JP5713024B2 - 光学ガラス及びこれから作製される光学素子 - Google Patents
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Description
本発明は、光学ガラス及びこれから作製される光学素子に関するものである。
近年、デジタルカメラ(携帯電話に搭載されるものも含む)の撮像光学系のレンズ、BD(ブルーレイディスク)記録/再生装置の光ピックアップ装置等に用いられるコリメータレンズや対物レンズとして、小型化、軽量化のため、非球面レンズが使用されていることが多くなっている。前記非球面レンズを切削、研磨工程によって製造する場合、高性能な製造装置や高度な技術が必要であり、生産コストが高くなる。そこで、非球面レンズのような加工が難しい形状のガラス成形体を簡単に製造する方法として、精密プレス成形法(モールド成形法)が採用されている。前記精密プレス成形法は、熱したガラスをプレス金型でプレスして成形する。
このような精密プレス成形法でガラスを成形する場合、プレス金型をガラス転移温度以上の高温にして成形する必要がある。特に、非球面レンズを製造する場合、複雑で精緻な形状を前記プレス金型から確実に転写するため、成形温度が高い方が好ましい。一方で、成形温度が高くなると前記プレス金型の温度も高くなり、表面が酸化したり、金属組成が変化したりして、劣化が激しく、金型寿命が低下する。このことから、金型寿命の低下を抑制するため、前記精密プレス成形法に用いるガラスは、その成形温度(特にガラス転移温度)が低い方が好ましい。
このような精密プレス成形法に適した光学ガラスは、従来、種々提案されている。中でも、光学設計上有用な光学恒数であるd線の屈折率(nd)が1.57〜1.65で、尚且つ、アッベ数(νd)が40〜61を持つ或いはそれに近い光学恒数を持つ精密プレス成形法に適した光学ガラスとしては、以下の各特許文献に記載のものがある。
近年、前記デジタルカメラはますます小型化、軽量化されており、更なる省電力化が要求されている。また、BD記録/再生装置も携帯型或いは自動車に搭載する車載型が提案されており、耐振動性能、耐衝撃性能の向上(振動や衝撃が加えられても光学機器同士或いは光学機器と他の部材との接触を抑制すること)が要求されている。このような、省電力化或いは耐振動性能、耐衝撃性能の向上の要求に応えるため、レンズ、プリズム、ミラー等の光学素子自体を軽くする必要がある。また、これらの光学機器は、屋外、自動車内等、従来のものに比べて温度、湿度等の動作環境が厳しい場所で使用されることが多く、優れた耐候性を有していることも要求される。
そこで、前記光学機器に用いられる光学素子を形成する光学ガラスには、上述した光学恒数を備えることに加えて、比重が小さく(3.0以下)、且つ、優れた耐候性を有することが必要とされている。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の光学ガラスでは、比重が大きく、前記厳しい環境条件下で使用される光学機器用の光学素子を形成する光学ガラスとして適していない。また、特許文献3及び特許文献4に記載の光学ガラスでは、比重は小さいが、耐候性が低く、前記厳しい環境条件下で使用される光学機器に用いられる前記光学素子を形成する光学ガラスとして適していない。
そこで本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、d線の屈折率(nd)が1.57〜1.65かつアッベ数(νd)が40〜61の光学恒数を持ち、比重3.0以下及びガラス転移温度(Tg)が520℃以下で、なおかつ、優れた耐候性を有する精密プレス成形法に適した光学ガラスを提供することを目的としている。
本発明者は前記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、Nb2O5、ZnOの各成分を主要成分とすることで、d線の屈折率(nd)が1.57〜1.65かつアッベ数(νd)が40〜61の光学恒数を持ち、比重3.0以下及びガラス転移温度(Tg)が520℃以下で、なおかつ、優れた耐候性を有する精密プレス成形法に適した光学ガラスが得られることを実験的に見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の光学ガラスは、質量%で
P2O5 35%〜50%、
B2O3 3%〜25%、
Al2O3 1%〜12%、
Li2O 0%〜10%(ゼロを含む)、
Na2O 0%〜10%(ゼロを含む)、
K2O 0%〜12%(ゼロを含む)、
ただし、Li2O+Na2O+K2O 5%〜15%、
MgO 0%〜30%(ゼロを含む)、
CaO 0%〜30%(ゼロを含む)、
ただし、MgO+CaO 18%〜32%、
Nb2O5 5%〜20%、
ZnO 0%〜10%(ゼロを含む)、
のガラス成分を含有するともに、実質的にSiO2、ZrO2のガラス成分を含有せず、
d線の屈折率(nd)が1.57〜1.65かつアッベ数(νd)が40〜61の光学恒数を有し、比重が3.0以下であるとともにガラス転移温度(Tg)が520℃以下であることを特徴とする。
P2O5 35%〜50%、
B2O3 3%〜25%、
Al2O3 1%〜12%、
Li2O 0%〜10%(ゼロを含む)、
Na2O 0%〜10%(ゼロを含む)、
K2O 0%〜12%(ゼロを含む)、
ただし、Li2O+Na2O+K2O 5%〜15%、
MgO 0%〜30%(ゼロを含む)、
CaO 0%〜30%(ゼロを含む)、
ただし、MgO+CaO 18%〜32%、
Nb2O5 5%〜20%、
ZnO 0%〜10%(ゼロを含む)、
のガラス成分を含有するともに、実質的にSiO2、ZrO2のガラス成分を含有せず、
d線の屈折率(nd)が1.57〜1.65かつアッベ数(νd)が40〜61の光学恒数を有し、比重が3.0以下であるとともにガラス転移温度(Tg)が520℃以下であることを特徴とする。
また本発明の光学ガラスは、質量%で、
SrO 0%〜5%(ゼロを含む)、
BaO 0%〜5%(ゼロを含む)、
TiO2 0%〜10%(ゼロを含む)、
WO3 0%〜5%(ゼロを含む)、
Bi2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
La2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Y2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Gd2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Ta2O5 0%〜3%(ゼロを含む)、
Sb2O3 0%〜0.5%(ゼロを含む)、
のガラス成分の1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とする。
SrO 0%〜5%(ゼロを含む)、
BaO 0%〜5%(ゼロを含む)、
TiO2 0%〜10%(ゼロを含む)、
WO3 0%〜5%(ゼロを含む)、
Bi2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
La2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Y2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Gd2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Ta2O5 0%〜3%(ゼロを含む)、
Sb2O3 0%〜0.5%(ゼロを含む)、
のガラス成分の1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とする。
さらに本発明の光学ガラスは、P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、Nb2O5、ZnOの合計含有量が95%を超えるものである。
また本発明によれば、前記光学ガラスを精密プレス成形して作製した光学素子を提供することができる。このような光学素子としては、撮像用レンズ、レーザ光学系の対物レンズ、プリズム及び反射ミラー等を挙げることができる。
本発明の光学ガラスでは、P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、Nb2O5、ZnOを主要成分とすることで、d線の屈折率(nd)が1.57〜1.65かつアッベ数(νd)が40〜61の光学恒数を持ち、比重3.0以下及びガラス転移温度(Tg)が520℃以下で、なおかつ、優れた耐候性を有する精密プレス成形法に適した光学ガラスを得ることができる。
本発明にかかる光学ガラスの各成分を上記のように限定した理由について、以下に説明する。なお、以下の説明において、単に%と表記した場合、質量パーセントである。
P2O5は、ガラスを形成する主成分であり、必須成分である。P2O5の含有量が35%未満では、ガラスが不安定になる。また、50%を越えると耐候性が悪くなる。そこで、P2O5の含有量を35%〜50%の範囲に定めた。好ましい範囲は38%〜47%である。
B2O3は、ガラスを形成する成分で、ガラスの安定化に効果があり、必須成分である。B2O3の含有量が3%未満ではその効果が少なく、また、25%を超えるとガラスが揮発しやすくなり、脈理が入りやすくなる。そこで、B2O3の含有量を3%〜25%の範囲に定めた。好ましい範囲は8%〜21%である。
MgO、CaOは、いずれも耐候性を高め、かつ比重を小さくするのに非常に有効な成分である。MgO、CaOの含有量がそれぞれ30%を超えるとガラスが失透しやすくなる。そこで、MgO、CaOの各含有量を30%以下に定めた。好ましい範囲はそれぞれ25%以下である。
また、MgOとCaOとの合計含有量が18%以上となると耐候性が良くなり、32%を超えると耐洗浄性が悪化する。そこで、MgOとCaOとの合計含有量(MgO+CaOの含有量)を18%〜32%の範囲と定めた。好ましい範囲は20%〜30%である。より好ましい範囲は21〜28%である。
Al2O3は、ガラスの耐候性を向上させるのに非常に有効な成分であり、必須成分である。Al2O3の含有量が1%未満ではその効果が十分でなく、12%を超えるとガラスが失透しやすくなる。そして、MgO+CaOの含有量が20%以上である場合、失透傾向が強まるため、Al2O3の含有量が1%〜7%の範囲であることが好ましい。より好ましい範囲は1%〜5%である。
Li2O、Na2O、K2Oは、いずれもガラス化を容易にし、また安定化に効果がある。Li2O、Na2O、K2Oの含有量がそれぞれ10%、10%、12%を超えるとガラスが揮発しやすくなり脈理が入り易くなる。そこで、Li2Oの含有量を0%〜10%、Na2Oの含有量を0%〜10%、K2Oの含有量を0%〜12%の範囲に定めた。また、Li2O、Na2O、K2Oの合計含有量(Li2O+Na2O+K2Oの含有量)が5%未満ではガラスの安定感の効果が小さく、15%を超えると耐候性が悪化しやすい。そこで、Li2O+Na2O+K2Oの含有量を5%〜15%の範囲に定めた。好ましい範囲は6%〜12%である。
Nb2O5は、耐候性に有効な成分である。MgO、CaO、Al2O3のみでは耐候性を良好に保つことが困難であるが、Nb2O5を同時に使用することで耐候性が顕著に良くなる。また、Nb2O5を使用することで、MgO、CaOによる耐洗浄性の悪化を抑制する効果も有している。また、MgOやCaOを大量に使用する場合にNb2O5を一定量使用することでガラスが安定になり、失透しにくい効果を有している。さらに、SrO、BaO、ZnOより比重が小さく、かつ屈折率を高める効果も有している。Nb2O5の含有量が5%未満では、これらの効果を十分に得ることができず、20%を超えると失透しやすくなる。そこで、Nb2O5の含有量を5%〜20%の範囲に定めた。好ましい範囲は6%〜15%である。
ZnOは、ガラスを安定化させる効果を有している。また、SrOやBaOに比べ、比重を大きくしない成分であるが、含有量が多くなると耐候性が悪化する。そこで、ZnOの含有量を10%以下と定めた。好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下である。
SiO2及びZrO2は、MgO+CaOの含有量が上述の範囲で、なおかつNb2O5の含有量が上述の範囲であるガラスに使用すると、ガラスの安定性が急激に悪化し失透しやすい。そこで、SiO2及びZrO2は、実質上、使用しないことが好ましい。
BaO、SrOはいずれも、ガラスを安定化させ、失透させにくくする効果を有している。しかしながら、BaO、SrOそれぞれの含有量が多くなると、耐候性が急激に悪化する。そこで、BaO、SrOそれぞれの含有量を、0%〜5%の範囲に定めた。好ましい範囲は0%〜2%である。しかしながら、BaOは劇物であり、特に必要でなければ、使用しないことが好ましい。
TiO2、WO3、Bi2O3は屈折率を高める成分であるが、TiO2の含有量が10%、WO3の含有量が5%、そして、Bi2O3の含有量が3%をそれぞれ超えるとガラスが着色しやすくなる。そこで、TiO2の含有量は10%以下、WO3の含有量は5%以下、Bi2O3の含有量は3%以下と定めた。必要でなければ、TiO2、WO3、Bi2O3は使用しないことが好ましい。
La2O3、Y2O3、Gd2O3、Ta2O5は着色を伴わず屈折率を高める成分であるが、本発明の組成のガラスでは未溶として残り易い成分である。そこで、La2O3、Y2O3、Gd2O3、Ta2O5各々の含有量は3%以下であることが好ましく、より好ましくはLa2O3、Y2O3、Gd2O3、Ta2O5各々の含有量が1%以下である。特に必要なければ、使用しないことが好ましい。
Sb2O3はガラス熔融の際に清澄剤として、または消色剤として使用できる。Sb2O3の含有量は0%〜0.5%で十分である。Sb2O3は劇物であるので必要なければ使用しない方が良い。
PbO、As2O3、Fは、環境への影響に配慮する立場から、実質上使用しないことが好ましい。
本発明のガラスは基本的にP2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、Nb2O5、ZnOによって構成されるのが好ましい。本発明のガラスにおける前記成分の合計含有量が95%超とすることが好ましく、99%超とすることがより好ましい。
その他、必要に応じて、従来公知のガラス成分及び添加剤を本発明の効果を害さない範囲で添加してもよいことは勿論である。
本発明にかかる光学素子は上述の成分を含む光学ガラスを精密プレス成形することによって製作される。この精密プレス成形法の代表的なものとしては、予め決められた温度に加熱されたプレス金型に、ノズルを利用して溶融したガラスを滴下し、一定の温度を保ったままプレス成形する精密ダイレクトプレス成形法、及び、上述の成分を含むプリフォーム材を金型に載置し、金型ごとガラス軟化点以上の温度に加熱してプレス成形する再加熱成形法がある。このような、精密プレス成形法を利用することで、対物レンズやコリメータレンズ等(例えば、非球面レンズ)のような複雑な形状を有する光学素子を製造するときでも、切削、研磨の工程が不要であり、生産性が向上する。なお、以上に示した成形方法のうち、本発明の光学素子の製造方法としてより好ましいものは、精密ダイレクトプレス成形法である。以下において、本発明の光学素子は精密ダイレクトプレス成形法で製造されるとして説明する。
成形条件として、金型温度、プレス時間、プレス圧力、ガラス粘度等を挙げることができる。一般的に、金型温度は、ガラス転移温度(Tg:本発明では520℃以下)に近い高温であることが好ましい。プレス時間は、数秒〜数十秒の範囲が好ましく、プレス時間が長いほど高精度の成形が可能である。また、プレス圧力は50kgf/cm2〜800kgf/cm2(4.903MPa〜78.45MPa)の範囲が好ましく、高圧力でプレスするほど、高精度の成形が可能である。成形時のガラスの粘度としては、102poise〜1012poiseの範囲であることが好ましい。なお、この成形条件は、ガラス成分や成形される光学素子の形状によって微妙に変化する。
本発明の光学素子として、デジタルカメラ、携帯電話等に搭載されるデジタルカメラの撮像光学系のレンズ、コリメータレンズ、反射ミラー等、或いは、車載用又はパーソナルコンピュータ用のBD装置に用いられる光ピックアップ装置の対物レンズ、コリメータレンズ、反射ミラー等を挙げることができる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、実施例はあくまで一例であり、本発明を限定するものではない。
(実施例1〜47)
実施例1〜47の各成分の組成及び特徴は表1に示すとおりである。各実施例のサンプルは次の手順(方法)で作製した。酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩及び硝酸塩等の一般的なガラス原料を表1に示す目標組成となるように秤量し、粉末で十分に混合し調合材料とした。この調合材料を、白金坩堝に投入し、電気炉にて1000℃〜1300℃の温度で1時間〜3時間溶融し、攪拌均質化した後、予め加熱された鉄製又はカーボン製の鋳型に鋳込み、除冷することで、サンプルを作製した。
実施例1〜47の各成分の組成及び特徴は表1に示すとおりである。各実施例のサンプルは次の手順(方法)で作製した。酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩及び硝酸塩等の一般的なガラス原料を表1に示す目標組成となるように秤量し、粉末で十分に混合し調合材料とした。この調合材料を、白金坩堝に投入し、電気炉にて1000℃〜1300℃の温度で1時間〜3時間溶融し、攪拌均質化した後、予め加熱された鉄製又はカーボン製の鋳型に鋳込み、除冷することで、サンプルを作製した。
以上の手順で作製された各サンプルに対して、d線の屈折率(nd)及びアッベ数(νd)、比重、ガラス転移温度(Tg)を測定した。これらの測定は日本光学硝子工業会規格(JOGIS)の試験方法に準じて行った。また、耐候性の評価については、各実施例のサンプルの表面を鏡面研磨し、温度60℃、湿度95%の清浄な恒温恒湿機内に168時間保持した後、鏡面研磨した表面を顕微鏡(40倍)で観察した。なお、耐候性の評価結果については、○又は×で表中に表示している。表中の○印は変化が見られず実用に供するもの、表中の×印は異常(曇りの発生、異質物の析出など)が認められ実用に供さないものを表している。なお、表1において、比較検討を容易にするため、含有成分の比率を質量パーセント(wt%)とモルパーセント(mol%)との両方で表示している。
比較例1〜4
一方、比較例1〜4として本発明の光学ガラスと組成が近い及び特徴が近いものを採用しており、各成分の組成及び特徴を表2に示している。比較例1は特開2005−53749号公報の実施例10(比較例1)、比較例2は特開平11−139845号公報の実施例42、比較例3は特開平9−301735号公報の実施例8(成分の組成については、質量パーセントに換算している)、比較例4は特開2007−119329号公報の実施例7である。これら比較例のサンプルをそれぞれの公報に記載の方法で作製し、実施例と同じ方法で耐候性の試験の評価を行った。評価結果の表示方法については実施例と同じである。なお、各比較例の光学恒数は、各公報に記載されている数字を利用しており、比較例1〜比較例3については、ガラス転移温度(Tg)の替わりに、屈伏温度(At)を表示している。
一方、比較例1〜4として本発明の光学ガラスと組成が近い及び特徴が近いものを採用しており、各成分の組成及び特徴を表2に示している。比較例1は特開2005−53749号公報の実施例10(比較例1)、比較例2は特開平11−139845号公報の実施例42、比較例3は特開平9−301735号公報の実施例8(成分の組成については、質量パーセントに換算している)、比較例4は特開2007−119329号公報の実施例7である。これら比較例のサンプルをそれぞれの公報に記載の方法で作製し、実施例と同じ方法で耐候性の試験の評価を行った。評価結果の表示方法については実施例と同じである。なお、各比較例の光学恒数は、各公報に記載されている数字を利用しており、比較例1〜比較例3については、ガラス転移温度(Tg)の替わりに、屈伏温度(At)を表示している。
表1から明らかなように、実施例1〜48の光学ガラスは、d線の屈折率(nd)が1.57280〜1.64983(目標値1.57〜1.65)の範囲、かつ、アッベ数(νd)が42.6〜58.8(目標値40〜61)の範囲となる光学恒数を持ち、ガラス転移温度(Tg)が439℃〜512℃(目標値520℃以下)と精密ダイレクトプレス成形に適したものであった。また、比重が2.7〜2.9(目標値3.0以下)であるとともに、全ての実施例で優れた耐候性を有している。これらの結果より、実施例1〜48の成分組成を有するガラスは、上述したような、光学機器に用いられる光学素子を構成する光学ガラスとして適しているものであった。
これに対し、表2に示しているように、比較例1及び比較例2の光学ガラスはいずれも比重が設計上要求される比重の3.0を超えている。また、比較例3及び比較例4の光学ガラスはいずれもアッベ数(νd)が目標値から外れているとともに、耐候性が悪い。これらの結果より、比較例の成分組成のガラスはいずれも、上述したような光学機器の光学素子を構成する光学ガラスとして適していないものであった。
Claims (8)
- 質量%で
P2O5 35%〜50%、
B2O3 3%〜25%、
Al2O3 1%〜12%、
Li2O 0%〜10%(ゼロを含む)、
Na2O 0%〜10%(ゼロを含む)、
K2O 0%〜12%(ゼロを含む)、
ただし、Li2O+Na2O+K2O 5%〜15%、
MgO 0%〜30%(ゼロを含む)、
CaO 0%〜30%(ゼロを含む)、
ただし、MgO+CaO 18%〜32%、
Nb2O5 5%〜20%、
ZnO 0%〜10%(ゼロを含む)、
のガラス成分を含有し、
d線の屈折率(nd)が1.57〜1.65かつアッベ数(νd)が40〜61の光学恒数を有し、比重が3.0以下であるとともにガラス転移温度(Tg)が520℃以下であることを特徴とする光学ガラス。 - 質量%で、
SrO 0%〜5%(ゼロを含む)、
BaO 0%〜5%(ゼロを含む)、
TiO2 0%〜10%(ゼロを含む)、
WO3 0%〜5%(ゼロを含む)、
Bi2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
La2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Y2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Gd2O3 0%〜3%(ゼロを含む)、
Ta2O5 0%〜3%(ゼロを含む)、
Sb2O3 0%〜0.5%(ゼロを含む)、
のガラス成分の1種又は2種以上をさらに含有する請求項1に記載の光学ガラス。 - P2O5、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、Nb2O5、ZnOの合計含有量が95%を超える請求項1または請求項2に記載の光学ガラス。
- 実質的にSiO2、ZrO2のガラス成分を含有しない請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学ガラス。
- 質量%で
P 2 O 5 38%〜47%、
B 2 O 3 8%〜21%、
Al 2 O 3 1%〜7%、
Li 2 O 0%〜10%(ゼロを含む)、
Na 2 O 0%〜10%(ゼロを含む)、
K 2 O 0%〜12%(ゼロを含む)、
ただし、Li 2 O+Na 2 O+K 2 O 6%〜12%、
MgO 0%〜25%(ゼロを含む)、
CaO 0%〜25%(ゼロを含む)、
ただし、MgO+CaO 20%〜30%、
Nb 2 O 5 6%〜15%、
ZnO 0%〜5%(ゼロを含む)、
Sb 2 O 3 0%〜0.5%(ゼロを含む)、
のガラス成分を含有し、
Si 2 O、ZrO 2 、PbO、As 2 O 3 、Fのガラス成分を含有せず、
P 2 O 5 、B 2 O 3 、Al 2 O 3 、Li 2 O、Na 2 O 、K 2 O、MgO、CaO、Nb 2 O 5 、ZnOの合計含有量が99%を超え、
d線の屈折率(nd)が1.57〜1.65かつアッベ数(νd)が40〜61の光学恒数を有し、比重が3.0以下であるとともにガラス転移温度(Tg)が520℃以下であることを特徴とする光学ガラス。 - 質量%で
Al 2 O 3 1%〜5%、
MgO+CaO 21%〜28%、
ZnO 0%〜3%(ゼロを含む)、
であることを特徴とする請求項5に記載の光学ガラス。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の光学ガラスを精密プレス成形して作製したことを特徴とする光学素子。
- 前記光学素子がレンズ、プリズム及び反射ミラーのいずれかである請求項7に記載の光学素子。
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