JP5704597B2 - 粉体圧縮成形機 - Google Patents

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Description

本発明は、粉体を圧縮して医薬品の錠剤、食品、電子部品等を成形するための粉体圧縮成形機に関する。
回転盤に臼孔を設け、各臼孔の上下に上杵及び下杵を上下摺動可能に保持させておき、回転盤及び杵をともに水平回転させて、上杵及び下杵が上ロール及び下ロールの間を通過する際に臼孔内に充填された粉体を圧縮成形する回転式の粉体圧縮成形機が既知である(例えば、下記特許文献1を参照)。
内核(核錠)にシュガーコートその他のコーティングを施した製品を製造する場合、まず粉体圧縮成形機で粉体を圧縮して内核を成形し、しかる後にその内核を粉体圧縮成形機とは別の機械、例えばスプレーコーターやパンコーター等に搬入してコーティング処理することが通例であった。だが、このようなものであると、製造現場に複数の機械を設置せざるを得ない上、粉体圧縮成形機から搬出した内核をスプレーコーター等に搬入する工程も必要となる。
特開2010−023083号公報
本発明は、粉体圧縮成形機自体で内核の圧縮成形とコーティングとを一時に行う、あるいは、複数層の内核を積層した製品を製造できるようにすることを所期の目的とする。
本発明では、上下に貫通した臼孔が外周部に設けられたテーブルと、前記臼孔の下方に配置され、上端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である下杵と、前記下杵に対向するように前記臼孔の上方に配置され、下端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である上杵と、前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体以外の噴射剤を前記臼孔内に向けて噴射する第一の噴射装置と、前記第一の噴射装置による噴射が行われた後に、前記噴射剤と同じ噴射剤(前記噴射剤が滑沢剤の場合は滑沢剤を除く)または前記粉体以外の噴射剤であって前記噴射剤とは異なる噴射剤を前記臼孔内に向けて噴射する第二の噴射装置と、前記第二の噴射装置による噴射が行われた後に、前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する最後の充填装置とを備える粉体圧縮成形機を構成した。ここで、粉体とは、微小固体の集合体を言い、いわゆる顆粒や、粒体より小なる形状の粉末を含む。
また、上下に貫通した臼孔が設けられたテーブルと、前記臼孔の下方に配置され、上端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である下杵と、前記下杵に対向するように前記臼孔の上方に配置され、下端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である上杵と、滑沢剤を前記臼孔内に向けて噴射する第一の噴射装置と、前記第一の噴射装置による滑沢剤の噴射が行われた後に、粉体を前記臼孔内に充填する先の充填装置と、先の充填装置により粉体を充填し、前記上杵及び前記下杵により圧縮成形した後に、滑沢剤を前記臼孔内に向けて噴射する第二の噴射装置と、前記第二の噴射装置による滑沢剤の噴射が行われた後に、前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する最後の充填装置とを備える粉体圧縮成形機であってもよい。
また、上下に貫通した臼孔が設けられたテーブルと、前記臼孔の下方に配置され、上端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である下杵と、前記下杵に対向するように前記臼孔の上方に配置され、下端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である上杵と、前記上杵及び下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する先の充填装置と、前記上杵及び下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する最後の充填装置と、前記先の充填装置による充填が行われた後、前記先の充填装置により充填される粉体と前記最後の充填装置により充填される粉体とを隔絶する仕切剤を前記臼孔内に向けて噴射する第三の噴射装置とを備える粉体圧縮成形機であってもよい。
前記第一の噴射装置が滑沢剤を噴射するものであるならば、粉体の臼孔内面及び/または下杵上端面へのこびり付きを効果的に抑制できる。
そして、前記第二の噴射装置がコーティング剤を噴射するものであるならば、粉体を圧縮してなる内核にコーティング剤による被覆を施した製品を、一機の粉体圧縮成形機のみで製造可能となる。
また、前記第一の噴射装置による噴射が行われた後、前記第二の噴射装置による噴射が行われる前に、前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する先の充填装置を備え、前記第二の噴射装置が滑沢剤を噴射するものであるならば、先の充填装置が充填した粉体を圧縮してなる内核と、最後の充填装置が充填した粉体を圧縮してなる内核とを積層した構造の製品を、一機の粉体圧縮成形機のみで製造可能となる。なお、先の充填装置が充填する(下層の内核となる)粉体と、最後の充填装置が充填する(上層の内核となる)粉体とは、同じ種類であってもよく、別の種類であってもよい。
前記先の充填装置による充填が行われた後、前記第二の噴射装置による噴射が行われる前に、先の充填装置により充填される粉体と前記最後の充填装置により充填される粉体とを隔絶する仕切剤を前記臼孔内に向けて噴射する第三の噴射装置を備えることも好ましい。仕切剤は、例えば、上層の内核と下層の内核とを分離不能に連結するバインディング剤や、上層の内核と下層の内核とを分離可能とするデバイディング剤等である。
また、前記仕切剤が、当該仕切剤の上層と下層とを分離不能に連結するバインディング剤、又は、当該仕切剤の上層と下層とを分離可能に連結するデバイディング剤であることが好ましい。
また、前記第三の噴射装置を複数備えるものが好ましい。

本発明に係る粉体圧縮成形機を用い、テーブルに設けられた臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面及び下杵の上端面に滑沢剤を塗布し、並びに、上杵の下端面に向けて滑沢剤を噴射することで上杵の下端面に滑沢剤を塗布するステップと、前記臼孔内に向けてコーティング剤を噴射することで臼孔内面及び下杵の上端面に前記滑沢剤に重ねてコーティング剤を塗布し、並びに、前記上杵の下端面に向けてコーティング剤を噴射することで上杵の下端面に前記滑沢剤に重ねてコーティング剤を塗布するステップと、前記臼孔内に粉体を充填するステップと、前記臼孔内に充填された粉体を前記上杵及び前記下杵により圧縮するステップとを実施することにより、コーティングされた製品を製造できる。
また、本発明に係る粉体圧縮成形機を用い、テーブルに設けられた臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面及び下杵の上端面に滑沢剤を塗布するステップと、その後に前記臼孔内に粉体を充填するステップと、その後に当該粉体を上杵及び下杵により圧縮するステップと、その後に前記臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面及び前記粉体の上に滑沢剤を塗布し、並びに、上杵の下端面に向けて滑沢剤を噴射することで上杵の下端面に滑沢剤を塗布するステップと、その後に前記臼孔内にさらに粉体を充填するステップと、その後に前記臼孔内に充填された粉体を前記上杵及び前記下杵により圧縮するステップとを実施することにより、積層構造の製品を製造できる。
また、本発明に係る粉体圧縮成形機を用い、臼孔内に粉体を充填するステップと、前記臼孔内に向けて仕切剤を噴射することで前記粉体の上に仕切剤を塗布するステップと、前記臼孔内にさらに粉体を充填するステップと、前記臼孔内に充填された粉体を上杵及び下杵により圧縮するステップとを実施することにより、間に仕切剤を介在させた積層構造の製品を製造できる。
加えて、本発明に係る粉体圧縮成形機を用い、テーブルに設けられた臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面及び下杵の上端面に滑沢剤を塗布するステップと、前記臼孔内に粉体を充填するステップと、前記臼孔内に向けて仕切剤を噴射することで前記粉体の上に仕切剤を塗布するステップと、前記臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面及び前記粉体の上に滑沢剤を塗布し、並びに、上杵の下端面に向けて滑沢剤を噴射することで上杵の下端面に滑沢剤を塗布するステップと、前記臼孔内にさらに粉体を充填するステップと、前記臼孔内に充填された粉体を前記上杵及び前記下杵により圧縮するステップとを実施することにより、間に仕切剤を介在させた積層構造の製品を製造できる。
本発明によれば、粉体圧縮成形機自体で内核の圧縮成形とコーティングとを一時に行えるようになる。あるいは、粉体圧縮成形機自体で複数層の内核を積層した製品を製造できるようになる。
本発明の一実施形態の粉体圧縮成形機を示す側断面図。 同実施形態の粉体圧縮成形機の要部平面図。 同実施形態の粉体圧縮成形機における杵とロールとの関係を示す円筒図。 同実施形態の粉体圧縮成形機における噴射装置を示す要部拡大平面図。 同実施形態の粉体圧縮成形機における噴射装置を示す要部側断面図。 同実施形態の粉体圧縮成形機による製品の打錠工程を示す図。 本発明の一実施形態の粉体圧縮成形機の要部平面図。 同実施形態の粉体圧縮成形機による製品の打錠工程を示す図。 本発明の一実施形態の粉体圧縮成形機の要部平面図。 同実施形態の粉体圧縮成形機による製品の打錠工程を示す図。 本発明の一実施形態の粉体圧縮成形機による製品の打錠工程を示す図。
以降、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
<第一実施形態>第一実施形態の粉体圧縮成形機は、粉体を圧縮してなる内核にコーティング剤による被覆を施した製品を製造する回転式のものである。製品が錠剤である場合、粉体は、有効成分を含む粉体、または有効成分及び賦形剤を含む粉体である。
はじめに、回転式粉体圧縮成形機の全体概要を述べる。図1に示すように、回転式粉体圧縮成形機のフレーム1内には、回転軸となる立シャフト2を設立し、その立シャフト2の上部に接続部21を介して回転盤3を取り付けている。
回転盤3は、立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち自転する。回転盤3は、テーブル(臼ディスク)31と、上杵保持部32と、下杵保持部33とからなる。図2に示すように、テーブル31は略円板状をなしており、その外周部に回転方向に沿って所定間隔で複数の臼孔4を設けてある。臼孔4は、テーブル31を上下方向に貫通している。テーブル31は、複数のプレートに分割されるものであってもよい。また、テーブル31自体に直接臼孔4を形成するのではなく、テーブル31とは別体をなしテーブル31に対し着脱可能な複数個の臼部材をテーブル31に装着し、それら臼部材の各々に上下方向に貫通した臼孔を穿っている構成をとることもできる。
各臼孔4の上下には、上杵5及び下杵6を、それぞれが個別に臼孔4に対して上下方向に摺動可能であるように、上杵保持部32と下杵保持部33とで保持させている。上杵5の杵先53は、臼孔4に対して出入りする。下杵6の杵先63は、常時臼孔4に挿入してある。上杵5及び下杵6は、回転盤3とともに立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち公転する。
立シャフト2の下端側には、ウォームホイール7を取り付けている。ウォームホイール7には、ウォームギア10が噛合する。ウォームギア10は、モータ8により駆動されるギア軸9に固定している。モータ8が出力する駆動力は、ベルト11によってギア軸9に伝わり、ウォームギア10、ウォームホイール7を介して立シャフト2ひいては回転盤3及び杵5、6を回転駆動する。
図2及び図3に示しているように、杵5、6の立シャフト2の軸回りの公転軌道上には、杵5、杵6を挟むようにして上下に対をなす予圧上ロール12及び予圧下ロール13、本圧上ロール14及び本圧下ロール15が存在している。予圧上ロール12及び予圧下ロール13、並びに本圧上ロール14及び本圧下ロール15は、臼孔4内に充填された粉体を杵先53、63の先端面を以て上下から圧縮するべく、上下両杵5、6を互いに接近させる方向に付勢する。
上杵5、下杵6はそれぞれ、ロール12、13、14、15によって押圧される頭部51、61と、この頭部51、61よりも細径な軸部52、62とを有する。軸部52、62の先端部位は、臼孔4内に挿入可能であるように、それ以外の部位と比べて一層細く、臼孔4の内径に略等しい直径となっている。杵5、6の公転により、ロール12、13、14、15は杵5、6の頭部51、61に接近し、頭部51、61に乗り上げるようにして接触する。さらに、ロール12、13、14、15は頭部51、61上を転動しながら水平に変位し、その際に上杵5を下方に押し下げ、または下杵6を上方に押し上げる。ロール12、13、14、15が杵5、6上の平坦面に接している期間は、杵5、6が臼孔4内の粉体に対して一定の圧力を加え続ける。
本圧上ロール14及び本圧下ロール15による加圧位置から、回転盤3及び杵5、6の回転方向に沿って先に進んだ位置には、製品排出部16を構成している。製品排出部16では、下杵6の杵先63の上端面が臼孔4の上端即ちテーブル31の上面と略同じ高さとなるまで下杵6が上昇し、臼孔4内にある成形品を臼孔4から押し出す。この製品排出部16には、臼孔4から押し出された成形品を案内する案内部材17を設置している。臼孔4を出た成形品は、回転盤3の回転により案内部材17に接触し、案内部材17に沿って成形品回収位置18に向けて移動する。
次に、回転式粉体圧縮成形機における、充填装置X(Xa、Xb)及び噴射装置Y(Ya、Yb、Yc)について述べる。
充填装置Xは、臼孔4に粉体を充填するものであり、粉体供給機構X1及びフィードシューX2、すり切り板X3を要素とする。粉体供給機構X1は、粉体を臼孔4の回転軌道上に導く。フィードシューX2は、下杵6が所定高さ位置まで降下するのに伴い、臼孔4内に粉体供給機構X1が供給する粉体を投下し充填する。すり切り板X3は、フィードシューX2による粉体充填の後、下杵6の上昇によって臼孔4から溢れ出した粉体をすり切り、臼孔4上から除去する。
噴射装置Yは、臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、さらには上杵5の杵先53の下端面に、粉体以外の粉末噴射剤を吹き付けるものである。図4に示すように、噴射装置Yは、外部の噴射剤供給装置(図示せず)から供給される噴射剤を導き臼孔4及び下杵6の杵先63の上端面に向けて噴射する下向噴射ノズルY1、噴射剤供給装置から供給される噴射剤を導き上杵5の杵先53の下端面に向けて噴射する上向噴射ノズルY2、臼孔4や杵5、6の杵先53、63に付着しなかった余剰の噴射剤等を吸引して外部に排出する(噴射剤供給装置に還流させてもよい)パージ用の吸引ダクトY3、並びに、これら下向噴射ノズルY1、上向噴射ノズルY2及び吸引ダクトY3を保持するケースY4を要素とする。
図5に示すように、下向噴射ノズルY1は、フッ素樹脂(特に、ポリテトラフルオロエチレン)製のブロック内に略水平に延伸する流通管Y11を穿ち、その流通管Y11の終端を下方に湾曲させてブロックの下面に開口した噴射口Y12を形成したものである。流通管Y11及び噴射口Y12の内面は、フッ素樹脂の平滑面となり、噴射剤の流通及び噴出を円滑化させる。この下向噴射ノズルY1には、静電気発生電極Y13を埋設している。静電気発生電極Y13の先端は針状またはテーパ状をなし、噴射口Y12近傍の箇所に突出している。静電気発生電極Y13には、例えば−20kV程度の直流高電圧が印加され、先端に集中した電界により噴射直前の噴射剤を強制的に静電帯電させる。
上向噴射ノズルY2は、ちょうど図5に示した下向噴射ノズルY1を上下反転させたような構造を有する。即ち、上向噴射ノズルY2は、フッ素樹脂製のブロック内に略水平に延伸する流通管を穿ち、その流通管の終端を上方に湾曲させてブロックの上面に開口した噴射口Y22を形成したものである。上向噴射ノズルY2にも、やはり静電気発生電極を埋設している。静電気発生電極の先端は針状またはテーパ状をなし、噴射口Y22近傍の箇所に突出している。
吸引ダクトY3は、上杵5の杵先53の側方に臨む高さ位置にある。吸引ダクトY3の開口部は、ケースY4に固定しており、ケースY4の内部空間と連通している。
ケースY4は、噴射剤の無秩序な放散を防止するべく下向噴射ノズルY1及び上向噴射ノズルY2を概ね覆うフッ素樹脂製の箱体である。ケースY4は、回転盤3及び噴射ノズルY1、Y2から電気的に絶縁している。ケースY4には、圧縮空気を吸引ダクトY3の開口に向けて略水平に吹き出させるエアカーテンY41を設けている。エアカーテンY41は、上杵5の杵先53付近に空気の流れを作りだし、上向噴射ノズルY2から上杵5の杵先53に向けて噴射された噴射剤の上方への飛散を阻む。
外部の噴射剤供給装置は、細溝充填方式の充填ロールを介して噴射剤を少量ずつ精確に安定して取り出し、これを加圧空気に乗せて圧送するμRフィーダ(日清エンジニアリング(株)商品名)を備えた既知のものである。
噴射剤供給装置から供給された噴射剤は、下向噴射ノズルY1及び上向噴射ノズルY2に分流して各ノズルY1、Y2内の流通管を流通し、噴射口Y12、Y22から噴射される。その噴射の際、噴射剤は強制的に静電帯電する。一方で、臼孔4及び杵5、6は回転盤3の地絡を通じて地絡されており、静電帯電した噴射剤は金属面である臼孔4の内周面、下杵6の杵先63の上端面及び上杵5の杵先53の下端面に強力に吸着する。吸着した噴射剤は、杵5、6の上下運動の振動や回転盤3の高速回転による風圧程度では剥離せず、杵5、6による粉体の圧縮打錠と同時に強く打錠末に押し付けられ、臼孔4及び杵5、6の杵先53、63から錠剤へと転位付着する。
しかして、本実施形態では、図2に示しているように、噴射装置Yを複数配設することとし、第一の噴射装置Ya、第二の噴射装置Yb、充填装置Xa、予圧ロール12、13、本圧ロール14、15、製品排出部16を、回転盤3の回転方向に沿ってこの順に配置している。そして、第一の噴射装置Yaから噴射剤として滑沢剤Kを噴射し、第二の噴射装置Ybから噴射剤としてコーティング剤Lを噴射するようにしている。
第一の噴射装置Yaが噴射する滑沢剤Kは、粉体Mが臼孔4の内周に固着するバインディングや、粉体Mが杵5、6の杵先53、63に固着するスティッキング(何れも、製品に傷や荒れ、欠けをもたらす)を予防するためのものである。滑沢剤Kの例としては、ステアリン酸金属塩(特に、ステアリン酸マグネシウム)、タルク等を挙げることができる。
第二の噴射装置Ybが噴射するコーティング剤Lは、製品の外表面をコーティングするためのものである。コーティング剤Lの例としては、白糖(糖衣)、腸溶性高分子剤(酸性では不溶性の素材)、または水溶性高分子剤等を挙げることができる。
本実施形態の回転式粉体圧縮成形機を用いた製品の製造工程は、以下のようになる。まず、図6(I)に示すように、第一の噴射装置Yaが、近傍を通過する臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、滑沢剤Kを吹き付けて塗布する。次いで、図6(II)に示すように、第二の噴射装置Ybが、近傍を通過する臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、前記滑沢剤Kに重ねて、コーティング剤Lを吹き付けて塗布する。その上で、図6(III)に示すように、充填装置Xaが、近傍を通過する臼孔4に粉体Mを充填する。しかる後、図6(IV)に示すように、上杵5及び下杵6が予圧ロール12、13に押圧されて臼孔4内の粉体Mを予圧縮し、さらに本圧ロール14、15に押圧されて臼孔4内の粉体Mを本圧縮する。これにより、粉体Mを圧縮して得られる内核の外表面にコーティング剤Lによるコーティングを施した製品が完成する。
本実施形態によれば、上下に貫通した臼孔4が外周部に設けられた回転盤3と、前記臼孔4の下方に配置され、前記回転盤3とともに回転し、上端部が臼孔4に挿入されて臼孔4内を摺動可能である下杵6と、前記下杵6に対向するように前記臼孔4の上方に配置され、前記回転盤3とともに回転し、下端部が臼孔4に挿入されて臼孔4内を摺動可能である上杵5と、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体M以外の噴射剤である滑沢剤Kを前記臼孔4内に向けて噴射する第一の噴射装置Yaと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第一の噴射装置Yaによる噴射が行われた後に、前記粉体M以外の噴射剤であって前記噴射剤とは異なる噴射剤であるコーティング剤Lを前記臼孔4内に向けて噴射する第二の噴射装置Ybと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第二の噴射装置Ybによる噴射が行われた後に、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体Mを前記臼孔4内に充填する最後の充填装置Xaとを備える回転式粉体圧縮成形機を構成したため、粉体Mの臼孔4の内面、下杵6の上端面及び上杵5の下端面へのこびり付きを効果的に抑制できる。そして、粉体Mを圧縮してなる内核にコーティング剤Lによる被覆を施した製品を、一機の粉体圧縮成形機のみで製造可能となる。
即ち、本実施形態に係る回転式粉体圧縮成形機を用いれば、回転盤3に設けられた臼孔4内に向けて滑沢剤Kを噴射することで臼孔4内面及び下杵6の上端面に滑沢剤Kを塗布し、並びに、前記回転盤4とともに回転する上杵5の下端面に向けて滑沢剤Kを噴射することで上杵5の下端面に滑沢剤Kを塗布するステップと、前記臼孔4内に向けてコーティング剤Lを噴射することで臼孔4内面及び下杵6の上端面に前記滑沢剤Kに重ねてコーティング剤Lを塗布し、並びに、前記上杵5の下端面に向けてコーティング剤Lを噴射することで上杵5の下端面に前記滑沢剤Kに重ねてコーティング剤Lを塗布するステップと、前記臼孔4内に粉体Mを充填するステップと、前記臼孔4内に充填された粉体Mを前記上杵5及び前記下杵6により圧縮するステップとを実施して、コーティングされた製品を製造できる。
<第二実施形態>第二実施形態の粉体圧縮成形機は、粉体を圧縮してなる内核を複数積層した構造の製品を製造するものである。以降、第一実施形態との相異点に重点を置いて述べる。第一実施形態と共通する構成については、説明を省略する。
本実施形態では、図7に示しているように、噴射装置Y及び充填装置Xをそれぞれ複数配設することとし、第一の噴射装置Ya、先の充填装置Xa、予圧ロール12、13、第二の噴射装置Yb、最後の充填装置Xb、本圧ロール14、15、製品排出部16を、回転盤3の回転方向に沿ってこの順に配置している。
第一の噴射装置Ya、第二の噴射装置Ybは各々、噴射剤として滑沢剤Kを、臼孔4及び下杵6の杵先63の上端面、上杵5の杵先53の下端面に向けて噴射する。
先の充填装置Xaは、製品における下層の内核を形成する粉体Mを臼孔4内に充填する。これに対し、最後の充填装置Xbは、製品における上層の内核を形成する粉体Nを臼孔4内に充填する。先の充填装置Xaが充填する粉体Mと、最後の充填装置Xbが充填する粉体Nとは、同じ種類のものであってもよく、別の種類のものであってもよい。
本実施形態の回転式粉体圧縮成形機を用いた製品の製造工程は、以下のようになる。まず、図8(I)に示すように、第一の噴射装置Yaが、近傍を通過する臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、滑沢剤Kを吹き付けて塗布する。次いで、図8(II)に示すように、先の充填装置Xaが、近傍を通過する臼孔4に粉体Mを充填する。その後、図8(III)に示すように、上杵5及び下杵6が予圧ロール12、13に押圧されて臼孔4内の粉体Mを予圧縮し、下層の内核を成形する。
続いて、図8(IV)に示すように、第二の噴射装置Ybが、近傍を通過する臼孔4の内周面及び圧縮された粉体Mの上面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、再び滑沢剤Kを吹き付けて塗布する。その上で、図8(V)に示すように、最後の充填装置Xbが、近傍を通過する臼孔4に粉体Nを充填する。しかる後、図8(VI)に示すように、上杵5及び下杵6が本圧ロール14、15に押圧されて臼孔4内の粉体M、Nを本圧縮し、上層の内核を成形する。これにより、粉体M、Nを圧縮して得られる内核を複数積層した構造の製品が完成する。
本実施形態によれば、上下に貫通した臼孔4が外周部に設けられた回転盤3と、前記臼孔4の下方に配置され、前記回転盤3とともに回転し、上端部が臼孔4に挿入されて臼孔4内を摺動可能である下杵6と、前記下杵6に対向するように前記臼孔4の上方に配置され、前記回転盤3とともに回転し、下端部が臼孔4に挿入されて臼孔4内を摺動可能である上杵5と、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体M、N以外の噴射剤である滑沢剤Kを前記臼孔4内に向けて噴射する第一の噴射装置Yaと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第一の噴射装置Yaによる噴射が行われた後、第二の噴射装置Ybによる噴射が行われる前に、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体Mを前記臼孔4内に充填する先の充填装置Xaと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第一の噴射装置Yaによる噴射が行われた後に、前記第一の噴射装置Yaが噴射するのと同じ滑沢剤Kを前記臼孔4内に向けて噴射する第二の噴射装置Ybと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第二の噴射装置Ybによる噴射が行われた後に、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体Nを前記臼孔4内に充填する最後の充填装置Xbとを備える回転式粉体圧縮成形機を構成したため、粉体M、Nの臼孔4の内面、下杵6の上端面及び上杵5の下端面へのこびり付きを効果的に抑制できる。そして、粉体M、Nを圧縮してなる内核を積層した構造の製品を、一機の粉体圧縮成形機のみで製造可能となる。
即ち、本実施形態に係る回転式粉体圧縮成形機を用いれば、回転盤3に設けられた臼孔内に向けて滑沢剤Kを噴射することで臼孔3内面及び下杵6の上端面に滑沢剤Kを塗布するステップと、前記臼孔4内に粉体Mを充填するステップと、前記臼孔4内に向けて滑沢剤Kを噴射することで臼孔4内面に滑沢剤Kを塗布し、並びに、前記回転盤3とともに回転する上杵5の下端面に向けて滑沢剤Kを噴射することで上杵5の下端面に滑沢剤Kを塗布するステップと、前記臼孔4内にさらに粉体Nを充填するステップと、前記臼孔4内に充填された粉体M、Nを前記上杵5及び前記下杵6により圧縮するステップとを実施して、複数段の積層構造を有する製品を製造できる。
なお、上記実施形態では、先の充填装置Xaが臼孔4内に充填した下層の内核となる粉体Mを予備的に圧縮し、その後に最後の充填装置Xbが臼孔4内に上層の内核となる粉体Nを充填するものとしていたが、下層の内核を予備的に圧縮せず、最後の充填装置Xbが上層の内核となる粉体Nを充填してから上杵5及び下杵6を以て下層の内核と上層の内核とを一括に圧縮する態様をとることもできる。その場合には、第一の噴射装置Ya、先の充填装置Xa、第二の噴射装置Yb、最後の充填装置Xb、予圧ロール12、13、本圧ロール14、15、製品排出部16を、回転盤3の回転方向に沿ってこの順に配置する。下層の内核の予備的圧縮を行わないことから、第二の噴射装置Ybが滑沢剤Kを上杵5の杵先53の下端面に再塗布する必要はなく、よって第二の噴射装置Ybには上向噴射ノズルY2を設けない。
臼孔4の回転軌道に沿って噴射装置Y及び充填装置Xをそれぞれ三基以上配設し、三層以上の多層構造の製品を製造するということも考えられる。
第二実施形態の構成と第一実施形態の構成とを組み合わせれば、内核を積層した構造に加えてコーティングをも施した製品を製造可能となる。
<第三実施形態>第三実施形態の粉体圧縮成形機もまた、粉体を圧縮してなる内核を複数積層した構造の製品を製造するものである。以降、第二実施形態との相異点に重点を置いて述べる。第二実施形態または第一実施形態と共通する構成については、説明を省略する。
本実施形態では、図9に示しているように、噴射装置Y及び充填装置Xをそれぞれ複数配設することとし、第一の噴射装置Ya、先の充填装置Xa、予圧ロール12、13、第三の噴射装置Yc、第二の噴射装置Yb、最後の充填装置Xb、本圧ロール14、15、製品排出部16を、回転盤3の回転方向に沿ってこの順に配置している。
第一の噴射装置Ya、第二の噴射装置Ybは各々、噴射剤として滑沢剤Kを、臼孔4及び下杵6の杵先63の上端面、上杵5の杵先53の下端面に向けて噴射する。
第三の噴射装置Ycは、噴射剤として仕切剤Oを、臼孔4内(圧縮された粉体Mの上面)に向けて噴射する。仕切剤Oは、先の充填装置Xaにより充填される粉体Mと最後の充填装置Xbにより充填される粉体Nとを隔絶するものである。仕切剤Oの例としては、上層の内核と下層の内核とを分離不能に連結するバインディング剤や、上層の内核と下層の内核とを分離可能とするデバイディング剤等を挙げることができる。仕切剤Oは、上杵5の杵先53の下端面に塗布するものではない。従って、第三の噴射装置Ycには上向噴射ノズルY2を設けていない。
先の充填装置Xaは、製品における下層の内核を形成する粉体Mを臼孔4内に充填する。これに対し、最後の充填装置Xbは、製品における上層の内核を形成する粉体Nを臼孔4内に充填する。先の充填装置Xaが充填する粉体Mと、最後の充填装置Xbが充填する粉体Nとは、同じ種類のものであってもよく、別の種類のものであってもよい。
本実施形態の回転式粉体圧縮成形機を用いた製品の製造工程は、以下のようになる。まず、図10(I)に示すように、第一の噴射装置Yaが、近傍を通過する臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、滑沢剤Kを吹き付けて塗布する。次いで、図10(II)に示すように、先の充填装置Xaが、近傍を通過する臼孔4に粉体Mを充填する。その後、図10(III)に示すように、上杵5及び下杵6が予圧ロール12、13に押圧されて臼孔4内の粉体Mを予圧縮し、下層の内核を成形する。
続いて、図10(IV)に示すように、第三の噴射装置Ycが、近傍を通過する臼孔4内(圧縮された粉体Mの上面)に仕切剤Oを吹き付け、下層の内核の上に仕切剤Oを塗布する。さらに、図10(V)に示すように、第二の噴射装置Ybが、近傍を通過する臼孔4の内周面及び圧縮された粉体Mの上面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、再び滑沢剤Kを吹き付けて塗布する。その上で、図10(VI)に示すように、最後の充填装置Xbが、近傍を通過する臼孔4に粉体Nを充填する。しかる後、図10(VII)に示すように、上杵5及び下杵6が本圧ロール14、15に押圧されて臼孔4内の粉体M、Nを本圧縮し、上層の内核を成形する。これにより、粉体M、Nを圧縮して得られる内核を複数積層した構造の製品が完成する。
本実施形態によれば、上下に貫通した臼孔4が外周部に設けられた回転盤3と、前記臼孔4の下方に配置され、前記回転盤3とともに回転し、上端部が臼孔4に挿入されて臼孔4内を摺動可能である下杵6と、前記下杵6に対向するように前記臼孔4の上方に配置され、前記回転盤3とともに回転し、下端部が臼孔4に挿入されて臼孔4内を摺動可能である上杵5と、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体M以外の噴射剤である滑沢剤Kを前記臼孔4内に向けて噴射する第一の噴射装置Yaと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第一の噴射装置Yaによる噴射が行われた後、第二の噴射装置Ybによる噴射が行われる前に、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体Mを前記臼孔4内に充填する先の充填装置Xaと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記先の充填装置Xaによる充填が行われた後、前記第二の噴射装置Ybによる噴射が行われる前に、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体M以外の噴射剤である仕切剤Oを前記臼孔4内に向けて噴射する第三の噴射装置Ycと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第一の噴射装置Yaによる噴射が行われた後に、前記第一の噴射装置Yaが噴射するのと同じ滑沢剤Kを前記臼孔4内に向けて噴射する第二の噴射装置Ybと、前記臼孔4の回転軌道付近の所定位置にあって、前記第二の噴射装置Ybによる噴射が行われた後に、前記上杵5及び前記下杵6により圧縮成形される粉体Nを前記臼孔4内に充填する最後の充填装置Xbとを備える回転式粉体圧縮成形機を構成したため、粉体M、Nの臼孔4の内面、下杵6の上端面及び上杵5の下端面へのこびり付きを効果的に抑制できる。そして、粉体M、Nを圧縮してなる内核を積層するとともにその間に仕切剤Oを介在させた構造の製品を、一機の粉体圧縮成形機のみで製造可能となる。
即ち、本実施形態に係る回転式粉体圧縮成形機を用いれば、回転盤3に設けられた臼孔4内に向けて滑沢剤Kを噴射することで臼孔4内面及び下杵6の上端面に滑沢剤Kを塗布するステップと、前記臼孔4内に粉体Mを充填するステップと、前記臼孔4内に向けて仕切剤Oを噴射することで前記粉体Mの上に仕切剤Oを塗布するステップと、前記臼孔4内に向けて滑沢剤Kを噴射することで臼孔4内面に滑沢剤Kを塗布し、並びに、前記回転盤3とともに回転する上杵5の下端面に向けて滑沢剤Kを噴射することで上杵5の下端面に滑沢剤Kを塗布するステップと、前記臼孔4内にさらに粉体Nを充填するステップと、前記臼孔4内に充填された粉体M、Nを前記上杵5及び前記下杵6により圧縮するステップとを実施して、複数段の積層構造を有する製品を製造できる。
なお、上記実施形態では、先の充填装置Xaが臼孔4内に充填した下層の内核となる粉体Mを予備的に圧縮し、その後に最後の充填装置Xbが臼孔4内に上層の内核となる粉体Nを充填するものとしていたが、下層の内核を予備的に圧縮せず、最後の充填装置Xbが上層の内核となる粉体Nを充填してから上杵5及び下杵6を以て下層の内核と上層の内核とを一括に圧縮する態様をとることもできる。その場合には、第一の噴射装置Ya、先の充填装置Xa、第三の噴射装置Yc、第二の噴射装置Yb、最後の充填装置Xb、予圧ロール12、13、本圧ロール14、15、製品排出部16を、回転盤3の回転方向に沿ってこの順に配置する。下層の内核の予備的圧縮を行わないことから、第二の噴射装置Ybが滑沢剤Kを上杵5の杵先53の下端面に再塗布する必要はなく、よって第二の噴射装置Ybには上向噴射ノズルY2を設けない。
臼孔4の回転軌道に沿って滑沢剤Kを噴射する噴射装置Yを二基以上、充填装置Xを三基以上、仕切剤Oを噴射する噴射装置Yを二基以上配設し、三層以上の多層構造の製品を製造するということも考えられる。
仕切剤Oを第三の噴射装置Ycにより臼孔4に向けて噴射するのに代えて、予め薄板状に形成した仕切剤Oを、下層の内核となる粉体Mの上に載せ置くようにしてもよい。
第三実施形態の構成と第一実施形態の構成とを組み合わせれば、内核を積層した構造に加えてコーティングをも施した製品を製造可能となる。
<第四実施形態>第四実施形態の粉体圧縮成形機は、竪型(レシプロ型)の成形機であって、回転式のものではない。以降、第一ないし第三実施形態との相異点に重点を置いて述べる。第一ないし第三実施形態と共通する構成については、説明を省略する。
本実施形態の粉体圧縮成形機もやはり、上下に貫通した臼孔4が設けられたテーブル31と、臼孔4内に向けて噴射剤K、L、Oを噴射する噴射装置Y(Ya、Yb、Yc)と、臼孔4内に粉体M、Nを充填する充填装置X(Xa、Xb)と、臼孔4内に充填された粉体M、Nを上下から圧縮する下杵6及び上杵5の対とを備えている。
竪型の成形機では、テーブル31、下杵6及び上杵5は回転しない。その替わりに、噴射装置Y及び充填装置Xが、テーブル31に対して移動する。噴射装置Y、充填装置X、下杵6及び上杵5の対はそれぞれ、カムや液圧(油圧)等、適宜の駆動方法にて駆動する。
噴射装置Y、充填装置Xの基本的な構造及び機能は、第一ないし第三実施形態におけるそれと同等または類似である。即ち、噴射装置Yは、外部の噴射剤供給装置から供給される噴射剤K、L、Oを臼孔4及び下杵6の杵先63の上端面に向けて噴射し、及び/または、上杵5の杵先53の下端面に向けて噴射する。充填装置Xは、臼孔4の直上から臼孔4内に粉体M、Nを投入する。
内核にコーティング剤による被覆を施した製品を製造する場合を例として、粉体圧縮成形機の動作を述べる。この場合において、粉体圧縮成形機には、滑沢剤Kを噴射する第一の噴射装置Yaと、コーティング剤Lを噴射する第二の噴射装置Ybと、粉体Mを充填する充填装置Xaとを配設しておく。
当該粉体圧縮成形機を用いた製品の製造工程を述べると、まず、図11(I)に示すように、下杵6が粉体Mの充填量に対応した適切な高さまで下降した状態で、第一の噴射装置Yaが臼孔4近傍に移動して、臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、滑沢剤Kを吹き付けて塗布する。次いで、図11(II)に示すように、第二の噴射装置Ybが臼孔4近傍に移動して、臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、並びに上杵5の杵先53の下端面に、前記滑沢剤Kに重ねて、コーティング剤Lを吹き付けて塗布する。その上で、図11(III)に示すように、充填装置Xaが臼孔4近傍に移動して、臼孔4に粉体Mを充填する。そして、図11(IV)に示すように、噴射装置Ya、Yb及び充填装置Xaが上杵5及び下杵6の打錠動作と干渉しない位置に退避し、上杵5及び下杵6が臼孔4内の粉体Mを圧縮する。これにより、粉体Mを圧縮して得られる内核の外表面にコーティング剤Lによるコーティングを施した製品が完成する。その後、上杵5が噴射装置Ya、Yb及び充填装置Xaに干渉しない高さまで上昇し、かつ下杵6が完成した製品をテーブル31の上面まで押し上げ、図11(V)に示すように、完成した製品を掻き取って搬出する。以上の図11(I)ないし図11(V)を反復する。
翻って、内核を複数積層した構造の製品を製造する場合には、粉体圧縮成形機に、少なくとも一基の滑沢剤噴射装置Yaと、少なくとも一基の充填装置Xaとを配設する。当該粉体圧縮成形機を用いた製品の製造工程では、(I)噴射装置Yaによる臼孔4の内周及び杵5、6の杵先53、63のへの滑沢剤Kの噴射塗布、(II)充填装置Xaによる臼孔4への粉体Mの充填、(III)杵5、6による下層の内核の圧縮打錠、(IV)噴射装置Yaによる臼孔4の内周及び杵5、6の杵先53、63のへの再度の滑沢剤Kの噴射塗布、(V)充填装置Xaによる臼孔4への再度の粉体Nの充填、(VI)杵5、6による上層の内核の圧縮打錠、(VII)完成製品の搬出、という手順をとる。なお、上層と下層とで原料となる粉体N、Mの種類が相異するのであれば、手順(II)にてある種類の粉体Mを充填する先の充填装置Xaと、手順(V)にて別の種類の粉体Nを充填する最後の充填装置Xbとを個別に配設する必要がある。また、手順(I)にて滑沢剤Kを噴射する噴射装置Yaと、手順(IV)にて滑沢剤Kを噴射する噴射装置Ybとを個別に配設するようにしても構わない。
さらに、上層の内核と下層の内核との間に仕切剤を介在させた構造の製品を製造する場合には、粉体圧縮成形機に、滑沢剤噴射装置Yaと、仕切剤噴射装置Ycと、少なくとも一基の充填装置Xaとを配設する。当該粉体圧縮成形機を用いた製品の製造工程では、(I)噴射装置Yaによる臼孔4の内周及び杵5、6の杵先53、63のへの滑沢剤Kの噴射塗布、(II)充填装置Xaによる臼孔4への粉体Mの充填、(III)杵5、6による下層の内核の圧縮打錠、(IV)噴射装置Ycによる臼孔4内にある下層の内核上への仕切剤Oの噴射塗布、(V)噴射装置Yaによる臼孔4の内周及び杵5、6の杵先53、63のへの再度の滑沢剤Kの噴射塗布、(VI)充填装置Xaによる臼孔4への再度の粉体Nの充填、(VII)杵5、6による上層の内核の圧縮打錠、(VIII)完成製品の搬出、という手順をとる。上層と下層とで原料となる粉体N、Mの種類が相異するのであれば、手順(II)にてある種類の粉体Mを充填する先の充填装置Xaと、手順(VI)にて別の種類の粉体Nを充填する最後の充填装置Xbとを個別に配設する必要がある。また、手順(I)にて滑沢剤Kを噴射する噴射装置Yaと、手順(V)にて滑沢剤Kを噴射する噴射装置Ybとを個別に配設するようにしても構わない。
本発明は、以上に詳述した各実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、粉体を圧縮して医薬品の錠剤、食品、電子部品等の製品を製造するための粉体圧縮成形機として利用できる。
31…テーブル
4…臼孔
5…上杵
6…下杵
K…滑沢剤
L…コーティング剤
M、N…粉体
O…仕切剤
X…充填装置
Xa…先の充填装置
Xb…最後の充填装置
Y…噴射装置
Ya…第一の噴射装置
Yb…第二の噴射装置
Yc…第三の噴射装置

Claims (11)

  1. 上下に貫通した臼孔が設けられたテーブルと、
    前記臼孔の下方に配置され、上端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である下杵と、
    前記下杵に対向するように前記臼孔の上方に配置され、下端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である上杵と、
    前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体以外の噴射剤を前記臼孔内に向けて噴射する第一の噴射装置と、
    前記第一の噴射装置による噴射が行われた後に、前記噴射剤と同じ噴射剤(前記噴射剤が滑沢剤の場合は滑沢剤を除く)または前記粉体以外の噴射剤であって前記噴射剤とは異なる噴射剤を前記臼孔内に向けて噴射する第二の噴射装置と、
    前記第二の噴射装置による噴射が行われた後に、前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する最後の充填装置と
    を備える粉体圧縮成形機。
  2. 上下に貫通した臼孔が設けられたテーブルと、
    前記臼孔の下方に配置され、上端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である下杵と、
    前記下杵に対向するように前記臼孔の上方に配置され、下端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である上杵と、
    前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体以外の噴射剤を前記臼孔内に向けて噴射する第一の噴射装置と、
    前記第一の噴射装置による噴射が行われた後に、前記粉体以外の噴射剤であって前記噴射剤とは異なる噴射剤を前記臼孔内に向けて噴射する第二の噴射装置と、
    前記第二の噴射装置による噴射が行われた後に、前記上杵及び前記下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する最後の充填装置と
    を備える粉体圧縮成形機。
  3. 上下に貫通した臼孔が設けられたテーブルと、
    前記臼孔の下方に配置され、上端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である下杵と、
    前記下杵に対向するように前記臼孔の上方に配置され、下端部が臼孔に挿入されて臼孔内を摺動可能である上杵と、
    前記上杵及び下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する先の充填装置と、
    前記上杵及び下杵により圧縮成形される粉体を前記臼孔内に充填する最後の充填装置と、
    前記先の充填装置による充填が行われた後、前記先の充填装置により充填される粉体と前記最後の充填装置により充填される粉体とを隔絶する仕切剤を前記臼孔内に向けて噴射する第三の噴射装置と
    を備える粉体圧縮成形機。
  4. 前記第一の噴射装置が滑沢剤を噴射する請求項1又は2記載の粉体圧縮成形機。
  5. 前記第二の噴射装置がコーティング剤を噴射する請求項4記載の粉体圧縮成形機。
  6. 前記先の充填装置による充填が行われた後、前記第二の噴射装置による噴射が行われる前に、先の充填装置により充填される粉体と前記最後の充填装置により充填される粉体とを隔絶する仕切剤を前記臼孔内に向けて噴射する第三の噴射装置を備える請求項1、2、4又は5記載の粉体圧縮成形機。
  7. 前記仕切剤が、当該仕切剤の上層と下層とを分離不能に連結するバインディング剤、又は、当該仕切剤の上層と下層とを分離可能に連結するデバイディング剤である請求項3又は6記載の粉体圧縮成形機。
  8. 前記第三の噴射装置を複数備える請求項3、6又は7記載の粉体圧縮成形機。
  9. 粉体圧縮成形機を用いて実施する製品の製造方法であって、
    テーブルに設けられた臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面及び下杵の上端面に滑沢剤を塗布し、並びに、上杵の下端面に向けて滑沢剤を噴射することで上杵の下端面に滑沢剤を塗布するステップと、
    前記臼孔内に向けてコーティング剤を噴射することで臼孔内面及び下杵の上端面に前記滑沢剤に重ねてコーティング剤を塗布し、並びに、前記上杵の下端面に向けてコーティング剤を噴射することで上杵の下端面に前記滑沢剤に重ねてコーティング剤を塗布するステップと、
    前記臼孔内に粉体を充填するステップと、
    前記臼孔内に充填された粉体を前記上杵及び前記下杵により圧縮するステップと
    を備えるコーティングされた製品の製造方法。
  10. 粉体圧縮成形機を用いて実施する製品の製造方法であって、
    臼孔内に粉体を充填するステップと、
    前記臼孔内に向けて仕切剤を噴射することで充填された粉体の上に仕切剤を塗布するステップと、
    前記臼孔内の仕切剤の上にさらに粉体を充填するステップと、
    前記臼孔内に充填された粉体を上杵及び下杵により圧縮するステップと
    を備える複数段の積層構造を有する製品の製造方法。
  11. 粉体圧縮成形機を用いて実施する製品の製造方法であって、
    テーブルに設けられた臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面及び下杵の上端面に滑沢剤を塗布するステップと、
    前記臼孔内に粉体を充填するステップと、
    前記臼孔内に向けて仕切剤を噴射することで前記粉体の上に仕切剤を塗布するステップと、
    前記臼孔内に向けて滑沢剤を噴射することで臼孔内面に滑沢剤を塗布し、並びに、上杵の下端面に向けて滑沢剤を噴射することで上杵の下端面に滑沢剤を塗布するステップと、
    前記臼孔内にさらに粉体を充填するステップと、
    前記臼孔内に充填された粉体を前記上杵及び前記下杵により圧縮するステップと
    を備える複数段の積層構造を有する製品の製造方法。
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