JP5720353B2 - 非水電解液二次電池及びリチウムイオン電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解液二次電池に関し、特にリチウムイオン電池に関するものである。
リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池では、異常な高温環境下に曝されたときや充電装置の故障等により過充電状態になって、電池内の温度が上昇し、その結果、非水電解液の分解や気化によりガスが発生して、電池内圧が上昇し、電池容器が破損する事態が発生することがある。そのため、この種の二次電池の容器には、電池内部の圧力上昇を防止するために、発生したガスによって内圧が上昇すると、発生したガスを排出する安全弁を備えたガス排出口が設けられている。
このような非水電解液二次電池の非水電解液には、例えばエチレンカーボネートのような引火性および燃焼性を有する有機溶剤が用いられている。発生したガスが電池から排出されるときの電池内の温度は、ガスが引火するのに十分な温度まで上昇していることが多い。そのため、安全弁が作動してガスが大気中に漏れ出した際に、ガスが引火して燃焼する危険性がある。従来の非水電解液二次電池では、このような危険性を少なくするために、例えば特開平9−22723号公報(特許文献1)に示すように、自己消化性付与剤としてハロゲン化炭化水素化合物を電解液に添加している。
特開平9−22723号公報
電解液中に自己消火性付与剤を添加すれば、電解液の引火性および燃焼性は低下し、非水電解液二次電池の安全性を高めることができる。しかしながら、添加された自己消火性付与剤の成分が二次電池における電池の反応性を低下させるため、非水電解液電池の特性が低下する問題があった。
本発明の目的は、安全性を高めても、電池としての特性が低下しない非水電解液二次電池及びリチウムイオン電池を提供することにある。
本発明は、発生したガスによって内圧が上昇するとガスを排出するガス排出口を備えた電池容器の内部に電解液が浸潤した電極群が収納されている非水電解液二次電池を改良の対象とする。本発明では、電池容器の内部で発生したガスが溜まる空間領域に、発生したガス中に含まれる酸素と結合して酸化物を作ることによりガス中の酸素量を低下させる性質を有し且つ電解液と反応しない性質を有する樹脂材料または樹脂成形品を配置する。このように構成すると、電池容器内で発生した引火性及び燃焼性を有するガスは、ガス排出口から排出される前に、ガスが溜まる空間領域に配置した樹脂材料または樹脂成形品と接触する。その結果、ガス中の酸素量が低下し、ガスの燃焼に必要な量の酸素がガス中に存在しなくなる。そのため、電池容器内でガスが引火して燃焼が発生する可能性が低くなり、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池の安全性を高めることができる。
樹脂材料または樹脂成形品は、例えば電池容器内が、電極群が収容されている第1の空間領域と、ガス排出口に近い第2の空間領域とに分かれている場合には、第1の空間領域と第2の空間領域との間に配置することができる。この場合には、第1の空間領域から第2の空間領域に移動するガスが通過する1以上のガス通路を、樹脂成形品に設ける。このように構成すると、第1の空間領域から第2の空間領域に移動するガスを樹脂材料または樹脂成形品に確実に接触させることができる。そのため、発生したガスの引火性および燃焼性を確実に低下させることができる。
非水電解液二次電池がリチウムイオン電池である場合には、樹脂材料または樹脂成形品として、ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品を用いるのが好ましい。このように構成すると、電池容器内部で発生したガスが、ハロゲン系樹脂と接触して、発生したガスの熱により、ハロゲン系樹脂が溶けてハロゲンガスが発生する。不活性ガスであるハロゲンガスは、電池容器内部で発生したガス中の酸素と反応することにより、ガス中の酸素濃度を低くする。そのため、燃焼に必要な酸素が低減されて窒息作用を呈すると考えられる。また、ハロゲンガスは、負触媒効果を有しているので、燃焼の継続を抑制する抑制効果も発揮する。そのため、発生したガスの引火性および燃焼性をより低くすることが可能である。
ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品としては、例えば、ポリ塩化ビニルを用いることができる。ポリ塩化ビニルは溶けることにより、高い窒息作用及び燃焼継続抑制効果を有する塩素ガスが発生するので、リチウムイオン電池の安全性をより高めることができる。
本発明のリチウムイオン電池は、具体的な構成部品として、電池容器本体と、第1の電池蓋と、第2の電池蓋と、電極群と、第1の集電体と、第2の集電体と、電解液とを有している。電池容器本体は、両端に開口部を有して筒状に形成されている。電池容器本体の一方の開口部は、ガス排出口を備える第1の電池蓋によって塞がれている。また電池容器本体の他方の開口部は、第2の電池蓋により塞がれている。電極群は、少なくとも正極と、セパレータと、負極とを積層してなる積層体が捲回されて構成されている。電極群はまた、電池容器本体と第1及び第2の電池蓋とによって囲まれた収納空間内に配置されて、電解液に浸潤されている。第1の集電体は、第1の電池蓋と対向する電極群の一方の端部に隣接して配置されて、正極及び負極の一方と電気的に接続される。第2の集電体は、第2の電池蓋と対向する電極群の他方の端部に隣接して配置されて、正極及び負極の他方と電気的に接続される。このような構造においては、ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品を第1の集電体と第1の電池蓋との間に配置するのが好ましい。このように構成すると、ガス排出口を通って収納空間から排出されるガスは、ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品から発生するハロゲンガスと確実に接触するので、発生したガス中の酸素濃度を確実に低下させることができる。
具体的な構成においては、第1の集電体を、第1の電池蓋を貫通して外部に延びる出力端子部を中央部に備えた集電体本体と、集電体本体に出力端子部を中心として環状に形成され且つ出力端子部が延びる方向に向かって開口する環状の凹部と、環状の凹部の底部に形成された1以上の通気用貫通孔とを備えるように構成することができる。この場合に、ハロゲン樹脂成形品を、環状の凹部に嵌合される形状にする。そして、ハロゲン樹脂成形品に、1以上の通気用貫通孔を通ったガスが通過する1以上のガス通路を形成するのが好ましい。このように構成すると、ハロゲン樹脂成形品を配置する空間を簡単に確保することができるとともに、通気用貫通孔を通過したガスをハロゲン系樹脂と確実に接触させることが可能となる。またハロゲン樹脂成形品にガス通路を形成しているので、通気用貫通孔を通過したガスが、ハロゲン樹脂成形品により、ガス排出口を通って収納空間から排出されることが妨害されることがない。その結果、ガス排出経路を確保することができ、電池内の圧力上昇による破裂などの事故を防ぐことが可能となる。なお、ガス通路の寸法及び数は、リチウムイオン電池の性能により適宜決めることができる。
ガス排出口を電池容器本体の両側に設けるように構成してもよい。この場合には、第2の集電体と第2の電池蓋との間にも、ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品を配置する。また、第2の集電体を第1の集電体と同様に構成し、第2の集電体と第2の電池蓋との間に配置されるハロゲン樹脂成形品を、第1の集電体と第1の電池蓋との間に配置されるハロゲン樹脂成形品と同様に構成してもよい。このように構成すると、ガスの排出量を多くすることができる。また、一方のガス排出口が故障等により機能しなくなった場合でも、他方のガス排出口からガスの排出をすることができるので、ガスの排出を確実に行うことができる。
なお、1以上のガス通路または凹部の形状は、凹部にハロゲン樹脂成形品が嵌合された状態で、1以上の通気用貫通孔がハロゲン樹脂成形品によって塞がれないように定められていることが好ましい。このように構成すると、ガス排出経路を確保することができるので、電池内の圧力上昇による破裂などの事故を防ぐことが可能となる。
本発明は、電池容器本体が一方の端部に開口部を有し、他方の端部に底部を有する有底筒状に形成されたリチウムイオン電池にも適用することが可能であるのは勿論である。この場合のリチウムイオン電池は、電池蓋を一つ備えることとなる。電極群の一方の端部に隣接して配置される第1の集電体は電池蓋と対向する。電極群の他方の端部に隣接して配置された第2の集電体は、底部と対向することとなる。この場合、ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品は、第1の集電体と電池蓋との間に配置するのが好ましい。
本発明の一実施の形態のリチウムイオン電池の部分断面図である。 電極群を巻回する状態を示す図である。 正極集電体の斜視図である。 正極集電体を正極電池蓋側から見た図である。 ポリ塩化ビニルからなる樹脂成形品(ハロゲン系樹脂成形品)を正極電池蓋5側から見た図である。 正極集電体の環状の凹部に、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品を嵌合した状態を正極電池蓋側から見た図である。 本発明の他の実施の形態のリチウムイオン電池の部分断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態である円筒型リチウムイオン電池を長手方向に沿って切断した断面図である。なお図1においては、電極群9の断面の一部の図示を省略してある。本実施の形態の円筒型リチウムイオン電池1は、電池容器本体3と、正極側電池蓋(第1の電池蓋)5と、負極側電池蓋(第2の電池蓋)7と、電解液に浸潤された電極群9と、正極集電体11と、負極集電体13と、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品15とを備えている。電池容器本体3は、ニッケルメッキが施されたスチール材料により両端が開口した円筒形状を有している。電池容器本体3の両端の開口部は、正極側電池蓋5及び負極側電池蓋7とによりそれぞれ塞がれている。正極側電池蓋5及び負極側電池蓋7は、符号5a及び7aで示した位置にガス排出口5a及び7aを備えており、その中央部には、端子貫通孔5b及び7bがそれぞれ設けられている。ガス排出口5a及び7aは、例えば特開平11−273650号公報に示される安全弁構造と同様に、図示しない開裂形安全弁により塞がれており、開裂形安全弁は弁押え環により保持されている。安全弁は、電池容器本体内でガスが発生することにより、電池容器本体内の圧力が一定以上となると、開裂状態となって発生したガスを放出する。端子貫通孔5b及び7bには、後述する正極集電体11の出力端子部37及び負極集電体13の出力端子部57がゴムパッキン8を介して貫通している。出力端子部37及び57の外周部には、ネジ部が形成されており、このネジ部にはナット部材40がそれぞれ螺合されている。なおナット部材40と正極側電池蓋5及び負極側電池蓋7との間にはワッシャ42が配置されている。なお正極側電池蓋5には、電解液を入れるためのネジ部材44がネジ留めされている。
電池容器本体3の内部には、正極側電池蓋5及び負極側電池蓋7により密封された収納空間17が形成されている。この収納空間17は、正極集電体11が配置される領域と、電極群9が配置される領域と、負極集電体13が配置される領域とから構成されている。本実施の形態においては、正極集電体11が配置されている領域及び負極集電体13が配置されている領域がそれぞれ、ガス排出口に近い第2の空間領域を構成しており、電解液の加熱により発生したガスが溜まる空間領域である。そして電極群9が配置される領域が、第1の空間領域を構成する。
電極群9中には、非水電解液(図示せず)が注入されている。従って、電極群9には、非水電解液が浸潤している。本実施の形態では、非水電解液としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を電解質として溶解した溶液を用いている。
図2は、本実施の形態で用いる電極群9を巻回する状態を示す図である。電極群9は、帯状の正極板19と帯状の負極板21とを、セパレータ23を介して中空円筒状の軸芯25を中心として断面渦巻き状に巻回することにより構成されている。本実施の形態の正極板19は、正極集電板としてのアルミニウム箔の両面に、リチウム遷移金属複酸化物であるマンガン酸リチウムを含む正極合剤を略均質に塗布した構成となっている。アルミニウム箔の長手方向の一方の辺側には、正極合剤が塗装されていない未塗着部27が形成されている。未塗着部27は、櫛歯状に切り欠かれており、切り欠かれた残部により、正極リード片29が形成されている。負極板21は、負極集電板としての圧延銅箔の両面に、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素粉末を含む負極合剤を略均質に塗布した構成となっている。銅箔の長手方向の一方の辺側には、負極合剤が塗装されていない未塗着部31が形成されている。未塗着部は、櫛歯状に切り欠かれており、切り欠かれた残部により、負極リード片33が形成されている。負極リード片33は、正極リード片29が形成された辺側と対向する辺側に形成される。図1においては、正極側電池蓋5側に複数の正極リード片29が位置し、負極側電池蓋7側に複数の負極リード片33が位置している。セパレータ23は、リチウムイオンが通過可能なポリエチレン製の多孔質材により形成されている。セパレータ23は、正極板19及び負極板21が互いに接触することを防止する。軸芯25はポリプロピレン樹脂により形成されている。なお、正極板19、負極板21及びセパレータ23の詳細な構成については、本発明の要旨とは関係しないので、説明を省略する。
正極側電池蓋5と電極群9の端部との間には、複数の正極リード片29が接続された正極集電体(第1の集電体)11が電極群9の端部に隣接して配置されている。また、負極側電池蓋7と電極群9の端部との間には、複数の負極リード片33が接続された負極集電体(第2の集電体)13が電極群9の端部に隣接して配置されている。本実施の形態においては、正極集電体11及び負極集電体13は実質的に同じ形状を有している。
図3は本実施の形態で用いる正極集電体11の斜視図であり、図4は正極集電体11を正極電池蓋5側から見た図である。正極集電体11は、円環状の集電体本体(集電体本体)35の中央部に出力端子部37を備えている。出力端子部37は、正極側電池蓋5を貫通して外部に延びるように構成されている。集電体本体35には、出力端子部37を中心とする環状の凹部39が形成されている。環状の凹部39は、出力端子部37が延びる方向に向かって開口している。環状の凹部39の底部には、複数の通気用貫通孔41が設けられている。なお通気用貫通孔41は、複数設ける必要はなく、一つのみ設けるように構成してもよい。正極集電体11は、集電体本体35の出力端子部37が設けられた側とは反対側に電極群9の軸芯25に挿入される柱状部43を備えている。柱状部43を軸芯25の一方の端部に挿入することにより、正極集電体11と電極群9との位置関係が確定している。正極集電体11の集電体本体35の外周部に、正極板19から導出された複数の正極リード片29の端部が超音波溶接されている。また、環状の凹部39には、ポリ塩化ビニルからなるハロゲン樹脂成形品15が配置される。
本実施の形態においては、図1に示すように、負極集電体13は、正極集電体11と実質的に同じ形状を有しており、集電体本体55と、出力端子部57と、凹部59と、柱状部63とを備えている。負極集電体13も、電極群9の軸芯25に、柱状部63が挿入されて、負極集電体13と電極群9との位置関係が確定している。負極集電体13の集電体本体55の外周部には、負極板21から導出された複数の負極リード片33の端部が超音波溶接されている。また、負極集電体13の環状の凹部59にも、ポリ塩化ビニルからなるハロゲン樹脂成形品15が配置されている。
図5はポリ塩化ビニルからなる樹脂成形品(ハロゲン系樹脂成形品)15を正極電池蓋5側から見た図である。本実施の形態においては、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品15は、正極集電体11及び負極集電体13に形成された環状の凹部39及び59に嵌合されるように、環状に形成されている。またポリ塩化ビニルの樹脂成形品15には、正極集電体11または負極集電体13に形成された通気用貫通孔41を通ったガスが通過する1以上のガス通路45が形成されている。ガス通路45は、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品15の内周部及び外周部を周方向に間隔を開けて形成された切り欠き部により構成されている。
図6は、正極集電体11の環状の凹部に、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品15を嵌合した状態を正極電池蓋5側から見た図である。本実施の形態においては、通気用貫通孔41がハロゲン樹脂成形品によって塞がれないようにガス通路45の形状を定めている。図6の例では、通気用貫通孔41の一部とガス通路45の一部とが重なるが、通気用貫通孔41がハロゲン樹脂成形品によって完全に塞がれないようにガス通路45の形状を定めている。なお凹部39及び59の底壁部に複数の突起を一対に設けてハロゲン樹脂成形品15を浮かした状態で支持するようにしてもよい。このように凹部39及び59の内部形状を工夫することによっても、通気用貫通孔41がハロゲン樹脂成形品によって塞がれないようになる。
上記実施の形態のリチウムイオン電池において異常が生じてリチウムイオン電池が高温となったときに、非水電解液が分解及び気化することにより、引火性および燃焼性を有するガスが発生する。電池を図1に示すように横にした状態で使用する場合には、発生したガスは、正極集電体11及び負極集電体13の環状の凹部39及び59の底部に形成された通気用貫通孔41から、正極側電池蓋5と正極集電体11との間に形成される空間及び負極側電池蓋7と負極集電体13との間に形成される空間に溜まる。なお電池を立てた状態で使用する場合には、一方の空間にガスが溜まることになる。環状の凹部39及び59には、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品15が配置されているので、通気用貫通孔41を通過したガスは、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品15と接触する。非水電解液が分解及び気化して発生したガスは高温であるので、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品15のガスと接触した部分は溶解し、溶解した部分からは塩素ガスが発生する。発生した塩素ガスは、熱により分解されて、ハロゲン酸(HX)を生成する。このハロゲン酸は、燃焼に必要な活性ラジカル(・H,・OH)と反応して、不活性物質である水素または水を生成する。また、ハロゲン酸が活性ラジカル(・O・)と反応して・OHを生成した場合には、生成した・OHとハロゲン酸HXとが反応して、不活性物質である水が生成される。ハロゲン酸と活性ラジカルとの反応は、非水電解液が分解及び気化して発生したガス中の酸素が活性ラジカルとして燃焼に使用される反応に優先して起こる。その結果、発生したガス中の酸素が消費され、ガス中の酸素濃度が燃焼するのに十分な濃度以下となる。そして発生したガスによってリチウムイオン電池内の圧力が上昇して、電池容器本体内の圧力が一定以上となると、正極側電池蓋5及び負極側電池蓋7に設けた図示しない安全弁が開裂して、ガス排出口5a及び7aからガスが放出されるが、引火性が低下しているため、ガスが引火して燃焼する可能性がなくなる。
本実施の形態では、樹脂成形品としてハロゲン樹脂成形品を用いたが、電池容器の内部で発生するガス中に含まれる酸素と結合して酸化物を作ることによりガス中の酸素量を低下させる性質を有し且つ電解液と反応しない性質を有する樹脂材料からなる樹脂成形品であれば、その他の樹脂成形品を用いてもよいのは勿論である。
また本実施の形態では、ハロゲン樹脂成形品を用いたが、成形されていないハロゲン樹脂材料を、例えば凹部39及び59内に塗布する等してもよい。
本実施の形態のリチウムイオン電池においては、正極板及び負極板に、マンガン酸リチウム及び炭素材をそれぞれ用いているが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。例えば、正極板としては、コバルト酸リチウムまたはニッケル酸リチウム等のリチウム遷移金属複酸化物を用いることができる。また負極板としては、天然黒鉛、コークス等の炭素材を用いることができる。
図7は、本発明の他の実施の形態の円筒型リチウムイオン電池101を長手方向に沿って切断した縦断面図である。なお図7には、図1に示した実施の形態と同様の部分に、図1に付した符号に100の数を加えた数の符号を付して詳細な説明を省略する。また、図7では理解を容易にするために円筒型リチウムイオン電池の一部の部材を省略して示している。本実施の形態の円筒型リチウムイオン電池101では、電池容器本体103は、一方の端部にのみ開口部を有する有底筒状に形成されている。電池容器本体103の一方の端部は、出力端子部を兼ねる電池蓋105により塞がれている。本実施の形態の電池蓋105は、ガス排出口105aが設けられた蓋キャップ105bと、中央部に開裂溝105cが形成された蓋ケース105dとから構成されている。蓋ケース105dの周縁を蓋キャップ105bにかしめることにより、電池が組み立てられている。電池蓋105は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂製ガスケット108を介して電池容器本体103の上部にかしめられている。負極集電体113は、軸芯125の内周を利用して電池容器本体103の内底部に抵抗溶接により接合されている。なお、負極集電体113を電池容器本体103の内底部に抵抗溶接する場合には、負極集電体113に予め電気的導通のための負極リード板を溶接しておき、負極リード板を電池容器本体103の内底部に抵抗溶接するようにしてもよい。
本実施の形態の円筒型リチウムイオン電池101においては、引火性および燃焼性を有するガスが発生した場合には、発生したガスによりリチウムイオン電池101の内圧が高まって、蓋ケース105dの開裂溝105cが開裂して、蓋キャップ105bに設けられたガス排出口105aから発生したガスが排出される。そこで本実施の形態においては、正極集電体115と電池蓋105の蓋ケース105dとの間にポリ塩化ビニルの樹脂成形品115を配置している。特に本実施の形態においては、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品115は、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品115が開裂溝105cを塞ぐことがないように、中央部分が中空となるように円筒形に形成されている。このよう構成しても、発生したガスは、開裂溝105cが開裂する前に、ポリ塩化ビニルの樹脂成形品115と接触するので、開裂溝105cが開裂してガス排出口105aからガスが排出される際には、引火性が低下しているため、ガスが引火して燃焼する可能性をなくすことが可能である。
なお、実施の形態のリチウムイオン電池においては、非水電解液として、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を電解質として溶解した溶液を用いているが、一般的なリチウム塩を電解質として有機溶剤に溶解したものであれば他の非水電解液を用いることができるのは勿論である。例えば、電解質としては、LiClO、LiAsF、LiBF、LiB(C、CHSOLi、CFSOLi等やこれらの混合物を用いてもよい。また、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等、又はこれら2種以上の混合溶媒を用いてもよい。混合配合比についても制限されるものではない。
また本実施の形態においては、円筒形のリチウムイオン電池について説明をしたが、本発明は、角形のリチウムイオン電池や、リチウムイオン電池以外の非水電解液二次電池に適用することができるのは勿論である。
本発明によれば、安全性を高めても、電池としての特性が低下しない非水電解液二次電池及びリチウムイオン電池を提供することができる。
1 円筒型リチウムイオン電池
3 電池容器本体
5 正極側電池蓋(第1の電池蓋)
7 負極側電池蓋(第2の電池蓋)
9 電極群
11 正極集電体(第1の集電体)
13 負極集電体(第2の集電体)
15 ポリ塩化ビニルの樹脂成形品
17 収納空間
19 正極板
21 負極板
23 セパレータ
25 軸芯
27 未塗着部
29 正極リード片
31 未塗着部
33 負極リード片
35 集電体本体
37 出力端子部
39 凹部
41 通気用貫通孔
43 突起体

Claims (10)

  1. 両端のうち少なくとも一方の端部に開口部を有する筒状の電池容器本体と、発生したガスによって内圧が上昇すると前記ガスを排出するガス排出口を備えて前記電池容器本体の前記開口部を塞ぐ電池蓋とを有する電池容器と、
    少なくとも正極と、セパレータと負極とを積層してなる積層体が捲回されて構成され且つ前記電池容器本体と前記電池蓋とによって囲まれた収納空間内に配置された電極群と、
    前記電池蓋と対向する前記電極群の一方の端部に隣接して配置されて、前記正極及び前記負極の一方と電気的に接続された第1の集電体と、前記電極群の他方の端部に隣接して配置されて、前記正極及び前記負極の他方と電気的に接続された第2の集電体と、
    電池容器の内部に収納された前記電極群に浸潤された非水電解液とを有する非水電解液二次電池であって、
    前記ガス排出口を通って前記収納空間から排出されるガス中に含まれる酸素と結合して酸化物を作ることにより前記ガス中の酸素量を低下させる性質を有し且つ前記非水電解液と反応しない性質を有する樹脂材料または樹脂成形品が、前記電池容器内において前記ガスが溜まる前記第1の集電体と前記電池蓋との間の空間領域に配置されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
  2. 前記第1の集電体には、1以上の通気用貫通孔が設けられ、
    前記樹脂材料または樹脂成形品には、前記通気用貫通孔を通って前記空間領域に移動する前記ガスが通過する1以上のガス通路が形成されている請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 請求項1または2に記載の非水電解液二次電池がリチウムイオン電池であり、
    前記樹脂材料または樹脂成形品が、ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品であることを特徴とするリチウムイオン電池。
  4. 前記ハロゲン系樹脂材料またはハロゲン系樹脂成形品が、ポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項3に記載のリチウムイオン電池。
  5. 前記電池容器本体は、両端に開口部を有
    前記電池蓋は、前記電池容器本体の一方の前記開口部を塞ぐ第1の電池蓋と、記電池容器本体の他方の前記開口部を塞ぐ第2の電池蓋とで構成され
    前記第1の集電体は、前記第1の電池蓋と対向する前記電極群の一方の端部に隣接して配置され、前記第2の集電体は、前記第2の電池蓋と対向する前記電極群の他方の端部に隣接して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のリチウムイオン電池。
  6. 前記第1の集電体は、前記第1の電池蓋を貫通して外部に延びる出力端子部を中央部に備えた集電体本体と、前記集電体本体に前記出力端子部を中心として環状に形成され且つ前記出力端子部が延びる方向に向かって開口する環状の凹部と、前記環状の凹部の底部に形成された1以上の通気用貫通孔とを備えており、
    前記ハロゲン系樹脂成形品は、前記第1の集電体の前記環状の凹部に嵌合される形状を有しており、
    前記ハロゲン系樹脂成形品には、前記1以上の通気用貫通孔を通った前記ガスが通過する1以上のガス通路が形成されている請求項3または5に記載のリチウムイオン電池。
  7. 前記第2の集電体と前記第2の電池蓋との間の空間領域にも前記ハロゲン系樹脂材料または前記ハロゲン系樹脂成形品が配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載のリチウムイオン電池。
  8. 前記第2の集電体は、前記第2の電池蓋を貫通して外部に延びる出力端子部を中央部に備えた集電体本体と、前記集電体本体に前記出力端子部を中心として環状に形成され且つ前記出力端子部が延びる方向に向かって開口する環状の凹部と、前記環状の凹部の底部に形成された1以上の通気用貫通孔とを備えており、
    前記ハロゲン系樹脂成形品は前記第2の集電体の前記環状の凹部に嵌合される形状を有しており、
    前記ハロゲン系樹脂成形品には、前記1以上の通気用貫通孔を通った前記ガスが通過する1以上のガス通路が形成されている請求項に記載のリチウムイオン電池。
  9. 前記1以上のガス通路または前記凹部の形状は、前記凹部に前記ハロゲン系樹脂成形品が嵌合された状態で、前記1以上の通気用貫通孔が前記ハロゲン系樹脂成形品によって塞がれないように定められている請求項またはに記載のリチウムイオン電池。
  10. 前記電池容器本体は、一方の端部に開口部を有し、他方の端部に底部を有する有底筒状の電池容器本体であり
    第2の集電体が、前記底部と対向する前記電極群の他方の端部に隣接して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のリチウムイオン電池。
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