JP5702386B2 - ガレクチン−3および心臓再同期療法 - Google Patents

ガレクチン−3および心臓再同期療法 Download PDF

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Description

(関連出願への参照)
本出願は、2009年8月25日に出願された米国仮出願第61/236,712号の利益を主張し、上記米国仮出願の全容は、参照によって本明細書に援用される。
(背景)
うっ血性心不全、または心不全は、病的状態および死亡の主な原因である。米国で約500万人の人々が心不全に罹患し、毎年約500,000例の新規症例が診断されている。多くの場合、うっ血性心不全患者は、さらに心臓の効率を減少させる不整脈にも罹患している。
そのような患者のための1つの処置選択肢は、両心室性ペーシングデバイスとしても公知である、心臓再同期療法(CRT)デバイスの埋め込みを含む。正常な心拍において、心臓の2つの心房チャンバーは同時に収縮し、血液を2つの心室チャンバーに送る。1秒未満後、2つの心室チャンバーは同時に収縮し、血液を心臓の外へ、そして体中へ送る。いくらかの心不全患者は、心室間に電気的な遅延を有し、これにより2つの心室チャンバーはもはや同時に収縮しない。その結果は、心拍出量の実質的な減少である。例えば、正常な心拍において、左心室の血液の半分超が各心拍において送り出される。言い換えると、「左室駆出率」または「LVEF」は、50%より高い。対照的に、心拍が同調していないいくらかの心不全患者は、3分の1未満のLVEFを有する。これらの患者において、各心拍で血液の3分の2は「送り出されない」ままである。
CRT療法の目的は、心室の同調したポンピングを回復することである。これを、心拍ごとに同時に収縮させるために2つの心室を刺激する別々の電気リードを有するデバイスによって達成する。CRTデバイスは、生活の質を改善し、そして中程度または重症の心不全;35%以下のLVEF;および心室の遅い脱分極を示す心エコー図(120msより長い「QRS」群)を有するいくらかの患者において、死亡率を減少させた。それでも、CRTを受ける心不全患者の約30%は、処置に応答しない(例えば、非特許文献1を参照のこと)。一人の著者が2007年に警告したように、「最適なCRT候補を同定するためのより良い基準が、緊急に保証されるべきである(warranted)」(非特許文献2)。さらに、CRT介入を受けている心不全患者の中でも、心不全のための予定外の入院および死亡のような有害事象の率が高い(例えば、非特許文献3を参照のこと)。
Jeevananthamら、Cardiol.J.(2009)16(3)197−209 Stellbrink、Eur.Heart J.(2007)28:1541−1542 Clelandら「The effect of cardiac resynchronization on morbidity and mortality in heart failure」N.Engl.J.Med.(2005)352(15):1539−49
(発明の概要)
体液中のヒトタンパク質ガレクチン−3(galectin−3)の濃度を、心臓再同期療法で処置した患者において、疾患の進行または治療の有効性を予測またはモニタリングするために使用し得ることが現在発見されている。患者のガレクチン−3血中濃度を、CRTデバイスを埋め込んだ後にモニタリングして、疾患の発症または進行および/または処置過程の継続的妥当性の持続的指標を提供し得る。例えば、本発明は、心不全患者の体液(例えば血液、血清、または血漿)中のガレクチン−3濃度の経時的変化を測定すること、およびガレクチン−3濃度の測定した変化を、心臓再同期療法が有用であったか、または有用でなかった他の患者において観察されたガレクチン−3濃度の変化と比較することを可能にする。
モニタリング方法は、患者のガレクチン−3濃度を、CRTデバイスの埋め込み前または後に、同じ患者の早期のガレクチン−3濃度と比較することを含み得る。その方法はまた、CRTデバイスの埋め込み後いくつかの時点で測定したガレクチン−3レベルを比較して、ガレクチン−3濃度の履歴を作ることを含み得る。例えば、本発明は、CRTデバイスを埋め込んだ心不全患者の体液(例えば血液、血清、または血漿)中のガレクチン−3濃度の増加または減少が、存在するかまたは存在しないかを検出することによって患者を評価するための方法を提供する。経時的に増加するガレクチン−3濃度の存在は、患者におけるうっ血性心不全の悪化の指標である。
1つの実施態様において、本発明は、心臓再同期療法で処置したヒトの予後または結果を予測するための方法を提供する。体液、例えば血液中のガレクチン−3の濃度を、心臓再同期療法後の予後の指標となるガレクチン−3濃度が存在するかまたは存在しないかに関して決定し得る。例えば、ヒトにおけるガレクチン−3血中濃度を測定し、そして最小閾値と比較し得る。最小閾値より上のガレクチン−3血中濃度は、そのヒトの死亡または入院のリスクの増加の指標となり得る。
その評価の結果を使用して、患者の処置を含む決定を知らせ得る。例えば、心不全患者が、患者のガレクチン−3濃度または患者のガレクチン−3濃度の変化に基づいて、心臓再同期療法に対して治療的に非応答性であるようならば、血管形成術または他の手術および/または利尿薬、変力物質、ベータ遮断薬、ナトリウム排泄増加性ペプチド、スタチン、または血管拡張薬の投与のような、他の形式の処置が好ましい場合がある。
体液中のヒトタンパク質ガレクチン−3の濃度は、症候性患者(presenting patient)が心臓再同期療法から利益を得ることができるかどうかの決定に有益であり得ることも発見された。この方式で、除細動機能が有るかまたは無いCRTデバイスを、その処置から利益を得る可能性のより高い心不全患者に埋め込み得る。従って、心不全を経験した患者、または心不全のリスクがあると同定された患者を試験して、その循環ガレクチン−3レベルを測定することが想定される。測定したガレクチン−3レベルは、患者の2つのグループ:そのガレクチン−3濃度に基づいて、心臓再同期療法から利益を得るであろう患者;および利益を得る見込みが無い(または可能性が低い)患者の同定を可能にする。CRTデバイスを、最初のグループの患者に埋め込み、一方2番目のグループの患者には他の治療過程を選択する。
従って、本発明は、心不全に罹患し得る、またはそのリスクのあるヒトのための治療を選択する方法を提供する。その方法は、血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルのようなサンプル中のガレクチン−3濃度を測定することを含む。測定したガレクチン−3濃度は、その患者が心臓再同期療法に対して有利に応答しそうかどうかの指標となる。有利な応答は、例えばある期間にわたる生存可能性の増加、または心不全の進行または発症の低減、心臓の強度の改善、LVEFの増加、心不全の悪化のための予定外の入院の減少、運動中の最大酸素消費量の増加、疲労の減少、息切れの低減、または睡眠時無呼吸の低減を含む。
1つの実施態様において、その方法は、心臓再同期療法の候補である心不全患者の体液(例えば血液、血清、または血漿)中のガレクチン−3濃度を、そのような処置の前に測定すること、およびそのガレクチン−3濃度を、心臓再同期療法が有用であることが証明された、除細動機能を有するかまたは有さないCRTデバイスで処置した他の患者で観察されたガレクチン−3濃度と比較することを含む。
同様に、本発明は、心臓再同期療法の候補(例えば心不全患者)を評価するための方法を提供する。その方法は、心臓再同期療法の候補である患者の体液中のガレクチン−3濃度を測定すること、およびその測定したガレクチン−3濃度を、参照ガレクチン−3濃度と比較することを含む。その参照ガレクチン−3濃度は、他の患者において観察されたガレクチン−3の濃度由来であり得、そしてCRTデバイスの埋め込みに対する応答性または無応答性の指標となり得る。測定したガレクチン−3濃度が、参照ガレクチン−3濃度と異なるなら、心臓再同期療法を制限または拒否し得る。
本発明はまた、心不全に罹患し得るかまたはそのリスクのあるヒトを処置するための方法を提供する;その方法は、心臓再同期療法に対する好ましい応答の指標となる、決定されたガレクチン−3血中濃度を有する患者に、ペースメーカーまたは除細動機能を有するかまたは有さないCRTデバイスを埋め込むことを含む。ガレクチン−3血中濃度を測定する過程を含む、治療を選択する方法とは対照的に、その処置方法は、続くCRTデバイスの埋め込みに関連する。従って、その処置方法は、ガレクチン−3の決定が以前にどのように、または誰によってなされたかにかかわらず、そのガレクチン−3血中濃度が好ましい応答の指標であると決定された患者にCRTデバイスを埋め込むことを含む。
選択または処置された患者において、ガレクチン−3血中濃度が、最小閾値の上、最大閾値の下、または最小および最大閾値によって規定される標的範囲内であることが決定され得る。最小閾値は、例えば10ng/ml超;10〜15ng/ml;15〜20ng/ml;20〜25ng/ml;25〜30ng/ml;または30ng/ml超であり得る。最大閾値は、例えば70ng/ml未満;60ng/ml未満;40ng/ml未満;30〜40ng/ml;25〜30ng/ml;20〜25ng/ml;または15〜20ng/mlであり得る。
その評価の結果を、患者の処置を含む決定を知らせるために使用し得る。例えば、心不全患者のガレクチン−3濃度が、心臓再同期療法が有用であることが証明された他の心不全患者のものと異なるなら、CRTデバイスの埋め込みは示されず、そして患者に異なる薬物療法または治療選択肢を提案し得る。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
心臓再同期療法の候補であるヒトかまたは心臓再同期療法で処置されたヒトを評価する方法であって、該ヒト由来のサンプル中のガレクチン−3血中濃度を測定することによって、心臓再同期療法への応答性の指標または心臓再同期療法後の予後の指標となるガレクチン−3血中濃度が存在するかまたは存在しないかを決定する工程を含む、方法。
(項目2)
前記ヒトが心臓再同期療法の候補である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ヒトが心臓再同期療法で処置された、項目1に記載の方法。
(項目4)
心臓再同期療法で処置されたヒトにおける心不全の発症または進行をモニタリングする方法であって、該ヒト由来のサンプル中のガレクチン−3血中濃度を測定することによって、心臓疾患の発症または進行の指標となるガレクチン−3血中濃度が存在するかまたは存在しないかを決定する工程を含む、方法。
(項目5)
前記ヒト由来の初期サンプルが、心臓再同期デバイスが埋め込まれる時点で取得される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記初期サンプルが取得された後の時点で、前記ヒト由来の少なくとも一つのさらなるサンプルを取得する工程、ガレクチン−3血中濃度を測定する工程、および該少なくとも一つのさらなるサンプルのガレクチン−3血中濃度を該初期サンプルのガレクチン−3血中濃度と比較する工程をさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記サンプルが、血液、血清または血漿を含む、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
心臓再同期療法デバイスに対する応答性の指標となる決定されたガレクチン−3血中濃度を有する患者に該デバイスを埋め込む工程を含む、ヒトを処置する方法。
(項目9)
前記デバイスを埋め込んだ後、前記患者のガレクチン−3血中濃度をモニタリングするさらなる工程を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
応答性が、生存の改善、心不全の悪化のための予定外の入院の減少、心臓の強度の改善、疲労の減少、息切れの低減、または睡眠時無呼吸の低減を含む、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記心臓再同期療法デバイスが、除細動器をさらに含む、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記患者が、標的範囲内であると決定されたガレクチン−3血中濃度を有する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記患者が、最小閾値より上であると決定されたガレクチン−3血中濃度を有する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記最小閾値が、10ng/ml超である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記最小閾値が、10ng/ml〜15ng/mlである、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記最小閾値が、15ng/ml〜20ng/mlである、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記最小閾値が、20ng/ml〜25ng/mlである、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記最小閾値が、25ng/ml〜30ng/mlである、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記最小閾値が、30ng/ml超である、項目13に記載の方法。
(項目20)
前記患者が、最大閾値未満であると決定されたガレクチン−3血中濃度を有する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記最大閾値が、70ng/ml未満である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記最大閾値が、60ng/ml未満である、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記最大閾値が、40ng/ml未満である、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記最大閾値が、30ng/ml〜40ng/mlである、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記最大閾値が、25ng/ml〜30ng/mlである、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記最大閾値が、20ng/ml〜25ng/mlである、項目20に記載の方法。
(項目27)
前記最大閾値が、15ng/ml〜20ng/mlである、項目20に記載の方法。
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、心不全患者の心臓再同期療法への生理学的応答を予測および/またはモニタリングする方法を発明した。過去の臨床試験において、CRTデバイスレシピエントの4分の1〜2分の1が、そのデバイスから有意な利益を得られなかったので、「非応答者」として分類された(Hawkinsら(2006)Eur.Heart J.27:1270−1281)。1つの試験は、コントロールグループはさらにより悪かったが、CRTデバイスレシピエントの40%で、埋め込み後に心不全が悪化したことを報告した(Clelandら(2005)New Engl.J.Med.352:1539−49)。本発明者らは、患者における循環ガレクチン−3レベルの測定を使用して、心臓再同期療法のより良い候補である患者を同定し得ることを発見した。この方法において、その治療を、その治療から利益を得る可能性のより高い人に優先的に向け得、一方他の患者のリスクおよび費用をなくし、そして異なる治療過程に向け得る。それに加えて、本発明者らは、CRTデバイスを埋め込む際、および/またはその後にガレクチン−3を測定することは、疾患の発症または進行および/または処置過程の継続的妥当性の持続的指標を提供することを発見した。
本明細書中で使用される「心不全」、「HF」、「うっ血性心不全」、または「CHF」という用語は、心室の血液を満たすかまたはそれを排出する能力を損なう、複合的な臨床症候群を指す。あらゆる構造的または機能的心臓障害が、HFを引き起こし得、HF患者の大部分は損なわれた左心室(LV)心筋機能を有する。HFの症状は、呼吸困難(息切れ)、疲労、および体液貯留を含む。The American Heart Association(AHA)は、HFの進行または発症の4つのステージを同定した。ステージAおよびBの患者は、明らかな危険因子を示すが、まだHFを発症していない。ステージCおよびDの患者は、現在HFの症状を示しているか、または過去にその症状を示していた。例えば、ステージAの患者は、冠状動脈疾患、高血圧、または糖尿病のような危険因子を有し、損なわれた左心室(LV)機能を示さない患者である。ステージBの患者は、無症候性であるが、損なわれたLV機能、肥大または幾何学的なチャンバーのゆがみのような、心臓構造異常またはリモデリングを有する。ステージCの患者は、心臓異常を有し、そして症候性である。ステージDの患者は、最大限の医学的処置にもかかわらず症状を示す、難治性のHFを有する。その患者らは、典型的には繰り返し入院するか、または特別な介入無しには退院できない。
ガレクチン−3は、多機能β−ガラクトシド結合レクチンのファミリーの構造的にユニークなメンバーである(Gabius(2006)Crit.Rev.Immunol.26:43−79)。ガレクチン−3の発現は、上皮および炎症性細胞(マクロファージ、好中球および肥満細胞を含む)と関連していた。ガレクチン−3は、筋線維芽細胞の増殖、線維形成、組織修復、心臓リモデリング、および炎症を含む、心不全において重要な様々な生物学的過程に関係していた(Liuら(2009)Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.296(2):H404−12;Papaspyridonosら(2008)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.28(3):433−40;Hendersonら(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:5060−5065;Sharmaら(2004)Circulation 110:3121−3128;Sanoら(2000)J.Immunol.165(4):2156−64;Kuwabaraら(1996)J.Immunol.156(10):3939−44)。
本発明者らは、心不全患者において、心臓再同期療法の有効性を予測するために、循環ガレクチン−3タンパク質レベルの使用を可能にする方法を開発した。患者のガレクチン−3レベルの知識は、CRTデバイスの埋め込みに際して、患者の結果の情報を与える。さらに、埋め込み後のガレクチン−3レベルのような、循環バイオマーカーのレベルは、患者の結果の情報を与え、そしてガレクチン−3レベルの変化は、予後の変化を示し得る。より高い濃度のガレクチン−3は、死亡および入院のような悪い予後と関連するが、CRTデバイスを受けた比較的高いガレクチン−3レベルを有する患者は、心拍出量、生活の質(例えばMinnesota Living With Heart Failure(登録商標) Questionnaire、University of Minnesotaによって測定されるような)、心不全の進行または発症の低減、疲労の減少、息切れの低減、または生存可能性の増強によって測定されるように、有意に利益を得ることができる。
(ガレクチン−3の検出)
本発明は、任意で1つまたはそれ以上の他のマーカー(例えばBNP、NT−proBNP)と組み合わせて、ガレクチン−3のようなマーカーのレベルを測定することによって、心臓再同期療法に対する心不全患者の生理学的応答を予測および/またはモニタリングするための方法を提供する。定量化ありまたは無しで、目的のタンパク質を検出するための多くの方法が周知であり、そして本発明の実施において使用し得る。そのようなアッセイの例を下記に記載し、そして例えば、イムノアッセイ、クロマトグラフィー法、および質量分析を含み得る。そのようなアッセイを、特に、血液、血漿、および血清を含む任意の生物学的サンプルに対して行い得る。よって、複数のアッセイを用いてガレクチン−3を検出し得、そしてサンプルを1つまたはそれ以上の供給源から分析し得る。
1つまたはそれ以上の分離方法の助力によって、サンプルにおけるマーカーを検出または定量化し得る。例えば、適当な分離方法は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)、ESI−MS/MS、ESI−MS/(MS)(nはゼロより大きい整数)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI−TOF−MS)、シリコンを用いる脱離/イオン化(DIOS)、二次イオン質量分析(SIMS)、四重極飛行時間型(Q−TOF)、大気圧化学イオン化質量分析(APCI−MS)、APCI−MS/MS、APCI−(MS)、または大気圧光イオン化質量分析(APPI−MS)、APPI−MS/MS、およびAPPI−(MS)のような、質量分析法を含み得る。他の質量分析法は、とりわけ四重極、フーリエ変換質量分析(FTMS)およびイオントラップを含み得る。さらに使用し得る分光技術は、共鳴分光法および光学的分光法を含む。
他の適当な分離方法は、化学的抽出分離、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性(逆相)液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動、1次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)、または薄層、ガスもしくは液体クロマトグラフィーのような他のクロマトグラフィー技術、またはそのあらゆる組み合わせを含む。1つの実施態様において、アッセイする生物学的サンプルを、分離方法に適用する前に分画し得る。
マーカー自体の物理的分離を必要としない方法によって、マーカーを検出または定量化し得る。例えば、分子の複雑な混合物からマーカーのプロファイルを解明するために、核磁気共鳴(NMR)分光法を用い得る。例えば、腫瘍を分類するための類似したNMRの使用が、Hagberg(1998)NMR Biomed.11:148−56において開示される。
サンプル中のマーカーをまた、例えばマーカーを、そのマーカーに特異的に結合し得る結合部分と組み合わせることによって、検出または定量化し得る。その結合部分は、例えば、リガンド−受容体ペア、すなわち特異的結合相互作用を有し得る分子のペアのメンバーを含み得る。その結合部分はまた、例えば抗体−抗原、酵素−基質、核酸−核酸、タンパク質−核酸、タンパク質−タンパク質、または当該分野で公知の他の特異的結合ペアのような、特異的結合ペアのメンバーを含み得る。標的に対する増強した親和性を有する結合タンパク質をデザインし得る。任意で、その結合部分を、酵素、蛍光、放射性、燐光、または呈色粒子標識のような、検出可能な標識と結合し得る。その標識複合体を、例えば視覚的に、または分光光度計または他の検出器の補助によって、検出または定量化し得る。
ガレクチン−3レベルを、イムノアッセイを行うことによって定量化し得る。ガレクチン−3イムノアッセイは、試験する被験体由来のサンプルを、ガレクチン−3が存在するなら免疫特異的な結合が起こり得る条件下で、適当な抗体と接触させること、および抗体による任意の免疫特異的な結合の量を検出または測定することを含む。制限無しに、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイおよびプロテインAイムノアッセイのような技術を用いた、競合的または非競合的アッセイシステムを含む、任意の適当なイムノアッセイを使用し得る。
「サンドイッチ」アッセイにおいて、ガレクチン−3の非オーバーラップ部位(エピトープ)に特異的に結合するモノクローナル抗体のような、2つの分子(「結合部分」)を使用する。典型的には、1つの結合部分は、固体表面に固定化され、ここでそれはガレクチン−3に結合および捕捉する。従って、この最初の結合部分は、捕捉結合部分とも呼ばれる。2番目の結合部分のガレクチン−3複合体への結合が、ガレクチン−3が捕捉されたことを示すように、2番目の結合部分を、例えばフルオロフォア、酵素、または呈色粒子で検出可能に標識する。そのシグナルの強度は、サンプル中のガレクチン−3の濃度に比例する。従って、2番目の結合部分は、検出結合部分または標識結合部分とも呼ばれる。結合部分は、ガレクチン−3のN末端の一部に特異的に結合する限り、あらゆる型の分子であり得る。好ましい実施態様において、使用される結合部分は、モノクローナル抗ガレクチン−3抗体、すなわち、ガレクチン−3の別々の部分に対して作られた、またはそうでなければそれに結合するよう選択されたモノクローナル抗体である。
そのようなアッセイ手順を、2部位免疫測定(immunometric)アッセイ法、「サンドイッチ」法、または(抗体が結合物である場合)「サンドイッチイムノアッセイ」と呼び得る。当該分野で公知であるように、その捕捉および検出抗体を、同時にまたは連続的にテストサンプルと接触させ得る。捕捉抗体をサンプルとインキュベートし、そしてその後標識した検出抗体を前もって決めた時間に加えることによって、連続的な方法を達成し得る(「前向き」法と呼ばれることもある)。あるいは、まず標識した検出抗体を、サンプルとインキュベートし、そして次いでそのサンプルを捕捉抗体に曝露し得る(「逆向き」法と呼ばれることもある)。アッセイを完了するための、短期間で有り得る任意の必要なインキュベーションの後に、その標識を測定する。そのようなアッセイを、様々なハイスループット臨床検査分析器またはポイントオブケア(point of care)もしくは在宅試験デバイスの使用を含む、当業者に公知である多くの特定の形式で行い得る。
1つの実施態様において、サンドイッチ形式において側方流動デバイスを使用し得、ここで生物学的サンプルにおける、ベースライン感度レベルより上のガレクチン−3の存在は、側方流動アッセイの捕捉ゾーンまたはその上流におけるサンドイッチ相互作用の形成を可能にする。例えば、米国特許第6,485,982号を参照のこと。その捕捉ゾーンは、ガレクチン−3を捕捉するために適当な抗体分子、またはビオチン化複合体の捕捉のための固定化アビジン等のような捕捉結合部分を含み得る。例えば、米国特許第6,319,676号を参照のこと。そのデバイスにはまた、捕捉ゾーンにおける捕捉に適当な発光標識を組み込むことができ、ガレクチン−3の濃度は、その捕捉部位におけるシグナルの強度に比例する。適当な標識は、ポリスチレンマイクロスフィアに固定化された蛍光標識を含む。呈色粒子も使用し得る。
本発明の方法で使用し得る他のアッセイ形式は、フロースルーデバイスを含むがこれに限らない。例えば、米国特許第4,632,901号を参照のこと。フロースルーアッセイにおいて、1つの結合部分(例えば抗体)を、膜表面の規定された領域に固定化する。次いでこの膜を、デバイスを通してサンプル容積を吸い出すための(pump)リザーバーとして作用する吸収層の上にかぶせる。固定化の後、膜上の残りのタンパク質結合部位をブロックして、非特異的相互作用を最小限にする。操作において、生物学的サンプルは膜に加えられ、そしてマトリックスを通してろ過され、このことは、サンプル中の抗体に特異的な任意の分析物が、固定化した抗体に結合することを可能にする。2番目の工程において、サンドイッチを完成するために、捕捉されたマーカーと反応する、標識した二次抗体を加え得るかまたは放出し得る。あるいは、二次抗体をサンプルと混合し得、単一の工程において加え得る。ガレクチン−3が存在するなら、呈色スポットが膜表面に現れる。
最もよくある酵素イムノアッセイは、「酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)」である。ELISAは、標識した(例えば酵素結合)形式の抗体を用いて抗原の濃度を検出および測定するための技術である。異なる形式のELISAが存在し、それらは当業者に周知である。標準的なELISA技術は、「Methods in Immunodiagnosis」第2版、RoseおよびBigazzi編、John Wiley & Sons、1980;Campbellら、「Methods and Immunology」、W.A.Benjamin,Inc.、1964;およびOellerich,M.(1984)、J.Clin.Chem.Clin.Biochem.22:895−904において記載されている。ガレクチン−3を検出するための好ましい酵素結合免疫吸着測定法キット(ELISA)は、市販で入手可能である(BG Medicine、Waltham、MA)。
「サンドイッチELISA」において、抗体(例えば抗ガレクチン−3)を、固相(すなわちマイクロタイタープレート)に結合し、そして抗原(例えばガレクチン−3)を含む生物学的サンプルに曝露する。次いでその固相を洗浄し、未結合の抗原を除去する。次いで標識した抗体(例えば酵素結合)を、(存在するならば)結合した抗原に結合させ、抗体−抗原−抗体サンドイッチを形成する。抗体に結合し得る酵素の例は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、ウレアーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼである。酵素結合抗体は、基質と反応して呈色反応産物を産生し、それを測定し得る。本発明のキットおよび方法で使用するために適当な、本明細書中で記載されたいずれのイムノアッセイも、抗体の代わりに任意の結合部分を使用し得る。
免疫学的アッセイデザイン、理論およびプロトコールの詳細な概説を、Butt,W.R.、Practical Immunology、Marcel Dekker編、New York(1984)およびHarlowら、Antibodies,A Laboratory Approach、Cold Spring Harbor Laboratory編(1988)を含む、当該分野における多くの教科書において見出し得る。
一般的に、イムノアッセイデザインの考慮すべき事柄は、非特異的相互作用の産物から確実に区別し得る複合体を形成するために、標的に対して十分高い結合特異性を有する抗体(例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗体)の調製を含む。本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、結合タンパク質、例えば抗体または免疫グロブリン可変領域様の結合ドメインを含み、標的に対する適当な結合親和性および特異性を有する他のタンパク質を意味すると理解される。抗体の結合特異性が高いほど、検出し得る標的の濃度は低くなる。本明細書中で使用される場合、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、結合部分、例えば結合タンパク質が、約10−1より高い、より好ましくは約10−1より高い、標的に対する結合親和性を有することを意味すると理解される。
個人において心不全を検出するためのアッセイにおいて有用な、単離された標的マーカーに対する抗体を、当該分野で周知であり、そして説明されている、標準的な免疫学的手順を用いて産生し得る。例えば、Practical Immunology、前出を参照のこと。簡単には、単離されたマーカーを用いて、マウス、ヤギ、または他の適当な哺乳動物のような異種の宿主において抗体を作る。そのマーカーを、宿主において抗体産生を増強し得る適当なアジュバントと組み合わせ、そして例えば腹腔内投与によって、宿主に注射する。宿主の免疫反応を刺激するために適当なあらゆるアジュバントを使用し得る。よく使用するアジュバントは、フロイント完全アジュバント(殺菌および乾燥した微生物細胞を含むエマルジョンであり、そして例えばCalbiochem Corp.、San Diego、またはGibco、Grand Island、NYから入手可能である)である。複数の抗原注射が望ましい場合、後の注射は不完全アジュバント(例えば細胞を含まないエマルジョン)と組み合わせた抗原を含み得る。ポリクローナル抗体を、目的のタンパク質に対する抗体を含む血清を抽出することによって、抗体産生宿主から単離し得る。モノクローナル抗体を、望ましい抗体を産生する宿主細胞を単離し、これらの細胞を免疫学分野で公知の標準的な手順を用いて骨髄腫細胞と融合させ、そして標的と特異的に反応し望ましい結合親和性を有するハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)に関してスクリーニングすることによって産生し得る。
ガレクチン−3のN末端由来の代表的なエピトープは、MADNFSLHDALS(配列番号1);MADNFSLHDALSGS(配列番号2);WGNQPAGAGG(配列番号3);YPGAPGAYPGAPAPGV(配列番号4);GNPNPQGWPGA(配列番号5);YPSSGQPSATGA(配列番号6);YPGQAPPGAYPGQAPPGA(配列番号7);YPGAPAPGVYPGPPSGPGA(配列番号8);およびYPSSGQPSATGA(配列番号9)を含むがこれに限らない。非直線エピトープを含む他のガレクチン−3エピトープも、抗ガレクチン−3抗体による検出の標的として使用し得る。代表的な抗体が、U.S.2010/014954において議論され、その内容全体が、本明細書中で参照として組み込まれる。
抗体結合ドメインをまた、生合成的に産生し得、そしてその結合ドメインのアミノ酸配列を、標的上の好ましいエピトープとの結合親和性を増強するように操作し得る。特異的抗体の方法論は、よく理解され、そして文献において記載されている。その調製のより詳細な説明は、例えばPractical Immunology(前出)において見出し得る。
それに加えて、当該分野でBABSまたはsFv’sとしても公知である、遺伝的に操作した生合成抗体結合部位を使用して、サンプルがマーカーを含むかどうかを決定し得る。(i)非共有結合的に結合したか、またはジスルフィド結合した合成VおよびVダイマー、(ii)共有結合したV−V1本鎖結合部位、(iii)個々のVまたはVドメイン、または(iv)1本鎖抗体結合部位を含む、BABSを作成および使用する方法が、例えば米国特許第5,091,513号;同5,132,405号;同4,704,692号;および同4,946,778号において開示される。さらに、マーカーに対して必要な特異性を有するBABSを、コンビナトリアル遺伝子ライブラリーから、ファージ抗体クローニングによって得ることができる(例えば、Clacksonら、Nature 352:624−628(1991)を参照のこと)。簡単には、それぞれその外被表面に、単離されたマーカーまたはその断片によって予備免疫したマウス由来の可変領域遺伝子配列によってコードされた免疫グロブリン可変領域を有するBABSを発現するファージを、固定化したマーカーに対する結合活性に関してスクリーニングする。固定化マーカーに結合するファージを収集し、そしてそのBABSをコードする遺伝子を配列決定する。次いで目的のBABSをコードする、結果として生じた核酸配列を、従来の発現システムにおいて発現して、BABSタンパク質を産生し得る。
診断およびモニタリングの正確性を改善するために、マルチマーカー分析を使用し得る。例えば、ガレクチン−3(Gal−3)および脳ナトリウム排泄増加性ペプチド(BNP)の血中濃度を使用して、心不全を診断し得、および心不全の長期の結果を予測し得る(van Kimmenadeら、J.Am.Coll.Cardiol.48:1217−24(2006);Sharmaら、Circulation、110:3121−28(2004);Lokら、Eur.Heart J.28:141、Abstract1035(2007))。BNPおよびその切断同等物アミノ末端proBNP(NT−proBNP)は、心臓チャンバーの高い充填圧力および心筋線維の伸張の結果として、心不全の間、心筋および血中において上昇する。心不全を診断するために使用し得る他の2次的マーカーは、スフィンゴ脂質、スフィンゴシン、スフィンゴシン−1−リン酸、ジヒドロスフィンゴシンおよびスフィンゴシルホスホリルコリンのような、非ペプチド心臓マーカーを含み得る(米国特許第6,534,322号を参照のこと)。上記のマーカーのレベルを測定する場合、診断の正確性を改善するために、年齢および性別に関する補正を組み込み得る。
(処置方法)
ガレクチン−3レベルによって心臓再同期療法の候補と同定される患者を、CRTデバイスの埋め込みによって処置し得る。
伝統的なペースメーカーは、収縮を整調するために、右心房、右心室、または両方に置かれた1本または2本の電気リードを含む。CRTデバイスは、左心室および右心室の同時収縮を誘発するために、少なくとも2本のリード:右心室に1本、そして左心室の壁に対して冠状静脈洞に1本を含む。多くの場合、3番目の感知リードを、右心房に置いて、心室の収縮のタイミングをはかるためのデータを提供する。そのようなCRTデバイスは、左心室および右心室の協調した収縮を促進するだけでなく、心房の収縮に関するタイミングも保証する。そのリードを、胸部の皮膚の下に埋め込んだ電池式パルス発生機に連結する。心房の収縮が心室を血液で満たした後、そのパルス発生器が小さい電気シグナルを心室に送り、その協調した収縮を刺激し、血液を心臓から排出し、そしてそれを循環系に送る。
CRTデバイスは、付随する除細動機能有りまたは無しで利用可能である。除細動機能を含むデバイスは、CRT−Dデバイスと呼ばれることもある。CRT−Dデバイスは、異常な心臓リズムのリスクがある患者において特に有用である。例えば、速い、不規則な心拍は、心臓が完全な収縮を完了するのを妨げ得る;非常に遅い心拍も危険であり得る。心臓が異常なリズムを発症したら、CRT−Dデバイスは心臓にショックを与え、異常なリズムを破壊し、そして心臓により正常な速度で再開する機会を与え得る。
CRTデバイスは、St.Jude Medical(Atlas(登録商標)IIHFICD、Atlas(登録商標)+HFICD、Epic(登録商標)HFICD、Epic(登録商標)IIHFICD、Promote(登録商標)RFCRT−D)、Boston Scientific(COGNIS(登録商標)、Contak Renewal、LIVIANTM)、Medtronic(ConsultaTM、Concerto(登録商標)、Maximo(登録商標)II、InSync(登録商標)Maximo(登録商標))、Sorin Group ERM(OVATIOTMおよびNewLivingTM)およびBIOTRONIK(登録商標)(Stratos(登録商標)LVおよびStratos(登録商標)LV−T)のような製造業者から広く入手可能である。
心臓再同期療法を、任意で1つまたはそれ以上の心不全のための他の処置と組み合わせる。例えば、患者をまた、ロスバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、またはシンバスタチンのようなスタチン;フロセミド、ブメタニド、ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、エプレレノン、トリアムテレン、トルセミド、またはメトラゾンのような利尿薬;ドブタミン、ミルリノン、またはジゴキシンのような変力物質;カルベジロールまたはメトプロロールのようなβ遮断薬;および/またはBNPのようなナトリウム排泄増加性ペプチドによっても処置し得る。
処置はまた、アンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター(例えばカプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、キナプリル、ホシノプリル、またはラミプリル);カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、またはエプロサルタンのようなアンギオテンシンII受容体遮断薬;一硝酸イソソルビドまたは二硝酸イソソルビドのような硝酸塩;および/またはヒドララジンのような血管拡張薬も含み得る。適当な症例において、血管形成術または他の手術のような、他の形式の医学的介入も実施し得る。
処置の有効性を、ガレクチン−3のような関連するバイオマーカーの定期的な測定によって、経時的にモニタリングし得る。ガレクチン−3レベルおよび/または他のバイオマーカー(BNPのような)を、CRT患者において測定し得、そしてその患者で以前に測定したガレクチン−3濃度と比較し得る。患者において1回またはそれ以上の以前のガレクチン−3濃度と比較した、ガレクチン−3濃度の増加または減少は、患者が心臓再同期療法に応答しているか、または応答していないことの指標となり得る。マーカーレベルを、年1回、年2回、隔月、月1回、3週間ごと、隔週、週1回、毎日、または変動する間隔で患者から得たサンプルにおいてなど、経時的にモニタリングし得る。
(実施例:ガレクチン−3および心臓再同期療法)
(方法)
(試験集団)
臨床試験に、左心室収縮期機能不全および心臓同期不全(150msと同じかまたはそれより大きいQRS幅、またはQRSが120−149msecなら心エコーの同期不全によって示されるような)の証拠を有する、少なくとも6週間心不全(HF)を有する(New York Heart Association機能分類IIIまたはIV)患者を登録した。試験のデザインおよび初期結果が、公開された文献において報告されている[J.Clelandら、「The effect of cardiac resynchronization on morbidity and mortality in heart failure」、N Engl J Med.2005年4月14日;352(15):1539−49]。全ての患者に、アンギオテンシン変換酵素インヒビター、β遮断薬および利尿薬を含む標準的な薬理学的治療を与えた。患者を、最適化した薬理学的治療単独による処置、または心臓再同期療法(CRT)と組み合わせた処置に、非盲検方式で無作為に割り当てた。CRTを受ける患者に、そのバックグラウンドの薬理学的治療に加えて、InSync(登録商標)IIICRTデバイス(Medtronic Inc.、Minneapolis、MN)を与えた。1分あたり60拍より遅い速度を防ぐための心房ペーシングを有する、房両心室性(atriobiventricular)ペーシングを使用した。右心室および左心室を同時に刺激した。心エコーを用いて、僧帽弁流入シグナルを用いて心房−心室の遅延を最適化した。流入シグナルの心房コンポーネントを短縮しない、最も短い心房−心室の遅延が最適と考えられた。
(血液サンプリング)
血清サンプルを、ベースライン、3および18ヶ月に採った。全てのサンプルを、−80℃で保存した。
(検査分析)
血清サンプル中のガレクチン−3濃度の決定を、ELISAキット(ガレクチン−3アッセイ;BG Medicine Inc.、Waltham、MA、USA)を用いて評価した。そのアッセイの感度(ゼロではない最も低い濃度)は、0.96ng/mLであった。アッセイ内およびアッセイ間の変動は、それぞれ8%および10%未満であった。
(統計学的分析)
全ての分析を、SASバージョン9ソフトウェア(SAS Institute、Cary、NC、USA)を用いて行った。分析物のレベルおよび結果の関連を評価するために、ロジスティック回帰分析を用いた。特定の分析において、目的の全ての共変数について完全な患者のみを、その分析に含むと考えた。両側の有意性レベルを0.05に設定し、そして0.05未満の確率値を有意であると考えた。
(結果)
(患者における経時的ガレクチン−3濃度)
試験の登録時として規定されるベースライン、およびベースラインから18ヶ月後のガレクチン−3の平均および標準偏差を、介入グループごとに、下記の表1に示す。全ての患者が各時点においてガレクチン−3の測定のために利用可能な血清サンプルを有していたわけではないことに注意する;表1は、ガレクチン−3測定が可能な全ての患者に関する結果を示す。
表1.介入グループごとの、ベースラインおよびベースラインの18ヶ月後の血清ガレクチン−3濃度(平均および標準偏差)。括弧内の数字は、1標準偏差を示す。ガレクチン−3を測定した血清サンプルを有する患者の数も、各時点およびグループに関して表に示す。
Figure 0005702386
表1から、CRTを受けなかった患者における平均血清ガレクチン−3濃度は、ベースラインおよびベースラインの18ヶ月後で同じであり、一方CRTを受けた患者における平均血清ガレクチン−3濃度は、ベースラインと18ヶ月との間に減少したことが観察される。
(患者における経時的ガレクチン−3濃度および有害な結果)
有害な結果、すなわちベースラインから18ヶ月以内の心不全による死亡または予定外の入院の頻度を、ベースラインとベースラインの3ヶ月後との間に最も大きい血清ガレクチン−3の減少を経験した10人の患者に関して調査した。ベースラインとベースラインの3ヶ月後との間に最も大きくガレクチン−3レベルが減少した10人の患者のうち、これらの患者の6人(60%)が、ベースラインの18ヶ月以内に、心不全による死亡または入院の有害な結果を経験した。対照的に、ベースラインおよびベースラインの3ヶ月後の血清ガレクチン−3値を有し、および有害な結果についての情報が入手可能である他の患者のうち、81%(159人の患者のうち128人)が、18ヶ月で心不全による死亡または入院の有害な結果を経験した。
(CRTを受ける患者のベースラインにおけるガレクチン−3濃度は、有害な結果と関連している)
CRTを受けた患者において、ベースラインのガレクチン−3血清濃度は、後の有害な結果、すなわち18ヶ月以内の死亡または18ヶ月以内の入院のリスクと有意に関連していることが観察された。下記の表2は、ベースラインのガレクチン−3と後の有害な結果との間の関連を評価するための、統計学的ロジスティック回帰分析の結果を示す。ロジスティック回帰分析の技術の詳細に関しては、例えばDavid W.HosmerおよびStanley Lemeshow、Applied logistic regression(New York:Wiley、2000)を参照のこと。分析において、30ng/mLより高いベースラインガレクチン−3レベルを有する患者のデータを1つのグループに入れ、そして30ng/mLまたはそれ未満のベースラインガレクチン−3レベルを有する患者のデータを、別のグループに入れた。それに加えて、各患者の左心室収縮末期容量(LVESV)も、統計学的モデルにおいて共変数として考えた;そのため、ベースラインにおいて両方の変数の測定を有する98人の患者のみを、この分析に含めることができる。CRTを受け、そして30ng/mLより高いベースラインガレクチン−3レベルを有する患者は、CRTを受け、そして30ng/mLかまたはそれ未満のベースラインガレクチン−3レベルを有する患者と比較して、18ヶ月以内の死亡または18ヶ月以内の入院の約3倍高いオッズを有していた。
表2.CRTを受けた患者の、18ヶ月以内の死亡または入院のエンドポイントに関するロジスティック回帰分析の結果。ガレクチン−3のオッズ比は、30ng/mLまたはそれ未満のベースラインガレクチン−3を有するグループと関連がある;LVESVのオッズ比は、200mLまたはそれ未満のLVESVを有するグループと関連がある。
Figure 0005702386
(ベースラインにおけるガレクチン−3濃度は、CRTを受けた患者において結果と有意に関連しているが、CRTを受けなかった患者においてはそうではない)
CRTを受けた患者において、ベースラインガレクチン−3血清濃度は、後の有害な結果、すなわちベースラインから18ヶ月以内の死亡または18ヶ月以内の予定外の入院のリスクと有意に関連しているが、CRTを受けなかった患者においてはそうではないことが観察された。下記の表3は、ベースラインのガレクチン−3と後の有害な結果との間の関連を評価するための、統計学的ロジスティック回帰分析の結果を示す。この分析を、CRTを受けた患者に関して、およびCRTを受けなかった患者に関して別々に行った。ロジスティック回帰分析の技術の詳細に関しては、例えばDavid W.HosmerおよびStanley Lemeshow、Applied logistic regression(New York:Wiley、2000)を参照のこと。分析において、30ng/mLより高いベースラインガレクチン−3レベルを有する患者のデータを1つのグループに入れ、そして30ng/mLまたはそれ未満のベースラインガレクチン−3レベルを有する患者のデータを、別のグループに入れた。それに加えて、各患者の左心室収縮末期容量(LVESV)も、統計学的モデルにおいて共変数として考えた。表3は、これらの分析の結果を示す。CRTを受けた98人の評価可能な患者が存在し、そのうち22人(98人の22.4%)が、18ヶ月以内に死亡または入院の有害な結果を経験した。CRTを受けなった96人の評価可能な患者が存在し、そのうち29人(96人の30.2%)が、18ヶ月以内に死亡または入院の有害な結果を経験した。
表3.CRTを受けた患者およびCRTを受けなかった患者に関して別々に分析した、18ヶ月以内の死亡または入院のエンドポイントのロジスティック回帰分析の結果。ガレクチン−3のオッズ比は、30ng/mLまたはそれ未満のベースラインガレクチン−3を有するグループと関連がある;LVESVのオッズ比は、200mLまたはそれ未満のLVESVを有するグループと関連がある。
Figure 0005702386
CRTを受けた患者でのみ、ベースラインガレクチン−3が18ヶ月以内の死亡または入院の有害な結果と、前もって指定した統計学的有意性レベルで、統計学的に有意に関連していたことが見出された。CRTを受けなかった患者のグループのベースラインガレクチン−3は、0.05未満の定めた有意性レベルで、同じ有害な結果エンドポイントと有意に関連しておらず、そしてそのグループの95%信頼区間は、1またはユニティのヌルオッズ比の値と重複する。
(CRTは、全体的に減少した事象率と関連するが、より高いガレクチン−3濃度を有する患者においてより減少が大きい)
ベースラインの18ヶ月以内に心不全のために死亡または予定外の入院の事象を経験した、4つのカテゴリーそれぞれの患者の数を、下記の表4に列挙する。この表は、ベースライン血液サンプルが、ガレクチン−3ベースライン濃度値を有し、そして18ヶ月間うまく追跡できてベースラインの18ヶ月以内における心不全のための死亡または予定外の入院のエンドポイントを確認し得た、試験の全ての患者を含む。
表4.CRT処置およびガレクチン−3カテゴリーごとの、患者の数。事象の数およびパーセンテージを、表の各セルに示す。この表の事象は、ベースラインの18ヶ月以内の心不全による死亡または予定外の入院と規定される。
Figure 0005702386
表4から観察し得るように、CRTを受けた患者は、CRTを受けなかった患者と比較して、事象頻度の減少を示した。低ガレクチン−3グループ、すなわち≦30ng/mLのベースラインガレクチン−3レベルを有する患者において、事象頻度の絶対的低減は9.1%であった(27.6%マイナス18.5%)。高ガレクチン−3グループ、すなわち>30ng/mLのベースラインガレクチン−3レベルを有する患者において、事象頻度の絶対的低減は、9.6%であった(42.9%マイナス33.3%)。より高いベースラインガレクチン−3グループにおける9.6%の低減は、より低いベースラインガレクチン−3グループにおける9.1%の低減より大きいので、これらのデータは、おそらくより高いベースラインガレクチン−3の値は、CRTからより大きい利益を得る患者を同定することを示す。
(参照による組込み)
本明細書中で参照された特許文書および科学論文のそれぞれの開示全体は、全ての目的のために参照によって組み込まれる。
(同等物)
本発明を、その精神または本質的な特徴から離れることなく、他の特定の形式で具体化し得る。従って、前述の実施態様は全ての局面において、本明細書中で記載された発明を制限するのではなく説明すると考えられる。従って本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、そしてその特許請求の範囲と同等の意味および範囲内に含まれる全ての変化は、そこに含まれることが意図される。

Claims (5)

  1. ガレクチン−3血中濃度を、心臓再同期療法の候補である患者かまたは心臓再同期療法で処置された患者の心臓再同期療法への応答性の指標とする方法であって、イムノアッセイを用いて患者由来のサンプル中のガレクチン−3血中濃度を測定する工程、および、該ガレクチン−3血中濃度を閾値濃度と比較する工程を含み、ここで、30ng/mLの閾値濃度を上回ると決定されたガレクチン−3血中濃度は、心臓再同期療法への応答性をし、該応答性は改善された生存を含む、方法。
  2. 前記患者が心臓再同期療法の候補である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記患者が心臓再同期療法で処置された患者である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記サンプルが、血液、血清または血漿を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記心臓再同期療法が、除細動器を含心臓再同期療法デバイスを必要とする、請求項に記載の方法。
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