以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る運転支援装置を説明する。本実施形態の運転支援装置は車両に搭載され、自車周辺の障害物について自車の運転者に注意喚起を行うための装置である。図1に示すように、本実施形態の運転支援装置10は、車速センサ11、レーダセンサ12、カメラセンサ13、ナビゲーションシステム14、方向指示器センサ15、操舵角センサ16、路車間通信機17、ドライバ認証部18、ECU20、アクチュエータ類31及び表示装置32を備えている。
車速センサ11は、自車の車軸の回転速度から自車の速度を検出するためのセンサである。
レーダセンサ12は、例えば自車前方にミリ波を照射することにより、自車前方の他の自動車、自動二輪車、自転車及び歩行者等の障害物を認知するためのものである。また、レーダセンサ12は、道路上に固定された障害物や、道路の線形、曲率半径、勾配等の道路形状を認知するためのものである。
カメラセンサ13は、自車前方を撮像し、パターン認識等により、自車前方の他の自動車、自動二輪車、自転車及び歩行者等の障害物を認知するためのものである。また、カメラセンサ13は、パターン認識等により、道路上に固定された障害物や、道路の線形、曲率半径、勾配等の道路形状を認知するためのものである。
ナビゲーションシステム14は、GPS(Global Positioning System)による自車の測位とデータベース内の地図情報とに基づいて自車が走行する道路の線形、曲率半径、勾配等の道路形状に関する情報を取得するためのものである。ナビゲーションシステム14は、ドライバーが入力した目的地や経路についての情報から、自車の経路を推定するためにも用いられる。
方向指示器センサ15は、自車の方向指示器(ウインカ)の指示する方向を検出するためのものである。方向指示器センサ15は、自車の経路を推定するために用いられる。操舵角センサ16は、自車の操舵角を検出するためのセンサである。操舵角センサ16は、自車の経路を推定するために用いられる。
路車間通信機17は、光ビーコン送信機等の路側の施設から自車前方の道路の線形、曲率半径、勾配等の道路形状に関する情報を取得するためのものである。また、路車間通信機17は、路側のセンサで検出した他車、歩行者等の障害物に関する情報を受信するためのものである。さらに、路車間通信機17は、自車が走行する道路の交通量、渋滞、事故、交通規制等の道路の状態に関する情報を取得するためにも用いられる。
ドライバ認証部18は、自車を運転するドライバーを認証するためのものである。ドライバ認証部18は、ドライバーによる暗証番号等の入力や、IDカード等の挿入や、ドライバーの指紋、網膜、虹彩等を識別することによる生体認証等により、ドライバーを認証する。
ECU(Electronic Control Unit)20は、車速センサ11等から得られた情報に基づいて、自車周辺の状況に対する自車の規範的な運転行動の候補である幾つかの規範行動候補について、自車周辺の障害物と自車とが接触するリスクと、当該規範行動候補に係る運転行動により自車が走行した場合の移動効率とを予測する。
アクチュエータ類31は、ECU20が算出した規範行動候補あるいは規範行動候補から選択された規範行動に基づいて、ドライバーの運転操作に介入して、自車のブレーキやアクセルを駆動させるブレーキアクチュエータやアクセルアクチュエータである。また、アクチュエータ類31は、例えば、ドライバーのアクセル操作に対して反力を与えるものでも良い。
表示装置32は、ドライバーに画像を表示するディスプレイや、ドライバーに音声案内を行うスピーカや、ドライバーに警報を与えるブザーである。表示装置32は、ドライバーにECU20が算出した規範行動候補に基づいた情報を提示するためのものである。本実施形態では、ウィンドシールド上に各種の補助線を表示する形式の物を用いる。
以下、本実施形態の運転支援装置10の動作について説明する。まず、運転支援装置10の動作の概略について説明する。図2に示すように、本実施形態の運転支援装置10のECU20は、自車周辺の他車等の障害物について、環境認識を行う(S1)。環境認識は、例えばマルチスケール認知により行うことができる。マルチスケール認知は、事故パターンの分析において、事故を回避するための着眼点のカテゴリーを、微視的に細部まで着眼するカテゴリーから、巨視的に全体を把握するカテゴリーまで階層的に多層化することで、自車の置かれた状況に適したカテゴリーの中からリスク予測の対象となり得る障害物を認知し選択する。
運転支援装置10のECU20は、自車及び障害物のパス設定を行う(S2)。自車のパス(経路)及び他車のパスの設定は、それぞれのパスを予め複数想定し、パスに当該他車等の可動物を重み付けで割り振り、0.5秒等の短い周期の観測結果ごとにマルチスケール認知を活用して、割り振りの重み付けを更新する。この段階では、パスを1つに絞り込む必要はない。また、パスの設定は、直接に認知可能な障害物の経路である顕在パスと、直接に認知不可能ではあるが存在が予想される障害物の経路である潜在パスとの2種類を設定する。
運転支援装置10のECU20は、自車及び他車等の障害物の行動を予測する(S3)。この行動予測では、パス上の位置x、速度vを座標とした(x,v)空間上に自車及び他車等が存在する確率分布をセンサ等から得られた情報から推定し、この確率分布を時間ごとに変化させることで、自車及び他車等の未来の位置を予測する。
運転支援装置10のECU20は、規範行動候補群のリスク予測を行う(S4)。リスク予測では、自車のパスと他車等の可動物のパスとのクロスポイント(交差点)を算出し、クロスポイントでの接触のリスクを算出する。この場合、可動物の死角に潜在的に存在する可能性がある可動物に対して、潜在的な接触のリスクも算出される。ここで算出されるリスクは、客観的及び物理的に自車と障害物との接触の可能性を示すものである(以下、客観的リスク又は物理的リスクと呼ぶことがある)。
運転支援装置10のECU20は、リスク値が閾値以上のものをハザード対象として決定する(S5)。ECU20は、上記の物理的リスクが高い順位を決めてテーブル化する(S6)。
一方、運転支援装置10のECU20は、自車の運転者が障害物と自車とが接触すると感じる度合を評価するための複数の感性的な指標の中から一つの指標を状況によって決定する(S7)。ここで上記指標により算出されるリスクは、運転者の主観的及び感性的に自車と障害物との接触の可能性を示すものである(以下、主観的リスク又は感性的リスクと呼ぶことがある)。
運転支援装置10のECU20は、物理的なリスクテーブルの中で、物理的リスク値が閾値以下のハザード対象について、選択された感性的なリスク指標による感性的リスクの高い順に順位を変更する(S8)。ECU20は、以上のようにして得られたハザード対象の順位にしたがって運転者に対して表示装置32を用いた情報提供を行い、場合によってはアクチュエータ類31による運転支援を行なう(S9)。
以下、重要な工程について詳述する。まず、パス設定(S2)について説明する。ここでは、前提として、レーダセンサ12、カメラセンサ13、ナビゲーションシステム14及び路車間通信機17等により、道路形状に関する情報が取得できているものと仮定する。図3に示す交差点での状況では、運転支援装置10のECU20は、路上に障害物がない場合の理想的な自車100及び他車200の右左折、直進のパスであるデフォルトパスPDEを想定する。また、運転支援装置10のECU20は、デフォルトパスPDEに付随して、パスの変種であるアダプティブパスPADを想定する。ここで、ECU20は、パスは車両のキネマティクスを考慮して部分的(区分的)に準備しておき、これらを即時的な処理で繋げる。本実施形態では、パスを複数化することにより、自車及び他車等についてのリスク予測の精度を向上できる。
また、本実施形態では、図4に示すように、視界Si内にあり直接に認知可能な他車200の経路である顕在パスPOVと、他車200の影に隠れ直接に認知不可能ではあるが存在が予想される自動二輪等の潜在物体250の経路である潜在パスPLAとをECU20は予測する。本実施形態では、潜在パスPLAを予測することで、マルチスケール認知で想定した潜在的に存在する物体に対するリスク予測を行うことができる。
なお、以上のパス設定については、予め道路形状や交通状況に対応したパスをデータべースに格納しておき、それらを自車が走行時に置かれた状況に合わせて抽出することができる。また、即時的に道路形状や交通状況に合わせてパスを導出しても良い。
以下、行動予測の前提として、自車及び他車等がどの想定したどのパス上を移動するかを、段階的に予測する手法について説明する。図5に示すように、ECU20は想定したパスの使用可否の判断を行う(S31)。すなわち、ECU20は、自車及び他車等が想定しているパスと大きく離れた動きをしているか否かを判断する。ECU20は、自車及び他車等の実際のパスと最も近い想定したパスとの距離を時系列的に観測し、観測時間の区間において、想定したパスと実際のパスとの距離が、ある閾値以上となる時間が一定以上の時間続いた場合、当該想定したパスは使用できないと判断し、自車及び他車等の実際の動きに沿ってパスを外挿的に生成する。
次に、ECU20は、行動目的の予測を行う(S32)。図6に示すようなECU20内あるいは自車外部のデータベースにおいて、自車あるいは他車等の行動の条件を示す説明変数と、パスの重み付けに用いられる目的変数とが対応付けて記憶されている。ECU20は、説明変数と実際の自車及び他車等の行動とが一致することを条件として、目的変数を判定する。ただし、操舵角又は方位変位角については、アナログ値を右左折及び直進の3つの離散値として判定する。
ECU20は、行動目的の予測を踏まえてパスの選択精度を向上する(S31)。ECU20は、行動目的の予測の結果ごとに、複数準備したパスを目的変数として、自車及び他車等の行動をどのパスに割り振れば良いかを、バギング法、ブースティング法、ランダムフォレスト法等の集団学習法やカーネル法等で決定する。
以下、行動予測(S3)及びリスク予測(S4)について説明する。本実施形態では、基本的な考え方として、想定したパス上を物体が動くものとし、パス上の位置と速さとが座標軸とする空間上で、物体の存在を同時確率密度関数でモデル化される。モデル化した確率密度関数の各々の位置、速度において等加速度運動が仮定され、未来のパス上の位置が予測される。以下、具体的な例を挙げて説明する。
図7に示すように、物体Xi(1)〜Xi(n)は、パスCi(t)上を動くものと仮定する。ここで、nは物体の数を表し、tは時間を表す。パスの目盛が等間隔になるように、パスCiの時間パラメータを選ぶものとする。ある物体Xi(k)の時刻t=0でのパスCi(t)上の位置を原点とすると(以下、添え字のkを省略する)、時刻tでの物体の位置xiは、下式(1)によって計算することができる。
上式(1)でのノルムは計量から定義するものとする。ある時刻tにおけるパスCi(t)上の位置と速さとの空間上に物体Xiの情報が、関数Pt(x,v)として分布しているものとする。位置や速さの情報には、様々な誤差が含まれているので、これらを分布モデルとして表現することにする。この場合、図7のようになる。
物体は等加速度運動をするものと仮定しているので、時刻t=0の場合(x0,v0)とすると、時刻tの場合は、(x0+v0・t+α・t2/2,v0+α・t)となる。ここで、αは加速度(定数)を表す。従って、この座標変換では面積が保存される。v座標に関して関数Pt(x,v)をファイバー積分したものをQt(x)と定義する。関数Qt(x)は、時刻tにおける物体の存在確率を表す。すなわち、0≦Qt(x)≦1となる。
物体Xiが時刻tにおいて、クロスポイントに存在する確率は、xcをクロスポイントの位置とすると、下式(2)で計算することができる。なお、下式(2)において、δはデルタ関数である。
上式(2)のp(t)を自車がクロスポイントを通過する時間[t
1,t
2]にわたって積分すると、他車等の物体に対する位置xcにおけるリスクRが下式(3)で計算することができる。ここで、時刻t
1は自車の先頭がクロスポイントに乗る時刻であり、時刻t
2は自車の後端がクロスポイントを通過する時刻である。
また、ECU20は、可動物の死角に潜在的に存在するかもしれない可動物に対しても、上述した潜在パスPLAについて、同様の処理を行い、潜在的なリスクも算出する。以上の処理により、パス上のクロスポイントでリスクを計算するため、道路の全域にわたって存在確率を計算するような手法と異なり、リスクの計算のコストを小さく抑えることができ、即時的な処理が可能となる。
以下、さらに具体的な道路の状況において、実際に上記手法でリスクを計算し、行動候補のモデルにしたがって運転した結果を示す。図8に示す道路の状況において、他車200に対する自車100の接触のリスクの計算方法を以下に示す。図8に示すように、自車100は、クロスポイントcpからx0[m]離れた所に位置し、v0[m/s]の速度を持っている。また、自車100の全長はd0[m]である。
他車200は、クロスポイントcpからx1[m]離れた所に位置し、平均v1[m/s]、幅dvの[v1−0.5dv,v1+0.5dv]の間に一様に分布するような速度分布を持っている。速度分布の積分値は1になるものとする。また、他車100の全長はd1[m]である。自車100の加速度及び減速度は、モデルパラメータで与えられた値を用い、それぞれaa0,ad0とする。他車の加速度はa1とし、誤差は考えない。
リスクの計算では、以下の4つの手順を踏む。
(1)自車100及び他車200の速度プロファイルを生成
(2)自車100がクロスポイントcpを通過し始めてから、通過し終わるまでの時間(通過時間)を算出
(3)他車200の位置分布を算出
(4)他車200がクロスポイントcpにいる確率を通過時間にわたって積分し、リスク値を算出する
まず、自車100及び他車200の速度プロファイルを生成する。速度プロファイルとは、自車100及び他車200の運動する速度を時刻の関数として表したものである。図9に速度プロファイルの例を示す。自車100については、行動の選択肢に基づいて、モデルパラメータとして指定した加速度aa0あるいは減速度ad0で加減速し、道路の制限速度を守りつつ、停止すべき位置で停止できるような速度変化を求めて、それを速度プロファイルとする。生成された速度プロファイルの例として、図10に示すような制限速度を持つ道路において、図中にあるパスに沿って運動した場合のものを図11に示す。
図11に示すように、加速度としては、5秒間で0km/hから60km/hまで加速できる加速度を用いた。減速度としては、5秒間で60km/hから0km/hまで減速できる減速度を用いた。また、パス上の位置0mにおける速度である初速度は40km/hとした。他車200については、加速度は他車200の持つ値a1とし、道路の法定速度は考えずに運動するような速度プロファイルを生成して用いる。
物体の運動は、速度プロファイルから完全に計算することができる。物体の時刻tにおける位置x(t)は、時刻t=0から時刻tまで速度プロファイルを積分すれば良い。つまり、時刻Tにおける速度をv(T)として、下式(4)として求められる。
時刻tにおける速度は、時刻tにおける速度プロファイルの値v(t)である。また、物体が位置Xに来る時刻は、下式(5)のようなtについての方程式を解けば良い。
この例のモデルでは、速度に負の値を許していないため、位置は時刻に対して単調に増加するため、下式(5)の方程式はかならず1つの解を持ち、簡単に解くことができる。
以下、自車100がクロスポイントcpを通過し始めてから、通過し終わるまでの通過時間を算出する手法について説明する。通過時間は、自車100の先頭部分がクロスポイントcpに乗ってから、自車100の後尾部分がクロスポイントcpを通過するまでの時間である。図12に自車100のクロスポイントcp通過の様子を示す。自車100の先頭部分がクロスポイントcpに乗る時刻及び自車100の後尾部分がクロスポイントcpを通過するまでの時刻は、速度プロファイルから算出できる。
以下、他車200の位置分布を算出する手法について説明する。ある時刻における他車200の位置分布を算出する。時刻t=0(現在時刻とする)において、他車200は、位置・速度空間に図14に示すように分布している。図13の分布を他車200の速度プロファイル(等加速度運動)に従って時間発展させると、速度が速いほど先に進み、図14に示すような分布となる。図14に示すように、時刻tにおける分布は時刻t=0における分布とは異なる形状に変化するが、等加速度運動(図14は加速度0の例)であり、加速度には誤差がないものとしていることから、任意の時刻で他車200の分布は必ず平行四辺形状となる。
図14に示すような分布を速度について積分すると、時刻tにおける他車200の位置分布が得られる。つまり、時刻tにおける位置・速度空間における他車200の分布をPt(x,v)とすると、時刻tにおける他車の位置分布Qt(x)は、図15に示すような時刻tにおける分布を速度で積分した下式(6)で示される。
図15に示すような速度・位置空間における分布が平行四辺形状になることから、位置分布は図16に示すように必ず台形となる。この積分は、位置・速度空間における分布の幾何学的な性質から簡単に行うことができる。
以下、他車200がクロスポイントcpにいる確率を通過時間にわたって積分し、リスク値を算出する手法について説明する。これは、自車100がクロスポイントcpに乗っている間に、他車200がクロスポイントcpに存在する確率を積分することに相当する。自車100のクロスポイントcpの通過時間を[t1,t2]とする。t1で自車100の先頭部分がクロスポイントcpに乗り、t2で自車100の後尾がクロスポイントcpを通過する。図17に、上記の通過時間にわたる他車200の位置分布の積分の概念図を示す。図中太線で示す通過時間[t1,t2]において存在確率が積分される。この積分は、数値積分法を用いて計算する。
以上のようにして、障害物に対する客観的リスクを求めることができる。しかし、図18に破線で示すように、現実の道路では障害物が複数存在する場合がある。このような場合に全ての障害物についての情報を運転者に表示した場合は、運転者を混乱させ、有効な運転支援を行なうことができない場合がある。そこで、本実施形態では以下のようにして運転支援を行う。
まず、ハザード対象の決定と物理的なリスクテーブルの作成とについて詳述する(S5,S6)。自車が右折しようとする場合は、図19に示すような自車のパスとクロスポイントCP1,CP2が考えられる。ここで検出した物体が図20に示すように自車のパスに割り付けられる。ここで、クロスポイントCP1には前方を走行するトラックであるハザード対象HZ1が割り付けられ、クロスポイントCP2には対向する自動二輪車であるハザード対象HZ2が割り付けられる。なお、一つのクロスポイントに複数の物体が特定される場合もあり得る。さらに、自車のパスと交錯するクロスポイントCP1,CP2ごとに物理的リスクが算出される。
運転支援装置10のECU20は、図21に示すように、現在の状況におけるクロスポイントごとにハザード対象を抽出した物理的なリスクテーブルを作成する。ECU20は、多くとも各クロスポイントに10個までデータを保持するものとする。ここで、ECU20は、物理的なリスクテーブルにおいて、物理的リスク値が対象下限値以上のものをハザード対象として決定する(S5)。さらに、ECU20は、物理的リスク的なリスクテーブルにおいて、物理的リスク値が対象下限値以上のハザード対象を物理的リスク値の高い順に並べる。この場合の対象下限値は、例えば、多くとも4つのハザード対象が物理的リスク値の高い順に抽出されるものとできる。さらにECU20は、図22に示すように、t秒後の物理的なリスクテーブルを作成する。
次に、感性的リスクの指標とその選択について詳述する(S7)。上述した物理的リスクは、客観的に自車と障害物との接触の可能性を示すものである。しかしながら、運転者は、物理的リスクが低い障害物であっても、主観的及び感性的に自車と障害物とが接触すると恐れる場合もあり得る。そのため、本実施形態では、このようなハザード対象について優先的に運転者に対して運転支援を行う。
自車両が交差道路のない単路や高速道路を走行している場合、運転者は、先行車等の障害物について、自己の視野における面積の変化によって、障害物の近接や離間を感じていると考えられる。このような近接・離間状態評価指標は、下式(7)により求められる。そのため、下式(7)による近接・離間状態評価指標により熟練ドライバー等の相対速度ごとのデータを図23の細線のように収集しておき、太線のように標準範囲(閾値)を定め、この範囲を逸脱した場合は異常であると判断することができる。あるいは、当該閾値から逸脱している度合により感性的リスクを算出しても良い。
あるいは、ポテンシャル法における斥力ポテンシャルを応用した手法も考えられる。図24のように自車100と他車200とが存在する場合を考える。ここで、他車200の速度の曖昧さを考慮して、速度方向に拡張した楕円ポテンシャルが下式(8)にように考えられる。ここで、σ
x,σ
y:楕円の大きさパラメータ、θ:進行角度、x’,y’:他車200の位置、k
x,k
y:比例定数、V=(V
x 2+V
y 2)
1/2:他車200の速度、V
x:他車200の速度のx成分、V
y:他車200の速度のy成分、T:自車100と他車200との交錯予測時間である。ECU20は、このような楕円ポテンシャルを同様に自車100についても算出する。また、ECU20は、他車200が複数ある場合には、それらについても同様に楕円ポテンシャルを算出する。自車100の楕円ポテンシャル内における、これらの他車200の楕円ポテンシャル値の総和によって自車100と他車200との交錯の可能性を推定することができる。
ここで、自車100について算出される楕円ポテンシャルは、自車100のドライバーに応じてパラメータσx,σyを変更することにより、ドライバーが障害物と自車100との接触の可能性があると主観的に感じる範囲であると考えることもできる。つまり、楕円ポテンシャルのパラメータσx,σyは、ドライバーの運転経験や技量に応じて大きく変動する。例えば、熟練したドライバーであれば、車速に応じて側方よりも遠方に気を配ろうとするため、σxが大きくσyが小さい楕円ポテンシャルとなると予想される。一方、未熟なドライバーであれば、車速に対応した判断が難しいため、σxが小さくσyが大きい楕円ポテンシャルとなると予想される。
そこで、ECU20は、ドライバー認証部18により得られたドライバーの運転経験年数に比例してσxが大きくσyが小さい楕円ポテンシャルを設定するものとできる。あるいは、予め運転経験年数に応じたパラメータσx,σyについての統計をとっておき、ドライバー認証部18により得られたドライバーの運転経験年数に応じて、ECU20は当該ドライバーのパラメータσx,σyを決定しても良い。このようにして決定されたパラメータσx,σyによる自車100の楕円ポテンシャル内における、他車200の楕円ポテンシャル値の総和を算出することにより、ドライバーが主観的に他車200と自車100とが接触すると感じる度合を算出することができる。
このような感性的リスクを算出する指標は、例えば、図25に示すように、自車100が交差する道路を走る他車200を見ながら、互いに速度Vで走行している場合に有効である。
このような場合は、自車100及び他車200の運転者は互いに他方の車両が同じ角度に見え続ける。もし、運転者が視野の中心で見ていれば他方の車両の存在に気付く事ができるが、運転しているときにずっと正面ばかり向いていると周辺視野でしか交差する道路を走る自車100あるいは他車200を見ることができない。しかも運転者が周辺視野で見ていると、他方の車両がいつも同じ位置に見え、視野内で止まっているものを運転者は背景として扱ってしまい、運転者の意識の中では、他方の車両の存在自体をまるで気が付かないことがあり得る。
このような場合、上述した近接・離間状態評価指標によると、接近する車両については運転者の感性的リスクが高く算出されるため、現実の運転者の感覚とのずれが生じる可能性がある。しかしながら、上記の車両の全方向における斥力ポテンシャルを応用した手法によれば、このような運転者の主観も正確に再現することができるため、有効である。
このような感性的リスクを算出するための他の指標としては、例えば、先行車との現在の相対速度が維持されると仮定した場合に自車が先行車に衝突するまでの時間であるTTC(Time-To-Collision)の逆数に所定の係数を乗じたものと、現在の自車の速度で現在の先行車の位置に到達するまでの時間であるTHW(Time-Head Way)の逆数に所定の係数を乗じたものとの和であるRF(Risk Feeling)を感性的リスクを算出するための指標として用いることができる。
運転支援装置10のECU20は、以上のような複数の感性的リスクを算出するための指標の中から、自車100が走行する状況に合わせて、感性的リスクを算出するための指標を選択する(S7)。例えば、図26に示すように、時間によって自車100が走行する状況が(A)単路、(B)交差点、(C)三叉路といったように変動する場合に、このような状況に最も適した所定の感性的リスクを算出するための指標A、B、Cを選択し、当該指標により感性的リスクを算出することにより、もっとも自車100の運転者の感覚に合致した感性的リスクを算出することができる。
運転装置10のECU20は、物理的なリスクテーブルの中で物理的リスクが対象上限値以下のハザード対象について、選択された指標により算出される感性的リスクの順に、順位を変更する(S8)。例えば、工程S6により設定された物理的なリスクテーブルが図27のように作成されていたものとする。ここで、物理的リスクの対象上限値を越えているハザード対象は、客観的に障害物と自車100とが接触する可能性が高く、自車100の運転者による操作だけでは障害物の回避が困難であり、アクチュエータ類31による運転者の操作への介入が障害物の回避に必要と認められる場合である。すなわち、対象上限値は、運転介入臨界値となる。物理的リスクの対象上限値を越えているハザード対象が存在する場合には、ECU20は、アクチュエータ類31による運転者の操作への介入を実行する。
図27の例では、対象上限値を超えているハザード対象は存在しないため、ECU20は、クロスポイントCP1におけるハザード対象1、4及び8について、選択された指標により感性的リスクを算出する。ハザード対象1、4及び8においては、感性的リスク値の高い順にハザード対象1、8及び4の順である。そこで、ECU20は、図28に示すようにクロスポイントCP1における順位を、ハザード対象1、8及び4の順に変更する。ECU20は、同様にして、各クロスポイントCPにおけるハザード対象の順位を変更する。
以上のようにして順位を決定されたハザード対象について、図29に示すように、ECU20は当該順位にしたがって表示装置32により、ドライバーにハザード対象についての情報を提供する(S9)。順位の高いハザード対象が優先的に表示され、順位の低いハザード対象ほど、ハザード対称を表示する時間の余裕が無いような場合は表示が適宜省略される。
本実施形態では、運転支援装置10のECU20が、自車100周辺の障害物と自車100とが接触する可能性である客観的リスクを算出する。また、表示装置32が、ECU20が客観的リスクを予測した障害物の内で客観的リスクが対象下限値以上である障害物について、自車100の運転者に対して注意喚起を行う。ECU20が客観的リスクを予測した障害物の内で客観的リスクが対象下限値以上である障害物について注意喚起を行うことにより、全ての障害物について注意喚起を行った場合に比べて運転者にとって有用な情報を絞った上で当該情報を運転者に提供することができるため、より有効な運転支援を行なうことができる。
また、本実施形態では、ECU20は、客観的リスクが対象上限値以下である比較的に客観的リスクが低い障害物について、自車100の運転者が障害物と自車100とが接触すると主観的に感じる度合である主観的リスクを算出する。また、表示装置32は、客観的リスクが対象上限値以下である障害物について、算出した主観的リスクが高い障害物ほど優先的に自車100の運転者に対して注意喚起を行う。このため、表示装置32は、客観的リスクが対象上限値以下である比較的に客観的リスクが低い障害物については、運転者が障害物と自車100とが接触すると主観的に感じる障害物ほど優先的に注意喚起を行なうため、運転者の感性に合致した運転支援を行うことができる。
また、本実施形態によれば、ECU20は、自車100が走行する状況に応じて主観的リスクを算出する方法を変更する。自車100の運転者が障害物と自車100とが接触すると主観的に感じる度合である主観的リスクは、自車100が走行する状況に応じて変化する。そのため、自車100が走行する状況に応じて主観的リスクを算出する方法を変更することにより、運転者の感性により合致した主観的リスクを算出することができる。
また、本実施形態によれば、ECU20は、障害物と自車100との相対速度を障害物と自車との距離の3乗で除した値に比例する近接・離間状態評価指標に基づいて主観的リスクを算出する。運転者が障害物が自車100に接触すると主観的に感じる度合は、運転者の視野における障害物の面積の時間的な変化率によって変わることが知られている。また、運転者の視野における障害物の面積の時間的な変化率は、(障害物と自車との相対速度)/(障害物と自車との距離)3に比例することが知られている。そのため、ECU20は、障害物と自車100との相対速度を障害物と自車との距離の3乗で除した近接・離間状態評価指標に基づいて主観的リスクを算出することにより、運転者の視野における障害物の面積の時間的な変化率に基づいて、自車100の運転者が障害物と自車100とが接触すると主観的に感じる度合である主観的リスクを算出することができる。
また、本実施形態によれば、ECU20は、交差する道路がない単路及び高速道路のいずれかを自車両が走行しているときに、障害物と自車100との相対速度を障害物と自車100との距離の3乗で除した値に基づいた近接・離間状態評価指標により主観的リスクを算出する。単路や高速道路では、自車100との接触の可能性がある障害物は一般に運転者の視野の中心付近に位置する。そのため、単路や高速道路においては、運転者の視野における障害物の面積の時間的な変化率は、自車100の運転者が障害物と自車100とが接触すると主観的に感じる度合に近いものとなる。そのため、交差する道路がない単路及び高速道路のいずれかを自車100が走行しているときに、近接・離間状態評価指標に基づいて主観的リスクを算出することにより、主観的リスクをより精度良く算出することができる。
また、本実施形態によれば、ECU20は、自車100の運転者の運転経験に応じて設定される自車周辺の楕円ポテンシャルに障害物が存在する可能性に基づいて、主観的リスクを算出する。このため、運転者の運転経験に応じて自車100の運転者が障害物と自車100とが接触すると主観的に感じる度合である主観的リスクを算出することができる。
さらに本実施形態によれば、ECU20は、交差点がある道路を自車100が走行しているときに、自車100の運転者の運転経験に応じて設定される自車100周辺の楕円ポテンシャルに障害物が存在する可能性に基づいて、主観的リスクを算出する。交差点がある道路では、自車100との接触の可能性がある障害物は運転者の視野の側方に位置することがある。しかし、自車100の運転者の運転経験に応じて設定される自車周辺の楕円ポテンシャル内に障害物が存在する可能性に基づいて、主観的リスクを算出する方法は、障害物が運転者の視野のどの位置に存在するかに影響を受け難い。そのため、交差点がある道路を自車100が走行しているときに、自車100の運転者の運転経験に応じて設定される自車100周辺の楕円ポテンシャルに障害物が存在する可能性に基づいて、主観的リスクを算出することにより、主観的リスクをより精度良く算出することができる。
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。