本発明の第1の発明に係る自動栓抜き装置は、各要素の構造上の基礎となる基体と、鍔を備える栓を有する容器および基体に対して昇降可能な支持部材と、支持部材と第1上部関節を介して接続する第1連結部材と、支持部材と第2上部関節を介して接続する第2連結部材と、第1連結部材と第1下部関節を介して接続する第1引き抜き部材と、第2連結部材と第2下部関節を介して接続する第2引き抜き部材と、基体に固定され、かつ、支持部材の昇降に対応する支点となると共に第1引き抜き部材の回動軸となる第1軸部材と、基体に固定され、かつ、支持部材の昇降に対応する支点となると共に第2引き抜き部材の回動軸となる第2軸部材と、第1引き抜き部材の先端に形成され、容器の栓の鍔に当接可能な第1爪部と、第2引き抜き部材の先端に形成され、容器の栓の鍔に当接可能な第2爪部と、を備え、支持部材と第1連結部材とは、第1上部関節により、屈曲可能に接続されており、第1連結部材と第1引き抜き部材とは、第1下部関節により、屈曲可能に接続されており、支持部材と第2連結部材とは、第2上部関節により、屈曲可能に接続されており、第2連結部材と第2引き抜き部材とは、第2下部関節により、屈曲可能に接続されており、支持部材が下降する場合には、第1下部関節および第2下部関節部が、互いに離隔する方向に変位して、第1連結部材および第1引き抜き部材、ならびに、第2連結部材および第2引き抜き部材が屈曲し、第1引き抜き部材の第1爪部および第2引き抜き部材の第2爪部は、第1軸部材および第2軸部材を基準として容器側に回動しながら上昇し、栓と鍔部との間に入り込んで、栓に対して上向きの角度で容器の鍔に接触し、栓を持ち上げる。
この構成により、自動栓抜き装置は、栓を損傷することなく、容器の開口部に嵌合している栓を、確実に抜くことができる。この構成により、自動栓抜き装置は、栓を引き抜きやすくなる。この構成により、自動栓抜き装置は、直線運動である支持部材の下降だけで、第1引き抜き部材および第2引き抜き部材に回動運動を与えることができる。この構成により、自動栓抜き装置は、引き抜き部材の回動によって、栓を引き抜くことができる。
この構成により、自動栓抜き装置は、引き抜き部材の回動によって、栓を引き抜くことができる。
本発明の第4の発明に係る自動栓抜き装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、支持部材の昇降を制御する、昇降制御部を更に備える。
この構成により、支持部材は、簡単に昇降できる。
本発明の第5の発明に係る自動栓抜き装置では、第4の発明に加えて、昇降制御部が支持部材へ付与する下降圧力は、第1軸部材および第2軸部材を基準とする、第1引き抜き部材および第2引き抜き部材のそれぞれの回動を生じさせる。
この構成により、自動栓抜き装置は、支持部材へ付与する直線運動だけで、引き抜き部材での回動運動を生じさせることができる。
本発明の第6の発明に係る自動栓抜き装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、容器を、栓の上昇方向と逆方向に押さえる押さえ板を備える。
この構成により、栓を引き抜く際に容器が上昇するのを防止できる。
本発明の第7の発明に係る自動栓抜き装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記容器および前記栓の少なくとも一方は、繰り返し使用される。
これらの構成により、栓は、繰り返し使用される。
本発明の第8の発明に係る自動栓抜き装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、第1引き抜き部材および第2引き抜き部材の少なくとも一方は、当接している栓に対する振動を付与可能である。
この構成により、自動栓抜き装置は、栓と容器との嵌合圧力を弱めることができるようになる。
本発明の第9の発明に係る自動栓抜き装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、爪部は、球状の少なくとも一部の外形を有する先端部を備える。
この構成により、爪部は、栓を持ち上げやすくなる。
本発明の第10の発明に係る自動栓抜き装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、爪部は、直線的に延伸する先端部を備える。
この構成により、爪部は、栓と容器との間に入り込みやすくなる。
以下、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
(全体概要)
実施の形態1における自動栓抜き装置は、容器の開口部の内側にはまり込む栓を自動で抜く必要のある機器や装置に好適に利用される。このような状況で、例えばBOD値を測定するBOD自動測定装置においては、試料液を収容する保管容器原液容器に嵌め込まれている栓を抜くことが必要となる。特に、保管容器や原液容器は、試料液を保管しつつ、保管している試料液に対して、BOD値を測定するための端子やプローブを受け入れる必要を有する。このため、BOD自動測定装置は、コンベアなどの運搬路を移動された保管容器や原液容器の栓を、短時間で抜く必要がある。
更に、BOD自動測定装置は、短時間で多くのサンプルのBOD値を測定するために、多数の保管容器を同時平行して測定処理する必要を有する。このため、BOD自動測定装置では、同時に多数の保管容器が運搬される。すなわち、同時に多数の保管容器の栓を抜く必要がある。
以上のように、自動栓抜き装置は、多量の保管容器に嵌め込まれている栓を、同時に抜くことを必要とする。
ここで、図1および図2を用いて、BOD自動測定装置の概要について説明する。上述の通り、BOD自動測定装置は、本発明の自動栓抜き装置が適用されるアプリケーションの一例である。このため、本発明の自動栓抜き装置は、このBOD自動測定装置への適用に限定されるものではない。但し、このようなBOD自動測定装置(あるいは類似の装置)には、本発明の自動栓抜き装置は、好適に適用されるので、以下にこのBOD自動測定装置の概要を説明する。
実施の形態1におけるBOD自動測定装置は、工場排水や河川水などの試料液を収容したサンプル容器を設置するだけで、BOD値を測定するのに必要な全ての処理を自動で実行し、結果であるBOD値を測定する。BOD値は、工場排水や河川水の水質を示す数値であるので、人的作業が途中工程に介在することで、測定精度が低下する可能性がある。これに対して、実施の形態1におけるBOD自動測定装置は、原液を設定後における全ての工程を、自動で実行するので人的作業の介在余地がなく、高い精度で、BOD値を測定できる。
図1は、本発明の実施の形態1におけるBOD自動測定装置のブロック図である。図1は、BOD自動測定装置の全体構成を概念的に示しており、BOD自動測定装置が備える要素同士の関係を示している。図2は、本発明の実施の形態1におけるBOD自動測定装置の測定工程のフローチャートである。図2は、BOD自動測定装置が実行する工程を示している。
BOD自動測定装置1は、大きな要素として、第一の値であるD1値が測定された容器である保管容器54を収納する収納庫2、試料液のD1値を測定する第一測定装置であるD1測定器3および収納庫2から取り出された保管容器54内部の試料液の第二の値であるD5値を測定する第二測定装置であるD5測定器4を備える。なお、この保管容器54は、上部に開口部を有しており、この開口部の内側に栓が嵌め込まれている。
なお、実施の形態1においては、第一の値の例としてD1値を、第二の値の例としてD5値を定義しているが、BOD値の測定に関る規格や手順の変更に応じて、第一の値および第二の値によって定義される値は、柔軟に変更される。
収納庫2は、D1値が測定された試料液を収容する保管容器54を、D1値が測定された曜日毎に分別する。このため、収納庫2は、曜日ラック20a〜20eを備えている。D1測定器3は、原液容器50内部の試料液のD1値を測定し、測定した曜日に対応する曜日ラック20a〜20eに、D1値の測定の終わった試料液を収容する保管容器54を供給する。D5測定器4は、収納庫2が備える曜日ラックからD5測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックの保管容器54を取り出して、取り出された保管容器内部の試料液のD5値を測定する。D5測定器4は、D5値の測定が終了した後の空の保管容器54を、測定が終了したことを示す排出ラック21に供給する。
D1値は、試料液の初日の溶存酸素量の値であり、D5値は、試料液の5日後の溶存酸素量の値であり、いずれも試料液のBOD値を測定するのに必要なパラメータである。D1値およびD5値から算出された値が、試料液の水質を示すBOD値である。
BOD自動測定装置1は、D1値が測定された試料液を収容する保管容器54を収納する収納庫2を基準とし、D1測定器3とD5測定器4とのそれぞれが相互に独立して動作可能である。このように、収納庫2を間に介在させつつD1測定器3とD5測定器4とが独立して動作することで、収納庫2が、保管容器54を確実に分別して収納しているだけで、D1測定器3におけるD1値の測定と、このD1値の測定日に連関した測定日におけるD5測定器4におけるD5値の測定とが、エラーなく実行される。
このように、実施の形態1におけるBOD自動測定装置1は、収納庫2を基準としてD1測定器3とD5測定器4とをその両サイドに設置し、収納庫2の一端ではD1測定器3が設置される原液を収容する原液容器50とD1が測定された試料液を収容する保管容器54とを取り扱い、収納庫2の他端ではD5測定器4が測定する試料液を収容する保管容器54を取り扱うことで、装置や設備の大型化を防止しつつ、エラーの無いBOD値の測定を可能としている。
BOD自動測定装置1は、以上のような機能を実現するため、D1測定器3およびD3測定器4のそれぞれは、所定の手段を備える。
D1測定器3は、原液である試料液が収容された原液容器50を設置する原液容器設置手段30、原液容器50内の試料液を希釈する希釈手段31、希釈された試料液を収容する待機容器52を所定時間以上に渡って待機させる待機手段32、待機後の待機容器52内の試料液の溶存酸素量であるD1値を測定する第一測定手段としてのD1測定手段33、収納庫2に試料液を保管する際に用いられる空の保管容器54を供給する容器供給手段としての保管容器供給手段34、D1値が測定された試料液をD1測定容器53から保管容器54に詰め替える詰め替え手段35、D1値が測定された試料液を収容する保管容器54の開口部に栓を密栓する密栓手段36、密栓された保管容器54をD1値が測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eに供給する供給手段37を備える。
収納庫2は、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eを備え、一例として曜日ラック20aは月曜日に対応し、曜日ラック20bは火曜日に対応し、曜日ラック20cは水曜日に対応し、曜日ラック20dは木曜日に対応し、曜日ラック20eは金曜日に対応する。更に、収納庫2は、BOD値の算出が終了して不要となる保管容器54を受け取る排出ラック21を更に備える。
また、D5測定器4は、曜日ラック20a〜20eから保管容器54を取り出す取り出し手段40、保管容器54内の試料液の溶存酸素量であるD5値を測定する第二測定手段としてのD5測定手段41、D1値とD5値とのBOD値を算出するBOD算出手段42、D5値の測定が終了した保管容器54を排出ラック21に排出する排出手段43を備える。
また、D1測定器3および収納庫2は、保管容器54を受け渡し可能に接続されている。また、収納庫2およびD5測定器4は、保管容器54を受け渡し可能に接続されている。供給手段37と取り出し手段40とは、収納庫2を基準に自動で処理を実行する。
これらの手段のそれぞれは、各手段で実行するのに必要な機械的・電気的機構を備えて、所望の工程を実行する。
(BOD自動測定装置の処理手順)
次に、BOD自動測定装置1の処理手順について図1、図2を用いて説明する。図2は、D1測定器3、収納庫2およびD5測定器4の全体で行なわれる処理の全てをフローチャートとして示している。
まず、ステップST1にて、測定対象となる工場排水や河川水などの試料液(原液)が収容された原液容器50が、原液容器設置工程30の設置台に設置される。この原液容器50は、人的作業によって設置されるが、もちろんクレーンやコンベヤによって自動で設置されても良い。
次いで、ステップST2にて、希釈手段31は、原液容器50に収容されている試料液を希釈容器51に注入し希釈する希釈工程を実行する。希釈工程は、JIS K 0102:2008(以下「JIS規格」と称する。)に規定された希釈水を用いて試料液を希釈容器51内で薄めることで実行される。希釈手段31は、JIS規格に定められる仕様に基づいて、試料液を所定の希釈倍率に希釈する。この希釈工程において、原液容器50や希釈容器51の開口部に嵌め込まれている栓を引き抜く必要がある。
次に、ステップST3にて、待機手段32は、希釈容器51から試料液を注入された待機容器52を、所定時間以上に渡って待機させる。これが、待機工程である。待機工程において、待機手段32は、JIS規格に定められる所定時間以上に渡って、待機容器52を待機させる。この待機時間が不十分であると、D1値が不十分な希釈状態で測定されて、結果としてBOD値が不正確な値で算出されるからである。
次に、ステップST4にて、D1測定手段33は、待機容器40内で待機された試料液を後の図を用いて後述するD1測定容器53へ注入し、D1値を測定する。これは、第一測定工程としてのD1測定工程である。D1測定手段33は、JIS規格に定められる仕様に基づいて、公知の手段等を用いてD1値を測定する。測定されたD1値は、所定の記憶部に測定データとして記憶されたり、所定の記録用紙に測定データとして印刷されたりする。
また、ステップST1〜ST4と並行して、ステップST5にて、保管容器54が保管容器供給手段34によって供給される。図2では、ステップST4とステップST6との間において、ステップST5が処理されるように表されているが、ステップST4以前においてステップST5が処理されても良い。要は、ステップST6の前に、ステップST5の処理が終了し、D1値の測定が終了した試料液が、収納庫2に収納されるのに用いられる保管容器54に詰め替えられれば良い。なお、保管容器54は、人力によって供給されても良い。あるいはベルトコンベアやクレーンなどで、保管容器54が供給されても良い。
次に、ステップST6にて、詰め替え手段35は、D1測定容器53に収容されたD1値が測定された試料液を、保管容器供給手段34から供給される保管容器54に詰め替える。これが詰め替え工程である。保管容器54は、マガジンなどに設置されており、複数の保管容器54が設置されたマガジン80が、その後収納庫2の曜日ラック20a〜20eに送られる。
また、この詰め替え工程においても、保管容器54の開口部に嵌め込まれている栓を引き抜く栓抜き工程を必要とする。栓が抜かれた保管容器54に、D1値が測定された試料液が投入される。この作業によって詰め替えが実行される。
次に、ステップST7にて、密栓手段36は、D1値の測定が終わった試料液を収容する保管容器54の開口部を密栓する。これが密栓工程である。密栓手段36が備える図示されないロボットアームが、保管容器54の開口部に合わせて栓54aを設定し、その栓を開口部に押し込んで密栓する。この密栓によって、D1値の測定が終了した試料液を収容する保管容器54は、外部の雰囲気の影響を受けることが無くなり、数日後の溶存酸素量を測定するに際して、保管容器54内部(すなわち試料液そのもの)のみに依存した結果が測定されることになる。密栓された保管容器54は、収納庫2において保管される場合に、試料液が含む微生物などによって消費されることのみで溶存酸素量を変化させる状態で保管される。
次に、ステップST8にて、供給手段37は、密栓された保管容器54を、収納庫2に供給する。これが供給工程である。収納庫2は、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eを備えている。供給手段37は、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eに、保管容器54を供給する。
次に、ステップST9にて、収納庫2は、供給手段37で供給された保管容器54を所定時間保管する。これが保管工程である。
次に、ステップST10にて、取り出し手段40は、収納庫2から保管容器54を取り出す。このとき、D5値を測定するD5測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックから、取り出し手段40は、保管容器30を取り出す。これが取り出し工程である。D5値を測定するD5測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックに、D1値が測定された後5日間保管された試料液を収容する保管容器54が収納されているので、D5測定曜日の5日前の曜日ラックから取り出される保管容器54が、D5値の測定対象の試料液である。また、取り出し手段40は、保管容器54の栓を開栓する。
次に、ステップST11にて、D5測定手段41は、保管容器54内の試料液をD5測定容器55へ注入しD5値を測定する。D5値は、試料液の5日後の溶存酸素量を示す値である。これが、第二の測定工程であるD5測定工程である。D5測定手段41は、D1測定手段33と同じく、D5測定容器55の試料液を、種々の公知手段を用いて溶存酸素量を測定する。この結果、D5測定手段41は、D5値を測定できる。D5測定手段41は、測定したD5値を所定の記憶部に測定データとして記憶させたり、所定の記録用紙に測定データとして印刷したりする。
更に、ステップST12にて、BOD算出手段42は、D1値とD5値との値に基づいてから、BOD値を算出する。これがBOD算出工程である。または、D5測定手段41が、D5値の測定に合わせて、このBOD値を算出しても良い。すなわち、D5測定手段41は、D5測定工程とBOD算出工程とを実行してもよい。BOD算出手段42は、算出したBOD値を、所定の記憶部に測定データとして記憶させたり、所定の記録用紙に測定データとして印刷したりする。この測定データを受けて、使用者は、対象となった工場排水や河川水の水質を知ることができる。
最後に、ステップST13にて、排出手段43は、試料液をD5測定容器55へ抽出した後の空の保管容器54を、排出ラック21に排出する。これが、排出工程である。排出ラック21には、BOD値の測定の全工程が終了した保管容器54が収納されることになるので、使用者は、手作業ないしは自動作業で、この不要な保管容器54を洗浄等の作業に回すことができる。
以上の一連の処理が実施されることで、測定対象となる試料液のBOD値が自動で測定され、工場排水や河川水の水質が測定される。
(自動栓抜き装置の概要)
以上のようなBOD自動測定装置は、その測定処理の特性上、多数の容器に嵌め込まれている栓を、高速かつ正確に(および複数の栓を同時に)抜く必要を有する。あるいはBOD自動測定装置のように、試料液が封入された多数の容器の栓を、流れ作業のようにして抜いていく必要がある装置や機器も多数ある。
実施の形態1の自動栓抜き装置の概要について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における自動栓抜き装置の正面図である。図3は、自動栓抜き装置100を正面から見た状態を示している。
自動栓抜き装置100は、支持部材101、第1軸部材102A、第2軸部材102B、第1引き抜き部材103A、第2引き抜き部材103B、第1連結部材104A、第2連結部材104Bと、を備える。更に、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、支持部材101の昇降に応じて、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bのそれぞれを基準に、容器の立脚方向に回動する。すなわち、これらの要素を備える自動栓抜き装置100は、昇降可能な支持部材101に加わる下降圧力によって生じる直線運動を、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bの回動運動に変換させることで、容器の栓を引き抜く。
支持部材101は、栓を有する容器(図3では図示せず)に対して昇降可能である。昇降制御部150は、支持部材101の昇降を制御する。自動栓抜き装置100は、整列される容器に対して設置される。このとき、容器の上方に自動栓抜き装置100(特に、実際に栓を引き抜く第1引き抜き部材103A、第2引き抜き部材103B)は、設置される。すなわち、支持部材101が下降することで、第1引き抜き部材103A等は、容器(特に栓)に近づき、支持部材101が上昇することで、第1引き抜き部材103Aなどは、容器から遠ざかる。
第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bのそれぞれは、支持部材101の昇降に対応する支点となる。すなわち、支持部材101が昇降する場合でも、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bのそれぞれは、その座標的位置を変化させない(但し、後述の基体が昇降する場合には、この昇降に伴って、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bのそれぞれは、その座標的位置を変化させる)。結果として、支持部材101が下降する際には、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bの位置を基準(支点)として、第1引き抜き部材103Aや第1連結部材104Aが屈曲するようになる。
第1引き抜き部材103Aは、第1軸部材102Aに直接的もしくは間接的に接続され、第1軸部材102Aの回動軸を基準に、回動可能である。同様に、第2引き抜き部材103Bは、第2軸部材102Bに直接的もしくは間接的に接続され、第2軸部材102Bの回動軸を基準に、回動可能である。
第1連結部材104Aは、第1引き抜き部材103Aと支持部材101とを連結する。第2連結部材104Bは、第2引き抜き部材103Bと支持部材101とを連結する。これらの連結によって、支持部材101を基準とすると、支持部材101のある位置から第1連結部材104Aとこれに接続する第1引き抜き部材103Aとが延伸している。同様に、支持部材101の別の位置から、第2連結部材104Bとこれに接続する第2引き抜き部材103Bとが延伸している。全体としてπの字状の外形を備えることになる。もちろん、自動栓抜き装置100が第3連結部材や第3引き抜き部材を備える場合には、πの字状以外の外形を有していてもよい。
第1引き抜き部材103Aは、その一部(特に好ましくはその先端)に、容器の栓の少なくとも一部に当接可能な第1爪部105Aを有している。同様に、第2引き抜き部材103Bは、その一部(特に好ましくはその先端)に、容器の栓の少なくとも一部に当接可能な第2爪部105Bを有している。この第1爪部105Aおよび第2爪部105Bが、実際に栓に当接しつつ栓を引き抜く。なお、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、第1引き抜き部材103Aや第2引き抜き部材103Bと別個の部材や要素ではなく、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれの一部であってもよい。
第1引き抜き部材103Aは、支持部材101の昇降に応じて、第1軸部材102Aを基準に、容器の立脚方向に回動する。第2引き抜き部材103Bも、支持部材101の昇降に応じて、第2軸部材102Bを基準に、容器の立脚方向に回動する。このとき、第1引き抜き部材103Aの回動によって第1爪部105Aが上向きに上がっていくようになり、第2引き抜き部材103Bの回動によって第2爪部105Bが上向きに上がっていくようになることで、栓が引き抜かれることになる。
また、自動栓抜き装置100は、支持部材101と第1連結部材104Aとを屈曲可能に接続する第1上部関節106Aと、支持部材101と第2連結部材104Bとを屈曲可能に接続する第2上部関節106Bと、を備える。第1上部関節106Aと第2上部関節106Bとは、相互に対応する。加えて、自動栓抜き装置100は、第1連結部材104Aと第1引き抜き部材103Aとを屈曲可能に接続する第1下部関節107Aと、第2連結部材104Bと第2引き抜き部材103Bとを屈曲可能に接続する第2下部関節107Bと、を備える。第1下部関節107Aと第2下部関節107Bとは、相互に対応する。
これらの関節の屈曲によって、例えば第1連結部材104Aと第1引き抜き部材103Aとが、異なる方向ベクトルに沿うようになる。すなわち、第1下部関節107Aと第2下部関節107Bとは、容器に対して離隔する方向に突出する。加えて、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、栓を持ち上げる方向に回動する。すなわち、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、容器の立脚方向に回動することになって、この回動によって栓を引き抜くことができる。
また、自動栓抜き装置100は、容器を栓の上昇方向と逆方向に押さえる押さえ板108を更に備える。この押さえ板108は、自動栓抜き装置100において回動などの動作を行う第1引き抜き部材103Aや第2引き抜き部材103Bと異なり、動作や位置が固定されている。この固定によって、第1引き抜き部材103Aや第2引き抜き部材103Bの回動の動作中(容器に対してその位置を変化させる)においても、押さえ板108は、容器に対しての位置や形状を変化させない。
このように変化しないことで、押さえ板108は、第1引き抜き部材103Aや第2引き抜き部材103Bによる引き抜き動作によって上昇してしまう容器を、上昇させずに押さえることができる。この結果、栓と容器の移動方向ベクトルが逆方向になって、栓が引き抜かれる際に容器がついてくることが無くなり、第1引き抜き部材103Aや第2引き抜き部材103Bは、確実に栓を引き抜くことができるようになる。
図4は、本発明の実施の形態1における自動栓抜き装置の透視斜視図である。
自動栓抜き装置100は、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bを固定する基体109を更に備える。基体109は、自動栓抜き装置100における栓を抜くのに必要となる要素をまとめつつ、これらの要素を機能させるための骨格である。第1軸部材102Aと第2軸部材102Bは、この基体109に接続されている。このため、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bと基体109との間では、相互の位置関係は変化しない。
同様に、押さえ板108は、基体109に接続されている。
自動栓抜き装置100は、この骨格となる基体109に接続する2枚の細い板材である押さえ板108を有している。すなわち、押さえ板108も基体109との間では、相互の位置関係が変化しない。
一方、第1引き抜き部材103A、第1連結部材104Aなどは、第1上部関節106Aや第1下部関節107Aの屈曲に応じて回動する。すなわち、第1引き抜き部材103Aなどの要素は、基体109との間では、相互の位置関係を変化させることを示している。言い換えると、第1上部関節106Aなどは、基体109と離隔して動作(屈曲)可能である。
以上のように、自動栓抜き装置100の骨格である基体109を基準として、第1軸部材102A、第2軸部材102B、押さえ板108は、固定されている。一方、第1引き抜き部材103Aなどは基体109に対して位置関係を変化させることができる。この分離した動作によって、支持部材101が下降するだけで、引き抜き部材等は支持部材101を基準として容器の栓を引き抜くと共に押さえ板108は、容器を下方向に抑えることができる。
なお、この基体109は、自動栓抜き装置100の一つのユニットとして把握されても良いし、全体として把握されても良い。すなわち、自動栓抜き装置100は、引き抜き部材等を備えた複数の基体109を連結させた状態でも良いし(この場合には、複数の容器の栓を同時並行的に抜くことができる)、引き抜き部材等を備えた単体の基体109を備えた状態でも良い。
(動作メカニズム)
次に、自動栓抜き装置100による栓を引き抜く動作のメカニズムを説明する。
図5は、本発明の実施の形態1における自動栓抜き装置の動作メカニズムのフロー図である。
図5は、左から順に、自動栓抜き装置100が容器110の栓112を抜く様子を示している。容器110に付している、「0」〜「8」の数字は、処理手順を示す。また、図の見易さを優先するために、符号については、手順0(ここで「0」は、容器110に付している数字と対応している)にのみ付している。また、各要素についても図の見易さを優先して、最小限の符号のみを付している。説明において使用する符号は、図3、図4と同様である。
容器110は、試料液やその他を収容可能であり、上部に開口部111を備えている。この開口部111の内側に、栓112が嵌め込まれている。まず、手順0において、容器110が自動栓抜き装置100の下方に設置される。例えば、容器110(図5では単数だが複数の容器でもよい)が、コンベアによって搬送されて自動栓抜き装置100の下方に設置される。図5は、単数の容器110に対応するように単数の自動栓抜き装置100が表されているが、容器110の数に合わせて複数の自動栓抜き装置100が用意されても良い。
なお、この栓112は、繰り返し使用される。つまり、栓112を抜くに当たって、栓112を損傷させたり壊したりしないことが求められる。もちろん、繰り返しの使用は、実際の使用者の人為的な取り決めによって定められればよく、繰り返し使用されなくても問題はない。
次に、手順1において、容器110の栓112に自動栓抜き装置100が近づくようになる。これは、基体109を下降させる制御部によって行われる。このとき押さえ板108は、容器110の栓112よりも大きな開口を有しており、この開口を通じて栓112を越えた押さえ板108が容器110に接触可能になる(例えば、押さえ板108は、容器110の肩部分に接触する)。
また、押さえ板108の上方に位置する第1爪部105Aおよび第2爪部105Bは、栓112の外周に当接する。もちろん、当接可能であればよく、基体109が下降してだけの状態(手順1)の際には、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bは、栓112の外周に対向する位置(栓112と離隔している)に下降するだけでもよい。
また、第1爪部105A、第2爪部105Bとの対向距離は、可変であって、栓112の種類によって容易に調整されることも好適である。なお、図5では、第1爪部105Aは、栓112の右側に当接し、第2爪部105Bは、栓112の左側に当接する。
ところで、栓112は、図6に示されるような構造を有していることが多い。図6は、本発明の実施の形態1における容器の正面図である。栓112は、容器110の開口部111に挿入される本体部113と、開口部111の外側に突出可能な鍔部114を備える。第1爪部105A、第2爪部105Bは、この鍔部114に当接する。特に鍔部114は開口部111の外側に突出可能なので、第1爪部105A、第2爪部105Bは、この鍔部114と本体部113との境界部分に、当接することでもよい。境界付近に当接するのであれば、第1爪部105A、第2爪部105Bが、鍔部114から本体部113にかけての屈曲部を活用して、栓112を持ち上げやすくなるからである。
また、手順0もしくは手順1の状態では、自動栓抜き装置100の支持部材101は基体109に対しての位置関係を変化させていない。すなわち、第1引き抜き部材103Aと第1連結部材104Aとは、第1下部関節107Aを介してほぼ直線状に延伸している。同様に、第2引き抜き部材103Bと第2連結部材104Bとは、第2下部関節107Bを介してほぼ直線状に延伸している。すなわち、自動栓抜き装置100のそれぞれの可動できる要素は初期状態にある。
図7は、この支持部材101などが基体109に対して位置関係を変化させていない初期状態を示している。図7は、本発明の実施の形態1における初期状態にある自動栓抜き装置の斜視図である。
図7より明らかな通り、基体109に固定されている第1軸部材102A、第2軸部材102Bおよび押さえ板108だけでなく、可動する他の要素(第1引き抜き部材103Aなど)も基体109に対する位置関係を変化させていない。
次に、手順2において、昇降制御部150は、支持部材101を下降させ始める。昇降制御部150は、油圧や空気圧などの機構を用いて支持部材101を下降させる。
支持部材101は、基体109に対して下降するが、第1軸部材102A、第2軸部材102Bおよび押さえ板108は、基体109との位置関係を変えない。このため、第1軸部材102Aの基体109への固定に対して、基体109に固定されていない第1連結部材104Aは、第1上部関節106Aによって屈曲する。この第1連結部材104Aの第1上部関節106Aにおける屈曲に合わせて、第1引き抜き部材103Aは、第1下部関節107Aによって屈曲する。すなわち、第1下部関節107Aの屈曲で、第1連結部材104Aと第1引き抜き部材103Aとの連結は、容器110から離隔する方向に折れ曲がる。
同様に、第2軸部材102Bの基体109への固定に対して、基体109に固定されていない第2連結部材104Bは、第2上部関節106Bによって屈曲する。この第2連結部材104Bの第2上部関節106Bにおける屈曲に合わせて、第2引き抜き部材103Bは、第2下部関節107Bによって屈曲する。すなわち、第2下部関節107Bの屈曲によって、第2連結部材104Bと第2引き抜き部材103Bとの連結は、容器110から離隔する方向に折れ曲がる。
これらの屈曲の結果、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、栓112に角度を持って当接するようになる。すなわち、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、その先端を、鍔部114と本体部113との境界における屈曲部に差し込むようになる。
次に、手順3において、昇降制御部150によって支持部材101が更に下降する。この下降によって、第1引き抜き部材103Aと第1連結部材104Aとは、第1下部関節107Aを基点に更に屈曲が進むようになる。同様に、第2引き抜き部材103Bと第2連結部材104Bとは、第2下部関節107Bを基点に更に屈曲が進むようになる。これらの屈曲が進むことで、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、その先端を更に鍔部114と容器110との間に差し込むことができるようになる。
第4手順においては、屈曲が更に進む。
次いで、手順5、手順6において、第1下部関節107Aと第2下部関節107Bとは、更に屈曲角度を大きくさせる。屈曲角度が大きくなることで、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれの先端は、上方を向くようになる。すなわち、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、上を向くようになる。このとき、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、栓112の鍔部114と容器110の間に差し込んでいるので、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bの上向きによって栓112を引き抜くようになっていく。
更に手順7に進むと、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、更に上を向くようになる(第1下部関節107Aおよび第2下部関節107Bの屈曲が進むことによる)。この結果、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bは、栓112を開口部111から更に引き抜くようになる。このとき、押さえ板108は、容器110の肩部を押さえているので、栓112の引き上げに伴って、容器110が上に上がることが防止される。この押さえ板108による容器110の下方への押さえつけも相まって、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bを用いて、確実に栓112を開口部111から引き抜くことができる。
この手順7にまで進んだ場合には、自動栓抜き装置100は、図8のような状態となる。図8は、本発明の実施の形態1における屈曲状態にある自動栓抜き装置の斜視図である。図8では、図の見易さを優先するために、最小限の要素にのみ符号を付している。文中では、図3などに付している符号を引用して説明する。
図8に示されるとおり、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、第1下部関節107Aおよび第2下部関節107Bのそれぞれを基準に十分に屈曲している。結果として、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bを基準として、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、上向きの角度を有している。
すなわち、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、栓112の鍔部114を上向きの角度によって持ち上げることができるようになっている。
最後に手順8において、基体109が上昇する。栓112は、開口部111に嵌め込まれている嵌合摩擦を減少させているので、基体109の上昇によって簡単に開口部111から引き抜かれる。
最終的に、自動栓抜き装置100は、栓112を引き抜くことができる。
以上のように、自動栓抜き装置100は、支持部材101の下降のみで、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bによって栓112を開口部111から浮かせて、最終的には基体109の上昇によって開口部111から外れた栓112を引き抜くことができる。
自動栓抜き装置100は、余分な機構や余分な動作付与を必要としないので、作業エラーも少なく、確実に栓112を引き抜くことができる。結果として、栓112を損傷させることも少ない。このため、栓112は、繰り返し使用することができる。加えて、自動栓抜き装置100は、そのメンテナンスに要する手間や費用も少ない。付与動作が単純であるために、装置としての故障も少なくなる。
次に、各部の詳細について説明する。
(基体)
基体109は、自動栓抜き装置100に必要な骨格である。基体110は、固定される要素(第1軸部材102Aなど)および可動する要素(第1引き抜き部材103Aなど)を備える。すなわち、基体109は、自動栓抜き装置100の最小単位の外形を形成する。もちろん、基体109は、固定される要素と可動する要素とを収容(取り付け)できればよいので、これらの要素の外部に設けられなければならないわけではない。
基体109は、金属、合金、樹脂、木材、その他の素材で形成されれば良い。また、固定される第1軸部材102Aなどは、基体109にねじ止め、接着、溶接などで接続される。
自動栓抜き装置100は、複数の基体109(および基体109が備える要素)を備えることで、複数の容器110の栓112を同時に抜くことができる。また、基体109は、図5の手順0、手順8にあるように、容器110の栓112に対して昇降可能である。下降することで、必要な要素を栓112に近づけ、上昇することで、開口部111から引き抜かれた栓112を容器110から完全に外すことができる。
また、基体109は、この昇降あるいは支持部材101の昇降に必要となる電気信号を受けることができる。このため、この電気信号を受けるための電気コードや電気配線を備えていてもよい。
(支持部材)
支持部材101は、第1連結部材104Aおよび第2連結部材104Bを接続すると共に昇降可能な要素である。支持部材101は、第1上部関節106Aを介して第1連結部材104Aを接続し、第2上部関節106Bを介して第2連結部材104Bを接続する。
支持部材101は、基体109と分離した要素であるので、基体109との位置関係を変化させながら昇降する。このため、支持部材101が下降する際には、基体109に対して下降することになる。この支持部材101は、下降することで、接続している第1連結部材104Aおよび第2連結部材104Bを、第1上部関節106Aおよび第2上部関節106Bを基準に屈曲させる。
また、第1連結部材104Aは第1下部関節107Aを介して第1引き抜き部材103Aと連結する。さらには、第1引き抜き部材103Aは、第1軸部材102Aに接続しており、この第1軸部材102Aは基体109に固定されている。このため、第1連結部材104Aが支持部材101の下降を受けると、基体109に固定されている第1軸部材102Aの固定によって、第1連結部材104Aと第1引き抜き部材103Aとは、第1下部関節107Aを基点に外側に膨らむように屈曲することになる。
第2連結部材104Bと第2引き抜き部材103Bも同様である。
このように、支持部材101は、その下降のみによって、第1連結部材104Aと第1引き抜き部材104Bとの連結を屈曲させるようになる。あるいは、支持部材101は、その上昇のみによって、第1連結部材104Aと第1引き抜き部材104Bとの連結を伸ばすことができる。第2連結部材104Bなどに関る連結においても同じである。
支持部材101は、基体109やその他の部材と同様の素材で形成されれば良い。また昇降制御部150と支持部材101は直接的もしくは間接的に接続しており、必要な昇降圧力の付与を受ける。
(連結部材)
第1連結部材104Aは、支持部材101および第1引き抜き部材103Aと、その両端において接続する。第2連結部材104Bも、支持部材101および第2引き抜き部材103Bと、その両端において接続する。
第1連結部材104Aおよび第2連結部材104Bのそれぞれは、支持部材101の下降にともなう力を、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれに伝える役割を有する。更に、この力を伝える際に、第1下部関節107Aおよび第2下部関節107Bによって、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれと共に、外側に膨らむように屈曲する。
第1連結部材104Aおよび第2連結部材104Bのそれぞれは、基体109と同様の素材で形成されれば良い。
(引き抜き部材および爪部)
第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、容器110の栓112に当接して実際に引き抜く際に用いられる要素である。第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれは、第1軸部材102Aおよび第2軸部材102Bを基準として、第1下部関節107Aおよび第2下部関節107Bの屈曲によって、回動する。この回動によって、当接している栓112を引き抜くことができるようになる。
第1引き抜き部材103Aは、第1爪部105Aを備えている。同様に、第2引き抜き部材103Bは、第2爪部105Bを備えている。一般的には、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bの先端に備わることが好適である。あるいは、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのそれぞれの先端部位が、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bとして把握されても良い。先端であることで、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれが、栓112に当接して栓112を引き抜くことができるようになるからである。
もちろん、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bの先端以外の場所に備わってもよい。
第1引き抜き部材103A、第2引き抜き部材103B、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれは、基体109と同様の素材で形成されれば良い。
(関節)
第1上部関節106Aは、支持部材101と第1連結部材104Aとを接続する。第2上部関節106Bは、支持部材101と第2連結部材104Bとを接続する。関節であるので、屈曲(一種の回動)が可能である。例えば回転可能な蝶番をその要素として有してもよい。
第1下部関節107Aは、第1連結部材104Aと第1引き抜き部材103Aとを接続する。第2下部関節107Bは、第2連結部材104Bと第2引き抜き部材103Bとを接続する。関節であるので、上部関節も、屈曲(一種の回動)が可能である。例えば回転可能な蝶番をその要素として有してもよい。
これらの上部関節や下部間接は、基体109と同様の素材で形成されれば良い。
なお、連結部材や引き抜き部材の屈曲とは、これらの連結部分である関節(上部関節および下部間接)が屈曲することであって、連結部材(第1連結部材104Aなど)や引き抜き部材(第1引き抜き部材103Aなど)が、その部材の途中の位置において折れ曲がることを指すのではない。
また、第1、第2は、同様の機能や構成を有する部材を区別するために用いているのであって、特段の限定を示すものではない。また自動栓抜き装置100は、第3、第4の同様の要素(例えば、第3引き抜き部材、第3連結部材など)を備えても良い。自動栓抜き装置100が、どれだけの数の部材を備えるかは、対象となる栓の特性や使用者の便宜に応じて、適宜定められれば良い。
また、明細書中において、連結部材や引き抜き部材などの第1、第2などの語を含まない用語は、第1連結部材や第2連結部材などの同じ要素の総称である。
また、第1引き抜き部材103Aと第2引き抜き部材103Bとは、栓112を挟んで相互に対向する。
(押さえ板)
押さえ板108は、容器110を押さえることで、栓112の引き抜きに伴って容器110が上昇するのを防止できる。
図4に示されるとおり、押さえ板108は基体109に固定されており、基体109がその位置を変えない間に、第1引き抜き部材103Aや第1連結部材104Aなどが屈曲して基体109に対する位置関係を変化させても、押さえ板108は、基体109に対する位置関係を変化させない。すなわち、容器110に対する位置関係も変化させないので、容器110を押さえることができる。
(制御部)
また、昇降制御部150などの昇降を制御する制御部を、自動栓抜き装置100は備えても良い。この制御部は、図3などにおいては図示されていないが、自動栓抜き装置100がその他に必要な部材と共に一つの装置として組み上げられる場合に、操作盤などと共に組み込まれる。
制御部は、ハードウェアで構成されても、ソフトウェアで構成されても、これらの混在で構成されても良い。例えば、上昇を制御するプログラミングされたソフトウェアは、制御部に備わっている。
以上のように、実施の形態1における自動栓抜き装置100は、容器110の開口部に嵌め込まれている栓112を確実かつ容易に抜くことができる。加えて、栓112を損傷させることもないので、栓112は、繰り返し使用できる。特に、自動栓抜き装置100は、支持部材101(および基体109)の昇降という力を付与するだけで、栓112を引き抜くことができるので、作業効率が高く、メンテナンスの手間も低減するメリットがある。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2における自動栓抜き装置100は、種々の機能を追加したものである。
(栓への振動の付与)
第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bの少なくとも一方は、栓112に対して振動を付与可能であることも好ましい。特に、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bのそれぞれが、栓112に当接している期間において、振動を付与可能であることが適当である。この振動が付与されることで、栓112と開口部111との嵌合力が弱まって、栓112が抜けやすくなるからである。
例えば、第1引き抜き部材103Aおよび第2引き抜き部材103Bのいずれかがバイブレーション発生部を有しており、このバイブレーション発生部による振動が、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bを通じて栓112に伝導する。
特に、第1爪部105A、第2爪部105Bが栓112の鍔部114に当接している状態および図5の手順3〜7の状態の少なくとも一方において、第1爪部105A、第2爪部105Bは、栓112に振動を付与することで、栓112と開口部111との嵌合を緩める効果を発揮できる。これは、コルクなどの栓を抜くときに、コルクを揺らせることで栓が抜けやすくなることと同様である。
付与される振動は、様々なパターンがあってもよい。例えば、図5における手順3、4のように、栓112に第1爪部105A、第2爪部105Bが当接し始めた状態では、付与される振動は大きく、手順5、6、7のように栓112が引き抜かれる状態となった場合には、付与される振動が小さくてもよい。あるいは、この逆の振動パターンが付与されても良い。このように、様々な振動パターンでの振動が、第1爪部105A、第2爪部105Bから栓112に付与されることで、栓112が抜けやすくなる。
もちろん、振動は、発生可能および付与可能であって、必ずしも必須の構成要素ではない。
(爪部の形状の工夫)
図9は、本発明の実施の形態2における爪部の模式図である。爪部105は、第1爪部105Aおよび第2爪部105Bの総称である。図9(a)は、爪部105が栓112の側面に到達した状態を示しており、図9(b)は、下部間接107の屈曲によって爪部105が上に向き始めた状態を示しており、図9(c)は、下部関節107の屈曲によって爪部105が栓112を引き抜き始めた状態を示している。動作手順としては、図5を用いた説明の場合と同様である。
ここで、図9に示される爪部105は、直線的に延伸する先端を備えている。このような直線的に延伸する先端を備えることで、爪部105は、栓112の本体部113と鍔部114との境界部分(これは容器110と鍔部114との境界部分でもある)に入り込みやすくなる。この結果、爪部105は、栓112を開口部111から引き抜きやすくなる。
また、図10に示されるように、爪部105は、球状の少なくとも一部の外形を有する先端部130を有していることも好適である。図10は、本発明の実施の形態2における爪部の模式図である。図10(a)は、爪部105が栓112の側面に到達した状態を示しており、図10(b)は、下部関節107の屈曲によって爪部105が上に向き始めた状態を示しており、図10(c)は、下部関節107の屈曲によって爪部105が栓112を引き抜き始めた状態を示している。
図10(a)では、爪部105は、栓112の外周に沿った状態である。この後爪部105が栓112に当接する。更に、下部関節107が屈曲することで、爪部105の先端が上を向き始める。ここで、先端部130は、球状の一部の外形を有する。図10では、半球形状の外形を有している。このような球状の先端部130は、栓112の本体部113と鍔部114との境界部分に入り込みやすい。加えて、鍔部114を持ち上げやすくなる。
このような球状の先端部130は、鍔部114の下面を支えるようになって、図10(c)のように、下部関節107の屈曲が更に進むと栓112を、容易に引き抜くことができるようになる。
図9のように先端がとがっている場合に比べると、球状の先端部130を有する爪部105は、鍔部114に対して力を加えやすく栓112を持ち上げやすい効果を奏する。また、栓112を損傷させにくいメリットも生じさせる。
なお、球状の少なくとも一部の外形を備える先端部130であるので、球状でも半球状でも、その他の突出部でも、様々な外形を有して、爪部105の表面から突出する部位であれば、どのような先端部130であってもよい。
以上、実施の形態2における自動栓抜き装置100は、種々の工夫によって、栓112を更に抜きやすくできる。合わせて、栓112を損傷させにくい効果も発揮できる。
(実施の形態3)
実施の形態1、2で説明した自動栓抜き装置100は、容器110から栓112を引き抜く必要のある様々な装置や機器に好適に適用される。
例えば、実施の形態1で説明したBOD自動測定装置に適用される。このような自動測定装置は、試料を収容した多数の容器の栓を抜く必要がある。試料を測定する必要があるからである。すなわち、実施の形態1、2で説明した自動栓抜き装置100と、容器110内部の試料(試料液)を、所定の手順で測定する測定手段と、測定された結果を表示する表示手段を備える自動測定装置に適用される。
このような自動測定装置は、試料の種類および測定の種類によって、そのアプリケーション分野が定まる。上述の通り、試料が河川水などであって測定の種類がBOD値であれば、自動測定装置は、BOD自動測定装置である。あるいは、試料が加工液体であって測定の種類が細菌カウントであれば、細菌測定装置である。
このような様々な測定装置や測定機器は、栓のされた多数の容器を、同時並行的に、抜栓する必要がある。このためこれらの装置や機器には、実施の形態1、2で説明された自動栓抜き装置100が組み込まれて使用される。この結果、自動栓抜き装置100が組み込まれた測定装置や測定機器は、測定に要する時間を短縮できる。
以上、実施の形態1〜3で説明された自動栓抜き装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。