JP5694754B2 - 防虫剤 - Google Patents

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Description

本発明は、防虫剤に関し、特に、ピリプロキシフェンとを含有する防虫剤に関する。
マラリアを媒介するハマダラカ類、日本脳炎やフィラリアを媒介するイエカ類、デング熱を媒介するシマカ類等の蚊やしばしばアレルギーの原因となるユスリカ類、ブユ類等の幼虫は水系に棲息する。これらの害虫を防除するためには種々の殺虫剤が使用されてきた。
その中で、ピリプロキシフェンは、幼若ホルモンとして作用し、蛹化・成虫化の変態阻害作用等により、蝿や蚊などに高い殺虫効果を発揮する。しかも、非特許文献1に示すように、動物に対しては、発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性が認められず、人体に対しては極めて安全な性質を有している。
本出願人は、特許文献1において、このピリプロキシフェンを軽石に担持させ、さらにセメントで固めて成型することにより防虫ブロックを提供できることを提案した。これは、ピリプロキシフェン濃度が10ppmの状態では、100日を超えるヒトスジジマカの羽化阻害率を100%とすることが確認されている。
しかしながら、実際の使用環境では、蚊の防虫効果は、このような長期の期間は効果が期待できず、また、その効果も見えにくい。これは、蚊が発生する池、河川、水たまりなどは、実験室と異なり、水が腐敗し易く、蚊の生育に適した養分が多く存在するためである。しかも、防虫ブロックは、ブロック本体からピリプロキシフェンを徐放化するためにセメントを使用しており、中長期的には、空洞の多い構造体のみが残存し、その中に入り込んだ水が交換されず内部に留まり易く、水を腐敗させる菌の温床にもなる。また、防虫ブロックは継時的に形状が変化せず、その効果が持続しているのか否かの判別が困難である。
特開2007−15942号公報 特許第3590019号公報
食品安全委員会農薬専門調査会「農薬評価書 ピリプロキシフェン」2007年5月16日
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解消し、自然環境で使用しても蚊の防虫効果が長期に渡って持続する防虫剤を提供することである。また、防虫効果の持続性が容易に判別可能な防虫剤を提供することである。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を60度〜150度で高温処理した家畜糞と混合した粉体又は該粉体に水分を添加して得られる微生物含有液体、ピリプロキシフェン、炭酸カルシウム、カルボキシ・メチル・ヒドロキシ・エチル・セルロース、ポリエチレン・グリコール、及びケイ酸ナトリウムとを混合し、打ち固めて形成した固体ブロックであることを特徴とする防虫剤である。
請求項に係る発明は、請求項に記載の防虫剤において、該固体ブロックは、水中で時間経過と共に、固体部分が溶解又はブロック形状が崩壊するよう構成されていることを特徴とする。
請求項に係る発明は、請求項に記載の防虫剤において、該固体ブロックは、水中で可視識別可能な色を有していることを特徴とする。
請求項1に係る発明のように、本発明の防虫剤が含有するバチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌により、水質浄化作用を発揮させることで、ピリプロキシフェンを自然環境で使用しても、蚊の防虫効果が長期に渡って持続することが可能となる。
また、上記微生物菌を含む粉体や液体と、ピリプロキシフェンとを担持する組成物とを、固体ブロックとすることで、防虫剤の取り扱いを容易に行うことができる。特に、池や河川など防虫処理が必要な場所へ、必要な薬剤成分を必要な量だけ容易に投与することが可能となる。
請求項に係る発明のように、防虫剤を構成する固体ブロックは、水中で時間経過と共に、固体部分が溶解又はブロック形状が崩壊するよう構成されているため、固体ブロックの残存状況から、防虫効果の持続性(持続しているか否か)を容易に判別することが可能となる。
また、防虫剤を構成する固体ブロックが、水中で完全に溶解又は崩壊するまでに要する時間は、2週間以上12カ月以内とすることにより、防虫処理が必要な期間(1ヶ月〜数ヶ月程度)に対して、1回から数回程度繰り返して防虫剤を投与することで、必要な防虫効果を持続させることが可能となる。しかも、作業負担が大きくない範囲で、複数回の投与を行うことで、防虫処理への意識を高め、水処理を含めたマラリア対策の重要性を地域住民に育むことも可能となる。
請求項に係る発明のように、防虫剤を構成する固体ブロックは、水中で可視識別可能な色を有しているため、防虫剤が水中に配置されている状況でも、防虫剤の残存量を容易に判別することが可能となる。
本発明者らが、鋭意研究を重ねた結果、ピリプロキシフェンを担持した防虫ブロックの効果が長期間継続しない原因は、水の腐敗であり、蚊の生育に適した養分の増加であることが判明した。このため、ピリプロキシフェンだけでなく、水質浄化作用を有する物質(以下、「水質浄化剤」という。)を合せて添加したところ、防虫効果の持続性が向上することを見出し、本発明を完成させたものである。
また、本発明者は、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌が、水質浄化作用に効果を発揮する上、人体や水に生息する生物にも安全に使用可能な微生物菌であることを見出した。しかも、これらの微生物菌は、特許文献2に示すように、土壌、海水、淡水性堆積物中、食物などから容易に入手することができ、そしてこれらの微生物菌に高温処理した家畜糞とを混合した粉体を使用することで、安価な水質浄化剤を提供することできる。
本発明の防虫剤は、この水質浄化剤を利用しており、特に、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を60度〜150度で高温処理又は濃硫酸処理した家畜糞と混合した粉体又は該粉体に水分を添加して得られる微生物含有液体を使用している。
本発明の防虫剤は、水質浄化剤とピリプロキシフェンとを担持する組成物が、固体ブロック又はゲル状物質で構成している。これは、防虫剤を液体や粉末で提供すると、水への防虫剤の投与の前後で視覚的に差異が殆どないため、投与の有無の判別が難しいこと、さらに、流水に対しては、防虫剤を投与した場所に留めることができず、常に投与し続けなければならないためである。
固体ブロックを形成する主な材料は、水質浄化剤やピリプロキシフェンなどの薬剤成分と、固体ブロックの基体を構成する基材成分と、この基材成分を結着させる団粒剤とから構成される。薬剤成分は、粉体でも液体でも良い。液体を使用する場合には、液体を粉体材料に直接投入して使用することも可能であるが、液体を多孔質粉体等に担持させ、それを基材成分と一緒に混合して使用することも可能である。
基材成分としては、軽石や火山灰などの鉱物性粉体又は樹脂製粉体などが利用可能である。また、徐々に水に溶解する水溶性粉体を使用することも可能である。基材成分に鉱物性粉体又は樹脂製粉体を使用する場合には、団粒剤は水中で徐々に溶解する性能を有する材料で構成することにより、固体ブロックが水中で徐々に崩壊するよう構成することが可能となる。
また、必要に応じて、固体ブロックの組成材料に分散剤や発泡剤などの補助剤を混合することも可能である。固体ブロックは、薬剤成分、基材成分、団粒剤などを混合し、打錠して形成される。
ゲル状物質を形成するには、薬剤成分を液体で準備し、必要な濃度に調整した後、ゲル化剤を添加し、ゲル状に固める。必要に応じて加熱・冷却処理を行っても良い。ゲル化剤については、ゲル状物質が水中で溶解可能な材料とする。また、溶解速度を調整するため、ゲル化剤が水中で溶解するのを抑制する抑制剤を添加することも可能である。
固体ブロックで鉱物性粉体を使用する場合には、固体ブロックは、水中で可視識別可能な状態にあるが、透明材料のみを用いて固体ブロックやゲル状物質を構成する場合には、水中で防虫剤がどのような状況にあるのかを目視して観察することが困難となる。このため、固体ブロック又はゲル状物質を形成する際には、原料に、水中で可視識別可能な色を有する着色剤を添加することが好ましい。
マラリアなどの原因となる蚊などは、熱帯・亜熱帯地域では、ほぼ一年中発生しているが、蚊などの発生に適した高温多湿の時期が、1ヶ月〜数ヶ月に限定される地域も多い。このため、本発明の防虫剤では、固体ブロック又はゲル状物質が、水中で完全に溶解又は崩壊するまでに要する時間は、2週間以上3カ月以内とすることが好ましい。これは、1回から数回程度繰り返して防虫剤を投与することで、必要な防虫効果を持続させることが可能となる。しかも、作業負担が大きくない範囲で、複数回の投与を行うことで、防虫処理への意識を高め、水処理を含めたマラリア対策の重要性を地域住民に育むことができる。
防虫剤の試験体を作成するため、以下の材料を各重量比で混合し、打ち固めてブロック体(試験体。1個のブロックの総重量は、約115gであった。)を形成した。なお、ピリプロキシフェンは、10%に水で希釈化した液体を使用し、最終的には試験体から希釈化に使用した水分の大半は除去されている。
ピリプロキシフェン・・・1重量%(原液換算)
水質浄化剤(ビッグバイオ製BB菌(登録商標)液体)・・・5重量%
炭酸カルシウム・・・51重量%
カルボキシ・メチル・ヒドロキシ・エチル・セルロース・・・33重量%
ポリエチレン・グリコール・・・8重量%
ケイ酸ナトリウム・・・2重量%
試験体の防虫効果を確認するため、マレーシア薬品調査研究所に委託し、以下の実験を行った。まず、上部が開口した壺lに60Lの水が入れ、試験体を1個投入する。また、壺の水は、毎日、半分の30Lを除いて、新しい水に入れ替えている。ハマダラカ(An. maculatus)の幼虫を1週間に25匹ずつ壺に投入する。
その結果、45週までは、試験体を投入した壺は孵化した成虫は全く観察されなかった。一方、試験体を投入しない壺では、数日で幼虫が孵化し成虫となり、1週間で80%以上が成虫になっていることを確認した。
また、マレーシア・クアラルンプールにある川床の水溜りに試験体を投入したところ、190日間の蚊が成虫になるのが抑制された。蚊(An. culcifacies)で78%、蚊(An. subpictus)で72%の減少が確認され、マラリア発生率が約7割減少した。
さらに、試験体の安全性を評価するため、財団法人日本食品分析センターに委託し、以下の実験を行った。試験体を磨り潰して白色粉末とし、検体を作成した。検体を、注射用水で懸濁して試験液を調整した。5週齢のマウスに対し、検体投与用量(mg/kg)が2000,1000,300,50、及び0となるよう5つの群に分けて投与した。14日間観察した結果、いずれのマウスにも異常や死亡例は認められなかった。
これらの試験結果より、本発明の防虫剤は、蚊の発生を抑制する効果が長期間に渡り維持することが可能であること、しかも、動物に対しては、極めて安全性が高いことが確認された。
本発明によれば、自然環境で使用しても蚊の防虫効果が長期に渡って持続する防虫剤を提供することができる。また、防虫効果の持続性が容易に判別可能な防虫剤を提供することも可能となる。

Claims (3)

  1. バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)微生物菌、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)微生物菌、またはバチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)微生物菌を60度〜150度で高温処理した家畜糞と混合した粉体又は該粉体に水分を添加して得られる微生物含有液体、ピリプロキシフェン、炭酸カルシウム、カルボキシ・メチル・ヒドロキシ・エチル・セルロース、ポリエチレン・グリコール、及びケイ酸ナトリウムとを混合し、打ち固めて形成した固体ブロックであることを特徴とする防虫剤。
  2. 請求項に記載の防虫剤において、該固体ブロックは、水中で時間経過と共に、固体部分が溶解又はブロック形状が崩壊するよう構成されていることを特徴とする防虫剤。
  3. 請求項に記載の防虫剤において、該固体ブロックは、水中で可視識別可能な色を有していることを特徴とする防虫剤。
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