JP5692457B1 - 遮熱性に優れた屋根パネル、屋根および建造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】屋根に供給した冷却水による建造物内の効率的冷却を可能にする屋根パネルを提供すること。【解決手段】本発明の遮熱性に優れた屋根パネルは、凹部を有する金属板1と、該金属板1の少なくとも該凹部を有する面に設けためっき層A及びその表層側の被覆層Bとを有する屋根パネルであり、めっき層Aのめっき組成がZn−Al−Mg系であること、被覆層Bが熱反射性無機系フィラーを含有する有機被覆層であること、金属板の該凹部の形状にならって被覆層Bに形成された凹部Cが、基準面に対して該金属板の板厚Tの5倍以上の深さと、板厚Tの5〜20倍の開口短半径を有し、隣り合った凹部Cのエッジ間の最近接距離が凹部Cの開口短半径の2〜5倍で、パネル表面積1m2あたりの被覆層B表面における凹部Cの合計の開口面積が0.048〜0.157m2であり、なおかつ、パネルが水平面から5度傾斜した時に凹部Cに保持可能な計算保水量が1m2あたり50cm3以上であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、遮熱性に優れた屋根パネルに関する。本発明は更に、そのような屋根パネルを用いて製作された遮熱性に優れた屋根と、その屋根を有する建造物にも関する。
建造物の屋根に遮熱性を付与することは、省エネルギーの観点から大いに望ましいことである。
一つの具体例として、家畜を飼育する場合、夏場の強い日射や夜間夜露を避けるため、一般に外気に通じる開放構造で畜舎を建設する。しかしながら昨今の猛暑の際、自然通風だけでは照射太陽熱による屋根温度の上昇が激しくなり、その輻射熱のために畜舎内はかなりの高温になって、家畜にとって好ましくない環境となる(例えば乳牛からの搾乳量が減少する)。このような場合、乳牛業者の知恵として、屋根に水を流してその温度を下げ、それにより畜舎内を冷却する方策が講じられている場合がある。
一般に、畜舎の屋根は、図3に示したような折板30を使用し、その山部31(あるいは谷部32)が10度以下の傾斜となるように配置して製作される。畜舎内冷却のために屋根に水を流すとき、水は主に折板30の谷部32を流れ落ち、滞留することはない。これは水の滞留が屋根重量の増加となって畜舎寿命を縮める可能性があることや、通常使用の際の降雨による水滞留が、思わぬ落滴を生む可能性があるための対策でもある。
畜舎に限らず一般的な建物の冷却システムとしては、例えば特許文献1、2に開示されたものが知られている。特許文献1には、屋根面の分割した複数の領域に散水ノズルにより散布する水量を領域ごとに調節して、屋根面全体を濡れ面にする冷却システムが開示されている。特許文献2には、屋根上棟部の給水管に穿設した散水ノズルから屋根面に散水し、屋根面に沿って流下させることにより屋根面を冷却するシステムが開示されている。
また、特許文献3には、屋根面などの冷却のための散水に微細気泡を含む気水混合物を利用することが記載されている。
特許文献4には、ほぼ水平に形成した天面とその天面より鉛直方向上方に立ち上がる立上がり部を有し、立上がり部に囲まれた天面上に水を溜めることができる板状体を複数用いて形成される、冷却機能を備えた屋上屋根が記載されている。
更に、屋根材料として保水性を有する素材を用いることが、特許文献5〜7などに開示されている。特許文献5には、吸水性、湿潤長、飽和透水係数を特定範囲に規定した建造物冷却材が開示され、その冷却材をスレート板、金属板などに積層し補強して屋根などの構成材料として用いることが記載されている。
特許文献6には、保水性と毛細管吸水性を有し、無機繊維がバインダにより部分的に連結されて形状保持性を高めた異形断面の屋根冷却用パネルが開示されている。特許文献7には、表面に光触媒層を設けたガラス繊維織布を用いることにより保水量を多くし、冷却効率を高めた構造物冷却材料が記載されている。
特開2001−49806号公報 特開2009−108523号公報 国際公開第2008/062845号パンフレット 特開2009−108552号公報 特開2007−197914号公報 特開2007−291843号公報 特開2004−324043号公報
特許文献1〜7の従来技術の場合には、複雑な制御や多量の水の使用が必要であったり(特許文献1〜3)、多量の水を溜めることに伴う屋根重量の増加や施工性に難があったり(特許文献4)、構造が複雑であったり(特許文献5〜7)という問題がある。
一方、単純に屋根に水を流す畜舎内冷却のための従来技術では、冷却水は折板の主に谷部を流れ落ち、滞留することはないため、多量の水が浪費されることになる。しかも、冷却水を絶え間なく供給するためのエネルギー(電力)も浪費されることになる。そのため、多くの畜産農家から、畜舎内の効率的な冷却を可能にする遮熱性に優れた屋根パネルが熱望されている。
さらに、屋根に流水や貯水することにより、屋根パネルの腐食も問題になる。特に屋根パネルが鋼材からできている場合は、鉄の酸化が進み、屋根パネル自体の強度が低下し、短寿命化するという問題が生じる。また、畜舎においては、家畜等の糞尿が原因となるアルカリ性ガス(腐食性ガス)が発生する。特に夏場は気温が高いため、腐食性ガスの発生が多くなる。このため、屋根パネルの腐食が進み、屋根パネルの短寿命化に直結する問題となっている。畜舎に限らず腐食性ガスの発生する環境で使用する屋根パネルも同様であり、水だけではなく腐食性ガスに対する耐食性を備えた屋根パネルが熱望されている。
本発明は、このような従来技術の問題に鑑み、屋根に供給した冷却水による建造物の効率的冷却を可能にする屋根パネルを提供することを目的とする。
上記課題の解決のため、発明者は様々な方策を模索した末に、屋根パネルの表面に凹部を形成して水を保持可能にすることと、パネルの日射にさらされる側の熱反射性を高めることの相乗効果により、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。さらに、屋根パネルの素材として、Zn−Al−Mg系めっきを施した鋼材を用いることにより、水や腐食性ガスに対する耐食性を確保できることを見出した。
こうしてなされた本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)凹部を有する金属板と、該金属板の少なくとも該凹部を有する面に設けためっき層A及びその表層側の被覆層Bとを有する屋根パネルであり、めっき層Aのめっき組成がZn−Al−Mg系であること、被覆層Bが熱反射性無機系フィラーを含有する有機被覆層であること、金属板の該凹部の形状にならって被覆層Bに形成された凹部Cが、基準面に対して該金属板の板厚Tの5倍以上の深さと、板厚Tの5〜20倍の開口短半径を有し、隣り合った凹部Cのエッジ間の最近接距離が凹部Cの開口短半径の2〜5倍で、パネル表面積1m2あたりの被覆層B表面における凹部Cの合計の開口面積が0.048〜0.157m2であり、なおかつ、パネルが水平面から5度傾斜した時に凹部Cに保持可能な計算保水量が1m2あたり50cm3以上であることを特徴とする、遮熱性に優れた屋根パネル。
(2)前記めっき層Aのめっき組成が、Al:4〜65質量%、Mg:1〜5質量%、残部がZnと不可避に混入する元素からなることを特徴とする、上記(1)に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
(3)前記めっき層Aのめっき組成が、
2.0質量%以下のSi、
0.5質量%以下のTi、
0.7質量%以下のB、
2.0質量%以下のNi、
2.3質量%以下のFe、
から選択される1種以上を更に含むことを特徴とする、上記(2)に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
(4)前記めっき層AのAlが4〜15質量%、Siが0.05〜2.0質量%であることを特徴とする、上記(3)に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
(5)前記被覆層B中の無機系フィラーが表面修飾アルミニウムであることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
(6)前記被覆層Bが熱硬化型もしくは熱可塑型塗膜であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
(7)前記めっき層Aと前記被覆層Bの間にプライマー層を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の遮熱性に優れた屋根パネルにより製作された屋根。
(9)畜舎屋根である、上記(8)に記載の屋根。
(10)上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の遮熱性に優れた屋根パネルにより製作された屋根を有する建造物。
(11)畜舎である、上記(10)に記載の建造物。
本発明によれば、遮熱性に優れた屋根パネルの利用が可能となり、本発明の屋根パネルは、少量の水で効率的な建造物内の冷却を可能にする。例えば、本発明の屋根パネルを畜舎の屋根に適用すれば、夏場などに畜舎内の冷却用に畜舎の屋根に供給する冷却水の節約だけでなく、冷却水の供給に要するエネルギー(電力)の節約も可能にする。
本発明の屋根パネルの構成を説明する模式図である。 本発明の屋根パネルの模式斜視図である。 従来技術で用いられる折板を説明する模式図である。
本発明の屋根パネルは、図1に模式的に示したように、凹部3を有する金属板1の少なくとも該凹部を有する面にめっき層Aとその表層側に被覆層Bを有することを特徴としている。被覆層Bで覆われたパネル表面に、金属板1の凹部3に対応して、凹部Cが形成されていて、この凹部Cが、基準面に対して該金属板の板厚Tの5倍以上の深さと、板厚Tの5〜20倍の開口短半径を有し、隣り合った凹部Cのエッジ間の最近接距離が凹部Cの開口短半径の2〜5倍であることも、本発明の屋根パネルの特徴である。更に、パネルを水平面から5度傾けた時にパネル表面の凹部Cに保持可能な計算保水量が1m2あたり50cm3以上であることも、本発明の屋根パネルの特徴である。
これらに加えて、本発明の屋根パネルは、めっき層Aのめっき組成がZn−Al−Mg系であること、被覆層Bが熱反射性無機系フィラーを含有する有機被覆層であることも特徴としている。
本発明の屋根パネルでは、図1に例示したように、その表面(すなわち被覆層Bの表面)に基材金属板1の凹部3に対応した凹部Cが存在している。凹部Cのある面を上面にしてこのようなパネルで建造物の屋根を葺くと、建造物の冷却用に屋根に供給された冷却水の一部がその供給を停止後も凹部Cに保持され、その水が気化することにより入射太陽熱の一部を奪うことによって、建造物の冷却を継続して行うことができる。屋根への水の供給を断続的に(例えば所定の周期で繰り返して)行い、凹部Cに冷却水を補給することによって、建造物の冷却を連続して行うことができる。
本発明の屋根パネルにおいては、被覆層Bの凹部Cが、基準面に対して金属板1の板厚Tの5倍以上の深さd(図1)を有することが必要である。ここでの「基準面」とは、圧延プレスやロールフォーム成形で凹凸を付与する前の連続塗装金属帯もしくは塗装金属板の初期表層面である。凹部Cの深さが金属板の板厚Tの5倍に満たなければ、保水量が足りずに十分な冷却を継続して行うことができない。一方、凹部Cの深さが金属板の板厚Tの20倍を超えると、圧延プレスやロールフォーム成形の難度があがり製造性が悪くなり、且つ保水量が増大しすぎて屋根重量が大きくなりすぎて破損に至る懸念があるので、凹部Cの深さは、金属板の板厚Tの20倍以下とするとよい。好ましくは、凹部Cの深さは金属板の板厚Tの7〜15倍であり、10〜12倍であるのがより好ましい。
被覆層Bの凹部Cは、金属板1の板厚Tの5〜20倍の開口短半径r(図1)を有することも必要である。ここでの「開口短半径」とは、被覆層Bの表面における凹部Cの開口の外周から重心点までの最短距離に相当する寸法である。それは、例えば、凹部Cの開口が円形の場合はその円の半径、楕円形の場合はその短半径、正方形の場合はその辺の長さの半分、長方形の場合はその短辺の長さの半分に相当する。凹部Cの開口短半径が金属板の板厚Tの5倍未満では、十分な保水量を得ることができずに冷却効果が足りず、20倍を超えると、保水量が増大しすぎて屋根重量が大きくなり破損に至る懸念がある。好ましくは、凹部Cの開口短半径は金属板の板厚Tの7〜15倍であり、10〜12倍であるのがより好ましい。
本発明の屋根パネルでは、隣り合った凹部Cのエッジ間の最近接距離s(図1)が凹部Cの開口短半径rの2〜5倍であることも必要である。凹部Cのエッジ間の最近接距離が凹部Cの開口短半径の2倍未満では、圧延プレスやロールフォーム成形の難度があがり製造性が悪くなり、5倍を超えると、保水で冷却できる効果が金属板でも熱伝搬しきれずに不足する。好ましくは、凹部Cのエッジ間の最近接距離は凹部Cの開口短半径の2.5〜4.5倍であり、3〜4倍であるのがより好ましい。
本発明の屋根パネルにおける被覆層Bの凹部Cは、パネルを水平面から5度傾けた時に凹部Cに保持可能な計算保水量をパネル表面積1m2あたり50cm3以上とする容量であることも必要である。1m2あたりの凹部Cの冷却水保持容量が50cm3以上に満たないと、凹部Cに保持された水の気化による冷却効果が不足して、建造物内の十分な冷却が行えなくなることがある。凹部Cの冷却水保持容量に特別な上限はないが、必要以上の冷却水を保持するのは無意味であり、且つ板厚次第では満水時に落屋根の可能性がある。よって、凹部Cの冷却水保持容量は、パネルの使用環境などを考慮して適宜決定すればよい。一般的に言えば、1m2あたりの凹部Cの冷却水保持容量の上限は500cm3程度とすることができる。好ましくは、凹部Cの冷却水保持容量は1m2あたり50〜300cm3でよく、より好ましくは1m2あたり50〜250cm3である。
本発明の屋根パネルは、凹部Cに溜めた水の気化により冷却効果を発揮する。この冷却効果を得るためには、パネル表面から十分な量の水を気化させなくてはならない。この要件を満たすために、本発明の屋根パルにおいては、パネル表面積1m2あたりの被覆層B表面における凹部Cの合計の開口面積を0.048m2以上とすることが必要である。凹部Cの冷却水保持容量と同様に、この開口面積に特別な上限はなく、パネルの使用環境などを考慮して適宜決定すればよい。一般的に言えば、パネル表面積1m2あたりの被覆層B表面における凹部Cの合計の開口面積の上限は0.157m3程度とすることができる。好ましくは、パネル表面積1m2あたりの被覆層B表面における凹部Cの合計の開口面積は0.06〜0.145m3でよく、より好ましくは1m2あたり0.07〜0.140m3である。
パネル表面の凹部Cの形状は、パネルを水平面から5度傾けた時に所定量の水を保持できる限り、どのようなものでもよい。図1に例示した凹部Cは断面が半球状であるが、凹部Cの断面形状はこれに限らず、例えば半楕円状、三角形、四角形などであってもよい。凹部Cの開口部の形状も、特に限定されず、例えば円形、楕円形、三角形、正方形、長方形などでよい。
パネル表面における凹部Cの配置も特に限定されない。図2に、開口部の形状が円形の凹部Cを格子状に配置したパネル10を例示しているが、例えば千鳥配列などの他の任意の配列とすることも可能である。
本発明の屋根パネルの基材である金属板1としては、特に限定されることなく、各種金属材料の板を使用することができる。一例として、鉄板、鉄基合金板等が挙げられる。使用する金属板1の板厚Tは、屋根パネルに求められる機械的強度などの要件を考慮して決定すればよい。一般には、板厚Tが0.1〜2.3mm、好ましくは0.15〜1.6mm、より好ましくは0.2〜1.2mm程度の金属板を用いることができる。
金属板1は、パネル表面(すなわち被覆層Bの表面)の凹部Cの形状、寸法、配列を決定する凹部3を有する。凹部3を有する金属板1は、原板となる平板に所定の加工を施して製作することができる。加工により凹部3を片側だけに形成すると金属板1に反りが生じることがあり、これを避けるため、例えば凹部3を有する面に凸部も形成するようにしてもよい(この場合の金属板は、両面に凹部と凸部の両方を持つようになる)。金属板1は図2に例示したような平板であってもよく、あるいは図3に示したような折板であることもでき、後者の場合の凹部は折板30(図3)の例えば山部31と谷部32に設けられる。
金属板1は、少なくとも片面にめっき層Aを有し、めっき層Aのめっき組成はZn−Al−Mg系である必要がある。Zn−Al−Mg系めっき鋼板は高耐食性で知られており、冷却水を凹部Cに保持して冷却機能を果たすことに加え、特に様々な条件の雨水(例えば酸性の強い雨水)や、アルカリ性雰囲気(例えば、畜舎の周囲雰囲気は畜舎内の家畜の糞尿が原因でアルカリ性を呈する)などにさらされることに備える必要のある本発明の屋根パネルにおける基材として好適な材料である。
金属板に高耐食性をもたらすZn−Al−Mg系めっきの具体的な組成は、Al:4〜15質量%、Mg:1〜5質量%、残部がZnと不可避に混入する元素からなるのが好適である。Zn−Al−Mg系めっきは、このほかに、
2.0質量%以下のSi、
0.5質量%以下のTi、
0.7質量%以下のB、
2.0質量%以下のNi、
2.3質量%以下のFe、
から選択される1種以上を含むこともできる。Zn−Al−Mg系めっきにおいて、Siの添加は、金属間化合物Mg2Siを形成して腐食環境下で早期に溶解して防食機能を向上させる効果がある。また下地金属とめっきAl成分の合金化を抑制して加工時のめっき層密着性を向上させる効果がある。Tiの添加はめっき層中のAl系析出相を小粒径化する効果があり、強アルカリ腐食環境下での優先的なAl系析出相の貫通腐食を抑制する効果がある。同様にBもAl系やZn系の析出相を小粒径化して同様の効果を発揮できる。NiやFeもTiと同様の効果を発揮することができる。
特に、Alの含有量が4〜15質量%で、且つSiの含有量が0.05〜2.0質量%の範囲内であるのが好適である。更に、本発明の屋根パネルを畜舎などのようにアルカリ性の周囲雰囲気で使用する場合は、Siの含有量は0.05〜0.3質量%とするのが好適である。AlとSi含有量がこの範囲内のZn−Al−Mg系めっきは高い耐アルカリ性を示し、金属板1を基材とするパネルのアルカリ性環境下における耐食性を確保する上で有用である。
上に挙げた畜舎などで本発明の屋根パネルを使用する場合には、屋根パネルの両面が腐食性環境にさらされる。よって、このような場合には、金属板1は両面にZn−Al−Mg系めっき層を備えることが望ましい。また、パネルの製造に当たっては、当初からめっき層を設けためっき金属板を利用するのが好適である。
めっき層Aは、厚みが3〜50μm程度であるのが好ましい。3μmより薄いと、耐食性の効果が発揮されにくい。50μmより厚くなると、耐食性の効果が飽和し、不経済となる。めっき層Aの厚みは、より好ましくは5〜30μm、更に好ましくは7〜25μmである。
その一方、めっき層AのZn−Al−Mg系めっきは高温多湿の環境(太陽熱に直接さらされ、冷却用の水にもさらされる屋根パネルにとって避けられない使用環境)において黒変(酸化被膜の成長により変色する現象)を生じやすい。めっき層Aに黒変を生じるとパネルの吸熱性が増加し、建造物内の温度上昇の抑制にとって不利となる。本発明では、めっき層Aを熱反射性無機系フィラーを含有する有機被覆層Bで覆ってパネルに遮熱性(熱反射性)を付与する。
熱反射性無機系フィラーを含有する有機被覆層Bは、熱反射性無機系フィラーを含有する有機樹脂により形成することができる。有機樹脂としては、熱硬化型のものも熱可塑型のものも、ともに使用可能である。熱硬化型の樹脂の例としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリエポキシなどを挙げることができる。熱可塑型の樹脂の例としては、塩化ビニルゾルなどを挙げることができる。
熱反射性無機系フィラーとしては、一般に塗膜にメタリック調の意匠感を付与するのに用いられる無機系フィラーを用いることができる。具体的に言えば、表面修飾アルミニウムを用いるのが好適である。表面修飾アルミニウムは、有機樹脂やシリコン変性樹脂によるコーティングのほか、SiやTiやZrなどの蒸着やコーティングされたものが使用される。このほかにも、例えばアルミフレーク(表面修飾なしのもの)、パールマイカ、金属被覆ガラスフレーク、金属フレークなどが挙げられる。一般にフィラーの粒径は膜厚や塗装性に併せて最適化すればよく、アルミやガラスなどの基材の熱反射特性を大きく落とさない限りは、表面コーティングの種類も特に限定するものではない。
被覆層Bは、このような熱反射性無機系フィラーを1〜40質量%程度含有するのが好ましい。1質量%未満では、被覆層Bに十分な熱反射特性を付与することが困難であり、40質量%を超えると、皮膜の加工性が失われて加工時の塗膜剥離を生じやすくなる。熱反射性無機系フィラーの含有量は、より好ましくは3〜35質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
被覆層Bの厚みは、2〜50μm程度が好ましい。2μmより薄いと、十分な熱反射性を発揮できない。50μmより厚くなると、内部応力から加工時に塗膜剥離を生じやすく、且つ採算性に乏しい。被覆層Bの厚みは、より好ましくは3〜45μm、更に好ましくは5〜40μmである。
被覆層Bは、屋根パネルに実用上の不都合をもたらさない範囲内で、種々の任意的付加成分を含有してもよい。そのような成分の一例として、抗菌剤や抗カビ剤、色調用色顔料、蛍光顔料、畜光顔料、摺動性用のワックス成分などを挙げることができる。
パネルの裏面(屋根パネルで屋根を葺いた状態で被覆層Bとその凹部Cの存在しない面)は、太陽光の照射にさらされる表面ほど過酷な環境にはさらされない。従って、パネル裏面の塗装は任意である。例えば海岸近くの環境で使用する場合などには、塩害防止用の塗膜を備えることが有利であろう。同様に、パネル裏面にめっき層は必ずしも必要ではないが、例えば金属板として鋼板を使用する場合などには、防食を目的にめっき層を設けるのが有利であろう。本発明の屋根パネルを模式的に示す図1において、パネル裏面の任意のめっき層、塗膜層は図示していない。
本発明の遮熱性の屋根パネルは、基材である金属板1に凹部3を形成し、少なくとも片面(凹部3を有する面)にめっき層A、続いて被覆層Bを形成して製造することができる。凹部3は、めっき層Aを予め形成した金属板(めっき金属板)に形成してもよい。金属板1(あるいはめっき層Aを備えためっき金属板)に凹部3を形成するには、例えばプレス成形などの加工方法を利用することができる。金属板1にめっき層Aを形成するには、電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等を利用することができる。被覆層Bは、めっき層Aの上に、溶媒中の成膜性分である有機樹脂と熱反射性無機系フィラーを含有する塗料を塗布することにより形成することができる。塗料に用いる溶媒は、水性溶媒(例えば水やアルコールなど)でもよく、あるいは有機溶媒でもよい。本発明の屋根パネルの製造に利用する方法はいずれも周知のものであり、ここで詳しく説明するには及ばない。被覆層Bの塗料を塗布する前に、被覆層Bの密着性向上などを目的として、めっき層Aの上に化成処理層やプライマー層を形成してもよい。
次に、以下の実施例を参照して本発明を更に詳しく説明するが、本発明がそれらの実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
基材である金属板には冷延鋼板(厚み0.8mm)を使用し、めっき層Aおよび被覆層Bを施したのち、10cm四方のプレス金型で凹凸形状を転写し、屋根モデルを作製した。
めっき層Aは以下の組成浴を用いて溶融めっき方法にて作成した。
A1:Zn−11Al−3Mg−0.2Si
A2:Zn−0.2Al
被覆層Bは以下の樹脂系塗料を用いて塗布後加熱硬化により作成した。
B1:ポリエステル塗料(日本ファインコーティング社製FLC7000)
塗料に添加したフィラーは次のとおりである。
アクリル被覆Alフィラー(東洋アルミニウム社製CF2)
アルミ蒸着ガラス(ダイキン社製ZCD−2000)
屋根モデルは5度傾斜させる様に固定し、初期に自動散水機で水道水を液滴状に屋根モデルの高所端から10cc/分づつ滴下した。
板面から30cm高さから赤外線灯を屋根モデルにあて1時間静置し、裏面側から屋根モデルの温度を熱電対で測温し、平板・流水なしの場合と比べた時の温度差を冷却効果とし、次の評点で評価し、評点○以上を合格とした。
◎:7℃以上
○:5℃以上7℃未満
△:3℃以上5℃未満
×:3℃未満
アルカリ耐性は供試材を5%アルカリ水溶液に室温48時間浸せき後に水洗乾燥し、塩水噴霧試験(SST(JIS Z 2371))を500時間行い、基材(冷延鋼板)の最大孔蝕深さを測定して、次の評点で評価し、評点○以上を合格とした。
◎:0.2mm未満
○:0.2以上0.4mm未満
△:0.4以上0.6mm未満
×:0.6mm以上
表1に供試材のめっき層A、被覆層Bの構成と、各供試材の冷却効果とアルカリ耐性を示す。表中の「保水量」は、被覆層Bの凹部に保持可能な計算保水量を示す。この表より、本発明による屋根モデルで冷却効果とアルカリ耐性に優れることが分かった。
Figure 0005692457
1 金属板
3 金属板の凹部
5 被覆層の凹部
10 屋根パネル
A めっき層
B 被覆層

Claims (11)

  1. 凹部を有する金属板と、該金属板の少なくとも該凹部を有する面に設けためっき層A及びその表層側の被覆層Bとを有する屋根パネルであり、めっき層Aのめっき組成がZn−Al−Mg系であること、被覆層Bが熱反射性無機系フィラーを含有する有機被覆層であること、金属板の該凹部の形状にならって被覆層Bに形成された凹部Cが、基準面に対して該金属板の板厚Tの5倍以上の深さと、板厚Tの5〜20倍の開口短半径を有し、隣り合った凹部Cのエッジ間の最近接距離が凹部Cの開口短半径の2〜5倍で、パネル表面積1m2あたりの被覆層B表面における凹部Cの合計の開口面積が0.048〜0.157m2であり、なおかつ、パネルが水平面から5度傾斜した時に凹部Cに保持可能な計算保水量が1m2あたり50cm3以上であることを特徴とする、遮熱性に優れた屋根パネル。
  2. 前記めっき層Aのめっき組成が、Al:4〜65質量%、Mg:1〜5質量%、残部がZnと不可避に混入する元素からなることを特徴とする、請求項1に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
  3. 前記めっき層Aのめっき組成が、
    2.0質量%以下のSi、
    0.5質量%以下のTi、
    0.7質量%以下のB、
    2.0質量%以下のNi、
    2.3質量%以下のFe、
    から選択される1種以上を更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
  4. 前記めっき層AのAlが4〜15質量%で、且つSiが0.05〜2.0質量%であることを特徴とする、請求項3に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
  5. 前記被覆層B中の無機系フィラーが表面修飾アルミニウムであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
  6. 前記被覆層Bが熱硬化型もしくは熱可塑型塗膜であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
  7. 前記めっき層Aと前記被覆層Bの間にプライマー層を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の遮熱性に優れた屋根パネル。
  8. 請求項1から7までのいずれか一項に記載の遮熱性に優れた屋根パネルにより製作された屋根。
  9. 畜舎屋根である、請求項8に記載の屋根。
  10. 請求項1から7までのいずれか一項に記載の遮熱性に優れた屋根パネルにより製作された屋根を有する建造物。
  11. 畜舎である、請求項10に記載の建造物。
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