近年,低軌道衛星または静止衛星において撮影した高解像度画像等の観測データを地上に伝送する地球観測に係わるアプリケーションが重要視されている一方で,観測データの正確な取得位置や取得時刻を衛星で分析して地上に設けられた利用者端末に転送することが望まれている。
一方,地上では位置情報および時刻情報を容易に知る手段としてGPS衛星からの電波を受信して解析して位置を識別する手段が,車両,船舶,航空機などの測位手段として広く実用化されており,今後宇宙空間での利用も期待される。
このような一般的なGPS受信機では既に位置情報として10m未満の精度が得られている一方で,特殊な用途ではキネマティックGPSという名称で知られている搬送波の位相を追尾する高度な解析手段を用いることで,数cmオーダでの,極めて精度の高い位置情報が得られることも知られている。
衛星を用いる観測システムでは,観測を行う衛星が地表の画像データなどの観測データを取得して保存し,その衛星が地上の受信装置と通信が可能な軌道上の位置で観測データを上記地上の受信装置に送信する方法が用いられる。また,低軌道衛星による観測の対象としては宇宙または地球からの電磁波情報が考えられる。
なお,宇宙だけでなく,地上通信で用いられる各種の電波(テレビ放送用の電波,携帯電話用の電波,等)の受信状況を監視(測定)するために地上の監視対象となる地域の複数地点に観測装置を設けて電磁波を検出する観測システムや,地上の各地域の気象状況を表すデータ(温度,気圧,雨量,風向,風速等)や,地震を含む物理的な変動のデータを観測するために各地点に気象状況や変動を検出するセンサを備えた観測装置を設けて収集する多数の観測システムが考えられる。
これらの観測システムでは,一般的に観測装置の設置場所と観測データの利用者端末(データを収集するセンタ装置)は異なる場所に位置しており,観測点において取得された観測データが何らかの伝送媒体を用いて観測データの利用者端末(データを収集して解析を行う装置)まで届けられる。観測データの利用者端末がそのデータの正確な取得位置と取得時刻を知る手段としては,観測点に観測データを取得する装置とは別に位置情報および時刻情報を取得する装置を備えて,そこで得た位置情報,時刻情報を観測データと共にデータ利用者に知らせる方法が考えられる。
移動体の位置情報や時刻情報を取得する技術としてはGPSを用いる方法が知られている。その一例として図6に従来の移動体位置管理システムの例を示す(特許文献1参照)。図6では,移動体(車輛)80に移動体端末80Aと無線通信装置80Bとが搭載され,移動体端末80AにGPS情報から移動体80の位置を検出する位置検出手段(図示省略)と移動体の方位を検出する方位検出手段(図示省略)及び移動体の速度を検出する速度検出手段(図示省略)とを備え,方位検出手段で検出された方位の変位角が所定変位角よりも大きいと判定されると位置検出手段により検出された位置情報を無線通信装置80Bからパケット通信網82,専用回線83を介して管理局84へ送信すると,管理局84ではルータ85を介してサーバー86で受信される。サーバー86では受信された位置情報に基づいて地図上に車輛80の移動軌跡を表示する。
宇宙分野における低軌道衛星を利用した観測システムでは,観測衛星がGPS受信装置を搭載することで,観測データの取得位置と取得時刻を把握することが可能と考えられるが,衛星が低軌道衛星の場合,衛星自身が高速(秒速7Km以上)で移動するうえ姿勢変更や姿勢安定化のための機体のスピン運動を伴う。また,衛星に搭載するためには打ち上げ時の衝撃,宇宙線による影響,宇宙空間での温度変動に耐えるための装備や,重量の制限及び消費電力が制限される等の厳しい制約があるため,搭載可能な信号処理装置の能力には限りがあり,高度な信号処理を実現するための装置を搭載することが困難である。そのため,十分に高い信号処理能力が衛星に搭載できない場合,正確な観測データの実際の取得位置及び取得時刻と,GPS信号から得られる位置情報及び時刻情報の間で大きな誤差が発生するという問題があった。
また,上記図6の特許文献1に開示された技術は,各移動体(車輛)にGPSを搭載し,移動体の方位検出手段により検出した方位の変位角が所定角度より大きいことを検出するとGPSを用いた位置検出手段で検出した位置情報をパケットで管理装置に送信し,管理装置で移動体の移動軌跡を表示するものであり,各移動体にGPS信号を解析して位置を検出する装置を搭載する必要があり,その解析装置も,カーナビゲーションに搭載したものと同様の一般的な精度を持つ装置であって位置情報の精度は高いものではない。
同様に,上記した電波の観測や,気象状況の観測等を行う地上に設けた各種の観測システムでは,電磁波を検出する装置や各種のセンサを搭載した観測装置で検出した観測データを取得して利用者端末(収集装置)に送信する場合に,高い精度の時間情報(観測データの取得時間)や位置情報を転送することが望まれるが,各観測装置に一般に利用されているGPS受信装置を搭載して解析しても,高精度の時間情報や位置情報を得ることは上記の衛星の場合と同様に難しい。
すなわち,地上の移動体や固定装置にGPS受信装置を備えた観測装置を多数設けて観測情報(画像や測定データ等)を遠隔の装置(管理装置等)で収集するシステムにおいても,観測情報取得時の位置や時刻を高い精度で得るには,観測装置の処理能力を向上するために高精度の回路構成を備える必要があり,消費電力が大きくなる等の各種の要因から多数の移動体や固定装置にそのような回路を設けることはコスト的にも困難であった。
また,観測装置により観測データ(画像や電磁波等)を取得させてGPS受信装置によりGPS衛星からのGPS信号を処理して位置と時刻を求める処理を行う場合,GPS受信装置による位置情報・時刻情報の取得に関わる信号処理は予め観測装置に搭載したGPS受信装置が内蔵する処理アルゴリズムにより実行されるが,観測装置が遠隔(例えば,衛星に搭載している場合)や,改修,交換が困難な場所に設置されている場合には,信号処理のアルゴリズムの更新および変更が容易ではない。
本発明は観測装置により取得した画像やデータ等の観測データの取得位置及び取得時刻の情報を観測装置にGPS信号の解析手段を搭載しないでも高い精度で遠隔に設けた利用者装置(信号分析装置)で分析することが可能な観測システムを提供することを目的とする。
また,観測装置が地球を周回する低軌道衛星やその他移動体に搭載された場合でも,画像や電磁波等の観測データの取得位置情報や取得時刻情報を利用者装置で高精度で分析することができる観測システムを提供することも目的とする。
更に,電波の観測や,気象状況,監視画像等の各種の観測データの取得を地上に設置した観測装置で行う場合にも同様に観測装置に解析手段を搭載しないでも利用者の解析装置により観測データを取得した位置情報と時刻情報を高精度で分析することができる観測システムを提供することも目的とする。
本発明の,画像,電磁波,気象状況等を表す観測データを取得する観測データ取得部を備えた観測装置から遠隔の信号解析装置に観測情報を転送する観測システムでは,観測装置に観測データ取得部の観測データ取得のタイミングと同期してGPS衛星からの電波を受信する1つ以上のGPS信号受信用RF部と,受信したGPS信号を復調することなくアナログ信号波形をサンプリングして量子化することでデジタルデータ化する1つ以上のAD変換部と,AD変換部が出力するデジタルデータ化されたGPS信号と観測データ取得部からの観測データとを関連付けて保存するデータ保存部と,データ保存部に保存したデータを送信するデータ送信部とを備え,データ送信部から送信されたデータを受信する前記信号解析装置は,観測データとデジタルデータ化されたGPS信号とを抽出して,上記デジタルデータ化されたGPS信号を解析することで,上記観測データの正確な取得位置情報と取得時刻情報を生成するように構成する。
また,地表の画像や宇宙の電磁波の観測情報を取得する観測データ取得部を備えた観測衛星により取得した信号を地上に設けた信号解析装置に転送する観測システムにおいて,観測衛星に観測データ取得部の観測データ取得のタイミングと同期してGPS衛星からの電波を受信する1つ以上のGPS信号受信用RF部と,受信したGPS信号を復調することなく信号波形をサンプリングして量子化することでデジタルデータ化する1つ以上のAD変換部と,AD変換部が出力するデジタルデータ化されたGPS信号と前記観測データ取得部からの観測データとを関連付けて保存するデータ保存部とを設け,上記データ保存部に保存したデータを無線または光通信により地上局に送信する保存データ送信部を備え,地上局とネットワークを介して接続される信号解析装置は,前記地上局とネットワークを経由して受信した前記保存データから前記デジタルデータ化されたGPS信号と観測データとを抽出して,デジタルデータ化されたGPS信号を解析することにより観測データを取得した正確な位置情報と時刻情報を求めるよう構成する。
なお,上記観測データ取得部が観測データを取得するタイミングは,地上局との通信によって,予約されたスケジュールに従うように制御部が与えるように構成してもよい。
更に,観測装置は,デジタルデータ化されたGPS信号と観測データとを一つ以上のパケットで構成されるフレームとして合成するデータ合成フレーム化部を備え,データ保存部は合成されたフレームを格納するよう構成する。
また,観測装置を3次元的に空間や一定地域に複数配置し,各観測装置で観測データを取得し,データ保存部にデジタル化されたGPS信号と観測データとを合成して保存し,上記複数の観測装置のデータ保存部のデータを信号解析装置に送信することにより高精度な位置情報と時刻情報に基づいた観測データの集中解析を行うよう構成する。
本発明によれば,観測装置を地上に設置しても衛星などの移動体に搭載した場合の何れでも,観測データの取得時点でGPS衛星から受信したGPS信号のアナログ信号をデジタル化して観測データと共に1つ以上のパケットで構成されるフレームデータに変換して保存し,必要な時にネットワークを介して遠隔の信号解析装置に送信するため,信号解析装置において高精度の信号処理を行うことが可能になり,上記信号解析装置は観測装置が得た観測データの正確な取得位置と取得時刻を知ることができると同時に,観測装置が装備する回路構成を小型・軽量化することができる。
また,観測装置を衛星に搭載して各種の観測データを取得する場合には,GPS信号を解析する信号解析装置を地上に設置するため,衛星打ち上げ時の技術レベルや宇宙環境で利用可能な技術に制限されることなく,常に高度な計算能力を有する解析能力を有する解析装置が利用可能となり,高精度の観測データの取得位置情報と取得時刻情報を解析によって知ることができる。
更に,従来のようにGPS信号の解析装置が観測装置に搭載している場合には,新たなGPS信号の解析方法(解析プログラム)や,回路が開発されても,遠隔の観測装置(特に衛星に搭載された場合)の回路の交換や,新たな解析プログラムに更新することは困難であったが,そのような問題を解消することができる。
また,観測装置により取得したGPS信号をAD変換すると共に,観測データ(コンテンツ信号)がアナログ信号であっても同様にAD変換して,GPS信号のデジタル信号と共に伝送することで,観測データの解析も高い処理能力を持つ解析装置により解析することが可能となり,観測データとGPS信号の両方のデータの精度(信頼度)を向上することができる。
本発明の実施の形態を以下に図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の観測システムの基本構成を示す図である。1は画像や電磁波等の観測データを取得して,本発明による加工処理を行って保存して信号解析装置に送信する観測装置,10は複数のGPS衛星からのGPS信号を受信して周波数変換して中間周波数としてフィルタを通す等の処理を行うGPS信号受信用RF部,11は観測画像や観測電磁波等を取得して観測データを生成する観測データ取得部,12はGPS信号受信用RF部が出力する主に周波数変換が施されたGPS信号をデジタル信号に変換するAD(アナログ・デジタル)変換部,13は観測データ取得部がアナログ信号を出力する場合に,これをAD変換するAD変換部であり,観測データ取得部が直接デジタル信号を出力する場合には,このAD変換部13を使用しない。14は2つのAD変換部12,13からのデジタル信号を合成して決められたフォーマットの1つ以上のパケットから構成されるフレームに変換するデータ合成フレーム化部,15はデータ合成フレーム化部14から出力されるパケットを保存するメモリで構成するデータ保存部,16はデータ保存部15のパケットデータを通信回線を使用して送信する機能を有する保存データ送信部,17は主に観測データの取得タイミングを与えると同時に,各部の動作タイミングを制御する制御部であるが,例えば通信回線を用いて外部からの信号を受信することで制御情報を更新するようにしてもよい。なお,図1ではGPS信号受信用RF部10は1個だけ示すが,それぞれがアンテナを備えた複数のGPS信号受信用RF部を設けるように構成することができる。
2は観測装置1からネットワークを経由して受信したパケットデータをネットワークを経由して受信して信号解析をする信号解析装置,20は受信部,21は受信フレームからデジタル化されたGPS信号と観測データ信号とを抽出するフレームデータ分離部,22はデジタル化されたGPS信号を解析して時刻情報と位置情報を出力するGPS信号解析部,23は観測データ(データ信号)を解析して出力(または保存)する観測データ解析部,24は観測データ解析部23で解析した観測データをGPS信号解析部22で解析した時刻情報と位置情報と共に表示する観測データ表示部である。3はネットワークであり,観測装置1からの信号を受信する装置と信号解析装置2の通信路を形成するIPネットワークを含む各種のネットワークが含まれる。
観測装置1は衛星に搭載される場合と地上に設置(または地上を移動する移動体に設置)する場合の何れでもよく,GPS信号受信用RF部10はこの観測装置1により受信が可能な複数のGPS衛星からのGPS信号を制御部17が制御する観測データ取得部11の駆動タイミングと同期して受信動作を実行する。現在利用可能なGPS信号は,主として1.5GHz帯の周波数帯を用いた,スペクトル拡散(SS:Spread Spectrum)通信の一つであるCDMA(符号分割多元接続:Code Division Multiple Access)信号であり,通常複数のGPS衛星からのGPS信号が同じ周波数帯でGPS信号受信用RF部10により受信される。これらの複数のGPS衛星からの信号を受信した観測装置1内に設けられたGPS信号受信用RF部10は,上記GPS信号を搬送波周波数より低い中間周波数帯の信号に変換する。AD変換部12は上記中間周波数帯に変換されたGPS信号をAD変換することでデジタルデータに変換する。デジタルデータ化されたGPS信号はデータ合成フレーム化部14へ供給される。また,観測データ取得部11は内部に備える撮像装置(衛星または地上装置に搭載)によって撮影された画像情報や,観測対象である宇宙空間または地上からの電磁波等の観測データを出力する。観測データがアナログ信号である場合には,AD変換部13でデジタル信号に変換されるが,観測データ取得部が直接デジタル信号を出力する場合にはむろんAD変換部13は不要であり,直接出力はデータ合成フレーム化部14へ供給される。データ合成フレーム化部14はデジタルデータ化されたGPS信号と観測データとを予め決められたフォーマットで合成した,1つ以上のパケットから構成されるフレームに変換する。なお,複数のGPS信号受信用RF部10を設けた場合,各GPS信号受信用RF部10の出力はそれぞれに対応して設けたAD変換部12においてデジタル信号に変換され,データ合成フレーム化部14で合成される。
図2は上記フレームの構成例である。ここでは,パケットとして地上で普及しているIP(Internet Protocol)パケットを想定しているが,これに限られるものではない。図2に示す例では,フレームは複数のIPパケット(a,b1,b2,・・,bN)で構成され,各IPパケットはIPヘッダ部とデータ部とから構成される。図2のaはフレームの先頭のIPパケットであり,そのデータ部にデジタルデータ化されたGPS信号が挿入されると同時に,併せてフレーム化する観測データと対応付けるための固有ID(この例ではID♯1)を含める。b1は観測データを含むIPパケットであり,aのパケットと関連付けられた固有ID(ID♯1)が観測データ♯1が付加される。観測データが1パケットに収まらない場合は,図2に示すように,複数のIPパケットが連続したフレームが構成される。図2の例では,1フレームの観測データを含むパケットが観測データ♯1〜観測データ♯NのN個であり,それぞれのデータ部の観測データにパケットaと関連付けられた固有ID(ID♯1)が付加されている。なお,複数パケットでフレームが構成される場合,観測データの分割数やシリアル番号に関わる情報を付加してもよい。なお,図2の例では,1つのフレームにデジタルデータ化されたGPS信号が1パケットだけ含まれているが,複数のデジタルデータ化されたGPS信号に対応する複数のパケットを含めるようにできることはいうまでもない。
データ合成フレーム化部14で形成されたフレームはメモリで構成されるデータ保存部15に保存される。データ保存部15に保存されたデータは保存データ送信部16が地上局と通信が可能な時間に,制御部17による制御に従って地上局に送信される。送信される複数パケットで構成されるフレームは保存データ送信部16で伝送媒体に適応した信号に変調される。伝送媒体としては,無線(マイクロ波や光信号)や,有線(観測装置が地上に設置されている時)を用いることができる。
信号解析装置2では受信部20で上記伝送媒体に合わせて変調された送信データをまず復調し,フレームデータ分離部21でフレームフォーマットに従って元のパケットが含むデジタルデータ化されたGPS信号と観測データとに分離して,GPS信号解析部22においてデジタルデータ化されたGPS信号から正確な位置情報と時刻情報を解析する。このデジタルデータ化されたGPS信号のパケットと同じIDを有するパケットの観測データについて観測データ解析部23で解析を行う。GPS信号の解析方法は,GPS信号解析の公知の方法を採用することもできるが,上記したキネマティックGPSと呼ばれる高度な信号処理を用いることもできる。観測データ表示部24は観測データ解析部23の解析により得られた観測データをGPS信号解析部22により求めた取得時刻及び取得位置と関連付けて表示する。
次に本発明を衛星による観測に適用した実施例を図3,図4を用いて説明する。図3は衛星による宇宙の観測システムの説明図であり,図4は観測衛星の実施例の構成を示す。
図3において,5は地球,50a〜50dは複数の異なる軌道で地球を周回するように多数配置されたGPS衛星,51は地球を周回しながら地上の画像を取得する,もしくは深宇宙または地上からの電磁波を観測(測定)して取得した信号を地上の信号解析装置に送信することを目的とする観測衛星,51’は観測衛星が地上局との通信が可能な位置に移動した状態を表し,52は地球上に設けられた地上ネットワーク,53はは地上ネットワーク52を構成する交換局もしくは通信ノード,54は観測衛星との通信を行うための通信手段と地上ネットワーク52を構成する交換局もしくは通信ノードを備えた地上局(アンテナを含む)である。55は地上ネットワーク52の一つの通信ノード53に接続された信号解析装置である。なお,観測衛星51に搭載された画像や電磁波を取得して送信する機能に関係する構成は図3では図示省略されている。
図3の宇宙の観測システムが備える観測衛星51の構成を図4に示す。観測衛星51は,地球上の様子または宇宙の画像をカメラにより撮影した画像や,宇宙空間で検出される電磁波を観測データとして取得し,その時点で観測衛星51が受信する複数のGPS衛星からの受信信号をAD変換して観測データの信号と合成してフレームデータに変換して保存する。保存したフレームデータは観測衛星51がネットワーク52の中の通信手段を持つ地上局54と通信をすることが可能となる位置51’に到達すると保存されたフレームデータが地上局54に送信され,上記地上局54は更にネットワーク52を介して上記フレームデータを信号解析装置55に中継送信する。信号解析装置55は,受信したフレームデータからフレームフォーマットに従って元の観測データとデジタルデータ化されたGPS信号を復元・抽出する。上記デジタルデータ化されたGPS信号を解析することにより,観測データを取得した位置情報と時刻情報を高い精度で求めることができて,両者を関連付けた観測データの解析結果を表示することができる。
図4において,4は観測衛星(図3の51)であり,40はGPS信号デジタル化部であり,GPS信号デジタル化部40内の41a〜41dは4個設けられたGPS信号受信用RF(Radio Frequency) 部,42a〜42dは各GPS信号受信用RF部41a〜41dの出力が入力されてそれぞれの信号をAD変換するAD変換回路,43は衛星から撮影した観測画像信号または,衛星の受信器で受信した観測対象となる深宇宙からの電磁波等の受信信号を観測データとして得る(観測画像または観測電磁波がアナログ信号の場合はデジタル化するための手段を内蔵)観測データ生成部であり,例えば,画像を取得するためのデジタルカメラや電磁波測定装置に相当する。44はデータ合成フレーム化部,45はデータを保存するメモリで構成されたデータ保存部,46は保存データ送信部,47は地上からの制御信号を受信することが可能な受信部,48はトリガ出力のタイミングをスケジュールする制御部,49はGPS信号デジタル化部40のGPS信号デジタル化の動作及び観測データ生成部43の観測データ生成動作に関わるトリガ信号を生成するトリガ信号生成部であり,制御部48により制御される。
なお,図4では観測衛星4のGPS信号デジタル化部40内の4個のGPS信号受信用RF部41a〜41dがそれぞれのアンテナ410a〜410dから受信した複数のGPS衛星(図4では50a〜50c)からのGPS信号を受信する。位置が異なる4つのアンテナ410a〜410dから受信するGPS信号は,その位置の応じて微妙に異なる。各GPS信号受信用RF部41a〜41dから出力された信号はそれぞれに対応して設けられたAD変換回路42a〜42dへ入力されて,それぞれデジタルデータ化されてデータ合成フレーム化部44に供給される。データ合成フレーム化部44では,GPS信号受信用RF部41a〜41dで受信したGPS信号をデジタルデータ化した4つのデータと観測データ生成部43からの観測データを合成してフレームを生成する。
また,複数の観測衛星が同様の構成によって観測データを収集する場合において,各衛星には別途上記衛星で互いに時刻同期を取得する手段を搭載しておき,各衛星が観測データ取得およびサンプリングなどのクロックタイミングについて時刻同期をとりながら観測データを取得保存するように構成しても良い。このような場合に,衛星が互いに時刻同期を取得する手段としては,時刻同期用の捕捉受信回路を伴うGPS信号受信機を搭載する他,専用の時刻同期用無線機を搭載する方法が考えられる。
図4の観測装置4が地球上を周回している時に,GPS信号デジタル化部40のGPS信号受信用RF部41a〜41dはアンテナ410でGPS信号帯fGPS を受信する。この時のGPS電波は図4の例ではGPS衛星50a〜50cから受信された図4に(1) で示すような周波数帯(fGPS )である。各GPS信号受信用RF部41a〜41dのアンテナ410a〜410dから受信したGPS電波は,それぞれの増幅器411で増幅され,局部発振回路412からの周波数(fGPS −fIFもしくはfGPS +fIF)(但し,fIFは低域周波数である中間周波数)の発振信号と混合部413で混合されて,帯域通過フィルタ414で不要な帯域の周波数成分が除去されることで,中間周波数fIFの周波数に変換される。この中間周波数fIFのGPS信号は,各GPS信号受信用RF部41a〜41dから対応するAD変換回路42a〜42dにおいて中間周波数帯のGPS信号が直接サンプリングされ,量子化されてデジタル信号へ変換される。
なお,このAD変換回路42a〜42dの動作周波数は,一般には入力信号の最高周波数成分の2倍以上のサンプリング周波数が必要とされる。従って非常に高速なサンプリング動作が期待できる場合には,むろんGPS信号受信用RF部41における周波数変換は不要になる。また,入力信号が十分に帯域制限されている場合は,帯域サンプリングと呼ばれる公知の技術を利用できてサンプリング周波数を入力信号の最高周波数の2倍ではなく,帯域の2倍程度までサンプリング周波数を低下できることが知られており,その技術を使用することができる。具体的には,GPS信号については周波数帯は1.5GHz帯であるが,帯域幅自体は高々2MHzであり,高い動作周波数のAD変換は必要でなく,5MHzや,10MHz程度の周波数のAD変換であっても,GPS信号をデジタルデータ化することができる。
このGPS信号デジタル化部40によってGPS信号のデジタルデータ化する動作は,制御部48の制御によってスケジュールされるトリガ信号生成部49からのトリガ信号により駆動される。また,GPS信号デジタル化部40と観測データ生成部43の駆動タイミングはトリガ信号生成部49により同時刻に与えられる。
トリガ信号により観測データ生成部43はデジタルカメラを搭載している場合は観測データである画像データを生成し,観測の対象が電磁波である場合は,その時に測定した電磁波のデータを生成する。電磁波はアナログ信号として検出されるため観測データ生成部43に内蔵する図示省略されたAD変換回路によりデジタルデータ化された後に出力される。
AD変換回路42a〜42dでデジタルデータ化されたGPS信号はデータ合成フレーム化部44において観測データ生成部43からの観測データと上記図2に示すように合成され上記図2に示す構成のフレームにフォーマット化され(但し,GPS信号を含むパケットが複数個格納される),データ保存部45に保存される。この後,この観測衛星4が地上局(図3の54)と通信可能な位置に移動したタイミングで保存データ送信部46によりデータ保存部45からデータを読み出して送信する。
保存データ送信部46から送信されたデータは,宇宙ネットワーク(図示省略された衛星間のネットワーク),宇宙−地上局ネットワーク(図3の観測衛星51’と地上局54間)及び地上ネットワーク(図3の52)を介して観測データを解析する信号解析装置(図3の55)まで転送される。信号解析装置では,上記図1の信号解析装置2について説明した構成により,受信したフォーマット化観測データから,デジタルデータ化されたGPS信号と観測データ信号とが抽出されて,観測データが解析されると同時に,デジタルデータ化されたGPS信号が解析されることで,上記観測データの正確な取得位置と取得時刻を解析により得ることが出来て,上記観測データと関連付けて表示することが可能になる。なお,4個のGPS信号受信用RF部でそれぞれ受信されたGPS信号のデジタル化データが信号解析装置において抽出されて,分析することにより,高い精度の取得位置と取得時刻の解析を行うことが可能となる。
本発明は,地上の事象の観測システムに適用することができ,観測対象としては,ある地点における電磁波の受信状況や,気圧,雨量,風速等の気象状況等を観測するシステムとして構成することができる。
図5は地上に設置した電磁波を観測する観測装置の実施例の構成である。この図5の実施例では観測装置で電磁波を検出して分析する場合の例である。
図5において,6は地上観測装置,50a〜50cは地球を周回する多数のGPS衛星のうち,送信されるGPS信号が受信可能なものを示しており,60はGPS信号受信用RF部,61は電波観測用RF部,62は加算器,63はAD変換回路,64はデータ合成フレーム化部,65はデータ保存部,66は保存データ送信部,67は制御部,68はトリガ信号生成部である。図5の実施例では,GPS信号受信用RF部60は1個だけ設けているが,上記図4の実施例のように複数のGPS信号受信用RF部を設けることができることはいうまでもない。
図5の構成では,電波観測用RF部61が制御部67のスケジュールに従って発生するトリガ信号生成部68からのトリガ信号により駆動されると,図5の(2) で示すような観測電波(高周波であるf RFを中心周波数とする帯域)を観測する場合,アンテナ611で受信された電波は増幅器612で増幅後,混合器614において局部発振回路613からの周波数f=f RF−fIF2 もしくはf RF+fIF2 (fIF2 は観測電波用の中間周波数とする)と混合(乗算)され,帯域通過フィルタ615を通過した後,中間周波数fIF2 の信号が出力されて,加算器62に供給される。
一方,トリガ信号生成部68からのトリガ信号により電波観測用RF部61と同時に駆動されるGPS信号受信用RF部60でも,上記図4のGPS信号受信用RF部41と同様の構成により,複数のGPS衛星50a〜50cから送信された図5の(1) に示すGPS信号(周波数fGPS )を受信すると,増幅器602で増幅し,局部発振回路603から発生する周波数f(=fGPS −fIF1 もしくはfGPS +fIF1 :fIF1 は中間周波数)と混合器604で混合(乗算)され,さらに帯域通過フィルタ605を通過することで,中間周波数fIF1 のGPS信号が発生して,加算器62において観測電波を含む中間周波数fIF2 と加算される。GPS信号の中間周波数fIF1 と観測電波のfIF2 は図5の(3) に示すように互いにスペクトラムが干渉しないように配置されており, 加算器62から出力した2つの中間周波数の信号はAD変換回路63で信号波形をサンプリングして量子化することによりAD変換され,2つのデジタル信号はデータ合成フレーム化部64で定められたフレームフォーマットでフレームデータに変換され,データ保存部65に保存される。即ち,観測電波の情報とGPS信号の情報が併せてAD変換されてデジタル化されたフレームデータが形成される。
データ保存部65のデータは制御部67により制御される保存データ送信部66の動作で読み取られて送信される。保存データ送信部66は,有線または無線によりネットワーク(図示省略)を介して信号解析装置(図1の2)に転送される。転送されたGPS信号を含むデジタル化された観測電波データは,上記図1の信号解析装置2に示す構成におけるフレームデータ分離部21によってデジタルデータ化されたGPS信号とデジタルデータ化された観測電波に分離され,デジタルデータ化されたGPSデジタル信号を信号解析すると同時にデジタルデータ化された観測電波を解析することで,観測電波の高精度な取得位置情報及び取得時刻情報を関連付けた観測電波の解析結果を得ることができる。
3次元的な一空間内もしくは,地域内における放送電波や,携帯電話の電波の受信状況(伝搬状況)をモニタリングすることを目的として,図5に示した地上観測装置6を上記空間もしくは地域に複数個配置し,複数の地上観測装置6のそれぞれが測定した電磁波の測定データを,それぞれの測定データを取得時のデジタルデータ化されたGPS信号のデジタルデータと共に,信号解析装置に転送させることにより,信号解析装置は複数箇所の受信電波状況を総合的に信号処理することで,対象とする空間や地域における電磁波の発生状況を,効率よく高い精度で解析することができる。すなわち,複数の観測装置のデータ保存部のデータを一つの信号解析装置に送信させることにより観測データとGPS信号の集中解析を効率的に行うことが可能となる。