JP5714019B2 - 急性心不全の診断、予知及び/又は予後用バイオマーカー及びその使用 - Google Patents
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Description
本発明は、対象者における疾患又は病状の予知、診断、予後予測(prognosticating)及び/又はモニタリングに使用するための、タンパク質-及び/又はペプチド-ベースのバイオマーカー並びにこれらに特異的に結合する物質に関する。より具体的には、本願は、急性心不全の新たなバイオマーカーとしての特定のタンパク質及び/又はペプチド;該バイオマーカータンパク質及び/又はペプチドの測定に基づいて急性心不全を予知、診断及び/又は予後予測する方法;並びに該タンパク質及び/又はペプチドを測定し、及び/又は前記方法を実施するキット及びデバイスを開示する。
多くの疾患及び病状において、予防的及び/又は治療的処置の好ましい転帰は、疾患又は病状の早期及び/又は正確な予知、診断及び/又は予後と強く相関している。したがって、処置の選択に指針を与える疾患及び病状の早期及び/又は正確な予知、診断及び/又は予後のための追加的で、好ましくは改善された様式に関する継続的な必要性が存在する。
心不全は、先進国における主要な公衆衛生上の問題であり、高齢者における相当な罹患率及び死亡率の原因である。心不全は、通常、呼吸障害の悪化を導く頻回再発性代償不全により特徴付けられる慢性疾患である。更に、診断の5年後、心不全患者の50%がこの疾患で死亡している。
AHFの共通症状は息切れ(呼吸困難)である。しかし、通常、入院に際して呼吸困難を示す対象者のほんの一部しかAHFに罹患していない。したがって、AHF患者を他の原因による呼吸困難を有する患者と適切に識別するために、迅速、妥当で効果的なAHF処置が必要である。
多大な実験及び試験を行った結果、本発明者らは、メラノーマ細胞接着分子(MCAM;またCD146又はMUC18としても知られる)が急性心不全(AHF)の予知、診断及び/又は予後予測に特に有利である新たなバイオマーカーであることを明らかにした。
詳細には、3つの医療センターの研究(緊急入院に際して呼吸困難を示した対象者からの見込みのサンプルコレクションを伴う)において、本発明者らは初めて、MCAMを、AHFを有さない呼吸困難患者と比較したときAHFを有する呼吸困難患者で有意に変化したレベルを提示するバイオマーカーとして同定し、その後その妥当性を証明した。加えて、本発明者らはまた、MCAM量が入院に際して(すなわち処置前)及び退院に際して(すなわち処置後)に呼吸困難AHF患者間で有意に異なったので、MCAMがAHF進行のモニタリングに有用なバイオマーカーであり得、及び/又は急性事象を予知するために使用できることに気付いた。
更に、AHFを有する呼吸困難患者とAHFを有さない呼吸困難患者との識別について、AUC値(ROC曲線下面積;「ROC」は受信者動作特性の略語である)は、MCAM(0.91)がBNP(0.88)及びNT-プロBNP(0.85)より僅かに高い。AUC値は感度及び特異性の組合せ尺度であり、より高いAUC値(すなわち、1への接近)は一般に当該検査の性能の向上を示す。
まとめると、本発明者らは、MCAM(CD146又はMUC-18)を、特に心不全の病歴を有するか又は呼吸困難を引き起こす他の非-AHF疾患に罹患している患者における、AHFの予知、診断及び/又は予後予測のための改善された更なるバイオマーカーとして同定し、その正当性を証明した。
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する工程;
(ii)(i)で測定したMCAM量を、既知のAHF予知、診断及び/又は予後を表すMCAM量参照値と比較する工程;
(iii)(i)で測定したMCAM量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;
(iv)前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者における特定のAHF予知、診断及び/又は予後に帰する工程
を含んでなり得る、対象者においてAHFを予知、診断及び/又は予後予測する方法が提供される。
(i)上記で教示される予知、診断及び/又は予後の方法を、1以上の一連の時点で対象者に適用し、それにより対象者におけるAHFの予知、診断及び/又は予後を該一連の時点で決定し;
(ii)(i)で決定した前記一連の時点での対象者におけるAHFの予知、診断及び/又は予後を比較し;そして
(iii)(i)で決定した前記一連の時点での対象者におけるAHFの予知、診断及び/又は予後間の変化の有無を発見することを含んでなる。
代表的には、これは、対象者におけるMCAMレベルをED滞在中の異なる時点で測定することによって行われる。ここで、時間の関数でのMCAMレベルの減少は対象者の病状が改善しつつあるか又は改善したことを示す一方で、時間の関数でのMCAMレベルの増加は、対象者の病状が悪化したか又は悪化しつつあり、新たな急性心不全事象を生じる可能性があることを示す。
結果として、検査段階が、対象者からのサンプル中の、AHFの予知、診断及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量の測定を更に含んでなる方法もまた、本明細書中に開示される。この点に関して、任意の既知又は未知の適切なAHFマーカーが使用され得る。好ましい実施形態では、追加のAHFマーカーは、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、プロB型ナトリウム利尿ペプチド(プロBNP)、アミノ末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NTプロBNP)及びそれらのいずれかのフラグメントからなる群より選択される。
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する工程;
(ii)(i)の測定値を、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての対象者プロフィールを確立するために使用する工程;
(iii)(ii)の対象者プロフィールを、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量の参照プロフィールと比較する工程(該参照プロフィールは既知のAHF予知、診断及び/又は予後を表す);
(iv)(ii)の対象者プロフィールの参照プロフィールからの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;
(v)前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者における特定のAHF予知、診断及び/又は予後に帰する工程
を含んでなる。
本発明の方法の好適な実施形態において、MCAMタンパク質の検出は、血漿サンプル(すなわち、血球非含有血液サンプル画分)において行われる。このことは、循環性MCAMタンパク質が、この循環形態がMMPプロセシングされた可溶形態に相当するのか全長若しくは該可溶形態のMCAMの分解産物に相当するのかに関わらず、検出されることを意味する。1つの好適な実施形態において、検出されるMCAMタンパク質は、血漿又は血清中へのMCAMの放出がインビボでどのように達成されるかに関わらず、膜結合型でも細胞結合型でもない。
上記のように、本方法は、他のバイオマーカーについて以前に用いられた公知の手順に従って確立され得るMCAM量についての参照値を用いてもよい。このような参照値は、本明細書で規定されるように、本発明の方法の内で確立されてもよい(すなわち、本発明の方法の1工程を構成してもよい)し、本発明の方法の外で確立されてもよい(すなわち、本発明の方法の1工程を構成していなくてもよい)。したがって、本明細書中で教示される方法の1つは、MCAM量についての参照値を確立する工程を含んでなり得る。ここで、該参照値は、(a)AHF無しの予知若しくは診断又はAHFについての良好な予後を表すか、或いは(b)AHFの予知若しくは診断又はAHFについての不良な予後を表す。
(a)AHF無しの予知若しくは診断又はAHFについての良好な予後を表すか、或いは
(b)AHFの予知若しくは診断又はAHFについての不良な予後を表し、
該方法は、以下:
(i)
(i a)AHFを有さないか又はAHFを有するリスクにないか又はAHFについて良好な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中、或いは
(i b)AHFを有しているか又はAHFを有するリスクにあるか又はAHFについて不良な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中
のMCAM量を測定し、そして
(ii)
(ii a)(i a)で測定したMCAM量を、AHF無しの予知若しくは診断を表すか又はAHFについての良好な予後を表す参照値として保存するか、或いは
(ii b)(i b)で測定したMCAM量を、AHFの予知若しくは診断を表すか又はAHFについての不良な予後を表す参照値として保存する
ことを含んでなる。
(a)AHF無しの予知若しくは診断又はAHFについての良好な予後、或いは
(b)AHFの予知若しくは診断又はAHFについての不良な予後を表し、
該方法は、以下:
(i)
(i a)AHFを有さないか又はAHFを有するリスクにないか又はAHFについて良好な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中、或いは
(i b)AHFを有しているか又はAHFを有するリスクにあるか又はAHFについて不良な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中
のMCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定し、
(ii)
(ii a)(i a)の測定値を使用して、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量のプロフィールを作成するか、或いは
(ii b)(i b)の測定値を使用して、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量のプロフィールを作成し、
(iii)
(iii a)(ii a)のプロフィールを、AHF無しの予知若しくは診断を表すか又はAHFについての良好な予後を表す参照プロフィールとして保存するか、或いは
(iii b)(ii b)のプロフィールを、AHFの予知若しくは診断を表すか又はAHFについての不良な予後を表す参照プロフィールとして保存する
ことを含んでなる。
本発明は更に、対象者におけるMCAMのベースライン又は参照値を確立する方法を提供し、該方法は以下:
(i)対象者がAHFに罹患していない種々の時点で該対象者からのサンプル中のMCAM量を測定し、そして
(ii)該対象者の範囲又は平均値(これが該対象者についてのMCAMのベースライン又は参照値である)を算出する
ことを含んでなる。
上記方法のいずれか1つの好適な実施形態において、対象者はヒトであり得る。更なる好適な実施形態において、対象者は、収縮期機能不全が関与するAHFに罹患している。尚更に好適な実施形態において、収縮期機能不全は、減少した左心室駆出率(LVEF)(好ましくは、LVEFは55%未満又は50%未満又は45%未満である)及び/又は増加した心臓充満圧で特徴付けられる。
本発明者らは更に、MCAMレベルが左心室駆出率(LVEF)と相関することを見出した。LVEFが減少した対象者は、正常なLVEFを有する対象者と比較して、変化した(特に、増加した)MCAMレベルを有することが示された。減少したLVEFは収縮期機能不全のホールマークであるので、MCAMレベルは収縮期機能不全を予知、診断、予後予測及び/又はモニターするために使用することができる。
よって、別の観点では、本発明は、対象者からのサンプル中のMCAMレベルを測定することを含んでなる、対象者における収縮期機能不全の予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法に関する。
更に、収縮期機能不全を有する心不全患者が支配的である上記AHF患者集団において、AHFを有する呼吸困難患者とAHFを有さない呼吸困難患者との間を識別するためのAUC値(ROC曲線下面積;「ROC」は受信者動作特性の略語である)は、MCAM(0.91)がBNP(0.88)及びNT-プロBNP(0.85)より僅かに高い。AUC値は感度及び特異性の組合せ尺度であり、より高いAUC値(すなわち、1への接近)は一般に当該検査の性能の向上を示す。
収縮期及び拡張期機能不全は共に、対象者で体液蓄積(fluid build-up)を引き起こすことがある。しかし、収縮期機能不全を有する対象者は、体液蓄積に対してより耐性であり、よって呼吸困難のような症状が起こる前の拡張期機能不全を有する患者と比較して、より大量に蓄積する。
よって、対象者からのサンプル中のMCAMレベルを測定することを含んでなる、容量過負荷に関係するか又は容量過負荷が引き起こす呼吸困難を予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法が提供される。容量過負荷はHF、好ましくは収縮期機能不全に起因するHFを示唆し得、AHFになる代償障害のリスクにあるか又は代償障害をおこしていてもよい。本方法は、容量過負荷によって引き起こされる呼吸困難(例えばHF又はAHF)と他の原因の呼吸困難(例えば、COPD又は肺炎)とを識別することができる。
よって、対象者からのサンプル中のMCAMレベルを測定することを含んでなる、収縮期機能不全に関係するか又は収縮期機能不全が引き起こすHF、好ましくはAHFを予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法も開示される。
収縮期機能不全は、左及び/又は右心室の減少した駆出率、より具体的には減少したLVEFで特徴付けられる。本発明者らは、MCAMレベルが心室駆出率と相関することを見出した。よって、対象者からのサンプル中のMCAMレベルを測定することを含んでなる、対象者における心室駆出率を予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法もまた開示される。
減少した心室駆出率に起因する心拍出量の低下又は減少は、腎臓の塩及び水保持を促進する。この適切な順応は、血液容量を拡大させ、そのことによって拡張末期圧及び容積を上昇させる。よって、収縮期機能不全はまた、増加した心臓充満圧で特徴付けられる。よって、対象者からのサンプル中のMCAMレベルを測定することを含んでなる、対象者における心臓充満状態を予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法もまた提供される。心臓充満状態は、心臓充満圧によって表し得る。
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する工程;
(ii)(i)で測定したMCAM量を、既知の収縮期機能不全予知、診断及び/又は予後を表すMCAM量参照値と比較する工程;
(iii)(i)で測定したMCAM量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;
(iv)前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者における特定の収縮期機能不全予知、診断及び/又は予後に帰する工程
を含んでなり得る。
上記工程は、必要な変更を加えて、容量過負荷に関係するか又は容量過負荷が引き起こす呼吸困難;容量過負荷に関係するか又は容量過負荷が引き起こすHF又はAHF;収縮期機能不全に関係するか又は収縮期が引き起こすHF又はAHF;心室駆出率;又は心臓充満状態に適用できる。
よって、1つの観点において、本発明は、本明細書に記載の方法を、収縮期機能不全と拡張期機能不全との間を識別するために使用することに関する。
1つの実施形態において、
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する工程;
(ii)(i)で測定したMCAM量を、収縮期機能不全の診断のための閾値を表すMCAM量参照値と比較する工程;
(iii)対象者のサンプル中のMCAM量が閾値を越える場合、対象者における収縮期機能不全の診断を帰する工程
を含んでなる、対象者において収縮期機能不全と拡張期機能不全との間を識別する方法が提供される。
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量を2以上の一連の時点で測定する工程;
(ii)MCAM量を(i)で測定したサンプル間で比較する工程;
(iii)(ii)で比較したサンプル間でMCAM量の逸脱又は逸脱無しを発見する工程;
(iv)前記逸脱又は逸脱無しの発見を前記2以上の一連の時点間での対象者における収縮期機能不全の変化に帰する工程
を含んでなる。
上記工程は、必要な変更を加えて、容量過負荷に関係するか又は容量過負荷が引き起こす呼吸困難;容量過負荷に関係するか又は容量過負荷が引き起こすHF又はAHF;収縮期機能不全に関係するか又は収縮期が引き起こすHF又はAHF;心室駆出率;又は心臓充満状態に適用できる。
本明細書中で教示される予知法、診断法、予後法及び/又はモニタリング法の1つの実施形態において、この方法の感度及び/又は特異性(好ましくは、感度及び特異性)は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、例えば≧81%、≧82%、≧83%、≧84%、≧85%、≧86%若しくは≧87%、又は≧90%、又は≧95%(記号「≧」は「少なくとも」又は「以上」と同義である)、例えば、80%〜100%、又は81%〜95%、又は83%〜90%、又は84%〜89%、又は85%〜88%である。
本明細書中で教示される予知法、診断法、予後法及び/又はモニタリング法の別の1つの実施形態において、対象者は、体液ホメオスタシス不均衡、急性心不全、慢性心不全、収縮期機能不全又は腎機能障害若しくは不全を暗示し得る1以上の症状及び/又は徴候を示していてもよい。例えば、1つの実施形態において、対象者は呼吸困難を示していてもよい。
例えば、過充満(over-filling)(容量過負荷)を患っている患者において、以前(例えば、EDへの収容時)のMCAMレベルと比較したときのMCAMレベルの減少は、対象者の病状が改善しつつあるか又は改善したことを示す一方で、以前(例えば、EDへの収容時)のMCAMレベルと比較したときのMCAMレベルの増加は、対象者の病状が悪化したか又は悪化しつつあることを示す。このような悪化は、病状、症状及び/又は本発明に従うパラメータ値の再発、例えば新たな急性心不全事象を生じる可能性があり得る。
したがって、更に、対象者における本発明に従う病状、症状及び/又はパラメータ値の予知、診断及び/又は予後の変化をモニターする方法が提供され、この方法は、下記:
(i)上記で教示される予知、診断及び/又は予後の方法を、2以上の一連の時点で対象者に適用し、それにより対象者における病状、症状及び/又は本発明に従うパラメータ値の予知、診断及び/又は予後を該一連の時点で決定し;
(ii)(i)で決定した前記一連の時点での対象者における病状、症状及び/又は本発明に従うパラメータ値の予知、診断及び/又は予後を比較し;そして
(iii)(i)で決定した前記一連の時点での対象者における病状、症状及び/又は本発明に従うパラメータ値の予知、診断及び/又は予後間の変化の有無を発見することを含んでなる。
本発明の予知、診断、予後及び/又はモニタリングの方法において、MCAMの測定はまた、病状、症状及び/又は本発明に従うパラメータ値に関連する1以上の更なるバイオマーカー又は臨床パラメータの評価と組み合せ得ることが理解される。
結果として、検査段階が、対象者からのサンプルにおいて1以上のこのような他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定することを更に含んでなる方法もまた、本明細書中に開示される。この点に関して、任意の既知又は未知の適切なマーカーが使用され得る。
本明細書中で教示される方法において、MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量は、任意の適切な技術、例えば当該分野で公知であり得る技術により測定し得る。
1つの実施形態において、MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量は、それぞれ、MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る結合性物質並びに前記1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る結合性物質を用いて測定し得る。
1つの更なる実施形態において、MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量は、イムノアッセイ技術、例えば直接ELISA、間接ELISA、サンドウィッチELISA、競合ELISA、マルチプレックスELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)若しくはELISPOT技術、又は質量分析法、クロマトグラフィー法、又は前記方法の組合せを使用して測定する。
1つの実施形態は、対象者におけるAHFの予知、診断及び/又は予後予測のためのキットを提供し、該キットは以下:
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する手段;及び
(ii)MCAM量の参照値、又は該参照値を確立する手段(ここで、該参照値は既知のAHF予知、診断及び/又は予後を表す)
を含んでなる。
1つの更なる実施形態は、対象者におけるAHFを予知、診断及び/又は予後予測するためのキットを提供し、該キットは、対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する手段と、対象者からのサンプル中の、AHFの予知、診断及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段とを含んでなる。
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する手段;
(ii)対象者からのサンプル中の、AHFの予知、診断及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段;
(iii)任意に、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての対象者プロフィールを確立する手段;及び
(iv)MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての参照プロフィール、又は該参照プロフィールを確立する手段(ここで、該参照プロフィールは既知のAHF予知、診断及び/又は予後を表す)
を含んでなる。
上記キットの1つの更なる実施形態において、MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段は、それぞれ、MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質並びに前記1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質を含み得る。
1つの実施形態において、前記1以上の結合性物質のいずれか1つは、有利には、固相又は支持体に固定され得る。
上記キットの1つの更なる実施形態において、MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段は、イムノアッセイ技術、例えば直接ELISA、間接ELISA、サンドウィッチELISA、競合ELISA、マルチプレックスELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)若しくはELISPOT技術を用いてもよいし、又は質量分析技術を用いてもよいし、又はクロマトグラフィー技術を用いてもよいし、前記技術の組合せを用いてもよい。
(a)MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質;
(b)好ましくは、既知量又は既知濃度のMCAM及び/又はそのフラグメント(例えば、コントロール、標準物質及び/又は較正物質として使用するため);
(c)好ましくは、MCAM量の参照値又は該参照値を確立する手段
を含んでなる、AHFの予知、診断及び/又は予後予測のためのキットを開示する。
前記(a)及び/又は(c)の成分は、本明細書中他の箇所で教示されるように、適切に標識化され得る。
(a)MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質;
(b)AHFの予知、診断及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質、ここで、好ましくは、該他のバイオマーカーはBNP、プロBNP、NTプロBNP及びそれらのいずれかのフラグメントからなる群より選択される;
(c)好ましくは、既知量又は既知濃度のMCAM及び/又はそのフラグメント並びに既知量又は既知濃度の前記1以上の他のバイオマーカー(例えば、コントロール、標準物質及び/又は較正物質として使用するため);
(d)好ましくは、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての参照プロフィール、或いは該参照プロフィールを確立する手段
を含んでなる、AHFの予知、診断及び/又は予後予測のためのキットを開示する。
前記(a)、(b)及び/又は(c)の成分は、本明細書中他の箇所で教示されるように、適切に標識化され得る
例えば、更なる観点は、以下:
(a)MCAM及び/又はそのフラグメント、好ましくは既知量又は既知濃度の前記MCAM及び/又はそのフラグメント;及び
(b)任意に、そして好ましくは、AHFの予知、診断及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカー、好ましくは既知量又は既知濃度の前記1以上の他のバイオマーカー(前記他のバイオマーカーは、好ましくは、BNP、プロBNP、NTプロBNP及びそれらのいずれかのフラグメントからなる群より選択される)
を含んでなる、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのアレイ又はマイクロアレイに関する。
(a)MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質、好ましくは既知量又は既知濃度の前記結合性物質;及び
(b)任意に、そして好ましくは、AHFの予知、診断及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質、好ましくは既知量又は既知濃度の前記結合性物質(好ましくは、該他のバイオマーカーは、BNP、プロBNP、NTプロBNP及びそれらのいずれかのフラグメントからなる群より選択される)
を含んでなる結合性物質のアレイ又はマイクロアレイに関する。
よって、関連する1つの観点は、以下:
(i)対象者からのサンプルを取得する手段、
(ii)前記サンプル中のMCAM量を測定する手段、及び
(iii)サンプル中で測定したMCAM量を視覚化する手段
を含んでなる、対象者からのサンプル中のMCAM量を測定し得るポータブル検査デバイスを提供する。
1つの実施形態において、前記視覚化手段は、サンプル中のMCAM量が或る閾値レベルを上回っているか若しくは下回っているか及び/又はサンプル中のMCAM量がMCAM量の参照値(この参照値は、(本明細書の他の箇所で教示するように)既知のAHF予知、診断及び/又は予後を表す)から逸脱しているか否かを表示することができる。よって、1つの実施形態において、前記ポータブル検査デバイスは、適切には、前記参照値又は該参照値を確立する手段もまた含んでなり得る。
1つの実施形態において、ポータブル検査デバイスは、AHF無しの予知若しくは診断を表すか又はAHFについての良好な予後を表す参照値を含んでなるか、或いは該参照値を確立する手段を含んでなり、対象者からのサンプル中の、前記参照値と比較して上昇したMCAM量が、対象者がAHFを有しているか若しくはAHFを有するリスクにあることを示すか又は対象者におけるAHFについての不良な予後を示す。
− 近位端近傍のサンプル適用ゾーン;
− サンプル適用ゾーンに対して遠位の反応ゾーン;及び
− 反応ゾーンに対して遠位の検出ゾーン;
− 任意に、MCAMタンパク質又はペプチドフラグメントを含んでなるコントロール標準
を含んでなり、このことにより、前記支持体は、適用ゾーンに適用された流体サンプルの近位端から遠位端への向きのフローを導くキャピラリ特性を有し、
− 任意に、より粘性のサンプルのキャピラリフローを向上させる流体供給源を含んでなる。
1つの実施形態において、反応ゾーンは、閾値量のMCAM-特異的結合性分子接合体が検出ゾーンに移動することを防止するに十分な量で、1以上のMCAM-特異的結合性分子捕捉バンドを追加的に含んでなり得る。代替の実施形態において、前記デバイスは、捕捉したMCAM-特異的結合性分子接合体の量を閾値の値と比較する手段を追加的に含んでなる。
本発明はまた、対象者からのサンプル中のMCAM量を測定することができる検査デバイスを提供し、該デバイスは:
(i)サンプル中のMCAM量を測定する手段
(ii)デバイスに参照値を格納する手段
(iii)取得した量を格納した参照値と比較する手段、及び
(iv)サンプル中で測定したMCAM量を可視化する手段
を備える。
これら及び更なる観点並びに好適な実施形態は、以下の章及び添付の特許請求の範囲に記載される。
本明細書中で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明示していなければ、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる」及び「から構成される」は、「含む」又は「含有する」と同義であり、非排他的(inclusive)又は非限定的(open-ended)であって、追加の、言及していない部材、要素又は方法工程を排除しない。
本明細書中で使用する用語「約」は、パラメータ、量、期間などのような測定可能な値に言及する場合、そのばらつき/変動が開示発明における実施に適切である限りにおいて、特定値のばらつき及び特定値からの変動、詳細には±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の特定値のばらつき及び特定値からの変動を包含することを意味する。修飾語「約」が言及する値はまた、それ自体具体的に開示され、好ましいものとしても開示されていると理解すべきである。
特に明記しない限り、本発明の開示に使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味を有する。更なるガイダンスのために、本発明の教示をより良く理解するための用語の定義が含まれ得る。
用語「バイオマーカー」は、当該分野において広く知られており、対象者におけるその定性的及び/又は定量的評価が対象者の表現型及び/又は遺伝子型の1以上の観点に関して、例えば、所定の疾患又は病状についての対象者の状況に関して、予見的であるか又は情報を提供する(例えば、予知的、診断的及び/又は予後的である)生体分子及び/又はその検出可能部分を広く指称し得る。
「急性心不全」又は「急性非代償性心不全」は、緊急治療の必要性をもたらす、異常な心機能に続発性の症状及び徴候の迅速な発症として定義され得る。AHFは、新規に(心機能不全が以前に知られていない患者における急性心不全の新たな発症)又はCHFの急性代償不全として急性に起こり得る。
本明細書で使用される用語「拡張期機能不全」は当該分野で確立している意味を有する。更なるガイダンスのために、用語「拡張期機能不全」は当業者に知られている同義語、例えば「拡張期心室機能不全又は心室不全」又は「拡張期心機能不全又は心不全」と互換的に使用することができる。本質的には、「拡張期機能不全」とは、心室充満の損傷に起因する心臓ポンプ機能の不全をいう。
本明細書で使用する場合、用語「心臓充満圧」は、心室が血液で満たされる圧力に関する。心臓充満圧をモニターして心臓充満容積を推測し、次に左右心室の一回拍出量を決定する。本明細書で使用する場合、心臓充満圧は、左心室拡張末期圧で表す。心臓充満圧を測定又は推測する方法は、当該分野において公知であり、超音波(心エコー検査法)及びドプラ測定法並びに心室へのカニューレ挿入による直接測定法を含む。心臓充満圧は、左心房圧、中心静脈圧又は肺動脈若しくは毛細管楔入圧の測定により間接的に推測することができる。
本研究のような研究では、CHF集団は、CHF患者が急性代償不全を有さず、このため当該研究又は調査に使用される臨床サンプルを採取する時点でEDに対してそのことを説明しない点で、AHF集団と異なり得る。しかし、慢性心不全患者は、容易に代償不全になり、「急性心不全」に至り得る。
本研究のような研究において、心不全を有さない呼吸困難患者の集団は、例えば、AHF集団と同様な症状をEDに対して説明するが、呼吸困難の原因は急性非代償性心不全とは無関係である患者を含んでなり得る。代表例は、COPD又は肺炎の患者である。このような患者は、従来の診断手段(例えば、BNP又はNT-プロBNP測定)を用いる最終診断を特に複雑にし得る基礎心不全の病歴を有していてもよいし、有していなくてもよい。
用語「診断」とは、一般に、症状及び徴候に基づいて及び/又は種々の診断手順の結果から(例えば、診断する疾患又は病状に特徴的な1以上のバイオマーカーの存否及び/又は量を知ることから)対象者における疾患又は病状を認識、決定又は結論付けるプロセス又は行為をいう。
本明細書中で使用する場合、対象者における「AHFの診断」は、特に、対象者がAHFを有していること、よって対象者がAHFを有していると診断されることを意味し得る。対象者における「AHF無しの診断」は、特に、対象者がAHFを有していないこと、よって対象者がAHFを有していないと診断されることを意味し得る。対象者は、本明細書中で教示されるように、AHFを連想させる1以上の従来の症状又は徴候を示すにも関わらず、AHFを有していないと診断され得る。
AHFの良好な予後は、一般に、好ましくは受容可能な期間内での、AHFからの満足のいく部分的な又は完全な回復の予見を包含し得る。AHFの良好な予後は、より通常には、好ましくは所定の期間内での、心不全状態が更に悪化(worsening又はaggravating)しないとの予見を包含し得る。
AHFの不良な予後は、一般に、低水準の回復及び/又は不満足に遅い回復の予見を包含し得、AHFの回復が実質的にないことやAHFの更なる悪化の予見さえも包含し得る。
本明細書中で使用する用語「対象者」又は「患者」は、代表的には、ヒトを指称するが、非-ヒト動物、好ましくは温血動物、より好ましくは哺乳動物、例えば非-ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ヒツジ科動物、ブタ科動物などへの言及も包含し得る。
用語「量(quantity又はamount)」及び「レベル」は、同義であり、当該分野において広く十分に理解される。本明細書中で使用するこの用語は、特に、サンプル中の分子若しくは分析物の絶対的な定量又はサンプル中の分子若しくは分析物の相対的な定量、すなわち、別の値(例えば、本明細書中で教示される参照値)に対するか若しくはバイオマーカーのベースライン発現を示す値の範囲に対する相対的な定量をいい得る。これらの値又は範囲は、1人の患者又は患者群から取得することができる。
サンプル中の分子又は分析物の相対量は、有利には、前記別の値(例えば本明細書中で教示する参照値)に対する増減として表し得るか又は何倍増若しくは何倍減として表し得る。第1及び第2のパラメータ(例えば、第1及び第2の量)の間の相対的比較の実施は、先ず、前記第1及び第2のパラメータの絶対値を決定してもよいが、そうしないでも済む。例えば、或る測定法は、前記第1及び第2のパラメータについて定量可能な読取値(例えば、シグナル強度)を生成することができるが、前記読取値は前記パラメータの値の関数であり、該読取値を直接比較して第1のパラメータ 対 第2のパラメータについての相対値を生成することができ、実際、読取値を先ずそれぞれのパラメータの絶対値に変換する必要はない。
本明細書中におけるMCAMへの言及はまた、MCAMのフラグメントを包含し得る。よって、本明細書中でのMCAMの測定又はMCAM量の測定への言及は、MCAMタンパク質又はポリペプチドの測定、例えば、成熟及び/又はMMPによりプロセッシングされた可溶形態(以下、短く「可溶形態」と呼ぶ)のMCAMの測定並びに/或いはその1以上のフラグメントの測定を包含し得る。例えば、MCAM及び/又はその1以上のフラグメントは、測定量が一纏りで測定した種の合計量に対応するように、一纏めに測定され得る。別の例では、MCAM及び/又はその1以上のフラグメントは、各個に測定され得る。好ましくは、前記MCAMのフラグメントは、血漿循環形態のMCAMである。
本明細書中で使用する呼称 プロBNP、NTプロBNP又はBNPは、生物、器官、組織又は細胞の一部を形成するとき、生物学的サンプルの一部を形成するとき、及びそのような供給源から少なくとも部分的に単離されたときのそれぞれのペプチドを包含する。この用語はまた、組換え又は合成手段により製造されたときのペプチドをも包含する。
NP_002512の配列を図3A(配列番号3)に、NP_002512からのプロBNPの例示配列を図3B(配列番号4)に示す。例示のヒトNTプロBNPペプチドとしては、前記NIH Entrez Proteinアクセッション番号NP_002512で記載されているナトリウム利尿ペプチド前駆体Bプレプロタンパク質配列のアミノ酸27位〜102位のペプチドが挙げられるが、これに限定されない。NP_002512からのNTプロBNPの例示配列を図3Cに示す(配列番号5)。例示のヒトBNPペプチドとしては、前記NIH Entrez Proteinアクセッション番号NP_002512で記載されているナトリウム利尿ペプチド前駆体Bプレプロタンパク質配列のアミノ酸103位〜134位のペプチドが挙げられるが、これに限定されない。NP_002512からのBNPの例示配列を図3Dに示す(配列番号6)。ヒトプレプロBNP由来ペプチド(プロBNP、NTプロBNP及びBNPを含む)の更なる例証については、Sudohら,1989(Biochem Biophys Res Commun 159: 1427-1434)も参照。臨床実務におけるナトリウム利尿ペプチドレベルの使用に関しては、Maiselら,2008(Eur J Heart Fail 10(9): 824-39)及びMillerら,2007(Biomarkers Med 1(4): 503-512)もまた参照。
更に、文脈から明らかでない場合、本明細書中での任意のタンパク質、ポリペプチド又はペプチド(例えば、MCAM、プロBNP、NTプロBNP又はBNP)及びそのフラグメントへの言及は、一般に、前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチド及びフラグメントの改変形態、例えば発現後修飾(例えば、リン酸化、グリコシル化、脂質化、メチル化、システイン化、スルホン化、グルタチオン化、アセチル化、メチオニンからメチオニンスルホキシド又はメチオニンスルホンへの酸化などを含む)を有する形態もまた包含し得る。
用語 タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの「フラグメント」は、一般に、N-末端及び/又はC-末端が欠失又は短縮化された形態の前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをいう。この用語は、任意の機序、限定されないが、例えばオルタナティブ翻訳、エキソ-及び/又はエンド-タンパク質分解並びに/或いは前記タンパク質又はポリペプチドの分解(例えばインビボ又はインビトロでの、例えば物理的、化学的及び/又は酵素的タンパク質分解による)によって生じるフラグメントを包含する。限定されないが、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのフラグメントは、前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのアミノ酸配列の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、例えば≧20%、≧30%又は≧40%、例えば≧50%、例えば≧60%、≧70%又は≧80%、更には≧90%又は≧95%を表し得る。
1つの実施形態において、MCAMのフラグメントは、成熟全長MCAM(配列番号1)又はその可溶形態(図1参照)と比較して、N-末端及び/又はC-末端が1〜約20アミノ酸、例えば、1〜約15アミノ酸、又は1〜約10アミノ酸、又は1〜約5アミノ酸だけ短縮化されていてもよい。
1つの実施形態において、プロBNP、NTプロBNP又はBNPのフラグメントは、プロBNP、NTプロBNP又はBNPと比較して、N-末端及び/又はC-末端が1〜約20アミノ酸、例えば1〜約15アミノ酸、又は1〜約10アミノ酸、又は1〜約5アミノ酸だけ短縮化されていてもよい。例示として、バイオマーカーとして有用なプロBNP、NTプロBNP及びBNPフラグメントは、WO 2004/094460に開示されている。
例えば、このようなタンパク質分解は、適切な物理的、化学的及び/又は酵素的因子により、例えば、プロテイナーゼ、好ましくはエンドプロテイナーゼにより、すなわちタンパク質、ポリペプチド又はペプチド鎖で内部切断するプロテアーゼにより行なわれてもよい。適切なエンドプロテイナーゼの非限定的なリストには、セリンプロテイナーゼ(EC 3.4.21)、スレオニンプロテイナーゼ(EC 3.4.25)、システインプロテイナーゼ(EC 3.4.22)、アスパラギン酸プロテイナーゼ(EC 3.4.23)、メタロプロテイナーゼ(EC 3.4.24)及びグルタミン酸プロテイナーゼが含まれる。
例示の非限定的エンドプロテイナーゼとしては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、Lysobacter enzymogenesエンドプロテアーゼLys-C、Staphylococcus aureusエンドプロテアーゼGlu-C(エンドペプチダーゼV8)又はClostridium histolyticumエンドプロテイナーゼArg-C(クロストリパイン)が挙げられる。更なる公知の酵素又は未同定の酵素も使用し得る;当業者は、所望のペプチド形態を獲得するために、切断特異性及び頻度に基づいて、適切なプロテアーゼを選択することができる。
他に、化学試剤をタンパク質分解に使用してもよい。例えば、CNBrはMetで切断することができ;BNPS-skatoleはTrpで切断することができる。
処理条件、例えば、タンパク質濃度、酵素又は化学試剤濃度、pH、緩衝液、温度、時間は、用いる酵素又は化学試剤に依存して、当業者が決定することができる。
特定の成分(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はそのフラグメント)に言及するときの用語「単離(された)」は、一般に、その成分が、その天然環境の1以上の他の成分から分離して存在していること−例えば、該他の成分から分離されているか又は該他の成分から分離して調製されていること−をいう。例えば、単離されたヒト又は動物タンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はフラグメントは、それが天然に存在するヒト又は動物の身体から分離して存在する。
1つの好適な実施形態において、前記結合性物質は膜結合型及び血漿循環形態の両方のMCAMに結合することができる。好ましくは、前記結合性物質は、血漿循環形態のMCAMに特異的に結合するか又はこれを特異的に検出することができる。
本明細書を通して使用される用語「特異的に結合する」は、物質(本明細書中で「特異的-結合性物質」とも指称される)が、ランダムな若しくは無関係な他の分子を実質的に排除し、任意に構造的に関連する他の分子をも実質的に排除して、1以上の所望の分子又は分析物に、例えば1以上の興味対象のタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド又はそのフラグメントに結合することを意味する。
好ましくは、物質は、意図する標的に、KA ≧ 1×106 M-1、より好ましくはKA ≧ 1×107 M-1、尚より好ましくはKA ≧ 1×108 M-1、更により好ましくはKA ≧ 1×109 M-1、尚更により好ましくはKA ≧ 1×1010 M-1又はKA ≧ 1×1011 M-1(ここで、KA = [SBA_T]/[SBA][T]、SBAは特異的結合性物質を示し、Tは意図する標的を示す)の結合親和定数(KA)で結合し得る。KAの決定は、当該分野で公知の方法により、例えば、平衡透析及びScatchardプロット分析を用いて行うことができる。
本明細書中で使用する場合、用語「抗体」はその最も広義の意味で使用され、一般には任意の免疫学的結合性物質をいう。この用語は、具体的には、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多価(例えば、二価、三価又はそれ以上の価)及び/又は多特異性抗体(例えば、二特異性又はそれ以上の特異性の抗体)、並びに所望の生物学的活性(特に、興味対象の抗原に特異的に結合する能力)を示す限りにおいて抗体フラグメント及びそのようなフラグメントの多価及び/又は多特異性複合物を包含する。用語「抗体」は、免疫化を含んでなる方法により生成される抗体を含むのみならず、興味対象の抗原上のエピトープに特異的に結合し得る少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んで作製される任意のポリペプチド、例えば組換え発現ポリペプチドもまた含む。よって、この用語は、インビトロで作製されるかインビボで産生されるかに関わらず、前記のような分子に適用される。
1つの実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体、例えば抗血清又はそれから精製された(例えばアフィニティー精製された)免疫グロブリンであり得る。
別の1つの好適な実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体の混合物であり得る。モノクローナル抗体は、特定の抗原又は抗原内の特定のエピトープをより高い選択性及び再現性で標的することができる。
例として、モノクローナル抗体は、Kohlerら,1975(Nature 256: 495)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製してもよく、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号のような)により作製してもよいが、これらに限定されない。モノクローナル抗体はまた、ファージ抗体ライブラリから、例えばClacksonら,1991(Nature 352: 624-628)及びMarksら,1991(J Mol Biol 222: 581-597)により記載される技術を用いて単離されてもよい。
用語 抗体 は、任意の動物種、好ましくは脊椎動物種(例えば、トリ及び哺乳動物を含む)を起源とする抗体又は該動物種に由来する1以上の部分を含んでなる抗体を包含する。限定されないが、抗体はニワトリ、シチメンチョウ、ガン若しくはガチョウ、アヒル若しくはカモ、ホロホロ鳥、ウズラ又はキジであり得る。限定されないが、抗体はまた、ヒト、ネズミ(例えば、マウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラクダ(例えば、Camelus bactrianus及びCamelus dromaderius)、ラマ(例えば、Lama paccos、Lama glama又はLama vicugna)又はウマであり得る。
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体並びにそれらのフラグメントの製造方法は当該分野で周知であり、組換え抗体又はそのフラグメントの製造方法も同様である(例えば、Harlow及びLane,「Antibodies: A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1988;Harlow及びLane,「Using Antibodies: A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1999, ISBN 0879695447;「Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques」,Zola編, CRC Press 1987, ISBN 0849364760;「Monoclonal Antibodies: A Practical Approach」,Dean & Shepherd編, Oxford University Press 2000, ISBN 0199637229;Methods in Molecular Biology, vol. 248: 「Antibody Engineering: Methods and Protocols」, Lo編, humana Press 2004, ISBN 1588290921を参照)。
(任意に提示キャリアに付着されていてもよい)本明細書中に教示されるMCAMフラグメントを用いて(すなわち、免疫抗原として用いて)、動物、例えば非-ヒト動物(例えば、実験動物又は家禽)を免疫する方法も提供される。免疫及び免疫血清からの抗体試剤の調製は、それ自体周知であり、本明細書の他の箇所で言及した文献に記載されている。免疫する動物には、任意の動物種、好ましくは温血種、より好ましくは脊椎動物種(例えば、トリ及び哺乳動物を含む)が包含され得る。限定されないが、抗体はニワトリ、シチメンチョウ、ガン若しくはガチョウ、アヒル若しくはカモ、ホロホロ鳥、ウズラ又はキジであり得る。限定されないが、抗体はまた、ヒト、ネズミ(例えば、マウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラクダ、ラマ又はウマであり得る。
本明細書中で教示した免疫により取得されたか又は取得され得る免疫血清は、本明細書中に開示されたMCAMフラグメントの1以上に特異的に結合する抗体試剤を生じさせるに特に有用であり得る。
本発明はまた、(a)本明細書中で教示される1以上のMCAMフラグメントに結合するが、(b)MCAM及び/又は他のフラグメントには実質的に結合しない、特異的結合性物質を選択する方法を教示する。好都合には、この方法は、(b)の下で所望でないMCAM分子と交差反応又は交差結合する結合性物質を抜き取るか又は除去することに基づき得る。このような抜き取りは、種々の親和性分離法(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、親和性固相抽出、親和性磁性抽出など)によって、当該分野で公知のように容易に実施し得る。
例えば、このような方法には、イムノアッセイ法、質量分析法若しくはクロマトグラフィー法又はそれらの組合せが含まれ得る。
用語「イムノアッセイ」とは、一般に、サンプル中の1以上の興味対象の分子又は分析物を検出するためのものとして公知である方法をいう。ここで、興味対象の分子又は分析物に関するイムノアッセイの特異性は、特異的結合性物質(一般には抗体)と興味対象の分子又は分析物との間の特異的結合により与えられる。
イムノアッセイ技術には、直接ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、間接ELISA、サンドウィッチELISA、競合ELISA、マルチプレックスELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISPOT技術及び当該分野で公知の他の類似技術が含まれるが、これらに限定されない。これらイムノアッセイ法の原理は、当該分野で公知である(例えばJohn R. Crowther,「The ELISA Guidebook」,第1版,Humana Press 2000, ISBN 0896037282)。
更に、質量分析法がバイオマーカーの測定に適切である。
一般に、ペプチドの質量、好ましくは選択したペプチドの断片化及び/又は(部分的)アミノ酸配列に関する正確な情報を取得することができる任意の質量分析(MS)技術(例えば、タンデム質量分析ではMS/MS;ポストソース分解ではTOF MS)が本明細書中で有用である。適切なペプチドMS及びMS/MS技術及びシステムは、それ自体周知であり(例えば、Methods in Molecular Biology, vol. 146:「Mass Spectrometry of Proteins and Peptides」,Chapman編, Humana Press 2000, ISBN 089603609x;Biemann 1990. Methods Enzymol 193: 455-79;又はMethods in Enzymology, vol. 402:「Biological Mass Spectrometry」,Burlingame編, Academic Press 2005, ISBN 9780121828073を参照)、本明細書中で使用し得る。
1つの実施形態において、質量分析によるバイオマーカーの検出及び定量には、多重反応モニタリング(MRM)、例えば、とりわけKuhnら,2004(Proteomics 4: 1175-86)により記載されたものが含まれ得る。
1つの実施形態において、MSペプチド分析法は、有利には、例えば下記に記載されるクロマトグラフィー法その他の方法のような、上流のペプチド又はタンパク質の分離法又は断片化法と組み合わされ得る。
本明細書中で使用するクロマトグラフィーは、好ましくはカラムクロマトグラフィー(すなわち、静止相がカラム中に堆積又は詰められている)、好ましくは液体クロマトグラフィー、より好ましくはHPLCであり得る。クロマトグラフィーの詳細は当該分野で周知であるが、更なるガイダンスのためには、例えばMeyer M., 1998, ISBN: 047198373X及び「Practical HPLC Methodology and Applications」, Bidlingmeyer, B. A., John Wiley & Sons Inc., 1993を参照。
1つの実施形態において、クロマトグラフィー(一次元、二次元以上の次元のクロマトグラフィーを含む)は、更なるペプチド分析法、例えば本明細書中の他の箇所に記載されるような下流の質量分析との組合せで、ペプチド断片化法として使用し得る。
本開示においてバイオマーカーの測定のために、上記の分析方法のいずれかと任意に組み合せて、更なるペプチド又はポリペプチドの分離法、同定法又は定量法を使用し得る。このような方法としては、限定されないが、化学抽出分配、等電点電気泳動(IEF)(キャピラリ等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリ等速電気泳動(CITP)、キャピラリ通電クロマトグラフィー(CEC)などを含む)、一次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)、キャピラリゲル電気泳動(CGE)、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)、ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)、フリーフロー電気泳動(FFE)などが挙げられる。
例えば、独特な参照値は、AHFを有するリスク(例えば、異常に上昇したリスク)の予知 対 AHFを有するリスク無し又は通常のリスクの予知を表し得る。別の1つの例では、独特な参照値は、AHFを有する異なる程度のリスクの予知を表し得る。
更なる1つの例では、独特な参照値は、AHFの診断 対 AHF無しの診断(例えば、健常の又はAHFから回復したことの診断など)を表すことがある。別の1つの例では、独特な参照値は、種々の重篤度のAHFの診断を表し得る。
更に別の1つの例では、独特な参照値は、AHFについての良好な予後 対 AHFについての不良な予後を表し得る。更なる1つの例では、独特な参照値は、AHFについて様々に(varyingly)好ましい又は好ましくない予後を表し得る。
MCAM量についての参照値は、他のバイオマーカーについて以前に使用された公知の手順に従って確立され得る。
例えば、特定のAHF予知、診断及び/又は予後についてのMCAM量の参照値は、前記特定のAHF予知、診断及び/又は予後により特徴付けられる(すなわち、前記AHF予知、診断及び/又は予後が当てはまる)一個体又は個体集団からのサンプル中のMCAM量を決定することによって確立され得る。このような集団は、限定されないが、≧2、≧10、≧100、又は数百以上でさえある個体を含んでなり得る。
1つの実施形態において、本明細書中で意図されるような参照値は、MCAMの絶対量を伝え得る。別の実施形態において、検査した対象者からのサンプル中のMCAM量は、(例えば、増減又は何倍増減に関して)参照値と直接比較して決定され得る。有利には、このことにより、MCAMのそれぞれの絶対量を先ず決定する必要なく、対象者からのサンプル中のMCAM量と参照値との比較(換言すれば、参照値に関する、対象者からのサンプル中のMCAMの相対的量の測定)が可能になり得る。
患者サンプルにおけるバイオマーカーの発現レベル又は存在は、時に、症状(の出現、悪化又は改善)の変化無しに変動し得る、すなわち、顕著に増減し得る。そのような事象において、マーカー変化は、症状の変化に先行し、症状変化より高感度の尺度になる。治療的介入をより早く開始することができ、症状の悪化を待っているより効果的であり得る。症状は、(限定されないが):息切れ、下肢の浮腫、心悸亢進、疲労などであり得る。より良性の病状での早期介入は自宅で安全に実施され得る。このことは、緊急治療室での重度に悪化した患者の治療からの大幅な改善である。
したがって、本発明はまた、或る患者におけるMCAMマーカーレベルの有意な変化(臨床状態の変化(悪化又は改善)を示す)を決定する方法又はアルゴリズムを提供する。加えて、本発明は、対象者がAHF状態から回復中であるか又は既に回復したという診断の確立を可能にする。
本明細書中で教示される種々の観点及び実施形態は、更に、対象者からのサンプル中で測定されるMCAM量と所定の参照値との間の逸脱又は逸脱無しの発見を必要とする。
第1の値の第2の値からの「逸脱(deviation)」は、一般に、いずれの方向(例えば、増加:第1の値>第2の値;又は減少:第1の値<第2の値)も、いずれの程度の変化も包含し得る。
例えば、逸脱は、限定されないが、比較がなされる第2の値に対し、第1の値の少なくとも約10%(約1.1倍以上)又は少なくとも約20%(約1.2倍以上)又は少なくとも約30%(約1.3倍以上)又は少なくとも約40%(約1.4倍以上)又は少なくとも約50%(約1.5倍以上)又は少なくとも約60%(約1.6倍以上)又は少なくとも約70%(約1.7倍以上)又は少なくとも約80%(約1.8倍以上)又は少なくとも約90%(約1.9倍以上)又は少なくとも約100%(約2倍以上)又は少なくとも約150%(約2.5倍以上)又は少なくとも約200%(約3倍以上)又は少なくとも約500%(約6倍以上)又は少なくとも約700%(約8倍以上)などの増加を包含し得る。
1つの更なる実施形態において、観察された変化が所定の閾値又はカットオフを超える場合、逸脱と結論付けられ得る。このような閾値又はカットオフは、予知法、診断法及び/又は予後法の選択された感度及び/又は特異性、例えば、少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%の感度及び/又は特異性を提供するように、当該分野で周知のように選択し得る。
対象者からのサンプル中のMCAM量と或るAHF予知、診断及び/又は予後を表す参照値との間に逸脱を発見したとき、逸脱は、対象者におけるAHF予知、診断及び/又は予後が該参照値によって表されるものとは異なるとの結論を示すか又は該結論に帰され得る。
対象者からのサンプル中のMCAM量と或るAHF予知、診断及び/又は予後を表す参照値との間に逸脱を発見しないとき、逸脱が無いことは、対象者におけるAHF予知、診断及び/又は予後が該参照値によって表されるものと実質的に同じであるという結論を示すか又は該結論に帰され得る。
2以上の異なるバイオマーカーが対象者において決定されるとき、それぞれの有無及び/又は量は、測定された各バイオマーカーについての値がその一部をなすバイオマーカープロフィールとして共に表され得る。本明細書中で使用する場合、用語「プロフィール」は、興味対象の病状と、例えば特定のAHF予知、診断及び/又は予後と関係する独特な特徴又は特性を表す任意のデータ組を含む。この用語は、一般に、とりわけ核酸プロフィール、例えば遺伝子型プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子の遺伝子型を表す遺伝子型データ組)、遺伝子コピー数プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子の増幅又は欠失を表す遺伝子コピー数データ組)、遺伝子発現プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子のmRNAレベルを表す遺伝子発現データ組)、DNAメチル化プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子のDNAメチル化レベルを表すメチル化データ組)、並びにタンパク質、ポリペプチド又はペプチドプロフィール、例えばタンパク質発現プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質のレベルを表すタンパク質発現データ組)、タンパク質活性化プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質の活性化又は不活化を表すデータ組)、タンパク質修飾プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質の修飾を表すデータ組)、タンパク質切断プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質のタンパク質分解性切断を表すデータ組)、並びにこれらの任意の組合せを包含する。
よって、例えば、独特な参照プロフィールは、AHFを有するリスク(例えば、異常に上昇したリスク)の予知 対 AHFを有する通常のリスク又はリスク無しの予知を表し得る。別の1つの例では、独特な参照プロフィールは、AHFを有するリスクの種々の程度の予知を表し得る。
更なる1つの例では、独特な参照プロフィールは、AHFの診断 対 AHF無しの診断(例えば、健常の又はAHFから回復したことの診断など)を表すことができる。別の1つの例では、独特な参照プロフィールは、種々の重症度のAHFの診断を表し得る。
更に別の例では、独特な参照プロフィールは、AHFについての良好な予後 対 AHFについての不良な予後を表し得る。更なる1つの例では、独特な参照プロフィールは、AHFについての様々に好ましいか又は好ましくない予後を表し得る。
例えば、特定のAHF予知、診断及び/又は予後についてのMCAM量並びに1以上の他のAHF-関連バイオマーカーの有無及び/又は量の参照プロフィールは、前記特定のAHF予知、診断及び/又は予後によって特徴付けられる(すなわち、前記AHF予知、診断及び/又は予後が当てはまる)一個体又は個体集団からのサンプル中でプロフィールを決定することにより確立し得る。このような集団は、限定されないが、≧2、≧10、≧100又は数百以上の個体さえ含んでなり得る。
よって、例示として、AHFの診断 対 AHF無しの診断についての参照プロフィールは、それぞれAHFを有していると診断されたか又はAHFを有していないと診断された一個体又は個体集団からのサンプル中でバイオマーカープロフィールを決定することによって確立し得る。
1つの実施形態において、本方法は、そのような参照プロフィールを確立する工程を含み得る。1つの実施形態において、本キット及びデバイスは、特定のAHF予知、診断及び/又は予後についての参照プロフィールを確立する手段を含み得る。このような手段は、例えば、前記特定のAHF予知、診断及び/又は予後によって特徴付けられる1以上の個体からの1以上のサンプル(例えば、別個の又はプールされたサンプル)を含んでなり得る。
サンプルプロフィールと或るAHF予知、診断及び/又は予後を表す参照プロフィールとの間に逸脱を発見すると、逸脱は、対象者におけるAHF予知、診断及び/又は予後が参照プロフィールによって表されるものとは異なるとの結論を示しているか又は該結論に帰され得る。
サンプルプロフィールと或るAHF予知、診断及び/又は予後を表す参照プロフィールとの間に逸脱を発見しないとき、逸脱が無いことは、対象者におけるAHF予知、診断及び/又は予後が参照プロフィールによって表されるものと実質的に同じであるとの結論を示しているか又は該結論に帰され得る。
キット又はデバイスは、臨床セッティングにおいてはベッドサイドデバイスの形態であり得、或いは緊急救命チームのセッティングにおいては、例えば救急車その他の救急救命移動手段の装備若しくはチーム装備の一部として又は応急処置キットの一部としてであり得る。診断キット又はデバイスは、医師、応急救助者(first-aid helper)又は看護士を補助して、観察中の患者が急性心不全を発症しているかどうかを決定することができる(その後、適切な行為又は処置を行うことができる)。
a)対象者からサンプルを取得する手段
b)サンプル中のMCAMマーカー量を測定し、サンプル中のMCAMマーカー量が或る閾値のレベル又は値を下回っているのか又は上回っているのか(このことが、対象者が急性心不全に罹患しているのか否かを示す)を視覚化する手段又はデバイス
を含んでなる。
本発明の実施形態のいずれかにおいて、キット又はデバイスは、c)医師、病院の救急救命部又は応急処置所と直接連絡し、急性心不全に罹患しているのか否かを示す手段を追加的に含んでなることができる。
用語「閾値のレベル又は値」又は「参照値」は、同義語として互換的に使用され、本明細書で定義されるとおりである。この用語はまた、高度に類似する疾患状態を有する個々の患者又は患者群において決定される或る範囲のベースライン(例えば「乾燥重量」)値であり得る。
本明細書で規定されるキットはいずれも、対象者自身又は医師による使用のために、ベッドサイドデバイスとして使用することができる。
本発明のキットにおいて、対象者からサンプルを取得する手段(a)は、当該分野で公知の対象者からサンプルを取得する任意の手段であり得る。例えば血液サンプルを取得するための例は当該分野で公知であり、任意の種類の指又は皮膚プリック又はランセットベースのデバイスであり得る。これらは、基本的には、皮膚に穴を開け、皮膚から血液小滴を放出させる。尿サンプルを使用するとき、対象者からサンプルを取得する手段は、当該分野で公知の家庭用妊娠検査で使用されるもののような吸収ストリップの形態であり得る。同様に、唾液サンプルは、当該分野で公知の綿球(mount swab)を用いて取得し得る。採血デバイス又は他の採取デバイスの例は、例えば、米国特許第4,802,493号、同4,966,159号、同第5,099,857号、同6,095,988号、同5,944,671号、同4,553,541号、同3,760,809号、同5,395,388号、同5,212,879号、同5,630,828号、同5,133,730号、同4,653,513号、同5,368,047号、同5,569,287号、同4,360,016号、同5,413,006号及び米国出願公開2002/111565、同2004/0096959、同2005/143713、同2005/137525、同2003/0153900、同2003/0088191、WO9955232、WO2005/049107、WO2004/060163、WO02/056751、WO02/100254、WO2003/022330、WO2004/066822、WO97/46157、WO2004/039429又はEP0364621、EP0078724、EP1212138、EP0081975又はEP0292928に示されている。
別の1つの実施形態において、本発明は試剤ストリップを含んでなるデバイスを提供する。このような試剤ストリップは、サンプルで湿らせたとき分析物の存在下で色変化を生じ及び/又はサンプル中のタンパク質の濃度を示す1以上の検査パッドを含んでなる。
本発明のキットの1つの好適な実施形態において、サンプル(b)中のタンパク質の量を測定する手段又はデバイス(1)は固体支持体(7)であり、該固体支持体は近位端(2)及び遠位端(3)を有し、以下:
− 近位端近傍のサンプル適用ゾーン(4)、
− サンプル適用ゾーン(4)に対して遠位の反応ゾーン(5)、及び
− 反応ゾーン(5)に対して遠位の検出ゾーン(6)
を含んでなり(これにより、該支持体は、適用ゾーンに適用された流体サンプルの近位端から遠位端への向きのフローを導くキャピラリ特性を有する)、
− 任意に、前記手段又はデバイスは、例えばコンテナ、点滴ピペット又はバイアル中に、粘性サンプルがストリップを通ってより容易に流動することを可能にする流体の供給源も含んでなる。
サンプルは、サンプル適用ゾーン(4)に適用されると、キャピラリフローにより反応ゾーン(5)へ向かって移動する。サンプル中に存在するMCAMが標識MCAM結合性分子接合体と反応し、そうして形成された複合体がキャピラリフローにより検出ゾーン(6)へ運ばれる。検出ゾーン(6)は、その上にMCAM結合性分子が不可逆的に固定されており、複合体を捕捉し固定化する。これにより、接合体の局所的な濃縮を生じ、視覚化が可能になる。
本明細書に記載されるような2つのゾーン(5及び6)(一方のゾーンは非固定接合体を有し、他方のゾーンは固定された捕捉抗体を有する)は、一般に、重ならない。それらは、バンドの無い固体支持体の介在ギャップ有り又は無しで、隣接して配置され得る。バンドは、固体支持体上に、試剤が固定される必要があるかないかに依存して、任意の手段、例えば吸収、吸着、被覆、共有結合又は乾燥により配置され得る。
サンプル中のMCAMタンパク質の量が或る閾値レベル又は値を下回っているか又は上回っているかを決定する別の可能性は、サンプル中に存在する全てのMCAMタンパク質を捕捉する一次捕捉抗体を、固相に結合されると或るシグナル又は色を発生する標識二次抗体と組み合せて使用することである。次いで、色又はシグナルの強度は参照の色又はシグナルチャートと比較され得る。シグナル強度が或る閾値シグナルを上回ると、検査は陽性である(すなわちAHFが切迫している)ことを示す。或いは、色又はシグナルの量又は強度は、例えば光吸収センサ又は光照射メータを含んでなる電子デバイスで測定することができる。これにより、生成されたシグナル強度又は色吸収の数値が得られ、その数値は、閾値を下回っていれば陰性結果の形で、閾値を上回っていれば陽性結果の形で対象者に提示され得る。
この実施形態は、患者におけるMCAMレベルを経時的にモニターするときに該当する。
或いは、参照値は、AHFに罹患している対象者において決定することができる。この参照値は、個人的なMCAM「リスクレベル」、すなわちAHF事象に曝されているか又は間もなく曝されることを示すMCAMレベルを示す。このリスクレベルは、疾患進行のモニタリング又は処置効果の評価に関して興味深い。リスクレベルと比較してのMCAMレベルの減少は、患者が快方に向かっている病状を示す。
更に、参照値又はレベルは、高度に類似する疾患状態又は表現型を有する対象者(例えば全員が非AHF状態にあるか又は全員がAHF状態にある)における測定結果の組合せにより確立することができる。
類似の検査もまた、例えば乳ガン検出用及び心臓リスクの家庭検査を考慮したCRP-タンパク質レベル検出用に知られている。後者の検査は、検査結果の検査機関への送付を包含し、そこで結果が技術専門家又は医療専門家により解釈される。このような患者病状の電話又はインターネットベースの診断は、当然のことながら、ほとんどのキットで可能であり、推奨される。なぜならば、検査結果の解釈はしばしば、検査の実施より重要であるからである。サンプル中に存在するタンパク質レベルの数値を提供する上記のような電子デバイスを使用するとき、この値は、当然のことながら、電話、携帯電話、衛星電話、電子メール、インターネットその他の通信手段で容易に通信でき、急性心不全に罹患していることを病院、医師又は応急処置チームに警告することができる。このようなシステムの非限定的例は、米国特許第6,482,156号に開示されている。
図6A及びBは、本発明の検査ストリップの1つの好適な実施形態を示す。ストリップ(1)は近位端(2)及び遠位端(3)を含む。サンプル適用ゾーン(4)は近位端(2)に設けられ、反応ゾーン(5)はそれに隣接し、検出ゾーン(6)は遠位端(3)近傍にある。サンプルは、固体支持体(7)上、適用ゾーン(4)に置かれ、毛管作用により検出ゾーン(6)へ移される。サンプル適用ゾーン(4)の領域を除き固体支持体(7)の片面又は両面を覆う保護層(8)を備えていてもよい。この保護層は、サンプル及びストリップの化学成分を汚染及び蒸発から保護する。固体支持体(7)のサンプル適用ゾーン(4)と毛管接触する1以上の吸収パッド(9)が、必要に応じて、サンプルを吸収及び放出し得る;このパッド(9)は、代表的には、サンプル適用ゾーン(4)と同じか又は反対の固体支持体(7)表面に配置される。図5Bにおいて、吸収パッド(9)はサンプル適用ゾーン(4)の部分である。1以上の他の吸収パッド(9')が、固体支持体(7)の検出ゾーン(6)に毛管接触して、いずれの捕捉バンド(11)、(14)に対しても遠位に配置され得る。これらパッド(9')は、固体支持体を通過した流体を吸収し得る;このパッド(9')は、代表的には、サンプル適用ゾーン(4)と同じか又は反対の固体支持体(7)表面に配置される。固体支持体(7)は、毛管作用特性を有する任意の適切な材料から作製され得、上記のものと同じ特性を有し得る。これは、物質(例えば非固定化MCAM結合性分子)を支持することもできるべきであり、該物質は、水和したとき、毛管作用による流体フローによって、固体支持体を横切って移動することができる。
MCAM結合性分子接合体には、検出が容易となるように、検出剤が結合又は付着していてもよい。ラボ検出剤の例としては、限定されないが、発光標識;色素のような比色標識;蛍光標識;又は電気活性剤(例えば、フェロシアン化物)のような化学標識;酵素;放射活性標識;又は高周波標識が挙げられる。より一般的には、検出剤は粒子である。本発明の実施に有用な粒子の例としては、限定されないが、コロイド金粒子;コロイドイオウ粒子;コロイドセレン粒子;コロイド硫酸バリウム粒子;コロイド硫酸鉄粒子;ヨウ素酸金属粒子;ハロゲン化銀粒子;シリカ粒子;コロイド金属(含水)酸化物粒子;コロイド硫化金属粒子;コロイドセレン化鉛粒子;コロイドセレン化カドミウム粒子;コロイド金属リン酸塩粒子;コロイド金属フェライト粒子;有機層又は無機層で被覆した上記コロイド粒子のいずれか;タンパク質又はペプチド分子;リポソーム;又はポリスチレンラテックスビーズのような有機ポリマーラテックス粒子が挙げられる。好ましい粒子は、コロイド金粒子である。コロイド金は、G. Frens, 1973 Nature Physical Science, 241:20(1973)に概説される方法のような任意の従来手段により作られ得る。代替法は、米国特許第5,578,577号、同第5,141,850号;同第4,775,636号;同第4,853,335号;同第4,859,612号;同第5,079,172号;同第5,202,267号;同第5,514,602号;同第5,616,467号;同第5,681,775号に記載され得る。
1以上のコントロールバンド(12)が固体支持体(7)上に存在してもよい。例えば、非固定化ペプチド(12)がサンプル適用ゾーン(4)に存在し得る。このペプチドは、MCAM結合性分子のいずれのバンド(13)及び(14)とも交差反応しない。サンプルを適用すると、該サンプルは反応ゾーン(5)に向かって移動する。そこには、抗-ペプチド抗体接合体が配置されており(13)、ペプチド-抗体複合体が形成される。該複合体は、検出ゾーン(6)に向かって移動し、そこには抗-ペプチド抗体の捕捉バンド(14)が固体支持体上に固定されており、これが該複合体を濃縮して視覚化を可能にする。コントロール捕捉バンド(14)は、MCAM捕捉バンド(11)とは別個に位置し、したがって、陽性反応は、アッセイが正しく機能したときに、検出反応とは別個に観察することができる。
アッセイの間、サンプルからのMCAMとMCAM結合性分子接合体とは、固体支持体(7)上で結合して濃縮する。この結合により、固体支持体(7)の背景色を超えて視覚化され得る化合物の濃縮が生じる。化合物は、反応及び検出ゾーンに結合した抗体、検出剤、その他の粒子を含む上記化合物の組合せから形成され得る。実施される特定のアッセイに基づいて、反応及び検出ゾーンは、線形又は非線形であり得る適切なダイナミックレンジを達成するように選択して提供され得る。
サンプル中のMCAMの存在及び/又は濃度は、MCAM結合性分子が固定されているチップを使用する表面プラズモン共鳴(SPR)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)、蛍光消光、蛍光偏光測定又は当該分野で公知のその他の手段により測定することができる。記載された結合アッセイのいずれも、サンプル中のMCAMの存在及び/又は濃度を決定するために使用することができる。そうするために、使用する結合アッセイに適切に、MCAM結合性分子をサンプルと反応させ、MCAM濃度を測定する。アッセイを検証及び較正するため、種々の濃度の標準MCAM及び/又はMCAM結合性分子を使用するコントロール反応を実施することができる。固相アッセイを用いる場合、インキュベーション後、洗浄工程を行って未結合のMCAMを除去する。所定の標識に適切なように結合MCAMを測定する(例えば、シンチレーションカウンティング、蛍光、抗体-色素など)。定性的な結果が望ましい場合、コントロール及び異なる濃度は必要ないかもしれない。当然のことながら、MCAM及びMCAM結合性分子の役割は、切り替わり得る;当業者は、MCAM結合性分子が種々の濃度のサンプルに適用されるように方法を適合させ得る。
1つの好適な実施形態では、結合性分子又は物質は、成熟の膜結合型又は細胞結合型MCAMタンパク質又はフラグメントの両方に結合することができる。1つのより好適な実施形態では、結合性物質又は分子は、上記のような可溶性形態の、好ましくは血漿循環形態のMCAMに特異的に結合するか又はこれを特異的に検出する。
本発明の1つの観点によれば、MCAM結合性分子は、別の物質(例えばプローブ結合性パートナー)での検出を可能にするタグで標識される。このタグは、例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、his-タグ、mycタグ、マルトース、マルトース結合性タンパク質又は結合性パートナーを有する当該分野で公知の任意の種類のタグであり得る。プローブ:結合性パートナーの組合せに利用できる組の例は、任意であり、例えばビオチン:ストレプトアビジン、his-タグ:金属イオン(例えばNi2+)、マルトース:マルトース結合性タンパク質を含む。
本明細書中で規定される試剤ストリップは、以下のように使用される。簡潔には、本発明の試剤ストリップの1以上の検査パッド領域をサンプル中に浸漬させるか、又は少量のサンプルを試剤ストリップに、検査パッド領域上に適用する。視覚的に又は反射率測定により分析することができる発色が、短時間のうちに、通常0.5〜10分以内に、試剤ストリップ上で起こる。MCAMとの反応に際しての検査パッド上の試剤領域の色変化は、好ましくは、患者サンプル中のMCAM濃度に正比例する。検査パッド上で発色する色強度は、視覚的に又は例えば反射率ベースの読取機により決定されてもよい。検査パッド領域での発色を参照色と比較して、サンプル中に存在するMCAM量の推定値を決定する。検査パッド上で発色する色強度を、補正因子の適用により決定した或る範囲のMCAM濃度に対応する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの標準色斑と比較する。
別の1つの実施形態において、本発明はまた、サンプル中のMCAMの存在を測定する検査パッドに関する。好ましくは、検査パッドは、MCAMと相互作用して測定可能な応答、好ましくは視覚的に又は装置により測定可能な応答を生成することができる試剤組成物が組み込まれたキャリアマトリクスを含んでなる。別の好適な実施形態において、本発明は、試剤ストリップ上、好ましくは本明細書に規定する試剤ストリップ上での使用のための、本明細書の規定による検査パッドを提供する。
本キット中の特異的結合性物質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、バイオマーカーなどは、種々の形態、例えば、凍結乾燥形態、溶液中の遊離形態又は固相上に固定化された形態であり得る。これらは、例えば、マルチウェルプレート中に又はアレイ若しくはマイクロアレイとして提供されてもよいし、或いは別個に及び/又は個別に包装されていてもよい。これらは、本明細書中に教示されるように適切に標識されていてもよい。前記キットは、例えば、イムノアッセイ、ELISAアッセイ、質量分析アッセイなどのような本発明のアッセイ法の実施に特に適切であり得る。
上記の観点及び実施形態は以下の非限定的例によって更に支持される。
実施例1:発見から導かれる候補マーカーの早期検証のためのMASSterclass標的化タンパク質定量
MASSterclass実験セットアップ
MASSterclassアッセイは最終段階(end-stage)のペプチド定量系として安定なアイソトープ希釈物を用いる標的化タンデム質量分析を使用する(多重反応モニタリング(MRM)及び単一反応モニタリング(SRM)とも呼ばれる)。標的化ペプチドは、興味対象の特異タンパク質に特異的(すなわち、プロテオティピック(proteotypic))である。すなわち、測定されるペプチド量は、元のサンプル中のタンパク質の量に直接関係する。複合サンプル中のバイオマーカー定量に必要とされる特異性及び感度に到達するためには、ペプチド分画を最終段階の定量工程より前に行う。
− 血漿/血清サンプル
− ProteoPrepスピンカラム(Sigma Aldrich)を使用する、抗-アルブミン抗体及び抗-IgG抗体でのアフィニティー捕捉を用るヒトアルブミン及びIgGの涸渇(タンパク質レベルでの複雑性の低減)
− 既知量のアイソトープ標識ペプチドのスパイキング。このペプチドは、興味対象のプロテオティピックペプチドと同じアミノ酸配列を有する(代表的には、1つのアイソトープ標識アミノ酸がその中に組み込まれて、質量差を生じている)。分子質量に基づく最終段階の定量工程の間を除きプロセス全体の間、該標識ペプチドは、内因性ペプチドと同一の化学的及びクロマトグラフィー的挙動を有する。
− トリプシン消化物。涸渇血清/血漿サンプル中のタンパク質を、トリプシンを用いてペプチドに消化する。この酵素は、リジン又はアルギニンのC-末端側にプロリンが存在する場合を除き、リジン及びアルギニンのC-末端でタンパク質を切断する。消化の前に、タンパク質を煮沸により変性させる。これによって、タンパク質分子は、37℃にて16時間のインキュベーションの間、トリプシン活性が接近可能になる。
− 第2のペプチド-ベース分画:フェニルHPLC(XBridge Phenyl;Waters)は、ペプチドを、ペプチド配列中に存在するアミノ酸の疎水性及び芳香性に従って分離する。バックエンド(back-end)C18分離との直交性は、上昇したpH値(pH10)でカラムを稼動することによって達成される。Gilarら,2005, J Sep Sci 28(14): 1694-1703により証明されているように、pHは、RP-HPLCにおけるペプチド選択性を変化させる遥かに最も強烈なパラメータである。興味対象の各ペプチドは、フェニルカラムから、合成ペプチドホモログを用いるタンパク質アッセイ開発の間に決定される特定の保持時間で溶出する。サンプル分離のバッチ処理前に9つの標準ペプチドの混合物を分離する外部コントロール系の使用により、保持時間シフトを補正するための画分採集の調整が可能になる。分画の程度は、サンプル中のタンパク質濃度及び該サンプルの複雑性に依存する。
− モニターするペプチドのm/zとこのペプチドのモニターするフラグメントのm/zとの組合せは、トランジッションと呼ばれる。このプロセスは、1回の実験の間に複数のトランジッションについて行うことができる。内因性ペプチド(分析物)及びその対応するアイソトープ標識合成ペプチド(内部標準物質)の両方が、同じ保持時間で溶出し、同じLC-MS/MS実験で測定される。
− MASSterclassの読取値は、分析物に特異的なピーク下面積と合成アイソトープ標識アナログ(内部標準物質)に特異的なピーク下面積との間の比によって規定される。MASSterclass読取値は、サンプル中の元々のタンパク質濃度に直接関連する。したがって、MASSterclass読取値は、種々のサンプル間及びサンプル群間で比較することができる。
− 結合/平衡緩衝液として20mM NH4HCO3を使用した以外は、製造業者のプロトコルに従って、25μLの血漿を、ヒトアルブミン及びIgGの涸渇に供する(ProteoPrepスピンカラム;Sigma Aldrich)。
− 涸渇サンプル(225μL)を15分間95℃にて変性させ、氷上で直ぐに冷却する。
− 500fmolのアイソトープ標識ペプチド(カスタムメイド「Heavy AQUA」ペプチド;Thermo Scientific)をサンプル中にスパイクする。
− 20μgトリプシンをサンプルに加え、16時間37℃にて消化する。
− 消化サンプルを先ず溶媒A(0.1%ギ酸)中で1/8希釈し、次いで250amol/μLのアイソトープ標識された興味対象の全ペプチド(カスタムメイド「Heavy AQUA」ペプチド;Thermo Scientific)を含有する同じ溶媒中で1/20希釈した。
− 逆相NanoLCをMRM/SRMモードのオンラインMS/MSと併せて使用して20μLの最終希釈物を分離した:
− カラム:PepMap C18、75μm I.D.×25cm L, 100Å孔径、5μm粒子サイズ
− 溶媒A:0.1%ギ酸
− 溶媒B:80%アセトニトリル、0.1%ギ酸
− 勾配:30分;2%〜55%溶媒B
− MRMモードのMS/MS:方法は、分析物及び合成標識ペプチドのトランジッションを含有する。
− 使用したトランジッションは、タンパク質アッセイ開発の間に実験的に決定して選択した。
− 興味対象のペプチドの決定した保持時間の3分前から始まり該保持時間の3分後に終わる期間、興味対象のトランジッションの各々を測定した。これにより、確実に、各ピークが少なくとも15のデータ点を有した。
− LCQuanソフトウェア(Thermo Scientific)を使用して生データを分析し定量した:同じC18保持時間での分析物(=MCAMペプチド)ピーク下面積及び内部標準物質(標識合成MCAMペプチド)ピーク下面積を、自動ピーク検出により決定した。これらを手作業で照合した。
− MASSterclass読取値は、分析物ピーク面積と内部標準物質ピーク面積との比により規定した。
測定した比はペプチドの示差量である。換言すれば、比は、規格化したペプチド濃度である。ペプチド濃度は、質量分析法で測定した比に比例する。
特異タンパク質の診断正確性を決定するために統計分析を行う。そうするため、サンプルクラスを2つ一組で比較する。分析は、2つのサンプル集団を識別するタンパク質の能力を規定する。
受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を測定することによって、特異タンパク質の診断性能を決定した(Sullivan Pepe M, The statistical evaluation of medical tests for classification and prediction. 1993 Oxford University Press New Yorkを参照)。ノンパラメトリックアプローチ、すなわちブートストラッピング(Efron B, Tibshirani RJ. Nonparametric confidence intervals. An introduction to the bootstrap. Monographs on statistics and applied probability. 1993;57:75-90 Chapman & Hall New York)を使用して、AUCの推定値及び信頼区間(CI)も計算した。
臨床サンプルは、3つの異なる医療センターで、救急救命部(ED)を受診した、急性心不全に関連するか又は他の原因(=呼吸困難非AHF)に関連する急性呼吸困難患者(n=100)から先を見越して採集した。
含まれる全ての患者について、包括的症例報告ファイル(CRF)は、医学的背景、入院診断及び投薬についての詳細を完備した。
全体メジアンAUC 0.91、95% CI 0.85〜0.96が示すように、MCAMは、EDを受診した呼吸困難患者においてAHF診断に高感度で高特異的であることが受信者動作特性(ROC)分析により証明された(図4を参照)。この診断性能は、急性呼吸困難集団におけるAHF診断について現時点で最も標準的なバイオマーカーであるBNP及びNT-プロBNPに等しい。表1に結果を列挙する。
急性心不全と診断された患者をEDへの収容時及び退院時(すなわち、患者が回復し安定しているとみなされた時点)の両方でサンプリングした。平均で、退院時サンプルは、入院時サンプルの9〜11日後に採取した。MCAMのレベルは、MASSterclassを使用して両方のサンプルにおいて測定し、同じ患者で比較した。患者の大多数について、入院時レベルと退院時レベルを比較するとMCAMの有意な減少が存在した(図5)。BNPレベルを入院時 対 退院時で比較すると、非常に類似する状況が得られる。このデータは、MCAMレベルは疾患状態の反映であり、よって急性事象をモニター及び/又は予知するために使用することができるという考えを支持する。
更に、これらAHF患者に施された主要な処置は利尿剤であり、結果として患者は体液を喪失する。よって、MCAMレベルの降下は、患者の充満状態の変化を反映する。
急性代償不全性心不全又は他の原因に起因する呼吸困難のいずれかと診断された急性呼吸困難患者(Potockiら,Journal of Internal Medicine 2010 Jan;267(1):119-29に記載されるようなBASEL V集団(cohort))からの臨床サンプルを、MASSterclassを用いてMCAMについてスクリーニングした。サンプルに関する全ての臨床データを、臨床共同研究者から入手し、MASSterclassデータ分析パイプラインに加えた。
MCAMレベルと全ての入手可能な臨床パラメータとの関係を、単変量統計検定を使用して計算した。スピアマンの順位検定を使用して相関関数を算出し、ウイルコクソンの順位和検定を2つの独立した観察サンプルが同じ集団に由来するかどうかを評価するために使用した。
この分析により、低いウイルコクソンp値で示されるように、MCAMと入院前の体重増加及び利尿剤の治療的使用後の体重減少との明確な関係が示された(表3にまとめた)。
MCAMレベルに対する、心不全患者における収縮期機能不全 対 拡張期機能不全の効果を、BASEL V集団のMASSterclassスクリーニング結果に基づいて調べた。この集団は、減少した左心室駆出率(LVEF<55)又は維持されたLVEF(LVEF>55)のいずれかを有する十分な数のAHF患者を含む。MCAMレベルは、減少した駆出率を有するAHF患者で有意に高い(p<0.001)。図10は、これら2つのAHF亜集団における、MCAMについてのボックスプロット及びウィスカープロットを示す。
収縮期機能不全(減少したEF)を有する患者は、体液蓄積に対してより抵抗性であり、呼吸困難の症状が生じる前の拡張期機能不全を有する患者と比較してより多い容量を蓄積する。
Claims (38)
- 対象者における急性心不全(AHF)の診断、予知及び/又は予後予測を補助するデータの取得方法であって、該方法の検査段階が、対象者からのサンプル中のメラノーマ細胞接着分子(MCAM)の量を測定することを含んでなる方法。
- 下記の工程:
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する工程;
(ii)(i)で測定したMCAM量を、既知のAHF診断、予知及び/又は予後を表すMCAM量参照値と比較する工程;
(iii)(i)で測定したMCAM量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;
を含んでなる請求項1に記載の方法。 - 対象者からのサンプル中の、AHF無しの診断又は予知を表すか又はAHFについての良好な予後を表す参照値と比較して上昇したMCAM量が、対象者がAHFを有しているか若しくはAHFを有するリスクにあることを示すか、又は該対象者におけるAHFについての不良な予後を示す、請求項1又は2に記載の方法。
- 対象者が、AHFである可能性を示す1以上の症状及び/又は徴候を示しているか、或いは呼吸困難、例えばCOPD、肺炎又はAHFにより引き起こされる呼吸困難を示しているか、或いは心不全の病歴を有している請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 下記の工程:
(i)入院に際して及びAHF回復の診断をなさなければならない時点で対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する工程;
(ii)(i)で測定したMCAM量を、既知のAHF診断、予知及び/又は予後を表すMCAM量参照値と比較する工程;
(iii)(i)で測定したMCAM量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見する工程
を含んでなる、入院した対象者における急性心不全(AHF)又はその回復の診断を補助するデータを取得するための請求項1に記載の方法。 - (i)請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を、1以上の一連の時点で対象者のサンプルに適用し、それにより対象者におけるAHFの診断、予知及び/又は予後を補助するデータを該一連の時点で取得し;
(ii)(i)で取得した前記一連の時点でのデータを比較し;そして
(iii)(i)で取得した前記一連の時点でのデータ間の変化の有無を発見する
ことを含んでなる、対象者におけるAHFの診断、予知及び/又は予後の変化をモニターするための請求項1に記載の方法。 - 対象者のサンプルにおいて取得したデータの変化が、対象者の内科療法の経過中にモニターされる請求項6に記載の方法。
- 下記の工程:
(i)対象者からのサンプル中のMCAM量並びにAHFの診断、予知及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する工程;
(ii)(i)の測定値を、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての対象者プロフィールの確立に使用する工程;
(iii)(ii)の対象者プロフィールを、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量の参照プロフィールと比較する工程であって、該参照プロフィールが既知のAHF診断、予知及び/又は予後を表す、工程;
(iv)(ii)の対象者プロフィールの参照プロフィールからの逸脱又は逸脱無しを発見する工程
を含んでなり、前記他のバイオマーカーがB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(プロBNP)及びアミノ末端プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(NTプロBNP)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。 - (i)
(i a)AHFを有していないか、又はAHFを有するリスクにないか、又はAHFについて良好な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中、或いは
(i b)AHFを有しているか、又はAHFを有するリスクにあるか、又はAHFについて不良な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中
のMCAM量或いはMCAM量並びにAHFの診断、予知及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定し、ここで、前記他のバイオマーカーはB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(プロBNP)及びアミノ末端プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(NTプロBNP)からなる群より選択され、
(ii)
(ii a)(i a)の測定値を使用して、MCAM量のプロフィール或いはMCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量のプロフィールを作成するか、或いは、
(ii b)(i b)の測定値を使用して、MCAM量のプロフィール或いはMCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量のプロフィールを作成し、
(iii)
(iii a)(ii a)のプロフィールを、AHF無しの診断若しくは予知を表すか又はAHFについての良好な予後を表す参照プロフィールとして保存するか、或いは、
(iii b)(ii b)のプロフィールを、AHFの診断若しくは予知を表すか又はAHFについての不良な予後を表す参照プロフィールとして保存する
ことを含んでなる、MCAM量についての参照プロフィール或いはMCAM量並びにAHFの診断、予知及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての参照プロフィールであって、
(a)AHF無しの診断若しくは予知、又はAHFについての良好な予後を表すか、或いは
(b)AHFの診断若しくは予知、又はAHFについての不良な予後を表す参照プロフィールを確立する方法。 - (i)対象者がAHFに罹患していない種々の時点で該対象者からのサンプル中のMCAM量を測定し、そして
(ii)該対象者についてのMCAMのベースライン又は参照値である範囲又は平均値を算出する
ことを含んでなる、対象者におけるMCAMのベースライン又は参照値を確立する方法。 - 対象者が、収縮期機能不全が関与するAHFに罹患している請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記収縮期機能不全が、減少した左心室駆出率(LVEF)及び/又は増加した心臓充満圧によって特徴付けられる請求項11に記載の方法。
- 前記LVEFが55%未満又は50%未満又は45%未満である請求項12に記載の方法。
- MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量が、それぞれ、MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る結合性物質並びに前記1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る結合性物質を用いて測定される請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量が、直接ELISA、間接ELISA、サンドウィッチELISA、競合ELISA、マルチプレックスELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)若しくはELISPOT技術のようなイムノアッセイ技術、又は質量分析法、又はクロマトグラフィー法、又は前記方法の組合せを用いて測定される請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 使用するサンプルが血漿であり、血漿循環形態のMCAMが検出される請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する手段を含んでなる、対象者におけるAHFの診断、予知及び/又は予後予測のためのキット。
- (i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する手段;及び
(ii)既知のAHF診断、予知及び/又は予後を表すMCAM量の参照値、或いは該参照値を確立する手段
を含んでなる請求項17に記載のキット。 - 対象者からのサンプル中の、AHFの診断、予知及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段を更に含んでなる請求項17又は18に記載のキット。
- 前記他のバイオマーカーがBNP、プロBNP及びNTプロBNPからなる群より選択される請求項19に記載のキット。
- (i)対象者からのサンプル中のMCAM量を測定する手段;
(ii)対象者からのサンプル中の前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段;
(iii)任意に、MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての対象者プロフィールを確立する手段;及び
(iv)MCAM量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての参照プロフィールであって既知のAHF診断、予知及び/又は予後を表す参照プロフィール、又は該参照プロフィールを確立する手段
を含んでなる請求項19又は20に記載のキット。 - MCAM量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段が、それぞれ、MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質並びに前記1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質を含んでなる請求項17〜21のいずれか1項に記載のキット。
- 結合性物質が抗体、アプタマー、ホトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド擬似物質又は小分子である請求項22に記載のキット。
- ポータブルデバイスとして構成されている請求項17〜23のいずれか1項に記載のキット。
- ポータブルデバイスがベッドサイドデバイスである請求項24に記載のキット。
- MCAMを検出するための手段が血漿循環形態のMCAMを検出することができる請求項17〜25のいずれか1項に記載のキット。
- 前記MCAMを検出するための手段がが血漿循環形態のMCAMを特異的に検出することができる請求項26に記載のキット。
- (a)MCAM及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質;及び
(b)AHFの診断、予知及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質
を含んでなる、結合性物質のアレイ又はマイクロアレイ。 - 前記結合性物質が既知量又は既知濃度で含まれる請求項28に記載のアレイ又はマイクロアレイ。
- 前記他のバイオマーカーに特異的に結合し得る結合性物質がBNP、プロBNP及びNTプロBNPからなる群より選択される請求項28又は29に記載のアレイ又はマイクロアレイ。
- (i)対象者からサンプルを取得する手段と、
(ii)前記サンプル中のMCAM量を測定する手段と、
(iii)サンプル中で測定したMCAM量を視覚化する手段と
を含んでなる、対象者からのサンプル中のMCAM量を測定することができるポータブル検査デバイスとして構成された請求項24又は25に記載のキット。 - 視覚化手段が、サンプル中のMCAM量が特定の閾値レベルを上回っているのか下回っているのか、及び/又はサンプル中のMCAM量が既知のAHF診断、予知及び/又は予後を表すMCAM量参照値から逸脱しているのかしていないのかを表示することができる請求項31に記載のキット。
- 更に前記参照値を含んでなるか又は該参照値を確立する手段を含んでなる請求項32に記載のキット。
- 閾値レベルを上回るサンプル中のMCAM量は、対象者がAHFを有しているか若しくはAHFを有するリスクにあることを示すか又は対象者におけるAHFについての不良な予後を示し、閾値レベルを下回るサンプル中のMCAM量は、対象者がAHFを有していないか若しくはAHFを有するリスクにないことを示すか又は対象者におけるAHFについての良好な予後を示すように、閾値レベルが選択される請求項32に記載のキット。
- AHF無しの診断若しくは予知又はAHFについての良好な予後を表す参照値を含んでなるか、又は該参照値を確立する手段を含んでなり、対象者からのサンプル中のMCAMの、該参照値と比較して上昇した量が、該対象者はAHFを有しているか若しくはAHFを有するリスクにあることを示すか、又は対象者におけるAHFについての不良な予後を示す、請求項32〜34のいずれか1項に記載のキット。
- 前記手段(ii)及び/又は(iii)が近位端及び遠位端を有する固体支持体を含んでなり、該固体支持体が
− 近位端の近傍にサンプル適用ゾーン;
− サンプル適用ゾーンに対して遠位に反応ゾーン;及び
− 反応ゾーンに対して遠位に検出ゾーン;
を含んでなり、そのことにより該支持体が、適用ゾーンに適用された流体サンプルの近位端から遠位端への向きのフローを導くキャピラリ特性を有する、請求項32〜35のいずれか1項に記載のキット。 - 反応ゾーンが、検出剤に接合したMCAM特異結合性分子の1以上のバンドを含んでなり、該MCAM特異結合性分子接合体が、流体のキャピラリフローと共に移動することができるように、固体支持体上に配置されており;検出ゾーンが、固体支持体上に固定化されたMCAM特異的分子の集合を含有する1以上の捕捉バンドを含んでなる、請求項36に記載のキット。
- 反応ゾーンが、追加的に、閾値量のMCAM特異結合性分子接合体の検出ゾーンへの移動を防止するに十分な量で1以上のMCAM特異結合性分子捕捉バンドを含んでなる請求項37に記載のキット。
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