JP5708770B2 - 賦型用金型の修正方法、賦型用金型、反射防止物品、画像表示装置及びショーケース - Google Patents
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Description
図1は、本発明の第1実施形態に係る反射防止物品を示す図(概念斜視図)である。この反射防止物品1は、全体形状がフィルム形状により形成された反射防止フィルムである。この実施形態に係る画像表示装置では、この反射防止物品1が画像表示パネルの表側面に貼り付けられて保持され、この反射防止物品1により日光、電燈光等の外来光の画面における反射を低減して視認性を向上する。なお反射防止物品は、その形状を平坦なフィルム形状とする場合に限らず、平坦なシート形状、平板形状(相対的に厚みの薄い順に、フィルム、シート、板と呼称する)とすることもでき、また平坦な形状に代えて、湾曲形状、立体形状を呈したフィルム形状、シート形状、板形状とすることもでき、さらには各種レンズ、各種プリズム等の立体形状のものを用途に応じて適宜採用することができる。
なお上述したように反射防止物品の形状はフィルム形状に限らず、種々の形状を採用可能であることにより、基材2は、反射防止物品の形状に応じて、これらの材料の他に、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、螢石等の各種透明無機材料等を適用することができる。
具体的には、図8(b)に示すように、ロール版13の一の形態は、その母材13aに純度の高いアルミニウムのパイプを適用し、その母材13aの周側面に、微細な凹凸形状からなる賦型部13cが設けられる。
また、ロール版13の他の形態は、図8(c)に示すように、母材13aに中空のステンレスパイプが適用され、その母材13aの周側面に直接、純度の高いアルミニウムからなる賦型層(賦型部)13cが設けられる。なお、ステンレスパイプに代えて、銅やアルミニウム、又は、樹脂等のパイプ材等を適用してもよい。
図9は、ロール版13の製造工程を示す図である。
この製造工程は、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材13aの周側面を超鏡面化する(電解研磨)。それから、母材13aの周側面に二酸化珪素を塗布して密着層13bを形成する。続いてこの工程は、母材13aの周側面に、密着層13bを介してアルミニウムを蒸着や、スパッタリングして、純度の高いアルミニウム層(賦型層13c)を作製する。続いてこの工程は、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して賦型層13cを処理し、ロール版13を作製する。
図10は、ロール版13の賦型層13cの欠点の概略を説明する図である。図10(a)は、ロール版13の欠点の拡大断面の図8(b)に対応する図である。図10(b)は、修正により欠点が削られたロール版13の拡大断面の図8(b)に対応する図である。
ここで、上述の製造工程により作製されたロール版13は、母材13aの周側面の電解研磨の工程において、研磨粉や塵がその周側面に残存する場合があり、その状態で密着層13b、賦型層13cが形成された場合、ロール版13の表面は、図10(a)に示すように、研磨粉等が残存する部位が、その部位に隣接する周辺部位に対して凸となる、いわゆる欠点が形成されてしまう。この欠点を有するロール版13によって、反射防止物品が製造された場合、その反射防止物品は、欠点に対応する位置に微小突起が適正に形成されず、反射防止物品の反射防止機能が局所的に劣化したり、外観不良が発生したりすることとなる。
そのため、本実施形態では、以下に説明する修正装置50を使用することにより、ロール版13の欠点を検出して修正する。
図11は、ロール版13の欠点を検出し、修正する修正装置50の正面図及び側面図である。
この修正装置50は、保持機構によりロール版13の母材13aの回転軸の両端を保持することにより、この回転軸がほぼ水平となり、この回転軸により回転可能に、さらに周側面が他の部位に接触しないように、ロール版13を保持する。修正装置50は、図示しないフットスイッチの操作により保持機構により保持したロール版13をゆっくりとした速度で回転させる。
例えば、YAGレーザは、上述のYAG第2高調波(波長532nm)だけでなく、レーザ出力(光量)等が十分に得られるのであれば、YAG基本波(波長1064nm)や、YAG第3高調波(波長355nm)、YAG第4高調波(波長266nm)、YAG第5高調波(波長213nm)等を使用することもできる。また、ArF、KrF、XeF、XeCl等の希ガスハロゲンのエキシマレーザ光の照射に代えて、電子ビーム、イオンビーム、X線などのエネルギービームも使用することができる。
図12は、修正されたロール版13によって製造された反射防止物品を示す拡大断面図である。
作業者は、上述の修正装置50にロール版13を設置し、顕微鏡54を使用して、ロール版13(賦型層13c)の表面の形状を検出する。そして、検出した情報に基づいて、ロール版13の表面から凸となる部位を検出し、それが欠点であるか否かの判定を行う(欠点判定工程)。具体的には、作業者は、検出した賦型層13cの表面から凸となる部位の幅寸法が100μm未満であり、かつ、その部位の高さ寸法が隣接する周辺部位(微細な凹凸形状の平均高さ)に対して3μm以上である場合に、その部位が欠点であると判定する。
これは、幅寸法が100μm未満の欠点は、製造される反射防止物品の反射防止機能等にほとんど影響がないため、一般的には欠点として判定されていないが、幅寸法が100μm未満の欠点であっても、その高さ寸法が隣接する周辺部位に対して3μm以上である場合、凸となる部位が急峻となるため、製造される反射防止物品1の反射防止機能や外観に影響があることによるものである。なお、幅寸法が100μm以上の凸となる部位については、その要因となる研磨粉等の大きさが、100μm未満の場合に比べ大きくなり、ロール版13の母材13aの研磨工程において予め除去されるため、本実施形態の修正方法の対象には含まない。
なお、上記欠点の高さ寸法の検出は、賦型層13cの微細凹凸形状の凹部を基準に検出してもよく、また、凸部を基準にしてもよい。
なお、仮に、マスクによる照射範囲より欠点の幅寸法が大きい場合、照射位置をずらして複数回にわたって欠点に対してレーザ光を照射する。
欠点がこの範囲内に削られることによって修正されたロール版13で製造される反射防止物品1は、図12に示すように、紫外線硬化性樹脂層4(微小突起層)の上述のロール版13の欠点修正痕に対応する位置に、微小突起の頂部と同等の高さであり、表面が略平坦となる賦型痕6が形成されることとなる。ここで、この賦型痕6は、その幅寸法が上述の欠点に対応した幅寸法であるので反射防止物品の反射防止機能等にほとんど影響がなく、また、高さ寸法が微小突起と同等である。そのため、修正されたロール版13によって製造された反射防止物品1は、適正な反射防止機能や、外観を有することができる。
また、反射防止物品1は、賦型痕6が形成されることによって、微小突起の頂部が他の部材等と接触し、微小突起の頂部が磨耗したり、破損したりしてしまうのを抑制することができる。
ここで、賦型痕6の高さ寸法が微小突起と同等であるとは、賦型痕6の高さが、微小突起5の高さと完全に等しい場合だけでなく、微小突起5の高さに対して若干高い若しくは低い場合(例えば、微小突起の高さに対して±1μm範囲内の場合)も含むものをいう。また、上述の欠点修正痕及び賦型痕6の表面が略平坦であるとは、欠点修正痕や賦型痕6の表面が、完全に平坦な状態だけでなく、湾曲した状態や、レーザ等の照射により削られた加工の傷痕が形成された状態も含むものをいい、微細な凹凸形状や微小突起が形成された状態は含まない。
なお、上記修正作業の後に、ロール版13の欠点修正痕に、改めて微細な凹凸形状からなる賦型層13cを形成するように更に修正してもよい。
次に、レーザの照射条件に対するロール版13の賦型層13cの欠点の修正結果の評価について説明する。
欠点の修正に使用するレーザ照射装置55は、上述したように、波長が532nm、パルス周期が6nsecのレーザ光を照射するYAGレーザである。レーザ光の照射は、マスクにより照射範囲を限定するスポット照射であり、その照射範囲は、50×50μmに設定される。また、欠点の修正対象となるロール版13は、上述の母材13a、密着層13b、賦型層13cから構成されるものを使用し(図8(d)参照)、レーザ光の照射対象となる欠点の高さ寸法は、約4〜5μmである。
レーザの出力値及びレーザの照射回数に対する、賦型層13cの欠点の修正評価を以下の表1にまとめる。
表1に示すように、照射するレーザ光の出力値が360〜450μJの場合、レーザ光の照射回数に関係なく、欠点の修正評価は×となった。この場合、レーザ光の照射範囲内の欠点が十分に削られていないため、レーザの出力不足が要因と考えられる。
また、照射するレーザ光の出力値が570〜600μJの場合も、レーザ光の照射回数に関係なく、欠点の修正評価は×となった。この場合は、レーザ光の照射範囲の周辺に、レーザ光によって溶融した金属(アルミニウム)が飛散してしまったためであり、レーザの出力が大きすぎることが要因と考えられる。
(1)ロール版13の修正方法は、賦型層13cの表面形状を検出し、ロール版13の表面から凸となる部位の外形寸法に基づいて欠点であるか否かを判定しているので、反射防止物品1の反射防止機能の劣化や、外観不良の要因となる欠点を修正することができる。
(2)ロール版13の修正方法は、ロール版13の表面から凸となる部位の幅寸法が100μm未満であり、かつ、ロール版13の表面から凸となる部位の高さ寸法が隣接する周辺部位に対して3μm以上である場合に、その部位が欠点であると判定する。これにより、凸となる部位の形状に基づいて、反射防止物品1の反射防止機能の劣化や、外観不良の要因となる部位のみを欠点と判定し、より効果的に欠点を修正することができる。
(3)ロール版13の修正方法は、欠点の高さ寸法を、隣接する周辺部位に対して−1μm以上、+1μm以下の寸法に修正するので、修正されたロール版13によって製造された反射防止物品1に、反射防止機能の劣化や、外観不良が生じるのを抑制することができる。
(4)ロール版13の修正方法は、波長が532nmのレーザ光を使用したレーザ加工によって欠点を修正するので、より具体的にロール版13の欠点の修正を実現することができる。
(5)ロール版13は、賦型層13cの少なくとも一部に、その表面から凸となる欠点の部位を略平坦な部位に修正した欠点修正痕が形成されているので、欠点により反射防止機能が劣化したり、外観不良を有したりした反射防止物品が製造されてしまうのを抑制することができる。
(6)反射防止物品1は、修正されたロール版13により製造されるので、その反射防止機能が劣化したり、外観不良が生じたりするのが抑制される。また、この反射防止物品1を画像表示パネルの出向面に備えた画像表示装置は、画像表示パネルの表面で反射する反射光を低減し、視認性を向上させることができる。
また、反射防止物品1は、紫外線硬化性樹脂層4(微小突起層)に賦型痕6が形成されることによって、微小突起の頂部が他の部材等と接触し、微小突起の頂部が磨耗したり、破損したりしてしまうのを抑制することができる。
第2実施形態においては、第1実施形態と同様のロール版13の修正方法により修正されたロール版13によって製造された反射防止物品をショーケースに用いる。
なお、以下の説明において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
このショーケースは、宝石、美術品等の貴重品による展示物を収納して、この展示物の展示に供する直方体状のケースである。このショーケースは、内側に配置した展示物を上方及び周囲より鑑賞することができるように、外周面及び天井面による5つの面が、展示物の展示に供する展示用板材により構成される。また、この実施形態において、この展示用板材は、透明板材であるガラス板の片面又はその両面に、フィルム形状の反射防止物品1が貼り付けられて形成される。ここで、この反射防止物品1は、モスアイ構造による反射防止フィルムであるので、これにより、このショーケースは、照明の映り込み、屋外の風景等の映り込みを充分に防止して、従来に比して格段的に高い臨場感により展示物品を鑑賞することができる。
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更し、さらには従来構成と組み合わせることができる。
また、図示は略すが、図1等に図示の如き本発明の反射防止物品1において、基材2の微小突起群形成面とは反対側の面(図1においては基材2の下側面)に各種接着剤層を形成し、更に該接着剤層表面に離型フィルム(離型紙)を剥離可能に積層してなる接着加工品の形態とすることも出来る。かかる形態においては、離型フィルムを剥離除去して接着剤層を露出せしめ、該接着剤層により所望の物品の所望の表面上に本発明の反射防止物品1を貼り合わせ、積層することが出来、簡便に所望の物品に反射防止性能を付与することが出来る。接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱熔融型接着剤等の公知の接着形態のものが各種使用出来る。
2 基材
4 紫外線硬化性樹脂層、受容層
5、5A、5B 微小突起
6 賦型痕
10 製造工程
12 ダイ
13 ロール版
13a 母材
13b 密着層
13c 賦型層
14、15 ローラ
Claims (7)
- 微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下である反射防止物品の前記微小突起を賦型する賦型用金型の修正方法であって、
前記賦型用金型は、その表面に、前記反射防止物品の表面に前記微小突起を賦型する微細な凹凸形状が形成された賦型部を備え、
当該賦型用金型の修正方法は、
前記賦型部の最表層の表面形状を検出し、その検出内容に基づいて、前記賦型用金型の表面から凸となる部位が欠点に該当するか否かを判定する欠点判定工程と、
前記欠点判定工程によって判定された前記欠点を修正する欠点修正工程とを備え、
前記欠点判定工程は、前記欠点を、前記賦型用金型の表面から凸となる部位の外形寸法に基づいて判定し、
前記賦型用金型の表面から凸となる部位の幅寸法が100μm未満であり、かつ、前記賦型用金型の表面から凸となる部位の高さ寸法が隣接する周辺部位に対して3μm以上である場合に、その部位が欠点であると判定し、
前記欠点修正工程は、前記賦型用金型の最表面への光量480μJ以上540μJ以下による繰り返しのレーザ光の照射によって、前記凸となる部位を削り取ってその表面を前記微小突起が作製されていない略平坦とすることにより、前記欠点を修正すること、
を特徴とする賦型用金型の修正方法。 - 前記欠点修正工程は、前記欠点の高さ寸法を、隣接する周辺部位に対して−1μm以上、+1μm以下の寸法に修正すること、
を特徴とする請求項1に記載の賦型用金型の修正方法。 - 前記レーザ光が、波長が532nmのレーザ光であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の賦型用金型の修正方法。 - 請求項1、請求項2、請求項3の何れかに記載の賦型用金型の修正方法により前記欠点が修正された
賦型用金型。 - 請求項4に記載の賦型用金型により作製された
反射防止物品。 - 請求項5に記載の反射防止物品を画像表示パネルに備える画像表示装置。
- 展示物を収納して、前記展示物の展示に供するショーケースにおいて、
請求項5に記載の反射防止物品が設けられたショーケース。
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