JP5706088B2 - インフルエンザウイルスの検知方法およびインフルエンザウイルスの検知装置 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、居室空間等の空気中に浮遊するインフルエンザウイルスを簡便に検出する技術を提供することにある。
上記技術課題を解決するための本発明のインフルエンザウイルス検知方法の特徴構成は、
インフルエンザウイルスをエアフィルタにより捕集し、
前記エアフィルタをノイラミニダーゼ抽出液(以後、単に抽出液ともいう)に接触させ、
前記エアフィルタに接触した抽出液を、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼにより分解されて発色するノイラミニダーゼ発色基質(以後、単に発色基質ともいう)に反応させ、
その発色基質の発色により雰囲気中に含まれるインフルエンザウイルスを検知する点にある。
〔作用効果〕
つまり、本発明のインフルエンザウイルスの検知方法は、インフルエンザウイルスをエアフィルタにより捕集するから、簡便に居室空間等の空気中に浮遊するインフルエンザウイルスの試料を採取することができる。この前記エアフィルタを抽出液に接触させ、採取された試料にインフルエンザウイルスが含まれていると、インフルエンザウイルスの表面に存在するノイラミニダーゼは抽出液に抽出される。そのため、前記エアフィルタに接触した抽出液には、インフルエンザウイルスの量に応じたノイラミニダーゼが含まれていることになる。このノイラミニダーゼを含む抽出液を、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼにより分解されて発色する発色基質に反応させると、そのノイラミニダーゼの量に応じて発色するから、インフルエンザウイルスの検出が行えるのである。
なお、前記エアフィルタが、ゼラチン、ニトロセルロースからなる群より選ばれる少なくとも一種の材質であれば好ましく、
前記エアフィルタが、ポリカーボネート、銀、セラミクスからなる群より選ばれる少なくとも一種の材質であってもよい。
エアフィルタとしては、インフルエンザウイルスを捕捉可能な0.01〜数μm程度の孔径のものが良好に用いられるが、ゼラチンのように、抽出液に接触させたときに溶解して消失する水溶性の材質のものであれば、簡易的に用いることが出来るとともに、ウイルス付着のフィルタを後処理(無害化)する上で好ましい。
また、前記抽出液が界面活性剤を含有するものであれば好ましい。
ここで、抽出液とは、通常、水が好適に用いられるが、インフルエンザウイルスと接触して、その表面のノイラミニダーゼを溶出させる効果のある液体であれば適用することができる。
〔構成〕
また、前記発色基質がシアル酸を結合した発色団であり、シアル酸としては、例えば、N-アセチルノイラミン酸など、発色団としては、例えば、4−メチルウンベリフェロン誘導体、5−ブロモインドール酸誘導体などが挙げられる。
ノイラミニダーゼにより、例えば、4−メチルウンベリフェロン誘導体と末端シアル酸の複合体である4−メチルウンベリフェリル−α−D−ノイラミン酸アンモニウム(4−Methylumbelliferyl−N−acetyl−α−D−neuraminic acid,Ammonium salt:4MU−NANA)が分解されると、蛍光物質4−メチルウンベリフェロンを生じる。この時の4−メチルウンベリフェロンの生成量に基づき、酵素活性を算出することが出来、その酵素活性からインフルエンザウイルス濃度を推定することが出来る。
また、ノイラミニダーゼと発色基質とを反応させる場合には、前記発色基質をシート基材に固定化しておき、前記エアフィルタにより捕集された捕集物を前記抽出液により前記シート基材に転写して前記発色基質を発色させることができる。
あるいは、前記発色基質を前記抽出液に含有させておき、前記エアフィルタにより捕集された捕集物に、前記抽出液を供給して前記発色基質を発色させる、または、別途、基質槽を設け、基質槽より前期発色基質溶液を供給して前期抽出液と接触させることにより前期発色基質を発色することもできる。
つまり、前記発色基質をシート基材に固定化しておくと、発色基質は乾燥状態で保管することが出来、安定に長期保管が容易にできるものとなるので、簡易に検査を継続して行いたいような場合に好適である。このようにして固定化された発色基質は、ノイラミニダーゼを含む溶液を塗布することによって、発色反応させることが出来る。つまり、前記エアフィルタにより捕集された捕集物を前記抽出液により前記シート基材に転写して前記発色基質を発色させると、簡便な操作により発色反応を行わせることが出来る。この発色したシート基材は、常法により発色検知ユニットで分析され、インフルエンザウイルスの検知が行えるものとなる。
また、本発明のインフルエンザウイルス検知装置の特徴構成は、インフルエンザウイルスを捕集可能なエアフィルタを着脱可能なフィルタ部を備え、前記フィルタ部を介して空気を流通させるエア流通部を備えたサンプリングユニットを設け、
発色基質をシート基材に固定化した発色用シートに対し、前記エアフィルタにより捕集された捕集物を抽出液により転写する転写部を備えるとともに、前記転写部で転写された前記捕集物と発色基質との反応による発色を検出する検出部を備えた発色検知ユニットを設けた点にある。
つまり、サンプリングユニットには、インフルエンザウイルスを捕集可能なエアフィルタを着脱可能なフィルタ部を備えるから、フィルタ部にエアフィルタを装着するだけでそのエアフィルタにインフルエンザウイルスを捕集することが出来るとともに、そのエアフィルタは着脱自在であるから、インフルエンザウイルスを捕集したエアフィルタは、容易に交換除去することが出来る。尚、前記フィルタ部には、空気を流通させるエア流通部を備えるだけで、簡単に前記フィルタ部に空気を流通させることが出来るので、低濃度のインフルエンザウイルスであったとしても、捕集時間を長くとることによって、インフルエンザウイルス濃度を効率良く検出できる高濃度に濃縮することが出来るようになる。
また、本発明のインフルエンザウイルス検知装置の別の特徴構成は、インフルエンザウイルスを捕集可能なエアフィルタを着脱可能なフィルタ部を備え、前記フィルタ部を介して空気を流通させるエア流通部を備えたサンプリングユニットを設け、
発色基質を抽出液に含有させておき、前記エアフィルタにより捕集された捕集物に、前記抽出液を供給して、得られた反応液を受ける抽出部を設け、前記抽出部における前記捕集物と発色基質との反応による発色を検出する検出部を備えた発色検知ユニットを設けた点にある。
つまり、サンプリングユニットには、インフルエンザウイルスを捕集可能なエアフィルタを着脱可能なフィルタ部を備えるから、フィルタ部にエアフィルタを装着するだけでそのエアフィルタにインフルエンザウイルスを捕集することが出来るとともに、そのエアフィルタは着脱自在であるから、インフルエンザウイルスを捕集したエアフィルタは、容易に交換除去することが出来る。尚、前記フィルタ部には、空気を流通させるエア流通部を備えるだけで、簡単に前記フィルタ部に空気を流通させることが出来るので、低濃度のインフルエンザウイルスであったとしても、捕集時間を長くとることによって、インフルエンザウイルス濃度を効率良く検出できる高濃度に濃縮することが出来るようになる。
または、別途、基質槽を設け、基質槽より前期発色基質溶液を供給して前期捕集物と接触させると、前記捕集物にインフルエンザウイルスが含まれていた場合に、そのウイルスから溶離されるノイラミニダーゼが前期発色基質を発色させることになり、その結果、簡単な操作で前記発色基質を発色させることが出来る。
この反応により、前記発色基質は発色するからその発色を、検出部において検出することによって、インフルエンザウイルス由来のノイラミニダーゼを検出することが出来る。つまり、そのノイラミニダーゼを提供するインフルエンザウイルスを検知することができる。
また、前記インフルエンザウイルス検知装置は、前記エアフィルタが、ポリカーボネート、銀、セラミクス、からなる群より選ばれる少なくとも一種の材質からなり、前記エアフィルタを再生する再生ユニットを設けてあることが好ましい。
つまり、エアフィルタが、ポリカーボネート、銀、セラミクス、からなる群より選ばれる少なくとも一種の材質からなる場合、このフィルタは、洗浄処理、オートクレーブ、燃焼処理等によって再生することが出来る。そこで、このエアフィルタを再生する再生ユニットを設けてあると、エアフィルタは再生により再利用することが出来、くり返し利用によりインフルエンザウイルス検知装置を経済的に運転できるようになるとともに、継続的に運転を行う場合に、エアフィルタを有効利用することが出来る。
また、前記再生ユニットが、前記エアフィルタを再生するとともに、前記検出部における発色基質の発色廃液を無害化するオートクレーブ処理または燃焼処理を行うことが好ましい。
つまり、フィルタの再生を行う際にオートクレーブ処理または燃焼処理が選択できる場合に、その処理中にインフルエンザウイルスに汚染された前記検出部における発色基質の発色廃液を同時に処理することが出来るので、インフルエンザウイルス検知装置に導入されたインフルエンザウイルスがインフルエンザウイルス検知装置外に排出されるのを防止することが出来る。
また、再生ユニットを設けたインフルエンザウイルス検知装置においては、前記エアフィルタがサンプリングユニット、発色検知ユニット、再生ユニットの順に稼動する機構であって、1つのユニットでサンプリング、発色検知、および再生の動作が成されても良く、より好ましくは、動作ごとに個別ユニットを持ち、各ユニットを移動可能にする移動機構を設ける構造を取る。
つまり、エアフィルタはインフルエンザウイルス検知の過程で、サンプリングユニット、発色検知ユニット、再生ユニットを順に移動させられるから、動作の待機時間を抑え、継続的にインフルエンザウイルスを検知することが容易になるとともに自動化も可能になり、操作ミス等による誤検知、装置外部の汚染等を極力防止するのに役立つ。
<a>インフルエンザウイルスVをエアフィルタ11aにより捕集する。
<b>前記エアフィルタ11aを抽出液23aに接触させる。
<c>前記エアフィルタ11aに接触した抽出液23aを、ノイラミニダーゼNAにより分解されて発色する発色基質Lに反応させる。
<d>その発色基質Lの発色により雰囲気中に含まれるインフルエンザウイルスVを検知する。
の工程を順に行う。
ここでは、図2に示すように、エアフィルタ11aとして、抽出液23aに溶解消失可能なものが好適に用いられる例を示す。
前記サンプリングユニット1は、エアフィルタ11aを着脱可能なフィルタ部11を備え、前記フィルタ部11を介して空気を流通させるエアポンプ12aを有するエア流通部12を備える。これにより、サンプリングユニット1におけるエアポンプ12aを駆動すると、居室空間R内の空気が前記フィルタ部11を介して導入され、排気口13から居室空間Rに戻される循環流が形成される。
前記発色検知ユニット2は、ロール状の発色基質シート21aを巻き戻して供給するシート供給部21を設けるとともに、前記シート供給部21から供給される発色基質シート21aに対して、前記エアフィルタ11aのろ過面を対向させて配置して転写する転写部22を設け、前記転写部22に配置されたエアフィルタ11aに抽出液23aを供給する抽出液供給部23を設けてある。
ここでは、図4に示すように、エアフィルタ11aとして、加熱再生容易なものを用いる場合に好適な例を示す。
前記サンプリングユニット1は、実施例1のものと同様に、フィルタ部11及びエア流通部12を備え、エアポンプ12aにより、居室空間R内の空気が前記フィルタ部11を介して導入され、排気口13から居室空間Rに戻される循環流が形成される。したがって、前記居室空間R内にインフルエンザウイルスVが存在すると、前記インフルエンザウイルスVがフィルタ部11に装着されたエアフィルタ11aに捕集されることになる。
前記発色検知ユニット2は、フィルタ搬送機構4により搬送されたエアフィルタ11aを取り付ける抽出液供給部23を設け、その抽出液供給部23に取り付けたエアフィルタ11aに発色基質Lを含有する抽出液23aを供給して、前記エアフィルタ11aに捕集されたインフルエンザウイルスVと前記抽出液23aとを接触させ、抽出部25において反応液23bを得ることができるように構成してある。
前記再生ユニット3は、前記発色検知ユニット2から搬送されるエアフィルタ11aを受けて燃焼加熱滅菌可能な再生部31および燃焼部32を備える。燃焼部32では、前記エアフィルタ11aをバーナ32aで加熱し、前記エアフィルタ11aに捕集された捕集物を燃焼消失させる。他に燃焼再生不能なエアフィルタ11aを用いる場合、オートクレーブにより加熱再生可能なものであれば、前記燃焼部に代えて加圧過熱可能な再生部を設けることによって、エアフィルタ11aの再生が可能となる。
<3−1:サンプリングユニット>
(インフルエンザウイルス捕集能力)
インフルエンザウイルスを用いた実証実験には、相当の設備が必要となり、現実的ではないので、通常の発塵実験室で用いることの出来るモデルウイルスとして、ファージφX174を散布し、サンプリングユニットに装着した各種エアフィルタにてファージφX174の回収の有無を確認してインフルエンザウイルス捕集能力を検討した。
○モデルウイルス
a.宿主大腸菌:
NBRC 13898:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)より入手
NBRC 103405:NBRCより入手
ポリペプトン :10g
イーストエクストラクト:2g
MgSO4・7H2O・7H2O :1g
上記材料に適当量の水を加えて溶解したのち、pH7.0に調製し、水を加えて1Lにする。これを、オートクレーブ滅菌する。
ポリペプトン 10g
イーストエクストラクト 2g
MgSO4・7H2O 1g
上記材料に適当量の水を加えて溶解したのち、pH7.0に調製し、水を加えて1Lにする。これにAgar15gを添加し、オートクレーブ滅菌を行ったのち、無菌的に浅型シャーレに10mlずつ分注、液がシャーレ内に均一に行き渡るようにし、固化させる。
エアフィルタとしては、e〜iのものを用いた。
e.ゼラチンフィルタ
ザルトリウス社製,直径:9cm,ポアサイズ:3μm
ザルトリウス社製,直径:9cm,ポアサイズ:0.45μm
アイシス社製,直径:4.5cm,ポアサイズ:0.1μm
ミリポア社製,ニュークリポアー・メンブレンフィルタ,直径:4.5cm,ポアサイズ:0.1μm,0.05μm
市販のオブラート,直径:9cm,ポアサイズ:不明
MD8エアポート ザルトリウス社製
○宿主大腸菌とファージ液の調製
宿主大腸菌およびファージφX174は共に、NBRC(http://www.nbrc.nite.go.jp/)より入手した。NBRC添付のマニュアルに従い、宿主大腸菌のアンプルを開封し、200μlの復水液702を添加した。数分静置ののち、アンプル底部をタッピングして混和し、数μlを複数の寒天平板培地(medium 802)に塗布した。また、数十μlを、予め、培養試験管に分注した復水液702,4mlに加えて軽く混和した。30℃に設定したインキュベータ中に置き、平板寒天プレートは静置、培養試験管は150rpmで振とうし、終夜培養した。寒天平板培地、培養試験管ともに大腸菌の増殖が確認されたことから、寒天平板培地よりコロニーを単離し、フレッシュな復水液702を分注した培養試験管に移し、30℃下に振とう培養を行った。十分な増殖を確認したのち、滅菌済みdimethylformamide(DMSO)を終濃度10%、あるいは、20%になるように大腸菌液に加えたのち、−80℃下に保存した。
前記モデルウイルスを使用し、容量24m3の実験空間内にモデルウイルスを散布し、各種エアフィルタによるモデルウイルス捕集実験を行った。
捕集終了後に各エアフィルタを取り外し、抽出液としての復水液702に、溶解、あるいは洗浄によりフィルタ上に捕集された捕集物を回収した。さらに捕集物に含まれるモデルウイルスを宿主大腸菌に感染させ、一定時間経過後、モデルウイルスによるプラークの形成(プラークアッセイ)を観察した。
モデルウイルスを復水液702で10倍希釈(50μlのファージφX174に復水液702を450μl加える)し、10-1〜10-8までの希釈系列を調整した。対数増殖期にあると思われる宿主大腸菌培養液を、培養試験管に250μlずつ分注し、ついで、モデルウイルス希釈系列を50μlずつ添加し、タッピングして十分混和した。37℃下に15分間振とう培養を行った。培養後の各試験管に、45℃下にインキュベートしておいた0.6%ソフトアガー溶液7mlを加え、泡立たせないよう素早くピペッティングにより攪拌した。予め、37℃下にインキュベートした寒天平板培地に播き込み、ソフトアガーが全面に行き渡るよう均し、室温で固化させた。37℃に設定したインキュベータ中に静置し8時間培養後(その後4℃保存)、形成されたプラーク数を計測した。
モデルウイルスの回収状況について表1にまとめた。一部のエアフィルタは、使用したエアーサンプラーと規格が合わず、サンプリング操作が困難であったため、ファージ回収の有無を評価できなかったが、ゼラチンフィルタ、およびニトロセルロースフィルタについては、ファージの回収を確認する事ができた。
また、表2にファージの回収が可能であったフィルタについてその回収率をまとめた。表2より、インフルエンザウイルスと同等の大きさのモデルウイルス(コントロールファージ)が捕集されたプラークが検出されていることから、前記ゼラチンフィルタ、ニトロセルロースフィルタと同等の孔径を有する材質のものであれば、エアフィルタとして用いることができることがわかった。
発色基質をニトロセルロース膜に固定化してシート状にしたものを作成して、発色基質シートとし、エアフィルタに捕集されたインフルエンザウイルスに基づくノイラミニダーゼをモデル化して、種々材質のエアフィルタ用材料にノイラミニダーゼを固定化したものを作製した。この固定化ノイラミニダーゼを微量の水の存在下に接触させることにより、上記実施例1,2の転写部、抽出部における反応を再現し、その光学的検出を検討した。
まず、ノイラミニダーゼと発色基質との反応性について検討した。
a.発色基質:
4−Methylumbelliferyl−N−acetyl−α−D−neuraminic acid, Ammonium salt(4MU−NANA),ナカライテスク,cat No.23229−04
(蛍光測定のための推奨波長は λex(励起光波長):365nm, λem(蛍光波長):445nm)
ナカライテスク, cat No.24229−61,80U/mg or more
R & D systems, cat No.484−NM, recombinant
50mM Tris, 5mM CaCl2, 200mM NaCl, pH7.5
ザルトリウス社製,直径:9cm,ポアサイズ:3μm
Labsystems,蛍光プレートリーダー,Acent FL
(λex:355nm, λem:460nm)
前記発色基質をDMSOにて溶解し10mM溶液を調製する(これを基質原液とする)。基質原液をassay bufferにて400μMになるように希釈し基質溶液とする。(基質溶液中のDMSO終濃度は4%である)これを、assay bufferに溶解させて50μlとした溶液を用意する(即ち、アッセイ系当りのDMSO濃度は終濃度として2%である)。
検討したノイラミニダーゼ2種は、4MU−NANAと反応することが観察され、本アッセイ系にて酵素活性を確認する事ができた(図6、図7)。したがって、観測対象のインフルエンザウイルスの持つノイラミニダーゼと反応する発色基質を選択すると、少量のインフルエンザウイルスであっても発色基質の発色によって検知できることがわかる。この結果に基づき、以下、実験系としては、より入手容易な、 Arthrobacter ureafaciens由来ノイラミニダーゼを用いる。
次に、エアフィルタに捕集されたインフルエンザウイルスから溶離させたノイラミニダーゼと、発色基質との反応について検討した。ゼラチンフィルタの場合、ファージ捕集後のフィルタを溶解し、その溶液をノイラミニダーゼ活性測定系に持ち込む事となるため、ゼラチンフィルタ溶解液がノイラミニダーゼ活性測定系に与える影響を検討した。
a.発色基質:
4−Methylumbelliferyl−N−acetyl−α−D−neuraminic acid, Ammonium salt(4MU−NANA),ナカライテスク,cat No.23229−04
(蛍光測定のための推奨波長は λex(励起光波長):365nm, λem(蛍光波長):445nm)
ナカライテスク, cat No.24229−61,80U/mg or more
50mM Tris, 5mM CaCl2, 200mM NaCl, pH7.5
ザルトリウス,直径:9cm,ポアサイズ:3μm
Labsystems,蛍光プレートリーダー,Acent FL
(λex:355nm, λem:460nm)
ゼラチンフィルタを2mlの超純水(milliQ水)を加え、37℃、5分静置し均一な溶液とした(ゼラチンフィルタ溶解液)。また、ノイラミニダーゼはA. ureafaciens 由来ノイラミニダーゼをassay bufferで初濃度0.022U/mlになるように調製し、検討に用いた。
インフルエンザウイルス捕集能力の試験で用いたゼラチンフィルタは、10mlの培地溶液に溶解し、試験系に持ち込まれたのに対し、実際のインフルエンザウイルス検知装置では、2mlの超純水に溶解させていることから、セラチンフィルター溶解液は、上記条件の約5倍濃度でノイラミニダーゼ活性測定系に混合されている。しかし、結果は図8のようになり、この場合においても、ゼラチンフィルタ溶解液(○印)と、培地のみの系(△印)を比較しても蛍光強度に大きな差はなく、ノイラミニダーゼ活性への影響はほとんど無いことがわかる。
次に前記発色基質を、シート基材に固定した発色基質シートのノイラミニダーゼとの反応性を調べた。
a.ニトロセルロース膜:
アドバンテック社製
Arthrobacter ureafaciens 由来ノイラミニダーゼ:
ナカライテスク, cat No.24229−61,80U/mg or more
4−Methylumbelliferyl−N−acetyl−α−D−neuraminic acid, Ammonium salt(4MU−NANA),ナカライテスク,cat No.23229−04
50mM Tris, 5mM CaCl2, 200mM NaCl, pH7.5
前記発色基質4MU−NANAを10%DMSO含有assay bufferにて、200, 400, 800μMに調製した。3.5cm角に裁断したニトロセルロース膜に対し、上記溶液1mlを付着させ、遮光下、室温1〜2時間反応させ固定した。ニトロセルロース膜をassay bufferで十分に洗浄後、37℃,30分間インキュベートして完全に乾燥させ、発色基質シートを得た。
前記蛍光測定器の分析面積に合わせて、上記発色基質シートを直径約1.5cmの円形に切り出し、前記蛍光測定器の測定部に装着した。前記発色基質シートに、assay buffer、あるいは、ノイラミニダーゼ(0.0831U/ml),0.1mlを添加して基質固定化膜を湿潤させ、ノイラミニダーゼ反応による発色基質シート上の蛍光強度の変化を測定した。
その結果、発色基質シートに対し、膜表面が濡れる程度の少量のノイラミニダーゼ溶液を添加することにより、直ちに酵素反応が開始し、ニトロセルロース膜ではノイラミニダーゼ溶液の添加と共に反応が開始される(図9)ことがわかった。
つまり、発色基質シート上の発色基質であってもノイラミニダーゼと反応して良好に発色反応を行えるため、発色基質を膜に固定しても、インフルエンザウイルス検知に用いることができることがわかった。
さらに、発色基質シートとエアフィルタ上のノイラミニダーゼ(ノイラミニダーゼ固定化膜)との反応性について調べた。この系が、本発明のインフルエンザウイルス検知方法及び装置の発色検知ユニットの構成を再現するものとなる。
a.ニトロセルロース膜:
アドバンテック社製
イムノクロマト用Hi Flow(HF)メンブレン:
ミリポア社製
Arthrobacter ureafaciens 由来ノイラミニダーゼ:
ナカライテスク, cat No.24229−61,80U/mg or more
4−Methylumbelliferyl−N−acetyl−α−D−neuraminic acid, Ammonium salt(4MU−NANA),ナカライテスク,cat No.23229−04
50mM Tris, 5mM CaCl2, 200mM NaCl, pH7.5
Labsystems,蛍光プレートリーダー,Acent FL
(3−2−3)の=発色基質シートの調製=の項と同一操作にて、発色基質(4MU−NANA,10%DMSO含有水溶液)をHFメンブレンに固定化し、発色基質シートを得た。一方、ノイラミニダーゼについては、シート基材としてニトロセルロース膜を使用し、ノイラミニダーゼ(メンブレンへの作用量:0.0110U)をニトロセルロース膜にマウントし、室温1時間静置したのち、assay bufferで十分に洗浄後、37℃,30分間インキュベートして完全に乾燥させて、ノイラミニダーゼ固定化膜を得た。それぞれ、蛍光測定器の分析面積に合わせ、直径約1.5cmの円形部分を切り出し、以下の3条件にて室温下に静置させた。10分経過後に接触させたノイラミニダーゼ固定化膜を除去し、各八色基質シート上の蛍光強度を経時的に測定した。
(2)発色基質シート+ノイラミニダーゼ固定化膜(両者接触、基質+酵素(水なし))、
(3)発色基質シート+50μlのassay bufferと接触させたノイラミニダーゼ固定化膜(両者接触、基質+酵素(水あり))
ノイラミニダーゼ固定化膜除去後10分経過した基質固定化膜上の蛍光強度を、図10に示した。20分経過後も蛍光強度に変化は見られず、反応はプラトーに達しているものと考えられた。assay bufferで表面を湿潤されたノイラミニダーゼ固定化膜の場合(両者接触、基質+酵素(水あり))のみ、基質固定化膜上での基質の分解による蛍光物質の生成が観察された。
先の実施の形態においては、インフルエンザウイルスとして居室空間R内の空気中に含まれるものを対象に捕集する場合を例示して説明したが、実施例3に示すように発色基質とインフルエンザウイルス由来のノイラミニダーゼが反応して発色する現象に基づきインフルエンザウイルスを検知するものであるから、検知対象箇所としては居室空間Rに限るものではない。
V インフルエンザウイルス
L 発色基質
L1 ノイラミン酸部分
L2 発色生成物
NA ノイラミニダーゼ
1 サンプリングユニット
11 フィルタ部
11a エアフィルタ
12a エアポンプ
12 エア流通部
13 排気口
2 発色検知ユニット
21 シート供給部
21a 発色基質シート
21s シート基材
22 転写部
23 抽出液供給部
23a 抽出液
23b 反応液
24 検知部
24a 発光素子
24b 受光素子
25 抽出部
3 再生ユニット
31 再生部
32 燃焼部
32a バーナ
4 フィルタ搬送機構
41 排出ポンプ
Claims (15)
- インフルエンザウイルスをエアフィルタにより捕集し、前記エアフィルタをノイラミニダーゼ抽出液に接触させ、前記エアフィルタに接触したノイラミニダーゼ抽出液を、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼにより分解されて発色するノイラミニダーゼ発色基質に反応させ、そのノイラミニダーゼ発色基質の発色により雰囲気中に含まれるインフルエンザウイルスを検知するインフルエンザウイルス検知方法。
- 前記エアフィルタが、ゼラチンからなる請求項1に記載のインフルエンザウイルス検知方法。
- 前記エアフィルタが、ニトロセルロース、ポリカーボネート、銀、セラミクスからなる群より選ばれる少なくとも一種の材質からなる請求項1に記載のインフルエンザウイルス検知方法。
- 前記ノイラミニダーゼ抽出液が界面活性剤成分を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルス検知方法。
- 前記ノイラミニダーゼ発色基質がシアル酸を結合した発色団である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルス検知方法。
- 前記ノイラミニダーゼ発色基質をシート基材に固定化しておき、前記エアフィルタにより捕集された捕集物を前記ノイラミニダーゼ抽出液により前記シート基材に転写して前記ノイラミニダーゼ発色基質を発色させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルス検知方法。
- 前記ノイラミニダーゼ発色基質を前記ノイラミニダーゼ抽出液に含有させておき、前記エアフィルタにより捕集された捕集物に、前記ノイラミニダーゼ抽出液を供給して前記ノイラミニダーゼ発色基質を発色させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルス検知方法。
- 前記エアフィルタにより捕集された捕集物に、前記ノイラミニダーゼ抽出液を接触させて得られた抽出物に、前記ノイラミニダーゼ発色基質を供給し前記ノイラミニダーゼ発色基質を発色させる請求項1〜5のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルス検知方法。
- インフルエンザウイルスを捕集可能なエアフィルタを着脱可能なフィルタ部を備え、前記フィルタ部を介して空気を流通させるエア流通部を備えたサンプリングユニットを設け、ノイラミニダーゼ発色基質をシート基材に固定化した発色用シートに対し、前記エアフィルタにより捕集された捕集物をノイラミニダーゼ抽出液により転写する転写部を備えるとともに、前記転写部で転写された前記捕集物とノイラミニダーゼ発色基質との反応による発色を検出する検出部を備えた発色検知ユニットを設けたインフルエンザウイルス検知装置。
- インフルエンザウイルスを捕集可能なエアフィルタを着脱可能なフィルタ部を備え、前記フィルタ部を介して空気を流通させるエア流通部を備えたサンプリングユニットを設け、ノイラミニダーゼ発色基質をノイラミニダーゼ抽出液に含有させておき、前記エアフィルタにより捕集された捕集物に、前記ノイラミニダーゼ抽出液を供給して、得られた反応液を受ける抽出部を設け、前記抽出部における前記捕集物とノイラミニダーゼ発色基質との反応による発色を検出する検出部を備えた発色検知ユニットを設けたインフルエンザウイルス検知装置。
- インフルエンザウイルスを捕集可能なエアフィルタを着脱可能なフィルタ部を備え、前記フィルタ部を介して空気を流通させるエア流通部を備えたサンプリングユニットを設け、前記エアフィルタにより捕集された捕集物に、ノイラミニダーゼ抽出液を接触させて得られた抽出物を受ける抽出部を設け、ノイラミニダーゼ発色基質を供給して、前記抽出物とノイラミニダーゼ発色基質との反応による発色を検出する検出部を備えた発色検知ユニットを設けたインフルエンザウイルス検知装置。
- 前記エアフィルタが、ポリカーボネート、銀、セラミクス、からなる群より選ばれる少なくとも一種の材質からなり、前記エアフィルタを再生する再生ユニットを設けた請求項9〜11のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルス検知装置。
- 前記再生ユニットが、前記エアフィルタを洗浄処理、オートクレーブ処理または燃焼処理により再生するとともに、前記検出部におけるノイラミニダーゼ発色基質の発色廃液を無害化するオートクレーブ処理または燃焼処理を行う請求項12に記載のインフルエンザウイルス検知装置。
- 前記エアフィルタがサンプリングユニット、発色検知ユニット、再生ユニットの順に稼動する一体型ユニットである請求項12または13に記載のインフルエンザウイルス検知装置。
- 前記エアフィルタがサンプリングユニット、発色検知ユニット、再生ユニットの順に移動可能にする移動機構を設けてある請求項12または13に記載のインフルエンザウイルス検知装置。
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