JP5703426B2 - ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンを含む腫瘍細胞選択的抗がん剤 - Google Patents

ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンを含む腫瘍細胞選択的抗がん剤 Download PDF

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Description

本発明は新たな腫瘍細胞選択的抗がん剤及びそれを含む医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンまたはその誘導体からなる腫瘍細胞選択的抗がん剤、及びそれを含む医薬組成物に関する。
がんは、わが国における死亡原因第1位の疾患である。一部のがんでは生存率は改善しているものの、進行がんでは未だ十分な治療法がなく、より有効な治療法の開発が望まれている。また多くの抗がん剤は正常細胞にも作用するという問題がある。例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、タキソール等の現状の抗がん剤は、正常細胞にも強い障害性を示すことから、深刻な副作用を惹起する。
近年、がん化学療法は大きく進歩しており、分子標的薬が広く用いられるようになってきた。この分子標的薬は従来の抗がん剤と比較して、抗がん活性に優れること、副作用発現が比較的低いとされるなどの利点がある一方、分子標的薬は医療コストに見合う抗がん活性が得られないことが指摘されている。例えば、最近では、腫瘍の血管新生を選択的に阻害しがん細胞の増殖を抑制するイレッサやグリベックなどの分子標的薬が汎用されているが、これらも薬剤性肺炎等の副作用を惹起すること、また治療コストが極めて高いことが課題となっている。そのため、既存の分子標的薬よりも低コストでがん選択性が高いなどの優れた抗がん活性を有する抗がん剤が切望されている。
シクロデキストリン(CyD)は環状のオリゴ糖で、単離したヒト赤血球に対して溶血作用を示しその強さはβ−CyD>α−CyD>γ−CyDの順であり、その誘導体であるヒドロキシプロピルシクロデキストリン(HP−CyD)も、HP−β−CyD>HP−α−CyD≒HP−γ−CyDの順に溶血作用を示すが、それらはCyDより弱いこと、また、CyDおよびHP−CyDは同様のパターンで培養細胞に対しても細胞毒性を示すこと、そして、このようなCyDおよびHP−CyDのインビトロでの細胞毒性の効果は、細胞膜成分、特にコレステロールとリン脂質の包接複合体が細胞膜の破壊を引き起こすためと考えられており、赤血球や培養細胞など異なる細胞種に対して同様の毒性効果を示すことを説明していること、が報告されている(非特許文献1)。
シクロデキストリン(CyD)は、種々の薬物をその疎水空洞内に取り込み包接複合体を形成する単分子的ホスト分子に分類される。CyDの超分子的な包接特性は、食品、化粧品、臨床検査薬、膜学、高分子化学など多方面で利用されており、薬剤学・製剤学領域では、CyDの機能性や生体適合性を利用して、複合体形成による医薬品の安定化、溶解性の調節、バイオアベイラビリティの向上などへの応用が試みられ、国内外にて実際に製剤で使用されている。
近年、機能性や生体適合性を高めた種々のCyD誘導体が開発され、薬物送達システム(Drug delivery system :DDS)の応用に関する基礎的研究が行われている。CyD誘導体として、例えば、Methyl-β-CyD(M−β−CyD)や2,6-Di-O-methyl-α-CyD(DM−α−CyD)があり、Grosseらは、ヒト乳がん細胞MCF7またはヒト卵巣がん細胞A2780を移植したヌードマウスにおいてM−β−CyDを腹腔内に2ヶ月に渡って投与(300〜800mg/kg)すると、抗がん剤であるドキソルビシン(DOX)投与(2mg/kg)と同様に、コントロールに比べ腫瘍の増大を抑制する効果を示すことを報告している(非特許文献2)。しかし、M−β−CyDを腹腔内に投与すると腎臓に多く蓄積するという報告(非特許文献2)に示されるように、M−β−CyDは腫瘍選択的を有さないため正常細胞に対する安全性が懸念される。さらに、M−β−CyDは溶血活性が高いことからも正常細胞への安全性が懸念されている。
一方、環状オリゴ糖の一種であるヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP−β−CyD)は、静脈内投与可能な可溶化剤として知られ、臨床使用されており、正常細胞に対する安全性は高い。例えば、抗真菌剤であるイトラコナゾールを含む注射剤(イトリゾール(登録商標)注1%)では、1バイアル注にイトラコナゾール200mgと、水溶性が極めて低いイトラコナゾールの溶解剤としてHP−β−CyD8.0gを含み、成人には、1日あたり1〜2バイアルが点滴静注される。
また、HP−β−CyDは、種々の抗がん剤の安定化剤や可溶化剤キャリア分子としての使用が提案されており、薬剤に対して数倍量のHP−β−CyDを加えた製剤例が開示されている(例えば、特許文献1〜3)
しかしながら、HP−β−CyDのがん細胞特異的な影響に関する報告や、インビボでのHP−β−CyDのがん細胞に対する影響や抗がん作用についての報告はない。
またM−β−CyD誘導体として、本発明者らにより、メチル−β−シクロデキストリンに葉酸を修飾した、葉酸修飾メチル化−β−シクロデキストリン(FA−M−β−CyD)が、KB細胞(FR高発現細胞)に対して濃度依存的に細胞障害性を示したが、A549細胞(FR低発現細胞)に対しては殆ど細胞障害性を示さないこと、抗がん剤ドキソルビシン(DOX)併用によるFA−M−β−CyDの細胞障害性は、DOX単独より有意に増強されることが報告されている(非特許文献3)。さらに、FA−M−β−CyDが、胆がんマウスモデルにおいて抗腫瘍活性を示し、マウスの生存率を改善したことが報告されている(非特許文献4)。
特表2010−529964号公報 特表2010−526072号公報 特表2006−512329号公報
Frederique Leroy-Lechatら、Int. J. Pharm., 101(1994) 97-103. Grosseら、Br. J. Cancer. 78 (1998), 1165-1169. 日本薬学会第131年会(静岡)2011年3月28日〜30日、講演要旨、29P-0433「抗がん剤デリバリー用キャリアとしての新規葉酸修飾メチル化シクロデキストリンの調製と物性評価」。 平成24年4月25日、日本薬剤学会第27年会講演要旨集、第109頁、24-2-07「葉酸修飾メチル化β−シクロデキストリンの抗腫瘍活性および細胞死誘導機構」。
本発明は、腫瘍細胞選択性が優れた新規な抗がん作用をもつ化合物を有効成分として含む医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明の目的の一つはまた、白血病細胞に対して抗がん作用をもつ化合物を有効成分として含む医薬組成物を提供することである。
発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン類、特には、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、抗腫瘍作用、腫瘍増殖抑制作用または抗がん作用を有することを見いだし、本発明を完成した。つまり、本発明者らは、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン類、特には、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、がん細胞選択性、特には白血病細胞選択性に優れ、新規抗がん剤として有用であるとことを見いだし、本発明を完成した。
本発明は、以下を含むものである。
(1)ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、およびヒドロキシエチルシクロデキストリンからなる群より選ばれるヒドロキシアルキル化シクロデキストリンまたはその誘導体を抗がん性有効成分として含む医薬組成物。
(2)抗がん性有効成分としてヒドロキシアルキル化シクロデキストリンのみを含む前記(1)に記載の医薬組成物。
(3)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンである、前記(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである前記(3)に記載の医薬組成物。
(5)注射剤である、前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(6)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、1日あたり、0.5g/kg〜10g/kgの投与量で投与されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(7)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、1日あたり、1g/kg〜5g/kgの投与量で投与されることを特徴とする前記(6)に記載の医薬組成物。
(8)前記医薬組成物が白血病治療薬である前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の医薬組成物。
(9)抗がん性有効成分と医薬上許容される添加剤からなる抗がん注射剤であって、該抗がん性有効成分がヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはその誘導体であることを特徴とする抗がん注射剤。
(10)前記抗がん性有効成分としてヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのみが含まれることを特徴とする前記(9)に記載の抗がん注射剤。
(11)前記抗がん性有効成分としてヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのみが、前記添加剤として浸透圧調整剤とpH調整剤のみが含まれることを特徴とする前記(9)に記載の抗がん注射剤。
(12)前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、1日あたり、0.5g/kg〜5g/kgの投与量で投与されることを特徴とする前記(9)〜(11)のいずれか一つに記載の抗がん注射剤。
(13)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、1日あたり、1g/kg〜5g/kgの投与量で投与されることを特徴とする前記(12)に記載の医薬組成物。
(14)前記抗がん注射剤が白血病治療薬である、前記(9)〜(13)のいずれか一つに記載の抗がん注射剤。
(15)ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、およびヒドロキシエチルシクロデキストリンからなる群より選ばれるヒドロキシアルキル化シクロデキストリンまたはその誘導体を抗がん性有効成分として用いる癌の治療方法。
(16)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである前記(15)に記載の癌の治療方法。
(17)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、1日あたり、0.5g/kg〜5g/kgの投与量で投与されることを特徴とする前記(15)または(16)に記載の癌の治療方法。
(18)前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが、1日あたり、1g/kg〜5g/kgの投与量で投与されることを特徴とする前記(17)に記載の癌の治療方法。
(19)前記(15)〜(18)のいずれか一つに記載の癌の治療方法を用いて白血病を治療する方法。
本発明のヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、およびヒドロキシエチルシクロデキストリンからなる群より選ばれるヒドロキシアルキル化シクロデキストリン(好ましくは、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)またはその誘導体を抗がん作用の有効成分として含む医薬組成物は、抗がん剤として、特には白血病細胞の抗がん剤として有用である。
HP−β−CyDのヒト白血病細胞(BV173)、マウス白血病細胞(BaF3 p190 BCR−ABL)及び正常ヒト肝細胞(Hepatocyte)に対する細胞障害活性を測定した結果である。 HP−β−CyDのマウス造血前駆細胞に対する細胞障害活性を測定した結果である。X軸は、培地に添加したHP−β−CyD濃度を示しており、Y軸は、HP−β−CyD無添加培地と比較したコロニー数の相対値(%)を示している。 HP−β−CyDまたはM−β−CyDの、BaF3 p190細胞およびBV173細胞に対するコレステロール漏出作用を測定した結果である。図中の各点は、3回の実験の、mean±S.E.を示している。 HP−β−CyDまたはM−β−CyDの、BaF3 p190細胞およびBV173細胞に対する細胞内コレステロール量に対する影響を測定した結果である。上段が、BaF p190細胞に対する影響を測定した結果であり、下段がBV173細胞に対する影響を測定した結果である。 HP−β−CyDのマウス白血病細胞(BaF3 p190 BCR−ABL)およびヒト白血病細胞(BV173)に対するアポトーシス誘導を測定した結果である。X軸は、培地に添加したHP−β−CyD濃度を示しており、Y軸は、アポトーシスを起こした細胞の割合を示している。 マウス白血病細胞移植がんマウスモデルを用いた、HP−β−CyDのマウス生存率に対する効果を検討した結果である。 マウス白血病細胞移植がんマウスモデルを用いた、抗がん剤であるイマチニブ及びバフェチニブのマウス生存率に対する効果を検討した結果である。 マウスに皮下投与後の血清中のHP−β−CyDの濃度推移を示す図である。 図8の結果をもとに、50mM HP−β−CyD(14mgHP−β−CyD/20gマウス=0.7g/kg)をマウスに1日2回皮下投与および静脈内投与したと仮定した場合の血清中濃度の時間推移を推測した図である。右図が静脈内投与で、左図が皮下投与である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に記載の態様に限定されるものではない。
本発明でいうヒドロキシアルキル化シクロデキストリンとは、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、およびヒドロキシエチルシクロデキストリンからなる群より選ばれるヒドロキシアルキル化シクロデキストリンであり、シクロデキストリン(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリン)の水酸基が、ランダムに、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基またはヒドロキシエチル基に置換された化合物である。例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンとは、β-シクロデキストリンの7個のグルコースの2、3および6位の水酸基がランダムにヒドロキシプロピル基に置換された化合物である。
本発明で用いるヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、またはヒドロキシエチルシクロデキストリンは、公知の方法で合成することができるが、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは市販もされている。
本発明においては、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンは、好ましくはヒドロキシプロピルシクロデキストリンであり、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。別の観点からは、本発明においては、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンは、好ましくはヒドロキシアルキル化−β−シクロデキストリンであり、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。
本発明でいうヒドロキシアルキル化シクロデキストリン誘導体とは、上記のいずれかのヒドロキシアルキル化シクロデキストリンに、他の化合物を共有結合したものを含む。結合する他の化合物は、特に限定はされないが、例えば、各種レセプターへの結合能を有する化合物や抗腫瘍性または抗がん性を有する化合物を挙げることができる。具体的な例として、例えば、葉酸修飾したヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(葉酸修飾-HP−β−CyD)、トランスフェリンで修飾したヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(トランスフェリン修飾−HP−β−CyD)、EGFで修飾したヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(EGF修飾−HP−β−CyD)、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドで修飾したヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(RGDペプチド修飾−HP−β−CyD)、がん細胞を特異的に認識する抗体で修飾したヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(細胞特異的抗体修飾−HP−β−CyD)をあげることができる。葉酸修飾−HP−β−CyDは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのグルコースに葉酸が共有結合された化合物であり、葉酸が結合する部位は特に限定されず、ヒドロキシプロピル基が結合していない、グルコースの水酸基の位置に結合できる。また、葉酸が結合する割合は特に限定されない。
なお、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン誘導体は、他の化合物、例えば、葉酸や抗腫瘍性または抗がん性を有する化合物を共有結合したものは含まれるが、包接したものは含まれない。
「有効成分」とは、医薬組成物および/または医薬用途に用いられる剤、例えば、医薬品において、目的とする効能または効果を示すために含まれる薬効活性をもつ物質を意味する。医薬品は、一般に、有効成分と、医薬上許容される添加剤からなる。従って、本明細書において、有効成分というときは、本発明の医薬組成物としての用途、すなわち抗がん剤としての用途との関係で、該医薬組成物において抗がん活性を示す物質として使用される物質を意味する。言い換えれば、本明細書において、「有効成分」または「抗がん性有効成分」とは、抗がん性を目的とした医薬組成物において、その目的を達成するために含有される、抗がん活性を示す物質を意味する。
本発明は、特定のヒドロキシアルキル化シクロデキストリンまたはその誘導体を抗がん作用の有効成分として含む医薬組成物である。本発明で用いる特定のヒドロキシアルキル化シクロデキストリンとは、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、およびヒドロキシエチルシクロデキストリンからなる群より選ばれ、好ましくはヒドロキシプロピルシクロデキストリンまたはヒドロキシアルキル化−β−シクロデキストリンであり、さらに好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CyD)を例に、以下、本発明の態様を説明するが、本発明の態様がHP−β−CyDに限定されるものではない。
本発明の医薬組成物とは、抗がん作用を有する医薬組成物であり、かつ、組成物中に、抗がん活性を有する有効成分としてHP−β−CyDを含むことを特徴とする。すなわち、抗がん作用を有する医薬組成物中に、他の成分の可溶化剤および/または安定化剤としてHP−β−CyDを含むのではなく、抗がん活性を有する有効成分そのものとしてHP−β−CyDを含むことを特徴とする。言い換えれば、HP−β−CyDを他の成分の可溶化剤および/または安定化剤として含む医薬組成物は本発明の医薬組成物から除かれる。
本発明の医薬組成物は、抗がん作用を有する有効成分としてHP−β−CyDを含む限り、他の抗がん作用を有する有効成分を含むこともできるが、好ましくは、抗がん作用を有する主要な有効成分としてHP−β−CyDを含み、さらに好ましくは、抗がん作用を有する有効成分としてHP−β−CyDのみを含む。
本発明の組成物は、これに限定されないが、好ましくは、注射用製剤の形態をとる。本発明の注射用製剤は、静脈内、筋肉内、皮下、臓器内、腹腔内、あるいは腫瘍等の病巣に投与することができる。また本発明の医薬組成物は、水溶性製剤または凍結乾燥製剤のいずれの形態をとることができ、好ましくは、水性注射剤、または凍結乾燥した用時溶解型注射剤をあげることができる。
本発明の組成物は、通常注射剤に用いられる糖類、防腐剤、安定化剤、静電防止剤を含んでもよい。本発明の組成物はまた、薬理学的に許容できるpH調整剤を含有することができる。本発明に用いられるpH調整剤は、医薬用途に使用でき、薬理学的に許容できる物質であれば特に限定されるものではないが、好ましくは水酸化ナトリウム、炭酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液及び塩酸である。これらのpH調整剤は1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。本発明に組成物はまた、浸透圧調整剤または等張化剤を含むことができ、例えば、塩化ナトリウムやデキストロース等の少なくとも1種を含むことができる。
注射剤を例に本発明の態様を説明するが、本発明の態様は以下に限定されるものではない。また、本発明の特定のヒドロキシアルキル化シクロデキストリンまたはその誘導体としてHP−β−CyDを例に説明するが、それに限定されるものではない
本発明の一つの態様は、抗がん活性を有する主要な有効成分として、好ましくは唯一の有効成分として、HP−β−CyDを含有する抗がん剤であって、注射剤の形態をとる医薬組成物である。本発明の注射剤は、HP−β−CyDに加えて注射剤に用いられる浸透圧調整剤やpH調整剤を含むことができ、更には、注射剤に通常用いられる添加剤を含むこともできる。
従って、本発明の一つの態様は、HP−β−CyDおよび医薬上許容される添加剤を含む抗がん注射剤であり、また、別の一つの態様は、HP−β−CyDおよび医薬上許容される添加剤のみからなる抗がん注射剤(抗がん活性を有する有効成分としてHP−β−CyDのみを含む)である。これらの注射剤は、水溶性製剤または凍結乾燥製剤のいずれの形態もあり得る。
本発明の組成物を用いることができるがんは特に限定されず、いずれのがんに対しても用いることができ、例えば、乳がん、小細胞肺がん、大腸がん、悪性リンパ腫、白血病、精巣腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、咽頭がん、喉頭がん、舌がん、歯肉がん、食道がん、胃がん、胆管がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、前立腺がんなどを挙げることができる。好ましくは、白血病である。
本発明の組成物を抗がん剤として用いる場合、本発明の特定のヒドロキシアルキル化シクロデキストリンの有効投与量は、癌の性質、病気の程度、治療方針、転移の程度、腫瘍の量、体重、年齢、性別及び患者の(遺伝的)人種的背景に依存して適宜選択できるが、薬学的有効量は、一般に、臨床上観察される症状、病気の進行の度合い等の要因に基づいて決定される。1日あたりの投与量は、例えば、ヒトに投与する場合は、0.5g/kg〜10g/kg(体重60kgの成人では、30g〜600g)、好ましくは1g/kg〜10g/kg、より好ましくは1g/kg〜5g/kg、さらに好ましくは1.2〜5g/kg、である。投与は、1回で投与しても複数回に分けて投与してもよく、また、点滴等により時間をかけて連続的に投与してもよいが、好ましくは点滴により数時間〜約10時間をかけて投与するのがよい。また、投与は、連日であっても間歇投与であってもよく、投与対象の状態に応じて適宜選択できるが、好ましくは、間歇投与である。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実験動物を用いた実験は、国立大学法人熊本大学動物実験委員会の許可を得て熊本大学動物実験指針の下で、または、佐賀大学動物実験安全管理規則に則り佐賀大学動物実験委員会の承認を得て行った。
実施例1:ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP-β-CyD)の細胞障害活性の測定
ヒト白血病細胞(BV173:Ph1-陽性ヒト白血病細胞、ドイツ・DSMZより入手)、マウス白血病細胞(BaF3 p190 BCR-ABL:マウスproB細胞に p190 BCR-ABL融合遺伝子を導入した株、ドイツ・フランクフルト大学、Dr Martin Rutardt より供与を受けた)、及び正常ヒト肝細胞(Hepatocyte)を用意し、96ウェルプレートにBV173とhepatocyteは104細胞/100μL、BaF3 p190は2.5×103細胞/100μLの濃度で撒き、HP-β-CyD終濃度がそれぞれ0、0.5、1.5、5、15、25mMになるよう各ウェルへ加え、37℃、5%CO2 下で培養した。24、48、72時間後に、各ウェルへ生細胞数測定試薬(ナカライテスク#07553)を10μLずつ加え、2時間後にマルチラベルプレートカウンターで吸光度(450nm)を測定し、生細胞数実測の代用とした。結果を図1に示す。
各細胞株につき、上記MTTアッセイを3回繰り返した。得られた吸光度をCalcusyn (Biosoft)へプロットし、50%細胞増殖阻害濃度(IC50)を算出した。結果は以下の表1に示す。
Figure 0005703426
上記の結果より、白血病細胞株は、正常肝細胞と比較しHP-β-CyDへの感受性が高い傾向があることが示された。すなわち、HP-β-CyDの腫瘍細胞特異的な作用が示唆された。
実施例2:造血前駆細胞に対するHP-β-CyDの細胞障害活性の測定
10週齢のC57BL6/Nマウス(雄)より骨髄単核球を分離し、HP-β-CyD最終濃度が0、5、15、25mMになるよう調整したマウス造血コロニーアッセイ培地(Mouse Methocult #03434)に加えた。8日後、顕微鏡下にコロニー数をカウントし比較した。結果を図2に示す。
HP-β-CyD 25mM添付した培地では無添加培地と比較しコロニー数が約50%に減少したが、HP-β-CyD 15mMまではコロニー数に大きな差はなく、正常造血前駆細胞の生存にHP-β-CyDは悪影響を及ぼさないことが示唆された。
実施例3:コレステロール漏出に及ぼすHP-β-CyDの影響
BaF3 p190細胞およびBV173細胞を用いて、コレステロール漏出に及ぼすHP-β-CyDの影響を検討した。それぞれの細胞について、1x107細胞の細胞懸濁液 1mLを15mL遠沈管に移し、遠心して、上清を除去した。細胞に、各種濃度(添加なし、5mM、10mM)のHP-β-CyDまたはメチル−β−シクロデキストリン(M-β-CyD)を含有するHBSS溶液を5mL添加し軽く懸濁し全量を100mm dishに回収した。37℃で1時間インキュベーションした後、上清4mLを採取し遠心(4℃、3,000rpm、5min)した。遠心上清を500μL採取してコレステロールE-テストワコー(登録商標)にてコレステロール量を定量した。結果を図3に示す。
HP-β-CyDを添加した場合も、ポジティブコントロールであるM-β-CyDに比べては少ないが、コレステロールの漏出が確認された。
実施例4:細胞内コレステロール量に対するHP-β-CyDの影響
BaF3 p190細胞およびBV173細胞を用いて、細胞内コレステロール量に及ぼすHP-β-CyDの影響を検討した。 1x107 細胞/mLのBaF3 p190 BCR-ABLまたはBV173 の細胞懸濁液に1mLを15mL遠沈管に移し、遠心して、上清を除去した。細胞に、各種濃度の CyDs 溶液 (HP-β-CyD 5、10 mM、M-β-CyD 5、10 mM in HBSS)を5 mL添加して軽く懸濁し、100 mm 培養皿にてインキュベーション (37℃, 1 h)した。上清 4 mL を採取し、遠心後 (4℃, 3,000 rpm, 5 min)、上清 500 μL を採取し、コレステロールE-テストワコー(Wako)を用いて培養上清中に漏出したコレステロール量を定量した。さらに、細胞を回収し、可溶化後、細胞内コレステロール量を定量した。結果を図4に示す。HP-β-CyDでは、濃度依存的に細胞質からのコレステロール(総コレステロール(TC)および遊離コレステロール(FC))の漏出が確認され、アポトーシス誘導が示唆された。
実施例5:HP-β-CyDのアポトーシス誘導の測定
マウス白血病細胞(BaF3 p190 BCR-ABL)およびヒト白血病細胞(BV173)を用いた。BaF3 p190は2.5×104細胞/mL、BV173は105細胞/mLの濃度で6ウェルプレートへ撒き、RPMI-1640培地; GibcoBRL, Oaisley, Scotland にて、HP-β-CyDを最終濃度0、5、10、15、25mMになるよう加え、37℃ 5%CO2下で培養した。12時間、24時間後に細胞を回収し、flow cytometer(BD FACSCaliburTM:Becton Dickinson社)を用い、Annexin V陽性細胞率を、アネキシンV(Beckman Coulter社)を用いて測定した。結果を図5に示す。HP-β-CyD濃度依存的にアポトーシス細胞の増加が確認できた。
実施例6:マウス白血病細胞移植がんマウスモデルを用いたHP-β-CyDのマウス生存率に対する効果の確認
5-6週齢のBalb/cA Jcl nu/nu(雄)に、白血病細胞(BaF3 p190 BCR-ABL)を尾静脈より106細胞/200μL輸注した。HP-β-CyD投与量により3群(0、50、150mM)にわけ、Day3-22に1日2回 200μLずつを腹腔内投与した。結果を図6に示す。HP-β-CyD投与群は無治療群と比較し、有意に生存期間を延長した。
比較例1:マウス白血病細胞移植がんマウスモデルを用いたイマチニブ(imatinib)およびバフェチニブ(bafetinib)のマウス生存率に対する効果の確認
実施例6と同様にして、5-6週齢のBalb/cA Jcl nu/nu(雄)に、白血病細胞(BaF3 p190 BCR-ABL)を尾静脈より106細胞/200μL輸注した。その後、イマチニブおよびバフェチニブの原末を0.5 %のメチルセルロースに溶解したものを、経口投与(ゾンデを使用し、直接胃内へ投与)した。投与は、それぞれ、bafetinib (NS-187):100 mg/kg/dose、imatinib : 200 mg/kg/doseとなるようにし、1日2回、白血病細胞移植後 Day2 から11日間投与した。結果を図7に示す。イマチニブは16日目、バフェチニブは26日目に全てのマウスが死亡した。
実施例7:HP-β-CyDの有効血中濃度
HP-β-CyDが、in vivo条件下で抗白血病効果を示す最小有効血中濃度を推定した。これまでの検討から、in vitro細胞培養系においては、ヒト慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia, CML)から樹立されたBV173細胞およびマウスPro B細胞であるBaF3細胞にCMLの原因遺伝子ヒトbcr-ablを遺伝子導入したBaF3/BCR-ABL細胞を用いた場合、HP-β-CyDの50%有効阻止濃度(IC50)は、それぞれ4.68±0.98 mMおよび6.01±1.04 mMであった。さらに、in vivo条件下、6週齢のヌードマウスに1x106個のBaF3/BCR-ABL細胞を経静脈的に移植し、HP-β-CyDを移植後3日後から20日間1日2回腹腔内投与した際に、50 mM および150 mM HP-β-CyD投与群で、コントロール群(生理食塩水)に比べて有意に生存期間が延長した。そこで、50 mM HP-β-CyD投与群におけるHP-β-CyDの血清中濃度を予測し、抗白血病効果を示す最小有効血中濃度を推定した。
実験には、BALB/cマウス(生後8〜9週齢、平均体重: 22.7±0.6 g)に2000 mg/kgのHP-β-CyD等張液(pH 7.4)を皮下投与した。
HP-β-CyD等張液を投与後30分、1時間および2時間でマウス腹部大静脈より採血した。血液は遠心分離(4000×g, 4℃)し、血清を得た。血清(100μL)に20%トリクロロ酢酸水溶液(40μL)を添加後、遠心分離(10000× g, 4℃)して上清(80μL)を回収し、1 M Na2CO3 水溶液(40μL)を加えた後にフィルターろ過(Millipore社製、Millex(登録商標)-HP PES φ13 mm、pore size 0.45μm)したものを、HPLCにて測定した。
血清中HP-β-CyD濃度の測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、ポストカラム法にて行った。(Frijlink HW, J Chromatogr,487,99-105(1989), 415,325-333(1987)。HPLCの機器設定、移動相組成などの測定条件を以下に示す。HPLC機種・型番: SHIMADZU LC-10A (UV-VIS DETECTOR: SPD-10A)、Column: Shodex SB802HQ (水系SEC )、Mobile phase: 0.9 % NaCl (pH 4.3)w/w、Post-column solution: phenolphthalein : NaHCO3 = 1 : 99 (v/v)、Flow: 0.45-0.6 mL/min、Column tempareture: 40℃、Injection volume: 10μL、Detector: 546 nm。本実験条件における定量限界は、200μg/mL HP-β-CyDであった。
図8は、HP-β-CyD (2000 mg/kg)を皮下投与後の血清中HP-β-CyD濃度推移を表している。これまでの報告から、HP-β-CyDは血中移行後、細胞外液中に分布し、糸球体濾過速度と同等の速度で尿中に排泄されることが知られている。そこで、HP-β-CyDの分布容積(Vd)をマウス細胞外液量(4.6 mL)および消失速度定数(ke)をマウス糸球体濾過速度(3.7 h-1)と仮定して、皮下投与後のHP-β-CyDの吸収速度(ka)を推定した。その結果、HP-β-CyDの皮下投与後の吸収速度は、1.1 h-1と算出された。図8中の曲線は、既知のVd値、ke値および本研究で得られたka値を用いて作成したシミュレーション曲線である。
次いで、50 mM HP-β-CyDをマウスに1日2回腹腔内投与した際の血清中濃度をシミュレーションした。
図9は、図8から得られたka値および既知のVd値およびke値を用いて、50 mM HP-β-CyD(14 mg/20 g = 0.7 g/kg)をマウスに1日2回皮下投与および静脈内投与したと仮定した際の血清中濃度の時間推移を予測した結果を示す。皮下投与の場合の最高血清中濃度は566 mg/L(0.4 mM)、静脈内投与の場合の最高血清中濃度は3452 mg/L(2.47 mM)と推測された。
BaF3/BCR-ABL細胞を経静脈的に移植したヌードマウスには、50 mM HP-β-CyDを1日2回腹腔内投与したので、血清中濃度推移は皮下投与と静脈内投与の中間的な値をとるものと予測される。さらに、in vitro細胞系では5 mM程度で有効であることが示されているので、HP-β-CyDの効果が時間・濃度依存的であることも考慮すると、血清中最小有効濃度は、1 mM(1400 mg/L)付近であると想定される。
次に、ヒトにおいてHP-β-CyDの抗白血病効果が期待される最小投与量を推定した。
今回得られた新知見をヒトに当てはめると、抗白血病効果を示すHP-β-CyDの定常状態における血清中最小有効濃度(Css = 1400 mg/L)=点滴速度(mg/h)/CL(111 mL/h/kg)から、点滴速度(投与量)は、155.4 mg/h/kgと計算できる。この点滴速度で体重60 kgの患者に1日8時間点滴すると、総量で74.6 g/bodyとなる。この量は、HP-β-CyDを添加剤として用いる他の薬剤における量に比べると、遥かに多い量である。たとえば、抗がん剤ではないが、現在市販されている医薬品の中で、HP-β-CyDを最大に含有している製剤はイトリゾール(登録商標)注である。イトリゾール注は、水溶性が極めて低いイトラコナゾールを溶解するために、1バイアル中にHP-β-CyDを8g含んでおり、最大で1日2回投与が可能であるので、1日当たりのHP-β-CyDの最大投与量は16gとなる。また、抗がん剤において薬効成分の安定化剤や可溶化剤キャリア分子としての使用が提案されているHP-β-CyDの添加量は、薬効成分の数倍量となり、1日当たりのHP-β-CyDの最大投与量は更に少ない量となる。今回のシミュレーション結果から得られた、抗白血病効果に対するHP-β-CyDの推定投与量は、1日当たりの約70gとなり、従来の製剤添加物としてのHP-β-CyDの投与量から大きくからかけ離れている結果となった。
上記の記載は、本発明の目的及び対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
本発明の医薬組成物は、抗がん剤として有用である。

Claims (5)

  1. ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン抗がん性有効成分として含む白血病治療のための医薬組成物。
  2. 抗がん性有効成分としてヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのみを含む請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、1日あたり、0.5g/kg〜10g/kgの投与量で投与されることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. 前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、1日あたり、1g/kg〜5g/kgの投与量で投与されることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 注射剤である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の医薬組成物。
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