JP5705271B2 - 二酸化炭素の輸送方法、処分方法及び搬送方法 - Google Patents

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Description

この発明は、二酸化炭素を地中に埋設、貯蔵する処分方法(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)の具現化などに好適な二酸化炭素の輸送方法、処分方法及び搬送方法に関する。
地球温暖化ガスである二酸化炭素の処分方法として、二酸化炭素を深い地層に埋め込んで貯蔵する方法(CCS)が検討されている。
例えば、天然ガスの消費地で排出された二酸化炭素を回収し、これを液化または固化した状態でLNGタンカーなどにより天然ガス産出地に輸送し、天然ガス田の空井戸に送り込む方法も検討されている。
これらの処分方法では、大量の二酸化炭素を安価に安全に効率よく輸送する必要がある。
特開平5−18039号公報には、大量の二酸化炭素を安全に遠距離輸送するための方法として、二酸化炭素を液化し、この液化二酸化炭素をタンカーの断熱構造とされた船倉に送り、船倉内で大気圧噴霧して雪状の固体状二酸化炭素として堆積させ、輸送する方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、液化二酸化炭素を大気圧噴霧する際に、二酸化炭素の約40%しか固体状二酸化炭素にならず、残りの約60%がガスに変化するため、効率が極めて悪い。
また、船倉内に堆積した固体状二酸化炭素が外部から侵入した水分による結露とその自重などによりブロック状に固化してしまい、これの搬出が容易ではないなどの不具合がある。また、船倉内に固体状二酸化炭素を噴出させた場合、山のように積み上げられて荷崩れする恐れがあった。
液化二酸化炭素を低温タンクに充填して輸送する方法も考えられるが、液化状態を保つためには、少なくとも5.3MPa以上の圧力が必要であり、これに耐える耐圧構造、液化二酸化炭素の温度・圧力によっては、低温で使用可能な特殊材料を用いた低温タンクを用いねばならず、通常の外航用大型LNGタンカーのLNGタンクを利用することができず、実用性を欠く。これは、この種のLNGタンクが温度−162℃、圧力大気圧の設定条件で設計されているからである。
特開平5−18039号公報
よって、本発明における課題は、大量の二酸化炭素を無駄なく、効率よく搬送、貯蔵でき、かつ運送することができるようにすることにあり、これによりCCSの実現に寄与できるようにすることにある。
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、液化二酸化炭素またはガス状二酸化炭素を、容器内に貯えられている液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンのいずれかからなる低温液体中、あるいは液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンのいずれかからなる低温液体と天然ガス、メタン、エタン、窒素、アルゴンの少なくとも1種類を含む容器の気相部に吹き込んで、低温液体中に固体の二酸化炭素が存在する混合物として容器内に貯えた後、この容器を目的地まで輸送し、目的地において、該容器から前記混合物を搬出し、ついでこの混合物から二酸化炭素を分離することを特徴とする二酸化炭素の輸送方法である。
請求項2にかかる発明は、前記混合物を目的地において容器から搬出し、この混合物が有する寒冷を天然ガス、メタン、エタンの液化に利用することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の輸送方法である。
請求項3にかかる発明は、前記容器がLNGタンカーの低温タンクであり、LNGタンカーで目的地まで輸送することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素の輸送方法である。
請求項4にかかる発明は、前記低温液体が、精製済みの液化天然ガス、液化メタン、液化エタンであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二酸化炭素の輸送方法である。
請求項5にかかる発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の輸送方法で輸送した二酸化炭素を系外に送り、深度地中埋設により処分することを特徴とする二酸化炭素の処分方法である。
請求項6にかかる発明は、LNGタンカーの低温タンクに貯留した、液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンのいずれかからなる低温液体中に固体の二酸化炭素が存在してなる二酸化炭素混合物を、配管を介して搬送することを特徴とする二酸化炭素の搬送方法である。
請求項7にかかる発明は、前記低温液体が、精製済みの液化天然ガス、液化メタン、液化エタンであることを特徴とする請求項6に記載の二酸化炭素の搬送方法である。
本発明の二酸化炭素の搬送方法および輸送方法によれば、大量の二酸化炭素を無駄なく、容易に低温液体中に固体として閉じこめて固定化できる。この混合物は、撹拌などを行うことにより、流動性に富むスラリー状態に変化し、ポンプなどにより簡単に移送できるので、配管による移送、容器による貯蔵、輸送が極めて容易になる。特に、前記混合物をタンクなどの容器内に低圧で長期保存できる。このため、LNGタンカーなどによる大量輸送が可能になる。
本発明の実施形態を示す概略構成図である。
図1は、本発明の二酸化炭素の貯蔵方法の一例を示すもので、この実施形態の説明において、本発明の二酸化炭素混合物、その製造方法、搬送および輸送方法を説明する。
火力発電所などから排出される燃焼排ガス等のガス状二酸化炭素を含む各種ガスからガス状の二酸化炭素を分離、回収する。燃焼排ガスなどからのガス状二酸化炭素の分離、回収方法には、アミン水溶液を吸収媒体とする周知の分離、回収方法などが用いられる。
このようにして回収されたガス状二酸化炭素は、予め図示しない精製装置により硫黄化合物、一酸化炭素、水分、水素などの不純物が除去されて精製されたのち、ガス状二酸化炭素として、ガスブースター等により導出され、管5を経て大型の低温タンク6内に送り込まれる。また、該ガス状二酸化炭素は、管1の途中で液化天然ガスを利用して冷却され、液化器2に送られて、例えば温度−20℃、圧力2MPaの液化二酸化炭素とされ、該液化二酸化炭素は低温貯槽3に一旦貯留される。低温貯槽3内の液化二酸化炭素は、ポンプ4により導出され、管5を経て大型の低温タンク6内に送り込まれる。液化二酸化炭素中の水分濃度は、0.12vol%以下が望ましい。
ガス状二酸化炭素または液化二酸化炭素は、管5を経て大型の低温タンク6内に送り込まれる。低温タンク6内には予め低温液体としての液化天然ガス(LNG)Aが貯えられている。低温液体としては、液化天然ガス以外に液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンなどが用いられる。これ以外の低温液体としては、二酸化炭素が固体状態を維持できる温度、圧力において液状をなす物質、例えば、水素、ヘリウム、クリプトン、キセノンなどが挙げられるが、コストなど実用性を考慮すると、大気圧における沸点が二酸化炭素の融点を下回る液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンが好ましい。
低温液体として天然ガス田から採掘した天然ガスを液化した液化天然ガスを用いる際には、ガス田から採掘した天然ガスを予め精製し、これに含まれている二酸化炭素、硫化水素などの硫黄化合物、メタン以外の炭化水素を除去し、この精製後の天然ガスを液化して得られた液化天然ガスを用いることが好ましい。精製後の液化天然ガス中の水分濃度は、0.01%以下が望ましい。
低温タンク6内の下部には液化天然ガスAが、上部には気化した天然ガスBが存在している。
管5からの液化二酸化炭素は、低温タンク6の底部から上方に延びる散気管7の先端部分から液化天然ガス中に吹き出される。液化天然ガスの温度が−162℃以下、圧力が5.3MPa未満であるので、散気管7から吹き出された液化二酸化炭素は、液化天然ガス中でただちに固化し、固体粒子に変化し、液化天然ガス中に分散していく。
この時、散気管7から吹き出されたガス状二酸化炭素または液化二酸化炭素は、ほぼ全量が固化し、ほとんどガスとなることはない。液化天然ガス1000kg中に二酸化炭素を固体状で800〜950kg程度分散させることができる。
液化二酸化炭素の低温タンク6内への吹き込みは、天然ガス、メタン、エタン、窒素、アルゴンなどの少なくとも1種類を含む気相部に行ってもよい。具体的には、低温タンク6の上部に設けた別の散気管8を用いて管9から導入される液化二酸化炭素を液滴状にして液化天然ガス上に降らせてもよい。
また、液化天然ガスまたは気相部へ吹き込む二酸化炭素は、ガス状二酸化炭素でもよい。
このようにして形成された液化天然ガスなどの低温液体と固体粒子状の二酸化炭素とからなる混合物は、大量の固体状二酸化炭素が固定化されて、当初は固体状二酸化炭素を含むスラリー状となっており、流動性を保っている。
低温タンク6内での貯蔵では、液化天然ガスと固体状二酸化炭素との比重がかなり違い、液化天然ガスの比重が0.43〜0.48であるのに対して固体状二酸化炭素の比重が1.56であるので、静置しておけば固体状二酸化炭素は沈殿、堆積する。しかし、この混合物を撹拌すると、元の流動性を備えたスラリー状の形態に戻る。
このような混合物を本発明の二酸化炭素混合物と言い、その形成方法を同じく本発明の二酸化炭素混合物の製造方法と言う。
このように液化天然ガスなどの低温液体中に固体状の二酸化炭素が存在した状態が維持できる限り、固体状二酸化炭素を固定化した状態で長期にわたって保存することが可能である。
本発明の二酸化炭素の貯蔵方法は、低温タンク6などの容器内に、液化天然ガスなどの低温液体中に固体状の二酸化炭素が存在している状態の混合物を貯留するものである。
この二酸化炭素混合物の貯蔵に際しては、低温タンク6内の液化天然ガスを液状態に保つ必要があり、このためにチラーユニット11が設けられている。管12から低温タンク6内のガス状の天然ガスを抜き出し、これをチラーユニット11で液化して液化天然ガスとして、管13を介して低温タンク6内に戻すように構成されており、これにより低温タンク6内で天然ガスをガス状および液状で保持し、圧力上昇による低温タンク6の破損を防止できる。
また、低温タンク6内で気化した天然ガスを回収、必要に応じて精製のための管10が低温タンク6の上部に接続されている。
なお、低温タンク6への液化二酸化炭素の吹き込みに先立ち、低温タンク6内の気相部を天然ガス、メタン、エタン、炭酸ガス、窒素などでパージしておくこともできる。
侵入熱または低温タンク6へのガス状二酸化炭素または液化二酸化炭素の吹込みにより気化した天然ガスは、低温タンク6上部に設けた管21から導出され、熱交換器22で管23内を流れる液化天然ガスと熱交換させ、冷却または再液化のうえ低温タンク6に戻し、再利用することができる。
低温タンク6内に貯蔵された前記混合物を低温タンク6から搬出するには、低温タンク6内を撹拌羽根で撹拌したり、液化天然ガスを吹き込んで撹拌したりすることにより、沈殿している固体状の二酸化炭素を撹拌してスラリー状としたのち、低温タンク6の下部からポンプ14により前記流体を抜き出す。このスラリー状の混合物を管15を経てリザーブタンク16に送り込み、ここに一旦貯留する。
前記混合物の搬出に際しての低温タンク6内の固体状二酸化炭素と液化天然ガスとの量比は、体積比で固体状二酸化炭素:液化天然ガス=1:1〜1:10、好ましくは固体状二酸化炭素:液化天然ガス=1:5とすることが好ましく、このような量比とすることで流動性に富むスラリーとすることができる。この量比にするためには、必要に応じて低温タンク6内に液化天然ガスを加えることも可能である。
リザーブタンク16内では、前記混合物がガス状または液状の天然ガスと固体粒子状の二酸化炭素とに分離され、ガス状の天然ガスは管17から低温タンク6に戻される。固体粒子状の二酸化炭素は、リザーブタンク16内で必要に応じて、天然ガス等で加温されて気化し、ガス状二酸化炭素となって、管18から系外に送られ、例えば、該ガス状二酸化炭素を液化して天然ガス田の空井戸に圧入して、深度地中埋設(CCS)などにより処分される。一方、天然ガスは固体状二酸化炭素の寒冷を利用して冷却、更には液化される。
低温タンク6からの前記混合物の搬出の終期に、固体状の二酸化炭素のみが残った場合には、管19から低温タンク6に液化天然ガスを補給してもよく、スラリー状を保つようにして、搬出を行う。この補給のための液化天然ガスには、リザーブタンク16から回収された液化天然ガスを用い、管20を介して管17から低温タンク6に導入することが望ましい。
また、リザーブタンク16として、目の細かいメッシュプレートやパンチングプレートを仕切り板として内部に設けた固液分離タンクを用いたり、またはサイクロンなどの一般的な固液分離方法を利用することができる。
次に、本発明の二酸化炭素の輸送方法の一例について説明する。
この輸送方法は、低温タンク6を船舶や車両などの運搬手段によって目的地まで輸送するものである。
船舶による輸送にあっては、例えば低温タンク6にLNGタンカーのLNGタンクをそのまま用いることができる。天然ガス産出地からのLNGタンカーが天然ガス消費地に着き、液化天然ガスを荷揚げした後の空のLNGタンクを利用し、これに少量の液化天然ガスを貯めておき、上述のようにして、液化二酸化炭素を注入して前記混合物を作製して貯蔵したのち、このLNGタンカーを天然ガス産出地に回漕することができる。この輸送方法では、天然ガス産出地と消費地との間の往路および復路においてともに積荷を運ぶことになり、LNGタンカー製造のイニシャルコストはもちろんのこと復路をバラスト水を積載して航行していることから比較すると極めて経済性が高いものとなる。
また、別の低温タンクにおいて、予め上述のようにして前記混合物を作製しておき、これをLNGタンカーのLNGタンクやローリ車の断熱タンクにポンプにより移送し、輸送するようにしてもよい。
図1において、一連の設備は、一点鎖線で3つの領域に区画されている。区画Lは、例えば二酸化炭素の排出地である日本などに設けられた陸上設備であり、区画Mは、例えばLNGタンカーなどの船舶やタンクローリーなどの車両などの輸送設備であり、区画Nは、例えば天然ガス田などがある中東地域などに設けられた陸上設備である。
例えば、区画Lにおいて、液化二酸化炭素を製造し、この液化二酸化炭素を接岸中のLNGタンカーのLNGタンク(低温タンク6)に送給して前記混合物としてLNGタンク内に貯蔵する。LNGタンカーが航海をして区画Nに接岸したならば、LNGタンクから前記流体を搬出し、リザーブタンク16に送ることができる。
(実験例)
内容量20リットルの撹拌羽根付きステンレス鋼製真空断熱密閉タンク内に10kgの液化天然ガスを貯え、タンク内の温度を−163℃、圧力を0.2MPa(G)とした。タンクの底部から、内径3mmの散気管により、温度−20℃、圧力20MPa(G)の液化二酸化炭素10kgを3時間かけて吹き込んだ。
タンク内に小形LCDカメラを投入して液化天然ガス中に沈め、その状況を観察したところ、粒径約5〜100μmの白色の固体粒子状の二酸化炭素が分散しているのが確かめられた。
タンク内の温度、圧力を上述の値に保持して、2週間経過した後のタンク内の液化天然ガスを撮影したところ、白色の固体の二酸化炭素がタンク底部に堆積しているのが確かめられた。
このことから、二酸化炭素を長時間、安定して液化天然ガス中に貯蔵できることが確認できた。
また、撹拌羽根を回転させて内容物を撹拌したところ、沈殿していた固体状二酸化炭素が粒子状となって液化天然ガス中に分散したことも確認できた。
1、5、9、10、12、13、15、17、18、19、20、21、23・・管、2・・液化器、3・・低温容器、4、14・・ポンプ、6・・低温タンク、7、8・・散気管、11・・チラーユニット、16・・リザーブタンク、22・・・熱交換器

Claims (7)

  1. 液化二酸化炭素またはガス状二酸化炭素を、容器内に貯えられている液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンのいずれかからなる低温液体中、あるいは液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンのいずれかからなる低温液体と天然ガス、メタン、エタン、窒素、アルゴンの少なくとも1種類を含む容器の気相部に吹き込んで、低温液体中に固体の二酸化炭素が存在する混合物として容器内に貯えた後、この容器を目的地まで輸送し、目的地において、該容器から前記混合物を搬出し、ついでこの混合物から二酸化炭素を分離することを特徴とする二酸化炭素の輸送方法。
  2. 前記混合物を目的地において容器から搬出し、この混合物が有する寒冷を天然ガス、メタン、エタンの液化に利用することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の輸送方法。
  3. 前記容器がLNGタンカーの低温タンクであり、LNGタンカーで目的地まで輸送することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素の輸送方法。
  4. 前記低温液体が、精製済みの液化天然ガス、液化メタン、液化エタンであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二酸化炭素の輸送方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の輸送方法で輸送した二酸化炭素を系外に送り、深度地中埋設により処分することを特徴とする二酸化炭素の処分方法。
  6. LNGタンカーの低温タンクに貯留した、液化天然ガス、液化メタン、液化エタン、液化窒素、液化アルゴンのいずれかからなる低温液体中に固体の二酸化炭素が存在してなる二酸化炭素混合物を、配管を介して搬送することを特徴とする二酸化炭素の搬送方法。
  7. 前記低温液体が、精製済みの液化天然ガス、液化メタン、液化エタンであることを特徴とする請求項6に記載の二酸化炭素の搬送方法。
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