネル切羽の前方地山であるが、地盤性状を予め推定したい地山が存在するのであれば、トンネル切羽の前方地山に限定されるものではなく、例えば急傾斜地岩盤において崩落対策を行う工事に先立ち、法面の背後に拡がる地山を前方地山として探査したい場合には、該地山も包摂される。
地山評価指標Xは、地山の地盤性状を数値化した指標であればどのような指標でも採用可能であって、例えば地山等級を数値化したものでもよいが、例えば圧縮強度、風化変質、割目間隔及び割目状態の4つを観察指標、湧水量と劣化を補正指標として切羽を観察し、それら項目ごとで得られた点数を所定の割合で配点してなる切羽評価点、特に、日本道路協会の指針に定められている切羽評価点を採用することが可能である。
予備工程における複数の地山は、互いに地盤性状が異なれば足りるものであって、相異なるトンネル掘削現場でそれぞれ地盤性状が明らかになった地山、あるいは同一のトンネル掘削現場であってトンネル掘削によって次々に地盤性状が明らかになった地山をそれぞれ複数の地山とすることが可能であり、これらの場合においては、探査対象となる地山は、それらのトンネル掘削現場とは異なる別のトンネル掘削現場の地山となる。
一方、一つのトンネル掘削現場のうち、ある区間において次々に地盤性状が明らかになった地山をそれぞれ複数の地山とし、残りの区間の地山を探査対象地山とすることも可能である。
打撃効率K(X)は、地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数として定義されれば足りるものであって、具体的な構成は任意であり、例えば、シグモイド関数を用いて、
K(X)=1/{1+exp(−a(X−b))} (5)
として定義するとともに、該(5)式が前記(3)式に代入されてなる次式、
X=E2・c/{1+exp(−a(X−b))}+d (3′)
に前記X及び前記E2を適用する際、a,bをa′,b′として求めることで、前記K′(X)を求めることが可能である。
本実施形態に係る前方地山の探査方法の実施手順を示したフローチャート。 本実施形態に係る前方地山の探査方法に用いる削孔機20を示した側面図。 打撃効率K(X)を示したグラフ。 切羽評価点Xを削孔深度(m)に沿って示したグラフ。
以下、本発明に係る前方地山の探査方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る前方地山の探査方法の実施手順を示したフローチャート、図2は、それに用いる削孔機20を示した側面図である。
削孔機20は、ボーリングマシン21と該ボーリングマシンに取り付けられた水圧ハンマー22とで構成してある。
本実施形態に係る前方地山の探査方法は、探査対象となる地山の前方探査を行う前に、まず、互いに地盤性状が異なる複数の地山に対し、水圧ハンマー22による削孔を行うとともに、その際、削孔ロッド23を介してボーリングマシン21から水圧ハンマー22に伝達される給進力F、水圧ハンマー22への送水圧P、及び削孔速度Vを複数組計測する(ステップ101)。
次に、計測された値を用いて、次式、
E2=P・√(F)・f/V (2)
P;水圧ハンマーへの送水圧
F;給進力
f;水圧ハンマーの打撃数(Hz)
V;削孔速度
により、打撃エネルギーE2をそれぞれ算出するとともに、それらが算出された削孔面における切羽評価点Xを求める(ステップ102)。
切羽評価点Xは、値が大きいほど地盤性状が良好であることを示す地山評価指標であって、水圧ハンマー22による削孔の後、通常のトンネル掘削を行うことによって、上述した削孔面が切羽の一部として露出したときにその切羽を観察することによって取得することが可能であり、日本道路協会の指針に定められているように、例えば圧縮強度、風化変質、割目間隔及び割目状態の4つを観察指標、湧水量と劣化を補正指標として切羽を観察し、それら項目ごとで得られた点数を所定の割合で配点することで求めるようにすればよい。
なお、本実施形態では、一つのトンネル掘削現場のうち、掘削開始当初の区間において次々に地盤性状が明らかになる地山を複数の地山とし、残りの区間の地山を探査対象地山とする。
次に、切羽評価点Xと削孔エネルギーE1との間に強い正の相関、すなわち直線関係があると考えることができるので、両者は、c,dを未知数とした次式、
X=E1・c+d (3″)
で定める関係となり、さらに打撃効率をK(X)として、
X=E2・K(X)・c+d (3)
で定める関係が成り立つ。
ここで、K(X)は、水圧ハンマー22による打撃エネルギーをE2としたとき、削孔エネルギーE1との間で、次式、
E1=E2・K(X) (1)
を満たすものであって、水圧ハンマー22の場合、その構造特性として、ある程度の大きさの反力を削孔面から受けないと、打撃が開始されない構造になっており、軟らかい地盤では、反力が得られずに打撃が行われない場合があるため、その性質が反映されるよう、切羽評価点Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数として、次式、
K(X)=1/{1+exp(−a(X−b))} (5)
で定義してあり、未知のパラメータであるa,bが算出されたときにK′(X)となる。
図3は、(5)式で示されたK(X)を描いたグラフである。
次に、複数組からなる上述した切羽評価点X及び打撃エネルギーE2を上述した(3)式に適用することにより、未知数であるc,dを既知数のc′,d′として求めるとともに、未知のパラメータa,bを求めることで、それらが含まれたK(X)をK′(X)として定める(ステップ103)。
なお、(3)式には上述したようにa,b,c,dの4つの未知数が存在するため、4組以上の切羽評価点X及び打撃エネルギーE2を代入し、必要に応じて最小二乗法を用いながら、それらの値を求めればよい。
次に、探査対象となる地山に対して得られた打撃エネルギーE2を、次式、
X=E2・K′(X)・c′+d′ (4)
に適用することで、該探査対象となる地山の切羽評価点Xを推定する(ステップ104)。
図4は、切羽評価点Xを削孔深度(m)に沿って示したグラフであり、測定値のバラツキを考慮して上限値を実線、下限値を破線で示してある。
以上説明したように、本実施形態に係る前方地山の探査方法によれば、切羽評価点Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数を打撃効率K(X)として定義したので、水圧ハンマー22の性質を打撃効率に適切に反映することが可能となり、かくして削孔エネルギーE1を精度よく求めることができる。
また、本実施形態に係る前方地山の探査方法によれば、切羽評価点Xが削孔エネルギーE1と直線関係にあることに基づいて両者の関係式((3)式)を立て、該関係式に既知の地山の計測結果及び観察結果を適用することで、該(3)式における未知のパラメータを確定し、次いで、確定した(4)式に探査対象地山で得られた計測データを適用して切羽評価点Xを求めるようにしたので、水圧ハンマー22を用いたトンネル切羽の前方探査を精度よく行うことが可能となる。
本実施形態では、地山評価指標Xとして切羽評価点を採用したが、これに代えて、例えば地山等級を数値化したものを採用することが可能である。
また、本実施形態では、打撃効率K(X)をシグモイド関数を使って定義したが、打撃効率K(X)は、地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数であれば足りるものであって、必ずしも滑らかでかつ連続関数である必要はなく、これに代えて、例えば、
0% ( 0<X<30)
(X−30)・(100/40)% (30≦X<70)
100% (70≦X<100)
の折れ線で定義してもかまわない。
21 ボーリングマシン
22 水圧ハンマー
23 削孔ロッド

Claims (2)

  1. ボーリングマシンに装着した削孔ロッドの先端に水圧ハンマーを取り付け、該水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔することにより、該前方地山の地盤性状を探査する前方地山の探査方法において、
    前記水圧ハンマーによる打撃エネルギーをE2、その打撃効率をKとしたとき、該水圧ハンマーによる削孔エネルギーE1を、次式、
    E1=E2・K (1)
    で、前記打撃エネルギーE2を、次式、
    E2=P・√(F)・f/V (2)
    P;水圧ハンマーへの送水圧
    F;給進力
    f;水圧ハンマーの打撃数(Hz)
    V;削孔速度
    でそれぞれ表すとともに、値が大きいほど地盤性状が良好であることを示す地山評価指標をXとしたとき、前記打撃効率Kを、該地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数K(X)として定義し、
    互いに地盤性状が異なる複数の地山に対して得られた前記X及び前記E2を、次式、
    X=E2・K(X)・c+d (3)
    に適用することでc,d及びK(X)をそれぞれc′,d′,K′(X)として求め、
    探査対象となる地山に対して得られた前記E2を、次式、
    X=E2・K′(X)・c′+d′ (4)
    に適用することで、該探査対象となる地山のXを推定することを特徴とする前方地山の探査方法。
  2. 前記打撃効率K(X)を、
    K(X)=1/{1+exp(−a(X−b))} (5)
    として定義するとともに、該(5)式が前記(3)式に代入されてなる次式、
    X=E2・c/{1+exp(−a(X−b))}+d (3′)
    に前記X及び前記E2を適用する際、a,bをa′,b′として求めることで、前記K′(X)を求める請求項1記載の前方地山の探査方法。
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