近年、フラッシュメモリに代わる高速動作可能な次世代不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM:Nonvolatile Random Access Memory)として、FeRAM(Ferroelectric RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、PRAM(Phase Change RAM)等の様々なデバイス構造が提案され、高性能化、高信頼性化、低コスト化、及び、プロセス整合性という観点から、激しい開発競争が行われている。
これら既存技術に対して、電圧パルスを印加することによって可逆的に電気抵抗が変化する可変抵抗素子を用いた抵抗性不揮発性メモリRRAM(Resistive Random Access Memory)(登録商標)が提案されている。この構成を図11に示す。
図11に示されるように、従来構成の可変抵抗素子は、下部電極103と可変抵抗体102と上部電極101とが順に積層された構造となっており、上部電極101及び下部電極103間に電圧パルスを印加することにより、抵抗値を可逆的に変化させることができる性質を有する。この可逆的な抵抗変化動作(以下では「スイッチング動作」と称する)によって変化する抵抗値を読み出すことによって、新規な不揮発性半導体記憶装置が実現できる構成である。
この不揮発性半導体記憶装置は、可変抵抗素子を備える複数のメモリセル夫々を行方向及び列方向にマトリクス状に配列してメモリセルアレイを形成するとともに、このメモリセルアレイの各メモリセルに対するデータの書き込み、消去、及び読み出し動作を制御する周辺回路を配置して構成される。そして、このメモリセルとしては、その構成要素の違いから、1つのメモリセルが1つの選択トランジスタTと1つの可変抵抗素子Rとから構成される(「1T1R型」と称される)メモリセルや、1つの可変抵抗素子Rのみから構成される(「1R型」と称される)メモリセル等が存在する。このうち、1T1R型メモリセルの構成例を図12に示す。
図12は1T1R型のメモリセルによるメモリセルアレイの一構成例を示す等価回路図である。各メモリセルの選択トランジスタTのゲートはワード線(WL1〜WLn)に接続されており、各メモリセルの選択トランジスタTのソースはソース線(SL1〜SLn)に接続されている(nは自然数)。また、各メモリセル毎の可変抵抗素子Rの一方の電極は選択トランジスタTのドレインに接続されており、可変抵抗素子Rの他方の電極はビット線(BL1〜BLm)に接続されている(mは自然数)。又、各ワード線WL1〜WLnはそれぞれワード線デコーダ106に接続され、各ソース線SL1〜SLnはそれぞれソース線デコーダ107に接続され、各ビット線BL1〜BLmはそれぞれビット線デコーダ105に接続されている。そして、アドレス入力(図示せず)に応じてメモリセルアレイ104内の特定のメモリセルへの書込み、消去及び読み出し動作のための特定のビット線、ワード線及びソース線が選択される構成である。
このように選択トランジスタTと可変抵抗素子Rとが直列に配置される構成により、ワード線の電位変化によって選択されたメモリセルのトランジスタがオン状態となり、更にビット線の電位変化によって選択されたメモリセルの可変抵抗素子Rのみに選択的に書込、或いは消去することができる構成となっている。
図13は、1R型のメモリセルの一構成例を示す等価回路図である。各メモリセルは可変抵抗素子Rのみから構成されており、可変抵抗素子Rの一方の電極はワード線(WL1〜WLn)に、他方の電極はビット線(BL1〜BLm)に接続されている。また、各ワード線WL1〜WLnはそれぞれワード線デコーダ106に接続され、各ビット線BL1〜BLmはそれぞれビット線デコーダ105に接続されている。そして、アドレス入力(図示せず)に応じてメモリセルアレイ131内の特定のメモリセルへの書込み、消去及び読み出し動作のための特定のビット線及びワード線が選択される構成である。
上記の可変抵抗素子Rにおいて、可変抵抗体として用いられる可変抵抗材料としては、米国ヒューストン大のShangquing LiuやAlex Ignatiev等によって、超巨大磁気抵抗効果で知られるペロブスカイト材料に電圧パルスを印加することによって可逆的に電気抵抗を変化させる方法が下記の特許文献1及び非特許文献1に開示されている。この方法は超巨大磁気抵抗効果で知られるペロブスカイト材料を用いながらも、磁場の印加なしに室温においても数桁にわたる抵抗変化が現れる。尚、特許文献1に例示する素子構造では、可変抵抗体の材料としてはペロブスカイト型酸化物であるプラセオジウム・カルシウム・マンガン酸化物Pr1−xCaxMnO3(PCMO)膜が用いられている。
又、他の可変抵抗体材料としては、チタン酸化(TiO2)膜、ニッケル酸化(NiO)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜、酸化ニオブ(Nb2O5)膜などの遷移金属元素の酸化物についても、可逆的な抵抗変化を示すことが非特許文献2及び非特許文献3などから知られている。
また、上述の可変抵抗素子は、金属酸化物中に酸素欠陥に起因する不純物準位がバンドギャップ中に形成されることで、n型あるいはp型の半導体の伝導を示す。また抵抗変化は電極界面近傍の状態変化であることが確認されている。
このような遷移金属酸化物を可変抵抗体とする可変抵抗素子の抵抗スイッチングを安定に行うためには、可変抵抗体材料に応じて、適宜、電極材料を選択する必要がある。これは即ち、可変抵抗体材料に応じて、可変抵抗素子の電極として利用可能な電極材料の組み合わせが制限されるということを意味する。
可変抵抗素子を高集積メモリに適用するには、製造プロセス上使いやすい材料で構成されることが望ましい。しかしながら、上述の通り、利用可能な電極材料が可変抵抗体材料に応じて制約を受けるため、必ずしも製造プロセス上使いやすい材料となっているわけではないという問題があった。
金属酸化物を可変抵抗体とする可変抵抗素子においては、Pt、Ru、Ir等の貴金属電極での動作報告が多いが、こういった材料は、高集積メモリを実現するための微細加工が困難であるか、或いは、材料そのものが高価であるといった問題がある。更に、半導体プロセスで一般的に用いられている電極材料であっても、その材料が微細凹形状への埋め込みが容易か否かによって、可変抵抗素子の構造設計の自由度が全く異なってくる。微細凹形状への埋め込みが容易である電極材料であれば、埋め込みプラグ電極として用いることもできるし、当然、平坦表面へ成膜してエッチング加工する電極としても用いることができる。つまり、可変抵抗素子を構成する2つの電極材料のうちの一方を、上部電極にするか、下部電極にするかを自由に選択できる。これは、下地CMOS回路と可変抵抗素子との接続を、素子特性を最大限生かせるように選択できることを意味する。
上記の従来技術における問題点を鑑み、本発明は、可変抵抗素子として利用可能な電極材料と可変抵抗体材料の条件を緩和し、製造しやすい構成の可変抵抗素子を提供することをその目的とする。更に、当該可変抵抗素子を備え、製造が容易な不揮発性半導体記憶装置を提供することをその目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る可変抵抗素子は、第1電極と第2電極の間に金属酸化物膜が複数層、積層されてなる可変抵抗素子であって、前記金属酸化物膜の少なくとも2層は、前記第1電極側の抵抗変化層、及び、前記第2電極と前記抵抗変化層との間に挿入される、前記抵抗変化層を構成する金属酸化膜と同一の金属元素の酸化膜であって且つその抵抗値を前記抵抗変化層よりも低抵抗化する処理がされた低抵抗層であることを第1の特徴とする。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、上記第1の特徴に加えて、前記低抵抗層は、前記第2電極とオーミック接触していることを第2の特徴とする。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、上記何れかの特徴に加えて、前記抵抗変化層、及び、前記低抵抗層が、共にn型の金属酸化物で構成されていることを第3の特徴とする。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、上記第3の特徴に加えて、前記低抵抗層を構成する金属酸化物膜の膜中の酸素欠損濃度が、前記抵抗変化層を構成する金属酸化物膜の膜中の酸素欠損濃度よりも高いことを第4の特徴とする。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、上記第1乃至第3の何れかの特徴に加えて、前記低抵抗層が、前記抵抗変化層を構成する金属酸化物を構成する元素とは異なる不純物元素を含むことを第5の特徴とする。
更に、本発明に係る上記第5の特徴の可変抵抗素子は、前記不純物元素の価数が、前記低抵抗層を構成する金属酸化物を構成する金属元素の価数よりも大きいことが好ましい。
更に、本発明に係る上記第5の特徴の可変抵抗素子は、前記低抵抗層が、Hf,Zr,又はTiの何れかの元素の酸化物であり、前記不純物元素としてNb又はTa元素を含んで構成されていることが好ましい。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、前記抵抗変化層が、Hf,Zr,Ti,Ta,V,Nb,Wの何れかの元素の酸化物、またはチタン酸ストロンチウムで構成されていることが好ましい。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、前記第1電極の仕事関数が4.5eV以上であることが好ましい。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、前記第1電極が、Ti窒化物、Ti酸窒化物、Ta窒化物、Ta酸窒化物、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、又は、W,Ni,Coから選択される金属の何れかを含んで構成されていることが好ましい。
更に、本発明に係る可変抵抗素子は、前記第2電極が、前記第1電極と同一の材料で構成されていることが好ましい。
上記目的を達成するための本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、上記第1乃至第5の何れかの特徴の可変抵抗素子を複数、行または列方向のうち少なくとも列方向に配列したメモリセルアレイを備えることを特徴とする。
更に、本発明に係る不揮発性半導体装置は、上記特徴に加えて、前記メモリセルアレイが、前記第2電極が列方向に延伸し、列方向に隣接する前記可変抵抗素子同士を相互に接続してなり、前記低抵抗層が列方向に延伸していることが好ましい。
更に、本発明に係る不揮発性半導体装置は、上記特徴に加えて、前記メモリセルアレイが、前記第1電極が列方向に延伸し、列方向に隣接する前記可変抵抗素子同士を相互に接続してなり、前記低抵抗層が列方向に延伸する場合において、当該列方向に隣接する前記可変抵抗素子間の前記低抵抗層による抵抗が、前記可変抵抗素子の抵抗値の最も高い高抵抗状態の抵抗値よりも高いことが好ましい。
更に、本発明に係る不揮発性半導体装置は、上記特徴に加えて、前記メモリセルアレイが、前記第1電極が列方向に延伸し、列方向に隣接する前記可変抵抗素子同士を相互に接続してなり、前記低抵抗層が列方向に延伸する場合において、
前記列方向に隣接する前記可変抵抗素子間の最短距離をL、前記列方向に隣接する前記可変抵抗素子間を接続する配線の幅をW、前記可変抵抗素子を構成する前記第2電極の径をF、前記低抵抗層の厚さをd、前記可変抵抗素子の抵抗値の最も低い低抵抗状態の抵抗値をRL、前記高抵抗状態の抵抗値をRHとしたとき、
d<{(L/W)(RL/RH)}1/2・F
を満たすことが好ましい。
更に、本発明に係る不揮発性半導体装置は、上記特徴に加えて、前記メモリセルアレイが、前記第1電極が列方向に延伸し、列方向に隣接する前記可変抵抗素子同士を相互に接続してなり、前記低抵抗層が列方向に延伸する場合において、
前記RHの前記RLに対する比が100以上であり、前記d、前記L、前記W、前記Fが、d<(L/W)1/2・F/10を満たすことが好ましい。
本願発明者らは、鋭意研究により、抵抗変化層(可変抵抗体)を第1電極と第2電極で挟持した可変抵抗素子において、二つの電極/酸化物界面のポテンシャルバリヤが抵抗スイッチング特性を大きく左右することを明らかにした。即ち、ポテンシャルバリヤの大きい一方の界面でメモリ機能を持たせ、他方の界面はオーミック接触とするのがよい。
このようにすることで、ポテンシャルバリヤの大きい一方の界面のみがスイッチング界面となり、可変抵抗素子の抵抗スイッチングを安定に行うことが可能になる。
即ち、スイッチング界面を構成する電極(第1電極)の材料としては、仕事関数の大きな(好ましくは、4.5eV程度以上の)金属材料を用い、抵抗変化層(可変抵抗体)との接合界面を例えばショットキー接合としてスイッチング界面とする。一方、非スイッチング界面を構成する電極(第2電極)の材料としては、中間的な(好ましくは、4.5eV程度以下の)仕事関数を有する材料を用い、抵抗変化層(可変抵抗体)との接合界面をオーミック接合として非スイッチング界面とする。
しかしながら、それでも、仕事関数の制約のため電極材料選択の自由度が低く、製造プロセス上使いやすい材料を利用できない場合が存在する。
そこで、本発明では、抵抗変化層と第2電極の間に低抵抗層を挿入し、抵抗変化層を低抵抗層を介して第2電極と接触させることで第2電極と抵抗変化層間のオーミックな伝導特性を実現する。低抵抗層は、抵抗変化層を構成する金属酸化膜と同一の金属元素の酸化膜であり、これにより、第2電極と低抵抗層間、及び、低抵抗層と抵抗変化層間の接合を第2電極の仕事関数に依らず、オーミックとすることができる。
当該低抵抗層は、金属酸化膜に不純物をドーピングすることにより形成することができる。或いは、n型の伝導特性を示す金属酸化膜を用いる場合は、成膜条件を調整して意図的に低抵抗層に酸素欠損を導入し、低抵抗層の金属酸化膜の酸素欠損濃度を抵抗変化層の金属酸化膜の酸素欠損濃度よりも高くすることによっても、低抵抗層の形成が可能である。
尚、低抵抗層の抵抗値の目安としては、抵抗変化層の最も抵抗の低い抵抗状態よりも抵抗値が低くなるように設定することが望ましい。
以上より、本発明により第2電極として用いる材料の選択の自由度が大幅に緩和され、例えば、第2電極を第1電極と同じ材料を用いて構成することが可能になる。
従って、本発明に依れば、低抵抗層を抵抗変化層と第2電極の間に挿入することで、可変抵抗素子として利用可能な電極材料と可変抵抗体材料の条件を緩和され、製造が容易な可変抵抗素子、及び、当該可変抵抗素子を備えてなる製造が容易な不揮発性半導体記憶装置が提供される。
〈第1実施形態〉
図1は本発明の一実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置(以降、適宜「本発明装置1」と称す)において用いる可変抵抗素子2の素子構造を模式的に示す断面図である。尚、以降に示す図面では、説明の都合上、要部を強調して示すこととし、素子各部の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しない場合がある。
本実施形態では、抵抗変化層としてバンドギャップの大きな絶縁物層である酸化ハフニウム(HfOX)を選んで用いる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。抵抗変化層として酸化ジルコニウム(ZrOX)、酸化チタン(TiOX)、酸化タンタル(TaOX)、酸化バナジウム(VOX)、酸化ニオブ(NbOX)、酸化タングステン(WOX)、或いは、チタン酸ストロンチウム(SrTiOX)等を用いてもよい。同様に、低抵抗層は、抵抗変化層と同じ金属酸化物で構成され、本実施形態では、酸化ハフニウム膜が用いられる。ただし、低抵抗層の膜厚は、抵抗変化層の抵抗を変化させる動作条件では抵抗が変化しない程度の薄い膜厚に設定する。
尚、これらの遷移金属酸化物を抵抗変化層として用いる場合、可変抵抗素子の製造直後の初期抵抗は非常に高く、電気的ストレスによって高抵抗状態と低抵抗状態を切り替え可能な状態にするためには、使用前に、通常の書き換え動作に用いる電圧パルスより電圧振幅が大きく、かつパルス幅が長い電圧パルスを製造直後の初期状態の可変抵抗素子に印加し、抵抗スイッチングがおきる電流パスを形成する、所謂フォーミング処理を行っておく必要がある。このフォーミング処理によって形成される電流パス(フィラメントパスと呼ばれる)がその後の素子の電気特性を決定することが知られている。
以下に可変抵抗素子2の製造方法について示す。まず、単結晶シリコン基板10上に、絶縁膜11として厚さ200nmのシリコン酸化膜を熱酸化法により形成する。その後、第1電極12の材料として、例えば厚さ100nmの窒化チタン膜を、スパッタリング法によりシリコン酸化膜11上に形成する。尚、第1電極の材料としては、窒化チタン(TiN:4.7eV)あるいは酸窒化チタンの他、比較的仕事関数の大きく、LSI製造プロセスでよく用いられる材料として、窒化タンタル(TaNx:窒素の化学量論的組成xに依存して、4.05〜5.4eV)、酸窒化タンタル、窒化チタンアルミニウム、又は、W(4.5eV),Ni(5.2eV),Co(4.45eV)等を用いることができる。尚、括弧内に各金属の仕事関数値を示した。
その後、窒化チタン膜12上に、抵抗変化層13の材料として、例えば、厚さが2〜5nm(ここでは、3nm)の酸化ハフニウム膜を、更に、低抵抗層14の材料として、厚さが2〜5nm(ここでは、3nm)の酸化ハフニウム膜を、夫々、スパッタリングにより連続して形成する。このとき、スパッタ成膜雰囲気を制御することにより、低抵抗層14の酸素欠損濃度が抵抗変化層13の酸素欠損濃度よりも高くなるように制御する。
その後、低抵抗層14上に、第2電極15の材料として、例えば、厚さ150nmのタンタル薄膜をスパッタリング法により形成する。最後にフォトレジスト工程によるパターンを形成して、ドライエッチングにより5μm×5μmの素子領域を図1に示すように形成する。これにより、可変抵抗素子2が作製される。
上記の素子製造方法では、抵抗変化層13および低抵抗層14としての金属酸化物の成膜を、当該金属酸化物を構成する金属をターゲットとするリアクティブスパッタによって行うとともに、成膜雰囲気の酸素添加量を意図的に減らすことにより酸素欠損の多い膜を成膜することができる。例えば、Hf金属をターゲットにして酸素添加雰囲気でのリアクティブスパッタにより酸素欠損の多い酸化ハフニウム膜(HfOX−δ)を成膜できる。
酸化ハフニウム膜のリアクティブスパッタによる成膜において、成膜雰囲気中の酸素添加量(アルゴンを希釈ガスとする全圧に対する酸素分圧比)と抵抗値の関係を図2に示す。尚、図2は、金属酸化物層の膜厚が5nmで、素子領域の面積が50μm×50μmの場合の結果である。酸素添加量を減らすことにより、抵抗が大きく低下するが、これは、酸素欠損量が増加しているためである。
酸素欠損濃度が異なる膜を積層するには、酸素添加量を変えて順次成膜を行えばよい。例えば、第1及び第2電極の一例として窒化チタンを用いる場合、窒化チタンの成膜、酸素添加量20%での酸化ハフニウム成膜、酸素添加量10%での酸化ハフニウム成膜、窒化チタンの成膜の順で成膜を行い、フォトリソグラフィ、エッチングにより加工すれば、可変抵抗素子が形成される。この場合、先に成膜した窒化チタンと酸素欠損の少ない酸化ハフニウムの界面がメモリ機能界面となり、後で成膜した窒化チタンと酸素欠損の多い酸化ハフニウムの界面が接触抵抗の低い(オーミック)界面となる。尚、上記の例では、酸素欠損濃度が異なる2層からなる酸化ハフニウム層を形成したが、欠損量が異なる層数をさらに増やしてもよいし、酸素欠損量を連続的に変化させてもよい。
酸素欠損の導入は、熱処理等を用いても可能である。例えば、所定の成膜条件でスパッタリング成膜により金属酸化物を成膜し、その後、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気あるいは真空中で熱処理を行うことにより、金属酸化物表面の酸素を外方拡散させ、表面に酸素欠損の多い層を形成することができる。また、金属酸化物表面にアルゴンイオン等を照射して酸素をたたき出して酸素欠損を導入することもできる。或いは、金属酸化物から酸素を抜き取りやすい金属(たとえばアルミニウム、チタンなど)を金属酸化物に接触させて、金属酸化物に酸素欠損を導入しても良い。他に、還元雰囲気での熱処理等を行ってもよい。
また、低抵抗層14として、不純物ドーピングによってキャリア濃度の高い層を形成してもよい。この場合、予めドーピングされているターゲットを用いたスパッタリングによる成膜、ドーピング元素の酸化物と抵抗スイッチング用の金属酸化物のコスパッタ成膜等を用いることができる。一般に、n型の金属酸化物にキャリアドーピングするには、金属酸化物を構成する金属を、その価数よりも大きな価数の金属で置換すればよい。しかしながら、前述の価数の大小関係を満たさなくともキャリアドーピングは可能であり、結果的にキャリアが導入されて抵抗が低くなる元素をドーピングすれば良い。
例えば、抵抗変化層13の材料として酸化チタンを用いる可変抵抗素子は、以下のようにして形成できる。即ち、第1電極12となる窒化チタンの成膜、酸化チタンのスパッタ成膜、酸化チタンと酸化タンタルのコスパッタ成膜、第2電極15となる窒化チタンの成膜の順で成膜を行い、フォトリソグラフィ、エッチングにより加工を行う。この場合、4価のチタンが5価のタンタルに置換されることにより、キャリアドーピングがなされる。タンタルの代わりに同じ5価のニオブ等を用いることができる。ドーパント種の添加量は1〜10%程度が望ましい。同様に、抵抗変化層13の材料として酸化ジルコニウムあるいは酸化ハフニウムを用いる可変抵抗素子においても、ジルコニウム及びハフニウムはチタンの同族元素であり、4価の金属元素であるので、タンタルまたはニオブのドーピングにより、低抵抗層14が形成される。
以下に、第1電極と第2電極の組み合わせが異なる複数の可変抵抗素子2を作製し、100ns以下の短パルスでの抵抗スイッチングが可能かどうかを調べた結果を図3及び図4に示す。先ず、低抵抗層14を形成せず、抵抗変化層13としての酸化ハフニウム膜のみ約3nm形成した場合の結果を図3に示す。尚、括弧内には各電極の仕事関数値が併せて示されている。図3に示すように、第1電極12および第2電極15を共に同じ材料で構成した場合、何れも抵抗スイッチングを示さなかった。
一方、第1電極12にTiNまたはPtを、第2電極にTaを用いた素子の場合、第2電極を基準として第1電極側が負電圧となるパルスを印加すると高抵抗状態から低抵抗状態に遷移(セット)し、第2電極を基準として第1電極側が正電圧となるパルスを印加すると低抵抗状態から高抵抗状態に遷移(リセット)し、高速スイッチングが可能であった。一方、第1電極12にTiNを、第2電極15にPtを用いた素子の場合、第2電極を基準として第1電極側が正電圧となるパルスを印加すると高抵抗状態から低抵抗状態に遷移(セット)し、第2電極を基準として第1電極側が負電圧となるパルスを印加すると低抵抗状態から高抵抗状態に遷移(リセット)し、高速スイッチングが可能であった。
以上の結果から、第1電極と第2電極の材料が異なると高速スイッチングが可能であり、また、第1電極12がTiNで、第2電極15がTaとPtの場合に動作電圧極性が逆になっていることから、抵抗メモリとして主に機能している動作界面が異なると考えられる。
ここで、抵抗変化がポテンシャルバリヤの大きい、仕事関数が大きい電極側の界面で起っていると推測し、もう一方の仕事関数が小さい電極(第2電極15)側の界面の接触がオーミックとなるように、第2電極15と抵抗変化層13の間に膜厚が約3nmの低抵抗層14を形成した場合の結果を図4に示す。図4に示すように、第1電極および第2電極を共に同じ材料で構成した場合であっても、高速スイッチングが可能になった。
次に、第1電極12がTiN、第2電極15がTaで、抵抗変化層13として酸化ハフニウムを約3nm成膜して形成した従来構成の可変抵抗素子2’、当該可変抵抗素子2’に対して更に第2電極15と抵抗変化層13の間に低抵抗層14として酸素欠損濃度の多い酸化ハフニウム膜を約3nm成膜して形成した可変抵抗素子2a、及び、可変抵抗素子2aにおいて第2電極15の材料を第1電極12と同じTiNとした可変抵抗素子2bについて、各1000ビットのこれら3種の素子2’、2a、2bを10回スイッチングさせた後のセット後の抵抗値の累積頻度分布とリセット後の抵抗値の累積頻度分布を図5〜図7に示す。
図5〜図7に示すように、低抵抗層14を設けることで、可変抵抗素子2’と比較して、可変抵抗素子2a及び2bの抵抗値のばらつきが低減されることが分かる。更に、図7から、第1電極12と第2電極15を同じ材料(TiN)で構成した可変抵抗素子2cであっても、高速スイッチングが可能であり、且つ、可変抵抗素子2’と比較して抵抗値のばらつきが低減されることが分かる。
以上より、本発明の可変抵抗素子2(2a,2b)は、低抵抗層14が抵抗変化層13と第2電極15の間に挿入されていることにより、可変抵抗素子として利用可能な電極材料と可変抵抗体材料の条件が緩和され、この結果、製造が容易な可変抵抗素子を実現することができる。
更に、本発明の可変抵抗素子2(2a、2b)を複数、列方向あるいは行方向の少なくとも何れかの方向に配列させることで、メモリセルアレイが構成され、当該メモリセルアレイを搭載することで、製造が容易で、安定してスイッチング動作を行うことのできる信頼性の高い不揮発性半導体記憶装置を実現することができる。
〈第2実施形態〉
可変抵抗素子2(2a,2b)を備える本発明装置1の例を図8に示す。図8は、本発明装置1の概略の構成を示す回路ブロック図であり、本発明装置1は、夫々、メモリセルアレイ21、制御回路22、電圧発生回路23、ワード線デコーダ24、ビット線デコーダ25を備えてなる。
メモリセルアレイ21は、可変抵抗素子2(2a,2b)の何れかを含むメモリセルを行及び列方向に夫々複数マトリクス状に配置した、列方向に延伸するビット線により同一列に属するメモリセルが、行方向に延伸するワード線により同一行に属するメモリセル同士が相互に接続される、例えば図12又は図13の等価回路図で示されるメモリセルアレイであり、ワード線を介して選択ワード線電圧及び非選択ワード線電圧の何れかを、ビット線を介して選択ビット線電圧及び非選択ビット線電圧の何れかを、夫々、各別に印加することにより、書き込み、消去、読み出し、及びフォーミング処理の各動作時において、外部からのアドレス入力で指定される動作対象の一または複数のメモリセルを選択することができる。
また、メモリセルアレイ21は、単位メモリセルに電流制限素子を含まない1R構造のメモリセルアレイ(図13参照)、或いは単位メモリセルに電流制限素子としてダイオードを含む1D1R構造のメモリセルアレイ、或いは単位メモリセルに電流制限素子としてトランジスタを含む1T1R構造のメモリセルアレイ(図12参照)の何れかであってもよい。1D1R構造のメモリセルアレイにおいては、ダイオードの一方端と可変抵抗素子の一電極とが直列に接続されてメモリセルを構成し、ダイオードの他方端と可変抵抗素子の他電極の何れか一方が、夫々、ビット線及びワード線の何れか一方と接続している。1T1R構造のメモリセルアレイにおいては、トランジスタのソース或いはドレインの何れか一方と可変抵抗素子の一電極とが直列に接続されてメモリセルを構成し、可変抵抗素子と接続しないトランジスタのソース或いはドレインの他方、及び、トランジスタと接続しない不揮発性可変抵抗素子の他電極との何れか一方が、列方向に延伸するビット線に接続し、もう一方が接地電圧を供給するための共通のソース線に接続し、トランジスタのゲート端子同士が行方向に延伸するワード線に接続している。
制御回路22は、メモリセルアレイ21の書き込み(セット)、消去(リセット)、読み出しの各メモリ動作の制御、及び、フォーミング処理の制御を行う。具体的には、制御回路22はアドレス線から入力されたアドレス信号、データ線から入力されたデータ入力、制御信号線から入力された制御入力信号に基づいて、ワード線デコーダ24、ビット線デコーダ25を制御して、メモリセルの各メモリ動作及びフォーミング処理を制御する。図8に示す例では、制御回路22は、図示しないが一般的なアドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路としての機能を具備している。
電圧発生回路23は、書き込み(セット)、消去(リセット)、読み出しの各メモリ動作、及び、メモリセルのフォーミング処理時において、動作対象のメモリセルを選択するために必要な選択ワード線電圧及び非選択ワード線電圧を発生してワード線デコーダ24に供給し、選択ビット線電圧及び非選択ビット線電圧を発生してビット線デコーダ25に供給する。
ワード線デコーダ24は、書き込み(セット)、消去(リセット)、読み出しの各メモリ動作、及び、メモリセルのフォーミング処理時において、動作対象のメモリセルがアドレス線に入力され指定されると、当該アドレス線に入力されたアドレス信号に対応するワード線を選択し、選択されたワード線と非選択のワード線に、夫々選択ワード線電圧と非選択ワード線電圧を各別に印加する。
ビット線デコーダ25は、書き込み(セット)、消去(リセット)、読み出しの各メモリ動作、及び、メモリセルのフォーミング処理時において、動作対象のメモリセルがアドレス線に入力され指定されると、当該アドレス線に入力されたアドレス信号に対応するビット線を選択し、選択されたビット線と非選択のビット線に、夫々選択ビット線電圧と非選択ビット線電圧を各別に印加する。
尚、当該メモリセルアレイ21、制御回路22、電圧発生回路23、ワード線デコーダ24、ビット線デコーダ25の詳細な回路構成、デバイス構造、並びに、製造方法については、公知の回路構成を用いて実現可能であり、公知の半導体製造技術を用いて作製が可能であるので説明を割愛する。
本発明の可変抵抗素子を備えるメモリセルアレイ21の一例の構造断面図を図9に示す。図9のメモリセルアレイ21aは、1T1R構造のメモリセルアレイであり、第2電極15が列方向(図9の横方向)に延伸する配線となり、ビット線BLを構成しているが、抵抗変化層13、低抵抗層14も同様に列方向に延伸している。アイランド状の金属配線31及びコンタクトプラグ32を介して下層に形成されるトランジスタTを接続するコンタクトプラグが、抵抗変化層13と接する第1電極12となっている。そして、第1電極12の抵抗変化層13との接触部分(素子形成領域)において、第1電極12、抵抗変化層13、低抵抗層14、及び、第2電極15からなる可変抵抗素子2が形成されている。尚、抵抗変化層13は酸化ハフニウム、低抵抗層14は抵抗変化層13よりも酸素欠損濃度の高い酸化ハフニウムであり、第1電極12及び第2電極15は共に窒化チタンである。
ところで、遷移金属酸化物を抵抗変化層13として用いる可変抵抗素子の読み出しにおいて、読み出し動作の繰り返し回数とは関係なく突発的な抵抗値の変化が生じる突発性の読み出しディスターブ現象が存在することが確認されている。そして、当該突発性の読み出しディスターブの回避策として、仕事関数の大きい第1電極側が正極性となるように読み出し電圧パルスを印加して読み出しを行うのが望ましいことが明らかにされている。本実施形態のメモリセルアレイ21aでは、読み出し時において、ソース線SLに正の電圧を印加した状態で、ビット線にソース線の電圧よりも低い電圧パルスを印加し、読み出し動作を行うことで、上記突発性の読み出しディスターブを回避する構成である。
尚、上記突発性の読み出しディスターブについては、別の文献で説明がなされるであろう。
尚、ここで、第1電極12と接する抵抗変化層13は、列方向に延伸しているため、隣接する可変抵抗素子2の第1電極12とも物理的に接触しているが、前述したように、抵抗変化層13を構成する遷移金属酸化物は成膜時において絶縁体であり、初期状態の可変抵抗素子2の第1電極12と第2電極15の間に電圧を印加して、フォーミング処理を行うことで初めて低抵抗化し、可変抵抗素子2としてのメモリ動作が可能となる。このため、素子形成領域以外の抵抗変化層13は、フォーミング処理後も依然として高抵抗のままであるので、リーク電流の問題は生じない。
本発明の可変抵抗素子を備えるメモリセルアレイ21の他の例を、構造断面図として図10に示す。図10のメモリセルアレイ21bは、1T1R構造のメモリセルアレイであり、第1電極12が列方向(図10の横方向)に延伸する配線となり、ビット線BLを構成しているが、抵抗変化層13、低抵抗層14も同様に列方向に延伸している。アイランド状の金属配線31及びコンタクトプラグ32を介して下層に形成されるトランジスタTを接続するコンタクトプラグが、低抵抗層13と接する第2電極15となっている。そして、第2電極15の低抵抗層14との接触部分(素子形成領域)において、第1電極12、抵抗変化層13、低抵抗層14、及び、第2電極15からなる可変抵抗素子2が形成されている。尚、抵抗変化層13は酸化チタン、低抵抗層14はタンタルを不純物ドーピングした酸化チタンで構成され、第1電極12及び第2電極15は共に窒化チタンで構成されている。
本実施形態のメモリセルアレイ21bでは、読み出し時において、ソース線SLを接地し、ビット線に正極性の電圧パルスを印加し、読み出し動作を行うことで、上述の突発性の読み出しディスターブが回避される。
ところが、メモリセルアレイ21bでは、第2電極15と接する低抵抗層14が列方向に延伸し、隣接する可変抵抗素子2の第2電極15とも物理的に接触しているため、列方向に隣接する可変抵抗素子2間で低抵抗層14を介したリーク電流が流れる虞がある。当該リーク電流は、隣接する可変抵抗素子2の一方が低抵抗状態で、他方が高抵抗状態である場合に、低抵抗状態の可変抵抗素子2の第1電極12から低抵抗層14を介して高抵抗状態の可変抵抗素子2の第2電極15に、意図しない電流が流れるため、問題となる。
上記リーク電流を回避するには、隣接する可変抵抗素子2間の低抵抗層14によるリークパスの抵抗値が、可変抵抗素子2の最も抵抗の高い高抵抗状態よりも高くなるように、低抵抗層14の膜厚を設定するとよい。以下に、詳細に説明する。
低抵抗層14の抵抗率をρ、膜厚をdとする。個々の可変抵抗素子2における低抵抗層14の抵抗値をrとする。メモリセルアレイ21bにおいて、個々の可変抵抗素子の実効的な素子面積(素子形成領域の面積)は、コンタクトプラグを形成する第2電極15の径の長さで定まる。製造プロセスにおける最小加工寸法をFとすると、当該素子面積は、およそF2となる。従って、r=ρd/F2と評価することができる。
一方、隣接する可変抵抗素子2間の低抵抗層14による抵抗値は、ビット線の幅をW、ビット線を介して隣接する可変抵抗素子2間の最短の距離をLとすると、ρL/Wdとなる。従って、リーク電流が生じないための条件は、可変抵抗素子の最も抵抗の高い高抵抗状態の抵抗値をRHとして、下記の数1で表される。
[数1]
ρL/Wd>RH
数1より、下記の数2が導かれる。
[数2]
d<ρL/WRH =L/W・(ρd/F2)・F2/dRH
∴d<L/(Wd)・(r/RH)・F2
∴d<{(L/W)(r/RH)}1/2・F
更に、可変抵抗素子の最も抵抗の低い低抵抗状態の抵抗値をRLとし、r=αRLとおくと、数2より、下記の数3が導かれる。
[数3]
d<{α(L/W)(RL/RH)}1/2・F
上述の通り、α<1であることが望ましいので、下記の数4が導かれる。更に、可変抵抗素子の抵抗変化比RH/RLを100以上として、下記の数5が得られる。
[数4]
d<{(L/W)(RL/RH)}1/2・F
[数5]
d<(L/W)1/2・F/10
標準的な1T1R構造のメモリセルアレイの場合、ビット線の幅Wは、コンタクトプラグに対するアラインメント余裕を考慮して2Fであり、隣接する可変抵抗素子2間の距離Lは、図10に示される構成の場合、最短で3Fである。従って、例えば、F=30nmとすると、数5より、d<3.7nmが得られる。
以上より、数3に従い、可変抵抗素子2の特性に基づき、低抵抗層14によるリーク電流が生じないようにメモリセルアレイ21bの構成(メモリセル間隔等)を設定することができる。
上述のメモリセルアレイ21a及び21bにより、利用可能な電極材料の制約が緩和されるため、製造が容易な不揮発性半導体記憶装置を実現することができる。
尚、上記実施形態において、1T1R構造のメモリセルアレイにおいては、ソース線を全メモリセルに共通とし、接地電圧が供給されているとしたが、当該ソース線は列方向に延伸し、同一列に属するメモリセル同士を相互に接続していてもよく、或いは行方向に延伸し、同一行に属するメモリセル同士を相互に接続していてもよい。更に、電圧発生回路23により供給される選択ソース線電圧及び非選択ソース線電圧を各ソース線に各別に印加するソース線デコーダ26(図示せず)を備えることで、書き込み(セット)、消去(リセット)、読み出しの各メモリ動作、及び、メモリセルのフォーミング処理時において、行或いは列毎にメモリセルを指定して動作対象のメモリセルを選択することが可能になる。当該ソース線デコーダ26は、動作対象のメモリセルがアドレス線に入力され指定されると、当該アドレス線に入力されたアドレス信号に対応するソース線を選択し、選択されたソース線と非選択のソース線に、夫々選択ソース線電圧と非選択ソース線電圧を各別に印加する。
また、上記実施形態において、メモリセルアレイが、メモリセルにダイオードを含む1D1R構造のクロスポイント型メモリセルアレイ、或いはメモリセルにトランジスタを含む1T1R構造のクロスポイント型メモリセルアレイである場合を例示したが、本発明はこの構成に限られるものではなく、金属酸化物を抵抗変化層として備え、低抵抗層を更に備える本発明の可変抵抗素子をメモリセルに採用する限り、当該メモリセルを複数マトリクス状に配列して構成された任意のメモリセルアレイに適用可能である。
更に、上記実施形態では、可変抵抗素子2の構成として、抵抗変化層13が第1電極12と直接接している場合を例示したが、本発明はこれに限られるものではない。非線形の電流制限素子としての機能を備えるように、第1電極と抵抗変化層との間にトンネル絶縁膜を挿入した構成や、フォーミング処理により形成されるフィラメントパスの素子ばらつきを低減するための、フォーミング処理の完了に伴い可変抵抗素子の両電極間に流れる急激な電流の増大を抑制するためのバッファ層を挿入した構成が考えられる。
また、上記実施形態では可変抵抗素子2の構成として、図1に示される素子構造のものを例示したが、本発明は当該構造の素子に限られるものではない。