JP5708174B2 - 熱電変換装置及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、温度差を利用して熱を電気に変換する熱電変換装置及びその製造方法に関する。
従来より、熱電変換装置として、BiTe等の半導体材料を利用した、いわゆるペルチェ素子が利用されている。通常、ペルチェ素子は、2枚のセラミック板にBiTe等のP型及びN型半導体が挟持され、各半導体が電気的に直列接続されている。ペルチェ素子に電流を流すと、電流の向きに応じて、P型及びN型半導体の端部にそれぞれ温度差が発生する。これら2種類の半導体では、それぞれ電流の流れる方向と発生する温度差の方向とが逆転している。一定方向に電流を流した際に、高温になるPN接続部と低温になるPN接合部が、ペルチェ素子の表面と裏面に対応するように配置されている。そのため、ペルチェ素子に電流を流すと、表面及び裏面のうち一方の面では高温になり、他方の面では低温となる。
ペルチェ素子では、表面と裏面との間に温度差を付与すると、逆に熱から直接的に発電できる熱電デバイスとして動作することが知られている。これは、半導体材料中に温度差を付与すると、当該温度差に比例した電圧が発生するゼーベック効果によるものであり、このゼーベック効果を利用して熱から電気に直接的に変換する。
特開2006−186255号公報 特開2001−332773号公報
しかしながら、上記のように、硬質のセラミック板を用いた熱電変換装置では、例えば人体等のカーブした形状の場所に装着するには実装上の工夫が必要であり、またサイズが大きく扱い難いという問題がある。そこで近時では、柔軟性に富んだ基材に熱伝導の工夫をし、上下面に付与された温度差を面内の温度差に変換する熱電変換装置が案出されている(特許文献1を参照)。
ところが上記の技術では、熱電変換装置の表面における断熱を要する部位の断熱が不十分であり、熱変換効率の低下及び発電量の低下を招来するという問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、薄型・軽量で柔軟なデバイス構造を得るも、簡素な構成で熱電変換装置の表面における断熱を要する部位の可及的な断熱を達成して、熱電変換効率を向上して発電量の大幅な増加を実現する信頼性の高い熱電変換装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
熱電変換装置の一態様は、熱を電気に変換する熱電変換装置であって、柔軟性の基板と、前記基板の内部に設けられた熱電変換部材と、前記基板の主面に設けられた、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなる突起部とを含み、前記突起部は、前記基板内に一部埋設されると共に前記主面から一部突出しており、前記熱電変換部材の一部と離間して対向し、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙が形成される。
熱電変換装置の一態様は、熱を電気に変換する熱電変換装置であって、柔軟性の基板と、前記基板の主面に設けられており、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなり、表面に突起部が形成された接触板とを含み、前記接触板は、前記突起部が一部残るように前記基板内に埋没させて接合されており、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙が形成されている。
熱電変換装置の製造方法の一態様は、熱を電気に変換する熱電変換装置の製造方法であって、柔軟性の基板の主面に、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなる突起部を設けるに際して、前記突起部を前記基板内に一部埋設させると共に前記主面から一部突出させ、前記基板の内部に配置される熱電変換部材の一部と離間して対向するように配置し、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙を形成する。
熱電変換装置の製造方法の一態様は、熱を電気に変換する熱電変換装置の製造方法であって、柔軟性の基板の主面に、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなり、表面に突起部が形成された接触板を、前記突起部が一部残るように埋没させて接合し、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙を形成する
上記の諸態様によれば、薄型・軽量で柔軟なデバイス構造を得るも、簡素な構成で熱電変換装置の表面における断熱を要する部位の可及的な断熱を達成して、熱電変換効率を向上して発電量を大幅に増加させる信頼性の高い熱電変換装置が実現する。
第1の実施形態による熱電変換装置の概略構成を示す模式図である。 第1の実施形態による熱電変換装置の使用状態を説明するための概略断面図である。 発電量を調べた際に用いた熱電変換装置を示す概略断面図である。 熱電変換装置の発電量を調べた結果を示す特性図である。 第1の実施形態による熱電変換装置において、実験に用いた計算モデルを示す概略断面図である。 応力シミュレーションの結果と撓み量とを比較した特性図である。 グリースの塗布量を変えた様子を示す概略断面図である。 熱電変換装置の出力電圧を示す特性図である。 第1の実施形態による熱電変換装置の製造方法を工程順に説明する模式図である。 図9に引き続き、第1の実施形態による熱電変換装置の製造方法を工程順に説明する模式図である。 図10に引き続き、第1の実施形態による熱電変換装置の製造方法を工程順に説明する模式図である。 図11に引き続き、第1の実施形態による熱電変換装置の製造方法を工程順に説明する模式図である。 第1の実施形態の変形例による熱電変換装置を示す模式図である。 第2の実施形態による熱電変換装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 図14に引き続き、第2の実施形態による熱電変換装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
以下、熱電変換装置及びその製造方法の具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態による熱電変換装置の概略構成を示す模式図であり、(a)が平面図、(b)が(a)の破線I−I'に沿った断面図である。なお、図1(a)では、図面の見易さを考慮して、第2の基板を除いた状態を示している。
(熱電変換装置の構成)
この熱電変換装置は、フィルム状基板1と、フィルム状基板1の内部に設けられた熱電変換部材2と、フィルム状基板1の第1の主面1a及び第2の主面1bに設けられた複数の突起部3a,3bとを備えて構成されている。
フィルム状基板1は、第1の基板1Aと第2の基板1Bとを有して構成されており、柔軟性(フレキシブル性)に富んだ可撓性及び絶縁性の材料からなるものである。当該材料としては、例えば、ポリイミド、カプトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、PET(ポリエチレンテフタレート)、PES(ポリサルフォン)、PEEK(ポリエーテルエチルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイト)等から選択される。本実施形態では、ポリイミドを用いる場合を例示する。当該材料については、熱電変換部材の成膜条件(温度、脱ガス等)に合致するか否か、熱電変換装置の使用条件に合致するか否か、所期のコスト条件に見合うか否か等を基準として選択する。フィルム状基板1では、第1の基板1Aと第2の基板1Bとで異なる材料を用いることもできる。
熱電変換部材2は、第1の基板1Aの裏面上に、導電型の相異なる帯状のP型部材2a及びN型部材2bが複数交互に直列接続されて構成される。P型部材2aとN型部材2bとの間は、接続部2cと接続部2dとで交互に接続されており、P型部材2a及びN型部材2bが第1の基板1Aの裏面上で蛇行配置され、一方の端部に端子2eが、他方の端部に端子2fが設けられている。
P型部材2aは、P型半導体の熱電材料、ここではクロメルからなる。N型部材2bは、N型半導体の熱電材料、ここではコンスタンタンからなる。P型及びN型部材2a,2bの材料としては、クロメル及びコンスタンタン以外に、例えば以下のものが適用可能である。BiTe系としては、BiTe,SbTe,BiSe及びこれらの化合物等が挙げられる。PbTe系としては、PbTe,SnTe,AgSbTe,GeTe及びこれらの化合物等が挙げられる。Si−Ge系としては、Si,Ge,SiGe等が挙げられる。シリサイド系としては、FeSi,MnSi,CrSi等が挙げられる。スクッテルダイト系としては、MX3,RM4X12と記載される化合物等が挙げられる。ここで、MはCo,Rh,Irを表し、XはAs,P,Sbを表し、RはLa,Yb,Ceを表す。遷移金属酸化物系としては、NaCoO,CaCoO,ZnInO,SrTiO,BiSrCoO,PbSrCoO,CaBiCoO,BaBiCoO等が挙げられる。亜鉛アンチモン系としては、ZnSb等が挙げられる。ホウ素化合物としては、CeB,BaB,SrB,CaB,MgB,VB,NiB,CuB,LiB等が挙げられる。クラスタ固体としては、Bクラスタ,Siクラスタ、Cクラスタ,AlRe,AlReSi等が挙げられる。酸化亜鉛系としては、ZnO等が挙げられる。また、カーボンナノチューブ等も適用できる。
接続部2c,2d及び端子2e,2fは、熱伝導性の高い導電材料、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)又はこれらの合金等、ここではCuからなる。
第1の基板1Aの裏面上に、熱電変換部材2を挟持するように第2の基板1Bの裏面が接合される。これにより、内部に熱電変換部材2を有する構成にフィルム状基板1が形成される。
突起部3aは、接続部2cの下方に位置整合する箇所に、一部が第1の主面1aから外方に突出するように設けられている。左端部位の突起部3aは、形状の異なる接続部2c及び端子2eの下方に位置整合する箇所に、一部が第1の主面1aから突出するように設けられている。右端部位の突起部3aは、形状の異なる接続部2c及び端子2fの下方に位置整合する箇所に、一部が第1の主面1aから突出するように設けられている。突起部3aの当該突出部分を3a1とする。突出部分3a1により、隣り合う突起部3a間の第1の主面1aの領域には空隙10aが形成される。突起部3aは、平面視では、一列の接続部2c上でこれらを包含するように、例えば図1(a)の破線枠で示す矩形状に形成される。
突起部3bは、接続部2dの上方に位置整合する箇所に、一部が第2の主面1bから外方に突出するように設けられている。突起部3bの当該突出部分を3b1とする。突出部分3b1により、隣り合う突起部3b間の第2の主面1bの領域には空隙10bが形成される。突起部3bは、平面視では、一列の接続部2d上でこれらを包含するように、例えば図1(a)の破線枠で示す矩形状に形成される。
突起部3a,3bは、フィルム状基板1の材料よりも熱伝導性の高い材料、例えばCu、Ag、Al又はこれらの合金等、ここではCuからなる。これらの金属又は合金以外にも、例えば高熱伝導性の樹脂材料を用いることもできる。また、銀ペースト及び銅ペースト等は接着剤として用いられる材料であるが、熱伝導率が高く扱いが容易であるため、突起部3a,3bの材料として用いることが可能である。
本実施形態による熱電変換装置では、図2のように、フィルム状基板1の第1の主面1a側における突起部3aの先端面が高温源11と接触し、第2の主面1b側における突起部3bの先端面が高温源11よりも低温の低温源12と接触する。勿論、突起部3aの先端面に低温源が、突起部3bの先端面に高温源がそれぞれ接触するようにしても良い。
フィルム状基板1の材料、ここではポリイミドの熱伝導率は極めて低いのに対して、突起部3a,3bの材料、ここではCuの熱伝導率は極めて高い。熱電変換装置の第1の主面1aと第2の主面1bとの間に高温源11と低温源12とにより温度差が与えられた場合を考察する。
突起部3aは接続部2c及び端子2e,2fと位置整合して、突起部3bは接続部2dと位置整合して、それぞれ配されている。隣り合う突起部3a間の第1の主面1aの領域には空隙10aが、隣り合う突起部3b間の第2の主面1bの領域には空隙10bがそれぞれ形成されている。フィルム状基板1の第1の主面1a側では、突起部3aの先端面に高温源11が接触し、隣り合う突起部3a間では高温源11はフィルム状基板1と非接触で空隙10aが維持される。空隙10aでは略完全な断熱状態とされているため、高温源11の熱は、空隙10aにおけるフィルム状基板1には伝達することなく、突起部3aのみから接続部2cに伝達される。同様に、フィルム状基板1の第2の主面1b側では、突起部3bの先端面に低温源12が接触し、隣り合う突起部3b間では低温源12はフィルム状基板1と非接触で空隙10bが維持される。空隙10bでは略完全な断熱状態とされているため、低温源12の熱は、空隙10bにおけるフィルム状基板1には伝達することなく、突起部3bのみから接続部2dに伝達される。
熱電変換部材2では、P型及びN型部材2a,2bの一端には極めて高い効率で高温源11の熱が伝達され、他端には極めて高い効率で低温源12の熱が伝達される。これにより、P型及びN型部材2a,2bが交互に直列接続されてなる熱電変換部材2では、例えば図1(a)のように温度差が生じ、ゼーベック効果により発電する。その電流は、直列接続されたP型及びN型部材2a,2bを通じて端子2e,2fから取り出される。このように、本実施形態による熱電変換装置では、極めて高い熱伝導効率を実現して発電量を大幅に増加させることができる。
(熱電変換装置に関する実験)
以下、上記のように構成された本実施形態による熱電変換装置に関して行った各種の実験結果について説明する。
[実験1]
本実施形態による熱電変換装置の発電量について、比較例との比較に基づいて調べた実験結果について説明する。
図3は、発電量を調べた際に用いた熱電変換装置を示す概略断面図であり、比較例を(a)に、第1の実施形態で適正圧力による場合を(b)に、第1の実施形態で過大な圧力による場合を(c)に、それぞれ示す。各図において、一例として、高温源11は100℃、低温源12は0℃とされている。
図4は、熱電変換装置の発電量を調べた結果を示す特性図であり、比較例の結果を(a)に、第1の実施形態で適正な圧力による結果を(b)に、第1の実施形態で過大な圧力による結果を(c)に、それぞれ示す。
図3(a)では、比較例の熱電変換装置を示している。突起部3a,3bがフィルム状基板1内に埋設されており、突起部3a,3bの先端面と第1及び第2の主面1a,1bとが同一面とされている。そのため、高温源11は突起部3aを含む第1の主面1aと、低温源12は突起部3bを含む第2の主面1bと、それぞれ接触する。その他の構成については、図1に示した本実施形態による熱電変換装置と同様である。
図3(b)では、本実施形態による熱電変換装置の適正な使用状況を示している。高温源11又は低温源12から通常想定される適正な圧力が印加された場合には、高温源11は突起部3aのみと、低温源12は突起部3bのみと接触し、空隙10a,10bが維持される。
図3(c)では、本実施形態による熱電変換装置の不適正な使用状況を示している。高温源11又は低温源12から通常想定外の過大な圧力、例えば1MPa程度以上の圧力が印加された場合には、フィルム状基板1が変形して空隙10a,10bが維持できなくなり、第1、第2の主面1a,1bで高温源11、低温源12と接触する箇所が生じる。なお、このように変形する圧力は後述するように、フィルムの形状等によって変化する。
図4に示すように、図3(a)の比較例では、高温源11は突起部3a及びフィルム状基板1と、低温源12は突起部3b及びフィルム状基板1と、それぞれ接触する。この場合、突起部3a,3bのみならずフィルム状基板1も、高温源11及び低温源12からの熱伝導に寄与する。そのため、熱電変換部材2に生じる温度差は約58℃となり、得られる電力は少ない。
これに対して、図3(b)の本実施形態では、高温源11は突起部3aのみと、低温源12は突起部3bのみとそれぞれ接触し、空隙10a,10bは維持されて断熱状態に保たれている。そのため、熱電変換部材2には低温源12と高温源11との温度差がほぼそのまま伝達し、熱電変換部材2に生じる温度差は略100℃となり、理想的な熱伝導効率が実現する。これにより、得られる電力は多く、比較例の2倍に近い高値となる。
一方、図3(c)の本実施形態では、例えば高温源11からの過大な圧力により、第1及び第2の主面1a,1bで高温源11及び低温源12と接触する箇所が生じる。この場合には、熱伝導効率が低下して得られる電力は少ない。しかしながら、本実施形態による熱電変換装置の通常想定される圧力範囲内であれば、空隙10a,10bは十分維持されることから、図3(b)のように良好な結果が得られるものと考えられる。
[実験2]
本実施形態による熱電変換装置において、図3(b)のような良好な状態を保持するための、突起部3a,3bの突出量について、比較例との比較に基づいて調べた実験結果について説明する。この実験は、数値計算を用いた応力シミュレーションによるものである。
実験に用いた計算モデルを図5に示す。図5では、熱電変換部材の図示は省略する。熱電変換装置の幅及び長さは、その膜厚(例えば100μm程度)に比べて大きい。そこで、2次元モデルを用いた。熱電変換部材、突起部等としては、同じサイズのパターンが並列するため、パターンの1周期のみを抽出した周期境界条件を用いて数値計算した。
応力シミュレーションの計算モデルでは、突起部3a,3bの突出量をvとする。隣り合う突起部間におけるフィルム状基板1の撓み量をd、突起部の幅(縦幅)をL1、平面視において隣り合う突起部3aと突起部3bとの間の隙間をL2、フィルム状基板の厚みをh、熱電変換装置の等価縦弾性率をE、突起部の先端面に加わる圧力をPとする。
フィルム状基板1の中には、熱電変換部材2、第1の基板1Aと第2の基板1Bとを接着させる接着部材等が含まれている。そのため、熱電変換装置の等価縦弾性率については、これらの様々な材料を組み合わせた等価的な縦弾性率を用いることを意味している。現実的には熱電変換部材の厚みは数μmであり、フィルム状基板で占める体積比率は極小さい。また、接着部材の厚みは高々数10μm以下であって、しかも通常は先に挙げたような低熱伝導性でフレキシブルなフィルム状基板は、接着部材と類似する有機材料が用いられる場合が多い。そのため、等価縦弾性率が正確に把握できないような場合には、フィルム状基板として用いている材料の弾性率を近似的に用いても殆ど問題とならない。
数値計算においては、突起部3a,3bの材料には銅を、フィルム状基板1の材料にはポリイミドをそれぞれ仮定し、等価的な縦弾性率Eは3.5GPaの値を用いた。このような条件で圧力Pを印加すると、先ず外側に突出した突起部が内側に押される。突起部は、Cu,Alを主成分とする金属等の高熱伝導性の材料を用いて形成される。このような材料は、フィルム状基板の低熱伝導性の材料と比べて弾性率が大きい。そのため、内側に押された突起部は殆ど変形せず、弾性率が小さなフィルム状基板が変形して圧力に対応することになる。この場合、先端面から押圧された突起部及びその下にあるフィルム状基板が下方に移動して撓む。圧力が徐々に大きくなるにつれて撓み量が増加し、フィルム状基板の一部が熱源に接触することになる。
従って、所定の圧力が印加された時に生じる撓み量を把握することができれば、突出量が当該撓み量よりも大きくなるように、予め突起部を設計・形成しておけば良いことになる。撓み量の算出としては、ここで用いるような応力シミュレーションを利用して厳密に算出しても良いが、時間・工数を要するために必ずしも実用的とは言えない。そこで、撓み量を必要な精度で簡便に算出できる手法があれば非常に便宜に資する。本実施形態では、この撓み量dを、以下の近似式で表すことができることを見出した。
d=PL12 3/(2Eh3) (1)
この(1)式は、例えば両端が固定保持された梁の中央部に荷重が加わった場合のたわみ量の公式(文献:機械工学便覧 基礎編 A4 材料力学 日本機械学会編)に基づいて導出される近似式である。
図6は、応力シミュレーションの結果と(1)式による撓み量とを比較した特性図である。突起部の幅L1を(a)1000μm、(b)500μm、(c)250μmとした各場合において、フィルム状基板の厚みhを40μm〜240μmとしたときに、隙間L2を200μm〜1200μmとしたときの撓み量dの変化を示している。図6の各プロットは数値シミュレーションによる撓み量を表しており、曲線は(1)式による近似値である。図3(a)〜(c)によれば、撓み量が概ね5μm以下のごく小さい範囲では応力シミュレーションの結果と近似式とで誤差があるものの、 撓み量が20μm以上の実用的な範囲では、数多くのパラメータに対して近似式は応力シミュレーションの傾向を良く再現していることが判る。数式(1)では、撓み量dを熱電変換装置の各種寸法、材料定数から容易に算出することができるため、多くの工数を要する応力シミュレーションよりも実用的で利用価値が高い。従って、現実的な設計において数式(1)を利用することにより、工数を大きく削減することができ、製造コストの低減にもつながる。
以上により、図3(b)のような良好な状態を保持するためには、第1及び第2の主面1a,1bからの突出量vが、以下の(2)式のように、撓み量d以上となるように、突起部3a,3bを形成すれば良いことが判る。
v≧d=PL12 3/(2Eh3) (2)
上記のように突出量vを規定した突起部3a,3bを設けることにより、極めて高い熱伝導効率を実現して発電量を大幅に増加させる熱電変換装置を確実に得ることができる。
[実験3]
本実施形態による特定の構成とされた熱電変換装置において、熱電変換装置と熱源との間に付与するグリースの量を変え、実質的に撓み量に見立てて出力電圧を調べた実験結果について説明する。
実験2の応力シミュレーションにおける図5と同様の熱電変換装置を用い、突起部の幅L1=1mm、隙間L2=1mm、フィルム状基板の厚みh=96μm、等価縦弾性率E=3.5GPaである。熱源の温度としては、低温源が0℃、高温源が100℃とされている。突起部の突出量vを30μmとし、圧力P=30kg重を加えた。
この場合、数式(1)から算出される撓み量dは19μmである。突出量vは当該撓み量dよりも大きいため、フィルム状基板は変形するものの、空隙の底面が熱源と接触することはなく、熱電変換装置の良好な状態が保持される。
熱電変換装置では、熱源と熱的に密接な接触を保つため、突起部の先端面に薄くグリースを塗布する。図7は、実験3においてグリースの塗布量を変えた様子を示す概略断面図である。図7では、熱電変換部材の図示は省略する。(a)が突起部の先端面のみにグリースを塗布した場合を、(b)が突起部の先端面からグリースが若干はみ出して空隙の底面と接触が見られる場合を、(c)が空隙をグリースで埋め込むように全面塗布した場合を、それぞれ示す。
図7(a)の場合では、グリースが少量であることから、圧力が印加されてもグリースが突起部からはみ出ることはない。そのため、好適な条件が成り立ち、フィルム状基板は熱源に接触することなく、空隙が保持される。このときの出力電圧は、図8に示すように9mV程度と認められる。
図7(b)の場合では、グリースが若干多く一部で空隙の底面と接触することから、(a)の場合と比較して熱伝導効率が低下する。このときの出力電圧は7.8mV程度となり、(a)の場合よりも低い。
図7(c)の場合では、空隙がグリースで充填されてフィルム状基板と完全に接触し、ィルム状基板がグリースを介して熱源と熱的に接触した状態となっている。このときの出力電圧は6mV程度まで低下している。
グリースの量が少ない図7(a)の状態で、撓み量dが式(1)で算出される値と大きく異なってフィルム状基板が熱源と接触している場合には、図8のような傾向は見られない。以上より、式(1),(2)が高い熱伝導効率を得るための目安として成立していることが判る。
(熱電変換装置の製造方法)
以下、本実施形態による熱電変換装置の製造方法について説明する。
図9〜図13は、第1の実施形態による熱電変換装置の製造方法を工程順に説明する模式図である。図9の各図は断面図であり、図10〜図13において、(a)が平面図、(b)が(a)の破線I−I'に沿った断面図である。
先ず、図9(a)に示すように、ポリイミド基材21を用意する。ポリイミド基材21の表面(第1の主面)には60μm程度の厚みに銅箔22が設けられている。
続いて、図9(b)に示すように、突起部3aを形成する。
詳細には、銅箔22をリソグラフィー及びドライエッチングにより加工し、複数の突起部3aを形成する。突起部3aは、横幅1mm程度、縦幅1μm程度の大きさに形成される。
続いて、図9(c)に示すように、ポリイミド膜23を形成する。
詳細には、突起部3aを一部埋め込むように、ポリイミド基材21上の突起部3a間の部位に熱硬化性の液状のポリイミドを滴下し、熱処理してポリイミド膜23を形成する。ポリイミド膜23は、その表面から突起部3aの一部が所期量だけ突出するように、例えば25μm程度の厚みに形成する。これにより、ポリイミド基材21及びポリイミド膜23から第1の基板1Aが構成される。突起部3aは、25μm程度が第1の基板1A内に埋め込まれ、第1の基板1Aの表面から35μm程度だけ突出する状態となる。突起部3aの突出部分3a1により、隣り合う突起部3aの第1の主面1aの領域には空隙10aが形成される。
フィルム状基板の第2の基板1Bについても同様に、図9(a)〜図9(c)の諸工程により形成される。突起部3bは、25μm程度が第2の基板1B内に埋め込まれ、35μm程度第2の基板1Bの表面から突出する状態となる。突起部3bの突出部分3b1により、隣り合う突起部3bの第2の主面1bの領域には空隙10bが形成される。
続いて、図10に示すように、第1の基板1Aの裏面上に複数のP型部材2aを形成する。
詳細には、開口24aを有するメタルマスク24を、第1の基板1Aの裏面の上方に配置する。スパッタ法により、メタルマスク24の上方からP型半導体材料であるクロメルを堆積する。第1の基板1Aの裏面上で、メタルマスク24の開口24aに位置整合する部位にクロメルが堆積し、熱電変換部材のP型部材2aが形成される。
続いて、図11に示すように、第1の基板1Aの裏面上に複数のN型部材2bを形成する。
詳細には、開口25aを有するメタルマスク25を、第1の基板1Aの裏面の上方に配置する。スパッタ法により、メタルマスク24の上方からN型半導体材料であるコンスタンタンを堆積する。第1の基板1Aの裏面上で、メタルマスク25の開口25aに位置整合する部位にコンスタンタンが堆積し、熱電変換部材のN型部材2bが形成される。
続いて、図12に示すように、接続部2c,2d、端子2e,2fを形成する。
詳細には、第1の基板1Aの裏面の上方で、隣接するP型部材2aとN型部材2bの間の部位に位置整合した開口26aを有するメタルマスク26を、第1の基板1Aの裏面の上方に配置する。スパッタ法により、メタルマスク26の上方からCuを0.3μm程度の厚みに堆積する。隣接するP型部材2aとN型部材2bの間にCuが堆積し、両者を電気的に接続する接続部2c,2dが形成される。P型部材2aとN型部材2bとの間は、接続部2cと接続部2dとで交互に接続される。P型部材2a及びN型部材2bは、接続部2c,2dで接続されて第1の基板1Aの裏面上で蛇行配置され、各端部には端子2e,2fが設けられて、熱電変換部材2が形成される。ここで、接続部2c、端子2e,2fの下方に突起部3aが位置する。
続いて、図1と同様に、第1の基板1Aの裏面上に第2の基板1Bを接合する。
詳細には、第1の基板1Aの裏面上に、熱電変換部材2を挟持するように第2の基板1Bの裏面を、粘着性接着剤又は両面テープを用いて接合する。これにより、内部に熱電変換部材2を有する構成にフィルム状基板1が形成される。ここで、接続部2dの上方に突起部3bが位置する。
以上により、本実施形態による熱電変換装置が形成される。
この熱電変換装置では、図1(b)のように、隣り合う突起部3a間の領域における中央部位の上方に、接続部2dが位置する。そのため、平面視において、突起部3bの一端と左側で隣接する突起部3aの一端との間と、突起部3bの他端と右側で隣接する突起部3aの一端との間との間には、同じ距離の隙間が形成される。隙間の距離は、突起部の幅と熱電変換部材2のパターンとで決定される値であり、例えば0.4mm〜1.2mm程度が考えられる。ここでは、隙間の距離は1.2mmとされる。
以上説明したように、本実施形態によれば、薄型・軽量で柔軟なデバイス構造を得るも、簡素な構成で熱電変換装置の表面における断熱を要する部位の可及的な断熱を達成して、熱電変換効率を向上して発電量を大幅に増加させる信頼性の高い熱電変換装置が実現する。
−変形例−
以下、第1の実施形態の変形例について説明する。本例では、第1の実施形態と同様に熱電変換装置を開示するが、熱源が直接的に接触する接触板が付加されている点で相違する。
図13は、第1の実施形態の変形例による熱電変換装置を示す概略断面図であり、第1の実施形態の図1に対応している。
この熱電変換装置では、図1の構成に加えて、突起部3aの先端面と熱的に接触する接触板4aと、突起部3bの先端面と熱的に接触する接触板4bとを備える。低温源が接触板4aと、高温源が接触板4bとそれぞれ直接的に接触することになる。なお本例では、フィルム状基板1の第1の主面1a側及び第2の主面1b側の双方に接触板を設ける場合を例示するが、いずれか一方の主面側のみに接触板を設けることも考えられる。
接触板4a,4bは、フィルム状基板1の材料よりも熱伝導性の高い材料、例えばCu、Ag、Al又はこれらの合金等、ここでは例えば厚み50μmのAlからなるものである。Al板は柔軟性があるが、接触板としては必ずしも柔軟性を有しなくても良い。接触板4a,4bの突起部3a,3bとの接着には、両面テープ、エポキシ系の接着剤、又は銀ペースト等を薄く塗布した接着層が用いられる。
フィルム状基板1の熱伝導率は極めて低いのに対して、突起部3a,3bの熱伝導率、接触板4a,4bの熱伝導率は極めて高い。図13(a)に示すように、熱電変換装置の接触板4aと接触板4bとの間に高温源11と低温源12とにより温度差が与えられた場合を考察する。
突起部3aは接続部2cと位置整合して、突起部3bは接続部2dと位置整合して、それぞれ配されている。接触板4a,4bにより、隣り合う突起部3a間の第1の主面1aの領域の空隙10aと、隣り合う突起部3b間の第2の主面1bの領域の空隙10bとは、共に閉鎖空間となる。接触板4aに高温源が接触した場合、接触板4aの存在により高温源はフィルム状基板1に接触することなく空隙10aは維持される。空隙10aでは略完全な断熱状態とされているため、高温源の熱は、空隙10aにおけるフィルム状基板1には伝達することなく、突起部3aのみから接続部2cに伝達される。同様に、接触板4bに低温源が接触した場合、接触板4bの存在により低温源はフィルム状基板1と接触することなく空隙10bは維持される。空隙10bでは略完全な断熱状態とされているため、低温源の熱は、空隙10bにおけるフィルム状基板1には伝達することなく、突起部3bのみから接続部2dに伝達される。
ここで、本例の熱電変換装置は、第1の実施形態と同様に、(2)式で規定される通常の範囲内の使用態様であれば、図13(b)のようにフィルム状基板1が接触板4a,4bに接触することなく、図13(a)の良好な状態が保たれる。
熱電変換部材2では、P型及びN型部材2a,2bの一端には極めて高い効率で高温源11の熱が伝達され、他端には極めて高い効率で低温源12の熱が伝達される。これにより、P型及びN型部材2a,2bが交互に直列接続されてなる熱電変換部材2では、例えば図1(a)のように温度差が生じ、ゼーベック効果により発電する。その電流は、直列接続されたP型及びN型部材2a,2bを通じて端子2e,2fから取り出される。このように、本例の熱電変換装置では、極めて高い熱伝導効率を実現して発電量を大幅に増加させることができる。
本例では、接触板4a,4bが、その凹凸のない平坦面で熱源と接触する構成を採る。空隙10a,10bは接触板4a,4bにより熱源と隔てられるため、空隙10a,10b内に熱源の一部が入り込んでフィルム状基板1と接触する懸念はない。また、熱源との熱接触を保つグリースの量に砕心する必要がなく、空隙10a,10bはグリースの量によらず保たれるため、取り扱いが容易である。
熱源は、熱伝導性に優れた接触板4a,4bと一様に面接触する。そのため、例えば熱源に温度分布による温度ムラが存在する場合でも、接触板4a,4bが温度むらを吸収し、熱電変換部材2に対して全体的に均一な温度伝達がなされる。これにより、熱電変換部材2の面内で発電ムラのない均一な発電電力を得ることができる。接触板4a,4bでは、熱源との接触面積が大きいため、より多くの熱流を取り込むことができるという利点があり、更に効率の良い熱電変換が実現する。
以上説明したように、本例によれば、薄型・軽量で柔軟なデバイス構造を得るも、簡素な構成で熱電変換装置の表面における断熱を要する部位の可及的な断熱を達成して、熱電変換効率を向上して発電量を大幅に増加させる信頼性の高い熱電変換装置が実現する。
−第2の実施形態−
本実施形態では、第1の実施形態と同様に熱電変換装置を開示するが、突起部が接触板と一体形成されている点で、第1の実施形態の変形例と相違する。本実施形態では、熱電変換装置の構成をその製造方法と共に説明する。
図14及び図15は、第2の実施形態による熱電変換装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
先ず、図14(a)に示すように、第1の基板1Aの裏面上に熱電変換部材2を形成する。
詳細には、第1の実施形態の図10〜図12と同様の諸工程を、突起部を形成しない第1の基板1Aに対して実行する。これにより、第1の基板1Aの裏面上に熱電変換部材2が形成される。
続いて、図14(b)に示すように、第1の基板1Aの裏面上に第2の基板1Bを接合する。
詳細には、第1の基板1Aの裏面上に、熱電変換部材2を挟持するように、突起部を形成しない第2の基板1Bの裏面を、粘着性接着剤又は両面テープを用いて接合する。これにより、内部に熱電変換部材2を有する構成にフィルム状基板1が形成される。
続いて、図15(a)に示すように、突起部が一体形成された接触板5A,5Bをフィルム状基板1に対して配置する。
詳細には、片面に突起部5aが一体形成された接触板5Aと、片面に突起部5bが一体形成された接触板5Bとを用意する。接触板5A,5Bは、フィルム状基板1の材料よりも熱伝導性の高い材料、例えばCu、Ag、Al又はこれらの合金等、ここではCuからなるものである。突起部5a,5bは、先端面に複数の針状突起6が櫛歯状に形成されている。針状突起6は、例えば25μm程度の高さに形成される。なお、突起部を接触板と異なる高熱伝導性材料で形成して接触板と接合し、一体形成するようにしても良い。
接触板5Aを突起部5aがフィルム状基板1と対向するように第1の主面1a側に、接触板5Bを突起部5bがフィルム状基板1と対向するように第2の主面1b側に、それぞれ配置する。ここで、突起部5aを接続部2c、端子2e,2fの下方に、突起部5bを接続部2dの上方に、それぞれ位置整合させる。
続いて、図15(b)に示すように、フィルム状基板1に接触板5A,5Bを接合する。
詳細には、フィルム状基板1の第1の主面1aに接触板5Aを、第2の主面1bに接触板5Bを、突起部5a,5bが一部残るように、それぞれ突起部5a,5bの針状突起6をフィルム状基板1に突き刺して埋没させる。これにより、フィルム状基板1に接触板5A,5Bが接合される。接触板5A,5Bの接合を強固に保つべく、針状突起6に予め接着剤等を塗布してフィルム状基板1に突き刺すようにしても良い。
第1の主面1a側では、フィルム状基板1内に突起部5aの針状突起6の部分のみが埋没しており、隣り合う突起部5a間では接触板5Aにより閉鎖された空隙10aが形成される。第2の主面1b側では、フィルム状基板1内に突起部5bの針状突起6の部分のみが埋没しており、隣り合う突起部5b間では接触板5Bにより閉鎖された空隙10bが形成される。空隙10a,10bのサイズは、接触板5A,5Bを接合する際に、空隙10a,10bにおける第1及び第2の主面1a,2bと突起部5a,5bとの離間距離を規定することにより、容易に調節することができる。
フィルム状基板1の熱伝導率は極めて低いのに対して、接触板5A,5Bの熱伝導率は極めて高い。熱電変換装置の第1の主面1aと第2の主面1bとの間に温度差が与えられた場合を考察する。
接触板5Aの突起部5aは接続部2cと位置整合して、接触板5Bの突起部5bは接続部2dと位置整合して、それぞれ配されている。接触板5A,5Bにより、隣り合う突起部5a間の第1の主面1aの領域の空隙10aと、隣り合う突起部5b間の第2の主面1bの領域の空隙10bとは、共に閉鎖空間となる。接触板5Aに高温源が接触した場合、接触板5Aの存在により高温源はフィルム状基板1に接触することなく空隙10aは維持される。空隙10aでは略完全な断熱状態とされているため、高温源の熱は、空隙10aにおけるフィルム状基板1には伝達することなく、突起部5aのみから接続部2cに伝達される。同様に、接触板5Bに低温源が接触した場合、接触板5Bの存在により低温源はフィルム状基板1と接触することなく空隙10bは維持される。空隙10bでは略完全な断熱状態とされているため、低温源の熱は、空隙10bにおけるフィルム状基板1には伝達することなく、突起部5bのみから接続部2dに伝達される。
ここで、本実施形態による熱電変換装置は、第1の実施形態と同様に、(2)式で規定される通常の範囲内の使用態様であれば、フィルム状基板1が接触板5A,5Bに接触することなく良好な状態が保たれる。
熱電変換部材2では、P型及びN型部材2a,2bの一端には極めて高い効率で高温源11の熱が伝達され、他端には極めて高い効率で低温源12の熱が伝達される。これにより、P型及びN型部材2a,2bが交互に直列接続されてなる熱電変換部材2では、例えば図1(a)のように温度差が生じ、ゼーベック効果により発電する。その電流は、直列接続されたP型及びN型部材2a,2bを通じて端子2e,2fから取り出される。このように、本実施形態による熱電変換装置では、極めて高い熱伝導効率を実現して発電量を大幅に増加させることができる。
本実施形態では、接触板5A,5Bが、その凹凸のない平坦面で熱源と接触する構成を採る。空隙10a,10bは接触板5A,5Bにより熱源と隔てられるため、空隙10a,10b内に熱源の一部が入り込んでフィルム状基板1と接触する懸念はない。また、熱源との熱接触を保つグリースの量に砕心する必要がなく、空隙10a,10bはグリースの量によらず保たれるため、取り扱いが容易である。
熱源は、熱伝導性に優れた接触板5A,5Bと一様に面接触する。そのため、例えば熱源に温度分布による温度ムラが存在する場合でも、接触板5A,5Bが温度むらを吸収し、熱電変換部材2に対して全体的に均一な温度伝達がなされる。これにより、熱電変換部材2の面内で発電ムラのない均一な発電電力を得ることができる。接触板5A,5Bでは、熱源との接触面積が大きいため、より多くの熱流を取り込むことができるという利点があり、更に効率の良い熱電変換が実現する。
更に本実施形態では、突起部5a,5bが一体形成された接触板5A,5Bをフィルム状基板1に接合する構成を採る。そのため、製造が容易であり、フィルム状基板に予め突起部を形成しておく工程が不用となって製造工程が削減されて製造コストが低減する。
以上説明したように、本実施形態によれば、薄型・軽量で柔軟なデバイス構造を得るも、簡素な構成で熱電変換装置の表面における断熱を要する部位の可及的な断熱を達成して、熱電変換効率を向上して発電量を大幅に増加させる信頼性の高い熱電変換装置が実現する。
なお、第1の実施形態の変形例と第2の実施形態とを併用するようにしても良い。即ちこの場合、フィルム状基板の一方の主面には、第1の実施形態の変形例の手法により突起部を一部埋め込み形成し、他方の一方の主面には、第2の実施形態の手法により突起部が一体形成された接触板を接合する。
第1及び第2の実施形態、変形例では、突起部の一部をフィルム状基板の主面から一部突出するように配置し、隣り合う突起部間に断熱状態を実現する空隙を形成する場合を説明したが、他の構成も考えられる。例えば、隣り合う突起部間の空隙に、フィルム状基板よりも熱伝導率が低く断熱状態を実現できる材料を充填するようにしても良い。当該材料としては、例えば発泡スチロール等の適用が考えられる。
以下、熱電変換装置及びその製造方法の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)熱を電気に変換する熱電変換装置であって、
柔軟性の基板と、
前記基板の主面に設けられた、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなる突起部と
を含み、
前記突起部は、前記主面から一部突出しており、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙が形成されることを特徴とする熱電変換装置。
(付記2)前記基板の前記主面に設けられた、前記突起部の突出部位と熱的に接触する接触板を更に含むことを特徴とする付記1に記載の熱電変換装置。
(付記3)前記基板の前記主面に設けられた、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなり表面に前記突起部が形成された接触板を更に含み、
前記接触板は、前記突起部が一部残るように前記基板内に埋没させて接合されており、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に前記空隙が形成されていることを特徴とする付記1に記載の熱電変換装置。
(付記4)前記突起部の先端面に複数の針状突起が櫛歯状に形成されていることを特徴とする付記3に記載の熱電変換装置。
(付記5)前記突起部は、前記主面からの突出量vが、
v≧d=PL12 3/(2Eh3
により規定されていることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換装置。
但し、隣り合う前記突起部間における前記基板の撓み量をd、前記突起部の幅をL1、平面視において隣り合う前記突起部間の隙間をL2、前記基板の厚みをh、当該熱電変換装置の等価縦弾性率をE、前記突起部の上面に加わる圧力をPとする。
(付記6)前記基板は、内部に熱電変換部材を有することを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の熱電変換装置。
(付記7)前記熱電変換部材は、導電型の相異なる第1の部材及び第2の部材が交互に直列接続されてなることを特徴とする付記6に記載の熱電変換装置。
(付記8)前記突起部は、前記基板の第1の主面及び第2の主面の双方に設けられており、
前記熱電変換部材は、前記第1の部材と前記第2の部材との間が、第1の接続部と第2の接続部とで交互に接続されており、
前記第1の接続部に位置整合して前記第1の主面側の前記突起部が、前記第2の接続部に位置整合して前記第2の主面側の前記突起部がそれぞれ配置されることを特徴とする付記7に記載の熱電変換装置。
(付記9)熱を電気に変換する熱電変換装置の製造方法であって、
柔軟性の基板の主面に、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなる突起部を設けるに際して、前記突起部を前記主面から一部突出させ、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙を形成することを特徴とする熱電変換装置の製造方法。
(付記10)前記基板の前記主面に、前記突起部の突出部位と熱的に接触する接触板を設けることを特徴とする付記9に記載の熱電変換装置の製造方法。
(付記11)前記基板の前記主面に、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなり表面に前記突起部が形成された接触板を、前記突起部が一部残るように埋没させて接合し、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に前記空隙を形成することを特徴とする付記9に記載の熱電変換装置の製造方法。
(付記12)前記突起部の先端面に複数の針状突起が櫛歯状に形成されていることを特徴とする付記11に記載の熱電変換装置の製造方法。
(付記13)前記突起部は、前記主面からの突出量vが、
v≧d=PL12 3/(2Eh3
により規定されていることを特徴とする付記9又は10に記載の熱電変換装置の製造方法。
但し、隣り合う前記突起部間における前記基板の撓み量をd、前記突起部の幅をL1、平面視において隣り合う前記突起部間の隙間をL2、前記基板の厚みをh、当該熱電変換装置の等価縦弾性率をE、前記突起部の上面に加わる圧力をPとする。
(付記14)前記基板は、内部に熱電変換部材を有することを特徴とする付記9〜13のいずれか1項に記載の熱電変換装置の製造方法。
(付記15)前記熱電変換部材は、導電型の相異なる第1の部材及び第2の部材が交互に直列接続されてなることを特徴とする付記14に記載の熱電変換装置の製造方法。
(付記16)前記突起部は、前記基板の第1の主面及び第2の主面の双方に設けられており、
前記熱電変換部材は、前記第1の部材と前記第2の部材との間が、第1の接続部と第2の接続部とで交互に接続されており、
前記第1の接続部に位置整合するように前記第1の主面側の前記突起部を、前記第2の接続部に位置整合するように前記第2の主面側の前記突起部をそれぞれ配置することを特徴とする付記15に記載の熱電変換装置の製造方法。
1 フィルム状基板
1a 第1の主面
1b 第2の主面
1A 第1の基板
1B 第2の基板
2 熱電変換部材
2a P型部材
2b N型部材
2c,2d 接続部
2e,2f 端子
3a,3b,5a,5b 突起部
3a1,3b1 突出部分
4a,4b,5A,5B 接触板
6 針状突起
10a,10b 空隙
11 高温源
12 低温源
21 ポリイミド基材
22 銅箔
23 ポリイミド膜
24,25,26 メタルマスク
24a,25a,26a 開口

Claims (6)

  1. 熱を電気に変換する熱電変換装置であって、
    柔軟性の基板と、
    前記基板の内部に設けられた熱電変換部材と、
    前記基板の主面に設けられた、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなる突起部と
    を含み、
    前記突起部は、前記基板内に一部埋設されると共に前記主面から一部突出しており、前記熱電変換部材の一部と離間して対向し、
    隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙が形成されることを特徴とする熱電変換装置。
  2. 前記基板の前記主面に設けられた、前記突起部の突出部位と熱的に接触する接触板を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換装置。
  3. 熱を電気に変換する熱電変換装置であって、
    柔軟性の基板と、
    前記基板の主面に設けられており、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなり表面に突起部が形成された接触板と
    を含み、
    前記接触板は、前記突起部が一部残るように前記基板内に埋没させて接合されており、隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙が形成されていることを特徴とする熱電変換装置。
  4. 前記突起部は、前記主面からの突出量vが、
    v≧d=PL12 3/(2Eh3
    により規定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換装置。
    但し、隣り合う前記突起部間における前記基板の撓み量をd、前記突起部の幅をL1、平面視において隣り合う前記突起部間の隙間をL2、前記基板の厚みをh、当該熱電変換装置の等価縦弾性率をE、前記突起部の上面に加わる圧力をPとする。
  5. 熱を電気に変換する熱電変換装置の製造方法であって、
    柔軟性の基板の主面に、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなる突起部を設けるに際して、前記突起部を前記基板内に一部埋設させると共に前記主面から一部突出させ、前記基板の内部に配置される熱電変換部材の一部と離間して対向するように配置し、
    隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙を形成することを特徴とする熱電変換装置の製造方法。
  6. 熱を電気に変換する熱電変換装置の製造方法であって、
    柔軟性の基板の主面に、前記基板よりも熱伝導性の高い材料からなり、表面に突起部が形成された接触板を、前記突起部が一部残るように埋没させて接合し、
    隣り合う前記突起部間における前記主面の領域に空隙を形成することを特徴とする熱電変換装置の製造方法。
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