JP5714085B2 - 磁気ディスク用基板および磁気ディスク - Google Patents

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本発明は磁気記録媒体に用いられる磁気ディスク用基板、およびこれを用いた磁気ディスクに関する。
近年、情報化技術の高度化に伴い、情報記録技術、特に磁気記録技術は著しく進歩している。磁気記録媒体のひとつであるHDD(ハードディスクドライブ)等に搭載される磁気記録媒体として磁気ディスクがある。磁気ディスクはアルミニウム−マグネシウム合金製の金属基板上にNiP(ニッケルリン)等の膜を被着したり、ガラス基板やセラミクス基板等の基板上に下地層、磁性層、保護層、潤滑層を順次積層したりして構成される。従来は磁気ディスク用の基板としてアルミニウム基板が広く用いられてきた。しかし磁気ディスクの小型化、薄板化、および高密度記録化に伴い、アルミニウム基板に比べ基板表面の平坦度及び基板強度に優れたガラス基板に徐々に置き換わりつつある。
また携帯機器や自動車に大容量の磁気記録媒体を搭載すべく、耐衝撃性の向上も求められている点においても、剛性の高いガラス基板は有利である。携帯機器に搭載するために基板のサイズは縮小化の傾向がある。このため従来の3.5インチ基板から、2.5インチ基板、1.8インチ基板、1インチ基板、もしくはさらに小さな基板が求められるようになってきている。基板が小さくなれば許容される寸法誤差も小さくなり、さらに精密な形状加工が求められている。
また、磁気記録技術の高密度化に伴い、磁気ヘッドの方も薄膜ヘッドから、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移してきており、磁気ヘッドの基板からの浮上量が10nm以下にまで狭くなってきている。ただし、このように極狭な浮上量で磁気ディスク上に磁気ヘッドを浮上飛行させる場合には、フライスティクション障害が発生しやすいという問題がある。フライスティクション障害とは、磁気ディスク上を浮上飛行している磁気ヘッドが、浮上姿勢や浮上量に変調をきたす障害であり、これにより不規則な再生出力変動の発生を伴うことである。また、このフライスティクション障害が生ずると、浮上飛行中の磁気ヘッドが磁気ディスクに接触してしまうヘッドクラッシュ障害を生じてしまうことがある。従ってガラス基板表面には、高度な平坦度および平滑度が求められるようになってきている。
また、ガラス基板の表面の面積を有効活用するために、従来のCSS方式(Contact Start Stop)に変わって、ロードアンロード方式(Load UnLoad)が採用されるようになってきている。CSS方式はディスク停止時に基板表面に磁気ヘッドを接触させる方式であり、基板表面にCSS用領域(磁気ヘッドとの接触摺動用領域)を設ける必要がある。これに対しロードアンロード方式はディスク停止時に磁気ヘッドをガラス基板の外側に退避させる方式であり、CSS用領域も記録面として使用できるという利点がある。また、磁気ディスク装置の停止時においては、たとえ強い衝撃が加えられたとしても、磁気ヘッドが退避しているため、磁気ディスクの損傷を最小限に抑制することができる。可搬性の小型ハードディスクでは、情報記録容量の確保や耐衝撃性を向上させる観点からロードアンロード方式の起動再生方式とガラス基板を利用した磁気ディスクとの組み合わせが選択されている。
ロードアンロード方式では、磁気ヘッドがガラス基板の端部を通過することから、ガラス基板の外縁部分の形状が特に問題となる。ガラス基板の外縁部分に形状の乱れ(隆起や沈降)があると、磁気ヘッドの浮上姿勢が乱され、磁気ヘッドがガラス基板の外から入ってくる際、または出て行く際に接触しやすくなり、クラッシュ障害を生じる可能性がある。従って特にディスク外縁部分には、高い平坦度が求められている。
また磁気ディスクは、高密度化だけではなく、高速化の要請もある。従来はガラス基板を搭載した磁気ディスク装置は4200rpm等の相対的に低速な回転速度を利用していた。しかし近年では、例えば7200rpm以上の回転数で利用されるようになりつつある。さらに近い将来には、10000rpm以上の回転数で利用されるようになることが見込まれている。このような高速回転を行うと、取りわけ磁気ディスクの外縁付近の線速度が増大する。例えば、回転数が4200rpmである磁器ディスクにおいて基板中心から半径32.5mm位置の線速度は14.3m/秒であるが、5400rpmでは線速度が18.4m/秒、7200rpmでは線速度が24.5m/秒となる。このように線速度が高速になるディスク外縁部分において、上記のフライスティクション障害およびヘッドクラッシュ障害が特に生じやすい。従ってこの点においても、特に外縁部分に高い平坦度が求められる。
また近年は接触摺動型記録媒体(接触記録型記録媒体)も見直されつつある。接触摺動型記録媒体は、記録ヘッドを磁気ディスクに接触摺動させた状態で読み書きする記録方式である。接触摺動型記録媒体は、それ自体は古くからある記録方式であるが、記録ヘッドと磁気ディスクの間隔を狭くするほど記録密度を上げることができるため、あらためて今後発展する記録方式であると考えられている。また、記録ヘッドの浮上量を低減させていくと、記録ヘッドが磁気ディスクに接触してしまう場合がある。つまり、記録ヘッドの浮上量を低減した結果、部分的には記録ヘッドが磁気ディスクに対して接触摺動する場合がある。しかし、接触摺動した場合、記録ヘッドの摩耗が大きな問題となる。また記録ヘッドが跳ねてしまうと、信号品質が劣化したり、離接の衝撃によって記録ヘッドが損傷したりするおそれがあるという問題もある。これらはいずれも磁気ディスク表面の凹凸に大きく起因し、磁気ディスクの回転速度(すなわち線速度)が速くなるほどに影響が大きくなる。従ってこの点においても、特に外縁部分に高い平坦度が求められる。
一方、従来から特許文献1(特開2005−141852)に示されるように、基板主表面を研磨した際に、外縁部分の平坦度が不十分となるという問題がある。すなわち、ガラス基板は表裏の主表面を研磨パッドで挟むように押圧し、研磨材を含有したスラリーを供給しつつ、ガラス基板と研磨パッドとを相対的に移動させて研磨している。このとき主表面の外縁部分にスキージャンプと呼ばれる隆起(主表面の外縁部分が他の主表面の部分よりも突出すること)を生じたり、ロールオフと呼ばれる沈降(主表面の外縁部分が他の主表面の部分よりも相対的に多く削られた状態となること)を生じたりする。スキージャンプとロールオフはいずれか一方が発生する場合もあるが、両方が発生する場合もある。
特開2005−141852号公報
上記したように、磁気ディスクの外縁部分こそは、最も線速度が大きくなるため凹凸の影響が大きく、最も平坦度が求められる部位である。またロードアンロード方式における磁気ヘッドの通過に対しても、磁気ディスクの外縁部分には平坦度が要請される。しかして、その外縁部分にはスキージャンプまたはロールオフが発生し、平坦度が低下しやすい。そのためスキージャンプやロールオフをできる限り低減し、またはこれらの低減されたガラス基板を磁気ディスクに用いるように管理する必要がある。そして、磁気ディスク用基板を製造する際にも、この端部形状が良品・不良品の判断の指標の1つとして用いられている。
しかしながら、上記のように管理された磁気ディスク用基板を用いて、磁気ディスクを生産し、ハードディスクを製造した結果、ヘッドクラッシュが多発するという問題が生じた。
そこで、上記端部形状を規定するための管理値を、より一層厳しくする(端部形状に基づく良品・不良品の判断基準を厳しくする)ことで、ヘッドクラッシュを低減させることを試みた。その結果、ヘッドクラッシュが起きる割合は相対的に減少したが、やはり、ヘッドクラッシュが起きるという問題が発生した。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気ディスクを高速回転させてもクラッシュ障害の発生を抑止して信頼性が高く、ロードアンロード方式で起動停止するハードディスクに好適な基板、およびこれを用いた磁気ディスクを提供することにある。
本願発明者らは、上記問題点について、鋭意検討した結果、上記管理値を厳しくした場合でも、ヘッドクラッシュが起きる場合と起きない場合があることに着目し、それぞれの基板の端部形状を観察してみた。すると、管理値上は問題ないと判定されたガラス基板の面内における端部形状にばらつきがあることを見出した。そして、ガラス基板の面内における端部形状のバラツキ、より具体的には、ガラス基板の主表面端部における隆起(沈降)形状を当該ガラス基板の主表面と直交する高さ方向で略同じになるように抑制することで、ヘッドクラッシュを防止できるガラス基板を提供することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかる磁気ディスク用基板の代表的な構成は、円板状の基板であって、主表面と、端面と、主表面と端面との間に形成した面取面と、を備え、主表面は平坦面と乖離部とからなり、乖離部は主表面の周縁にあって、平坦面と面取面との間に形成され、該平坦面に対して隆起または沈降しており、当該基板の半径方向の断面において、当該円板状の基板の中心から端面までの距離を100%としたとき、中心から92.0%の位置と97.0%の位置に設定した主表面上の2点を結ぶ仮想直線に対して、該仮想直線からその直交方向における乖離部までの最大の距離を最大乖離値とし、当該基板について最大乖離値を円周方向に30°ごとに12点を測定した場合の最大乖離値の変動が5nm以下であることを特徴とする。
換言すれば、基板の主表面は面取面との間に該主表面に対して隆起または沈降した乖離部を有し、基板の主表面を平面視した場合に、乖離部が主表面を略均一な高さで包囲していることを特徴とする。ここで、「略均一な高さ」とは、例えば、乖離部の高さの差が5nm以内であることが好ましい。
上記構成によれば、磁気ディスク用基板の特に外縁部分の平坦度を向上させることができる。従って、特に磁気ディスクの外縁部分において磁気ヘッドの浮上姿勢が乱されるということがなく、磁気ディスクを高速回転させた場合であっても磁気ディスクと磁気ヘッドとが接触するおそれがなく、信頼性を高めることができる。また、ロードアンロード方式における磁気ヘッドの通過に対しても、磁気ヘッドの浮上姿勢が特に磁気ディスクの外縁部分で乱されたり、磁気ディスクと接触したりするおそれがない。
つまり、基板の主表面端部に形成され、かつ、基板全周に亘って形成された盛り上がり形状(隆起)の高さを、基板の円周方向で略同じにすることにより、当該基板を用いて磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ:HDD)を製造した場合に、磁気ヘッドの浮上飛行を安定化できるので、ヘッドクラッシュを引き起こすことを防止できる。
乖離値は、任意の半径位置の円周方向において最大乖離値が5nm以下であることが好ましい。磁気ヘッドは磁気ディスク上を主に円周方向に走査するため、円周方向において略均一であることにより、より磁気ディスクと磁気ヘッドとの接触を防止することができる。
基板について乖離部を円周方向に30°ごとに12点を測定した場合に、乖離の大きさの変動、すなわち基板の円周に沿って形成された乖離部における基板の主表面と直交する方向の差(変動量)が5nm以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果をより確実に得ることができる。
乖離部における隆起または沈降が最大となる極部は、基板の中心から略同じ距離にあることが好ましい。換言すると、当該基板は中心に円孔を備え、前記主表面において、前記乖離部における隆起または沈降が最大となる極部によって形成される円の中心は、上記円孔の中心と略同じ位置にあることが好ましい。これにより円周方向の乖離の大きさを略均一とすることができる。
主表面において、最大乖離値をもつ主表面上の位置である極部によって形成される円の真円度は600μm以内にするとよい。400μm以内とすればより好ましい。さらに理想的には200μm以内であることが好ましい。真円度が低くなる(値が大きくなる)と、仮に極部の乖離値(乖離の大きさ)が均一であっても、円周方向に見て乖離の大きさが略均一とならなくなる。しかし真円度を上記範囲とすることにより、記録ヘッドの大きさに対して円周方向の乖離の大きさを略均一とすることができる。
基板は中心に円孔を備え、主表面において、最大乖離値をもつ主表面上の位置である極部によって形成される円と、円孔の同芯度は1200μm以内にするとよい。1000μm以内とすればより好ましい。さらに理想的には800μm以内であることが好ましい。同芯度が低くなる(値が大きくなる)と、仮に極部の乖離が均一であっても、円周方向に見て乖離の大きさが略均一とならなくなる。しかし同芯度を上記範囲とすることにより、記録ヘッドの大きさに対して円周方向の乖離の大きさを略均一とすることができる。
また、上記乖離部は、上記主表面と直交する方向からみたとき、当該乖離部を結んだ円の真円度が、記録ヘッドのディスク半径方向に対する大きさを考慮して、0.02mm+1.00mm(記録ヘッドのピコスライダーの幅)=1.02mmであることが好ましい。換言すると、ガラス基板の断面から見たとき、上記乖離部が存在している位置の変動は、基板の半径方向において1.02mm以内の範囲に収まっていることが好ましい。
基板は、磁気ディスクの外縁を経由して磁気ヘッドが磁気ディスクの主表面に対してロード及びアンロードされるロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクに用いる基板であってもよい。外縁部分の平坦度が高いことから、ロードアンロード方式に適した基板とすることができる。
基板は、少なくとも5400rpmの回転数で磁気ディスクを回転させる磁気ディスク装置に搭載するための磁気ディスクに用いる基板であってもよい。外縁部分の平坦度が高いことから、高速回転させた場合であっても磁気ディスクと磁気ヘッドとが接触するおそれがなく、信頼性を高めることができる。
本発明に係る磁気ディスクの製造方法の代表的な構成は、上記磁気ディスク用基板の製造方法により得られた磁気ディスク用基板の表面に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする。これにより、主表面の外縁部分も高度な平坦度を備えた磁気ディスクを製造することができる。
本発明によれば、磁気ディスク用基板の特に外縁部分の平坦度を向上させることができる。従って、特に磁気ディスクの外縁部分において磁気ヘッドの浮上姿勢が乱されるということがなく、かつ、磁気ディスクを高速回転させた場合であっても磁気ディスクと磁気ヘッドとが接触するおそれがなく、信頼性を高めることができる。また、ロードアンロード方式における磁気ヘッドの通過に対しても、磁気ヘッドの浮上姿勢が特に磁気ディスクの外縁部分で乱されたり、磁気ディスクと接触したりするおそれがない。
本発明にかかる磁気ディスク用基板、およびこれを用いた磁気ディスクの実施形態について説明する。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
(磁気ディスク用基板)
発明者らは、スキージャンプまたはロールオフに起因する磁気ディスク主表面の凹凸を削減し、高速回転させてもクラッシュ障害の発生を抑止しうる磁気ディスクを提供するために鋭意検討した結果、同じ基板であっても円周方向に異なる位置にあってはスキージャンプまたはロールオフの様子が異なることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、従来からもガラス基板を出荷する前に、周縁部分の形状を測定することによってガラス基板が良品であるか否かを判断していた。しかしガラス基板は安価かつ大量に生産しなくてはならず、また検査した基板は出荷製品とできないことから(破壊試験)、ロットから数枚のサンプルを抜き出して、それぞれ1つの位置についてのみを測定していた。そして測定した結果、良品と判定されたガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合であっても、グライドテストで不良品と判定されるガラス基板が多い場合と少ない場合があることが分かった。
そこで、発明者らが詳細に検査したところ、円周方向に複数の位置で端部形状を測定すると、位置によって極部の位置および大きさが異なっていることがわかった。そのため、検査をパスしたロットであっても、いざ磁気ディスクにして磁気ディスク装置に組み込むと、所望の性能を発揮できない場合があることがわかった。その一方で、ガラス基板の主表面の周縁に形成された極部の大きさ、換言すると、主表面の端部に形成されたスキージャンプ(隆起)の最大値が円周方向で略同じであるガラス基板を磁気ディスクにして磁気ディスク装置に組み込むと、ヘッドクラッシュを引き起こすことがないことがわかった。
そこで本実施形態においては、乖離が形成された乖離部をガラス基板10の全周に亘って形成し、かつ乖離部における隆起または沈降の最大値である乖離の大きさを、ガラス基板10の全周に亘って略均一とした。換言すれば、ガラス基板10の主表面11は面取面との間に該主表面に対して隆起または沈降した乖離部を有し、ガラス基板の主表面を平面視した場合に、乖離部が主表面を略均一な高さで包囲させた。これについて以下に説明する。
まず、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板について図1を参照して説明する。なお、図1は代表的な磁気ディスク用基板の端部形状の一例であるスキージャンプ形状とロールオフ形状について説明する側面図である。
上記磁気ディスク用基板10は、円板形状をしており、その中心には円孔が形成されている。そして、磁気ディスク用基板10は、図1に示すようように、情報の記録再生領域となる主表面11と、当該主表面11に対して直交している端面12と、当該主表面と端面との間に介在している面取面13とを備えている。なお、後述する端面研磨工程により端面12と面取面13との境界が不明瞭になる場合もあるため、本発明は端面12とその両側の面取面13があわせて一つの曲面を構成する場合も含むものとする。
主表面は、情報を記録再生するための領域であるため、記録ヘッドが浮上走行するために実質的に平坦になっている。しかし、上記ガラス基板10を製造する上で、上記主表面の周縁には、例えば、ガラス基板の主表面における中心部分と比べて、当該主表面に対して隆起または沈降している乖離部が形成されることになる。この乖離部は、ガラス基板における主表面の内周端部側と外周端部側の両方に形成されている。
図1(a)に示すように、スキージャンプ形状は主表面11の外縁部分が隆起する形状であり、図1(b)に示すように、ロールオフ形状はガラス基板10の外縁部分が沈降する形状である。
図2は任意の2点間を結ぶ直線からの最大乖離値を用いて測定する例である。任意の2点は、当該円板状の基板の円の中心から端面までの距離を100%としたとき、該中心から92.0%の位置と97.0%の位置にある2点である。図中では、この直線と乖離部との交点をそれぞれR1およびR2としている。本実施形態では、このような任意の2点間を結ぶ直線を基準面とし、この基準面から見た隆起または沈降の最大点である極部の大きさ(最大乖離値)を測定することにより、評価を行うものである。
2点間の最大乖離値は、図2に示すように、任意の2点R1、R2を結んだ直線と、その範囲内における正方向の最大距離である。そして2点R1・R2を、スキージャンプ形状の頂点である極部を含み、かつ、上記2点を結んだ直線からの最大距離が、上記極部側になるように、当該2点の位置を設定することにより、上記極部の状態を測定することできる。
上記任意の2点R1、R2の設定としては、具体的には、例えば外径サイズが2.5インチ(外径65mmφ)の基板の場合、ガラス基板の中心からの距離をそれぞれ29.9mm(R1)、31.5mmの点(R2)のように定めることができる。換言すると、上記任意の2点を、基板の中心から基板端面までの距離を100%としたとき、基板中心から、92%の位置と97%の位置とを2点として定めることもできる。そして、この2点間に、磁気ディスク用基板の乖離部(隆起部または沈降部)が存在している。また、この2点のうちの基板中心から遠い地点は、磁気ヘッドが浮上走行する領域である。
なお、本実施形態においては、上記のように主表面内の周縁に該周縁以外の平坦面に対して形成された隆起または沈降を、総じて主表面の平坦面に対する「乖離」と称する。そして、この乖離が形成された部分を乖離部と称することとする。なお図1および図2を参照すればわかるように、最も大きな乖離を呈している位置が極部である。
次に本実施形態にかかる磁気ディスク用基板を製造するための製造方法について説明する。
磁気ディスク用基板は、様々な工程を経て製造される(詳細については後述する)が、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板のように、主表面の周縁部に、当該ガラス基板の中心から略同じ距離に乖離部(隆起部または沈降部)の頂点である極部を有するものを製造する場合には、特に、最終研磨工程(第2研磨工程)が重要になる。なお、主表面の周縁部に上記隆起部が形成されるか、上記平坦面に対して沈降している沈降部が形成されるのかについても、上記最終研磨工程の研磨条件によってその大部分が決定される。なお、以下の説明では、隆起部を形成するための条件について説明する。
記憶密度の向上に伴い、求められる上記隆起部の高さは一段と低くなってきており、その形状・大きさが決定する要因のほとんどが最終研磨工程の研磨条件に依存している。
そして、最終研磨工程における様々な研磨条件の多くが、上記隆起部の形状・大きさに影響を与えているが、なかでも特に、加工レート(加工速度)と加工圧とが影響している。
以下に、遊星歯車方式の研磨装置を使用してガラス基板の主表面を研磨する最終研磨工程について説明する。なお、上記最終研磨工程を行うためには、遊星歯車方式の研磨装置を使用しなくても行うことができることは言うまでもない。例えば、枚葉式の研磨装置を用いて上記ガラス基板に対して最終研磨工程を行っても良い。
最終研磨工程では、当該ガラス基板の両主表面を研磨パッドで押圧しながら、研磨パッドとガラス基板とを相対的に移動させることにより、上記ガラス基板の研磨を行う。このとき、単位時間当たりの取代が加工レートであり、ガラス基板を押圧する圧力が加工圧である。
そして、本実施形態にかかる磁気ガラス基板を製造するためには、加工レートを0.20μm/分〜0.45μm/分の範囲内とし、かつ、加工圧を8.0Pa〜10.5Paの範囲内とすることが好ましい。他の研磨条件は影響が比較的小さいために限定的ではないが、例えば2.5インチ型ディスク(φ65mm)の場合、研磨パッドの硬度を85(アスカーC硬度)、研磨材の粒径を1.0(μm)とすることができる。上記の条件を外れて研磨が行われた場合には、端部の形状が悪化したり、ガラス基板が割れるおそれがある。
また、本実施形態にかかる磁気ディスク基板を製造するためには、最終研磨工程において、研磨加工を目的とした加工圧(本加工圧)で基板を研磨した後、この本加工圧よりも低い(例えば、1Pa以下)の加工圧で基板を研磨することがより好ましい。特に、本加工圧で基板を研磨する研磨時間の約半分程度の時間、この低い加工圧で研磨することが好ましい。このようにすることで、端部形状の円周方向のバラツキを低減させることができる。
また、本実施形態にかかる磁気ディスク基板を製造するためには、化学強化処理が可能なガラス基板に対して、化学強化処理を行った後に、基板主表面を研磨することで、磁気ディスク用ガラス基板を得ることが好ましい。化学強化処理(イオン交換処理)を施した場合、端部形状が研磨後よりも粗くなる場合がある。このため端部形状の円周方向のバラツキを低減させる場合には、化学強化処理を施した後で研磨処理を施したほうが、端部形状の円周方向のバラツキが低減された磁気ディスク用ガラス基板を高歩留まりで生産することができる。なお、化学強化処理後に主表面研磨処理を施したガラス基板は、基板表面の少なくとも一部の表面にイオン交換層を有するガラス基板であって、イオン交換層の層厚が端面のほうが主表面よりも厚くなっている。
また、化学強化処理後に主表面研磨処理を施したガラス基板は、主表面の粗さを低減するためにも好ましい。特に、近年の垂直磁気記録方式で要求される基板の表面粗さは、従来と比べて著しく下がってきている。この要求を満たすためには、化学強化処理後に主表面研磨処理を施したガラス基板とすることが好ましい。
なお、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板のAFM(電子顕微鏡)を用いて測定した表面粗さRaが0.15nm以下であることが好ましい。
また、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板を製造するためには、遊星歯車方式の研磨装置を使用して最終研磨を行う場合には、キャリアの自転回数と装置内を公転する公転回数との関係も重要になってくる。
遊星歯車方式においては、複数枚のガラス基板がキャリアに保持される。そして、この保持されたガラス基板はキャリアと共に、その上下面に研磨パッドが圧接される。そしてこの状態で、キャリアが自転しながら公転することによって上記ガラス基板は研磨される。すなわち、ガラス基板と研磨パッドとの相対移動の方向は、ランダムであることにより平均化されるものの、ガラス基板の円周方向とは全く関係しない。このためガラス基板の外縁部分に形成されるスキージャンプ等は、その半径方向の位置や大きさが、円周方向の位置においてばらつきが生じてしまう。
そこで、この円周方向のバラツキを少なくするためには、キャリアの自転回数と公転回数との比を0.125〜8の範囲内と設定することが好ましい。この範囲を越えた条件で研磨を行った場合には、ガラス基板の周縁に形成に形成されるスキージャンプ(隆起部)の形状が円周方向で乱れてしまうことが多い。
そして、上記ガラス基板の主表面と直交する方向から当該ガラス基板を見たとき、上記乖離の大きさ(高さ)が円周方向においてばらついた場合には、磁気ディスクが回転して記録ヘッド(磁気ヘッド)が走査した際に激しい上下変動が生じることになり、記録ヘッドの浮上飛行が不安定化する。記録ヘッドが上記乖離の大きさの変動に追従できなければ、ヘッドクラッシュが起きることになる。
これについて詳細に説明すると、記録ヘッドが、磁気ディスク上を浮上飛行する場合、当該記録ヘッドは、乖離の大きさが大きい場合でも、その変動の割合が小さい(ゆるやかである)場合には追従が可能である。しかし、微少な飛行距離の間に大きな乖離の変動があった場合には、クラッシュを引き起こすことになる。つまり、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、ヘッドが高速で浮上飛行する場合には、特に好適な形態となる。
一方、上記構成のように乖離部の乖離の大きさをガラス基板の全周に亘って略均一に形成したことにより、仮にスキージャンプやロールオフが発生していたとしても、記録ヘッドが走査する際に常に極部の峰の上を通過するのであれば、クラッシュ障害を発生するほどの高低差はないと考えられる。すなわち本発明は、円周方向における基板表面の高さ変動こそが重要であることに着目している。
従って本実施形態の構成によれば、磁気ディスク用基板の特に外縁部分において、円周方向の粗さやうねりを低減し、平坦度を向上させることができる。従って、スキージャンプやロールオフが発生しているにもかかわらず、磁気ヘッドの浮上姿勢が乱されるということがなく、磁気ディスクを高速回転させた場合であっても磁気ディスクと磁気ヘッドとが接触するおそれがない。これにより、磁気ディスクを磁気ディスク装置に組み込んだ際の信頼性を飛躍的に高めることができる。また、ロードアンロード方式における磁気ヘッドの通過に対しても、磁気ヘッドの浮上姿勢が特に磁気ディスクの外縁部分で乱されたり、磁気ディスクと接触したりするおそれがないため、安定して記録ヘッドが磁気ディスク端部を通過することができ、極めて好適である。
乖離の大きさは、任意の半径位置の円周方向において略均一であることが好ましい。磁気ヘッドは磁気ディスク上を主に円周方向に走査するため、円周方向において略均一であることにより、より磁気ディスクと磁気ヘッドとの接触を防止することができる。
ここで「円周方向において略均一」とは、真円度を上記範囲とし、記録ヘッドのディスク半径方向に対する大きさを考慮して、0.02mm+1.00mm(記録ヘッドのピコスライダーの幅)=1.02mmとすることが好ましい。
具体的には、例えばガラス基板について乖離部を円周方向に30°ごとに12点を測定した場合に、乖離の大きさの変動が5nm以下とすることができる。このような範囲とすることにより、本発明の効果をより確実に得ることができる。
さらに、乖離部における隆起または沈降が最大となる極部は、ガラス基板の中心から略同じ距離にあることが好ましい。乖離の大きさが全周に亘って略均一であったとしても、中心からの距離に乱れがあれば、円周方向において略均一とならないからである。
具体的には、主表面において、乖離部における隆起または沈降が最大となる極部によって形成される円の真円度は600μm以内にするとよい。400μm以内とすればより好ましい。さらに理想的には200μm以内であることが好ましい。真円度が低くなる(値が大きくなる)と、仮に極部の乖離の大きさが均一であっても、円周方向に見て乖離の大きさが略均一とならなくなる。換言すれば、ガラス基板の中心から所定の半径位置(乖離部が存在している位置)における断面を見たとき、ガラス基板を回転させると、乖離部の極部の大きさ(例えば、隆起部の高さ)が変動することになる。つまり、記録ヘッドが、上記所定の半径位置を浮上飛行している場合に、当該記録ヘッドが上記乖離部の大きさの変動に追従できなければ、ヘッドクラッシュが起きることになる。しかし真円度を上記範囲とすることにより、記録ヘッドの大きさに対して円周方向の乖離の大きさを略均一とすることができる。
また、ガラス基板の中心に形成された円孔と、乖離部における隆起または沈降が最大となる極部によって形成される円との同芯度は1200μm以内にするとよい。1000μm以内とすればより好ましい。さらに理想的には800μm以内であることが好ましい。同芯度が低くなる(値が大きくなる)と、仮に極部の乖離の大きさが均一であっても、円周方向に見て乖離の大きさが略均一とならなくなる。しかし同芯度を上記範囲とすることにより、記録ヘッドの大きさに対して円周方向の乖離の大きさを略均一とすることができる。
また本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、5400rpm以上の回転数で回転させる磁気ディスク装置用に搭載するためのガラス基板として使用されることが好ましい。回転数が5400rpm以上の回転数で回転させる磁気ディスク装置に搭載しても、もちろん問題ないが、特に高速回転させる磁気ディスク装置の場合には、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板を用いた場合の効果が、本発明以外の磁気ディスク用基板と比べて顕著に現れることになる。
また、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、当該ガラス基板の周縁に存在する乖離部を、磁気ヘッドが20.0m/秒以上の線速度で走行する磁気ディスク装置に搭載するためのガラス基板として使用されることが好ましい。
また、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、タッチダウンハイト(TDH)が、3〜4nm以下の磁気ディスクに用いられるものであることが好ましい。タッチダウンハイトが低、上記ガラス基板上に形成されている乖離の変動が大きい場合にクラッシュを引き起こしやすい。しかし本実施形態の磁気ディスク用基板を用いることで、乖離部の変動を従来よりも一層小さくすることができるので、磁気ヘッド(記録ヘッド)の浮上量を小さくしても、磁気ヘッドがクラッシュすることを抑制できる。
また本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、記録密度が200GBit/inch2以上、さらに好ましくは250GBit/inch2以上の高い記録密度の磁気ディスクに用いられるものであることが好ましい。このように高い記録密度である場合には記録ヘッドの浮上量をより一層小さくする必要があるが、本実施形態の磁気ディスク用基板を用いることで、記録ヘッドの浮上量をより一層低減できるため、クラッシュを抑制することができる。なお、記録密度が上記よりも小さい磁気ディスクに用いられるガラス基板、または、タッチダウンハイトが上記よりも大きい磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用基板においても、本発明にかかる磁気ディスク用基板が好適に適用できることはいうまでもない。
なお、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、平坦な主表面、側面、および当該主表面と側面との間に存在する面取面とを備えるとともに、主表面の周縁部には当該周縁部を除く平坦面と直交する方向に隆起している隆起部が存在している、円板状の磁気ディスク用基板であって、ガラス基板の主表面を平面視した場合に、上記隆起部は、上記主表面を包囲してなり、上記隆起部は、上記主表面を略均一な高さで包囲していてもよい。
また、ガラス基板の主表面を平面視した場合に、乖離部の最大点は、当該ガラス基板の中心部を基準として当該ガラス基板の外形までの距離に対して、92.0〜97.0%の範囲内に存在していてもよい。
また、上記ガラス基板の主表面を平面視した場合に、上記隆起部の極部は、上記主表面を円形に包囲してなり、上記極部により形成される円の真円度は600μm以内であることが好ましい。
また、上記ガラス基板は中心部に円孔を有し、上記ガラス基板の主表面を平面視した場合に、上記隆起部の極部は、上記主表面を円形に包囲してなり、上記極部により形成される円と上記中心部の円孔により形成される円との同芯度は1200μm以内であることが好ましい。
また、円板状のガラス基板であって、上記ガラス基板は平坦な主表面と、側面と、上記主表面と側面との間に介在する面取面とを備え、上記ガラス基板の主表面を平面視した場合に、上記主表面と面取面との間には、上記主表面に対して沈降した沈降部を有し、上記ガラス基板の中心から所定距離離間した位置における上記沈降部の主表面からの深さは略均一とされていてもよい。
また、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、少なくとも端面が化学強化されたものであることが好ましく、基板前面(全表面)が化学強化されたものであることがより好ましい。換言すると、上記磁気ディスク用基板は、その表面に圧縮応力層が形成されていることがより好ましい。特に、上記磁気ディスク用基板を、高速回転(例えば、10000rpm)で回転する磁気ディスク装置に組み込む場合や、モバイル用途で使用される磁気ディスク装置に組み込む場合には、ガラス基板に対して耐衝撃性が求められるため、ガラス基板表面に圧縮応力層を形成することが好ましい。なお、ここで化学強化とは、化学強化塩を含有する化学強化処理液にガラス基板を接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンより大きなイオン径の化学強化処理液中のイオンに置換することによりガラス基板を強化する処理のことである。
(磁気ディスク)
そして、上記磁気ディスク用基板上に磁性膜を形成することで、本実施形態にかかる磁気ディスクを製造することができる。この磁気ディスクの主表面の形状は、上記磁気ディスク用基板の上に磁性膜を形成するため、当該ガラス基板の影響を多大に受けることとなる。つまり、磁気ディスクにおける主表面の形状を向上させるためには、上記ガラス基板の主表面の形状を向上させる必要がある。従って、磁気ディスク用基板として、本実施形態に開示したものを使用することで、主表面の特に周縁部の形状を向上させた磁気ディスクを製造することができる。なお、磁気ディスクの製造方法については公知のため、ここでの説明は省略する。
また、本実施形態にかかる磁気ディスクは、その外縁を経由して磁気ヘッドが主表面に対してロード及びアンロードされるロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクであってもよい。ガラス基板の外縁部分の平坦度が高いことから、ロードアンロード方式に適した磁気ディスクとすることができる。
また、本実施形態にかかる磁気ディスクは、少なくとも5400rpm以上の回転数で磁気ディスクを回転させる磁気ディスク装置に搭載するための磁気ディスクであってもよい。さらには、7200rpm以上、10000rpm以上の速度の磁気ディスク装置であっても、好適に用いることができる。ガラス基板の外縁部分の平坦度が高いことから、高速回転させた場合であっても磁気ディスクと磁気ヘッドとが接触するおそれがなく、信頼性が高いためである。
また、本実施形態にかかる磁気ディスクは、接触摺動型記録媒体(接触記録型記録媒体)であってもよい。接触摺動型記録媒体は、記録ヘッドを磁気ディスクに接触摺動させた状態で読み書きするため、上記のように磁気ディスク用基板の特に外縁部分の円周方向の平坦度を向上させることにより、記録ヘッドが跳ねてしまうことを防止することができる。これにより信号品質を向上し、記録ヘッドの損傷を防止することができる。
(磁気ディスク装置)
そして、上記磁気ディスクを搭載することで磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ)を構成することができる。そして、上記磁気ディスク用基板を搭載した磁気ディスク装置は、特に高速回転により、情報の記録再生を行う場合に特に好適である。
なお、上記磁気ディスク用基板の外周端面を中心に説明しているが、内周端面についても、上記のように乖離部が形成されている。そして、この乖離部における隆起が最大となる極部は、当該ガラス基板の中心から略同じ距離にあることが好ましいことは言うまでもない。
(磁気ディスク用ガラス基板の製造管理方法)
上記説明においては、ガラス基板上の複数の異なる位置においてダブオフやスキージャンプなどを測定することにより、ガラス基板の全体的な乖離の状態について評価を行う構成として説明した。しかし、ダブオフやスキージャンプなどの測定は所要時間が長く、1つの位置について5分程度を要するのが現状である。従って上記実施例のように12点について測定するとすれば、1枚の基板について1時間を要することとなる。ガラス基板は安価に大量生産しなくてはならないため、可能な限り無駄な測定は省略することが好ましい。
そこで、実際に磁気ディスク用ガラス基板を製造する際には、基板面内に存在する乖離(隆起または沈降)のうちの極大値が所定値以下の場合だけ、基板面内における上記乖離のバラツキを測定して、良品・不良品の判断を行ってもよい。より詳細には、乖離の大きさを測定する測定工程を、乖離(隆起または沈降)が最大となる位置を測定する位置測定工程と、詳細な乖離の大きさを測定する値測定工程とに分けることでもよい。位置測定工程は、例えば値測定工程よりも解像度の低い測定方法で、迅速かつ広範囲に測定することが考えられる。この位置測定工程においては、解像度が低いながらも、ある程度の精度で乖離の大きさを測定することができる。従って、乖離の大きさが明らかに良品の範囲を超えている場合には、その基板については詳細な測定をする必要がない。一方、乖離の大きさが良品の範囲と位置測定工程の誤差範囲とをあわせた範囲内にあるときには、値測定工程として上記実施例のように12点について測定することでよい。
位置測定工程は、具体的には、例えば解像度の低い光干渉式表面形状測定装置としてOptiFlat(Phase Shift Technorogy社製)を用いてガラス基板を全体的に走査し、最も乖離の大きい位置を特定することができる。値測定工程は、例えば解像度の高い光干渉式表面形状測定装置としてMicroXam(同社製)を用いて、詳細な乖離の大きさを測定することができる。
上記のように構成することにより、明らかに無駄な測定を排除することができ、検査工程の所要時間を削減することができる。
さらには、位置測定工程でガラス基板の乖離の大きさが最大である位置を把握した後に、値測定工程として一点のみ、その位置における乖離の大きさのみを測定することでもよい。
そして判断工程において、測定された最大の乖離の大きさを所定値と比較することにより、ガラス基板が良品であるか否かを判断することができる。乖離値としてダブオフを用いる場合には、乖離値が±10nm以下、好ましくは±7nm以下、さらに好ましくは±5nm以下である。なお乖離値の測定範囲は、ガラス基板の中心から端部までの距離を100%とした場合における中心から92.0〜97.0%の範囲と設定することができる。
このように、基板の中で最も大きな乖離のみを測定することにより、複数の位置で測定を行う必要がなくなる。このため迅速に判断を行うことができ、検査工程の時間短縮を図ることができる。
なお、本発明にかかる基板は、ガラス(アモルファスガラスやガラスセラミクス(結晶化ガラス)を利用できる。板状ガラスの材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等)であると説明した。しかし本発明は磁気ディスク用基板の形状に関するものであるため、磁気ディスク用基板の材質に限定されるものではなく、例えばアルミニウムその他の材料からなる基板であっても本発明を好適に適用することができる。ただし上述したように、特に携帯機器においては、アルミニウム基板に比べ基板表面の平坦度及び基板強度に優れたガラス基板が好ましい。
また、本発明にかかる磁気ディスク用基板は、略平坦な主表面と、端面と、前記主表面と端面との間に形成した面取面とを備えた磁気ディスク用基板であって、前記主表面の周縁に該周縁以外の平坦面に対して隆起または沈降した乖離部を備え、前記乖離部は、主表面の円周方向に連続的に形成されており、該乖離部の前記主表面と直交する方向の最大高さ(最大乖離値)が、当該基板の全周に亘って略均一に形成されている構成であってもよい。
また、上記乖離部は、中心に内孔が形成された円盤形状である磁気ディスクの主表面の外周周縁に形成されていてもよく、内周周縁に形成されていてもよく、両方に形成されていてもよい。そして、本発明において乖離部が内周周縁と外周周縁との両方に形成されている場合には、少なくとも一方の乖離部が、上述した形状であればよいが、特に記録ヘッドの線速が早い外周周縁が上述した形状であることが好ましい。
また、本実施形態の磁気ディスク用基板を用いて、磁気ディスクを製造することにより、タッチダウンハイト(TDH)の基板の半径方向のバラツキが小さい磁気ディスクとすることができる。このように基板の端部形状のバラツキを低減させることにより、ディスクの最外周付近における磁気ヘッドの浮上特性を向上させることができる。
また、本実施形態にかかる磁気ディスク用基板は、DFH(dynamic flying height)ヘッド対応の磁気ディスクの基板として用いられることが好ましい。DFHヘッドを用いた場合、磁気ディスク表面とヘッドの最近接部との距離が従来よりも著しく低い。しかし本実施形態の磁気ディスク用基板は、うねりの高さを20μm以下、さらには12μm以下とすることができる。また基板主表面の表面粗さは0.15nm以下、さらには0.12nm以下とすることができる。したがって、上記磁気ディスク用基板を磁気ディスクに使用した場合には、DFHヘッドのクラッシュをより一層低減させることができる。
以下に、本発明を適用した磁気ディスク用基板および磁気ディスクの製造方法について実施例を説明する。この磁気ディスク用基板および磁気ディスクは、3.5インチ型ディスク(φ89mm)、2.5インチ型ディスク(φ65mm)、0.8インチ型ディスク(φ21.6mm)、1.0インチ型ディスク(φ27.4mm)、1.8インチ型磁気ディスク(φ48mm)などの所定の形状を有する磁気ディスクとして製造される。
(1)形状加工工程および第1ラッピング工程
本実施例に係る磁気ディスク用基板の製造方法においては、まず、板状ガラスの表面をラッピング(研削)加工してガラス母材とし、このガラス母材を切断してガラスディスクを切り出す。板状ガラスとしては、様々な板状ガラスを用いることができる。この板状ガラスは、例えば、溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらのうち、プレス法を用いれば、板状ガラスを廉価に製造することができる。板状ガラスの材質としては、アモルファスガラスやガラスセラミクス(結晶化ガラス)を利用できる。板状ガラスの材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等を用いることができる。特にアモルファスガラスとしては、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦性及び基板強度において優れた磁気ディスク用基板を供給することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好ましく用いることができる。
本実施例においては、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラスを得た。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を主成分として含有する化学強化ガラスを使用した。
次に、この板状ガラスの両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス母材とした。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行った。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行った。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス母材を得た。
(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング、チャンファリング)
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から円盤状のガラス基板を切り出した。次に、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に内孔を形成し、円環状のガラス基板とした(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(フォーミング、チャンファリング)。
(3)第2ラッピング工程
次に、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行った。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
(4)端面研磨工程
次に、ガラス基板の外周端面および内周端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。
そして、端面研磨工程を終えたガラス基板を水洗浄した。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、ナトリウムやカリウムの析出の発生を防止できる鏡面状態に加工された。
(5)主表面研磨工程
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は、前述のラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とするものである。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行った。研磨剤としては、酸化セリウム砥粒を用いた。
この第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
次に、主表面研磨工程として、第2研磨工程を施した。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。研磨剤としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒を用いた。
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPAの各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には、超音波を印加した。
(6)化学強化工程
次に、前述のラッピング工程および研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を400℃に加熱しておくとともに、洗浄済みのガラス基板を300℃に予熱し、化学強化溶液中に約3時間浸漬することによって行った。この浸漬の際には、ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるように、ホルダに収納した状態で行った。
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオンおよびナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオンおよびカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μm乃至200μmであった。
化学強化処理を終えたガラス基板を、20℃の水槽に浸漬して急冷し、約10分間維持した。そして、急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行った。さらに、硫酸洗浄を終えたガラス基板を純水、IPAの各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。
上記の如く、第1ラッピング工程、切り出し工程、第2ラッピング工程、端面研磨工程、第1および第2研磨工程、ならびに化学強化工程を施すことにより、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用基板を得た。
(7)検査工程
得られた磁気ディスク用基板の外縁部分の形状について、検査を行った。検査工程は、ガラス基板の円周方向の複数箇所について乖離値および極部を測定する測定工程と、測定された複数の乖離値および極部に基づいてガラス基板が良品であるか否かを判断する判断工程とから構成される。
(8)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られたガラス基板の両面に、ガラス基板の表面にCr合金からなる付着層、CoTaZr基合金からなる軟磁性層、Ruからなる下地層、CoCrPt基合金からなる垂直磁気記録層、炭化水素からなる保護層、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を順次成膜することにより、垂直磁気記録ディスクを製造した。より具体的には、インライン型スパッタリング装置を用いて、ガラス基板の上に、CrTiの付着層、CoTaZr/Ru/CoTaZrの軟磁性層、Ruの中間層、CoCrPt-SiO2のグラニュラー磁性層、水素化カーボン保護膜を順次成膜し、さらに、ディップ法によりパーフルオロポリエーテル潤滑層を成膜して磁気ディスクを得た。
なお、本構成は垂直磁気ディスク(PMR:Perpendicular Magnetic Recording)の構成の一例であるが、水平磁気ディスク(LMR:Longitudinal Magnetic Recording)として磁性層等を構成してもよい。これにより、主表面の外縁部分も高度な平坦度を備えた磁気ディスクを製造することができる。
(9)磁気ディスク装置製造工程
また、上記磁気ディスクを装置に組み込むことにより磁気ディスク装置を製造した。なお、磁気ディスク装置の構成については、公知であるのでここでは詳細な説明は省略する。
〔実施例1〕
上記(5)主表面研磨工程の第2研磨工程を、以下に示す研磨条件を適用して、磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク装置を製造した。なお、本実施例1では2.5インチ型ディスク(φ65mm)を製造した。具体的な研磨条件は、研磨パッドの硬度を85(アスカーC硬度)、研磨材の粒径を1.0(μm)、加工レートを0.30(μm/分)、加工圧を9(Pa)とした。より具体的には、最終研磨工程における加工圧を2段階で変更し、9(Pa)の本加工圧で所定時間のあいだ研磨加工した後、1(Pa)の加工圧で所定時間の半分のあいだ研磨加工を施した。また、このときの本加工圧と加工レートとの積(本加工圧×加工レート)は、2.7であった。
〔比較例1〕
上記第2研磨工程における研磨条件を以下の条件にした以外は、上記の製造方法にて比較例1にかかる磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク装置を製造した。具体的な研磨条件は、比較例1の研磨条件は、研磨パッドの硬度を85(アスカーC硬度)、研磨材の粒径を1.0(μm)、加工レートを0.60(μm/分)、加工圧を12.0(Pa)とした。このときの研磨工程は、本加工圧12.0(Pa)のまま研磨加工を行い、その後加工圧を落とすことなく研磨加工を行った。また、このときの本加工圧と加工レートとの積(本加工圧×加工レート)は、7.2であった。
(実施例1と比較例1との比較)
実施例1および比較例1に示すように製造した磁気ディスク用基板の主表面周縁に存在する極部の形状について、以下に示す方法によって検査した。
(A)端部形状の影響
まず、円周方向における極部の高さの影響について調べた。具体的には、上記2つのガラス基板の、円周方向の高さの変動を調べるために、両2つの基板の任意の2点間の最大乖離値を測定した。最大乖離値の測定範囲(図2のR1、R2)は、ガラス基板の主表面周縁に形成されており、かつ、円周方向で高さの異なる極部の変動を見ることができる、測定範囲を決定した。ここでは、基板の中心からの距離をそれぞれ29.9mm(R1)、31.5mmの点(R2)とし、測定機器としては、光干渉式表面形状測定装置(MicroXam(Phase Shift Technology社製)対物レンズ倍率;2.5倍、中間レンズ倍率;0.62倍使用、測定波長553.2nm、測定領域3.58×3.88mm、解像度752×480ピクセル)を用いた。そして、ガラス基板を円周方向に30°づつ回転させて、上記頂点の位置を合計12点測定した。
つまり、上記方法で測定した最大乖離値は、上記R1とR2とを結んだ直線と上記隆起部の頂点(極部)との乖離の大きさを示している。そして、その結果を図3に示す。
図3に示すように、実施例1は、比較例1に比べて、ガラス基板の円周方向における高さの変動が小さい。具体的には、実施例1の変動差が2.86nmであるのに対して、比較例1の変動差は16.10nmであった。また、実施例1では隣接する測定点の乖離値の変動が1.55nm以下であった。
(B)ロードアンロード試験比較
上記したように、実施例1と比較例1にかかる磁気ディスク用基板上に磁性層を形成した磁気ディスクをそれぞれ製造した後、磁気ディスク装置を製造し、ロードアンロード試験を行った。具体的には、記録ヘッドの浮上量を9〜10nmに設定し、ディスクの回転数を5400rpmと7200rpmとの2つの場合において試験を行った。
その結果、実施例1および比較例1にかかる磁気ディスクの場合、5400rpmの回転数でロードアンロードを100万回繰り返しても、クラッシュは起きなかった。比較例1の磁気ディスクについては、100万回のロードアンロード試験でクラッシュが起こった。
ところが、回転数を7200rpmとしてロードアンロード試験を行ったところ、実施例1にかかる磁気ディスクの場合、ロードアンロードを100万回繰り返しても、クラッシュは起きなかったが、比較例1にかかる磁気ディスクの場合、ロードアンロードを80万回繰り返したところで、クラッシュが起こった。
この結果より、本発明にかかるように、ガラス基板の主表面周縁に存在する乖離部の極部(隆起部の頂点)の乖離の大きさが、当該ガラス基板の全周に亘って略均一に形成されていることが重要であることがわかる。
なお、本実施例において乖離部の極部としては隆起部の頂点を用いて説明しているが、本発明は乖離部の極部として沈降部の谷点を用いることもできる。すなわち、沈降が最大となる極部の乖離の大きさが当該ガラス基板の全周に亘って略均一に形成されていることによっても、上記と同様の効果を得ることができる。
(C)表面形状の特定
次に、磁気ディスク用基板の主表面周縁の形状(端部形状)について調べた。ガラス基板の主表面周縁に存在する乖離部の乖離の大きさが、当該ガラス基板の全周に亘って略均一に形成されている磁気ディスク用基板であって、極部(隆起部の頂点)の位置の異なる2つの磁気ディスク用基板を用いて、極部の同芯度および真円度による影響を調べた。これら2つの磁気ディスク用基板は、最終研磨工程における加工圧と加工レートとを互いに異ならせている以外は同じ製造方法で製造した。具体的には、一方のガラス基板に対しては上記実施例1と同じ研磨条件とし、他方のガラス基板に対しては実施例2として加工圧を8.0(Pa)、加工レートを0.45(μm/分)として製造した。また、このときの本加工圧と加工レートとの積(本加工圧×加工レート)は、3.6であった。
測定には光干渉式表面形状測定装置(OptiFlat(Phase Shift Technology社製))を用いた。なお、OptiFlatは、上記MicroXamと比べて、解像度は低いが測定領域は広い。
その結果、実施例1・実施例2のガラス基板の端部形状は、スキージャンプ形状であることが分かった。そして、この測定結果から、スキージャンプ形状における頂点(極部)のガラス基板中心からの距離を測定した。さらに、上記頂点位置の円周方向の変位を調べるために、ガラス基板を円周方向に30°づつ回転させて、上記頂点の位置を合計12点測定した。このときの結果を、図4に示す。なお、図4は、スキージャンプの極部(スキージャンプ点)の半径位置を測定した結果を示す図である。
その結果、図4に示すように、実施例1にかかる磁気ディスク用基板の主表面周縁に形成された極部は、ガラス基板の中心から見て略同じ位置(距離)に位置しており、具体的には、ガラス基板の中心から、30.6mmを中心として、±0.2mmの範囲内に位置していることが分かった。一方、実施例2の場合は、30.6mmを中心として、±1.4mmの範囲に位置していることが分かった。
なお、実施例1にかかる磁気ディスク用基板の真円度は0.40(mm)、同芯度は1.07(mm)であった。一方、実施例2にかかる磁気ディスク用基板の真円度は2.60(mm)、同芯度は5.68(mm)であった。また、極部の高さ(乖離値)については実施例1と実施例2の構成でほぼ同じであった。
そして、上記実施例1と実施例2とで、回転数を10000回転の場合のロードアンロード試験を行った。なお、この試験は、磁気ディスクにした状態で試験を行っている。また、このときの記録ヘッドの浮上量は9〜10nmである。その結果、実施例1の場合には、100万回繰り返しても、クラッシュは起きなかった。なお、実施例1、2ともに、回転数が5400rpmの場合および7200rpmの場合には、ロードアンロードを100万回繰り返してもクラッシュは起きなかった。
また、実施例1と実施例2とで磁気ディスク用基板における乖離値の値がほぼ同じであったにもかかわらず、実施例2の構成では、高速回転にてグライドテストを行った際に、クラッシュ障害が発生した。一方、実施例1の構成ではクラッシュ障害は発生しなかった。これは、仮に大きな(小さくない)スキージャンプが発生していたとしても、真円度または同芯度が高い(値が小さい)ことにより、円周方向の基板表面の変動(粗さやうねり)が少なくなったためであると考えられる。また、多くの実験の結果、真円度は600μm以内であることが好ましく、同芯度は1200μm以内であることが好ましいことがわかった。
この結果より、極部は、ガラス基板の円周方向において、その位置は半径方向で同じであり、かつ、高さ方向の変動が少ないことが、磁気ディスクを高速回転させる上で最も好ましいことが分かる。
(D)モジュレーション試験
実施例1および比較例1で得られた磁気ディスクに対してモジュレーション試験を行った。具体的には、2.5インチ(外径65mmφ)におけるガラス基板の中心からの距離が29.9mm(R1)から31.5mmの点(R2)までの間の領域におけるモジュレーションを測定した。
具体的な測定条件については、以下の(1)〜(3)の手順で行った。
(1)電磁変換特性測定機(グーシック テクニカル エンタープライズ社)に磁気ディスクをセットし、磁気ヘッド(DFH(dynamic flying height)ヘッド)を磁気ディスク上にロード後、MFパターン(ハードディスクで使用する高周波数の半分の周波数)を書き込む。
(2)読出し信号をオシロスコープに入力する。
(3)そして、上記範囲内の任意の半径位置におけるセクタごとの、モジュレーションを求める。
その結果、実施例1と比較例1とを比較した結果、実施例1のほうがモジュレーションの値が良好であった。なお、実施例2と比較例1とを比較した結果の場合でも、実施例2のほうがモジュレーションの値は良好であった。
また、実施例1と同様な最大乖離値のばらつきを有し(隆起部の高さが円周方向で均一な基板であり)、上記真円度・同心円が異なる磁気ディスク基板を用いて上記と同様のモジュレーション試験を行った。その結果、真円度は1200μm以内、同心度は600μm以内のものは、モジュレーションの値は良好であったが、これらの値を外れると、モジュレーション結果は悪化した。なお、実施例1、2および比較例1は、同条件で磁気ディスクを製造している。
図5は、さらに実施例3と比較例2について、任意の2点間を結ぶ直線からの最大乖離値を測定した結果を示す図である。実施例3は上記の実施例1と同様の条件で加工を行い、比較例2は上記の比較例1と同様の条件で加工を行った。なお図5には、比較のために実施例1および比較例2もあわせて表示している。そして図3に示した結果と同様に、ガラス基板を円周方向に30°づつ回転させて、スキージャンプ形状における頂点(極部)の位置を合計12点測定した。
図5に示すように、実施例3は実施例1よりも全体的に最大乖離値が高くなっているが、実施例1よりもさらにガラス基板の円周方向における高さの変動(最大−最小)が小さかった。一方、比較例2は比較例1よりは変動が小さかったものの、グラフと見るとわかるように不規則に上下してしまっている。総じて、実施例1、3の変動さがそれぞれ2.86nm、1.95nmと小さいのに対し、比較例1、2の変動差はそれぞれ16.10nm、12.50nmと大きかった。
なお、上記の実施例・比較例は、端部形状がスキージャンプ形状(主表面に対して隆起している形状)の場合である。基板主表面に対して沈降している形状であるロールオフ形状の場合でも、同様な実験を行った結果、上記の実施例および比較例と同様な結果が得られた。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は磁気記録媒体に用いられる磁気ディスク用基板、およびこれを用いた磁気ディスクとして利用することができる。
スキージャンプとロールオフについて説明する図である。 任意の2点間を結ぶ直線からの最大乖離値について説明する図である。 実施例と比較例について任意の2点間を結ぶ直線からの最大乖離値を測定した結果を示す図である。 実施例と比較例についてスキージャンプの極部の半径位置を測定した結果を示す図である。 実施例と比較例について任意の2点間を結ぶ直線からの最大乖離値を測定した結果を示す図である。
10 …ガラス基板
11 …主表面
12 …端面
13 …面取面

Claims (6)

  1. 円板状の基板であって、主表面と、端面と、前記主表面と端面との間に形成した面取面とを備え、
    前記主表面は平坦面と沈降部とからなり、
    前記沈降部は前記主表面の周縁にあって、前記平坦面と前記面取面との間に形成され、該平坦面に対して沈降した面であって、
    前記円板状の基板の中心から所定距離離間した位置における前記沈降部の前記平坦面からの深さは、当該基板の円周方向において深さの変動が5nm以下であることを特徴とする磁気ディスク用基板。
  2. 当該基板は、磁気ディスクの外縁を経由して磁気ヘッドが磁気ディスクの主表面に対してロード及びアンロードされるロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクに用いる基板であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用基板。
  3. DFH(dynamic flying height)ヘッド対応の磁気ディスクの基板として用いられる基板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気ディスク用基板。
  4. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の基板上に少なくとも磁性層を形成したことを特徴とする磁気ディスク。
  5. タッチダウンハイトが4nm以下であることを特徴とする請求項記載の磁気ディスク。
  6. 請求項または請求項に記載の磁気ディスクを搭載してなる磁気ディスク装置。
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