JP5715337B2 - α−アミノ酸ホスホン酸化合物、それらの製造方法および使用 - Google Patents

α−アミノ酸ホスホン酸化合物、それらの製造方法および使用 Download PDF

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Description

本発明は、新規のα−アミノ酸ホスホン酸化合物に関し、具体的には、利用可能なN−H基を反応させてアルキルホスホン酸成分を形成させた、選択されたアミノ酸、すなわちアルギニン、ヒスチジン、イソ−ロイシン、ロイシン、メチオニン、スレオニン、および、フェニルアラニンに関する。また、上記新規の化合物の製造方法、および、このような化合物の有益な用途も開示される。
本発明に係る化合物は、多数の工業用途及び、これらに限定されないが、例えば水処理、スケール阻害、分散、捕捉、腐食抑制、製薬および製薬中間体、織物、洗浄剤、二次的な油回収、製紙産業、糖およびビール産業、肥料および微量栄養素、ならびに金属処理などのその他の用途で有利に用いることができる。
α−アミノ酸(アミノ酸)はかなりよく知られており、非常に長い間応用されてきた。このようなアミノ酸は、天然産物そのものとして、または、タンパク質(加水分解されると、アミノ酸または一般的にはこのようなアミノ酸の混合物を生じ得る)として見出されている。このようなアミノ酸はまた、当業界公知の方法によって合成することもできる。実際には、様々な分野において、かなり多数の個々のアミノ酸が多くの確立された用途のために商品化されている。従って当然ながら、概してアミノ酸に関する従来技術は、実際に極めて重要である。
特許文献1において、ホスホメチレンアミノカルボキシラートが説明されている。特許文献2では、触媒的に有効な量のポリアミン触媒の存在下でシステインとハロアルキルホスホン酸とを反応させることによる、ホスホアルキル化アミノ酸の形成方法を説明している。特許文献3は、(ホスホメチレン)−アミノメチレンカルボン酸を含む有効なスケール防止剤系を開示している。後者の酸は、グリシンから開始して製造することができる。また特許文献4では、スケール制御のための、それと匹敵するアミノ酸ホスホナート化合物の使用も企図されている。非特許文献1で、N−ホスホノメチル−L−スレオニンが既知である。
特許文献5は、N−ビス(ホスホノメチル)アミノ酸、および、工業用プロセス水と接触させて炭酸カルシウムスケールを制御するためのそれらの使用を開示している。説明されている具体的な化合物は、N,N−ビス(ホスホノメチル)−L−グルタミン酸、N,N−ビス(ホスホノメチル)−L−セリン、および、N,N,N’,N’−ビス(ホスホノメチル)−L−リシンである。このL−リシン化合物の例としては、1個のアミノラジカルに結合した1個のホスホノメチル成分を有する化学種が示されている。特許文献6は、不均一なブレンステッド酸触媒の存在下で亜リン酸、アミンおよびホルムアルデヒドから開始することによる、アミノアルキレンホスホン酸化合物の製造方法を説明している。
GB1438079 US4661298 ドイツ特許出願DE3524502 GB2161468 US5414112 WO2006/074730
Journ.Of Crystallographic and Spectroscopic Research (1989),19(5),861〜71
本発明の目的は、様々な工業用途において有利に使用することができる新規のホスホナート化合物を提供することである。さらなる本発明の目的は、既存のアミノアルキレンホスホン酸と比較して有益な、少なくとも同等の性能を生じさせることができる新規のホスホナート化合物を提供することである。本発明のさらにその他の目的は、ホスホン酸成分の重量単位あたり優れた性能を提供するホスホナート化合物を見出すことである。さらなる目的は、個々の反応パートナー、および/または、匹敵する技術的な構造の使用によって得られたものと比較して望ましい相乗的な用途性能をもたらすことができる新規の化合物を作成することである。
ここで、前述の目的およびその他の目的は、狭義に定義されたアミノ酸ホスホナートの提供によって満たすことができる。
説明で用いられる用語「パーセント」または「%」は、異なる定義が示されない限り、「質量パーセント」または「質量%」を意味する。説明および請求項で用いられる用語「アミノ酸」は、「α−アミノ酸」を意味する。また用語「ホスホン酸」および「ホスホン酸塩」も同じ意味で用いられるが、当然ながらこれは、媒体の優勢なアルカリ度/酸性度の状態に依存する。用語「ppm」は、「百万分率」を意味する。用語「閾値量」は、水処理分野において周知である。極めて少量のスケール防止剤が溶液中に多量のスケール剤(scalant)を保持することができる能力は、「閾値作用」として知られている。また言い換えれば、これは、ppmレベルの防止剤によって、スケール剤の過飽和溶液からの沈殿の形成を予防することである。
ここで、新規のアミノ酸ホスホナート化合物が、本発明の目的を満たすことが可能であることが見出された。より詳細には、本発明は、一般式:
A−(B)x
で示されるアミノ酸ホスホン酸(aminoacid phosphonic acid)化合物に関し、
式中Aは、アルギニン;ヒスチジン;イソ−ロイシン;ロイシン;メチオニン;スレオニン;および、フェニルアラニンからなる群より選択されるα−アミノ酸成分であり;および、
式中Bは、アルキル基中に1〜6個の炭素原子を有するアルキルホスホン酸成分であり;
ただし、アミノ酸成分がアルギニンである場合、xは1〜6の整数であり、アミノ酸成分がヒスチジンである場合、1〜3であり、さらに、アミノ酸成分がロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、および、フェニルアラニンから選択される場合、xは2である。
本発明の新規の化合物における第一の必須の成分の例としては、選択されたα−アミノ酸、すなわちアルギニン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、および、フェニルアラニンが挙げられる。アミノ酸は、一般的にはタンパク質のビルディングブロックである。40種を超えるアミノ酸が知られており、そのうち約20種は、実際に動物組織に含まれているものである。アミノ酸は、タンパク質から開始して加水分解によって、酵素による発酵によって、および/または、化学合成によって製造することができる。この技術分野は非常によく知られており、全ての個々の技術は文献に十分に記載されている。
タンパク質中の天然メチオニンは、光学的に活性なL型異性体として存在する。DおよびL型光学異性体の混合物は既知の化学的方法によって生産することができ、それぞれの異性体は分離することができる。D,L−メチオニンは、既知の方法でアクロレインから開始して合成することができる。
またアルギニンは、工業的な量でも生産されており、医薬、栄養補助食品、機能性飲料、および、パーソナルケア製品において商業的に用いられる。フェニルアラニンは、広く利用可能であり、例えばアスパルテームの製造や製薬目的で用いられる。スレオニンは大量生産され、医薬などの様々な適用で用いられる。ヒスチジンは、市販されており、例えば医薬産業で用いられる。イソロイシンおよびロイシンは、容積の小さいアミノ酸であり、栄養調合剤、医薬、栄養補助食品において用途が見出され、さらに(ロイシンは)アスパルテーム錠剤における滑沢剤としても用途が見出されている。
本発明の新規のアミノ酸ホスホン酸塩は、ホルムアルデヒドを添加しながら、塩酸の存在下で、一般的に4未満のpHを有する水性媒体中で、アミノ酸の1個またはそれ以上のN−H官能基を、亜リン酸と反応させ、この反応混合物を、一般的に70℃より高い温度で、反応を完了させるのに十分な時間加熱することによって製造することができる。この種の反応は当技術分野において一般的で、よく知られており、新規のホスホナート化合物の例が、以下で説明されているようにして、塩酸経路によって合成されている。
好ましい触媒において、アミノ酸ホスホナートは、ハロゲン化水素酸、および、対応する副産物および中間体を実質的に排除した条件で形成することができる。具体的には、亜リン酸成分(100%)に基づき示した場合0.4%以下の、好ましくは2000ppm未満のハロゲン化水素酸の存在下で:
(a)亜リン酸;
(b)アミノ酸;および、
(c)ホルムアルデヒド、
を反応させ、
ここにおいて反応体の比率(a):(b)が0.05:1〜2:1であり;(c):(b)が0.05:1〜5:1であり;および、(c):(a)が5:1〜0.25:1であり;
ここにおいて(a)および(c)は、用いられるモル数を意味し、(b)は、3.1に等しいか、またはそれより低いpKaを有する酸触媒の存在下におけるアミン中のN−H官能基の数を掛けたモル数を示し、ここにおいて該触媒は反応媒体に対して均一であり;
ここにおいて反応物の比率(b):(d)は、40:1〜1:5で用いられ;
ここにおいて(d)は、触媒1モルあたりの利用可能なプロトンの数を掛けた触媒のモル数を意味する;
続いて、形成されたアミノ酸ホスホナートを、それ自体既知の方法で回収することによってアミノ酸ホスホナートを製造することができる。用語「均一な」触媒とは、使用に適した触媒が、所定の反応条件下で、反応媒体中で単一の液相を形成することを意味する。このような触媒の均一な性質は、慣例的手順で確認することができ、例えば沈殿または相分離の特性を目視検査することによって確認することができる。
好ましい触媒の種類は、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸、および、ナフタレンスルホン酸から選択することができる。
好ましくは、均一の反応は、以下から選択されるアプローチを用いて、70℃〜150℃の範囲の温度で行われる:
−上記反応を周囲の気圧下で行うこと(ここにおいて水および反応しなかったホルムアルデヒドの蒸留を行ってもよいし、行わなくてもよい);
−閉じた容器中で、自然発生的な圧力が生じる条件下で行うこと;
−蒸留および圧力装置の組み合わせで行うこと(ここにおいて反応物の混合物を含む反応容器は、反応温度で周囲の気圧下に維持し、続いてこの反応混合物を、自然発生的な圧力が生じる条件下で操作される反応装置に循環させることによって、ホルムアルデヒドおよびその他の選択された反応物を必要に応じて徐々に添加する);および、
−場合によっては自然発生的な圧力が生じる条件下での連続プロセス装置で行うこと(ここにおいて反応体は、反応混合物に連続的に注入され、反応生成物であるホスホン酸を連続的に取り出す)。
その他の好ましい触媒において、ここで使用するためのアミノ酸ホスホナートは、ハロゲン化水素酸を実質的に排除した条件で、具体的には、亜リン酸成分(100%)に基づき示した場合0.4%以下の、好ましくは2000ppm未満のハロゲン化水素酸の存在下で:
(a)亜リン酸;(b)アミノ酸;および、(c)ホルムアルデヒド(ここにおいて反応物の比率は:(a):(b)が0.05:1〜2:1であり;(c):(b)が0.05:1〜5:1であり;および、(c):(a)が5:1〜0.25:1であり;
ここにおいて(a)および(c)は、用いられるモル数を意味し、(b)は、アミノ酸中のN−H官能基の数を掛けたモル数を示す)を、以下からなる群:
(1)固体の酸性金属酸化物の組み合わせ(それ単独で、または、キャリアー材料に支持された状態で);
(2)芳香族基にSO3H成分がグラフトされるように官能化された、スチレンコポリマー、エチルビニルベンゼン、および、ジビニルベンゼンからなる群より選択される陽イオン交換樹脂、および、カルボン酸および/またはスルホン酸基を有する過フッ化樹脂;
(3)反応温度で反応媒体と実質的に不混和性の有機スルホン酸およびカルボン酸のブレンステッド酸;
(4)以下から誘導された酸触媒:
(i)表面に有機ブレンステッド酸を堆積させた孤立電子対を有する固体支持体の相互作用;
(ii)表面にルイス酸部位を有する化合物を堆積させた孤立電子対を有する固体支持体の相互作用;
(iii)ブレンステッド酸基またはそれらの前駆体との化学的グラフトによって官能化された不均一な固体;および、
(5)一般式HxPMyz(式中Pは、リンおよびケイ素から選択され、Mは、WおよびMo、ならびにそれらの組み合わせから選択される)で示される不均一なヘテロポリ酸、
より選択される(反応媒体に関して)不均一なブレンステッド酸触媒の存在下で反応させ、続いて、それ自体既知の方法で形成されたアミノアルキルホスホン酸を回収することによって製造することができる。
適切なブレンステッド触媒の例は、炭化水素鎖中に6〜24個の炭素原子を有するフッ素化カルボン酸、および、フッ素化スルホン酸である。適切な触媒の具体例としては、ペルフルオロウンデカン酸が挙げられる。その他の実施態様において、適切な不均一な酸触媒の例としては、陽イオン交換樹脂が挙げられる。一般的に、このような樹脂としては、芳香族基にSO3H基がグラフトされるように官能化されたスチレンコポリマー、エチルビニルベンゼン、および、ジビニルベンゼンが挙げられる。
不均一なブレンステッド触媒は、当技術分野においてよく知られている多くの操作上の製造の配置で用いることができる。用語「不均一な」は、ブレンステッド触媒が、上記反応媒体中、上記反応条件で実質的に不溶性である、または、実質的に不混和性であることを意味しており、従って、上記反応媒体中、上記反応条件で液体であることを意味する。好ましくは、不均一な反応は、70〜150℃の範囲温度で、反応を完了させるのに十分な時間で行われる。
亜リン酸反応体は、好ましくは、既知の方式で、ハロゲンを実質的に排除した条件で、元素のリン、例えば四リン(tetraphosphorus)と水とを、200℃未満の温度で、リンの酸化を促進するのに有効な触媒の存在下で接触させ、水と反応させることによって;または、P(V)の化学種と還元剤、例えば水素とを、還元触媒の存在下で接触させることによって;または、リン酸エステルおよびホスホン酸エステルを含む加水分解供給混合物と液状の水および水蒸気とを接触させて、ホスホン酸エステルを亜リン酸に加水分解することによって製造される。
必須の構成要素であるホルムアルデヒドは、有用な成分であることがよく知られている。ホルムアルデヒドは、一般的に、様々な量(少量のことが多く、例えば0.3〜3%)のメタノールを含む水溶液として製造および販売されており、37%のホルムアルデヒドをベースとして報告されている。ホルムアルデヒド溶液は、オリゴマーの混合物として存在する。ホルムアルデヒド前駆体の例としては、例えば、パラホルムアルデヒド、一般的にはかなり短い(n=8〜100)鎖長を有する直鎖状ポリ(オキシメチレングリコール)の固形混合物、および、ホルムアルデヒドの環状三量体および四量体(これらはそれぞれトリオキサンおよびテトラオキサンという用語で示される)が挙げられる。またこのようなホルムアルデヒド構成要素の例としては、式R12C=Oで示されるアルデヒドおよびケトンも挙げられ、ここにおいて式中R1およびR2は、同一でもよいし、または異なっていてもよく、水素、および、有機ラジカルからなる群より選択される。R1が水素である場合、上記材料はアルデヒドである。R1およびR2の両方が有機ラジカルである場合、上記材料はケトンである。有用なアルデヒドの種類は、ホルムアルデヒドに加えて、アセトアルデヒド、カプロアルデヒド、ニコチンアルデヒド、クロトンアルデヒド、グルタルアルデヒド、p−トルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、および、3−アミノベンズアルデヒドである。ここで使用するための適切なケトン種は、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、ブチロン、アセトフェノン、および、2−アセトニルシクロヘキサノンである。
従って、多数のアミノ酸ホスホナートが、以下のように利用可能である。
Figure 0005715337
本発明におけるいくつかの新規のα−アミノ酸ホスホナートの合成を説明する。
L−フェニルアラニン165.19g(1モル)を、37%塩酸水溶液147.8g(1.5モル)および水250cc中の亜リン酸164g(2モル)の溶液と混合する。この混合物を撹拌しながら110℃に加熱する。36.6%ホルムアルデヒド水溶液180.5g(2.2モル)を、106℃〜107℃の反応温度を維持しながら110分間にわたり添加する。ホルムアルデヒドの添加が完了したら、この反応混合物を、107℃〜108℃の温度でで追加の90分間維持する。粗生成物の31P NMR解析から、68%のL−フェニルアラニンビス(メチレンホスホン酸)の存在が示された。
L−イソロイシン131.17g(1モル)を、37%塩酸水溶液147.8g(1.5モル)および水150cc中の亜リン酸164g(2モル)の溶液と混合する。この混合物を撹拌しながら110℃に加熱する。36.6%ホルムアルデヒド水溶液180.5g(2.2モル)を、110℃の反応温度を維持しながら、100分間にわたり添加する。ホルムアルデヒドの添加が完了したら、この反応混合物を、追加の110分間110℃に維持する。粗生成物の31P NMR解析から、69.7%のL−イソロイシンビス(メチレンホスホン酸)の存在が示された。
D,L−ロイシン131.17g(1モル)を、塩酸水溶液147.8g(1.5モル)、および、水150cc中の亜リン酸164g(2モル)の溶液と混合する。この混合物を撹拌しながら105℃に加熱する。36.6%ホルムアルデヒド水溶液180.5g(2.2モル)を、続いて、105℃〜110℃の反応温度を維持しながら100分間にわたり添加する。ホルムアルデヒドの添加が完了したら、この反応混合物を、追加の60分間110℃に維持する。粗生成物の31P NMR解析から、69.7%のD,L−ロイシンビス(メチレンホスホン酸)の存在が示された。
アルギニンを、従来の方法で、塩酸の存在下で、亜リン酸およびホルムアルデヒドと反応させた。未精製の反応物は、ビス(アルキレンホスホン酸)誘導体が、実質的に完全に、すなわち72.7%で存在することがわかった。この反応生成物を実施例で用いた。
本発明のアミノ酸ホスホン酸化合物は、特に、スケール制御、例えばバリウムおよびストロンチウムスケール、および、炭酸カルシウム、およびその他のアルカリ土類金属スケールの制御に適していることが見出され、概して水処理における用途、例えば水処理系および油回収に関連する用途にとって有用であり、望ましい可能性がある。
油田生産施設において、炭酸塩および硫酸塩スケールのようなスケールの形成は、生産性の低下を頻繁に引き起こす可能性があるために主要な問題となり得る。これは、具体的には、例えばガス圧の損失を補うために含油地層に海水が注入される場合に当てはまる。下げ孔の地層の水に含まれる多量のバリウムおよびカルシウムイオンが存在するために、硫酸カルシウム、および、特に硫酸バリウムおよび硫酸ストロンチウムは、油井の運転において主要な問題になる可能性がある。強化された油回収処理中に海水を注入する際には硫酸塩スケールが優勢であることに対して、下げ孔の地層におけるより穏やかなpH条件、表面に近くなるほど優勢な圧力差および高温により、一般的には、炭酸塩および硫酸塩スケールの混合物の形成が生じる。それゆえに、スケール防止剤は、油井および生産施設において発生し得るような広範囲の条件にわたって性能を示すものであるべきである。本防止剤は、「圧搾」処理などのあらゆる適切な処理によって含油地層に導入することができる。一般的に、このような油回収方法は、海上油井に本発明のアミノ酸ホスホン酸スケール防止剤の水溶液を0.1〜100000ppmの一般的なレベルで注入することを必要とする。多くの場合において、本防止剤の溶液は、生産油井の活動を停止してから油井地層に注入される。本発明に係るスケール防止剤は、単独で有効に使用できることが立証された。圧搾処理は、一般的に、スケール防止剤の溶液を生産油井のドリルホールに注入して、本防止剤をその地層に置くことからなる。その地層から放出された本スケール防止剤は、リターン水中に、少なくとも0.1の濃度で、一般的には少なくとも0.5の濃度で、多くの場合は10〜100ppmの濃度で含まれ、それによって有効なスケール制御を示し、その結果として、所定レベルの防止剤手段を用いて安全な油井生産を継続したところ、実際の一般的な実施と比較して1桁の規模で減少させた。
より詳細には、有益な油回収方法は、海上油井に本発明のアミノ酸ホスホン酸化合物の水溶液を0.1〜100000ppmのレベルで注入することによって行うことができる。本方法は、油井に0.1〜800ppmのアミノ酸ホスホン酸化合物の水溶液を連続注入することによって行うことができる。多くの場合において、連続注入とは、水注入井にスケール防止剤の溶液を注入することを意味する。しかし当然ながら、連続注入は、生産井の周囲にあるもの、例えば、水中器具(例えばポンプおよびパイプ)などの坑口の装置にも適用することができる。また本発明のアミノ酸スケール防止剤は、圧搾による油回収方法でも使用できる。このような圧搾方法は、生産坑井の活動を止めること;生産坑井を介して、アミノホスホン酸スケール防止剤を100〜100000ppmのレベルで含む水性の処理溶液を導入すること;生産坑井を介して海水を注入して、その地層の標的領域内に該スケール防止剤を設置すること;油抽出活動を再開すること;および、生産坑井を介して、油を含むリターン流体(return fluid)、および、リターン水を生産することを上記の順序で含む。
また本発明に係るアミノ酸ホスホン酸防止剤は、一般的に100mg/lより高いバリウムおよび/またはストロンチウム、および/または、炭酸カルシウム硬度を含み、一般的に2〜10の範囲内のpHを有するスケールを形成する水系中でも有利に用いることができる。その作用に加えて、0.1〜800ppm、好ましくは0.2〜100ppmのアミノ酸ホスホナートスケール防止剤がスケールを形成する水系に添加される。
それぞれのアミノ酸ホスホナートスケール防止剤は、一実施態様において、実質的に単独で用いてもよいし、または、それらが1種より多くのそれぞれの種の混合物として用いられる場合、本発明に係るそれぞれの防止剤は、重量に基づき、本発明の防止剤の混合物の少なくとも50%、一般的には60%またはそれ以上を構成することが観察されている。タンパク質の加水分解物由来のアミノ酸混合物は、本発明の方法で使用するにはあまり適していないことが観察されており、これは特に、性能に悪影響を与える可能性がある様々な種との相互作用のためである。このような場合に好ましい触媒、具体的には油生産井に関連して適用するのに好ましい触媒は、140℃で測定した場合、約10%未満の熱分解を示すものとする。
本発明における好ましい一実施態様において、本発明の方法の形態で使用するためのスケール防止剤の例としては、以下からなる群より選択されるホスホン酸と組み合わせた、本発明のアミノ酸ポリホスホナートの選択された組み合わせが挙げられる:(a)アミノ(ポリ)アルキレンポリホスホン酸(ここにおいてアルキレン成分は、1〜20個の炭素原子を含む);(b)ヒドロキシアルキレンポリホスホン酸(ここにおいてアルキレン成分は、2〜50個の炭素原子を含む);および、(c)ホスホノアルカンポリカルボン酸(ここにおいてアルカン成分は、直鎖状であり、3〜12個の炭素原子を含む)。実際には、好ましくは、アルキレン成分に1〜12個の炭素原子を有するアミノアルキレンポリホスホン酸;アルキレン成分に2〜12個の炭素原子、および、2個のホスホン酸基を含むヒドロキシアルキレンホスホン酸であり;一方で、ホスホノアルカンポリカルボン酸は、4〜8個の炭素原子を有する直鎖アルカンの形態を有し、ここにおいて、ホスホン酸ラジカルのカルボン酸ラジカルに対するモル比は、1:2〜1:4の範囲である。具体的には、好ましくは、2〜8個のホスホン酸基を有するポリホスホン酸である。個々に好ましい種としては、以下が挙げられる:アミノトリ(メチレンホスホン酸)、および、そのN−酸化物;1−ヒドロキシエチレン(1,1−ジホスホン酸);エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ヒドロキシエチルアミノビス(メチレンホスホン酸);N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−エチレンジアミンヘキサ(メチレンホスホン酸);および、ブタン−2−ホスホノ−1,2,4−トリカルボン酸。
アミノ酸ホスホン酸塩のホスホン酸に対する重量比は、98:2〜25:75の範囲であり、好ましくは90:10〜50:50の範囲である。
本発明の新規のアミノ酸ホスホナートのスケール防止剤の性能は、以下のような比較試験方法を用いることによって定量することができる。
熱安定性の評価
これは、合成した北海の海水の存在下でのホスホン酸塩の熱安定性を評価するための試験である。この試験は、pH5.5で安定化された北海の海水およびホスホナートの混合物を140℃で1週間加熱することによって行った。熱分解は、31P NMR解析によって測定した。結果は、処理後に分解した生成物の質量パーセントで示した。
試験の詳細は以下の通りである:
−20%の活性な酸ホスホナート(AA)を含む水溶液(溶液1)をpH5.5で製造し;
−pH5.5を有する合成した北海の海水(溶液2)を製造し;
−1gの溶液1と19gの溶液2とを混合することによって1%の活性物質のサンプルを製造し;
−このようにして製造されたサンプルを、オーブン中に140℃で1週間置き;および、
−熱処理後にサンプルを、31P NMR分光分析を用いて熱分解に関して解析した。
塩水/海水の混和性
この試験によって、100;1000;10000;および50000ppmで北海の海水に添加されたホスホ酸塩の海水との混和性を、22時間後に95℃で評価した。溶液中に残存したカルシウムを、ICPによって測定した。
試験の詳細は以下の通りである:
−合成した北海の海水をpH5.5で製造し;
−活性酸が0、100、1000、10000および50000ppmの濃度になるようにホスホナートを合成した北海の海水の溶液に添加し;
−5種のブランク溶液を、必要量の蒸留水を北海の海水と混合して、同じ希釈率を得ることによって製造し、具体的には、合成した北海の海水の溶液に、活性酸ホスホナートを1、100、1000、10000および50000ppmで添加することによって得て;
−これらの、各ホスホナートを4種の濃度で含むホスホナートサンプル、加えて5種のブランクを、オーブン中で95℃で22〜24時間保存し;
−試験が完了したら、サンプルを目視で観察し;
−試験が完了したら、pH値を慎重にモニターし、各サンプルから50mlを採取し、40μmミリポア(Millipore)フィルターを通過させてろ過し、37%塩酸水溶液の添加によってpH2未満で安定化し;
−Ca許容度を以下のようにして計算した:
Figure 0005715337
式中、
0は、ブランク溶液中で検出されたCaのppmであり;および、
1は、ホスホナートを含む溶液中で検出されたCaのppmである。
硫酸バリウムによるスケール阻害
これは静電気による試験であって、油田が拡張している状態において、バリウムおよびストロンチウムのスケール阻害を予防する際のホスホナートの効率を評価することができる。この試験は、合成した北海の海水と、試験しようとするホスホナートを5種の異なる濃度で含む地層水との50/50の混合物中で90℃で22時間後に沈殿したBaSO4およびSrSO4の量を測定することによって行われた。可溶性のBaおよびSrイオンの量は、ICPによって測定した。この結果は、100%硫酸バリウムによるスケール阻害の場合の最小限のホスホナート濃度を示すか、または、ホスホナートの100ppm添加におけるスケール阻害を示す。
試験の詳細は以下の通りである:
Figure 0005715337
−合成した北海の海水および地層水をpH6を有するように調整した。これらの水溶液は、試験開始前に90℃に予熱した。酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液を製造し、必要なpHを得るために北海の海水に添加し;
−必要な量のスケール防止剤をガラスボトルに添加し、最終的な試験混合物において、本スケール防止剤の試験濃度(15、30、50、70および100ppmの活性なホスホン酸)を得て;
−このガラスボトルに、50mlの北海の海水を撹拌しながら添加した。続いてこのガラスボトルに、50mlの地層水を添加し;
−さらに1つのブランク溶液も、50mlの北海の海水と50mlの地層水とを混合することによって製造し;
−サンプルのボトルをオーブン中に90℃で22時間置き;
−22時間後、表面から3mlの各試験溶液を採取し、0.45μmミリポアフィルターを通過させてろ過し、安定化溶液を添加した。続いてサンプルを、ICPで、BaおよびSrに関して分析し;
−BaSO4およびSrSO4スケール阻害としてのホスホン酸塩の効率を以下のようにして計算した:
Figure 0005715337
式中、
0は、ブランク溶液中で見出されたBa(またはSr)のppmであり;
1は、本防止剤を含む溶液中で見出されたBa(またはSr)のppmであり;
2は、元の溶液中に存在するBa(またはSr)のppmである。
本発明の方法で使用するためスケール防止剤のホスホナートサンプルの性能を前述の試験手順を用いて試験した。性能のデータは以下に示す通りである。
Figure 0005715337
一連のアミノ酸ホスホナートを、上述した本方法を用いることによって熱安定性に関して試験した。試験結果は、以下のように示される。
Figure 0005715337

Claims (8)

  1. スケール防止剤としての一般式:
    A−(B)x
    (式中Aは、アルギニン;ヒスチジン;イソ−ロイシン;ロイシン;メチオニン;スレオニン;および、フェニルアラニンからなる群より選択されるα−アミノ酸部分であり;そして、
    式中Bは、メチレンホスホン酸部分であり;
    ただし、アミノ酸部分がアルギニンである場合、xは1〜6の整数であり、アミノ酸部分がヒスチジンである場合、1〜3であり、さらに、アミノ酸部分がロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、および、フェニルアラニンから選択される場合、xは2である)
    で示されるアミノ酸ホスホン酸化合物の水溶液を海上油井に、0.1〜100000ppmのレベルで注入することによる油回収方法。
  2. 油井に、0.1〜800ppmのスケール防止剤としてのアミノ酸ホスホン酸化合物を含む水溶液が連続的に注入される、請求項に記載の油回収方法。
  3. 生産坑井の活動を止めること;生産坑井を介して、アミノ酸ホスホン酸スケール防止剤を100〜100000ppmのレベルで含む水性の処理溶液を導入すること;生産坑井を介して海水を注入して、その地層の標的領域内に該スケール防止剤を設置すること;油抽出活動を再開すること;および、生産坑井を介して、油およびリターン水を含むリターン流体を生産することを上記の順序で含む、請求項に記載の油回収方法。
  4. ホスホン酸化合物中のアミノ酸部分は:
    −L−フェニルアラニン;
    −D,L−ロイシン;
    −L−ヒスチジン;および、
    −L−メチオニン、
    からなる群より選択され、ここにおいて、このような化学種それぞれにおいて、xは2で
    ある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. スケール防止剤の混合物が用いられる場合、アミノ酸ホスホン酸スケール防止剤のうち1種が、重量に基づき、スケール防止剤の総重量の60質量%またはそれ以上を構成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. スケール防止剤は、140℃で測定した場合、少なくとも90質量%の熱安定性を有し、ここにおいて該スケール防止剤中のアミノ酸部分は、L−フェニルアラニン、D,L−ロイシン、および、L−メチオニンからなる群より選択され、該アミノ酸部分は、2個のメチレンホスホン酸部分に結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  7. アミノ酸ホスホン酸スケール防止剤に加えて、ポリホスホン酸が存在しており、ここにおいて該ポリホスホン酸は:
    (a)アミノポリアルキレンポリホスホン酸(ここにおいてアルキレン部分は、1〜20個の炭素原子を含む);
    (b)ヒドロキシアルキレンポリホスホン酸(ここにおいてアルキレン部分は、2〜50個の炭素原子を含む);および、
    (c)ホスホノアルカンポリカルボン酸(ここにおいてアルカン成分は、直鎖状であり、3〜12個の炭素原子を含む)
    からなる群より選択され、
    ここにおいてアミノ酸ホスホン酸のポリホスホン酸に対する重量比は、98:2〜25:75の範囲である、請求項に記載の方法。
  8. ポリホスホン酸は、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、および、そのN−酸化物;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ヒドロキシエチルアミノビス(メチレンホスホン酸);N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−エチレンジアミンヘキサ(メチレンホスホン酸);および、ブタン−2−ホスホノ−1,2,4−トリカルボン酸から選択され、
    ここにおいてアミノ酸ホスホネートのホスホン酸に対する重量比は、90:10〜50:50の範囲である、請求項に記載の方法。
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