発明の詳細な説明
〔技術分野〕
本発明は、被検者内で、DNA修復およびNAD+合成を誘起するための方法および組成物に関する。特に、本発明は、リスベラトロール(3,5,4’−トリヒドロキシスチルベン)が、サルベージ経路を介して、具体的には、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性のアップレギュレーションによって、NAD+合成を誘起するという知見に関する。そこで、本発明は、被検者において細胞内でのNAD+合成の誘起を可能にする手段を提供する。本発明は、さらに、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する状態および疾病を予防および治療するための方法および医薬組成物に関する。
〔背景技術〕
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は、アルコール代謝、乳酸代謝、およびアミノ酸代謝ならびにエネルギー(ATP)生成などの複数の代謝過程において、必須の補助因子および電子トランスポーターとして作用する補酵素(NADH、NADP、NADPH)のピリジンヌクレオチドファミリーの親化合物である。NAD+は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、Sir2相同体(SIRT1)、およびNADグリコヒドラーゼ(CD38+)などの重要な複数のNAD依存性酵素にとって、必須の基質である。PARPは、DNAにおける二本鎖または一本鎖の切断の修復を媒介する核内酵素であり、また、NAD依存性脱アセチル化酵素SIRT1は、遺伝子サイレンシングおよび細胞の寿命延長に影響する。NADグリコヒドラーゼは、NAD+から環状ADP−リボース(cADPR: cyclic ADP−ribose)の生成を触媒し、細胞内のカルシウムシグナリングに影響する。これらの細胞機能およびその他の細胞機能におけるNAD+の役割は、NAD+が代謝活性の制御因子であることに加えて、NAD+が細胞の素過程のコントロールにおいて中心的な役割を果たすことを示唆している。
したがって、細胞質内および核内の両方でNAD+レベルを維持することは、核の完全性、細胞の生存、および細胞成長を持続させる上で非常に重要なことである。細胞のNAD+レベルの低下は、複数のタイプの細胞において死と一貫した相関関係があり、酸化ストレスに関連する変性障害において頻繁に見られる。酸化ストレスは、酸化ストレスおよび/または損傷を誘起する酸化性化合物、例えば、活性酸素種(ROS)、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、一酸化窒素、オゾン、チイルラジカル、炭素を中心としたラジカル(例えば、トリクロロメチルラジカル)などが、過剰に存在することを特徴とする。ROS、例えば、H2O2、O2・−、・OH、NOなどには有害な効果があり、この有害な効果の例としては、補助因子の酸化を介した特定の酵素の不活性化、脂質の多価不飽和脂肪酸(polydesaturated fatty acids)の酸化、タンパク質内におけるアミノ酸酸化、DNA損傷などがあげられる。酸素フリーラジカル活性は、神経変性、虚血再灌流障害、粥状動脈硬化、炎症、皮膚細胞(例えばケラチノサイトおよび線維芽細胞)におけるDNA損傷、DNA損傷に続いて起こる調節解除された細胞シグナル伝達を介した潜在的な腫瘍生成などといった、複数の病理過程の根底にある、複数の重要な分子カスケードの原因となる。
ROS生成の増加は、紫外線または電離放射線(x線、γ線)に対する曝露、化学薬品、感染、炎症、またはミトコンドリアの効率低下が原因になって起こるということが知られている。これらの因子の任意の1つまたはその組み合わせが、UVによって誘起される皮膚細胞の慢性または急性の損傷とともに、慢性の変性状態、例えば、正常な細胞の老化、皮膚の加速的な老化、アルツハイマー病、パーキンソン病などににおいて頻繁に見られる。アルツハイマー病およびパーキンソン病は、神経細胞の進行性の喪失を特徴とする、神経変性疾患の例である。脳細胞死の主要因は不明であるが、酸化ストレスおよび加速的なDNA損傷に関連する炎症性の変化によって媒介されているようである。
酸化損傷によって引き起こされるDNA鎖の切断には、細胞の重要なNAD+源を使い切る素早い修復応答性が必要である。NAD+が複数の酵素に対して基質として作用する一方で、NAD+の急速な代謝回転および枯渇に対し最も重要な寄与体は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)酵素のファミリーメンバー、特にPARP−1の活性化である。前述のように、PARP−1は、DNAに発生する二本鎖または一本鎖の切断によって活性化されるDNA結合性酵素であって、塩基除去修復(BER)過程において無くてはならないものである。DNA損傷の修復には多数のタンパク質が関与しているが、DNA病変の大部分はBERによって修復される。これに応じて、NAD+は、DNA修復において中心的な役割を果たし、酸化ストレスの間に、細胞内のレベルが急速に低下する。したがって、抗酸化能およびDNA修復の改善が、細胞の生存が促進および保持される一つのメカニズムである。
細胞質内および核内の両方でNAD+レベルを維持することが、核の完全性、細胞の生存、および細胞成長を持続させる上で非常に重要であることは明らかである。そこで、NAD+が欠乏する環境で細胞内のNAD+レベルを増加させることができる処理が、一般に必要である。酸化ストレスの治療法においては、大部分が、フリーラジカルの生成の予防(キレート療法)または分子損傷の低減(抗酸化療法)に重点をおいてきた。このような治療は、ROSによって引き起こされたDNA損傷を軽減する手段を提供しないので、細胞死および調節解除された細胞増殖(つまり腫瘍の増殖)を減少させる可能性が限られている。よって、慢性の酸化ストレスまたは急性の酸化ストレスに関連する疾病および状態において、DNA修復を亢進できる治療法が必要である。
〔発明の開示〕
1つの態様において、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって被検者においてNAD+の合成を誘起する方法であって、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を、被検者に対して投与することを包含する方法を提供する。第1の態様の一実施形態では、リスベラトロールの投与を介したNMNAT活性の上記アップレギュレートは、NAD+の前駆体であり、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)酵素の副産物であり、かつ、PARP酵素および哺乳類のサーチュイン酵素のファミリーメンバーの阻害剤であるニコチンアミド(NAM)の代謝を増加させる。NAMの代謝の上記増加は、PARP活性を相対的に増加させることでDNA修復を促進させるとともに、哺乳類のサーチュイン酵素活性を相対的に増加させることで。細胞の生存および長寿を促進させる。
第1の態様の一実施形態では、上記PARP酵素が、PARP−1またはPARP−2であり、上記哺乳類のサーチュイン酵素のファミリーメンバーが、SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、およびSIRT7からなる群より選択される。
第2の態様において、本発明は、酸化ストレスに関連する疾病または状態を防止または治療する方法であって、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を、被検者に対して投与することを包含し、上記投与は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、被検者においてNAD+の合成を誘起する方法を提供する。
第3の態様において、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、DNA損傷に関連する疾病または状態を防止または治療する方法であって、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を、被検者に対して投与することを包含する方法を提供する。
第2の態様および第3の態様の一実施形態では、上記疾病または状態が神経変性疾患である。第2の態様および第3の態様の一実施形態では、上記神経変性疾患がアルツハイマー病またはパーキンソン病である。
第2の態様および第3の態様の一実施形態では、上記疾病または状態が、皮膚の加速的な老化に関連する。
第2の態様および第3の態様の一実施形態では、上記疾病または状態が、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷であり、上記皮膚細胞が、ケラチノサイトおよび線維芽細胞を包含してもよい。
第2の態様および第3の態様の一実施形態では、上記リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体が、三剤併用療法として、治療有効量で投与される。
第2の態様および第3の態様の一実施形態では、DNA損傷に関連する上記疾病または状態が癌である。
第2の態様および第3の態様の一実施形態では、上記疾病または状態が、紫外光に対する曝露、電離放射線、化学薬品に対する曝露、感染、炎症、ミトコンドリアの効率の低下、またはこれらの組み合わせによってもたらされる。
第1態様、第2の態様、および第3の態様の一実施形態では、上記リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体が、トランス異性体である。
第1態様、第2の態様、および第3の態様の一実施形態では、リスベラトロールに機能的に同等な上記類似体の任意の1つによる方法が、リスベラトロールのヒドロキシル化類似体、リスベラトロールのメトキシル化類似体、シス−リスベラトロールグルコシド(シス−piceid)、およびトランス−リスベラトロール−3−O−β−グルコシド(トランス−piceid)からなる群より選択される。
第4の態様において、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによってNAD+の合成を増加させるために使用される医薬組成物であって、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含する医薬組成物を提供する。
第5の態様において、本発明は、酸化ストレスに関連する疾病または状態を予防または治療するために使用される医薬組成物であって、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含し、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、被検者においてNAD+の合成を誘起する医薬組成物を提供する。
第6の態様において、本発明は、DNA損傷に関連する疾病または状態を予防または治療するために使用される医薬組成物であって、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含し、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、被検者においてNAD+の合成を誘起する医薬組成物を提供する。
第6の態様の一実施形態では、上記疾病または状態が、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷であり、上記皮膚細胞が、ケラチノサイトおよび線維芽細胞を包含してもよい。
第6の態様の一実施形態では、上記リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体が、三剤併用療法として、治療有効量で投与される。
第7の態様において、本発明は、酸化ストレスに関連する疾病または状態を予防または治療するために使用される医薬組成物であって、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによってNAD+の合成を誘起する、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体と、有効量の、下記の(a)および(b)のうち1つまたは両方との相乗的な組み合わせを包含し、(a)は、少なくとも1つの抗酸化剤であり、(b)は、少なくとも1つのキレート薬である医薬組成物を提供する。
第7の態様の一実施形態では、NAD+の合成を誘起することができる少なくとも1つの薬剤が、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体である。
第7の態様の一実施形態では、上記抗酸化剤が、メラトニン、ビタミンE、ビタミンC、メチオニン、タウリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、L−エルゴチオネインN−アセチルシステイン(NAC)、ビタミンA、βカロチン、レチノール、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン−3−没食子酸、フラベノイド(flavenoid)、L−エルゴチオネイン、イデベノン、およびセレンからなる群より選択される。
第7の態様の一実施形態では、上記キレート薬が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸(ベルサンテ二ナトリウムカルシウム(calcium disodium versante))(CaNa2−EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、αリポ酸(ALA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプロール(BAL)、デフェロキサミン、D−ペニシラミン、ジメルカプロール、アミノフェノキシエタン−四酢酸(BAPTA)デファラシロックス(Defarasirox)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、2−ピリジンカルボン酸(ピコリン酸)、2,3−ピリジンジカルボン酸(キノリン酸)、2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)、キヌレン酸、キサンツレン酸、および8−ヒドロキシキノリン(およびこれらの機能性誘導体)からなる群より選択される。
第8の態様において、本発明は、酸化ストレスに関連する疾病または状態を治療するための方法であって、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによってNAD+の合成を誘起する、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体と、有効量の、下記の(a)および(b)のうち1つまたは両方との相乗的な組み合わせを含有する、治療有効量の医薬組成物を、被検者に対して投与することを包含し、(a)は、少なくとも1つの抗酸化剤であり、(b)は、少なくとも1つのキレート薬である方法を提供する。
第9の態様において、本発明は、DNA損傷に関連する疾病または状態を治療するための方法であって、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによってNAD+の合成を誘起する、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体と、有効量の、下記の(a)および(b)のうち1つまたは両方との相乗的な組み合わせを含有する、治療有効量の医薬組成物を、被検者に対して投与することを包含し、(a)は、少なくとも1つの抗酸化剤であり、(b)は、少なくとも1つのキレート薬である方法を提供する。
第8の態様の一実施形態では、上記疾病または状態が、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷であり、上記皮膚細胞が、ケラチノサイトおよび線維芽細胞を包含してもよい。
第8の態様の一実施形態では、上記リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体が、三剤併用療法として、治療有効量で投与される。
第8の態様および第9の態様の一実施形態では、NAD+の合成を誘起することができる少なくとも1つの上記薬剤が、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体である。
第8の態様および第9の態様の一実施形態では、上記抗酸化剤が、メラトニン、ビタミンE、ビタミンC、メチオニン、タウリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、L−エルゴチオネインN−アセチルシステイン(NAC)、ビタミンA、βカロチン、レチノール、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン−3−没食子酸、フラベノイド、L−エルゴチオネイン、イデベノン、およびセレンからなる群より選択される。
第8の態様および第9の態様の一実施形態では、上記キレート薬が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸(ベルサンテ二ナトリウムカルシウム)(CaNa2−EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、αリポ酸(ALA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプロール(BAL)、デフェロキサミン、D−ペニシラミン、ジメルカプロール、アミノフェノキシエタン−四酢酸(BAPTA)デファラシロックス、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)2−ピリジンカルボン酸(ピコリン酸)、2,3−ピリジンジカルボン酸(キノリン酸)、2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)、キヌレン酸、キサンツレン酸、および8−ヒドロキシキノリン(およびこれらの機能性誘導体)からなる群より選択される。
第10の態様において、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、被検者においてNAD+の合成を増加させるためのキットであって、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含するキットを提供する。
第11の態様において、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、被検者において酸化ストレスに関連する疾病または状態を治療するためのキットであって、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含するキットを提供する。
第12の態様において、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、被検者においてDNA損傷に関連する疾病または状態を治療するためのキットであって、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含するキットを提供する。
第12の態様の一実施形態では、上記疾病または状態が、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷であり、上記皮膚細胞が、ケラチノサイトおよび線維芽細胞を包含してもよい。
第12の態様の一実施形態では、上記リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体が、三剤併用療法として、治療有効量で投与される。
第10の態様、第11の態様、および第12の態様の一実施形態では、上記リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体が、トランス異性体である。
第10の態様、第11の態様、および第12の態様の一実施形態では、機能的に同等な上記類似体が、リスベラトロールのヒドロキシル化類似体、リスベラトロールのメトキシル化類似体、シス−リスベラトロールグルコシド(シス−piceid)、およびトランス−リスベラトロール−3−O−β−グルコシド(トランス−piceid)からなる群より選択される。
〔定義〕
本願において、「a」、「an」、および「the」という単数形には、文脈と明らかに矛盾しないかぎり、複数の部材に言及している場合が含まれる。例えば、「幹細胞(a stem cell)」という表現には、複数個の幹細胞が含まれる。
本願において、「...を包含する(comprising)」という表現は、「...を含む(including)」という意味である。この「...を包含する(comprising)」という表現の、例えば、「...を包含する(comprise)」および「...を包含する(comprises)」などという活用形は、対応する異なった意味である。したがって、例えば、タンパク質をコード化する配列「を包含する(comprising)」ポリヌクレオチドは、その配列だけからなっていてもよく、あるいは、該配列以外の1つ以上の配列を備えていてもよい。
本願において、「リスベラトロール」という言葉には、リスベラトロールのシス異性体、リスベラトロールのトランス異性体、またはこの2つの異性体の混合物のいずれをも包含される。この言葉には、自然に発生する活性剤および化学的に合成される活性剤の両方、ならびに実験室にあるような化合物が包含される。さらに、「リスベラトロール」という言葉がここで使用される場合、薬理学的に許容可能な、リスベラトロールの塩、エステル、アミド、プロドラッグ、ならびに誘導体および類似体を包含することが意図されている。
本願において、「相乗的」という言葉は、複数の薬剤の組み合わせによって生み出される相加的な効果より大きいことを指し、同じ薬剤を使用して「相乗的」効果がない場合に得られる効果を超えるものである。
本願において、「治療有効量」は、言及している特定の治療用化合物の、所望の治療効果を提供するために非有毒であって十分な量を、その意味合いに含む。必要とされる厳密な量は、例えば、患者の身全体の健康状態、患者の年齢、ならびに疾病の段階および重症度などの要因によって、被検者ごとにばらつきがある。
本画において、「神経変性疾患」という言葉は、脳、中枢神経系、および末梢を含めた身体の任意の幹部において、神経細胞の変性または不活性化が起こる、動物の疾病または状態を指す。
本願において、「酸化ストレス」という言葉は、一般的な文脈で使用されており、フリーラジカルまたは活性酸素種(ROS)(例えばα−ヒドロキシエチルラジカル、過酸化水素、ペルオキシラジカル、ヒドロキシラジカル、およびスーパーオキシドラジカル)の生成が亢進されている状態、および/または酸化促進物と抗酸化物との間で不均衡を引き起こす、抗酸化物に対する防御系の枯渇を指す。一般に、酸化ストレスには、酸化損傷の原因となる細胞内部または細胞環境におけるフリーラジカルの蓄積が伴う。酸化ストレスは、例えば紫外線または電離放射線に対する曝露、または化学薬品、異なる感染病原体による感染、炎症、またはミトコンドリアの効率の低下などの、生物的な(生きている)ソースおよび非生物的な(生きていない)ソースから発生することもある。
〔図面の簡単な説明〕
つぎに、本発明の好適な実施形態を、添付の図面を参照して記載するが、これは単なる例にすぎない。
図1は、ニコチンアミド(NAM)またはニコチン酸(NA)から始まる、サルベージ経路を介したNAD+の合成を示す図である。
図2は、トリプトファンから始まる、新生経路を介したNAD+の合成を示す図である。
図3は、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、細胞内のNAD+レベルに対する、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤1−MTの効果を示すグラフである。ヒトの胎児のアストロサイトを、1−MTだけ、または1−MT/L−トリプトファン(l−Tryp)と1−MT/ニコチン酸(Nic a)との組み合わせを用いて処理した。コントロールに比較すると*p<0.05、1−MTだけを用いた処理に比較すると**p<0.05、L−trypおよび1−MTを用いて処理した細胞に比較すると****p<0.05であった。
図4は、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、PARP活性に対する、異なる濃度の過酸化水素(H2O2)の効果を示すグラフである。H2O2を使用しなかった場合に比較するとαp<0.05、10μMのH2O2を使用した場合に比較するとβp<0.05、20μMのH2O2を使用した場合に比較するとχp<0.05、50μMのH2O2を使用した場合に比較するとδp<0.05であった。
図5は、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、細胞内のNAD+に対する、異なる濃度の過酸化水素(H2O2)の効果を示すグラフである。0μMのH2O2コントロールに比較すると*p<0.05、50μMのH2O2を使用した場合に比較すると**p<0.05、100μMのH2O2を使用した場合に比較すると***p<0.05であった。
図6は、異なる濃度の過酸化水素(H2O2)に曝露された後の、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を示すグラフである。0μMのH2O2コントロールに比較すると*p<0.05、10μMのH2O2を使用した場合に比較すると**p<0.05、50μMのH2O2を使用した場合に比較すると***p<0.05、100μMのH2O2を使用した場合に比較するとΨ<0.05であった。
図7は、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、H2O2によって媒介されるNAD+の枯渇に対する、ケルセチンの効果を示すグラフである。*p<0.05、また、H2O2だけを使用した場合に比較すると**p<0.005であった。
図8は、メラトニンを用いた処理をした後の、ヒトの培養神経芽細胞腫細胞における、細胞内のNAD+レベルに対する、H2O2の効果を示すグラフである。Ctrlに比較すると*p<0.05、100μMのH202の場合と20μMのMel + H202の場合とを比較すると**p<0.05、2μMのMel + H202 の場合と200μMのMel + H202の場合とを比較すると***p<0.05であった。
図9は、ビタミンEを用いて処理した後の、ヒトの培養神経芽細胞腫細胞における、細胞内のNAD+レベルに対する、H2O2の効果を示すグラフである。Ctrlに比較すると*p<0.05であった。
図10は、アスコルビン酸および第一鉄の存在下でH2O2を用いて処理した後の、ヒトの神経芽細胞腫細胞における、細胞内のNAD濃度に対する、親油性キレート剤であるクリオキノール(CQ)の用量反応の効果を示すグラフである。Ctrlに比較すると*p<0.05、H202 + Feの場合に比較すると**p<0.05、10μMのCQ + H202 + Feの場合に比較すると***p<0.05であった。
図11は、H2O2によって媒介されるNAD+の枯渇に対する、リスベラトロールの効果を示すグラフである。リスベラトロールは、細胞内のNAD+を、コントロール(*p<0.05)を超えて大幅に増加させた。ヒトの初代アストロサイトにおいてH2O2だけを使用した場合に比較すると**p<0.05であった。
図12は、新生経路を介した、リスベラトロールによって誘起されるNAD+の合成に対する、キヌレニン経路阻害剤1−MTの効果を示すグラフである。
図13は、NAD+の合成に対する、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)阻害剤であるタンニン酸の効果を示す、用量反応曲線のグラフである。ICは抑制濃度を示す。
図14は、リスベラトロールによって媒介されるNAD+の合成に対する、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)阻害剤であるタンニン酸の効果を示すグラフである。リスベラトロールを用いて処理しただけの場合に比較すると*p<0.05、コントロールに比較すると**p<0.05であった。
図15は、ヒトの脳のアストロサイトにおける、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性に対する、リスベラトロールの効果を示すグラフである。
図16は、ヒトの脳のアストロサイトにおける、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性に対する、各種濃度のリスベラトロールの効果を示す表である。
図17は、酸化ストレスがDNA損傷を誘起する、共通のメカニズムを示す図である。
図18は、酸化促進剤(H2O2)および鉄(Fe)に曝露した後、キレート剤(クリオキノール−CQ)および抗酸化剤(ビタミンE)を用いて処理した神経芽細胞腫細胞における、NAD+生成を示すグラフである。
図19a〜図19dは、細胞内のNAD濃度、+/−UV曝露、+/−補充をグラフに表したものである。図19e〜図19hは、上清のLDHの活性、+/−UV曝露、+/−補充をグラフに表したものである。
図20aは、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから24時間後のNADの回復時にRES、+/−PAM、+/−CLQ、+/−MELを用いて処理した後の、NAD濃度に対する、二剤併用の補充物の効果を示すグラフである。
図20bは、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MELまたはRES+CLQまたはRES+PAMを用いて24時間処理した後の、LDHの放出(細胞死)に対する、二剤併用の補充物の効果を示すグラフである。
図21は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから24時間後のNADの回復時に、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて処理した後の、NAD濃度に対する、三剤併用の補充物(選択された組み合わせ)の効果を示すグラフである。
図22aは、ケラチノサイトの免疫細胞化学を可視化したものであり、補充をせずにUV処理された細胞のDNA損傷(中央カラム)が、強く染色していることを示している。
図22bは、ケラチノサイトの、ICCで染色された各部分について、蛍光強度の半定量を示すグラフである。
図23aは、線維芽細胞の免疫細胞化学を可視化したものであり、補充をせずにUV処理された細胞のDNA損傷(中央カラム)が、強く染色していることを示している。
図23bは、線維芽細胞の、ICCで染色された各部分について、蛍光強度の半定量を示すグラフである。
図24は、ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES(100μM)またはMEL(100μM)またはCLQ(0.1μM)またはPAM(100μM)を用いて24時間処理した後の、DNA修復に対するモノセラピー補充の効果を示すグラフである。
図25は、ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES+MEL、RES+CLQ、RES+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する二剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。使用した濃度は、EC50/EC50、EC10/EC90、EC90/EC10にそれぞれ等価であった。
図26は、ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて処理24時間した後の、DNA修復に対する三剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。
図27は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES(100μM)またはMEL(100μM)またはCLQ(0.1μM)またはPAM(100μM)を用いて24時間処理した後の、DNA修復に対するモノセラピー補充の効果を示すグラフである。
図28は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MEL、RES+CLQ、RES+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する二剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。使用した濃度は、EC50/EC50、EC10/EC90、EC90/EC10にそれぞれ等価であった。
図29は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する三剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。
図30は、H2O2によって誘起される酸化ストレスを15分間与えた後、抗酸化剤(メラトニン)および/またはクリオキノール)、キレート剤および/またはリスベラトロールを用いて24時間かけて行った事前処理の、ヒトの胎児のアストロサイトにおける細胞内のNADレベルに対する効果を示すグラフである。*p<0.05、H2O2だけを使用した場合に比較すると**p<0.05、二剤併用療法によるそれぞれの処理に比較すると***p<0.05であった。
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、細胞内でのNAD+合成がリスベラトロール(3,5,4’−トリヒドロキシスチルベン)によって増加する、という知見に関連している。特定のメカニズムに制限または限定されるものではないが、発明者は、リスベラトロールが、サルベージ経路(図1に示す)を介して、具体的には、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性をアップレギュレートすることによって、NAD+の合成を誘起することを実証した。そこで本発明は、被検者において細胞内のNAD+の合成の誘起を可能にする手段を提供する。
発明者は、リスベラトロールの投与によるNAD+合成の誘起が、DNA修復を誘起し、細胞の生存および長寿を促進する手段を提供することも実証した。やはり特定のメカニズムに制限または限定されるものではないが、リスベラトロールによるNMNAT活性のアップレギュレーションは、NAD+の前駆体であり、かつ、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)酵素のファミリーメンバーの副産物であるニコチンアミド(NAM)の代謝を増加させる効果があると考えられる。NAMは、PARP酵素(例えばPARP−1)および哺乳類のサーチュイン酵素のファミリーメンバー(SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、およびSIRT7)の阻害物質である。したがって、リスベラトロールの投与によって誘起されるNAMの代謝が、利用可能なNAD+レベルを増加させるように作用し、その一方で、PARP活性およびサーチュイン酵素の活性の両方の抑制を低減する。なお、PARP活性の抑制を低減することによって、DNA修復が促進され、サーチュイン酵素の活性の抑制を低減することによって、細胞の生存および長寿が促進される。
さらに、本発明は、NAD+の合成の促進剤(例えばリスベラトロール)を、キレート薬および/または抗酸化剤と組み合わせて使用して、酸化ストレスに関連する状態の治療に対し相乗効果を生み出すことに関する。発明者は、酸化還元活性を有する金属をキレート化する薬剤と、残留性の酸素フリーラジカルによって引き起こされる損傷を減少させる抗酸化剤とからなる薬物併用療法に由来する利点が、NAD+の合成促進剤を包含することによって、相乗的に亢進される可能性のあることを実証した。この相乗効果は、必須の基質NAD+の生成が増加することによって、(少なくともPARP酵素活性の増加を介して)DNA修復が向上すること、および(少なくともサーチュイン活性の増加を介して)細胞の生存および長寿が向上するによって生まれると考えられる。
リスベラトロールとNAD+合成
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は、いくつかの異なる出発化合物から合成され得る。(図2に示す)「新生」経路では、NAD+が、必須アミノ酸トリプトファンから生成される。この経路には、トリプトファンからのキノリン酸の生成が伴う。なお、このキノリン酸は、ホスホリボース基の転移を通じて変換されて、ニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)になる。つぎに、アデニル酸基が転移されて、ニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)を形成する。つぎに、NaADのニコチン酸基がアミド化されてニコチンアミド基になり、NAD+を形成する。あるいは、ニコチンアミド、または予め形成された、ニコチンアミドを含有する化合物(例えばニコチンアミドリボシド)が、「サルベージ」経路(図1を参照)を介したNAD+の生成に用いられれる。新生経路またはサルベージ経路のいずれかにおける酵素の阻害により、NAD+が顕著に枯渇する。このことは、細胞のNAD+レベルを維持するためには、これらの経路がどちらも重要であることを明確に示している。
本発明は、被検者において、細胞内のNAD+の合成/レベルを増加させる方法を提供する。この方法は、治療有効量のリスベラトロール、またはそれと機能的に同等な類似体、もしくはリスベラトロール誘導体を、被検者に対して投与することを包含する。
本発明の方法によれば、リスベラトロール(3,5,4’−トリヒドロキシスチルベン、トランス−3,5,4’−トリヒドロキシスチルベン;3,4’,5−スチルベントリオール;トランス−リスベラトロール;(E)−5−(p型ヒドロキシスチリル)レゾルシノール、およびレゾルシノールとしても知られている)が、天然型で、例えばブドウの皮、ワイン、またはその他の植物由来の組成から単離された状態で、当該技術分野において公知の方法で、投与されてもよい(例えば、Lamuela-Raventos, J. Agric. Food Chem. (1995) (43): 281-283, and Wang et al. J Agric Food Chem. (2002) 50:431-435に記載の方法を参照。該文献の内容は参照によってここに引用されるものとする)。例えば、適切な溶媒(例えばメタノール)を使って粉末状の植物性物質を抽出し、つづけて濃縮し、水で希釈してもよい。適切な非極性有機溶剤(例えばヘキサン)を用いて洗浄した後、例えば酢酸エチルを使って、水層を分画してもよい。この酢酸エチルによる抽出物は、つぎに、溶出剤として例えばクロロホルム−メタノールを使って、シリカゲルクロマトグラフィーのカラムで分離してもよい。濃縮されたリスベラトロールを含有する画分を一つにまとめ、さらに、カラムクロマトグラフィーを実施してもよい。
上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、Moreno-Manas et al. Anal. Quim (1985) 81:157-61, Jeand et al. Am. J. Enol. Vitic. (1991) 42:41-46, Goldberg et al. Anal. Chem. (1994) 66: 3959-63, and Farina et al. Nat. Prod. Res. (2006). 20: 247-52に記載されているように(該文献の内容は参照によってここに引用されるものとする)、リスベラトロールを、例えば、2つの置換フェノールがスチレン二重結合を介して結合されるウィティッヒ反応を使って、化学的に合成してもよい。上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、本発明で使用するリスベラトロールを、業者(例えばSigma, St. Louis, Mo.)から入手してもよい。
本発明にしたがって使用するリスベラトロールは、シス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物の形態であってもよい。シス−リスベラトロールを、当該技術分野において公知の方法で(例えば、トランス−リスベラトロールを加熱または紫外線に曝露し、その後、HPLCによって分離し、さらに質量分析(mass spectrometry; MS)によって特定することによって)、トランス−リスベラトロールから調製してもよい。本発明では、機能的に同等なリスベラトロールの誘導体および類似体についても考察する。リスベラトロールの類似体とは、リスベラトロールに基づく化合物であって、化学修飾されたリスベラトロール化合物を形成するために、この親化合物に結合した置換基を有しているものである。置換基の例としては、C1−C3アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル)、CH2OH、ハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記ヒドロキシル基のうちの任意の1つ以上に、例えば保護基で、官能性を持たせてもよい。適切な保護基は当業者に知られている(“Protective Groups in Organic Synthesis" by Theodora Greene and Peter Wuts (third edition, 1999, John Wiley and Sons)を参照)。上記の構成の替わりに、上記ヒドロキシル基のうちの任意の1つ以上に、例えば、C1−C3アルキル(この場合にはエーテルが形成される)、またはカルボン酸基(この場合にはエステルが形成される)で、官能性を持たせてもよい。
上記化合物の例としては、リスベラトロールのヒドロキシル化類似体またはメトキシル化類似体などが挙げられる。上記機能的に同等なリスベラトロールの類似体は、シス−リスベラトロールグルコシド(シス−piceid)またはトランス−リスベラトロール−3−O−β−グルコシド(トランス−piceid)であってもよい。リスベラトロールの誘導体の一例としては、1つ以上のヒドロキシル基(通常は3−ヒドロキシル基)が単糖または二糖に共役結合している誘導体があげられる。一般に、3−ヒドロキシル基は、単糖の1位に共役結合していてもよい。リスベラトロールに共役結合してもよい糖類の例としては、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、およびガラクトースなどが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。本発明の方法において使用に適した、その他のリスベラトロールの誘導体および類似体については、例えば、米国特許第7026518号明細書、米国特許第6790869号明細書、国際特許出願公開第WO/2003/055444号明細書、国際特許出願公開第WO/2004/000302号明細書、および国際特許出願公開第WO/1999/003816号明細書に記載されている。なお、これらの特許文献の内容は参照によってここに引用されるものとする。当業者がこれらの文献を参照すれば、ここに記載されているリスベラトロールの誘導体および類似体が非限定的な例であること、また、本発明が、機能的に同等な効果を誘起することができる、その他のリスベラトロール誘導体および類似体の使用を包含することが理解できよう。
本発明では、リスベラトロールの薬学的に許容可能な塩およびその類似体についても考察する。S. M. Berge et al.は、J. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66:1-19で薬学的に許容可能な塩について詳細に記載している。この塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間にインサイツで調製可能であり、または遊離塩基機能を適切な有機酸と反応させることによって、別々に調製可能である。酸付加塩の代表的な例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロヨウ化物塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、ニトロ化塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸化塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などがあげられる。アルカリ塩またはアルカリ土類金属塩の代表的な例としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、さらに、非有毒なアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンの陽イオンなどがあげられ、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミンなどを含むが、これらの例に限定されるものではない。
本発明の方法によると、細胞内のNAD+の合成を誘起するために、治療有効量のリスベラトロールを被検者に投与してもよい。細胞内のNAD+は、当該技術分野において公知の方法で測定可能であり、例えばGrant and Kapoor, J. Neurochem. (1998) 70(4): 1759-1763に記載されている。細胞内のNAD+レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の技術を使って、測定可能である。このような測定方法は、例えばKlaidman et al., Anal Biochem (1995) 228:312-317に記載されている。なお、この文献の内容は参照によってここに引用されるものとする。上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、分光光度マイクロサイクリングアッセイを使用して、細胞内のNAD+レベルを測定してもよい。このような測定方法は、例えばNisselbaum and Green, Anal Biochem (1969) 27: 212-217 or Berofsky and Swan, Anal Biochem (1973) 53: 452-458に記載されている。なお、この文献の内容は参照によってここに引用されるものとする。例えば、組織/細胞のホモジネートを、NAD+と測定可能な化合物との反応を促進するために必須の成分を含有する、pH値を制御した(バッファ)溶液(反応混合物)中でインキュベーションしてもよい。この反応混合物は、例えばエタノール、アルコール脱水素酵素、フェナジンメトサルフェート、3−[4,5−ジメチルチアゾ−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド、(MTT)(ビシンバッファ溶液中)などを含有していてもよい。インキュベーションを適切な時間実行した後、適切な停止用試薬、例えばヨード酢酸で、反応を停止させ、試料中のNAD+レベルをミクロプレート読み取り装置で試薬のブランク値に対して測定して決定する。
NAD+依存性酵素は、DNA修復において、特に酸化ストレス条件下で、重要な役割を果たす。そこで、本発明は、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を、被検者に対して投与することを包含する、被検者においてDNA修復を誘起する方法を提供する。被検者におけるDNA修復の誘起は、1つ以上のポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)酵素のファミリーメンバーの活性亢進によって起こってもよい。PARP酵素の活性は、当該技術分野において公知の方法で測定可能である。例えば、Cheung and Zhang Anal Biochem (2000) 282: 24-28(この文献の内容は参照によってここに引用されるものとする)に記載されているように、PARP酵素活性を、ビオチン化されたNADを使って、シンチレーション近接アッセイ(SPA)によってアッセイしてもよい。上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、Karson et al., Anal Biochem (2004) 326 : 78-86またはPutt et al., Chem. Bio. Chem (2005) 6:53-55(この文献の内容は参照によってここに引用されるものとする)記載されているように、PARP酵素の活性を、NADの化学的な定量化を介して、酵素試験を用いて測定してもよい。例えば、プレートに蒔いた細胞または組織を洗浄し、つぎに過剰なNAD+を含有する適切な緩衝液を使って溶解させる。適切な緩衝液は、例えばMgCl2(10mM)、トリトンX−100(1%)、およびNAD+(20μM)を、トリス緩衝液(50mM、pH値8.1)中に含有していてもよい。NAD+はPARP酵素の唯一の基質であり、しかもこの反応の間に劣化するので、全体の酵素活性は、緩衝液中のNAD+の濃度の経時的な減少によって決定される。適切な期間のインキュベーションに続いて、消費されたNAD+の量を、上述のように、NAD(H)マイクロサイクリングアッセイによって測定する。
PARP酵素は、NAD+をアデノシン二リン酸リボース(ADPR)のドナーとして消費し、核タンパク質上で、例えばヒストンおよびPARP自身において、ポリ(ADP−リボース)を合成する。PARPの過度な活性化、特に酸化ストレスの間のPARPの過度な活性化は、細胞のNAD+の大幅な枯渇の原因になる可能性があり、このことが細胞の壊死につながる。本発明の方法にしたがってリスベラトロールを投与すれば、まずNAD+の合成を増加させて、そうすることによってPARPによって媒介されるDNA修復のための基質が利用できる可能性を増加させることによって、上記問題は解消され、二つ目に、ニコチンアミド(NAM)の代謝が増加することを介して、PARP活性のアクティブな阻害剤を除去するという効果を奏する。PARP−1は、DNA鎖の切断によって活性化され、塩基除去修復(BER)経路、単一鎖切断(SSB)経路、および二本鎖切断(DSB)経路などを含めた、複数のDNA修復経路に結び付けられている。二重ZnフィンガーのDNA結合領域を介して、損傷DNAにPARP−1が結合すると、PARP−1の活動を強力に活性化し、それゆえ、PARP−1がDNA損傷センサーとしても機能することを可能にする。PARP−2も損傷DNAによって刺激され、PARP−1およびX線修復相互補体グループ1(XRCC−1)との相互作用を介して塩基除去修復(BER)経路に結び付けられている。
ニコチンアミド(NAM)も、例えばSIRT1などの、哺乳類のサーチュインファミリー酵素の活性を阻害する(http://en.wikipedia.org/wiki/Sir2-note-1)。本発明の方法にしたがってリスベラトロールを投与すれば、一方で、NAMの代謝の増加を誘起することによってサーチュイン活性の抑制を低減させながら、NAD+の合成を増加させ、それゆえ、サーチュイン活性に必要な基質が利用できる可能性を増加させる。そこで、本発明は、リスベラトロールの投与によってサーチュイン活性を誘起する方法を提供する。
医薬組成物および投与経路
本発明は、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、NAD+を必要とする被検者においてNAD+の合成を増加させるために使用されてもよい。上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、本発明の医薬組成物は、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する疾病または状態を、予防する、あるいは治療するために使用されてもよい。
本発明の医薬組成物中のリスベラトロールは、シス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物の形態であってもよい。本発明の医薬組成物に適したリスベラトロールの類似体の例としては、リスベラトロールのヒドロキシル化類似体またはリスベラトロールのメトキシル化類似体などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。機能的に同等なリスベラトロールの類似体は、シス−リスベラトロールグルコシド(シス−piceid)またはトランス−リスベラトロール−3−O−β−グルコシド(トランス−piceid)であってもよい。本発明の医薬組成物に適したリスベラトロールの誘導体の一例としては、1つ以上のヒドロキシル基(典型的には3−ヒドロキシル基)が単糖または二糖に共役結合している誘導体が挙げられる。一般に、3−ヒドロキシル基は、単糖の1位にに共役結合していてもよい。リスベラトロールに共役結合してもよい糖類の例としては、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、およびガラクトースなどがあげられるが、これらの例に限定されるものではない。その他の適切なリスベラトロールの誘導体および類似体は、例えば米国特許第7026518号明細書、米国特許第6790869号明細書、国際特許出願公開第WO/2003/055444、国際特許出願公開第WO/2004/000302、国際特許出願公開第WO/1999/003816などに記載されている。なお、これらの特許文献の内容は参照によってここに引用されるものとする。当業者がこれらの文献を参照すれば、本発明の医薬組成物に適した、上述のリスベラトロールの誘導体および類似体は、非限定的な例であって、本発明は、機能的に同等な効果を誘起することができる、類似のその他のリスベラトロールの誘導体および類似体の使用を包含することが理解できよう。
残留性の酸素フリーラジカルによって引き起これる損傷を低減するために、酸化還元活性を有する金属および/または抗酸化剤をキレート化する薬剤からなる薬物併用療法は、NAD+の合成促進剤を包含することによって相乗的に亢進され得る。そこで、本発明は、NAD+の合成を促進するための少なくとも1つの薬剤と、少なくとも1つの抗酸化剤および/または少なくとも1つのキレート薬との相乗的な組み合わせを包含する、酸化ストレスに関連する状態および疾病を治療法するための医薬組成物を提供する。
NAD+の合成を促進するための薬剤を、抗酸化剤および/またはキレート薬を含有する組成物中に包含することによって、酸化ストレスを予防、治療、または軽減するための相乗効果が提供できる。好適な実施形態において、NAD+の合成を促進するための上記薬剤は、リスベラトロール、リスベラトロールの機能的類似体、またはこれらに相当するものである。特定のメカニズムに制限されるものではないが、酸化ストレス条件にある間NAD+が増加することは、NAD+依存性の他の酵素、例えばNADグリコヒドラーゼの機能にとって有益であるかもしれない。このことが、酸化ストレス下にある細胞に対してさらに薬効を提供する。上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、NAD+の合成を促進する薬剤は、NAD+に対する依存性を有する脱アセチル化酵素、例えばサーチュインファミリー酵素(例えばSIRT1)の活性を増加させる能力を有していて、該脱アセチル化酵素の必須な基質であるNAD+の生成の増加を介してPARP酵素活性を亢進させることによって、DNA修復の改善を促進してもよい。上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、NAD+の合成を促進する薬剤は、NMNAT活性の誘起を介して、NAMの代謝を増加させることもでき、こうすることによってPARP/サーチュインの阻害剤を除去し、上記酵素の活性をさらに誘起してもよい。
本発明の相乗的な組成物に適したキレート薬の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸(ベルサンテ二ナトリウムカルシウム)(CaNa2−EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、αリポ酸(ALA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプロール(BAL)、デフェロキサミン、D−ペニシラミン、ジメルカプロール、アミノフェノキシエタン−四酢酸(BAPTA)デファラシロックス、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)2−ピリジンカルボン酸(ピコリン酸)、2,3−ピリジンジカルボン酸(キノリン酸)、2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)、キヌレン酸、キサンツレン酸、および8−ヒドロキシキノリン(およびこれらの機能性誘導体)などがあげられるが、これらの例に限定されるものではない。一般に、キレート薬とは、酸化還元活性を有する金属と、錯体を形成することができるものであって、この錯体中では、一般に金属イオンが該キレート薬の2つ以上の原子に結合していて、こうすることによってヒドロキシラジカルの生成を低減させる。この結合は、配位結合またはイオン結合の任意の組み合わせであってもよい。キレート薬と結合して錯体を形成するかもしれない酸化還元活性を有する金属の例としては、Fe++、Cu+、Cr+++、Mn++、Co++、Ni++、Ag+などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
本発明の相乗的な組成物に適した抗酸化剤の例としては、メラトニン、ビタミンE、ビタミンC、メチオニン、タウリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、ならびにL−エルゴチオネインN−アセチルシステイン(NAC)、ビタミンA、βカロチン、レチノール、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン−3−没食子酸、フラベノイド、L−エルゴチオネイン、イデベノン、およびセレンなどがあげられるが、これらの例に限定されるものではない。その他の適切な抗酸化剤は、米国特許第2008015218号明細書に記載されており、該特許文献の内容は参照によってここに引用されるものとする。
本発明の医薬組成物は、治療上投与されてもよい。治療上の適用において、組成物は、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷を増加させると考えられる状態で、または既に酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する疾病に罹患している、もしくはそのような状態にある患者に対して、または酸化ストレスおよびその合併症に関連する疾病または状態を少なくとも部分的に停止させるために、予防的に投与されてもよい。治療を行っている医師が投与量のレベルおよびパターンを選択して、上記医薬組成物を一回または複数回投与してもよい。
任意の患者に対する上述の治療上有効な投与量のレベルは、次に列挙するような種々の因子によって左右される。すなわち、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する疾病または状態の重症度(UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷を含む)、採用した組成(物)、患者の年齢、体重、身全体の健康状態、および食事、投与時刻、投与経路、治療の継続時間、相乗的な組成物と組み合わせて使用または同時に使用する薬剤、さらに他の医学においてよく知られた関連する因子などである。
当業者であれば、通例的な実験によって、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷を含む、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する疾病または状態を、本発明の医薬組成物により治療するために必要な、上記の治療薬の有効な非有毒量を決定できるであろう。
本発明の方法では、投与される医薬組成物は、体重1kg当たり約0.0001mgから約1000mgまで、例えば体重1kg当たり約0.001mgから約750mgまで、体重1kg当たり約0.01mgから約500mgまで、体重1kg当たり約0.1mgから約500mgまで、体重1kg当たり約0.1mgから約250mgまで、または体重1kg当たり約1.0mgから約250mgまでの範囲にあればよい、さらに好適には、24時間当たりの効果的な服用量は、体重1kg当たり約1.0mgから約200mgまで、体重1kg当たり約1.0mgから約100mgまで、体重1kg当たり約1.0mgから約50mgまで、体重1kg当たり約1.0mgから約25mgまで、体重1kg当たり約5.0mgから約50mgまで、体重1kg当たり約5.0mgから約20mgまで、または体重1kg当たり約5.0mgから約15mgまでの範囲にあればよい。
さらに、本発明の組成物の個々の服用量の最適量および投与間隔が、状態の性質および程度、投与の形式、経路、および部位、および治療中の特定の患者の性質によつて決定されればよいことは、当業者には明らかである。また、このような最適条件を、従来の方法によって決定してもかまわない。
最適な治療手順を(例えば、規定された日数の間投与される、本発明の組成物の一日あたりの投与回数)従来の治療手順決定試験を使って当業者が確認できることも、当業者には明らかである。
一般に、本発明の医薬組成物は、当業者にとって公知である方法によって調製されればよく、したがって、薬学的に許容可能なキャリア、希釈液、および/または補助剤を包含していてもよい。
本発明の方法によれば、医薬組成物は、任意の適した経路によって、全身に投与されてもよく、部分的に投与されてもよく、または局所的に投与されてもよい。任意の環境において使用する特定の投与経路は、治療対象である疾病または状態の性質、疾病または状態の重症度および程度、誘導される特定の化合物の必要な服用量、および化合物の潜在的な副作用を含めた、複数の因子によって左右される。
例えば、適切な濃度の所望の化合物が、治療するべき身体の部位に直接誘導されることが要求される環境中では、投薬は全身的に行うのではなく、部分的に行われる。部分的に投薬することによって、局所的に非常に高い濃度を作り出す所望の化合物を、要求されている部位へデリバリーできるようになり、それゆえ、身体の他の器官が上記化合物に曝露されることを避けて、避けることによって副作用を潜在的に低減しながら、所望する治療効果または防止効果実現するために適している。
一例として、本発明の実施形態に係わる投与は、腔内経路、膀胱内経路、筋肉内経路、動脈内経路、静脈内経路、皮下経路、局所的経路、または経口経路などを含めた、任意の標準的な経路によって実現されればよい。腔内の投与は、腹腔内経路であっても、胸膜内経路であってもよい。特定の実施形態では、投与は点滴静注または腹腔内投与を介して行われる。
所望であれば、持続的な放出または間欠的な放出に適した医薬組成物を包含するデバイスまたは組成物を、実質的には、身体に埋め込んでも、局所的に適用しても、上述のような物質を比較的ゆっくりと身体へ放出することができる。
上記のキャリア、希釈液、および補助剤は、上記組成物の他の成分と適合できるという観点で、必ず”許容可能”でなければならない。また、レシピエントにとって有害であってはならない。薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈液の例としては、脱塩水または蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油(例えば、ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油、またはヤシ油)などの野菜を基にした油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、およびメチルフェニルポリソルポクサンなどの、ポリシロキサンを含めたシリコーンオイル;揮発性シリコーン;流動パラフィン、軟パラフィン、スクアランなどのミネラルオイル;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;エタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルカノール;低級アラルカノール(aralkanol);ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、またはグリセリンなどの低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール;イソプロピルパルミチン酸、ミリスチン酸イソプロピル、またはエチルオレイン酸などの脂肪酸エステル;ポリビニルピリドン;寒天;カラゲナン;トラガカントゴムまたはアラビアゴム;およびワセリンなどがあげられる。上記一つのまたは複数のキャリアは、上記組成物の10%から99.9重量%を形成すればよい。
本発明の医薬組成物は、組成物の形態、経口摂取(例えばカプセル、錠剤、カプレット、およびエリキシル剤)による投与に適した形態、局所投与に適した軟膏、クリーム、またはローションの形態(この形態はUVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷の治療および修復には特に好ましい)、点眼としてのデリバリーに適した形態、例えば鼻腔内の吸入または経口の吸入などの吸入による投与に適したエアロゾルの形態、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射である非経口投与に適した形態であればよい。
注射用の溶液または注射用の懸濁液として投与する場合、非有毒な、非経口的に許容可能な希釈液またはキャリアの例としては、リンゲル溶液、等張生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、および1,2−プロピレングリコールなどが挙げられる。
経口使用の場合の、適切なキャリア、希釈液、賦形剤、および補助剤の例としては、ピーナッツ油、流動パラフィン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガカントゴム、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチンの、およびレシチンなどがあげられる。さらに、これらの経口製剤は、適切な人工香味料および着色料を含有していてもよい。カプセルの形態で使用される場合、カプセルは、壊変を遅延させる、モノステアリン酸グリセリンまたはグリセリルジステアレートなどの化合物で被覆されていてもよい。
補助剤は通常、皮膚軟化薬剤、乳化剤、増粘剤、保存料、殺菌剤、および緩衝剤を包含している。
経口投与用の固形物は、ヒトおよび獣の薬務において許容可能な結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈液、人工香味料、コーティング剤、保存料、潤滑剤、および/または遅延剤を包含していてもよい。適切な結合剤の例としては、アラビアゴム、ゼラチン、トウモロコシ澱粉、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、またはポリエチレングリコールなどがあげられる。適切な甘味料の例としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンなどがあげられる。適切な崩壊剤の例としては、トウモロコシ澱粉、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、または寒天などがあげられる。適切な希釈液の例としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、またはリン酸ジカルシウムなどがあげられる。適切な調味料の例としては、ペパーミント油、冬緑樹油、サクランボ、オレンジ、またはキイチゴの人工香味料などがあげられる。適切なコーティング剤の例としては、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはこれらのエステル、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラック、またはグルテンの重合体または共重合体などがあげられる。適切な保存料の例としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、αトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、またはナトリウム重亜硫酸などがあげられる。適切な潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウムオレイン酸、塩化ナトリウム、または滑石などがあげられる。適切な遅延剤の例としては、モノステアリン酸グリセリンまたはグリセリルジステアレートなどが挙げられる。
経口投与用の液体形態物は、上記の薬剤に加えて、液体キャリアを包含していてもよい。適切な液体キャリアの例としては、水、および例えばオリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、サンフラワーオイル、ベニバナ油、ラッカセイ属油、ヤシ油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、脂肪アルコール、トリグリセリドなどの油、またはこれらの混合物などが挙げられる。
経口投与用の懸濁液の例としては、さらに、分散剤および/または懸濁剤などがあげられる。適切な懸濁剤の例としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ポリ−ビニル−ピロリドン、アルギン酸ナトリウム、またはアセチルアルコールなどがあげられる。適切な分散剤としては、レシチン、例えばステアリン酸などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸またはポリオキシエチレンソルビトールジオレイン酸、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアリン酸またはポリオキシエチレンソルビトールジステアリン酸、またはポリオキシエチレンソルビトールモノラウリン酸またはポリオキシエチレンソルビトールジラウリン酸、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸またはポリオキシエチレンソルビタンジオレイン酸、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸またはポリオキシエチレンソルビタンジステアリン酸、またはポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸またはポリオキシエチレンソルビタンジラウリン酸などが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、選択された治療用化合物を、選択された賦形剤、キャリア、補助剤、および/または希釈液を用いてブレンド、粉砕、均質化、懸濁、溶解、乳化、分散、および/または混合することによって、調製されてもよい。
錠剤またはカプセルの形態の、本発明の1つのタイプの医薬組成物は、(a)第1の治療用化合物を、任意の所望の賦形剤、キャリア、補助剤、および/または希釈液とともに包含する第1の錠剤またはカプセルを調製し、(b)第2の治療用化合物と該第1の錠剤またはカプセルとを包含する第2の錠剤またはカプセルを調製することによって調製されてもよい。
カプセルの形態の、本発明の別のタイプの医薬組成物は、(a)第1の治療用化合物を、任意の所望の賦形剤、キャリア、補助剤、および/または希釈液とともに包含する第1のカプセルを調製し、(b)第2の治療用化合物と該第1のカプセルとを包含する第2のカプセルを調製することによって調製されてもよい。
錠剤の形態の、本発明のさらに別のタイプの医薬組成物は、(a)治療用化合物を、任意の所望の賦形剤、キャリア、補助剤、および/または希釈液とともに包含するカプセルを調製し、(b)該第2の治療用化合物と該カプセルを包含する錠剤を調製することによって調製されてもよい。
経口投与用の乳濁液は、1つ以上の乳化剤をさらに包含していてもよい。適切な乳化剤の例としては、例を上述した分散剤、またはグアーガム、アラビアゴム、またはトラガカントゴムなどの天然ゴムなどがあげられる。
非経口的に投与可能な組成物を調製するための方法は、当業者にとって自明であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa.,に詳細に記載されている。この文献の内容は参照によってここに引用されるものとする。
本発明の局所的な組成物は、治療用化合物を、1つ以上の許容可能なキャリア、および必要に応じて任意のその他の治療用成分とともに包含している。局所投与に適した組成物は、皮膚を通って、治療画必要な部位に浸透するために適した液体または半液体の調製物、例えばリニメント剤、ローション、クリーム、軟膏、またはペースト、および眼、耳、または鼻部への投与に適した液滴を包含している。
本発明に係わる液滴は、無菌の、水性溶液、油性溶液、または懸濁液を包含していてもよい。これらの液滴は、殺菌性および/または殺真菌性の薬剤および/または任意のその他の適切な保存料、および必要に応じて表面活性剤を含有する水溶液に、治療用化合物を溶解させることによって、調製されてもよい。その結果得られる溶液は、次に、濾過することによって透明にされ、適切な容器に移されて、無菌化されてもよい。滅菌は、高圧蒸気殺菌法または90℃−100℃で半時間維持することによって、または濾過の後に無菌的な方法で容器に移すことによって、実現されてもよい。上記液滴に包含するために適した、殺菌性のおよび殺真菌性の薬剤の例としては、硝酸フェニル水銀または酢酸(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、およびクロルヘキシジン酢酸(0.01%)などがあげられる。油性溶液の調製に適した溶媒の例としては、グリセリン、希釈アルコール、およびプロピレングリコールなどが挙げられる。
本発明に係わるローションの例としては、皮膚または眼に対して適用するために適したものが挙げられる。点眼薬剤は、殺菌剤を必要に応じて含有する無菌性水溶液を包含していてもよく、液滴の調製に関連して上述した方法と同様の方法によって調製されてもよい。皮膚に適用するローションまたはリニメント剤は、乾燥を加速し、皮膚を冷却する薬剤、例えばアルコールまたはアセトン、および/またはグリセリンなどの保湿剤、またはヒマシ油もしくはラッカセイ油などの油をも包含していてもよい。
本発明に係わるクリーム、軟膏、またはペーストは、外用化合物の半流動性製剤であって、細かく分割または粉末化した形態の有効成分を、単独で混合、または水性の液体または非水性の液体中で溶解または懸濁させた状態で、グリース状または非グリース状の基剤と混合することによって、調製されてもよい。この基剤は、硬パラフィン、軟パラフィン、または流動パラフィン、グリセリン、蜜蝋、金属石鹸などの炭化水素;粘液;アーモンド、トウモロコシ、ラッカセイ属、ヒマシ油、またはオリーブ油などの天然由来の油;羊毛脂肪またはその誘導体、またはステアリン酸もしくはオレイン酸などの脂肪酸を、プロピレングリコールまたはマクロゴールなどのアルコールとともに包含していてもよい。
上記組成物は、任意の適切な界面活性物質、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤(例えばソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体)などを包含していてもよい。天然ゴム、セルロースの誘導体、または無機物質(例えば、ケイ質シリカ)などの懸濁剤、およびラノリンなどのその他の成分を包含していてもよい。
上記組成物は、リポソームの形態で標的細胞に投与または誘導されてもよい。リポソームは一般に、リン脂質などの脂質物質に由来し、水性培地に分散している単層状または多層状の水和液晶によって形成されている。組成物を標的細胞に投与または誘導する際に使用されるリポソームの具体的な例としては、合成コレステロール(シグマ)、リン脂質1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC;Avanti Polar Lipids社)、PEG脂質3−N−[(−メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]−1,2−ジミレスチロキシ−プロピルアミン(PEG−cDMA)、および陽イオン性の脂質1,2−di−o−オクタデセニル−3−(N,N−ジメチル)アミノプロパン(DODMA)または1,2−ジリノレイロキシ−3−(N,N−ジメチル)アミノプロパン(DLinDMA)を55:20:10:15または48:20:2:30のモル比で混合したもの、さらにPEG−cDMA、DODMA、およびDLinDMAなどがあげられる。非有毒、生理的に許容可能、かつ代謝可能であって、リポソームを形成できる任意の脂質が使用可能である。リポソームの形態の上記組成物は、安定剤、保存料、賦形剤などを包含していてもよい。好ましい脂質としては、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)があげられ、いずれも天然のものでも合成されたものでもよい。リポソームを形成する方法は、当該技術分野において公知であり、この点について具体的に、Prescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p. 33 et seq.,を参照するが、この文献の内容は参照によってここに引用されるものとする。
上記組成物は、微小粒子の形態で投与されてもよい。ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸−co−グリコライド(PLGA)、およびε−カプロラクトン(ε−カプロラクトン)から形成される、生分解性の微小粒子は、血漿の半減期を延長し、こうすることによって有効性を延長する薬物担体として広範に使用されている(R. Kumar, M., 2000, J Pharm Pharmaceut Sci. 3(2) 234-258)。微小粒子は、ワクチン、抗生物質、およびDNAを含めた、薬剤となり得るある範囲のものを誘導することを目的として、製剤されている。また、これらの製剤は、非経口的な皮下注射、静脈内注射、および吸入を含めた、各種誘導経路にあわせて開発されている。
上記組成物は、糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)および有機溶剤または有機溶剤の混合物からなる、コントロールド・リリース・マトリックスを包含していてもよい。粘性をさらに増加させ、放出速度を低下させるために、重合体の添加物が、放出調製成分とてし上記媒体に添加されてもよい。SAIBは、周知の食品添加物である。SAIBは、2つの酢酸基に対して6つのイソ酪酸という名目上の比において、高い疎水性を有し、完全にエステル化されたスクロースの誘導体である。混合エステルとしては、SAIBは結晶化せずに、透明な粘稠性を有する液体として存在する。SAIBを、エタノールまたはベンジルアルコールなどの薬剤的に受容される有機溶剤に混合すると、混合物の粘性が大幅に減少し、注射が可能になる。SAIB溶液製剤またはSAIB懸濁液製剤を形成するために、治療用化合物が、SAIBをデリバリーする媒体に添加されてもよい。該製剤が皮下に注入されると、溶媒はマトリックスから拡散し、SAIB/薬剤の混合物またはSAIB/薬剤/重合体の混合物がインサイツを形成するデポとして構成することが可能になる。
当業者であれば、本発明の方法よれば、上記医薬組成物が、単独でまたは併用療法として1つ以上の付加的な薬剤とともに投与されてもよいことが理解できるであろう。例えば、本発明の医薬組成物は、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷を含めた、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する状態を治療または防止することができる、1つ以上の付加的な薬剤とともに投与されてもよい。
上記の併用療法の場合、所望の効果を得るために、併用療法の各成分が同時に投与されてもよく、任意の順番で順に投与されてもよく、または異なるタイミングで投与されてもよい。上記の構成の替わりに、上記成分をまとめて、一回の服用量の単位の組み合わせ生成物として製剤されてもよい。別々に投与される場合、上記成分が同じ投与経路で投与されることが好ましいこともある。ただし、必ずしもこうする必要はない。
治療上の利点は、組み合わせ療法を介しても実現され得る。併用療法では、組成物はおよびその他の任意の薬剤は、同時に投与されても、または任意の順番で順に投与されてもよい。そこで、本発明に係わる治療方法は、放射線療法、化学療法、手術、またはその他の形態の医療行為などの、通常の療法とともに適用されてもよい。化学療法薬剤の例としては、ドキソルビシン、タキソール、フルオロウリシル(fluorouricil)、メルファラン、シスプラチン、オキサリプラチン、αインターフェロン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンジオインヒビン、TNP−470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンジオスタチン、LM−609、SU−101、CM−101、テクガラン(Techgalan)、サリドマイド、SP−PGなどが挙げられる。その他の化学療法薬剤としては、メクロエタミン(mechloethamine)、メルファン(melphan)、クロラムブシル、シクロホスファミド、およびイホスファミドを含めたメクロレタミン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、およびストレプトゾシンを含めたニトロソウレアなどのアルキル化剤;ブスルファンを含めたスルホン酸アルキル;ジカルバジン(dicarbazine)を含めたトリアジン;チオテパおよびヘキサメチルメラミンを含めたエチエンイミン(ethyenimine);メトトレキサートを含めた葉酸類似体;5−フルオロウラシルおよびシトシンアラビノシドを含めたピリミジン類似体;6−メルカプトプリンおよび6−チオグアニンを含めたプリン類似体;アクチノマイシンDを含めた抗腫瘍性の抗生物質;ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、およびメトラマイシン(methramycin)を含めたアントラサイクリン;タモキシフェンおよびコルチオステロイド(cortiosteroid)を含めたホルモンおよびホルモン拮抗薬剤、ならびにシスプラチンおよびブレキナルを含めた種々の薬剤、ならびにCOMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキサート、およびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびデキサメタゾン)、ならびにPROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート(ロイコボリン(leucovin)レスキューを併用)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)などの療法などが挙げられる。
当業者であれば、ここに記載されている本発明に対して、具体的に記載されたもの以外の変更や変形が可能であることが理解できるであろう。本発明にはこういった変更や変形がすべて含まれることが理解されるはずである。
治療方法
本発明では、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷を含めた、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する疾病および状態を治療するための方法について考察する。一実施形態において、該方法は、治療有効量のリスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を、被検者に対して投与することを包含する。別の一実施形態において、該方法は、NAD+の合成を誘起する少なくとも1つの薬剤と、効果的な量の、少なくとも1つの抗酸化剤および少なくとも1つのキレート薬のいずれかまたは両方との、相乗的な組み合わせを含有する治療有効量の医薬組成物を、被検者に対して投与することを包含する。
当業者であれば、本発明の上記組成物の投与を使用して、NAD+の合成を刺激することを直接の標的とし、そうすることによって、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷を含めた酸化ストレスおよび/またはDNA損傷を治療するための薬効を提供し得ることができ、H2O2、O2・−、・OH、およびNOなどの活性酸素種のレベルの上昇を伴うことが理解できよう。NAD+の合成量が増加すると、DNAの修復においておよびサーチュイン酵素に関与するPARP酵素に対して余分な基質が提供され、また、ニコチンアミド代謝が増加し、それゆえ、PARPおよびサーチュインの酵素活性の強力な阻害剤が除去される。そこで、本発明の該方法は、NAD+レベルの決定的な減少を軽減する手段を提供し、細胞死の酸化ストレスによって誘起されるPARPの活性化の増加レベルをつりあわせる。
UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷を含めた、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する、本発明の方法による治療に適した疾病および状態としては、紫外線または電離放射線(例えばx線、γ線)に対する曝露、化学薬品、感染、炎症、またはミトコンドリアの効率低下が原因になって、ROSレベルの上昇が起こる疾病および状態などがあげられるが、これらの例に限定されるものではない。本発明の方法は、皮膚の通常の細胞老化または加速的な老化の治療、UVによって誘起される皮膚細胞(つまりケラチノサイトおよび線維芽細胞)のDNA損傷の治療および修復、ならびにアルツハイマー病およびパーキンソン病を含めた神経変性疾患および障害の治療および修復に適している。上記の構成に加えて、あるいは、上記の構成の替わりに、本発明の方法は、癌を含めた、DNA損傷に関連する疾病および状態の治療に適している。上記の疾病は非限定的な例であって、本発明の組成物は、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連するその他の状態および疾病の治療に使用可能であることが、当業者であれば理解できよう。
キット
本発明は、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含する、NAD+の合成を増加させるためのキットを提供する。
さらに、本発明は、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含する、被検者において、酸化ストレスに関連する疾病または状態を治療するためのキットを提供する。
さらに、本発明は、リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体を包含する、被検者において、UVによって誘起される皮膚細胞のDNA損傷を含めた、DNA損傷に関連する疾病または状態を治療するためのキットを提供する。
上記リスベラトロールまたは機能的に同等なリスベラトロールの類似体もしくは誘導体は、シス異性体、トランス異性体、またはこれらの混合物であってもよい。キットに包含されていてもよいリスベラトロールの類似体としては、リスベラトロールのメトキシル化類似体、シス−リスベラトロールグルコシド(シス−piceid)、およびトランス−リスベラトロール−3−O−β−グルコシド(トランス−piceid)などがあげられるが、これらの例に限定されるものではない。
上記キットは、任意の数の付加的な構成要素を包含していてもよい。非限定的な例として、この付加的な構成要素には、参照試料、緩衝液、標識、およびアッセイを実施するための説明書なとが含まれていてもよい
次に、特定の例を参照して本発明を説明するが、これは、本発明の範囲を限定すると解釈すべきものではない。
〔実施例〕
実施例1:ヒトの胎児のアストロサイトにおける、IDO阻害剤1−MTによる、NAD+合成の新生経路の抑制。
ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%のグルタマックス(Glutamax)を補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、IDO阻害剤1−メチルトリプトファン(1−MT)(100μM)を、単独でまたはL−トリプトファン(100μM)もしくはニコチン酸(100μM)のいずれかと組み合わせて用いて、処理した。この薬剤の添加につづいて、培養を、5%のCO2中で37℃で24時間インキュベーションし、つづいて細胞のNAD+の濃度を分析した。細胞物をTRIS緩衝液(pH値7.4)で洗浄し、ニコチンアミド(10mM)をPARP阻害剤として含有するホモジネート溶液中で超音波処理した。それから、細胞のホモジネートの試料を、ビシン緩衝液(120mM)、エタノール(0.6M)、フェニジンメチルサルフェート(phenyzine methyl sulfate ; PMS)(2mM)、MTT(0.5mM)、およびアルコール脱水素酵素(1mg/ml)を含有する反応混合物に添加した。NAD+およびNADHのレベルを、バイオラド×680型ミクロプレート読み取り装置(バイオラド社、Hercules、CA)において570nmのフィルターを使って、試薬のブランク値に対して分光測定で数量化した。
細胞一個当たりのNAD+(H)の濃度を、タンパク質のさまざまなレベルについて、細胞のホモジネート中のタンパク質の総量を参照することによって調節した。
総タンパク質量を、ブラッドフォードのタンパク質アッセイ法を使って決定した。10μlの細胞のホモジネート試料(NAD+アッセイにおいて使用したもの)を、230μlのミリQ水および60μlのブラッドフォード試薬とともに各ウェルに手早く添加し、10分〜15分間放置して平衡化させた。それから、プレートを、バイオラド×680型ミクロプレート読み取り装置(バイオラド社、Hercules、CA)において595nmのフィルターを使って読み取った。
トリプトファンからNAD+の新生合成の完全な阻害は、競合的なIDO阻害剤1−MT(1mM、24h)によって誘起される。その結果、細胞内のNAD+レベルが大きく減少した(図3)。過剰な量のL−トリプトファンまたはサルベージ経路の基質であるニコチン酸のいずれかを補充すると、1−MTのみによる処理に比較して、NAD+の枯渇が部分的に逆転した(図3)。
実施例2:H2O2は、ヒトの胎児のアストロサイトにおいて、PARP活性を増加させる。
ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%のグルタミックス(Glutamix)を補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、酸化促進剤H2O2を0μMから1000μMまで濃度を増加させて用いて、処理した。このH2O2の添加につづいて、培養物を、5%のCO2中で37℃で15分間インキュベーションし、つづいて2回洗浄し、トリス緩衝液(50mM、pH値8.1)にMgCl2(10mM)、トリトンX−100(1%)、およびNAD+(20μM)を含有する200μLのPARPアッセイ緩衝液中で、均質化/溶解ざせ、さらに37℃で60分間放置してインキュベーションした。NAD+は、PARP酵素にとっての唯一の基質であって、この反応中に劣化するので、酵素活性全体が、アッセイ緩衝液におけるNAD+の濃度の減少を定量化することによって、決定される。NAD+の消費量は、上述のように、NAD+(H)マイクロサイクリングアッセイによって測定される。
PARP−1の活性は、10μM〜100μMのH2O2に20分間曝露した後、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおいて大幅に増加した(図4)(H2O2に暴露しなかった場合に比較するとαp<0.05、10μMのH2O2の場合に比較するとβp<0.05、20μMのH2O2の場合に比較するとχp<0.05、50μMのH2O2の場合に比較するとδp<0.05)。
実施例3:H2O2は、ヒトの胎児のアストロサイトにおいて、細胞内NAD+を減少させる。
ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%グルタミックスを補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、酸化促進剤H2O2を0μMから1000μMまで濃度を増加させて用いて、処理した。このH2O2の添加につづいて、培養物を、5%のCO2中で37℃で15分間インキュベーションし、つづいて2回洗浄し、300μLのPBSに再懸濁し、氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、超音波処理を行い、細胞のNADレベルを即時分析した。
細胞内のNAD+は、10μM〜100μMのH2O2に20分間曝露した後、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおいて大幅に減少した(図5)(0μMのH2O2のコントロールの場合に比較すると*p<0.05、50μMのH2O2の場合に比較すると**p<0.05、100μMのH2O2の場合に比較すると***p<0.05)。NAD+レベルの減少は、測定したPARP−1活性と負の相関関係を有していた(図4に示す)。
実施例4:H2O2は、ヒトの胎児のアストロサイトにおいて、LDH放出の誘起する。
ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%グルタミックスを補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、酸化促進剤H2O2を0μMから1000μMまで濃度を増加させて用いて、処理した。このH2O2の添加につづいて、培養物を、5%のCO2中で37℃で20分間インキュベーションし、つぎに、上清を採取して分析し、LDHの活性を求めた。LDHは細胞質の酵素であるので、細胞培養で得られた上清へのLDHの漏出量は、全体的な細胞生存率の尺度として広く使用される。50μlのピルビン酸(11.5mM)を、50μlの細胞培養で得られた上清に手早く添加する。さらに、100μlのNADH溶液(700μM)をウェルに添加する。バイオラド×680型ミクロプレート読み取り装置(バイオラド社、Hercules、CA)を使って340nmの吸光度の変化を5分間監視し、得られた曲線の直線部分における吸光度の最大変化率を算出することによって、LDHの活性を分光測定で測定する。
LDHの活性(細胞死の尺度)は、10μM〜100μMのH2O2に20分間曝露した後、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおいて大幅に増加した(図6)(0μMのH2O2のコントロールの場合に比較すると*p<0.05、10μMのH2O2の場合に比較すると**p<0.05、50μMのH2O2の場合に比較すると***p<0.05、100μMのH2O2の場合に比較するとΨ<0.05)。LDHの放出の増加が、測定した細胞内のNADレベルの減少量と直接的な相関関係を有していた(図5に示す)。
実施例5:抗酸化剤は、ヒトの胎児のアストロサイトおよびヒトの神経芽細胞腫細胞において、H2O2によって誘起される細胞内のNAD+の枯渇を阻害する。
酸素ラジカルによって誘起されるストレスは、効果的な抗酸化療法によって寛解され得る。ケルセチンは、よく実証された抗酸化活性を有する、植物に由来するポリフェノール化合物である。ヒトの胎児のアストロサイトにおいてH2O2によって誘起されるNADの枯渇を調節するケルセチンの能力を、テストした。
ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%グルタミックスを補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、DMSO(0.2%)だけを用いるか、または0.2%DMSOおよびケルセチン(50μM)を併用して用いるかのいずれかによって、処理した。さらに24時間インキュベーションした後、H2O2を選択した培養物に添加し(図7を参照)、5%のCO2中で37℃で20分間インキュベーションした。つづいてPBSで2回洗浄し、〜300μLのPBSで超音波処理を行った。その結果得られたホモジネート(homegenate)を氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、細胞のNAD+レベルを即時分析した。
NAD+レベルは、10μM〜100μMのH2O2に20分間曝露した後、ケルセチンの存在下で一晩培養した場合、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおいてほぼ保存された(図7)(*p<0.05、H2O2だけを用いる場合に比較すると**p<0.005)。
ヒトの神経芽細胞腫細胞における、NAD+レベルに対するメラトニンの効果も調べた。ヒトの神経芽細胞腫細胞(SK−N−SH)を、10%のウシ胎児血清、2mMのl−グルタミン、および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、RPMI1640の細胞培養培地で、95%の空気/5%のCO2を含有する加湿雰囲気中で37℃で保持した。実験を実施する前に、細胞を、約5×105個の密度になるまで、24ウェルの培養プレートに播種し、一晩インキュベーションした。実験当日に、上記培地を吸引し、廃棄した。細胞を500μLのPBSで2回洗浄し、つづいて、10μMの鉄、10μMのアスコルビン酸(鉄をFe2+の酸化状態で維持するため)、および100μMのH2O2を含有するPBSを、1ウェル当たり1ml添加した。この鉄を、抗酸化性を有するメラトニン(2μM〜200μM)とともに5分間インキュベーションし、つづいてH2O2を添加した。すべての処理物を、5%のCO2中で37℃でさらに30分間インキュベーションした。それから培養物をPBSで2回洗浄し、〜300μLのPBSで超音波処理を行った。その結果得られたホミジネートを氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、細胞のNAD+レベルを即時分析した。
図8は、100μMのH2O2で処理した、ヒトの培養神経芽細胞腫細胞において、細胞内のNAD+レベルの枯渇が、2μM、20μM、および200μMのメラトニンを用いた事前処理によって阻害されていることを示している(Ctrlに比較すると*p<0.05、100μMのH202の場合と20μMのMel + H202の場合とを画すると**p<0.05、2μMのMel + H202の場合と200μMのMel + H202の場合とを比較すると***p<0.05)。
ヒトの神経芽細胞腫細胞における、NAD+レベルに対するビタミンEの効果も調べた。ヒトの神経芽細胞腫細胞(SK−N−SH)を、10%のウシ胎児血清、2mMのl−グルタミン、および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、RPMI1640の細胞培養培地で、95%の空気/5%のCO2を含有する加湿雰囲気中で37℃で保持した。実験を実施する前に、細胞を、約5×105個の密度になるまで、24ウェルの培養プレートに播種し、一晩インキュベーションした。実験当日に、上記培地を吸引し、廃棄した。細胞を500μLのPBSで2回洗浄し、つづいて、10μMの鉄、10μMのアスコルビン酸(鉄をFe2+の酸化状態で維持するため)、および100μMのH2O2を含有するPBSを、1ウェル当たり1ml添加した。この鉄を、抗酸化性を有するビタミンE(2μM〜200μM)とともに5分間インキュベーションし、つづいてH2O2を添加した。すべての処理物を、5%のCO2中で37℃でさらに30分間インキュベーションした。それから培養物をPBSで2回洗浄し、〜300μLのPBSで超音波処理を行った。その結果得られたホミジネートを氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、細胞のNAD+レベルを即時分析した。
図9は、100μMのH2O2で処理した、ヒトの培養神経芽細胞腫細胞において、細胞内のNAD+レベルk枯渇が、2μM、20μM、および200μMのビタミンEを用いた事前処理によって阻害されていることを示している(Ctrlに比較すると*p<0.05)。
これらの結果は、酸化ストレスによって誘起されるNAD+の枯渇が、抗酸化剤だけを有効な投与量で用いた処理によって、寛解され得ることを実証している。
実施例6:クリオキノールは、ヒトの初代アストロサイトににおいて、・OHによって誘起されるNAD+の枯渇を低減する。
H2O2の、利用可能な酸化還元活性を有する金属イオンとのフェントン反応は、ヒドロキシラジカル(OH・)の生成の原因となる。
アルツハイマー病などの神経変性疾患において巨大分子が酸化的に修飾されることが増加するのは、その相当な程度が、膜透過性の酸化物質である過酸化水素(H2O2)の細胞内での生成の、非効率的なミトコンドリア活性に起因する増加、神経外でのH2O2の生成の増加、ミクログリアの活性化、およびAβ沈着物に由来するようである。この反応性の高いフリーラジカルには、PARPの活性化およびNAD+の枯渇を引き起こす、深刻なDNA損傷を誘起する潜在的な力がある。
Fe2+やCu+などの酸化還元活性を有する金属を効果的なキレート化すれば、・OHによって媒介されるPARPの活性化が低下し、つづいてNADの枯渇が寛解されるという仮説について、試験を実施した。ヒトの神経芽細胞腫細胞(SK−N−SH)を、10%のウシ胎児血清、2mMのl−グルタミン、および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、RPMI1640の細胞培養培地で、95%の空気/5%のCO2を含有する加湿雰囲気中で37℃で保持した。実験を実施する前に、細胞を、約5×105個の密度になるまで、24ウェルの培養プレートに播種し、一晩インキュベーションした。実験当日に、上記培地を吸引し、廃棄した。細胞を500μLのPBSで2回洗浄し、つづいて、10μMの鉄、10μMのアスコルビン酸(鉄をFe2+の酸化状態で維持するため)、および100μMのH2O2を含有するPBSを、1ウェル当たり1ml添加した。この鉄を、キレート剤クリオキノール(1μM〜100μM)とともに5分間インキュベーションし、つづいてH2O2を添加した。すべての処理物を、5%のCO2中で37℃でさらに30分間インキュベーションした。それから培養物をPBSで2回洗浄し、〜300μLのPBSで超音波処理を行った。その結果得られたホミジネートを氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、細胞のNAD+レベルを即時分析した。
H2O2で処理したヒトの神経芽細胞腫細胞における、細胞内のNAD+の濃度に対する、親油性キレート剤であるクリオキノール(CQ)の用量反応の効果を、図10に示す(Ctrlに比較すると*p<0.05、H202 + Feの場合と比較すると**p<0.05、10μM CQ + H202 + Feの場合と比較すると***p<0.05)。これらの結果は、・OHによって誘起されるNAD+の枯渇が、細胞透過性のキレート薬だけを用いた処理によって、投与量に依存はするものの効果的に低減されることを実証している。
実施例7:リスベラトロールは、細胞内のNAD+を増加させる。
ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%グルタミックスを補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、リスベラトロール(100μM)を用いて、処理した。さらに24時間インキュベーションした後、H2O2を選択した培養物に添加し、5%のCO2中で37℃で20分間インキュベーションした。つづいてPBSで2回洗浄し、〜300μLのPBSで超音波処理を行った。その結果得られたホモジネートを氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、細胞のNAD+レベルを即時分析した。
リスベラトロールは、コントロールレベルを超える範囲において、細胞内のNAD+を大幅に増加させた(*p<0.05)。ヒトの初代アストロサイトにおいてH2O2だけを使用する場合と比較すると、**p<0.05であった(図11)。リスベラトロールは中程度の見かけ上の抗酸化活性しか示さなかった(NAD+の枯渇はわずかに減少)が、酸化ストレスにを受けていない細胞内における、細胞内のNAD+に対するリスベラトロールの効果は際立っており、細胞内のNAD+の濃度が約75%の増加を示した。また、恒常的な酸化活性が低減したために、その他の抗酸化剤の場合、無処置のコントロールを超える範囲において、NAD+レベルの中程度の増加が観察されたが、リスベラトロールの効果は、これらの他の抗酸化剤のうちで最良のものより100%大きかった。実施例8:リスベラトロールは、初代細胞において、IDO阻害剤1−MTまたはQPRT阻害剤PAの存在下で、細胞内のNAD+を増加させる。ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%グルタミックスを補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、リスベラトロール(100μM)、1−MT(1mM)、PA(1mM)、リスベラトロール(100μM) + 1−MT(1mM)、およびリスベラトロール(100μM) + PA(1mM)を用いて、処理した。さらに24時間インキュベーションした後、細胞をPBSで2回洗浄し、〜300μLのPBSで超音波処理を行った。その結果得られたホモジネートを氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、細胞のNAD+レベルを即時分析した。
細胞内のNAD+に対するリスベラトロールの効果は、リスベラトロールだけを使用するか、または1−MT、1mM(IDOの阻害剤、デノボNAD合成における第1の酵素)、およびPA1mM(QPRTの阻害剤、デノボNAD合成における下流の酵素)の存在下で併用するかのいずれかにおいて、水平になる(図12)(1−MTだけで処理する場合と比較すると*p<0.05、PAだけで処理する場合と比較すると**p<0.05)。どちらの阻害剤も、各酵素の活性を完全に遮断すると考えられる濃度で使用した。どちらの阻害剤も、リスベラトロールの効果を抑止できなかった。このことは、リスベラトロールには、サルベージ経路によってNAD+の合成を誘起できる可能性があることを暗示している。
実施例8:NMNATの阻害剤であるタンニン酸は、リスベラトロールによって媒介される、細胞内のNAD+の増加を抑止する。
ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)を含めた各種ソースからNAD+を生成するためには、サルベージ経路によって、約5つの酵素が使用される(図1参照)。NMNATを阻害して、その効果を、リスベラトロールによって引き起こされる、先に観察した細胞内のNAD+レベルの上昇に対して評価した。ヒトの胎児の初代アストロサイトを、24ウェルの培養プレート(〜105個の細胞/ウェル)に播種した。各ウェルは、10%のウシ胎児血清(FBS)および0.5%グルタミックスを補充した、1mlのRPMI1640の細胞培養培地を含んでいた。培養物を24時間放置して平衡化させ、つづいて、タンニン酸(100μM)またはリスベラトロール(100μM)またはリスベラトロール(100μM)およびタンニン酸(100μM)を用いて、処理した。培養物を、5%のCO2中で37℃でさらに24時間インキュベーションした。つづいてPBSで2回洗浄し、〜300μLのPBSで超音波処理を行った。その結果得られたホモジネートを氷上に載置した。つづいて、上記の実施例1に記載のように、細胞のNAD+レベルを即時分析した。
タンニン酸(24時間、100μM)を用いて処理したことによって、細胞内のNAD+レベルに対するリスベラトロールの効果が完全に抑止された(図14)。タンニン酸(100μM)だけを用いた処理では、NAD+レベルを24時間の潜伏期間中に大幅に低下させるにはいたらなかった(図14)(リスベラトロールだけによる処理に比較した場合*p<0.05、コントロールに比較した場合**p<0.05)。これらの結果は、タンニン酸によるNMNATの完全抑制によって、リスベラトロールによって媒介される、先に観察された細胞内のNAD+の増加が防止できたことを示唆している。したがって、リスベラトロールの存在下における細胞内のNAD+レベルの上昇は、NMNAT活性のアップレギュレートによって、最もよく説明できると考えられる。
実施例9:リスベラトロールは、ヒトの脳のアストロサイトにおいて、NMNAT活性を増加させる。
細胞のホモジネート全体における、ヒトのアストロサイトのNMNAT活性に対するリスベラトロールの効果を、図15に示す。ヒトの脳のアストロサイトを、トリプソン処理し(trypsonised)、2回洗浄し、つぎにHEPES緩衝液中で再懸濁した。つづいて、超音波の短いバーストによって均質化した。そして細胞の微粒子を遠心分離によって除去し、上清を使用してNMNAT活性の分析を行った。200μMのリスベラトロールを、わずかな体積の上清に添加した。つぎにこの試料およびリスベラトロールを含まない(コントロール)試料におけるNMNAT活性を、Balducci et al. Anal. Biochem. (1995). 228: 64-68を修正したプロトコールを使って決定した。標準アッセイを、1cmのパスを有する1mlのキュベット内で、最終的な体積を850μlとして37℃で実施した。反応混合物には、390μlのエタノール試薬、MgCl2(40mM)、100μlのATP(12.5mM)、50μlのADH(0.5mg/ml)、および適切な量のhr−NMNAT1を含有する、240μlのHEPES(10mM、pH値7.4)が含まれていた。反応は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を0.625mMの最終濃度まで添加することによって、開始させた。10分間の吸光度の増加を、Cary 50BIO UV分光光度計(Varian社、Sydney)を用いて、340nmで連続的に記録した。1分間当たりの吸光度の変化を、線形プログレス曲線の勾配から算出し、1分間当たりのNADHの生成量(nM/分)を、NADH検量線を使って決定した。
200μMのリスベラトロールを用いた処理によって、ヒトの脳のアストロサイトの細胞のホモジネート全体において、NMNAT活性が、コントロール(リスベラトロール処理していないもの)に比較すると67%増加した。NMNATの活性に対するリスベラトロールの効果を、ヒトの組換え型NMNAT(hrNMNAT:Alexis Biochemicals社)(図16)を使って、直接確認した。リスベラトロールの存在によって、細胞抽出液全体においてNMNAT活性が、大幅に(約70%)増加した(図16)。リスベラトロールの投与によって、依存的に、最大反応速度が>500%に増加し、Kmが約3分の1に減少した。標準アッセイを、1cmのパスを有する1mlのキュベット内で、最終的な体積を850μlとして37℃で実施した。反応混合物には、390μlのエタノール試薬、MgCl2(40mM)、100μlのATP(12.5mM)、50μlのADH(0.5mg/ml)、および適切な量のhr−NMNAT1を含有する、240μlのHEPES(10mM、pH値7.4)が含まれていた。反応は、NMNを0.62mMの最終濃度まで添加することによって、開始させた。NMNAT活性を、リスベラトロール(50μM、100μM、および200μM)について測定した。10分間の吸光度の増加を、Cary 50BIO UV分光光度計(Varian社、Sydney)を用いて、340nmで連続的に記録した。1分間当たりの吸光度の変化を、線形プログレス曲線の勾配から算出し、1分間当たりのNADHの生成量(nM/分)を、NADH検量線を使って決定した。
これらの結果は、リスベラトロールがNADのサルベージ経路の酵素NMNATに対して直接作用しており、この作用は酵素活性の未知のアロステリックなアップレギュレートを介して行われている可能性がもっとも高いことを、強く示唆するものである。
実施例10:クリオキノールおよびビタミンEは、H2O2およびFeに曝露された神経芽細胞腫細胞において、NAD+枯渇を低減させる。
ヒトの神経芽細胞腫細胞(SK−N−SH)を、10%のウシ胎児血清、2mMのl−グルタミン、および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、RPMI1640の細胞培養培地で、95%の空気/5%のCO2を含有する加湿雰囲気中で37℃で保持した。実験を実施する前に、細胞を、約5×105個の密度になるまで24ウェルの培養プレートに播種し、一晩インキュベーションした。実験当日に、上記培地を吸引し、廃棄した。それから細胞を500μLDPBSで2回洗浄し、つづいて、10μMの鉄または銅、10μMのアスコルビン酸(鉄をFe2+の酸化状態で維持するため)、および100μMのH2O2を含有するDPBSを、1ウェル当たり1ml添加した。この鉄を、キレート剤であるクリオキノール(CQ)および/または20μMの上記抗酸化ビタミンE(VitE)とともに5分間インキュベーションし、つづいてH2O2を添加した。すべての組み合わせを、30分間インキュベーションした。つづいて、上記の実施例1に記載のように、NAD+のアッセイを実施した。
キレート剤、クリオキノール、および抗酸化剤であるビタミンEで処理することによって、神経芽細胞腫細胞において、フリーラジカルによって誘起されるNAD+の枯渇に対する相乗的な保護がなされた(図18)。
実施例11:ヒト皮膚細胞(ケラチノサイト、線維芽細胞)の培養物における、細胞内のNADおよび細胞外のLDHの活性に対する、U.V.照射、+/−補充の効果。
ヒト皮膚細胞(ケラチノサイト)を、5×106個の密度で、Permanoxのチャンバースライド(NUNC)で2週間成長させた。この方法は、本分野において一般的に使用され、当業者にとって周知であるので、本明細書において使用した方法を詳細に説明する必要はない。
細胞に対して、曝露しないまま放置するか、またはUVB(〜200mJcm−2)に15分間曝露するか、いずれかの処理を行った。つぎに、0.1μM〜100μMのクリオキノール(CLQ)(図19a)、ピコリンアミド(PAM)(図19b)、メラトニン(MEL)(図19c)、またはリスベラトロール(RES)(図19d)のうちのいずれかを、24時間の単剤療法として、培地に補充した。
細胞を24時間放置してインキュベーションし、つづいて、細胞内のNAD(図19a〜図19dから図21)および細胞外のLDH(図21)を分析した。図19a〜図19dは、細胞内のNAD濃度、+/−UV曝露、+/−補充を示している。図19e〜図19hは、上清のLDHの活性、+/−UVE曝露、+/−補充を示している。
図19a〜図19dは、NADレベルが大幅に低下し、これに対応して、UVB照射を受けたヒト線維芽細胞において、上清(細胞死を示唆するもの、図19e〜図19h)のLDHの活性が増加することを示している。各治療法の最小有効濃度(MEC)は、0.1μM MEL、0.1μM CLQ、10μM MEL、および50μM RES(それぞれの投与群についてN=3)であった。
図20aおよび図20bは、一般に、RESを包含する二剤併用療法は、他のどの二剤の組み合わせと比べても、ずっとうまく細胞内のNADを再生成でき、細胞死(LDHの活性)を全体的に最小化できることを示している。重要なことは、選択された二剤併用療法の組み合わせによって、NADレベルを元へ戻し、細胞死(LDHの活性)を非UV処理のコントロールレベルにまで低減することができたことである。図20aは、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから24時間後のNADの回復時にRES、+/−PAM、+/−CLQ、+/−MELを用いて処理した後の、NAD濃度に対する、二剤併用の補充物の効果を示している。(グレースケールにおいて)影の薄い方のバーは、RESを包含する処理を示している。図20bは、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MELまたはRES+CLQまたはRES+PAMを用いて24時間処理した後の、LDHの放出(細胞死)に対する、二剤併用の補充物の効果を示している。
図21aも、RES/MEL/PICを用いた三剤併用療法が、NADレベルを元へ戻し、細胞死(LDHの活性)を非UV処理のコントロールレベルにまで低減することができることを示している。図21は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから24時間後のNADの回復時に、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて処理した後の、NAD濃度に対する、三剤併用の補充物(選択された組み合わせ)の効果を示している。処理用補充物それぞれについて、EC33に等しい濃度を使用して三剤の組み合わせを行った。
実施例12:ヒト皮膚細胞(ケラチノサイト、線維芽細胞)における、DNA損傷および修復に対する、U.V.照射の効果。
ヒト皮膚細胞(ケラチノサイトおよび線維芽細胞)を、5×106個の密度で、Permanoxのチャンバースライド(NUNC)で2週間成長させた。この方法は、本分野において一般的に使用され、当業者にとって周知であるので、本明細書において使用した方法を詳細に説明する必要はない。
細胞を、UVB(〜200mJcm−2)に15分間曝露した。つぎに、以下に列挙するもののうちいずれかを、培地に補充した。すなわち、
・単剤療法としての、100μMのクリオキノール(C)、100μMピコリンアミド(P)、100μMメラトニン(M)、または100μMのリスベラトロール(R)と、
・二剤併用療法としての、10μM(R) + 50μM(M)、10μM(R) + 0.1μM(C)、または90μM(R) + 0.08μM(P)と、
・三剤併用療法としての、0.65μM(P) + 33μM(C) + 5μM(R)または0.3μM(P) + 33μM(C) + 5μM(R)とのうちのいずれかである。
単剤療法に使用した投与量は、どの治療法についても、すべてIC100に等価であった。また、二剤併用療法に使用した適量の組み合わせは、{IC50(R) + IC50(M)}、{IC10(R) + IC90(C)}、{IC90(R) + IC10(P)}であった。さらに、三剤併用療法に使用した適量の組み合わせは、{IC33(R) + IC33(M) + IC33(C)}{IC33(R) + IC33(M) + IC33(P)}であった。
細胞を24時間放置してインキュベーションし、つづいて、DNA損傷を分析した(ケラチノサイトについては図22aおよび22b、線維芽細胞については図23aおよび23bを参照)。
免疫細胞化学の可視化および半定量化のために、細胞をアセトン/メタノール(vol/vol)で、−20℃で20分間固定した。つぎに、細胞をPBSで3回すすぎ、PBSにおいて0.025%のトリトン×100とともに室温で10分間インキュベーションすることによって、膜を用いた穏やかな透過処理を実施した。洗浄後、細胞を、5%の正常なヤギの血清(NGS)とともに、PBSにおいて室温で45分間インキュベーションし、PBSで2回すすぎ、5%のNGSで希釈した一次抗体6〜4PP mAb(コスモバイオ株式会社、日本)とともに、37℃で1時間インキュベーションした。つぎに、細胞を5%のNGS溶液で洗浄し、適切な標識二次抗体(Alexa594と結合した、ヤギの抗ネズミIgG)とともに37℃で1時間インキュベーションした。核を、DAPIを使って、室温で1μg/mlで5分間染色した。37℃でPBSで数回洗浄した後、カバーガラスを、フルオロモウント−Gを担持するガラススライドの上に手早く載せ、デジタルSensiCamに関連するオリンパスB×60型蛍光顕微鏡を使って、詳細に観測した。それぞれの標識化実験について、以下の3つのコントロールを実施した。すなわち、1)mAbsのアイソタイプの抗体コントロールおよびpAbsの血清コントロールと、2)二次的な標識抗体だけを用いたインキュベーションと、3)非標識細胞の自己蛍光の推定とである。強度を、ImageJ10.2を使って数量化(半数量化)した。3つの別々の顕微鏡レベルのフィールドを、各処理について分析した。データのSEMは<5%であった。
図22aおよび図23aは、補充をせずにUV処理された細胞のDNA損傷(中央のカラム)について、強い染色を示している。DNA損傷シグナルの強度が単剤療法の場合にはほかに比べてわずかに弱く、二剤併用療法の場合にはさらに弱く、三剤併用療法(N=3、ケラチノサイト、それぞれの投与群についてN=1の線維芽細胞)で処理した細胞では−veコントロール(つまりUV損傷がない試料)と比べて差がなかった。なお、もっとも効果的な単剤療法(IC100)でも、IC100当量の二剤併用療法ほどには効果的でなく、その二剤併用療法でも、IC100当量の三剤併用療法ほどには効果的でなかった。
図22bおよび図23bは、ICCで染色された各部分の蛍光強度の半定量を示しており、三剤併用療法がもっとも効果的なDNA修復を達成していることの、明確でグラフィカルな証拠を示唆している。
実施例13:ヒト皮膚細胞(線維芽細胞)の培養物における、DNA修復に対する、U.V.照射、+/−補充の効果。
ヒト皮膚細胞(線維芽細胞)を、5×106個の密度で、Permanoxのチャンバースライド(NUNC)で2週間成長させた。この方法は、本分野において一般的に使用され、当業者にとって周知であるので、本明細書において使用した方法を詳細に説明する必要はない。
細胞に対して、曝露しないまま放置するか、またはUVB(〜200mJcm−2)に15分間曝露するか、いずれかの処理を行った。つぎに、100μMのクリオキノール(CLQ)、ピコリンアミド(PAM)、メラトニン(MEL)、またはリスベラトロール(RES)のうちのいずれかを、24時間の単剤療法として、培地に補充した。
細胞を24時間放置してインキュベーションし、つづいて、細胞内の残留性DNA損傷(dsDNAの切断)を分析した(図24)。残留性のdsDNAの切断がUV処理したコントロールの場合より少なければ、このことが、DNA修復の効率を示唆している。図24は、ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES(100μM)、MEL(100μM)、CLQ(0.1μM)、またはPAM(100μM)を用いて24時間処理した後の、DNA修復に対するモノセラピー補充の効果を示している。使用した濃度は、どの治療法についても、EC100に等価であった。
図24は、RES、PAM、CLQ、またはMELを用いた単剤療法によって、dsDNAの切断量が大幅に低減されることを示している。見かけ上の最大の改善はMELで処置した群の場合に観察され、損傷DNAが〜40%減少した。
図25は、RES+MEL、RES+CLQ、またはRES+PAMを用いた二剤併用療法によっても、dsDNAの切断量が大幅に低減されることを示している。最大の改善はMELで処置した群の場合に観察され、損傷DNAが>60%減少した。図25は、ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES+MEL、RES+CLQ、またはRES+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する二剤併用の補充物の効果を示す。使用した濃度は、EC50/EC50、EC10/EC90、およびEC90/EC10にそれぞれ等価であった。
ただし、図26は、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いた三剤併用療法によって、dsDNAの切断量がさらに大幅に低減されることを示している。DNAの修復の最大の改善は、RES+MEL+PAMで処置した群の場合に観察され、損傷DNAが>80%減少した。図26は、ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する三剤併用の補充物の効果を示している。
まとめると、このデータは、RESを包含する二剤併用療法が、どの単剤療法と比較しても、(細胞内のNADの再生成について先に観察したように)DNAの修復を(EC100の濃度であっても)はるかによく亢進することを明瞭に示している。該データは、三剤併用療法が、二剤併用療法より、DNA修復の亢進において(EC100当量の組み合わせを使っても)はるかに効果的であったことをも示している。
実施例14:ヒト皮膚細胞(ケラチノサイト)の培養物における、DNA修復に対する、UV照射、+/−補充の効果。
ヒト皮膚細胞(ケラチノサイト)を、5×106個の密度で、Permanoxのチャンバースライド(NUNC)で2週間成長させた。この方法は、本分野において一般的に使用され、当業者にとって周知であるので、本明細書において使用した方法を詳細に説明する必要はない。
細胞に対して、曝露しないまま放置するか、またはUVB(〜200mJcm−2)に15分間曝露するか、いずれかの処理を行った。つぎに、100μMのクリオキノール(CLQ)、ピコリンアミド(PAM)、メラトニン(MEL)、またはリスベラトロール(RES)のうちのいずれかを、24時間の単剤療法として、培地に補充した。
細胞を24時間放置してインキュベーションし、つづいて、細胞内の残留性DNA損傷(dsDNAの切断)を分析した(図27)。残留性のdsDNAの切断がUV処理したコントロールの場合より少なければ、このことが、DNA修復の効率を示唆している。
図27は、RES、PAM、CLQ、またはMELを用いた単剤療法によって、dsDNAの切断量が大幅に低減されることを示している。見かけ上の最大の改善はMELで処置した群の場合に観察され、損傷DNAが〜30%減少した。図27は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES(100μM)、MEL(100μM)、CLQ(0.1μM)、またはPAM(100μM)を用いて24時間処理した後の、DNA修復に対するモノセラピー補充の効果を示す。使用した濃度は、どの治療法についても、EC100に等価であった。
図28は、RES+MEL、RES+CLQ、またはRES+PAMを用いた二剤併用療法によっても、dsDNAの切断量が大幅に低減されることを示している。最大の改善はMELで処置した群の場合に観察され、損傷DNAが〜40%減少した。図28は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MEL、RES+CLQ、またはRES+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する二剤併用の補充物の効果を示す。使用した濃度は、EC50/EC50、EC10/EC90、およびEC90/EC10にそれぞれ等価であった。
ただし、図29は、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いた三剤併用療法によって、dsDNAの切断量がさらに大幅に低減されることを示している。DNAの修復の最大の改善は、RES+MEL+PAMで処置した群の場合に観察され、損傷DNAが〜60%減少した。図29は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する三剤併用の補充物の効果を示す。
まとめると、このデータは、二剤併用療法が、どの単剤療法と比較しても、(細胞内のNADの再生成について先に観察したように)DNAの修復を(EC100の濃度であっても)はるかによく亢進することを明瞭に示している。該データは、三剤併用療法が、二剤併用療法より、DNA修復の亢進において(EC100当量の組み合わせをを使っても)はるかに効果的であることをも示している。
実施例15:相乗的な組成物。
ヒトのヒトの胎児の初代アストロサイトを、Guillemin et al. J. Neurochem. (2001) 78(4): 842-853に記載されているように、培養した。細胞内のNAD+レベルを、Grant and Kapoor J. Neurochem. (1998) 70(4): 1759-1763に記載された方法を使って測定した。Bradford Anal. Biochem. (1976) 53: 452-458に記載されたブラッドフォードのタンパク質アッセイ法を使って、細胞のホモジネート中のタンパク質の量を測定することによって、細胞内のNAD+の濃度を、培養物間の細胞数のバラツキについて調節した。
約1×105個の細胞を24ウェルの培養プレートに播種し、Guillemin et al. J. Neurochem. (2001) 78(4): pp.842-853に先に記載されたように、24時間培養状態で保持した。選択した濃度の個々薬剤または合剤(クリオキノール10μM、メラトニン5μM、リスベラトロール100μM)を、10μLの部分標本において、1mlの培地に添加した。24時間後に、培地を除去して2回洗浄し、リン酸緩衝食塩水(PBS)と置き替えた。つぎに、100μMのH2O2を含有する、300μLのPBSを、それぞれの培養ウェルに添加し、5%のCO2中で37℃で15分間放置してインキュベーションした。つぎに、PBSを、それぞれの培養物から吸引し、新鮮なホモジネート混合物と置き替えた。そして、細胞を、超音波処理し、NAD+(H)および総タンパク質量について、ホモジネートを分析した。
図30は、H2O2(100μM)によって誘起される酸化ストレスを15分間加えた後、メラトニンを5μM(抗酸化剤)および/またはクリオキノールを10μM(Fe2+/Cu+、キレート剤)および/またはリスベラトロールを100μM(NMNAT、酵素活性化薬剤)を用いた24時間の事前処理の、細胞内のNAD+レベルに対する効果を示す。NAD+レベルは、三剤併用療法によって処理された細胞において、どの1つの薬剤またはどの2つの薬剤の組み合わせを用いた処理法と比較しても、大幅に高かった。
H2O2処理
図30は、細胞がH2O2で処理されると、その結果、細胞内のNADレベルが大きく減少することを示している。この結果は、ヒドロキシラジカル(フェントン反応)によって誘起されるDNA損傷、およびその結果生じる、NADを基質として使用するDNA修復酵素PARPの、過度な活性化に起因する。
単剤療法
強力な抗酸化性を有するメラトニンまたはFe++/Cu+のキレート剤であるクリオキノールを用いて事前処理することによって、NAD+の枯渇が大幅に低減される(図30)。ただし、リスベラトロールだけを用いた事前処理では、酸化性を有する(H2O2)傷害だけの場合と比較して、細胞内のNAD+の大きな変化を示さなかった。
二剤併用療法
クリオキノール、メラトニン、またはリスベラトロールのうちの任意の2つの薬剤を用いた事前処理では、どの単剤療法と比較しても、酸化性を有する(H2O2)傷害の後、NAD+レベルがかなり高い程度に保存された(図19)。リスベラトロール(resveratol)を包含する二剤併用療法では、リスベラトロールを包含しない処理法と比較してNAD+レベルがかなり高い程度に保存され(図19)、相乗効果があることを示唆している。
三剤併用療法
クリオキノール+メラトニン+リスベラトロールの3つの薬剤すべてを用いて事前処理することによって、どの単剤療法または二剤併用療法と比較しても、酸化性を有する(H2O2)傷害の後、NAD+レベルがかなり高い程度に保存された(図19)(*p<0.05、H2O2だけの場合に比較すると**p<0.05、二剤併用療法による処理それぞれに比較すると***p<0.05)。
〔産業上の利用可能性〕
本発明は、被検者においてDNA修復およびNAD+の合成を誘起するための方法および組成物に関して使用され得る。特に、本発明は、酸化ストレスおよび/またはDNA損傷に関連する状態および疾病を予防および治療するための方法および医薬組成物に関して使用され得る。
ニコチンアミド(NAM)またはニコチン酸(NA)から始まる、サルベージ経路を介したNAD+の合成を示す図である。
トリプトファンから始まる、新生経路を介したNAD+の合成を示す図である。
培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、細胞内のNAD+レベルに対する、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤1−MTの効果を示すグラフである。ヒトの胎児のアストロサイトを、1−MTだけ、または1−MT/L−トリプトファン(l−Tryp)と1−MT/ニコチン酸(Nic a)との組み合わせを用いて処理した。コントロールに比較すると*p<0.05、1−MTだけを用いた処理に比較すると**p<0.05、L−trypおよび1−MTを用いて処理した細胞に比較すると****p<0.05であった。
培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、PARP活性に対する、異なる濃度の過酸化水素(H2O2)の効果を示すグラフである。H2O2を使用しなかった場合に比較するとαp<0.05、10μMのH2O2を使用した場合に比較するとβp<0.05、20μMのH2O2を使用した場合に比較するとχp<0.05、50μMのH2O2を使用した場合に比較するとδp<0.05であった。
培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、細胞内のNAD+に対する、異なる濃度の過酸化水素(H2O2)の効果を示すグラフである。0μMのH2O2コントロールに比較すると*p<0.05、50μMのH2O2を使用した場合に比較すると**p<0.05、100μMのH2O2を使用した場合に比較すると***p<0.05であった。
異なる濃度の過酸化水素(H2O2)に曝露された後の、培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、乳酸脱水素酵素(LDH)の放出を示すグラフである。0μMのH2O2コントロールに比較すると*p<0.05、10μMのH2O2を使用した場合に比較すると**p<0.05、50μMのH2O2を使用した場合に比較すると***p<0.05、100μMのH2O2を使用した場合に比較するとΨ<0.05であった。
培養されたヒトの胎児のアストロサイトにおける、H2O2によって媒介されるNAD+の枯渇に対する、ケルセチンの効果を示すグラフである。*p<0.05、また、H2O2だけを使用した場合に比較すると**p<0.005であった。
メラトニンを用いた処理をした後の、ヒトの培養神経芽細胞腫細胞における、細胞内のNAD+レベルに対する、H2O2の効果を示すグラフである。Ctrlに比較すると*p<0.05、100μMのH202の場合と20μMのMel + H202の場合とを比較すると**p<0.05、2μMのMel + H202 の場合と200μMのMel + H202の場合とを比較すると***p<0.05であった。
ビタミンEを用いて処理した後の、ヒトの培養神経芽細胞腫細胞における、細胞内のNAD+レベルに対する、H2O2の効果を示すグラフである。Ctrlに比較すると*p<0.05であった。
アスコルビン酸および第一鉄の存在下でH2O2を用いて処理した後の、ヒトの神経芽細胞腫細胞における、細胞内のNAD濃度に対する、親油性キレート剤であるクリオキノール(CQ)の用量反応の効果を示すグラフである。Ctrlに比較すると*p<0.05、H202 + Feの場合に比較すると**p<0.05、10μMのCQ + H202 + Feの場合に比較すると***p<0.05であった。
H2O2によって媒介されるNAD+の枯渇に対する、リスベラトロールの効果を示すグラフである。リスベラトロールは、細胞内のNAD+を、コントロール(*p<0.05)を超えて大幅に増加させた。ヒトの初代アストロサイトにおいてH2O2だけを使用した場合に比較すると**p<0.05であった。
新生経路を介した、リスベラトロールによって誘起されるNAD+の合成に対する、キヌレニン経路阻害剤1−MTの効果を示すグラフである。
NAD+の合成に対する、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)阻害剤であるタンニン酸の効果を示す、用量反応曲線のグラフである。ICは抑制濃度を示す。
リスベラトロールによって媒介されるNAD+の合成に対する、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)阻害剤であるタンニン酸の効果を示すグラフである。リスベラトロールを用いて処理しただけの場合に比較すると*p<0.05、コントロールに比較すると**p<0.05であった。
ヒトの脳のアストロサイトにおける、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性に対する、リスベラトロールの効果を示すグラフである。
ヒトの脳のアストロサイトにおける、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(NMNAT)活性に対する、各種濃度のリスベラトロールの効果を示す表である。
酸化ストレスがDNA損傷を誘起する、共通のメカニズムを示す図である。
酸化促進剤(H2O2)および鉄(Fe)に曝露した後、キレート剤(クリオキノール−CQ)および抗酸化剤(ビタミンE)を用いて処理した神経芽細胞腫細胞における、NAD+生成を示すグラフである。
図19a〜図19dは、細胞内のNAD濃度、+/−UV曝露、+/−補充をグラフに表したものである。図19e〜図19hは、上清のLDHの活性、+/−UV曝露、+/−補充をグラフに表したものである。
ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから24時間後のNADの回復時にRES、+/−PAM、+/−CLQ、+/−MELを用いて処理した後の、NAD濃度に対する、二剤併用の補充物の効果を示すグラフである。
ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MELまたはRES+CLQまたはRES+PAMを用いて24時間処理した後の、LDHの放出(細胞死)に対する、二剤併用の補充物の効果を示すグラフである。
ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから24時間後のNADの回復時に、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて処理した後の、NAD濃度に対する、三剤併用の補充物(選択された組み合わせ)の効果を示すグラフである。
ケラチノサイトの免疫細胞化学を可視化したものであり、補充をせずにUV処理された細胞のDNA損傷(中央カラム)が、強く染色していることを示している。
ケラチノサイトの、ICCで染色された各部分について、蛍光強度の半定量を示すグラフである。
線維芽細胞の免疫細胞化学を可視化したものであり、補充をせずにUV処理された細胞のDNA損傷(中央カラム)が、強く染色していることを示している。
線維芽細胞の、ICCで染色された各部分について、蛍光強度の半定量を示すグラフである。
ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES(100μM)またはMEL(100μM)またはCLQ(0.1μM)またはPAM(100μM)を用いて24時間処理した後の、DNA修復に対するモノセラピー補充の効果を示すグラフである。
ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES+MEL、RES+CLQ、RES+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する二剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。使用した濃度は、EC50/EC50、EC10/EC90、EC90/EC10にそれぞれ等価であった。
ヒトの初代線維芽細胞において、UVBに曝露してから、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて処理24時間した後の、DNA修復に対する三剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。
ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES(100μM)またはMEL(100μM)またはCLQ(0.1μM)またはPAM(100μM)を用いて24時間処理した後の、DNA修復に対するモノセラピー補充の効果を示すグラフである。
ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MEL、RES+CLQ、RES+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する二剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。使用した濃度は、EC50/EC50、EC10/EC90、EC90/EC10にそれぞれ等価であった。
ヒトの初代ケラチノサイトにおいて、UVBに曝露してから、RES+MEL+CLQまたはRES+MEL+PAMを用いて24時間処理した後の、DNA修復に対する三剤併用療法の補充物の効果を示すグラフである。
H2O2によって誘起される酸化ストレスを15分間与えた後、抗酸化剤(メラトニン)および/またはクリオキノール)、キレート剤および/またはリスベラトロールを用いて24時間かけて行った事前処理の、ヒトの胎児のアストロサイトにおける細胞内のNADレベルに対する効果を示すグラフである。*p<0.05、H2O2だけを使用した場合に比較すると**p<0.05、二剤併用療法によるそれぞれの処理に比較すると***p<0.05であった。