JP5704899B2 - シリコン発光素子に用いる活性層およびその活性層の製造方法 - Google Patents

シリコン発光素子に用いる活性層およびその活性層の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリコン発光素子に用いる活性層およびその活性層の製造方法に関する。
シリコンは、異なる波数ベクトルをもつ電子とホールとの間に約1.2eVのバンドギャップを有する半導体である。このような半導体は間接遷移型半導体と呼ばれ、キャリアは、フォノンによる散乱の助けを借りて再結合し、発光する。一般に、フォノンの散乱を介したキャリアの再結合が室温で起こる確率は非常に低く、従来シリコンを発光素子の活性層として用いるのは難しいと考えられてきた。
しかし、近年、シリコンを直径1〜20nmのナノ粒子とすると、発光素子の活性層として十分な量子効率が得られることが分かり、シリコンナノ粒子を用いた発光素子の開発が盛んに行われている。
以下、図7を用いて、シリコンナノ粒子を用いた発光素子の構造を説明する。
図7において、活性層800は、シリコンナノ粒子802とシリコンナノ粒子802を取り囲むバリア領域804により構成されている。バリア領域804はシリコンナノ粒子802よりもバンドギャップの大きい物質により形成されている。バリア領域804の物質としては、シリコン酸化物およびシリコン窒化物などがある。活性層800は、キャリアを均一に注入するために、ホール拡散層810と電子拡散層820とで挟まれている。
一般的に、ホール拡散層810としてはp型にドープされたシリコン、電子拡散層820としてはITOなどの透明電極が用いられる。また、ホール拡散層810や電子拡散層820として、ドーピングされたSiC、GaAs、GaNなどの他の半導体を用いてもよい。
ホール拡散層810と電子拡散層820はアノード830およびカソード840を介して電源850に接続される。電源850より供給され、ホール拡散層810と電子拡散層820を通過したキャリア(電子およびホール)は、トンネリングによりシリコンナノ粒子802の内部に注入され、再結合して光を発する。発光する光の波長はシリコンナノ粒子802の直径により決まり、直径約1〜3nmのナノ粒子は可視光領域で発光し、約1〜3nm以上の直径を有するナノ粒子は近赤外光で発光する。
このようなナノ粒子を活性層に用いた発光素子は、ナノ粒子に注入されることなく非発光再結合により消失するキャリアが存在し、輝度が低下してしまうという課題がある。以下、図8を用いてこの現象を説明する。
図8は、活性層を移動するキャリアの経路を表した模式図であり、説明の便宜上、電子の移動経路のみが記されており、ホールの移動経路は図示していない。移動経路910が示す通り、電子920はバリア領域804を移動してナノ粒子802に注入される。しかし、一方で、図8の点線で囲われた電子930のように、ナノ粒子に注入されることなくホール拡散層810に到達する電子も存在する。このようにナノ粒子に注入されることなくホール拡散層810に到達した電子は、ホールと非発光再結合する。そのため、ナノ粒子へのキャリア注入を制御する方法が必要となる。
ところで、特許文献1には、GaAs系において、ナノ粒子へのキャリア注入を制御する方法が開示されている。具体的には、バンドギャップの異なる二種類の半導体層を繰り返し積層し、二種類の半導体層のうちバンドギャップが低い層(低バンドギャップ層)にナノ粒子を埋め込んでいる。このとき、二種類の半導体層のうちバンドギャップが高い層(高バンドギャップ層)は、キャリアブロック層としての機能を持つ。
図9に、特許文献1に記載されている活性層の断面図を示す。図9において、活性層1000は、As(砒素)とIII族元素を含む混晶よりなるナノ粒子(量子ドット1030)と、その上に形成されたInGaAsPバリア層1020と、さらにその上に形成されたInAlGaAsバリア層1010とからなる。
この構造において、InAlGaAsバリア層1010のバンドギャップはInGaAsPバリア層1020のバンドギャップよりも大きい。そのため、InAlGaAsバリア層1010が高バンドギャップ層、InGaAsPバリア層1020が低バンドギャップ層となる。
図9の上下方向からキャリアを流したとき、InAlGaAsバリア層1010は基板に対して垂直方向にキャリアを閉じ込めるキャリアブロック層として働く。キャリアブロック層の近傍では、基板の垂直方向へのキャリアの移動が制限され、基板の面内方向に拡散し易くなる。
基板の面内方向に拡散するキャリアは量子ドット1030に到達すると、量子ドット1030とInGaAsPバリア層1020とのポテンシャル差により量子ドット1030の内部に引き寄せられ、注入される。すなわち、バンドギャップの異なる二種類の半導体を繰り返し積層し、その低バンドギャップ層にナノ粒子を埋め込む構造では、基板の垂直方向へのキャリアの移動が制限されて、量子ドット1030に注入されることなく活性層をすり抜けるキャリアが減少する。また、基板の面内方向のキャリアの拡散が増し、拡散によるキャリアの注入が促進され、発光効率が改善される。
特開2006−229010号公報
しかし、特許文献1で開示されている方法をシリコンナノ粒子に適用した場合、発光素子の駆動電圧が高くなってしまうという課題がある。以下、この課題を、図10を用いて詳しく説明する。
図10において、活性層1100は、SiO層1110とSi層1120とが交互に積層された多層膜で構成されている。ここで、Si(バンドギャップ約5eV)はSiO(バンドギャップ約8eV)よりもバンドギャップが小さい。シリコンナノ粒子1130は、低バンドギャップ層であるSi層1120の内部に埋め込まれている。Si層1120のバンドギャップはシリコンナノ粒子1130のバンドギャップ(1.1−4eV)よりも大きく、Si層1120はシリコンナノ粒子のバリア領域として働く。
また、SiO層1110のバンドギャップはSi層1120のバンドギャップよりも大きく、SiO層1110はキャリアブロック層としての効果を持つ。
ここで、SiO層1110によりブロックされた電子1160がシリコンナノ粒子に到達するためには、2つの経路が考えられる。1つめは、基板の面内方向に拡散してシリコンナノ粒子に到達する移動経路1150であり、2つめは、SiO層1110を通過して次の層のシリコンナノ粒子に到達する移動経路1140である。
このとき、Si層1120とSiO層1110とはバンドギャップの差が大きいため、電子がSiO層1110を通過するメカニズムはトンネリングとなる。すなわち、単位時間に通過する電子の数はSiO層1110の厚さに依存する。
ここで、SiO層1110を厚くし、電子がSiO層1110を透過する確率を減らした場合、面内方向の拡散(白矢印)が増加するが、トンネリングによりシリコンナノ粒子に到達する電子(黒矢印)が減少する。
逆に、SiO層1110を薄くし、電子がSiO層1110を透過する確率を増した場合、トンネリングによりシリコンナノ粒子に到達する電子(黒矢印)が増加するが、面内方向の拡散(白矢印)が減少する。
このように、SiO層1110の厚さを変化させるだけでは、基板の面内方向のキャリア拡散と、トンネリングによるキャリア注入の両方を高効率に行うのが難しい。
そこで、本発明は、基板の面内方向のキャリア拡散と基板垂直方向のキャリア注入を高効率に行うことのできる、シリコン発光素子用の活性層および該活性層の製造方法の提供を目的とする。
本願発明に係るシリコン発光素子に用いる活性層は、シリコン化合物からなる第1の層と、該第1の層よりもバンドギャップが大きいシリコン化合物からなる第2の層とが基板上に交互に積層された多層膜構造と、前記多層膜構造の中に設けられ、キャリアの注入により発光するシリコンナノ粒子と、を有し、前記第の層に含まれるシリコン原子の量は、前記第の層に含まれるシリコン原子の量よりも多く、前記第1の層と前記第2の層との境界面のうち、少なくとも一方の境界面を越えて前記シリコンナノ粒子が形成されていることを特徴とします。
本発明によれば、基板の面内方向のキャリア拡散と基板垂直方向のキャリア注入を高効率に行うことのできる、シリコン発光素子用の活性層および該活性層の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に従う活性層の構成を表す図 本発明の実施形態の効果を説明する図 トンネリングによりシリコン酸化膜を透過するキャリアの透過確率 本発明の実施形態に従う活性層の製造方法を説明する図 他の実施形態に従う活性層の構成を表す図(a)、および製造方法を説明する図(b) さらに他の実施形態に従う活性層を製作する方法を説明する図 従来例を説明するための図 従来例を説明するための図 従来例を説明するための図 本発明の課題を説明するための図
以下、本発明に係る実施形態を、添付図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係るシリコン発光素子の活性層の断面図である。
本実施形態において、基板上に活性層は、第1の層110と第2の層120が交互に積層された多層膜構造をしている。
第1の層110は、シリコン化合物140とシリコンナノ粒子130により構成されている。また、第2の層120は、第1の層110と異なる構成元素からなるシリコン化合物150とシリコンナノ粒子130により構成されている。シリコンナノ粒子130は、第1の層110と第2の層120の境界面170または境界面180の少なくとも一つの面を越えて形成されている。また、第2の層120のバンドギャップは、第1の層110のバンドギャップよりも大きい。
図1には、基板垂直方向におけるシリコン原子の存在量も記載されている。このように、第1の層110に存在するシリコン原子の量は、第2の層120に存在するシリコン原子の量よりも多くなっている。このような基板垂直方向におけるシリコン原子の存在量はSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)等を用いることにより分析することが可能である。
ここで構成元素とは、不純物を除外したその化合物を構成する元素のことをいう。
また、構成元素が一致するとは、元素の含有量に関わらず、その元素の組み合わせが一致することを指す。例えば、化学量論的組成を満たす窒化シリコンと、化学量論的組成を満たさない窒化シリコンは構成元素が一致する。
また、構成元素が異なるとは、元素の組み合わせが異なることを指す。例えば、窒化シリコンと酸化シリコンは構成元素が異なる。
上記のように、第1の層110のバンドギャップは、第2の層120のバンドギャップよりも小さくする必要があるため、この条件を満たすように、以下の表1に示した構成元素から、第1の層110と第2の層120の材料を適宜選択することができる。
例えば、第1の層110のシリコン化合物の構成元素をシリコン(Si)と炭素(C)、第2の層120のシリコン化合物の構成元素をシリコン(Si)と酸素(O)、または、シリコン(Si)と、窒素(N)とすることができる。また、例えば、第1の層110のシリコン化合物の構成元素をシリコン(Si)と窒素(N)、第2の層120のシリコン化合物の構成元素をシリコン(Si)と酸素(O)、または、シリコン(Si)と、酸素(O)と、窒素(N)とすることができる。
Figure 0005704899
なお、シリコン化合物を用いた場合、ホールの有効質量は電子の有効質量よりも大きく、拡散やトンネリングによるホールの移動度は電子移動度よりも小さくなる。よって、表1に挙げられたシリコン化合物にAl、B、Gaをp型のドーパントとしてドープして、ホールの拡散を促進してもよい。
以下では、第1の層110のシリコン化合物の構成元素をシリコン(Si)と窒素(N)、第2の層120のシリコン化合物の構成元素をシリコン(Si)と酸素(O)、または、シリコン(Si)と、酸素(O)と、窒素(N)とする実施例を挙げて本実施形態の作用と効果について説明する。
以下、図2を用いて、本実施形態の作用と効果を説明する。
図2は、活性層の断面図および活性層を構成するシリコン化合物のバンド図である。
第1の層110を構成するシリコン化合物はシリコンと窒素からなるシリコン窒化物であり、第2の層120を構成するシリコン化合物はシリコンと酸素からなるシリコン酸化物である。
第2の層120を構成するシリコン酸化物のバンドギャップ(〜8eV)は、第1の層110を構成するシリコン窒化物のバンドギャップ(〜5eV)よりも大きい。そのため、活性層において、第2の層120はキャリアブロック層としての効果をもち、キャリアの面外方向の移動を制限する。すなわち、キャリアは拡散により基板面内方向に移動し易くなる(白矢印:符号230)。また、面内方向を拡散により移動するキャリアは、シリコンナノ粒子に到達すると、シリコンナノ粒子130に注入され、発光する。
一方、キャリアの一部は第2の層120(シリコン酸化物)のポテンシャル障壁をトンネリングにより通過する(実線黒矢印:符号220)。一般にトンネリングによりポテンシャル障壁を透過する粒子の確率は、次式で表される|T|に比例する。
Figure 0005704899
ここで、dはポテンシャル障壁の厚さ、φ−Eはポテンシャル障壁の大きさ、mはキャリアの有効質量、
Figure 0005704899
はプランク定数である。
ポテンシャル障壁を透過する粒子の確率は、障壁の厚さdが厚くなると急激に減少する。本発明に係る実施形態において、シリコンナノ粒子130は第1の層と第2の層の境界面を越えて形成されているため、シリコンナノ粒子が接する第2の層の厚さ(距離A:図中点線)は、シリコンナノ粒子が接していない第2の層の厚さ(距離B:図中点線)よりも薄い。
図3は、ポテンシャル障壁の大きさφ−Eおよび厚さdを変えたときの、トンネリングによる電子の透過確率である。図3から明らかなように、厚さdが0.5nm変化すると透過確率は一桁以上変化する。例えば、図3において、酸化シリコンの厚さAが厚さBよりも0.5nm以上薄くなると、シリコンナノ粒子に向かうキャリアの透過確率が10倍以上増すことが分かる。
このようなキャリアのトンネリングが実現されるためには、第1の層と第2の層との少なくとも一つの境界面を越えてシリコンナノ粒子が形成されていればよい。
ただし、第1の層110と第2の層120の境界面の両方の境界面を越えて形成されたシリコンナノ粒子240が存在する形態がより望ましい。このとき、電子とホールのどちらも、同一のシリコンナノ粒子に対して選択的に注入される。
また、第2の層におけるシリコン化合物の構成元素がシリコン、酸素および窒素であっても、第2の層のバンドギャップは第1の層のバンドギャップよりも大きくなるため、上記のように、第2の層としてシリコンと酸素と窒素を含む材料を用いることができる。
以上のように、本発明の実施形態で説明した活性層の構造を用いると、第2の層がキャリアブロック層として働くことから、第1の層での基板面内方向のキャリア注入を促進することができる。また、第1の層と第2の層の境界のうち少なくとも一方にシリコンナノ粒子が属していることから、トンネリング効果を生じさせやすくなり、基板垂直方向にもシリコンナノ粒子に向かって選択的にキャリアを通過させることが可能となる。
(製造方法)
図4を用いて本実施形態の活性層の製造方法を説明する。
まず、第1のシリコン化合物410(第1の膜)、第2のシリコン化合物420(第2の膜)、第3のシリコン化合物430(第3の膜)、第4のシリコン化合物440(第4の膜)の成膜を複数回行って多層膜構造を作製する。
ここで、第1のシリコン化合物410と、第2から第4のシリコン化合物(420、430、440)の構成元素は異なっている。また、第2から第4のシリコン化合物同士の構成元素は同じである。
例えば、第1のシリコン化合物410は、シリコンと窒素で構成されているのに対して、第2から第4のシリコン化合物(420、430、440)は、シリコンと酸素で構成されている。
また、第1のシリコン化合物410、第2のシリコン化合物420、第4のシリコン化合物440は化学量論的な組成よりもシリコンを多く含み、第3のシリコン化合物430は化学量論的な組成である。なお、シリコン化合物の組成比が積層方向に対して連続的に変化している傾斜層の場合においては、傾斜層の中心部分におけるシリコン含有量のことを「シリコンの含有量」ということもある。
例えば、図4に示されるように、第1のシリコン化合物410はSi(x>3)の組成からなる。また、第2のシリコン化合物420はSi(x>1)の組成からなり、第3のシリコン化合物430はSiOの組成からなり、第4のシリコン化合物440はSi(x>1)の組成からなる化合物である。
第1のシリコン化合物410および第2のシリコン化合物420は化学量論的組成SiとSiOよりもシリコンの含有量が多い。そのため、これらの層にシリコンナノ結晶が成長し、シリコンナノ結晶はバンドギャップが小さい層(図1における第1の層110)と大きい層(図1における第2の層120)との境界を越えて形成されるように構成される。
ここで、図1の第2の層120には、シリコンナノ粒子が存在していない領域が存在する。この層は化学量論的な組成を有する層であり、化学量論的な組成を有さない層に比べてバンドギャップが大きい層となる。このような第2の層を形成すれば、第1の層110に閉じ込められたキャリアがオーバーフローすることを低減することができ、再結合効率を向上させることができる。
このような第2の層120を形成するためには、第2のシリコン化合物420や第4のシリコン化合物440が第3のシリコン化合物430に化学量論的な組成を保持しうるだけの層厚が必要となる。第3のシリコン化合物430に隣接する層が、第3のシリコン化合物430に影響を与えるのは、格子定数の数倍程度以下の距離である。そのため、第3のシリコン化合物430の厚さが3nm以上、すなわちSiOの格子定数の6〜8倍以上のとき、第3のシリコン化合物430の化学量論的組成を有する層が形成されうる。
また、このSiOからなる第3のシリコン化合物430が厚いと、キャリアの拡散による透過が妨げられてLEDの駆動電圧が高くなるため、第3のシリコン化合物430の厚さは3〜50nmの範囲より選ばれる。望ましくは、第3のシリコン化合物430の電子の輸送過程が直接トンネリングとなる厚さ3〜5nmである。
さらに、第1のシリコン化合物410および第2のシリコン化合物420の厚さの和は、シリコンナノ粒子の直径とおおよそ一致し、その厚さの和は1〜20nmの範囲にある。この厚さの和は所望のシリコンナノ粒子の直径すなわちLEDの発光波長により決定される。可視光を発光するLEDでは、厚さの和は1〜3nm、近赤外光を発光するLEDでは厚さの和は3〜20nmの範囲より選ばれる。
成膜直後の多層膜はシリコンナノ結晶を含んでも含まなくてもよく、また各層はアモルファスであっても多結晶であっても構わない。
図4で示される組成を有する多層膜は、スパッタリング、蒸着もしくはCVDなどの従来の多層膜製作技術を用いて作ることが可能である。
次に、図4の組成で形成された多層膜を約1000度の炉で約1時間アニールすることにより、シリコンナノ粒子が形成される。それにより、本実施形態の活性層が得られる(図1参照)。
高温下でアニールすると、多層膜の構成原子であるシリコンが多層膜の境界面上に移動し、化学量論的な組成を上回るシリコン原子がシリコンナノ粒子として結晶化する。結晶化するシリコンナノ粒子の大きさおよび数密度は、各シリコン化合物の組成、アニール温度、アニール時間により決定される。
ところで、図4と図1の構成を比較して説明すると、おおよそ第1のシリコン化合物410は第1の層110に、また第2から第4のシリコン化合物(420、430、440)は図1の第2の層120に相当する。
しかし、アニールの際、図4のシリコン化合物の境界面を越えて原子の移動が起こるため、それらの対応関係は完全に一致しないこともある。すなわち、第1の層は第1のシリコン化合物の構成元素からなるシリコン窒化物とシリコンナノ粒子で構成され、第2の層の中心は第二から第4のシリコン化合物の構成元素からなるシリコン酸化物とシリコンナノ粒子により構成されるが、第2の層の表面は、第一と第2のシリコン化合物の構成元素、すなわちシリコン、窒素および酸素からなるシリコン化合物であってもよい。
(実施形態2)
本発明に係る他の実施形態を、図5を用いて説明する。
図5(a)は本実施形態の活性層の断面図であり、第1の層110を構成する構成元素はシリコンと窒素であり、第2の層120を構成する元素はシリコンと酸素、もしくはシリコン、酸素および窒素である。
図5(a)は図5(b)で示したように、第1のシリコン化合物510、第2のシリコン化合物520、第3のシリコン化合物530、第4のシリコン化合物540を繰り返し成膜して多層膜構造を作製する。
第1のシリコン化合物510および第2のシリコン化合物520は化学量論的組成SiとSiOよりもシリコンの含有量が多く、シリコンナノ結晶はバンドギャップが小さい層(図5(a)における第1の層110)と大きい層(図5(a)における第2の層120)との境界を越えて形成される。
ここで、図5(a)の第2の層120は、化学両論的な組成を有する層を備えていない。このような構成は、基板垂直方向にキャリアが移動しやすいため、例えば活性層の部分を複数層で構成した形態において特に有効であると考えられる。
このような第2の層120を形成するためには、第3のシリコン化合物530の膜厚がある程度薄くなければならない。
第3のシリコン化合物530に隣接する層が、第3のシリコン化合物530に影響を与えるのは、格子定数の数倍程度以下の距離である。そのため、第3のシリコン化合物530の厚さが3nm未満、すなわちSiOの格子定数の6〜8倍未満のとき、第3のシリコン化合物30にもシリコンナノ粒子の一部が形成される。
化学量論的組成のSiOの格子定数は約0.4〜0.5nmであるため、第3のシリコン化合物の厚さは2.4〜3nmの範囲から選ばれる。また、第1および第2のシリコン化合物の厚さの和は、形成されるシリコンナノ粒子の直径とおおよそ一致し、その厚さの和は1〜20nmの範囲にある。この厚さの和は所望のシリコンナノ粒子の直径すなわちLEDの発光波長により決定される。可視光を発光するLEDでは、厚さの和は1〜3nm、近赤外光を発光するLEDでは厚さの和は3〜20nmの範囲より選ばれる。
なお、実施形態1と同様に、図5(a)の活性層は、図5(b)の多層膜構造を約1000度で約1時間アニールすることにより得られる。
図5(b)と実施形態1のアニール前の多層膜構造(図4)を比較すると、図5(b)の膜厚が図4よりも薄く、第3のシリコン化合物を超えてシリコンが移動し、第2の層の中央を越えてシリコンナノ粒子が形成されている。
(実施形態3)
図6は、他の製造方法を説明する図である。図6はシリコンナノ粒子が形成される前のシリコン化合物の組成分布を表している。第1のシリコン化合物610と、この第1のシリコン化合物よりもシリコンの含有量が少ない第3のシリコン化合物630との間には、組成比が徐々に変化した第2のシリコン化合物620を形成する。また、同様に、第4のシリコン化合物40の組成は、第3のシリコン化合物30の組成と、第1のシリコン化合物610の組成とをつなぐように徐々に変化している。このように、組成を徐々に変化させることにより、多層膜構造におけるシリコン含有量の不連続が緩和され、アニールした際にシリコンナノ粒子が第1の層と第2の層の境界面のうち、少なくとも一つの面を越えて形成されやすくなる。
以上、図を使用して説明した本発明の実施形態は、電子およびホールのどちらに対してもその注入効率を上げることが可能である。
また、上記の実施形態ではシリコンと酸素およびシリコンと窒素を構成元素として持つシリコン化合物を例に挙げて説明したが、本発明の活性層および活性層の製造方法はそれらの構成元素に限定されるものではない。すなわち、シリコン、酸素、窒素、炭素からなるシリコン化合物から任意に選ぶことができる。
さらに、上記で説明した活性層にキャリアを注入するための電極を備えたシリコン発光素子を形成してもよい。
110 第1の層
120 第2の層
130 シリコンナノ粒子
140、150 シリコン化合物
170、180 第1の層と第2の層の境界面

Claims (10)

  1. シリコン発光素子に用いる活性層であって、
    シリコン化合物からなる第1の層と、該第1の層よりもバンドギャップが大きいシリコン化合物からなる第2の層とが基板上に交互に積層された多層膜構造と、
    前記多層膜構造の中に設けられ、キャリアの注入により発光する複数のシリコンナノ粒子と、を有し、
    前記第1の層に含まれるシリコン原子の量は、前記第2の層に含まれるシリコン原子の量よりも多く、
    前記複数のシリコンナノ粒子のうちの少なくとも一つは、前記第1の層と前記第2の層との境界面のうち少なくとも一つの面を越えて存在することを特徴とするシリコン発光素子に用いる活性層。
  2. 前記第1の層と前記第2の層との境界面の両方の面を越えて前記シリコンナノ粒子が形成されていること特徴とする請求項1に記載の活性層。
  3. 前記第1の層を構成するシリコン化合物の構成元素は、シリコンと炭素であることを特徴とする請求項1に記載の活性層。
  4. 前記第2の層を構成するシリコン化合物の構成元素は、シリコンと炭素、または、シリコンと窒素であることを特徴とする請求項3に記載の活性層。
  5. 前記第1の層を構成するシリコン化合物の構成元素は、シリコンと窒素であることを特徴とする請求項1記載の活性層。
  6. 前記第2の層を構成するシリコン化合物の構成元素は、シリコンと酸素、または、シリコンと窒素と酸素であることを特徴とする請求項5に記載の活性層。
  7. 請求項1に記載の活性層と、該活性層にキャリアを注入するための電極を有することを特徴とするシリコン発光素子。
  8. シリコン発光素子に用いる活性層の製造方法であって、
    第1のシリコン化合物からなる第1の膜を形成する工程と、
    前記第1の膜の上に、前記第1の膜よりもバンドギャップが大きく、前記第1のシリコン化合物とは構成元素が異なる第2のシリコン化合物からなる第2の膜を形成する工程と、
    前記第2の膜の上に、前記第2のシリコン化合物と構成元素が同じであって、かつ、該第2のシリコン化合物よりもシリコン含有量の少ない第3のシリコン化合物からなる第3の膜を形成する工程と、
    前記第3の膜の上に、前記第3のシリコン化合物と構成元素が同じであって、かつ、前記第3のシリコン化合物よりもシリコン含有量が多い第4のシリコン化合物からなる第4の膜を形成する工程と、
    前記第1の膜から前記第4の膜をアニールして、キャリアの注入により発光するシリコンナノ粒子を形成する工程と、を有し、
    前記第1のシリコン化合物と前記第2のシリコン化合物と前記第4のシリコン化合物は、化学量論的な組成よりもシリコンを多く含み、
    前記第3のシリコン化合物は、化学量論的な組成であることを特徴とする活性層の製造方法。
  9. 前記第2のシリコン化合物の組成比、および、前記第4のシリコン化合物の組成比が積層方向に対して連続的に変化していることを特徴とする請求項8に記載の活性層の製造方法。
  10. 前記第1の膜から前記第4の膜を形成する工程を複数回行うことを特徴とする請求項8に記載の活性層の製造方法。
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