JP5707180B2 - ガスセンサ素子およびガス濃度検出方法 - Google Patents

ガスセンサ素子およびガス濃度検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガスセンサ素子およびガス濃度検出方法に関し、さらに詳しくは、プロトン導電性の固体電解質を利用するガスセンサ素子およびガス濃度検出方法に関する。
近年、自動車用内燃機関等から排出される排ガスを原因とする大気汚染は、現代社会に深刻な問題を引き起こしている。そのため、排ガス中に含まれる公害物質に対する浄化基準法規は年々厳しくなっている。
このような状況に対応するため、従来のλセンサやA/Fセンサによる酸素ガスの検出以外にも、NOxガス、水素ガスや炭化水素ガス等の他の排ガス成分を直接検出し、エンジン燃焼制御モニタ、触媒モニタ等にフィードバックすることが検討されている。このような背景から、水素ガスや炭化水素ガス等の水素原子を含む被測定ガスを精度よく検出可能なガスセンサが求められている。
なお、本発明に先行する従来技術として特許文献1が公知である。特許文献1は、水素ガスや炭化水素ガスを検出するガスセンサに関するものではないが、被測定対象中の水分含有量を測定する水分測定装置を開示する。特許文献1の水分測定装置は、同文献の図3に示されるように、電子導電性でかつガス透過性の陽極21、22、陰極4間に設けられたプロトン導電性の固体層5を有し、陽極21と固体層5との間にプロトン導電を実質的にブロックするブロック層92が設けられている。
上記水分測定装置によれば、ブロック層92が設けられた陽極21部分を含む電気回路での電流値と、ブロック層92が設けられていない陽極22部分を含む電気回路での電流値との差から、プロトン導電のみの電流値を抽出測定することができ、被測定対象中の水分含有量を正確に測定することが可能とされている。
特開2003−185624号公報(図3)
従来知られているプロトン導電性の固体電解質を利用するガスセンサは、以下の点で問題がある。すなわち、従来のガスセンサは、プロトン導電による電流以外にも電子導電による電流が流れる。そのため、プロトン導電と電子導電との和による電流値から水素原子を含む被測定ガスの濃度検出を行うことになる。それ故、水素原子を含む被測定ガスの濃度を高精度で検出することが困難であるという問題がある。
なお、特許文献1の水分測定装置は、陽極およびブロック層の側端部からプロトンの取り込みが生じる。そのため、仮に水素ガスや炭化水素ガスの検出に適用したとしても検出精度が低下するものと考えられる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、水素原子を含む被測定ガスの濃度を高精度に検出することが可能なガスセンサ素子、また、これを用いたガス濃度検出方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、水素原子を含む被測定ガスが存在する外部空間と拡散部材を介して連通し、かつ上記被測定ガスが導入される被測定ガス室と、プロトン導電性の固体電解質体を共有する第1セルおよび第2セルを備えたガスセンサ素子であって、
上記第1セルは、上記固体電解質体と、該固体電解質体の一方面に設けられ、上記被測定ガスに接する第1アノード電極と、上記固体電解質体の他方面に設けられた第1カソード電極とを有し、
上記第2セルは、上記固体電解質体と、上記固体電解質体の一方面に設けられた第2アノード電極と、上記固体電解質体の他方面に設けられた第2カソード電極と、上記第2アノード電極の外表面全体を被覆しており、上記固体電解質体および上記第2アノード電極と同時に焼成により一体的に形成されたガス不透過性の遮蔽体とを有し、
上記被測定ガス室内に、上記第1セルの第1アノード電極と、上記遮蔽体に被覆された上記第2セルの第2アノード電極とが配置されていることを特徴とするガスセンサ素子にある。
第2の発明は、第1の発明のガスセンサ素子を用いて水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出するガス濃度検出方法であって、上記第1セルに電圧を印加し、上記固体電解質体のプロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和を測定する工程と、上記第2セルに電圧を印加し、上記固体電解質体の電子導電による電流値を測定する工程と、上記測定した第1セルの電流値と第2セルの電流値との差から水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する工程とを有することを特徴とするガス濃度検出方法にある。
第1の発明によれば、第1セルに所定の電圧を印加すると、水素原子を含む被測定ガスが第1アノード電極で分解し、第1セルに電流が流れる。ここで、プロトン導電性の上記固体電解質体は、わずかに電子導電性も有するため、第1セルに流れる電流は、プロトン導電による電流と電子導電による電流との和になる。一方、第2セルに所定の電圧を印加すると、第2アノード電極が遮蔽体で被覆されているので、第2セルには、プロトン導電による電流は流れず、電子導電による電流のみが流れる。この際、第2アノード電極の外表面は、固体電解質体および第2アノード電極と同時に焼成により一体的に形成された遮蔽体により全体が被覆されているため、第2アノード電極の側端部からプロトンが取り込まれることもない。したがって、第1セルの電流値と第2セルの電流値との差を検出することにより、上記固体電解質体の電子導電性による影響を回避して、プロトン導電のみによる電流値を求めることができる。これにより、この電流値に基づいて水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出することが可能になる。
ここで、上記ガスセンサ素子は、被測定ガスが存在する外部空間と拡散部材を介して連通し、かつ被測定ガスが導入される被測定ガス室をさらに備え、被測定ガス室内に、第1セルの第1アノード電極が配置されている。したがって、上記ガスセンサ素子では、被測定ガスが存在する外部空間から拡散部材を通過して被測定ガス室内に所定の拡散速度の被測定ガスが導入される。そのため、安定した状態で電流値を測定することができる。それ故、検出誤差が少なくなり、被測定ガスの濃度の検出精度向上に寄与することができる。
さらに、上記ガスセンサ素子は、被測定ガス室内に、上記遮蔽体に被覆された第2セルの第2アノード電極が配置されている。したがって、上記ガスセンサ素子では、第1アノード電極と第2アノード電極とが同一の空間に配置されるので、温度等、同一のセル環境下にて第1セルおよび第2セルの電流値を測定することができる。そのため、検出誤差が少なくなり、被測定ガスの濃度の検出精度向上に寄与することができる。
以上、第1の発明によれば、水素原子を含む被測定ガスの濃度を高精度に検出することが可能なガスセンサ素子を提供することができる。
第2の発明によれば、第1の発明によるガスセンサ素子を用いて、第1セルに所定の電圧を印加し、固体電解質体のプロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和を測定する。一方、第2セルに所定の電圧を印加し、固体電解質体の電子導電による電流値を測定する。その後、測定した第1セルの電流値と第2セルの電流値との差から水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する。そのため、固体電解質体の電子導電性による影響を回避して、プロトン導電のみによる電流値から水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出することが可能になる。
以上、第2の発明によれば、水素原子を含む被測定ガスの濃度を高精度に検出することが可能なガス濃度検出方法を提供することができる。
実施例1における、ガスセンサ素子の構成を模式的に示す説明図であり、(a)は素子長手方向の断面図、(b)はB−B断面図である。 実施例1における、ガスセンサ素子の構成を模式的に示す分解展開図である。 実施例1のガスセンサ素子を用いた実施例1のガス濃度検出方法により、水素ガスの濃度を検出した例である。 実施例2における、ガスセンサ素子の構成を模式的に示す説明図であり、(a)は素子長手方向の断面図、(b)はB−B断面図である。 実施例3における、ガスセンサ素子の構成を模式的に示す説明図であり、(a)は素子長手方向の断面図、(b)はB−B断面図である。
上記ガスセンサ素子は、プロトン導電性の固体電解質体を共有する第1セルおよび第2セルを備えている。つまり、上記ガスセンサ素子において、両セルの一部を構成するプロトン導電性の固体電解質は共通である。上記固体電解質体は、主にプロトン導電性を有する一方、わずかに電子導電性も併せ持っている(プロトン・電子混合導電体)。
この種の固体電解質体としては、例えば、SrZrO、CaZrO、BaCeO、SrCeO等のペロブスカイト型酸化物を母体とする固体電解質などを例示することができる。上記ペロブスカイト型酸化物の具体的な組成式としては、SrZr1−X3−α、CaZr1−X3−α、BaCe1−X3−α、Sr1−XCeM3−αを例示することができ、これらは1種または2種以上含まれていてもよい。但し、Mは、Y、Yb、In、Sc、Dy、および、Gdから選択される1種または2種以上である。Xは、好ましくは、0.05〜0.20、より好ましくは、0.10〜0.20であるとよい。なお、α=X/2である。
上記固体電解質体の厚みは、強度確保などの観点から、好ましくは、10〜1000μm、より好ましくは、50〜500μm、さらに好ましくは、100〜300μmであるとよい。上記固体電解質体の形状は、好ましくは、シート状等の平面状であるとよい。上記固体電解質体は、例えば、ペロブスカイト型酸化物を母体とする固体電解質粉末を含むスラリーを、ドクターブレード法等によりシート状等に成形し、焼成することにより形成することができる。また、押し出し成形法などを用いて形成することもできる。なお、上記固体電解質粉末は、例えば、SrZrO、CaZrO、BaCeO、SrCeO等の出発原料を混合、焼成後、粉砕することにより得ることができる。また、硝酸塩溶液等を用いた共沈法等の液相プロセスから混合粉末を得ることも可能である。
上記ガスセンサ素子において、第1セルは、固体電解質体と、固体電解質体の一方面に設けられ、水素原子を含む被測定ガスに接する第1アノード電極と、固体電解質体の他方面に設けられた第1カソード電極とを有している。一方、第2セルは、固体電解質体と、固体電解質体の一方面に設けられた第2アノード電極と、固体電解質体の他方面に設けられた第2カソード電極と、第2アノード電極の外表面全体を被覆しており、固体電解質体および第2アノード電極と同時に焼成により一体的に形成されたガス不透過性の遮蔽体とを有している。
つまり、上記第1セルおよび第2セルにおいて、第1アノード電極と第2アノード電極は、いずれも固体電解質体の一方表面に設けられている。同様に、第1カソード電極と第2カソード電極は、いずれも、第1アノード電極および第2アノード電極が設けられている側とは反対側となる、固体電解質体の他方表面に設けられている。したがって、第1セルは、対向配置された一対の第1アノード電極、第1カソード電極によって固体電解質体が挟持された構成を有しているといえる。一方、第2セルは、第1セルの固体電解質体と共通の固体電解質体が、対向配置された一対の第2アノード電極、第2カソード電極によって挟持された構成を有しているといえる。上記第1セルおよび第2セルは、被測定ガス濃度の測定環境が同等になるように、互いの近傍に隣り合うようにして設けられていることが好ましい。
上記ガスセンサ素子において、第1アノード電極と第2アノード電極、第1カソード電極と第2カソード電極は、同一形状、同一面積であることが好ましい。電子導電による電流値が同等になり、被測定ガスの濃度の検出精度向上に寄与できるからである。もっとも、各電極の形状や面積に違いがあっても、その違いに応じた係数をかけて電流差を検出するような構成とすることにより、被測定ガス濃度を精度よく検出することができる。
上記各電極の厚みは、電気抵抗やガス透過性などの観点から、好ましくは、1〜20μm、より好ましくは、5〜15μmであるとよい。上記各電極は、例えば、Pt、Pd、Rh等の貴金属、これら貴金属とSrZrO、CaZrO、BaCeO、SrCeO等のセラミックスとの多孔質サーメット、好ましくは第1セル、第2セルに用いられる上記固体電解質材料と上記貴金属との多孔質サーメットなどから好適に構成することができる。なお、上記各電極は、スクリーン印刷法等により好適に形成することができる。
上記ガスセンサ素子において、第1カソード電極と第2カソード電極とは、互いに独立して設けられていてもよいし、各電極どうしが連続するように一体化されていてもよい。後者の場合には、第1カソード電極と第2カソード電極とが共通化された構造となるため、信号の取り出し端子数を減らして素子構造の簡素化を図ることができる。また、素子製造性を向上させることができるなどの利点もある。
ここで、上記ガスセンサ素子において、第1アノード電極には、センサ使用時に水素原子を含む被測定ガスが接する。水素原子を含む被測定ガスは、特に限定されるものではないが、例えば、水素ガス、炭化水素ガス、水蒸気などを例示することができる。これらガスのうち、好ましくは、分解電圧などの観点から、水素ガスであるとよい。一方、第2アノード電極は、ガス不透過性の遮蔽体により被覆されている。つまり、第2アノード電極は、水素原子を含む被測定ガスに曝されないように遮蔽体により被覆されている。したがって、第2アノード電極上には、水素原子を含む被測定ガスが供給されない。
上記ガスセンサ素子において、上記被測定ガス室は、例えば、第1セルおよび第2セルを加熱して活性化させるためのヒータ部と、上記固体電解質体との間にスペーサを挟持させ、このスペーサに形成した貫通穴などから好適に構成することができる。
上記被測定ガスが存在する外部空間としては、例えば、自動車用内燃機関の排気系、燃料電池等のHを使用する装置外部などを例示することができる。拡散部材は、所定の拡散抵抗を有しており、該所定の拡散抵抗の下に水素原子を含む被測定ガスが被測定ガス室に導入されるのを可能にする。拡散部材は、好ましくは、所定の拡散抵抗を得やすくなる観点から、多孔質体であるとよい。拡散部材の形状や気孔率、気孔径などは、拡散部材を通過して被測定ガス室に導入される被測定ガスの拡散速度が所定の速度となるように適宜設計することができる。上記拡散部材の材料としては、例えば、多孔質なアルミナやSrZrO、CaZrO、BaCeO、SrCeO等のペロブスカイト型酸化物などを例示することができる。
上記ガスセンサ素子は、他にも、例えば、上記スペーサが、第2アノード電極を被覆する遮蔽体を兼ねる構造とすることもできる。つまり、第1アノード電極だけを被測定ガス室に配置し、スペーサ内部に第2アノード電極を存在させる構造なども採用可能である。この場合には、遮蔽体としてのスペーサにより第2アノード電極が被覆され、被測定ガスと第2アノード電極との接触が遮断される。このような素子構造を採用した場合には、被測定ガス室を形成する比較的厚みの大きなスペーサによって、被測定ガスと第2アノード電極との接触を確実に遮断することができる。また、遮蔽体を別部材として形成する必要がなくなるため、素子製造性を向上させることもできる。
上記ガスセンサ素子において、第2アノード電極を被覆する遮蔽体は、被測定ガスを透過させないガス不透過性を有している。遮蔽体は、緻密質材料から構成するのが好ましい。遮蔽体の具体的な緻密度は、ガス不透過性を確保する観点から、好ましくは、相対密度が90%以上、より好ましくは、95%以上であるとよい。なお、上記相対密度は、ポロシメータや電子顕微鏡画像解析により測定することができる。
上記ガスセンサ素子において、上記遮蔽体は、被測定ガスが接触したきのプロトン化反応を生じ難くする観点から、電気絶縁性の材料から好適に構成することができる。他にも、上記固体電解質材料から構成することもできる。上記遮蔽体の具体的な材料としては、例えば、アルミナ、ムライトなどのセラミックス、ガラスなどを好適なものとして例示することができる。
上記ガスセンサ素子において、上記遮蔽体は、アルミナを主成分とすることが好まし
この場合には、上記遮蔽体に電気絶縁性を付与しやすいうえ、高温で安定しており、また被測定ガスとの反応性に乏しいため遮蔽体上でプロトンも生じ難い。そのため、第2セルにおいて、固体電解質体の電子導電のみによる電流値を測定しやすくなる。それ故、検出誤差が少なくなり、被測定ガスの濃度の検出精度向上に寄与することができる。
上記ガスセンサ素子において、上記遮蔽体の厚みは、5〜50μmの範囲内にあることが好ましい。
この場合には、第1セルと第2セルとの温度の同一性、ガス不透過性の確保容易性のバランスに優れる。そのため、検出誤差が少なくなり、被測定ガスの濃度の検出精度向上に寄与することができる。
上記遮蔽体の厚みの下限値は、ガス不透過性の確保の観点から、より好ましくは、10μm、さらに好ましくは、15μmであるとよい。一方、上記遮蔽体の厚みの上限値は、第1セルと第2セルとの温度の同一性の観点から、より好ましくは、40μm、さらに好ましくは、30μmであるとよい。なお、上記遮蔽体は、スクリーン印刷法等により好適に形成することができる。
次に、上記ガス濃度検出方法は、上記ガスセンサ素子を用いて水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する方法である。上記ガス濃度検出方法は、第1セルに電圧を印加し、固体電解質体のプロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和を測定する工程(1)、第2セルに電圧を印加し、固体電解質体の電子導電による電流値を測定する工程(2)、測定した第1セルの電流値と第2セルの電流値との差から水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する工程(3)とを有している。
上記工程(1)において、第1セルに印加する電圧は、水素原子を含む被測定ガスから水素原子を引き抜くのに必要な電圧(分解電圧)である。また、上記工程(2)において、第2セルに印加する電圧は、第1セルと同じ電圧である。いずれも水素原子を含む被測定ガスの種類に応じて適宜最適な電圧を選択することができる。なお、上記(1)、(2)工程において、印加する電圧は、第1アノード電極、第2アノード電極がプラス極となるように印加することになる。
上記ガス濃度検出方法は、工程(1)、工程(2)、工程(3)の順に各工程を行ってもよいし、工程(2)、工程(1)、工程(3)の順に各工程を行ってもよい。さらには、工程(1)と工程(2)とを同時に行い、その後に工程(3)を行うようにしてもよい。
工程(1)と工程(2)とを同時に行うようにした場合には、第1セルおよび第2セルの環境(温度等)がほぼ同一条件のときに、第1セルおよび第2セルの電流値を測定することができる。そのため、検出誤差が少なくなり、被測定ガスの濃度の検出精度向上に寄与することができ有利である。
(実施例1)
本発明の実施例に係るガスセンサ素子、ガス濃度検出方法について、図1〜図3を用いて説明する。
本例のガスセンサ素子1は、図1に示すように、プロトン導電性の固体電解質体10を共有する第1セルお11よび第2セル12を備えている。本例において、固体電解質体10は、シート状に形成されており、組成式SrZr0.9Yb0.12.95からなるペロブスカイト型酸化物を母体とする固体電解質から構成されている。固体電解質体10の厚みは、200μmである。
第1セル11は、固体電解質体10と、固体電解質体10の一方面に設けられ、水素原子を含む被測定ガスとしての水素ガスに接する第1アノード電極11aと、固体電解質体10の他方面に設けられた第1カソード電極11cとを有している。一方、第2セル12は、固体電解質体10と、固体電解質体10の一方面に設けられた第2アノード電極12aと、固体電解質体10の他方面に設けられた第2カソード電極12cと、第2アノード電極12aを被覆する遮蔽体13とを有している。遮蔽体13は、ガス不透過性を有しており、第2アノード電極12aが水素ガスに曝されないように第2アノード電極12aの外表面全てを被覆している。
本例において、第1アノード電極11aと第2アノード電極12a、第1カソード電極11cと第2カソード電極12cは、それぞれ同一形状、同一面積の層状に形成されている。各電極11a、11c、12a、12cは、いずれもPtとSrZr0.9Yb0.12.95との多孔質サーメットから構成されている。各電極11a、11c、12a、12cの厚みは、いずれも10μmである。また、遮蔽体13は、膜状に形成されており、アルミナから構成されている。遮蔽体13の厚みは、20μmである。
以下、本例のガスセンサ素子1についてさらに詳説する。
本例のガスセンサ素子1は、図1に示すように、上述の第1セル11および第2セル12を有する固体電解質体10と、スペーサ14と、ヒータ部15とが順次積層されて構成されている。第1セル11および第2セル12は、ガスセンサ素子1の先端部に形成されている。
スペーサ14は、固体電解質体10とヒータ部15との間に位置し、被測定ガス室141を形成するためのものである。本例において、スペーサ14は、シート状に形成されており、アルミナから構成されている。スペーサ14は、アルミナ以外の他の絶縁材料から構成することもできる。スペーサ14の厚みは、200μmである。スペーサ14は、固体電解質体10のセル形成部101に対応する位置に、矩形状の貫通穴141を有している。本例では、この貫通穴141を被測定ガス室として利用している。
貫通穴141を形成したスペーサ14の先端部には、拡散部材142が設けられている。被測定ガス室141は、拡散部材142を介して、被測定ガスが存在する外部空間と連通し、室内に被測定ガスが導入されるように構成されている。本例では、被測定ガス室内141に第1セル11の第1アノード電極11aが配置されている。また、被測定ガス室141内には、さらに、第1セル11に隣り合うようにして、遮蔽体13に被覆された第2セル12の第2アノード電極12aが配置されている。
本例において、拡散部材142は、多孔質の層状に形成されており、アルミナから構成されている。拡散部材142は、アルミナ以外の他の絶縁材料から構成することもできる。拡散部材142の厚みは、スペーサ14の厚みと同じ200μmである。拡散部材142の気孔率は、40%、気孔径は、1〜5μmである。
ヒータ部15は、基層151と、基層151の片面にパターン形成され、通電により発熱するヒータ電極152と、ヒータ電極152が形成された基層151面に形成された絶縁層153とを有している。このヒータ部15は、外部からの給電によりヒータ電極152を発熱させ、第1セル11および第2セル12を活性化温度まで加熱するためのものである。
本例において、基層151および絶縁層153は、ともにアルミナから構成されている。基層151および絶縁層153の厚みは、ともに200μmである。ヒータ電極152は、Ptとアルミナとのサーメットから構成されている。ヒータ電極152の厚みは、30μmである。
また、本例のガスセンサ素子1は、上記以外にも、第1セル11、第2セル12およびヒータ部15と外部回路(不図示)との信号のやり取りが可能な構成を有している。具体的には、図2に示すように、固体電解質体10は、先端部に第1セル11および第2セル12が形成されるセル形成部101を有するとともに、セル形成部101から基端部にかけて接続回路が形成される回路形成部102を有している。
回路形成部102の一方面には、リード110a、120aが設けられ、リード110a、120aの一端は、第1アノード電極11a、第2アノード電極12aにそれぞれ接続されている。リード110a、120aの他端は、回路形成部102の基端部に形成されたスルーホール111、112を通して、回路形成部102の他方面に形成されたパッド電極113、114に接続され、外部回路に接続可能とされている。また、回路形成部102の他方面には、リード110c、120cが設けられ、リード110c、120cの一端は、第1カソード電極11c、第2カソード電極12cにそれぞれ接続されている。リード110c、120cの他端は、回路形成部102の基端部側まで延長され、外部回路に接続可能とされている。
また、ヒータ電極152が形成された基層151面には、リード154、155が設けられ、リード154、155の一端は、ヒータ電極152にそれぞれ接続されている。リード154、155の他端は、基層151の基端部に形成されたスルーホール156、157を通して、ヒータ電極152の形成側と反対側の基層151面に形成されたパッド電極158、159に接続され、外部回路に接続可能とされている。なお、各リード110a、110c、120a、120c、154、155、ヒータ電極152および各パッド電極113、114、158、159は、いずれもスクリーン印刷により形成した。
なお、本例のガスセンサ素子1は、以下のようにして作製した。ドクターブレード法を用いて、固体電解質体10、スペーサ14、拡散部材142、ヒータ部15(基層151、絶縁層153)の各未焼成シートを成形した。次いで、スクリーン印刷法を用いて、各未焼成シートの各所定位置に、各電極11a、11c、12a、12c、遮蔽体13、各リード110a、110c、120a、120c、154、155、ヒータ電極152、各パッド電極113、114、158、159等の形成材料を所定形状に形成した。次いで、これら未焼成シートを積層して1500℃で焼成することにより一体化し、ガスセンサ素子1を得た。
次に、本例のガスセンサ素子1の作用効果について説明する。図1において、被測定ガス(本例では水素ガス)は、拡散部材142を通過して被測定ガス室141に導入される。導入される被測定ガスの量は、拡散部材142の拡散抵抗により決定される。第1セル11の第1アノード電極11a、第1カソード電極11cの間に、第1アノード電極11aがプラス極となるように直流電源16aにより所定の直流電圧を印加する。第1セル11に電圧を印加すると、第1アノード電極11aの表面にて被測定ガスから水素原子が引き抜かれ、プロトンが生じる。生じたプロトンは、ポンピング作用により固体電解質体10内を通って第1カソード電極11c側へ排出される。このとき、第1セル11に流れるプロトン導電による電流は、被測定ガスの濃度に依存し、これを測定することにより、被測定ガスの濃度を知ることが可能である。
なお、本例では被測定ガスとして水素ガスを用いたが、水素原子を含む被測定ガスの種類により、水素原子を引き抜く電圧(分解電圧)が異なる。そのため、水素原子を含む被測定ガスの種類に合わせて分解電圧を適宜設定することにより、選択的に被測定ガスのガス濃度を検出することができる。
しかし、本例で用いた固体電解質体10は、プロトン導電に加え、電子導電性も有している。そのため、電流計17aにより測定される第1セル11に流れる電流は、プロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和になる。電子導電による電流は、被測定ガス濃度に依存しないため、その分が検出誤差原因となる。
ところが、本例のガスセンサ素子1は、第1セル11のみならず、第2セル12を有しており、第2セル12の第2アノード電極12aはガス不透過性の遮蔽体13により被覆されている。第2セル12の第2アノード電極12a、第2カソード電極12cの間に、第2アノード電極12aがプラス極となるように直流電源16bにより所定の直流電圧を印加する。第2セル12に電圧を印加すると、第2アノード電極12aはガス不透過性の遮蔽体13により被覆されているため、第2アノード電極12a上に被測定ガスは供給されない。それ故、第2セル12にはプロトン導電による電流は流れず、電子導電による電流のみ流れる。この際、第2アノード電極12aの外表面は、遮蔽体13により全体が被覆されているため、特許文献1のように、第2アノード電極12aの側端部からプロトンが取り込まれることもない。そのため、電流計17bにより測定される第2セル12に流れる電流は、電子導電による電流値のみとなる。
したがって、測定された第1セル11の電流値と第2セル12の電池値との差を検出することにより、プロトン導電のみによる電流値を求めることができる。
よって、本例のガスセンサ素子1によれば、被測定ガス(水素ガス)の濃度を高精度に検出することが可能である。
次に、本例のガス濃度検出方法について説明する。本例のガス濃度検出方法は、本例のガスセンサ素子1を用いて水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する方法である。
本例のガス濃度検出方法は、第1セル11に電圧を印加し、固体電解質体10のプロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和を測定する工程(1)と、第2セル12に電圧を印加し、固体電解質体10の電子導電による電流値を測定する工程(2)と、測定した第1セル11の電流値と第2セル12の電流値との差から水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する工程(3)と有する。
具体的には、先ず、工程(1)として、第1セル11の第1アノード電極11a、第1カソード電極11cの間に、第1アノード電極11aがプラス極となるように直流電源16aにより所定の直流電圧を印加する。これにより、第1セル11に流れるプロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和を電流計により測定する。次いで、工程(2)として、第2セル12の第2アノード電極12a、第2カソード電極12cの間に、第2アノード電極12aがプラス極となるように直流電源16bにより所定の直流電圧を印加する。これにより、第2セル12に流れる電子導電のみによる電流値を測定する。次に、工程(3)として、測定した第1セル11の電流値と第2セル12の電流値との差から水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する。
図3は、本例のガスセンサ素子1を用い、本例のガス濃度検出方法により、水素ガスの濃度を検出した例である。この際、第1セル11および第2セル12に印加する電圧は、ともに0.4Vとした。また、被測定ガスとして濃度0〜1000ppmの水素ガスを用い、バランスガスには窒素ガスを用いた。
図3によれば、第1セル11に流れる電流値は、プロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和になっている。このうち、プロトン導電による電流は、水素ガス濃度に依存して変化する。そのため、「○」印の特性となる。電子導電による電流値は、セル温度等の影響により変動し、一定でないため、誤差要因となる。
一方、第2セル12は、遮蔽体13により第2アノード電極12aが水素ガスと接触しない構造になっている。そのため、水素ガスからプロトンを取り込むことができず、プロトン導電による電流は流れない。それ故、第2セル12については、電子導電による電流のみとなり、「△」印の特性となる。
第1セル11と第2セル12の電流差をとると、「□」印の特性となり、電子導電の影響をキャンセルすることができる。
この結果から、本例のガス濃度検出方法によれば、水素ガスの濃度を高精度に検出することが可能であることが確認できた。
(実施例2)
本例は、図4に示すように、実施例1のガスセンサ素子1において、第1カソード電極11c、第2カソード電極12cの構造を変形した例である。
本例のガスセンサ素子1は、図1における第1カソード電極11cと第2カソード電極12cとが連続している。つまり、本例のガスセンサ素子1は、図4に示すように、図1における第1カソード電極11cと第2カソード電極12cとが一体化された共通カソード電極18を有している。その他の構成は、実施例1と同様である。
このようにした場合には、第1カソード電極11cと第2カソード電極12cとが共通化された構造となるため、信号の取り出し端子数を減らして素子構造の簡素化を図ることができる。また、素子製造性を向上させることができるなどの利点もある。その他は、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、実施例1のガス濃度検出方法において、本例のガスセンサ素子1を適用しても、同様に、水素原子を含む被測定ガスの濃度を高精度に検出することが可能である。
(実施例3)
本例は、図5に示すように、実施例1のガスセンサ素子1において、遮蔽体13およびスペーサ14の構成を変形した例である。
本例のガスセンサ素子1は、図5に示すように、スペーサ14の一部が、第2アノード電極12aを被覆する遮蔽体13を兼ねる構造とされている。つまり、本例のガスセンサ素子1は、第1アノード電極11aだけを被測定ガス室141に配置し、スペーサ14(遮蔽体13)内部に第2アノード電極12a存在させる構造とされている。その他の構成は、実施例1と同様である。
このようにした場合には、遮蔽体13としてのスペーサ14により第2アノード電極12aが被覆され、被測定ガスと第2アノード電極12aとの接触が遮断される。そのため、被測定ガス室141を形成する比較的厚みの大きなスペーサ14によって、被測定ガスと第2アノード電極12aとの接触を確実に遮断することができる。また、遮蔽体13を別部材として形成する必要がなくなるため、素子製造性を向上させることもできる。その他は、実施例1と同様の作用効果を奏する。また、実施例1のガス濃度検出方法において、本例のガスセンサ素子1を適用しても、同様に、水素原子を含む被測定ガスの濃度を高精度に検出することが可能である。
以上、実施例について説明したが、本発明は、上記実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変を行うことが可能である。
1 ガスセンサ素子
10 固体電解質体
11 第1セル
11a 第1アノード電極
11c 第1カソード電極
12 第2セル
12a 第2アノード電極
12c 第2カソード電極
13 遮蔽体
14 スペーサ
141 貫通穴
141 被測定ガス室
142 拡散部材
15 ヒータ部
151 基層
152 ヒータ電極
153 絶縁層

Claims (4)

  1. 水素原子を含む被測定ガスが存在する外部空間と拡散部材を介して連通し、かつ上記被測定ガスが導入される被測定ガス室と、プロトン導電性の固体電解質体を共有する第1セルおよび第2セルを備えたガスセンサ素子であって、
    上記第1セルは、上記固体電解質体と、該固体電解質体の一方面に設けられ、上記被測定ガスに接する第1アノード電極と、上記固体電解質体の他方面に設けられた第1カソード電極とを有し、
    上記第2セルは、上記固体電解質体と、上記固体電解質体の一方面に設けられた第2アノード電極と、上記固体電解質体の他方面に設けられた第2カソード電極と、上記第2アノード電極の外表面全体を被覆しており、上記固体電解質体および上記第2アノード電極と同時に焼成により一体的に形成されたガス不透過性の遮蔽体とを有し、
    上記被測定ガス室内に、上記第1セルの第1アノード電極と、上記遮蔽体に被覆された上記第2セルの第2アノード電極とが配置されていることを特徴とするガスセンサ素子。
  2. 請求項1に記載のガスセンサ素子において、
    上記遮蔽体は、アルミナを主成分とすることを特徴とするガスセンサ素子。
  3. 請求項1または2に記載のガスセンサ素子において、
    上記遮蔽体の厚みは、5〜50μmの範囲内にあることを特徴とするガスセンサ素子。
  4. 請求項1からのいずれか1項に記載のガスセンサ素子を用いて水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出するガス濃度検出方法であって、
    上記第1セルに電圧を印加し、上記固体電解質体のプロトン導電による電流値と電子導電による電流値との和を測定する工程と、
    上記第2セルに電圧を印加し、上記固体電解質体の電子導電による電流値を測定する工程と、
    上記測定した第1セルの電流値と第2セルの電流値との差から水素原子を含む被測定ガスの濃度を検出する工程と、
    を有することを特徴とするガス濃度検出方法。
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