JP5715853B2 - 音場補正装置 - Google Patents

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Description

本発明は音場補正装置に関し、より詳細には、ディップが発生しやすい測定エリアにおいて、ディップの発生する周波数帯域を考慮しつつ、さらに、ディップが発生する測定ポイントであっても発生しない測定ポイントであっても、十分な補正効果を奏することが可能な補正用のフィルタ係数を算出可能な音場補正装置に関する。
従来より、リスニング環境の音場の周波数特性を補正する音場補正方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような音場補正方法では、リスニング環境の特定位置にマイクロホンを設置して、スピーカとマイクロホンとの間の周波数特性の測定を行い、測定された周波数特性に基づいて、目標応答曲線の許容範囲に入るようにフィルタの周波数、振幅および帯域を最適化することによって、周波数特性の補正を行う。このようにして、リスニング環境の音場の周波数特性を補正することによって、好適な音響環境を実現することが可能となる。
特開2000−152374号公報
しかしながら、車室内のように反射波の影響が大きい環境においては、干渉により特定の位置の周波数に大きなディップが発生する傾向がある。従って、上述した方法を用いて音場の周波数特性を補正しても、測定位置に大きなディップがある場合には、ディップを含んだ音場の周波数特性に基づいて補正が行われてしまうことになる。このため、リスニング位置が少しでも異なると、目標応答曲線に対して周波数特性が変化してしまい、聴感上で音質の向上を得ることが困難になるという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、反射波による干渉などが生じてディップが発生しやすい環境において、音質向上を図ることが可能なフィルタ係数を算出する音場補正装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る音像補正装置は、聴取者が音楽の聴取を行う場所を測定エリアとし、該測定エリア内に近設された多数の測定ポイント毎の周波数特性を算出する測定ポイント周波数特性算出手段と、該測定ポイント周波数特性算出手段によって算出された前記測定ポイント毎の前記周波数特性から周波数毎の信号レベルを抽出して、周波数毎に信号レベルに基づく累積分布特性を生成する累積分布特性生成手段と、該累積分布特性生成手段により生成された前記累積分布特性に基づいて累積確率毎に全ての周波数の信号レベルを求めて、累積確率毎のエリア周波数特性を生成するエリア周波数特性生成手段と、該エリア周波数特性生成手段によって生成された前記累積確率毎のエリア周波数特性に基づいて、各エリア周波数特性における信号レベルの分散特性を生成する分散特性生成手段と、該分散特性生成手段により生成された分散特性に基づいて信号レベルの分散値が高い周波数範囲を検出する周波数範囲検出手段と、前記累積確率が100%のエリア周波数特性において最も高い値を示す信号レベルとその周波数とを求め、当該周波数におけるエリア周波数毎の信号レベルと前記累積確率100%のエリア周波数の信号レベルとの信号レベル差を求めて、信号レベル差が予め規定される閾値に最も近い値となる累積確率のエリア周波数特性を抽出するレベル差周波数特性抽出手段と、該レベル差周波数特性抽出手段により抽出されたエリア周波数特性に対して逆フィルタリング処理を施して前記エリア周波数特性と逆の特性を備えた逆エリア周波数特性を生成する逆エリア周波数特性生成手段と、該逆エリア周波数特性生成手段により生成された逆エリア周波数特性の信号レベルの平均値が、前記レベル差周波数特性抽出手段により抽出された前記エリア周波数特性であって、前記周波数範囲検出手段により検出された前記周波数範囲における信号レベルの平均値と一致するように、前記逆エリア周波数特性の信号レベル調整を行う信号レベル調整手段と、該信号レベル調整手段により信号レベル調整が行われた前記逆エリア周波数特性に対して逆フーリエ変換を施すことにより、前記測定エリアにおいて聴取者により聴取されるオーディオ信号に対してフィルタリング処理を行うためのフィルタ係数の算出を行うフィルタ係数算出手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る音場補正装置は、累積確率100%のエリア周波数特性との信号レベル差が予め規定される閾値に最も近い値となる累積確率のエリア周波数特性を抽出し、抽出されたエリア周波数特性をフィルタ係数の算出に用いている。このため、閾値として累積確率100%のエリア周波数特性との信号レベル差が小さくなるような値を設定することにより、音響補正によって増幅される信号レベルを小さくすることができる。このため、ディップが発生し得る測定ポイントで測定された周波数特性に基づいて音響補正が行われて、ディップが発生していない測定ポイントにおいて出力音が異音に感じられる程まで増幅(補正)されてしまうことを防止することができる。
さらに、本発明に係る音場補正装置は、閾値に最も近い信号レベル差を示すエリア周波数特性であって、各エリア周波数特性の信号レベルの分散特性に基づいて分散値が高いと判断される周波数範囲の平均値に、逆エリア周波数特性の平均値を調整してフィルタ係数を算出する。このため、フィルタ係数の補正基準が、信号レベルの分散値が高い周波数範囲、つまり、ディップの発生する測定エリアとディップが発生しない測定エリアとにおいて聴取される音(の信号レベル)に大きな差が生じ得る周波数範囲における平均値に基づいてフィルタ係数が算出されることになる。従って、音響補正が行われた音を、ディップの発生する測定エリアで聴取した場合であっても、あるいはディップが発生しない測定エリアで聴取した場合であっても、異音が生じるような補正が行われてしまうことを防止することが可能となる。
また、本発明に係る音場補正装置は、聴取者が音楽の聴取を行う場所を測定エリアとし、該測定エリア内に近設された多数の測定ポイント毎の周波数特性を算出する測定ポイント周波数特性算出手段と、該測定ポイント周波数特性算出手段によって算出された前記測定ポイント毎の前記周波数特性から周波数毎の信号レベルを抽出して、周波数毎に信号レベルに基づく累積分布特性を生成する累積分布特性生成手段と、該累積分布特性生成手段により生成された前記累積分布特性に基づいて累積確率毎に全ての周波数の信号レベルを求めて、累積確率毎のエリア周波数特性を生成するエリア周波数特性生成手段と、該エリア周波数特性生成手段によって生成された前記累積確率毎のエリア周波数特性に基づいて、各エリア周波数特性における信号レベルの分散特性を生成する分散特性生成手段と、該分散特性生成手段により生成された分散特性に基づいて信号レベルの分散値が高い周波数範囲を検出する周波数範囲検出手段と、下記式1に基づいて周波数毎の累積確率を求め、求められた累積確率に基づいて全ての周波数における信号レベルを求めることによりエリア周波数特性を算出するレベル差周波数特性算出手段と、該レベル差周波数特性算出手段により算出されたエリア周波数特性に対して逆フィルタリング処理を施して前記エリア周波数特性と逆の特性を備えた逆エリア周波数特性を生成する逆エリア周波数特性生成手段と、該逆エリア周波数特性生成手段により生成された逆エリア周波数特性の信号レベルの平均値が、前記レベル差周波数特性算出手段により算出された前記エリア周波数特性であって、前記周波数範囲検出手段により検出された前記周波数範囲における信号レベルの平均値と一致するように、前記逆エリア周波数特性の信号レベル調整を行う信号レベル調整手段と、該信号レベル調整手段により信号レベル調整が行われた前記逆エリア周波数特性に対して逆フーリエ変換を施すことにより、前記測定エリアにおいて聴取者により聴取されるオーディオ信号に対してフィルタリング処理を行うためのフィルタ係数の算出を行うフィルタ係数算出手段とを備えることを特徴とする。但し、式1は、
周波数毎の累積確率[%]=50%+周波数毎の分散[dB]×α ・・・式1
であって、αは重み付け係数であり、算出された周波数毎の累積確率[%]は最大で99%までとする。
本発明に係る音場補正装置は、式1に示すようにして周波数毎の累積確率[%]を求めることにより、分散が小さくなる低域周波数においては、50%程度の累積確率となり、分散が大きくなる中域周波数や高域周波数においては50%ではなく、100%寄りの値を目標とする累積確率を算出することができる。このようにして全ての周波数毎に累積確率を求めることによって、分散特性の変動に対応する累積確率を周波数毎に算出することが可能となり、分散特性の影響を十分に反映させた信号レベルを示す周波数特性をエリア周波数特性として算出することが可能となる。
さらに、上述した音場補正装置において、前記周波数範囲検出手段は、前記分散特性において最も高い分散値を示す周波数を求め、当該周波数が含まれる所定の周波数範囲を前記周波数範囲として検出するものであってもよい。
一般的に、分散値が高い値を示す周波数の周辺帯域は、測定エリア内においてディップが発生する可能性が高いと判断できる。このため、最も高い分散値を示す周波数を求め、当該周波数が含まれる所定の周波数範囲を周波数範囲として検出してこの周波数範囲におけるエリア周波数特性の平均値を、逆エリア周波数特性の平均値とする信号レベル調整を行って補正フィルタを算出することにより、ディップが発生する周波数範囲を基準として補正フィルタを作成することができる。従って、算出された補正フィルタを適用することにより、ディップの発生する測定エリアで聴取した場合であっても、あるいはディップが発生しない測定エリアで聴取した場合であっても、異音が生じるような補正が行われてしまうことを防止することが可能となる。
また、上述した音場補正装置において、前記周波数範囲検出手段は、前記測定エリアが車室内である場合に、前記周波数範囲を500Hz〜1000Hzとするものであってもよい。
例えば、車室内の運転席、助手席、後部左右席においては、ウィンドウガラスなどによる出力音などの反射波の干渉によって、500Hz〜1000Hzの周波数範囲においてディップが多く発生する傾向がある。このため、測定エリアが車室内である場合には、周波数範囲検出手段が分散特性値の高い周波数範囲として予め500Hz〜1000Hzの範囲に設定することにより、車室内における音響補正効果を顕著なものとすることが可能となる。
さらに、上述した音場補正装置は、前記測定エリアに対して評価音を出力するスピーカと、前記測定エリアに設置されて当該測定エリア内をゆっくりと移動しながら前記評価音を集音することにより前記測定ポイント毎に前記評価音の測定を行う測定マイクロホンとを有するものであってもよい。
このように、本発明に係る音場補正装置では、測定マイクロホンをゆっくりと移動させながら評価音を集音することによって、インパルス応答を測定するために用いられる評価音の検出時間(符号長)よりも短い間隔で各インパルス応答を求めることができる。このため、結果として、測定エリア内の多数の測定ポイントにおいて、周波数特性を求めることが可能となる。
本発明に係る音場補正装置は、累積確率100%のエリア周波数特性との信号レベル差が予め規定される閾値に最も近い値となる累積確率のエリア周波数特性を抽出し、抽出されたエリア周波数特性をフィルタ係数の算出に用いている。このため、閾値として累積確率100%のエリア周波数特性との信号レベル差が小さくなるような値を設定することにより、音響補正により増幅される信号レベルを小さくすることができる。このため、ディップが発生し得る測定ポイントで測定された周波数特性に基づいて音響補正が行われて、ディップが発生していない測定ポイントにおいて出力音が異音に感じられる程度まで増幅(補正)されてしまうことを防止することができる。
さらに、本発明に係る音場補正装置は、閾値に最も近い信号レベル差を示すエリア周波数特性であって、各エリア周波数特性の信号レベルの分散特性に基づいて分散値が高いと判断される周波数範囲の平均値に、逆エリア周波数特性の平均値を調整してフィルタ係数を算出する。このため、フィルタ係数の補正基準が、信号レベルの分散値が高い周波数範囲、つまり、ディップの発生する測定エリアとディップが発生しない測定エリアとにおいて聴取される音(の信号レベル)に大きな差が生じ得る周波数範囲における平均値に基づいてフィルタ係数が算出されることになる。従って、音響補正が行われた音を、ディップの発生する測定エリアで聴取した場合であっても、あるいはディップが発生しない測定エリアで聴取した場合であっても、異音が生じるような補正が行われてしまうことを防止することが可能となる。
本実施の形態に係る音場測定装置の概略構成を示したブロック図である。 本実施の形態に係る音場測定装置におけるスピーカの設置位置および測定エリア位置とを示した概略図である。 測定信号に基づくインパルス応答の算出方法を説明するための図であって、(a)は測定信号のオーバーラップを示し、(b)はオーバーラップ処理後のインパルス応答の算出間隔を示した図である。 本実施の形態に係る音場補正装置の概略構成を示したブロック図である。 本実施の形態に係る補正計算部がフィルタ係数を算出する処理を示したフローチャートである。 本実施の形態に係る補正計算部が算出した測定ポイント毎の周波数特性の一例を示した図である。 本実施の形態に係る音場補正装置における各測定ポイントで測定された周波数毎の累積分布特性を示した図である。 (a)は、累積確率10%、累積確率50%、累積確率90%、累積確率100%を基準としたエリア周波数特性の実測値を示した図であり、(b)は(a)に示したエリア周波数特性における周波数毎の分散特性を示した図である。 図8に示した測定環境において、周波数が低域(86Hz)、中域(667Hz)、高域(10013Hz)である場合の累積分布特性を示した図である。 (a)は本実施の形態に係る累積確率90%のエリア周波数特性と、逆フィルタリングされた累積確率90%のエリア周波数特性とを示した図であり、(b)は目標応答曲線と補正特性とを示した図である。 本実施の形態に係る補正計算部により求められたフィルタ係数の一例を示した図である。
以下、本発明に係る音場補正装置の一例を示し、図面を用いて詳細に説明を行う。本発明に係る音場補正装置による音場補正を行うためには、音場補正対象となる測定エリア(リスニングエリア)におけるインパルス応答を求める必要がある。このため、まずは、測定エリアのインパルス応答を求める音場測定装置について説明を行う。その後に、求められたインパルス応答を用いて音場補正を行う音場補正装置について説明を行う。
[音場測定装置]
図1は、本実施の形態に係る音場測定装置の概略構成を示したブロック図である。音場測定装置10は、図1に示すように、測定信号再生部11と、スピーカ選択部12と、アンプ部13と、スピーカ14と、測定マイクロホン15と、相関演算処理部16と、インパルス応答データ記録部17とを有している。
測定信号再生部11は、Lチャンネル用のオーディオ信号と、Rチャンネル用のオーディオ信号とからなる2チャンネルのオーディオ信号を出力する装置である。本実施の形態に係る測定信号再生部11では、Lチャンネル用のオーディオ信号とRチャンネル用のオーディオ信号とが同一符号であるM系列符号(つまり、モノラル信号)と、Lチャンネル用のオーディオ信号とRチャンネル用のオーディオ信号とが異なる符号である(すなわち独立な)M系列符号(つまりステレオ信号)とをオーディオ信号として出力することが可能となっている。
スピーカ14は、図2に示すように、車室25内に設置される車載スピーカを想定したものであって、車室25の前右側に設置されるスピーカ(FR)14aと、前左側に設置されるスピーカ(FL)14bと、後右側に設置されるスピーカ(RR)14cと、後左側に設置されるスピーカ(RL)14dとによって構成されている。なお、スピーカ14の設置位置は、図2に示すような前後左右位置には限定されず、またスピーカの設置個数も、上述した4個には限定されない。
スピーカ選択部12は、測定信号再生部11より出力されたLチャンネル用のオーディオ信号を、前左側のスピーカ14bおよび後左側のスピーカ14dから出力させるために分配し、またRチャンネル用のオーディオ信号を、前右側のスピーカ14aおよび後右側のスピーカ14cから出力させるために分配する役割を有している。また、アンプ部13は、スピーカ選択部12によって分配されたそれぞれのオーディオ信号の増幅を行う役割を有している。
測定マイクロホン15は、図2に示すような車室25内の測定エリアにおいて、4つのスピーカ14(14a〜14d)から出力される出力音(オーディオ信号)の集音(取得)を行う役割を有している。本実施の形態に係る音場測定装置10では、図2に示すように、運転席、助手席、後部右席および左席の4座席を測定エリア26a〜26dとして設定し、各座席において出力音の集音を行う。
測定マイクロホン15を用いて出力音の集音を行う場合には、各測定エリア(運転席、助手席、後部右席および左席)26a〜26dにおいて、測定マイクロホン15をゆっくりと移動させながら、一定の時間間隔で出力音の集音処理(測定信号の取得処理)を行う。このようにゆっくり移動させながら集音処理を行うことによって、測定エリアの多数の検出位置(この検出位置を測定ポイントとする。)において集音を行うことが可能となる。なお、本実施の形態に係る測定マイクロホン15では、ゆっくりと移動させながら集音処理を行う方法を採用するが、集音処理は、ゆっくりと測定マイクロホン15を移動させる方法だけには限定されない。例えば測定エリアをカバーする複数のマイクロホンを用いて、同時に集音処理を行う方法であってもよい。
相関演算処理部16は、測定信号再生部11から出力されたLチャンネル用およびRチャンネル用のオーディオ信号をリファレンスとして、測定マイクロホン15を通して取得した測定信号(出力音のオーディオ信号)に対する相関演算処理を行うことによって、測定マイクロホン15とスピーカ14a〜14dとの間のインパルス応答を計算する役割を有している。
相関演算処理部16において算出されたインパルス応答は、インパルス応答データ記録部17に記録される。相関演算処理部16におけるインパルス応答の算出は、測定エリア内の測定ポイント毎に行われる。本実施の形態においては、測定信号再生部11より出力されるオーディオ信号(測定信号)が、モノラル信号とステレオ信号との2種類であり、さらに、これらの信号を出力する4つのスピーカ14a〜14dが、図2に示すそれぞれの位置に設けられている。さらに、測定エリア26a〜26dとして運転席、助手席、後部右席、後部左席の4エリアが存在する。
測定信号:モノラル信号、ステレオ信号
スピーカ:前右側スピーカ、前左側スピーカ、後右側スピーカ、後左側スピーカ
測定エリア:運転席、助手席、後部右席、後部左席
相関演算処理部16は、上述した測定エリア内の測定ポイント毎のインパルス応答の算出を行う。このとき、例えば、測定信号がステレオ信号で、再生スピーカが前右側スピーカ14a、前左側スピーカ14bである場合、相関演算処理部16は、測定マイクロホン15で取得される測定信号のLチャンネル成分とRチャンネル成分とのそれぞれについて、相関演算処理を行うことにより、2つのインパルス応答を算出する。
図3(a)(b)は、相関演算処理部16におけるインパルス応答の算出処理を説明するための図である。相関演算処理部16は、測定マイクロホン15を介して取得した測定信号と、測定信号再生部11より取得したリファレンスのオーディオ信号との双方に対して、図3(a)に示すようにオーバーラップ処理を行い、相対的なサンプリング速度の向上を図る。
具体的には、測定信号再生部11より取得したM系列符号(リファレンス)のオーディオ信号とに基づいて符号長を求め、求められた符号長を相関演算処理の処理範囲(相関演算処理範囲)としてインパルス応答を求める。さらに、ゆっくりと移動される測定マイクロホン15により測定信号の測定を行うタイミングを、符号長だけ測定マイクロホン15が移動される間に等間隔で多数回測定を行う。このように測定マイクロホン15が符号長だけ移動する間に複数回の測定を行い、さらに、相関演算処理部16における相関演算処理の処理範囲を符号長とすることにより、図3(a)に示すように、相関演算処理に用いること可能な測定信号にオーバーラップを生じさせることができる。このため、測定信号再生部11より出力されるオーディオ信号の符号長の間隔で発生するインパルス応答に対して、符号長よりも短い間隔の測定ポイント毎にインパルス応答を測定することが可能となり、図3(b)に示すように、検出可能なインパルス応答数を増加させることができる。
これにより、比較的長い符号長のM系列符号を適用して測定環境のSNR(Signal to noise ratio:S/N比、信号に対するノイズ(雑音)の量を対数で表したもの)を向上させた際においても、測定ポイント数を増加させることができる。なお、インパルス応答においてはゲート処理を行い、SNRの改善と不要な残響音の除去を行う。
このようにして、相関演算処理部16では、モノラルの測定音とステレオの測定音とに対応する、運転席、助手席、後部右席、後部左席の各測定エリア26a〜26dの各測定ポイントにおいて、各スピーカ14a〜14dから測定マイクロホン15へのインパルス応答を測定してインパルス応答データ記録部17に記録させる。
次に、インパルス応答データ記録部17に記録されるインパルス応答を用いて、音場補正処理を行うための音場補正装置について説明する。
[音場補正装置]
図4は、音場補正装置の概略構成を示したブロック図である。音場補正装置1はインパルス応答データ記録部17、補正計算部(測定ポイント周波数特性算出手段、累積分布特性生成手段、エリア周波数特性生成手段、分散特性生成手段、周波数範囲検出手段、レベル差周波数特性抽出手段、逆エリア周波数特性生成手段、信号レベル調整手段、フィルタ係数算出手段、レベル差周波数特性算出手段)2、補正フィルタ部3、アンプ部13、スピーカ14(14a〜14d)を有している。
ここで、インパルス応答データ記録部17、アンプ部13、スピーカ14に関しては、音場測定装置10において説明したものと同じものであるため、ここでの説明は省略する。スピーカ14も、音場測定装置10と同様に4つ設けられており、図2に示すように、車室25内の前後左右位置にそれぞれ設置されている。音場補正装置1は、音場測定装置10によりインパルス応答の測定が行われた環境において音場補正を行うことを目的とするものであり、音場測定装置10の音場環境(スピーカ数、スピーカ設置位置、車室内の構造、座席の配置など)と音場補正装置1における音場環境とは、同じ環境である。
また、インパルス応答データ記録部17には、音場測定装置10において測定されたインパルス応答が記録されているものとする。
補正計算部2は、インパルス応答データ記録部17に記録されるインパルス応答に基づいて、補正フィルタ部3用のフィルタ係数を算出する役割を有している。補正フィルタ部3は、補正計算部2において算出されたフィルタ係数を用いて、車載用のオーディオ装置(図4における、オーディオ再生部20が該当し、CD、MD、ラジオなどに基づいてオーディオ信号を出力するもの)より出力されるLチャンネル用のオーディオ信号とRチャンネル用のオーディオ信号とにフィルタ処理を施すことによって、アンプ部13を介して各スピーカ14a〜14dから出力される出力音の補正を行う。
図5は、補正計算部2がフィルタ係数を算出する処理を示したフローチャートである。補正計算部2がフィルタ係数を算出するための処理は、ステップS.1〜ステップS.7の7ステップにより構成されている。この処理内容を以下に説明する。
[ステップS.1:測定ポイント毎の周波数特性の算出処理]
補正計算部2は、インパルス応答データ記録部17において測定エリア内の測定ポイント毎に記録されるインパルス応答のフーリエ変換処理を行う。そして、補正計算部2は、フーリエ変換処理により求められる周波数特性のリニア信号をデシベル信号に変換する。
図6は、測定ポイント毎の周波数特性を示した図である。上述したように、音場測定装置10では、測定マイクロホン15を移動させて測定信号の集音を行うことにより、測定エリアにおける多数の測定ポイントでインパルス応答を算出することが可能となっている。このため、測定エリア内で算出されたインパルス応答のデータは多数の測定ポイントのデータとなり、フーリエ変換により求められた周波数特性も、測定ポイントの数に対応して多数存在することになる。本実施の形態に係る音場補正装置1では、説明の便宜上、測定エリア内においてn個の測定ポイント(測定ポイント1〜測定ポイントnのn個)が存在するものとする。
測定ポイントの数をnとし、フーリエ変換長を2mとすると、n×m個の周波数特性を示したデータ(周波数レベルデータ)を得ることができる。
[ステップS.2:対数平均化処理]
次に、補正計算部2は、求められた周波数特性(周波数レベルデータ)を周波数領域においてスムージングする処理を行う。具体的には、周波数が高くなるに従って平均化数を増加させる対数平均化処理を行う。この対数平均化処理において周波数特性を人の耳の特性に近づけることが可能となり、音場補正時の出力音が一般的な耳の特性に適した音になるように音場補正を行うことが可能となる。なお、対数平均化処理により高域のデータが圧縮されることになるため、スムージング処理が行われることになる。
[ステップS.3:周波数毎の累積分布と分散の算出処理]
補正計算部2は、対数平均化処理された周波数特性に基づいて、周波数毎の累積分布特性と分散特性を計算する。具体的に、補正計算部2は、測定ポイント毎に求められた周波数特性(周波数レベルデータ)から、所定の周波数の信号レベルをそれぞれ抽出することによって、各測定ポイントにおいて測定された周波数毎の信号レベル分布を累積分布特性として求める。
図7は、各測定ポイントにおいて測定された周波数毎の累積分布特性を示した図である。ここでは、周波数f1,・・・,fk,・・・,fmのm個の累積分布データを示している。
[ステップS.4:測定エリアにおける累積確率毎の周波数特性算出処理]
次に、補正計算部2は、ステップS.3において求められた周波数毎の累積分布特性(各測定ポイントの周波数毎の信号レベル分布)に基づいて、各周波数毎の分布度数を累積することにより全ての周波数における累積確率毎の信号レベル値を求める。そして、補正計算部2は、求められた全ての周波数における累積確率毎の信号レベル値を累積確率(α%)毎に分類して、同一の累積確率を示す全ての周波数の信号レベル値の分布データを求めることにより、累積確率毎の周波数特性を求める。このようにして累積確率毎に求めた周波数特性をエリア周波数特性とする。作成されるエリア周波数特性は、累積確率毎に応じて複数作成されることになる。
図8(a)は、累積確率10%、累積確率50%、累積確率90%、累積確率100%を基準としたエリア周波数特性の実測値を示し、図8(b)は、(a)に示したエリア周波数特性における周波数毎の分散特性を示した図である。図8(a)(b)に示したエリア周波数特性およびその分散特性は、測定信号がモノラル信号、再生スピーカが前右側スピーカ14aと前左側スピーカ14b、測定エリアが運転席、測定ポイントが測定エリア内で500ポイントである場合を示している。
図8(a)に示すように、累積確率が大きくなるにしたがって信号レベルの値が増大する傾向を示し、累積確率100%のエリア周波数特性は、測定エリア内のエリア周波数変動において最大レベルの信号レベルを示している。このように、測定エリア内の多数の測定ポイントで求められたインパルス応答に基づいて、エリア周波数特性を求めることにより、周波数毎の信号レベルの変動状態を判断することができる。この変動状態の判断は、従来のように測定エリアの特定の測定ポイントにおいて(1つの測定ポイントだけで)周波数特性を算出する場合には困難なものであり、累積確率毎にエリア周波数特性を求めることによって、周波数変動に対応づけてエリア周波数特性と周波数範囲との重み付け(重要度が高いものとの判断)を行うことが可能となる。
図9は、図8に示した測定環境において、周波数が低域(86Hz)、中域(667Hz)、高域(10013Hz)である場合の累積分布特性を示している。低域に比べて中域や高域は図8(b)に示すように分散が大きく、測定エリア内で大きな信号レベルの変動が生ずる周波数となっており、図9の累積分布特性をみると、特に中域で変動範囲が40dB以上になっている。
[ステップS.5:周波数特性における重み付け処理]
補正計算部2は、図8(b)に示した周波数毎の分散特性に基づいて、分散値が顕著な値を示す周波数範囲を特定する。例えば、図8(b)に示す分散特性では、650Hz付近に最も値の高いピークが存在し、次に820Hz付近に2つ目に高いピークが検出されている。このため、本実施の形態に係る補正計算部2では、この2つの分算値を基準として前後150Hz程度の周波数範囲である500Hz〜1000Hzを他の周波数よりも周波数変動が高い周波数範囲であると判断して、重み付けを行う。
なお、補正計算部2における周波数範囲の重み付け処理は、本実施の形態に示す補正計算部2のように、分散特性におけるピークの周波数を検出し、そのピークとなる周波数(周波数の値)を基準(所定範囲の前後周波数を含む)として、重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲を判断するものであってもよく、また、他の方法によって重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲を求めるものであってもよい。例えば、所定の閾値を予め設定し、その閾値よりも高い分散値が検出された周波数の範囲を重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲として求めるものであってもよい。
さらに、周波数特性において検出されるピークの高さを基準とするのではなく、変動差(分散特性の山部分と谷部分との差)に基づいて、重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲を求めたり、一定の周波数範囲内において増減変動回数が多い範囲(変動値が小刻みに増減変化しており、値が安定していない場所など)を抽出して、重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲として求めるものであってもよい。
また、車室内において反射音(反射波)の干渉による影響を大きく受ける周波数範囲である中域の周波数範囲を予め設定して、重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲として求めるものであってもよい。一般的な車室内では、500Hz〜1000Hzの周波数範囲において反射音の干渉による影響を受ける傾向が高いため、予めこの周波数範囲を、重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲として設定することも可能である。
さらに、補正計算部2は、フィルタ係数の算出に用いるエリア周波数特性として、いずれの累積確率におけるエリア周波数特性を用いることがよいかの判断を行う。
上述したように分散特性の値が高い周波数範囲では、測定エリアの測定ポイントにおいてディップが多く発生している可能性が高いと判断できる。特に、車室内のように反射音の干渉による影響が大きな環境では、同じ測定エリアであっても、わずかな測定ポイントの違いによって干渉の影響が信号レベルとして反映されたりされなかったりする傾向があるため、影響を受ける場所と受けない場所との違いが顕著となる。このため、ディップが発生する測定ポイントのエリア周波数特性に基づいて補正フィルタ部3のフィルタ係数を算出すると、ディップの存在しない測定ポイントにおける信号レベルが顕著に増減されてしまい、聴取者に違和感を与えてしまう(異音として聞こえてしまう)おそれがある。
例えば、累積確率を30%あるいは50%(中央値)に設定した場合と、累積確率を90%のように高めに設定した場合との測定エリアのエリア周波数特性を求める。累積確率100%のエリア周波数特性の信号レベルを基準とすると、他の累積確率のエリア周波数特性における信号レベルは、より低い信号レベル値となる。具体的に示すと、累積確率が30%のエリア周波数特性の信号レベルは、累積確率が100%のエリア周波数特性の信号レベルに比べて22dB程度低い値を示し、累積確率50%(中央値)のエリア周波数特性の信号レベルでは17dB程度低い値を示すことになる。一方で、累積確率90%のエリア周波数特性の信号レベルでは、累積確率100%のエリア周波数特性の信号レベルに比べて、4dB程度低い値となる。
従って、例えば、累積確率30%のエリア周波数特性に基づいて補正フィルタを作成すると、測定エリア内の周波数変動において最大の信号レベルとして検出される累積確率100%のエリア周波数特性の信号レベル値が補正フィルタにより補正されて、さらに22dB程度だけ増幅されてしまうおそれがある。また、累積確率50%のエリア周波数特性に基づいて補正フィルタを作成すると、測定エリア内の周波数変動において最大となる信号レベルの値が、さらに17dB程度だけ増幅されてしまうおそれが生ずることになる。このように最大となる信号レベルからさらに22dBや17dBだけ信号レベルが増幅された場合には、補正されたオーディオ信号が、聴感上で異音となって聴取者に聞こえてしまうおそれがある。
一方で、例えば、累積確率90%のエリア周波数特性に基づいて補正フィルタを作成すると、測定エリア内の周波数変動において最大となる信号レベルの値を、4dB程度の増幅に抑えることができ、周波数補正における過大な補正を抑制することが可能となる。
従って、本実施の形態に係る補正計算部2では、累積確率が100%のエリア周波数特性における最大の信号レベルの値とその周波数とを基準として、異なる累積確率毎に該当する周波数における信号レベル差を求める。そして、予め設定された信号レベル差の条件(この条件を閾値として、インパルス応答データ記録部17に記録させておく)に該当する累積確率のエリア周波数特性を重み付けがなされた(重要度の高い)エリア周波数特性であると判断する。本実施の形態における補正計算部2では、累積確率が10%毎に異なるエリア周波数特性を求めて、各累積確率のエリア周波数特性における信号レベル値と、累積確率が100%の場合の信号レベルとの差が、5dB(この値が、本実施の形態に係る音場補正装置1の閾値となる)に最も近い値となる累積確率のエリア周波数特性を求める。このようにして比較的累積確率が高めのエリア周波数を求めることにより、反射音の干渉による変動を軽減させたエリア周波数特性を得ることができる。
なお、累積確率100%の周波数特性における最大の信号レベル値、つまり測定エリア内の周波数変動における最大の信号レベル値は、測定時に瞬時的な雑音などが発生したときにその影響も含んでしまう傾向がある。このため、累積確率100%のエリア周波数特性は、フィルタ係数の算出処理に用いるエリア周波数特性(重み付けがなされたエリア周波数特性)としては採用されない。
また、重み付けがなされた(重要度の高い)エリア周波数特性を求める方法は、上述したような信号レベル差の値で決定する方法だけには限定されない。例えば、累積確率が100%のエリア周波数特性における最大の信号レベル値に対する信号レベル差の割合を求めることにより、最大となる信号レベルの値が補正によりどの程度の割合だけ増減するかを求めることが可能となる。このため、一定の増減割合を閾値として予め決定し、この増減割合を基準として、重み付けがなされた(重要度の高い)エリア周波数特性を求めるものであってもよい。
また、重み付けがなされた(重要度の高い)エリア周波数特性を求める方法は、周波数毎に分散特性を加味して決定するものであってもよい。例えば、図8(b)に示すように、周波数毎に分散値が大きく変動するため、式1を用いることにより、分散値に基づいて周波数毎の累積確率を求めることができる。
周波数毎の累積確率[%]=50%+周波数毎の分散[dB]×α ・・・式1
ここで、αは重み付け係数であり、αとして1から4の範囲で数値を設定する。
また、周波数毎の累積確率[%]は、上述したように100%の場合が適用されないようにするため、最大で99%となるように制限をかける。
式1に示すようにして周波数毎の累積確率[%]を求めることにより、分散が小さくなる低域周波数においては、50%程度の累積確率となり、分散が大きくなる中域周波数や高域周波数においては50%ではなく、100%寄りの値を目標とする累積確率を算出することができる。このようにして全ての周波数毎に累積確率を求め、各累積確率に対応する信号レベルを全ての周波数において算出することによって、重み付けがなされた(重要度の高い)エリア周波数特性を求めることができる。
[ステップS.6:逆フィルタリングによる補正量の算出処理]
次に、補正計算部2は、ステップS.5において重み付けがなされた(重要度の高い)エリア周波数特性として求められた累積確率90%のエリア周波数特性を逆フィルタリングすることにより、周波数補正量を計算する。この処理における逆フィルタリングは、振幅のみを対象とし、位相の補正は行わない。図10(a)は、累積確率90%のエリア周波数特性と、逆フィルタリングされた累積確率90%のエリア周波数特性とを示している。
次に、補正計算部2は、目標応答曲線を求める。ここで、目標応答曲線とは、音場補正のターゲットとなる周波数補正量を示しており、逆フィルタリング処理されたエリア周波数特性の正規化処理に用いられる。図10(b)には、本実施の形態に係る補正計算部2の目標応答曲線が示されている。本実施の形態に係る目標応答曲線は、周波数に関わらず値が一様なものであり、目標応答曲線の基準となる信号レベル(基準値)は、ステップS.5で求められた重み付けのなされた(重要度の高い)エリア周波数特性(本実施の形態では、累積確率90%のエリア周波数特性)における、重み付けがなされた(重要度の高い)周波数範囲(本実施の形態では、500Hz〜1000Hzの周波数範囲)の信号レベルの平均値が用いられる。
このように、目標応答曲線の基準値として、ステップS.5で重み付けされた周波数範囲であって、重み付けがなされたエリア周波数特性における周波数範囲の信号レベルの平均値を用いることにより、測定ポイントによって信号レベルの変動が激しい周波数範囲における平均的な信号レベルを基準として補正量を求めることができる。このため、信号レベルが高い測定ポイントに対しても、信号レベルが低い(ディップが生じている)測定ポイントに対しても、バランスよく適切に補正を行うことができ、補正により信号レベルが突出して増加されてしまうことを防止することが可能となる。
また、例えば、ディップが発生しない測定ポイントの周波数特性に基づいて補正フィルタ部3のフィルタ係数を算出すると、ディップが存在する測定ポイントにおける信号レベルに対して十分な増減効果が奏されなくなり、聴取者が、補正による聴感上の音質向上を実感することが困難になってしまうおそれがある。このため、目標応答曲線の基準値として、ステップS.5で重み付けされた周波数範囲の信号レベルの平均値を用いることにより、ディップが存在する測定ポイントであっても、比較的十分な補正効果を奏することが可能となり、聴取者が、補正による聴感上の音質向上を実感することが可能となる。
補正計算部2は、逆フィルタリング処理されたエリア周波数特性の平均値を求めて、この平均値が目標応答曲線の基準値となるように逆フィルタリング処理されたエリア周波数特性の信号レベルを調整(平均値でオフセット処理)し、図10(b)に示すように、逆フィルタリング処理されたエリア周波数特性の信号レベルを正規化することによって補正特性を求める。図10(b)に示すように、逆フィルタリング処理されたエリア周波数特性を正規化することに求められた補正特性は、目標応答曲線にほぼ一致した状態となっている。
なお、本実施の形態に係る目標応答曲線では、周波数に関わらず値が一様なものを一例として示したが、目標応答曲線の基準値として、ステップS.5で重み付けされた周波数範囲の信号レベルの平均値を用いるものであれば、任意に設定することが可能である。
[ステップS.7:フィルタ係数算出処理]
補正計算部2は、求められた補正特性に対して逆フーリエ変換を行うことによってフィルタ係数を算出する。算出されたフィルタ係数の一例を図11に示している。図11に示すフィルタ係数は、次述する補正フィルタ部3のFIRフィルタに用いられる、1024tapの最小位相FIRフィルタ用のフィルタ係数である。
上述したステップS.1〜ステップS.7によって、補正計算部2において求められたフィルタ係数は、補正フィルタ部3に出力される。
補正フィルタ部3は、オーディオ再生部20より出力されたオーディオ信号に対して音場補正を行う役割を有している。補正フィルタ部3は、4つのFIRフィルタを有しており、各FIRフィルタは、4つのスピーカ14a〜14dに対応してそれぞれ設けられている。
図8〜図10に示した周波数特性は、上述したように、測定信号がモノラル信号、再生スピーカが前右側スピーカ14aと前左側スピーカ14b、測定エリアが運転席である場合を示している。従って、このような測定環境において求められたフィルタ係数は、前右側スピーカ14aに対応するFIRフィルタと、前左側スピーカ14bに対応するFIRフィルタとに対して設定される。
さらに、補正計算部2では、再生スピーカが後右側スピーカ14cと後左側スピーカ14d、測定エリアが後部右席である場合におけるフィルタ係数を求める。求められたフィルタ係数は、補正フィルタ部3において、後右側スピーカ14cに対応するFIRフィルタと、後左側スピーカ14dに対応するFIRフィルタとに対して設定される。
また、運転席と助手席の双方に対応した補正をする場合、補正計算部2は、前右側スピーカ14aと前左側スピーカ14bとを再生用のスピーカに設定し、運転席と助手席との両方についてエリア周波数特性を求め、求められたエリア周波数特性を加算してフィルタ係数を求める。さらに、ステレオ信号に特化した音場補正を行う場合、音場測定装置10の測定信号再生部11においてステレオ信号を出力させ、それぞれの出力信号に基づいて2つのインパルス応答を求めて、それぞれエリア周波数特性を計算する。そして、補正計算部2では、前右側スピーカ14aと、前左側スピーカ14bと、後右側スピーカ14cと、後左側スピーカ14dとのそれぞれのフィルタ係数を求めて、求められたフィルタ係数を補正フィルタ部3においてそれぞれのスピーカに対応付けられたFIRフィルタに対して設定する。
以上説明したように、本実施の形態に係る音場補正装置1では、補正計算部2が、多数の測定ポイント毎の周波数特性を求めて、その周波数特性毎に特定の周波数の信号レベル値に基づいて周波数毎の信号レベル値の累積分布特性と分散特性を求める。そして、補正計算部2は、測定エリアにおけるエリア周波数特性を累積確率毎に求めると共に、累積確率の相違に基づく信号レベル値の分散特性を求める。さらに、補正計算部2は、累積確率が100%のエリア周波数特性において最大の信号レベルを示す周波数およびその信号レベル値と、その周波数における各累積確率の信号レベル値とを求め、さらにレベル差を求めることにより、レベル差が予め設定された条件を満たす累積確率のエリア周波数特性を求めると共に、周波数毎の信号レベル値の分散特性に基づいて信号レベル値の変動が大きい周波数範囲を求める。
そして、補正計算部2は、条件を満たす累積確率のエリア周波数特性に逆フィルタリング処理を行うことにより逆エリア周波数特性を算出し、さらに算出された逆エリア周波数特性を、分散特性に基づいて求められた周波数範囲の信号レベルの平均値にオフセットすることにより正規化して補正特性を求める。そして補正計算部2は、求められた補正特性を逆フーリエ変換させることによって、フィルタ係数を算出する。
このようにして求められたフィルタ係数は、累積確率100%のエリア周波数特性との信号レベル差が生じにくいエリア周波数特性に基づいて算出されているため、ディップが発生し得る測定ポイントにおいて補正された音が聴取される場合であっても、ディップが発生しない測定ポイントにおいて補正された音が聴取される場合であっても、補正された音が異音として聴感上判断されてしまうことを防止することができる。
さらに、信号レベル差が生じにくいエリア周波数特性(本実施の形態では、累積確率90%のエリア周波数特性)を基準として、信号レベルの変動が激しい周波数範囲、つまり、ディップの発生する測定エリアとディップが発生しない測定エリアとにおいて聴取される音の信号レベルに大きな差が生じ得る周波数範囲における平均値に基づいてフィルタ係数が算出されているので、音響補正が行われた音を、ディップの発生する測定エリアで聴取した場合であっても、あるいはディップが発生しない測定エリアで聴取した場合であっても、異音が生じるような補正が行われてしまうことを防止することが可能となる。
以上、本発明に係る音場補正装置について、図面を用いて詳細に説明したが、本発明に係る音場補正装置は、上述した実施の形態の例には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本実施の形態に係る音場補正装置1と音場測定装置10とは、スピーカ選択部12、アンプ部13、スピーカ14、測定マイクロホン15、インパルス応答データ記録部17の構成が共通するため、例えば、音場測定装置10の各構成内容を、音場補正装置1に含めることによって、実質的に本発明に係る音場補正装置を構成するものであってもよい。
1 …音場補正装置
2 …補正計算部(測定ポイント周波数特性算出手段、累積分布特性生成手段、エリア周波数特性生成手段、分散特性生成手段、周波数範囲検出手段、レベル差周波数特性抽出手段、逆エリア周波数特性生成手段、信号レベル調整手段、フィルタ係数算出手段、レベル差周波数特性算出手段)
3 …補正フィルタ部
10 …音場測定装置
11 …測定信号再生部
12 …スピーカ選択部
13 …アンプ部
14 …スピーカ
14a …前右側スピーカ
14b …前左側スピーカ
14c …後右側スピーカ
14d …後左側スピーカ
15 …測定マイクロホン
16 …相関演算処理部
17 …インパルス応答データ記録部
20 …オーディオ再生部
25 …車室
26a〜26d …測定エリア

Claims (5)

  1. 聴取者が音楽の聴取を行う場所を測定エリアとし、該測定エリア内に近設された多数の測定ポイント毎の周波数特性を算出する測定ポイント周波数特性算出手段と、
    該測定ポイント周波数特性算出手段によって算出された前記測定ポイント毎の前記周波数特性から周波数毎の信号レベルを抽出して、周波数毎に信号レベルに基づく累積分布特性を生成する累積分布特性生成手段と、
    該累積分布特性生成手段により生成された前記累積分布特性に基づいて累積確率毎に全ての周波数の信号レベルを求めて、累積確率毎のエリア周波数特性を生成するエリア周波数特性生成手段と、
    該エリア周波数特性生成手段によって生成された前記累積確率毎のエリア周波数特性に基づいて、各エリア周波数特性における信号レベルの分散特性を生成する分散特性生成手段と、
    該分散特性生成手段により生成された分散特性に基づいて信号レベルの分散値が高い周波数範囲を検出する周波数範囲検出手段と、
    前記累積確率が100%のエリア周波数特性において最も高い値を示す信号レベルとその周波数とを求め、当該周波数におけるエリア周波数毎の信号レベルと前記累積確率100%のエリア周波数の信号レベルとの信号レベル差を求めて、信号レベル差が予め規定される閾値に最も近い値となる累積確率のエリア周波数特性を抽出するレベル差周波数特性抽出手段と、
    該レベル差周波数特性抽出手段により抽出されたエリア周波数特性に対して逆フィルタリング処理を施して前記エリア周波数特性と逆の特性を備えた逆エリア周波数特性を生成する逆エリア周波数特性生成手段と、
    該逆エリア周波数特性生成手段により生成された逆エリア周波数特性の信号レベルの平均値が、前記レベル差周波数特性抽出手段により抽出された前記エリア周波数特性であって、前記周波数範囲検出手段により検出された前記周波数範囲における信号レベルの平均値と一致するように、前記逆エリア周波数特性の信号レベル調整を行う信号レベル調整手段と、
    該信号レベル調整手段により信号レベル調整が行われた前記逆エリア周波数特性に対して逆フーリエ変換を施すことにより、前記測定エリアにおいて聴取者により聴取されるオーディオ信号に対してフィルタリング処理を行うためのフィルタ係数の算出を行うフィルタ係数算出手段と、
    を備えることを特徴とする音場補正装置。
  2. 聴取者が音楽の聴取を行う場所を測定エリアとし、該測定エリア内に近設された多数の測定ポイント毎の周波数特性を算出する測定ポイント周波数特性算出手段と、
    該測定ポイント周波数特性算出手段によって算出された前記測定ポイント毎の前記周波数特性から周波数毎の信号レベルを抽出して、周波数毎に信号レベルに基づく累積分布特性を生成する累積分布特性生成手段と、
    該累積分布特性生成手段により生成された前記累積分布特性に基づいて累積確率毎に全ての周波数の信号レベルを求めて、累積確率毎のエリア周波数特性を生成するエリア周波数特性生成手段と、
    該エリア周波数特性生成手段によって生成された前記累積確率毎のエリア周波数特性に基づいて、各エリア周波数特性における信号レベルの分散特性を生成する分散特性生成手段と、
    該分散特性生成手段により生成された分散特性に基づいて信号レベルの分散値が高い周波数範囲を検出する周波数範囲検出手段と、
    下記式1に基づいて周波数毎の累積確率を求め、求められた累積確率に基づいて全ての周波数における信号レベルを求めることによりエリア周波数特性を算出するレベル差周波数特性算出手段と、
    該レベル差周波数特性算出手段により算出されたエリア周波数特性に対して逆フィルタリング処理を施して前記エリア周波数特性と逆の特性を備えた逆エリア周波数特性を生成する逆エリア周波数特性生成手段と、
    該逆エリア周波数特性生成手段により生成された逆エリア周波数特性の信号レベルの平均値が、前記レベル差周波数特性算出手段により算出された前記エリア周波数特性であって、前記周波数範囲検出手段により検出された前記周波数範囲における信号レベルの平均値と一致するように、前記逆エリア周波数特性の信号レベル調整を行う信号レベル調整手段と、
    該信号レベル調整手段により信号レベル調整が行われた前記逆エリア周波数特性に対して逆フーリエ変換を施すことにより、前記測定エリアにおいて聴取者により聴取されるオーディオ信号に対してフィルタリング処理を行うためのフィルタ係数の算出を行うフィルタ係数算出手段と、
    を備えることを特徴とする音場補正装置。
    周波数毎の累積確率[%]=50%+周波数毎の分散[dB]×α ・・・式1
    但し、αは重み付け係数であり、算出された周波数毎の累積確率[%]は最大で99%までとする。
  3. 前記周波数範囲検出手段は、前記分散特性において最も高い分散値を示す周波数を求め、当該周波数が含まれる所定の周波数範囲を前記周波数範囲として検出すること
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載の音場補正装置。
  4. 前記周波数範囲検出手段は、前記測定エリアが車室内である場合に、前記周波数範囲を500Hz〜1000Hzとすること
    を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の音場補正装置。
  5. 前記測定エリアに対して評価音を出力するスピーカと、前記測定エリアに設置されて当該測定エリア内をゆっくりと移動しながら前記評価音を集音することにより前記測定ポイント毎に前記評価音の測定を行う測定マイクロホンと
    を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の音場補正装置。
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