JP5713933B2 - 音源距離測定装置、音響直間比推定装置、雑音除去装置、それらの方法、及びプログラム - Google Patents
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本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、音響信号の直間比推定値を精度よく求める技術を提供することを目的とする。
マイクロホンアレーに含まれる複数個のマイクロホンで受音された受音信号を周波数領域に変換して得られる周波数領域信号を用い、当該周波数領域信号のパワー推定値を得る。また、上記周波数領域信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた直接音抑圧信号のパワー推定値、又は、上記受音信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた信号を周波数領域に変換して得られた直接音抑圧信号のパワー推定値を得る。直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する指向特性を表す関数から得られた指向性形状補正係数を用い、上記直接音抑圧信号のパワー推定値を補正し、間接音のパワー推定値を得、上記周波数領域信号のパワー推定値及び間接音のパワー推定値を用い、間接音のパワー推定値に対する直接音のパワー推定値の比率を表す直間比推定値を得る。
〔この発明の考え〕
この発明は、単一のマイクロホンアレーを用いて、マイクロホンアレーと音源との間の距離を推定するものである。図1にこの発明の音源距離推定装置400を利用する場面を例示する。残響特性を持つ部屋10の中に、マイクロホンアレー11と、発話者12が存在している。マイクロホンアレー11と発話者12は距離を置いて配置されている。
この状況において、発話者12とマイクロホンアレー11との間の距離Dを推定したい。そこで、この発明は、直間比推定値を用いて音源とマイクロホンアレー間の距離を推定する。
<間接音の等方到来モデル>
提案方式では、間接音の等方性を考慮した信号モデルを導入する。ここでは、パワー推定値としてパワースペクトル密度又はその推定値を用いた例を説明するが、これは本発明を限定しない。
M(M≧2)個のマイクロホンからなるマイクロホンアレーのm番目のマイクロホンでの受音信号を短時間フーリエ変換等によって周波数領域に変換すると、以下の周波数領域信号Xm(ω,t)が得られる。
Xm(ω,t)=(HD (m)(ω)+HR (m)(ω))S(ω,t) (1)
ただし、ωは周波数であり、HD (m)(ω)は直接音源からm番目のマイクロホンまでの直接音の伝達関数であり、HR (m)(ω)は直接音源からm番目のマイクロホンまでの間接音の伝達関数であり、S(ω,t)は直接音源での音を周波数領域に変換して得られる信号である。tは所定の時間区間であるフレームのインデックスであり、インデックスtに対応するフレームを「フレームt」と表現する。
ただし、HDref(ω)は直接音源からマイクロホンアレーの基準点(「基準点」という)までの伝達関数の直接音成分であり、HRref,θ(ω)は基準点からみて方向θから到来する間接音成分である。基準点はマイクロホンアレーの内部に存在してもよいし、マイクロホンアレーの外部に存在してもよい。マイクロホンアレーの内部とは、例えば、マイクロホンアレーを構成する複数のマイクロホンを通る直線上、当該複数のマイクロホンを通る線分で囲まれた平面の内部、又は当該複数のマイクロホンを通る面で囲まれた立体の内部を意味する。マイクロホンアレーの外部とは、マイクロホンアレーの内部以外の位置を意味する。例えば、マイクロホンアレーを構成する複数のマイクロホンそれぞれと基準点との距離は、マイクロホンそれぞれと直接音源との距離よりも短い。基準点の例は、マイクロホンアレーの中心点、何れかマイクロホンの位置である。このとき方向θから到来する音の上記基準点からm番目のマイクロホンまでの間での伝搬遅延τθ (m)は、次式のように表される。
τθ (m)=-(1/c)uTpm
ここで第m番目のマイクロホンの位置pmは、
pm=[pm,x, pm,y, pm,z]T
であり、図4A及び4Bに示すように直接音源方向を表す単位ベクトルuは、
u=[sinθ, cosθ, 0]T
であり、cは音波の伝搬速度である。またθDは基準点からみた直接音源方向であり、jは虚数単位であり、eは自然対数である。また、θについての積分は0≦θ<2πの範囲で行われる(以下の積分についても同様)。
ただし、αTはαの転置を表し、SD(ω,t)=HDref(ω)S(ω,t),SR,θ(ω,t)=HRref,θ(ω)S(ω,t)である。また、Aθ(ω)は、方向θからマイクロホンアレーに到来する周波数ωの音の基準点からm番目のマイクロホンまでの経路の伝達関数を要素とするM次元ベクトルである。Aθ(ω)の具体例は、マイクロホンアレーの基準点からみた方向θのアレイ・マニフォールド・ベクトル(array manifold vector)である。以下にアレイ・マニフォールド・ベクトルをAθ(ω)とした例を示す。
ただし、PD(ω)=E[|SD(ω,t)|2]t、PR,θ(ω)=E[|SR,θ(ω,t)|2]tである。W(ω)は、周波数領域のビームフォーマのフィルタ係数W1(ω),...,WM(ω)を要素とするベクトルW(ω)=[W1(ω),...,WM(ω)]Tである(参考文献1の第4.1章(P70,71)等参照)。U(ω)は、pq成分(p,q∈{1,...,M})に要素Upq(ω)=E[Xp(ω,t)Xq *(ω,t)]tを持つM×M行列(マイクロホンアレーの入力信号空間相関行列)である。E[α(t)]tはα(t)のtについての期待値演算を表し、αHはαの複素共役転置を表し、α*はαの複素共役を表す。D(ω,θ)はビームフォーマによって形成される指向特性を表す関数(ω,θを定義域とする関数)である。すなわち、D(ω,θ)はビームフォーマによって形成される指向性の形状を表す。例えば、D(ω,θ)は以下のように表される。
式(4)において間接音がマイクロホンアレーに等方的に到来すると仮定できる音場では、PR,θ(ω)はθに依らない値PR −(ω)に置き換えることができる。この場合、式(4)は以下のように変形できる。
PR(ω)=R(ω)PND(ω) (9)
ただし、θ’は|D(ω,θ)|2を最大化するθを意味する。
ただし、||Θ||は角度領域Θの大きさを表す0より大きな有理数である。例えば、||Θ||は以下を満たす。
角度領域Θの具体例は、直接音源方向θDを除く何れかの角度領域、直接音源方向θDの逆方向を含む角度領域、|D(ω,θ)|2を最大化する方向θを含む角度領域、予め定められた角度領域の候補のうち|D(ω,θ)|2の平均値を最大化する角度領域などである。
直間比計算部43は、複数の周波数領域変換部421,…,42mが出力する周波数領域信号Xm(ω,t)を入力として受音信号の直間比推定値DRRを生成する(ステップS43)。
以下ではパワースペクトル密度又はその推定値をパワー推定値とした例を示す。
図9に例示するように、直間比計算部43は、受音パワー推定部431と、重み係数記憶部432と、指向性形成部433と、直接音抑圧パワー推定部434と、指向性形状分析部435と、間接音パワー推定部436と、直間比推定部437とを備える。
PR,L(ω)=R(ω)PND,L(ω) (20)
距離判定部45は、直間比計算部43から入力される直間比推定値DRRと、距離−直間比DB44に記録されている距離と直間比推定値との関係を参照して、直間比推定値DRRに対応する音源距離推定値d^を出力する。
第一ステップ:距離−直間比DB44に格納されたE1,E2,…の内、直間比計算部43で求めた直間比推定値DRRに隣接する2つの直間比EmとEnを求める。
第二ステップ:直間比EmとEnのそれぞれに対応する距離dmとdnを距離−直間比DB44より求める。
第三ステップ:距離dmとdnとから音源距離推定値d^を式(21)に示すように線形補間して求める。
また、距離判定部45は、関数式d=f(DRR)が距離−直間比DB44に格納されている場合には、直間比計算部43から入力される直間比推定値DRRから音源距離推定値d^を計算して出力する。
ここで、G(ω,t)は、或る周波数領域Ωに含まれる全ての周波数について、同じG(ω,t)が乗算される。周波数領域Ωは、例えば信号成分の集中する周波数帯域を選択するなどして決定される。例えば、任意のm番目のマイクロホンに接続された周波数領域変換部42mの出力Xm(ω,t)のうち、式(23)に示す様にXm(ω,t)の絶対値が予め設定された閾値Pthより大きい値を持つ周波数ωを選んだり、Xm(ω,t)の絶対値が大きい方からκ番目までの周波数ωを選ぶことで決定される。
ここで、Pthは、例えば|Xm(ω, t)|の全周波数の平均値などが用いられる。また、式(22)においてG(ω,t)の値は必ずしも1と0である必要は無く、例えば、0.9と0.1のように十分大きさが異なる値でも良い。
例えば、周波数ω単位で求めたDRR(ω)を直間比推定値として実施例2が実行されてもよい。DRR(ω)の具体例は、式(14)若しくは式(15)の直間比推定値、又は、式(14)若しくは式(15)のPX(ω)をPX,L(ω)に、PR(ω)をPR,L(ω)に、それぞれ置換して得られる直間比推定値である。この場合には、あらかじめ周波数ωごとに用意した関係式d(ω)=f(DRR(ω))に直間比推定値DRR(ω)を代入してd^(ω)を求め、式(24)のようにフィルタを形成する。
ただし、df(ω)とdn(ω)は、あらかじめ用意された互いに大きさが異なる閾値である。
400 音源距離測定装置
700 雑音除去装置
Claims (7)
- マイクロホンアレーに含まれる複数個のマイクロホンで受音された受音信号を周波数領域に変換して得られる周波数領域信号を用い、前記周波数領域信号のパワー推定値を得る受音パワー推定部と、
前記周波数領域信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた直接音抑圧信号のパワー推定値、又は、前記受音信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた信号を周波数領域に変換して得られた直接音抑圧信号のパワー推定値を得る直接音抑圧パワー推定部と、
前記直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する指向特性を表す関数から得られた指向性形状補正係数を用い、前記直接音抑圧信号のパワー推定値を補正し、間接音のパワー推定値を得る間接音パワー推定部と、
前記周波数領域信号のパワー推定値及び前記間接音のパワー推定値を用い、前記間接音のパワー推定値に対する直接音のパワー推定値の比率を表す直間比推定値を得る直間比推定部と、
前記直間比推定値と距離との関係を記録した距離−直間比データベースと、
前記直間比推定値を入力として前記距離−直間比データベースを参照して当該直間比推定値と対応する音源距離推定値を推定する距離判定部と、
を具備する音源距離測定装置。 - マイクロホンアレーに含まれる複数個のマイクロホンで受音された受音信号を周波数領域に変換して得られる周波数領域信号を用い、前記周波数領域信号のパワー推定値を得る受音パワー推定部と、
前記周波数領域信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた直接音抑圧信号のパワー推定値、又は、前記受音信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた信号を周波数領域に変換して得られた直接音抑圧信号のパワー推定値を得る直接音抑圧パワー推定部と、
前記直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する指向特性を表す関数から得られた指向性形状補正係数を用い、前記直接音抑圧信号のパワー推定値を補正し、間接音のパワー推定値を得る間接音パワー推定部と、
前記周波数領域信号のパワー推定値及び前記間接音のパワー推定値を用い、前記間接音のパワー推定値に対する直接音のパワー推定値の比率を表す直間比推定値を得て出力する直間比推定部と、
を具備する音響直間比推定装置。 - 請求項2に記載した音響直間比推定装置と、
前記受音信号を周波数領域に変換して得られる前記周波数領域信号を入力として処理対象信号を生成する処理対象信号生成部と、
請求項2に記載した音響直間比推定装置が出力する直間比推定値と、前記処理対象信号とを入力として、前記処理対象信号の振幅を、当該直間比推定値に基づくマイクロホンアレーからの音源距離推定値が所望の距離区間内にある場合には大きく、そうでない場合は小さくなるように調整した処理後信号を生成する対象信号調整部と、
を具備する雑音除去装置。 - マイクロホンアレーに含まれる複数個のマイクロホンで受音された受音信号を周波数領域に変換して得られる周波数領域信号を用い、前記周波数領域信号のパワー推定値を得る受音パワー推定ステップと、
前記周波数領域信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた直接音抑圧信号のパワー推定値、又は、前記受音信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた信号を周波数領域に変換して得られた直接音抑圧信号のパワー推定値を得る直接音抑圧パワー推定ステップと、
前記直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する指向特性を表す関数から得られた指向性形状補正係数を用い、前記直接音抑圧信号のパワー推定値を補正し、間接音のパワー推定値を得る間接音パワー推定ステップと、
前記周波数領域信号のパワー推定値及び前記間接音のパワー推定値を用い、前記間接音のパワー推定値に対する直接音のパワー推定値の比率を表す直間比推定値を得る直間比推定ステップと、
前記直間比推定値を入力として、前記直間比推定値と距離との関係を記録した距離−直間比データベースを参照して当該直間比推定値と対応する音源距離推定値を推定する距離判定ステップと、
を具備する音源距離測定方法。 - マイクロホンアレーに含まれる複数個のマイクロホンで受音された受音信号を周波数領域に変換して得られる周波数領域信号を用い、前記周波数領域信号のパワー推定値を得る受音パワー推定ステップと、
前記周波数領域信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた直接音抑圧信号のパワー推定値、又は、前記受音信号に対して直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する処理を行って得られた信号を周波数領域に変換して得られた直接音抑圧信号のパワー推定値を得る直接音抑圧パワー推定ステップと、
前記直接音源方向から到来した信号成分を抑圧する指向特性を表す関数から得られた指向性形状補正係数を用い、前記直接音抑圧信号のパワー推定値を補正し、間接音のパワー推定値を得る間接音パワー推定ステップと、
前記周波数領域信号のパワー推定値及び前記間接音のパワー推定値を用い、前記間接音のパワー推定値に対する直接音のパワー推定値の比率を表す直間比推定値を得て出力する直間比推定ステップと、
を具備する音響直間比推定方法。 - 請求項5に記載した音響直間比推定方法の各ステップと、
前記受音信号を周波数領域に変換して得られる前記周波数領域信号を入力として処理対象信号を生成する処理対象信号生成ステップと、
請求項5に記載した音響直間比推定方法の直間比推定ステップで出力される直間比推定値と、前記処理対象信号とを入力として、前記処理対象信号の振幅を、当該直間比推定値に基づくマイクロホンアレーからの音源距離推定値が所望の距離区間内にある場合には大きく、そうでない場合は小さくなるように調整した処理後信号を生成する対象信号調整ステップと、
を具備する雑音除去方法。 - 請求項1から3の何れかの装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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JP2012038298A JP5713933B2 (ja) | 2012-02-24 | 2012-02-24 | 音源距離測定装置、音響直間比推定装置、雑音除去装置、それらの方法、及びプログラム |
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