本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側、CLは車幅中心を示す。
実施例1に係る車両の開口部用開閉装置について、図1〜図13に基づき説明する。図1は、開口部用開閉装置11を備えた車両10の後部を示している。該開口部用開閉装置11は、車両10に形成された各種の開口部13を開閉体14によって開閉するものである。例えば、該開口部用開閉装置11は、車両10の後部に備えているトランクルーム12のトランク開口部13(開口部13)をトランクリッド14(開閉体14)によって開閉するように構成される。
図1及び図2に示されるように、該開口部用開閉装置11は、トランクリッド14と、左右のヒンジ機構20L,20Rと、左右のトーションバー40L,40Rと、左右のスライド機構50,50と、によって構成されている。左右のヒンジ機構20L,20Rは、トランクルーム12内の左右に位置する。左右のヒンジ機構20L,20Rは、互いに左右対称形に構成されている他には、実質的に同じ構成である。左右のトーションバー40L,40Rも、互いに左右対称形に構成されている他には、実質的に同じ構成である。以下、左のヒンジ機構20Lと左のトーションバー40Lを主に説明し、右のヒンジ機構20Rと右のトーションバー40Rについては、必要に応じて説明する。
左のヒンジ機構20Lは、車体16のパネル17(例えばパーセルシェルフ17)に取り付けられたヒンジブラケット21Lと、該ヒンジブラケット21Lにトランクリッド14をスイング可能に支持するヒンジアーム31Lと、から成る。この結果、トランクリッド14は、車体16にスイング可能に支持される。
図3〜図5に示されるように、ヒンジブラケット21Lは、被取付部22とアーム支持部23とバー支持部24とから成る、鋼板の折り曲げ成形品である。
被取付部22は、パネル17に取り付けられる部分である。該被取付部22は、車両後方から見たときに、下方が開放された略逆U字状に形成されている。該被取付部22の天板には取付孔22a,22bが設けてあり、パネル17の下面にボルト止めされる。
アーム支持部23は、該被取付部22の中間部に一体に形成されている。詳しく述べると、該アーム支持部23は、被取付部22の左右の側板がそのまま車両後方へ延びたものであり、支持軸25を嵌合するために車幅方向に貫通した支持孔23a,23bが形成されている。
バー支持部24は、被取付部22の下部及びアーム支持部23の下部に一体に形成されており、被取付部22及びアーム支持部23よりも車幅方向へ幅広に設定されている。該バー支持部24は、車両後方から見たときに、下方が開放された略逆U字状に形成されており、左のトーションバー40Lを支持するために、車体後方へ開口した水平な左右の第1スリット24a,24bが形成されている。このスリット24a,24bは、車幅方向に互いに同心に位置している。
図5及び図6に示されるように、左右の第1スリット24a,24bには、樹脂性の左右のバー支持部材26,26が装着されている。該左右のバー支持部材26,26は、左右の第1スリット24a,24bによって左のトーションバー40Lの他端部42を支持する場合に、該左のトーションバー40Lの捩れ運動を円滑にするための部材である。該左右のバー支持部材26,26は、左のトーションバー40Lを後から挿入するためのスリット26a,26aを有するとともに、該左右の第1スリット24a,24bにスナップフィット(弾性を有した係止)によって嵌め込まれている。
図5及び図6に示されるように、車幅方向内側のバー支持部材24の側板には、第1スリット24bの後方に第2スリット24cとバー掛け止め用孔24dとが形成されている。バー掛け止め用孔24dは、第2スリット24cの上に位置し、車幅方向に貫通している。第2スリット24c及びバー掛け止め用孔24dは、右のトーションバー40Rの一端部41を掛け止める部分である。
図2〜図4に示されるように、アーム支持部23には、支持軸25によってヒンジアーム31Lのスイング基端が前後スイング可能に支持されている。該ヒンジアーム31Lは、例えば断面形状及び太さが一定の角パイプにより、側面視略U字状に形成された部材であって、スイング先端にトランクリッド14が取り付けられている。該ヒンジアーム31Lのなかの、スイング基端側の部分32のことを、以下「アーム基端部分32」という。該アーム基端部分32は、トランクリッド14の全閉状態において、車体16に対するスイング中心P1(支持軸25の中心P1)から前下方へ真っ直ぐに延びた、直線状の部分である。
図4に示されるように、アーム基端部分32は、スイング中心P1に対して、実線によって示された前下方のリッド全閉位置P11と、想像線によって示された後下方のリッド全開位置P12との間を、前後スイング運動が可能である。リッド全閉位置P11は、図2に示されるように、トランクリッド14が全閉まで閉じたときの位置である。リッド全開位置P12は、図1に示されるように、トランクリッド14が全開まで開いたときの位置である。
図2に示されるように、左のトーションバー40Lは、車幅方向に延びて、左のヒンジアーム31Lをトランクリッド14の開き方向Roへ付勢する付勢部材である。右のトーションバー40Rは、車幅方向に延びて、右のヒンジアーム31Rをトランクリッド14の開き方向Roへ付勢する付勢部材であり、左のトーションバー40Lに対して実質的に同じ機能を有する。左右のトーションバー40L,40R同士は、車体前後方向に互いに交差しており、不必要に移動させないために、クリップ48によってパーセルシェルフ17に固定される。
図7に示されるように、該左のトーションバー40Lの一端部41は、略U字状に折り返されており、右のヒンジブラケット21Rの第2スリット24c及びバー掛け止め用孔24dに掛け止められている。この結果、左のトーションバー40Lの一端部41は、車体16に対し相対回転を規制されて連結されている。
図4〜図6に示されるように、左のトーションバー40Lの他端部42は、略クランク状(略U字状)に形成されている。詳しく述べると、他端部42は、直線状のトーションバー40Lの途中からバー径方向外側へ延びた一対の延出部45,45と、該一対の延出部45,45の各先端間を繋いだ直線状の押し当て部43(付勢力作用部43)と、から成る。該押し当て部43は、直線状のトーションバー40Lに対して平行である。
さらに、左のトーションバー40Lは、他端部42にバー被支持部44,44を有する。該バー被支持部44,44は、左右のバー支持部材26,26を介し、左右の第1スリット24a,24b(バー支持部24a,24b)によって回転可能に支持される。つまり、左のトーションバー40Lは、車体16に対し回転可能に支持されている。左右の第1スリット24a,24bによるバー被支持部44,44の支持中心P2、つまり車体16に対する左のトーションバー40Lの支持中心P2は、ヒンジアーム31Lのスイング中心P1よりも車体後方に位置している。より詳しくは、左のトーションバー40Lの他端部42の支持中心P2は、ヒンジアーム31Lのスイング中心P1の後下方に位置している。該押し当て部43は、バー被支持部44,44からオフセット量Lo(図5参照)だけオフセットしている。左のトーションバー40Lの支持中心P2に対する押し当て部43のスイング半径は、該オフセット量Loと同一である。
図7に示されるように、左のトーションバー40Lの他端部42の押し当て部43は、左のスライド機構50を介して、ヒンジアーム31Lをトランクリッド14(図2参照)の開き方向Roへ付勢している。
図2〜図4に示されるように、左右のスライド機構50,50は、左右のスライドレール部51(左のみを示す)と、左右のスライダ61(左のみを示す)と、から成る。該左右のスライドレール部51及び該左右のスライダ61は、例えば硬質樹脂によって形成される。
該左右のスライドレール部51は、互いに同じ構成である。該左右のスライダ61も、互いに同じ構成である。以下、左のスライドレール部51と左のスライダ61を主に説明し、右のスライドレール部51と右のスライダ61については、必要に応じて説明する。
図3及び図4に示されるように、該左のスライドレール部51は、上下に細長い略平板状の部材によって構成されるとともに、左のヒンジアーム31Lの表面32a(車体前側の面32a、前面32a)に設けられている。つまり、スライドレール部51は、アーム基端部分32の前面32aに位置する。該スライドレール部51の上端51dは、アーム基端部分32のスイング中心P1寄りに位置している。
より具体的に述べると、図5、図8及び図9に示されるように、該スライドレール部51は、アーム基端部分32に対して別部材によって構成され、且つ裏面51bを該アーム基端部分32の前面32aに重ねられる部材である。このため、スライドレール部51は、大型のアーム基端部分32に一体に形成されている場合に比べて、容易に生産することができる。
該スライドレール部51の裏面51bが、該アーム基端部分32の前面32aに重ね合わされた状態において、該スライドレール部51の裏面51bはアーム基端部分32の前面32aに対して平行である。該スライドレール部51の厚さは、一定である。従って、該スライドレール部51の表面51c(被スライド面51c)は、該スライドレール部51の裏面51bに対して平行であり、且つ、アーム基端部分32の前面32aに対して平行である。
アーム基端部分32の前面32aには、該アーム基端部分32のスイング中心P1寄りの部位に位置する第1取付孔33と、該第1取付孔33よりもスイング中心P1から下方へ離れた部位に位置する第2取付孔34とを有する。スライドレール部51は、第1取付孔33に引っ掛ける略L字状の掛け止め爪部52と、第2取付孔34にスナップフィットによって係止するクリップ部53とを有している。図9に示されるように、スライドレール部51の幅は、アーム基端部分32よりも幅広に設定されている。
アーム基端部分32にスライドレール部51を組み付ける手順は次の通りである。先ず、第1取付孔33に対して掛け止め爪部52を差し込みながら掛け止める。次に、そのまま、該第1取付孔33よりも下位に位置している第2取付孔34にクリップ部53を押し込んで爪を掛け止める。
図8、図10及び図11に示されるように、該スライダ61は、アーム基端部分32のスイング運動に従い、スライドレール部51に案内されてヒンジアーム31のアーム長手方向にスライド可能、つまり、上下変位が可能である。該左右のスライダ61には、左右のトーションバー40L,40Rが連結、つまり他端部42,42が連結される。
該スライダ61は、スライド方向に沿った両側の縁61a,61aからスライドレール部51の縁51a,51aを包み込むように略L字状に形成された、一対のアーム部62,62を有する。該一対のアーム部62,62は、一対の延出部63,63と一対の折り返し部64,64とから成る。
該一対の延出部63,63は、スライドレール部51の被スライド面51cに対向するスライド面61b(対向面61b、裏面61b)から、スライドレール部51の縁51a,51aの近傍を通って、スライドレール部51の裏面51b側へ延びている。該一対の折り返し部64,64は、一対の延出部63,63の先端から、スライドレール部51の裏面51bに沿って、互いに対向する方向へ延びている。スライダ61のスライド面61bから一対の折り返し部64,64までの間隔dsの大きさは、スライドレール部51の厚さtrよりも大きく設定されている。
このようにして、スライダ61のスライド面61bには、スライド方向に沿った両側の縁61a,61aに、互いに向かい合って開口した一対のスライド溝65,65が形成されている。該一対のスライド溝65,65の溝幅ds(間隔ds)は、スライドレール部51の両側の縁部51a,51aの厚さtrよりも大きく設定されている。スライダ61は、該一対のスライド溝65,65にスライド可能に嵌合している。
スライドレール部51の被スライド面51cと、スライダ61のスライド面61bとは、平坦面に形成されている。スライダ61のスライド面61bは、スライドレール部51の被スライド面51cの上を、スライド可能である。
図3、図8及び図10に示されるように、スライダ61は、バー連結用開口71とバー案内部75とバー保持部77とを有している。該バー連結用開口71は、トーションバー40Lの他端部42の押し当て部43を嵌め込みによって連結する部分であり、スライダ61に一体に形成されている。このように、トーションバー40Lの他端部42(押し当て部43)は、スライダ61に対し相対回転可能に且つ捩り変位可能に連結されている。
該スライダ61は、スライドレール部51に対してトーションバー40Lの付勢方向Rtに常に面接触した状態に保持されている。言い換えると、スライダ61のスライド面61bは、スライドレール部51に対して離間不能に保持、つまり、トーションバー40Lがヒンジアーム31Lを付勢する方向Rtに離間することなく、保持されている。
バー連結用開口71とバー案内部75とバー保持部77とについて、図11に基づき、より詳しく説明する。図11(a)は、側方から見たスライダ61を示している。図11(b)は、図11(a)のb−b線に沿った断面構成を示している。図11(c)は、図11(a)のc矢視線方向から見たスライダ61を示している。
該バー連結用開口71は、スライドレール部51に対するスライダ61のスライド方向SLとは直交する直交方向に延びる溝部によって構成されている。該溝部71(バー連結用開口71)は、スライダ61の裏面61bとは反対側に開口している。言い換えると、該溝部71は、図4に示されるトーションバー40Lによって、つまり他端部42によってヒンジアーム31Lを付勢する方向Rtに対し、逆方向に開放している。
さらに、該溝部71は、スライダ61のスライド方向SLとは直交する直交方向SCに貫通している。該溝部71は、溝長手方向の中央に位置する中央部72と、該中央部72に対し溝長手方向の両側に位置する両端部73,73と、から成る。中央部72は、溝長手方向に平行なストレート溝に形成されている。両端部73,73は、中央部72から溝長手方向外側へ向かって広がるテーパ溝に形成されている。
このため、図10及び図11に示されるように、トーションバー40Lの他端部42は、溝部71に対して傾いた状態であっても、ストレート溝72(中央部72)だけに連結する。つまり、傾いた該他端部42が溝部71の長手方向端部73,73に片当たりすることはない。従って、バー連結用開口71の耐久性を高めることができる。しかも、トーションバー40Lの他端部42が溝部71に対して傾いた状態であっても、該他端部42をストレート溝72だけで受けることができる。該他端部42の付勢力は、溝部71の溝長手方向の中央位置(中央部72)に作用する。この結果、スライドレール部51に対するスライダ61の傾きを防止できるので、該スライダ61を一層円滑にスライドさせることができる。
該バー案内部75は、バー支持部24(図5参照)の第1スリット24a,24bに支持されているトーションバー40Lの押し当て部43をバー連結用開口71に嵌め込む際に、該押し当て部43を該バー連結用開口71へ案内することが可能に傾斜した部分であり、スライダ61に一体に形成されている。該バー案内部75の傾斜方向は、アーム基端部分32のスイング中心P1(図4参照)寄りの部位から、バー連結用開口71へ向かって下り勾配となる方向である。
該バー保持部77は、バー連結用開口71に嵌め込まれた状態の押し当て部43が、該バー連結用開口71から脱落しないように規制する部分であり、スライダ61に一体に形成されている。該バー保持部77は、スライダ61に対しバー案内部75とは反対側から起立し、該起立した先端からバー連結用開口71の開口端へ向かって垂下しており、該垂下した下端はスライダ61のスライド方向SLに弾性変形が可能である。押し当て部43がバー連結用開口71に嵌め込まれるときには、バー保持部77は弾性変形することによって、押し当て部43の嵌め込みを許容する。押し当て部43がバー連結用開口71に嵌め込まれた後には、バー保持部77はバー連結用開口71からの押し当て部43の脱落を規制する。
図10及び図12に示されるように、スライドレール部51は、一対の係止用凹部55,55と幅広部56と一対のスロープ57,57と抜け止め部58とを有している。図12(a)は、スライドレール部51の上部にスライダ61が位置していることを示している。トランクリッド14(図2参照)が全閉まで閉じている状態のときに、該スライダ61は図12(a)に示される位置にある。この位置は、図4に示される全閉位置P21に対応する。
該幅広部56は、スライドレール部51のなかの、一対の係止用凹部55,55が位置している幅広の部分である。該幅広部56の幅寸法Weは、スライドレール部51のなかの、幅広部56を除く他の部分59(通常スライド部分59)の幅寸法Wnよりも大きく設定されている。
該一対のスロープ57,57は、通常スライド部分59と幅広部56との間の幅が緩やかに変わるように、スライドレール部51の両側の縁51a,51aに形成されている。通常スライド部分59の両側の縁51a,51aから一対のスロープ57,57が傾き始める点57a,57aのことを、スロープ始点57a,57aという。
一対の係止用凹部55,55は、例えばスライドレール部51の両側の縁51a,51aに形成されている。つまり、該一対の係止用凹部55,55は、スライドレール部51の厚み方向に貫通した断面円弧状の溝に形成されている。一方、スライダ61には、一対の係止用凹部55,55に係止可能な凸状の一対の係止部79,79が形成されている。該一対の係止部79,79は、一対の延出部63,63の内面から互いに対向するように突出しており、各延出部63,63の延び方向に細長い断面円弧状の凸状に形成されている。該一対の係止部79,79の先端間の距離は、スライドレール部51の通常スライド部分59の幅寸法Wnと同じ、又は該幅寸法Wnよりも若干大きく設定されている。
上記図12(a)に示されるスライダ61は、スライドレール部51に案内されて下方にスライドする。この結果、図12(b)に示されるように、一対の係止部79,79は、一対のスロープ57,57の傾き始めとなるスロープ始点57a,57aに位置する。このため、スライダ61は、スライドレール部51に対して、更に下降することが規制される。つまり、一対のスロープ始点57a,57aは、ストッパの機能を有する。以下、一対のスロープ始点57a,57aのことを、適宜「一対のストッパ57a,57a」という。
このように、スライドレール部51は、スライダ61の下降可能な最下限位置を規定するためのストッパ57a,57aを有する。該一対のストッパ57a,57aの位置は、図4に示される最下限位置P24に対応する。つまり、スライダ61は、アーム基端部分32のスイング運動に従って下降するものの、ストッパ55,55によって最下限位置P24の上に保持される。このため、スライドレール部51とスライダ61とトーションバー40の他端部42との組み付け性を、更に高めることができる。
その後、スロープ始点57a,57aに位置しているスライダ61を、更に強く押し下げることによって、該スライダ61はスライドレール部51に案内されて、更に下方にスライドする。スライドレール部51に一対のスロープ57,57を有しているので、スライダ61は通常スライド部分59と幅広部56との間を、円滑に移動することができる。スライダ61が樹脂製品であるから、一対の延出部63,63は、互いに離反する方向へ多少弾性変形をすることが可能である。該スライダ61が、通常スライド部分59から幅広部56へ移動することによって、一対の係止部79,79は幅広部56に乗り上がり、更に一対の係止用凹部55,55に係止する。この場合に、一対の延出部63,63の自己復帰力によって、比較的強く係止することができる。
図12(c)は、スライダ61がスライドレール部51の下部に位置することによって、一対の係止部79,79が一対の係止用凹部55,55に係止した状態を示している。該係止用凹部55,55に係止部79,79を係止させることにより、スライドレール部51にスライダ61を保持することができる。このため、スライドレール部51にスライダ61を仮組みした上で、次工程に搬送することができるので、搬送性が高まる。
図4を参照しつつ説明すると、上述したように、アーム基端部分32は、スイング中心P1に対して、実線によって示された前下方のリッド全閉位置P11と、想像線によって示された後下方のリッド全開位置P12との間を、前後スイング運動が可能である。リッド全閉位置P11は、図2に示されるように、トランクリッド14が全閉まで閉じたときの位置である。リッド全開位置P12は、図1に示されるように、トランクリッド14が全開まで開いたときの位置である。
この場合に、トーションバー40Lの押し当て部43の中心は、スイング中心P2(トーションバー40Lの支持中心P2)に対して、実線によって示された前下方の全閉位置P21と、想像線によって示された後下方の全開位置P22との間を、スイング軌跡R1上を前後スイング運動する。つまり、アーム基端部分32がリッド全閉位置P11に位置するときに、押し当て部43の中心は全閉位置P21に位置する。アーム基端部分32がリッド全開位置P12に位置するときに、押し当て部43の中心は全開位置P22に位置する。該押し当て部43のスイング軌跡R1は、トーションバー40Lの他端部42の支持中心P2(トーションバー40Lの支持中心P2)を基準とした、真円状の軌跡である。
上下2つのスイング中心P1,P2を通るスイング中心線Lsに対して、押し当て部43のスイング軌跡R1が合致する点P23(合致点P23)は、全閉位置P21と全開位置P22との間に位置する。アーム基端部分32のスイング中心P1を基準とした、合致点P23のスイング軌跡はR2である。該2つのスイング軌跡R1,R2は、共にスイング中心P1,P2を基準とした下向き円弧状の軌跡である。
上述のように、上下2つのスイング中心P1,P2同士が合致していない。つまり、中心P1に対して中心P2は下方に位置している。このため、アーム基端部分32がリッド全閉位置P11からリッド全開位置P12までスイングするスイング角に対して、押し当て部43が全閉位置P21から全開位置P22までスイングするスイング角は、大きい(角度差がある)。この結果、中心P1を基準とした合致点P23のスイング軌跡R2に対し、中心P2を基準とした合致点P23のスイング軌跡R1は合致しない。
このような角度差があっても、実施例1はスライド機構50を有しているので、各部の運動を円滑に行うことができる。つまり、スライド機構50によって角度変換を行っている。具体的には、スライダ61は、アーム基端部分32に沿ってスライドレール部51上だけを、上下スライド可能である。この結果、該スライダ61は、押し当て部43のスイング運動に従って、角度変換を行っている。
上下2つのスイング中心P1,P2側から、スイング中心線Lsに沿う方向(矢印Lx方向)に、2つのスイング軌跡R1,R2を見たときに、合致点P23は押し当て部43及びスライダ61の最下降動作位置となる。該合致点P23のことを、以下「最下降動作位置P23」という。該最下降動作位置P23は、スライドレール部51に対するスライダ61の下降可能な下限界であると、考えることができる。つまり、該最下降動作位置P23は、トーションバー40Lがスライダ61に連結された状態においての、該スライダ61の可動範囲における下限位置である。
押し当て部43が全閉位置P21から全開位置P22までスイング変位するときに、トーションバー40Lの付勢力を受けたスライダ61は、全閉位置P21から最下降動作位置P23まで下降しつつ後方にスイングした後に、該最下降動作位置P23から全開位置P22まで上昇しつつ後方にスイングする。
スイング中心線Ls上には、アーム基端部分32のスイング運動に従ってスライダ61が最も下降する最下降動作位置P23に、又は該最下降動作位置P23の下方に、最下限位置P24が設定されている。該最下限位置P24は、トーションバー40Lがスライダ61に連結されていない状態においての、該スライダ61の可動範囲における下限位置である。つまり、該最下限位置P24は最下降動作位置P23、又は最下降動作位置P23に対し、更に下降可能な一定の遊び代αを加えた位置に設定されている。トーションバー40Lの支持中心P2から最下限位置P24までの距離β(図示せず)は、バー被支持部44から押し当て部43までのオフセット量Loに、遊び代αを加えた大きさである(β=Lo+α)。但し、遊び代αの値は、0を下回らない値である(α≧0)。
トランクリッド14が全開に開いた状態における、スライドレール部51に対するスライダ61の位置は、最下降動作位置P23よりも上位の全開位置P22に、設定されている。このため、仮にトランクリッド14(図1参照)を全開よりも過大に開いた、いわゆるオーバーストローク操作をした場合であっても、スライダ61は例えば凸状のストッパ55,55に強く当たらない。つまり、スライダ61はストッパ55,55に強く当たることはない。この結果、該ストッパ55,55の耐久性を高めることができる。
該抜け止め部58は、スライドレール部51の下端からスライダ61が脱落しないように、スライドレール部51に形成されている。該スライドレール部51の被スライド面51cにおいて、スライダ61のスライド可能な領域Tet(図10参照)は、該スライドレール部51の上端51dから抜け止め部58までの範囲である。
スライダ61は、アーム基端部分32に位置しているスライドレール部51に対して、ストッパ55,55とは反対側(抜け止め部58とは反対側)から着脱可能に設けられている。このため、アーム基端部分32に設けられている状態のスライドレール部51に対して、スライダ61を容易に交換することができる。スライダ61の交換作業性が高まる。
実施例1の説明をまとめると、次の通りである。図4に示されるように、スライドレール部51に対して、スライダ61はトーションバー40Lの付勢方向Rtに常に面接触した状態に保持されている。このため、トーションバー40Lの他端部42が捩れ、スライダ61に対して傾いて連結されている場合であっても、スライドレール部51に対してスライダ61が面接触した状態を十分に維持できる。従って、ヒンジアーム31Lに対し、トーションバー40L(図2参照)の付勢力がトランクリッド14の開き方向Roとは多少異なる方向に作用した場合であっても、ヒンジアーム31L及びトランクリッド14のスイング動作を円滑に行わせることができる。しかも、スライドレール部51とスライダ61との接触面が偏って摩耗する、いわゆる偏摩耗の発生を極力抑制することができる。この結果、開口部用開閉装置11の耐久性を高めることができる。
さらには、スライドレール部51とスライダ61との間には、滑り摩擦力が発生する。該滑り摩擦力を適宜設定することによって、ヒンジアーム31Lのスイング速度を最適値に設定することができる。この結果、トランクリッド14の開閉速度を最適な速度に、容易に設定することができる。しかも、トランクリッド14の開閉速度を設定するための、摩擦力を発生する機構を設ける必要はなく、この結果、部品数の低減を図ることができる。
さらには、スライダ61は、トーションバー40Lを嵌め込みによって、つまり他端部42を嵌め込みによって連結するためのバー連結用開口71を有している。ヒンジアーム31Lの表面に設けられているスライドレール部51に対し、スライダ61を組み付けた状態において、該スライダ61のバー連結用開口71にトーションバー40Lの他端部42を嵌め込むだけで、スライダ61にトーションバー40Lを容易に組み付けることができる。
しかも、バー連結用開口71は、トーションバー40Lの他端部42によってヒンジアーム31Lを付勢する方向Rtに対し、逆方向に開放している。該付勢方向Rtとは反対方向へ捩られているトーションバー40Lの他端部42を、バー連結用開口71に位置合わせするだけで、該他端部42は自己の付勢力によって、バー連結用開口71へ自動的に嵌り込む。従って、ヒンジアーム31Lに組み付けられているスライダ61に対する、トーションバー40Lの組み付け性が高い。さらには、バー連結用開口71に嵌め込まれたトーションバー40Lによって、そのまま、ヒンジアーム31Lをトランクリッド14の開き方向へ付勢することができる。
さらには、車両10のトランク開口部13を開閉するためのトランクリッド14の開閉方向は、上下方向である。該トランクリッド14を車体16に支持するヒンジアーム31Lのアーム基端部分32は、車体16に前後スイング可能に取り付けられている。ヒンジアーム31Lをトランクリッド14の開き方向へ付勢するトーションバー40Lは、車幅方向に延びている。トーションバー40Lの他端部42の支持中心P2は、ヒンジアーム31Lのスイング中心P1よりも車体後方に位置している。スライドレール部51は、アーム基端部分32の前面32aに位置している。スライダ61は、スライドレール部51に案内されて、ヒンジアーム31Lのアーム長手方向にスライド可能である。トランクリッド14が開いた状態では、スライダ61はヒンジアーム31Lの下部に位置する。
トーションバー40Lの他端部42をスライダ61のバー連結用開口71に組み付けるには、次のようにすればよい。スライドレール部51に組み付けられているスライダ61は、トランクリッド14を全開まで開くことにより、自動的に下方へ移動する。下方へ移動した該バー連結用開口71の位置は、トーションバー40Lの他端部42が嵌り込み可能な位置に設定しておけばよい。反付勢方向へ捩られているトーションバー40Lの他端部42は、自己の付勢力によって、バー連結用開口71へ自動的に嵌り込む。従って、ヒンジアーム31Lに組み付けられているスライダ61に対する、トーションバー40Lの組み付け性が、一層高まる。
しかも、ヒンジアーム31Lにトーションバー40Lを近づけることができたので、トランクルーム12(図1参照)の有効スペースが増える。
さらには、図5に示されるように、スライドレール部51は掛け止め爪部52とクリップ部53とを有している。該掛け止め爪部52は、アーム基端部分32のスイング中心P1寄りの部位に位置する第1取付孔33に、引っ掛けられる。該クリップ部53は、アーム基端部分32に対して第1取付孔33よりもスイング中心P1から離れた部位に位置する第2取付孔34に、スナップフィットによって係止される。
図3に示されるように、スライドレール部51に対するスライダ61のスライド方向SLに対して、トーションバー40Lからバー連結用開口71へ作用する付勢力の付勢方向Rtは、直角ではない。このため、スライドレール部51の上部(スイング中心P1寄りの部分)には、アーム基端部分32から離れる方向の力が働くことが多い。
これに対し、実施例1では、スライドレール部51の上部に掛け止め爪部52を有している。該掛け止め爪部52は、クリップ部53よりも係止性能が比較的安定している。このため、アーム基端部分32に対するスライドレール部51の取付状態を、十分に維持することができる。
図13は、実施例1の開口部用開閉装置11の、トランクリッド14の自重によるトルクと左右のトーションバー40L,40Rによるトルクとの関係を表したグラフである。このグラフは、横軸をトランクリッド14の開度θ°とし、縦軸をトルクTq(N・m)として、開度θ°に対するトルク特性を表している。実線によって表された曲線Qwは、トランクリッド14の自重によるトルクの特性を示している。破線によって表された曲線Qsは、左右のトーションバー40L,40Rによるトルクの特性を示している。
曲線Qwから明らかなように、トランクリッド14の自重によるトルクの特性は、上向き放物線の特性であることが判る。これに対し、曲線Qsから明らかなように、左右のトーションバー40L,40Rによるトルクの特性は、上記曲線Qwと同様の特性を示している。従って、トランクリッド14の自重によるトルクと、左右のトーションバー40L,40Rによるトルクとの、差が小さい。この結果、トランクリッド14を人力によって開ける操作力は小さくてすむので、操作性がよい。
実施例2に係る車両の開口部用開閉装置11Aについて、図14乃至図21に基づき説明する。実施例2の車両の開口部用開閉装置11Aは、上記図8〜図12に示されている実施例1の左右のスライド機構50を、図14〜図17に示される左右のスライド機構50A(左のみを示す)に変更したことを特徴とし、他の構成については上記図1〜図12に示される構成と同じなので、説明を省略する。以下、左のスライド機構50Aについて説明し、右のスライド機構50Aについては説明を省略する。
より具体的に述べると、図14〜図17に示されるように、実施例2の左のスライド機構50Aは、左のスライドレール部51Aと左のスライダ61Aと、から成る。左のスライドレール部51Aの基本的な構成は、上記実施例1の左のスライドレール部51と同じである。左のスライダ61Aの基本的な構成は、上記実施例1の左のスライダ61と同じである。
図14は上記図8に対応させて表している。図16(a)は、図10に対応させて表している。図16(b)は、図16(a)に示されたスライダ61Aの下端部分を裏側から見た構成を示している。図17(a)は、スライドレール部51Aに対してスライダ61Aが分解された構成を裏側から見た図である。
図14〜図17(a)に示されるように、該スライドレール部51Aは、スライダ61Aのスライド可能な領域Tetの一部に、該スライダ61Aとの間の摩擦力が大きい摩擦力増大部82を有している。該摩擦力増大部82は、スライドレール部51Aの被スライド面51cの一部が、トーションバー40Lの付勢方向Rt(図4参照)に対し、逆方向へ隆起した隆起面によって構成されている。以下、摩擦力増大部82のことを、適宜「隆起面82」と言い換える。
詳しく述べると、スライドレール部51Aの被スライド面51cは、上端51dから下方の抜け止め部58へ向かって、この順に位置した基準面81と前記隆起面82と高位面83とを有する、いわゆる段差面である。該基準面81と該隆起面82と該高位面83は、上から下へ連続しており、被スライド面51cに一体形成されている。
該基準面81は、被スライド面51cの基準となる最も低い、つまりヒンジアーム31Lの表面32aに最も近い、平坦な面である。
該隆起面82は、基準面81の下端81aから下方へ向かって緩い上り傾斜となる、つまりヒンジアーム31Lの表面32aから離れる方へ傾いた、平坦な傾斜面である。このように、該隆起面82は、トーションバー40Lの付勢方向Rt(図4参照)に対して逆方向へ隆起した面である。
該高位面83(平坦面83)は、隆起面82の頂部82aから、そのまま下方へ向かって抜け止め部58まで延びる、平坦な面である。つまり、隆起面82の頂部82aには、そのままの高さでスライダ61Aのスライド面61bがスライド可能な高位面83が連続している。該高位面83は、被スライド面51cのなかの隆起面82以外の面81、つまり基準面81に対して平行である。該スライドレール部51Aの裏面51bが、該アーム基端部分32の前面32aに重ね合わされた状態において、該スライドレール部51Aの裏面51bはアーム基端部分32の前面32aに対して平行である。従って、基準面81及び高位面83は、該スライドレール部51Aの裏面51b(縁51aの裏面を含む)に対して平行であり、且つ、アーム基端部分32の前面32aに対して平行である。
該基準面81に対して、隆起面82の頂部82a及び高位面83は、高さHiだけ高い位置にある。基準面81におけるスライドレール部51Aの厚さT1に対し、隆起面82の頂部82a及び高位面83におけるスライドレール部51Aの厚さT2は、高さHiだけ大きい(T2=T1+Hi)。スライドレール部51Aには、基準面81に対して高さHi分の隆起部84が形成されていることになる。
基準面81に対する隆起面82の傾き始点は、該基準面81の下端81aに位置する。該基準面81の領域Te1は、該スライドレール部51Aの上端51dから該基準面81の下端81aまでの範囲に設定されている。該隆起面82の領域Te2は、基準面81の下端81aから該隆起面82の頂部82aまでの範囲に設定されている。該高位面83の領域Te3は、隆起面82の頂部82aから抜け止め部58までの範囲に設定されている。
図18(a)、(b)は、スライダ61Aがスライドレール部51Aの基準面81の上部に位置していることを示している。トランクリッド14(図2参照)が全閉まで閉じている状態のときに、該スライダ61Aの下端面61cは、図18(a)に実線によって示される停止位置STにある。該停止位置STは、図4に示される全閉位置P21に対応する。基準面81の下端81a(隆起面82の始点81a)は、該停止位置STに隣接している。つまり、隆起面82は、トランクリッド14の全閉状態時におけるスライダ61Aの停止位置STに、隣接している。
この状態から、基準面81上を下方へ向かってスライド変位したスライダ61Aは、想像線によって示されるように、隆起面82に乗り上がる。この状態を図19に示す。図19(a)は、スライダ61Aが、隆起面82のなかの頂部82aに到る直前の部位82bに位置していることを示している。図19(b)は、図19(a)のb−b線に沿った断面を示している。上記実施例1(図11(c)参照)と同様に、スライダ61Aのスライド面61bから一対の折り返し部64,64までの間隔ds、つまり一対のスライド溝65,65の溝幅dsの大きさは、スライドレール部51Aの厚さT1(実施例1の厚さtrに相当する)よりも大きく設定されている。
しかも、図16(a)及び図19(a)に示されるように、実施例2の間隔dsの大きさは、スライドレール部51Aの被スライド面51cに対し、スライダ61Aのスライド面61bがスライドして隆起面82を乗り越える際に、スライダ61Aに有している一対の折り返し部64,64がスライドレール部51Aの裏面51bに一時的に接することが可能な大きさに設定されている。このため、スライド面61bが隆起面82を乗り越える場合には、一対のアーム部62,62の各折り返し部64,64は、スライドレール部51Aの裏面51bに一時的に接する。その分、接触面積が一時的に増すので、摩擦抵抗を一時的に増大させることができる。
さらには、図19(a)及び図19(b)に示されるように、スライダ61Aのスライド面61bのなかの、トーションバー40Lの他端部42が連結された部位(トーションバー40が連結された部位)に相当するバー位置85は、一対の折り返し部64,64が、スライドレール部51Aの裏面51bに一時的に接したときに、隆起面82のなかの頂部82aに到る直前の部位82bに位置するように設定されている。このため、スライド面61bが隆起面82の頂部82aを乗り越える直前に、摩擦抵抗が一時的に増大する。その直後、スライド面61bが隆起面82の頂部82aを乗り越えた時点に、一対のアーム部62,62の各折り返し部64,64は、スライドレール部51Aの裏面51bに接しなくなるので、摩擦抵抗は再び減少する。この結果、軽い力によってトランクリッド14を開くことができる。
図20(a)、(b)は、スライド面61bが隆起面82の頂部82aを乗り越えた状態を示している。隆起面82の頂部82aには、そのままの高さでスライダ61Aのスライド面61bがスライド可能な高位面83が連続している。該高位面83は、被スライド面51cのなかの他の部位81、つまり基準面81に対して平行である。このため、スライド面61bが隆起面82の頂部82aを乗り越えた後には、一対のアーム部62,62の各折り返し部64,64は、スライドレール部51Aの裏面51bに接しない状態を維持する。従って、摩擦抵抗が小さい状態が維持されるので、変動の無い軽い操作力によって、トランクリッド14を全開まで開くことができる。
その後、全開状態のトランクリッド14を閉め始めるときには、図20(a)、(b)に示されるように、一対のアーム部62,62の各折り返し部64,64は、スライドレール部51Aの裏面51bに接しない状態にある。従って、摩擦抵抗が小さい状態が維持されるので、トランクリッド14を閉め始めるときの操作力を、軽減することができる。
その後、トランクリッド14の全閉に閉め終わる直前(閉め間際)にも、図18(a)、図18(b)に示されるように、一対のアーム部62,62の各折り返し部64,64は、スライドレール部51Aの裏面51bに接しない状態にある。従って、摩擦抵抗が小さい状態が維持されるので、トランクリッド14を閉め終わるときの操作力を、軽減することができる。しかも、トランク開口部13に対するトランクリッド14の閉め間際の閉め荷重が小さくてすむので、確実に閉めることができる、いわゆる閉まり性が高い。
このように、スライドレール部51Aの被スライド面51cは、一様ではなく、起伏を有した、いわゆるカム面に形成されている。スライダ61Aは、該カム面の起伏に案内されながらスライド変位する。しかも、被スライド面51cと、スライダ61Aのスライド面61bとの間の、摩擦抵抗も変化する。トランクリッド14の開閉動作や開閉荷重を、最適化することができる。
図16及び図17(a)に示されるように、スライドレール部51Aは、一対のストッパ55A,55Aを有している。該一対のストッパ55A,55Aは、スライドレール部51Aに対するスライダ61Aの下降可能な最下限位置P24(図4参照)を規定するための部分であって、該スライドレール部51Aに一体に形成されている。該ストッパ55A,55Aは、一対の係止用凸部によって構成されている。該一対の係止用凸部55A,55A(ストッパ55A,55A)は、スライドレール部51Aの厚み方向に貫通した断面円弧状の凸状に形成されている。
一方、スライダ61Aには、一対の係止用凸部55A,55Aに係止可能な凹状の一対の係止部79A,79Aが形成されている。該一対の係止部79A,79Aは、一対の延出部63,63の内面に互いに対向するように窪んでおり、各延出部63,63の延び方向に細長い断面円弧状の溝に形成されている。
図17(b)は、スライドレール部51Aの下部にスライダ61Aが位置して、一対のストッパ55A,55Aによって停止した状態を裏側から見た図である。想像線によって示されたスライダ61Aは、図18(a)に実線によって示された停止位置に対応している。図17(b)に想像線によって示されるスライダ61Aは、スライドレール部51Aに案内されて下方にスライドする。この結果、図17(b)に実線によって示されるように、スライダ61Aの下端面61cは、ストッパ55A,55Aに当接する。このため、スライダ61Aは、スライドレール部51Aに対して、更に下降することが規制される。
このように、スライドレール部51Aは、スライダ61Aの下降可能な最下限位置P24を規定するためのストッパ55A,55Aを有する。該一対のストッパ55A,55Aの位置は、図4に示される最下限位置P24に対応する。つまり、スライダ61Aは、アーム基端部分32のスイング運動に従って下降するものの、ストッパ55A,55Aによって最下限位置P24の上に保持される。このため、スライドレール部51Aとスライダ61とトーションバー40Lの他端部42との組み付け性を、更に高めることができる。
図17(c)は、スライダ61Aがスライドレール部51Aの最も下部に位置することによって、一対の係止部79A,79Aが一対の係止用凸部55A,55Aに係止した状態を示している。係止用凸部55A,55Aに係止部79A,79Aを係止させることにより、スライドレール部51Aにスライダ61Aを保持することができる。このため、スライドレール部51Aにスライダ61Aを仮組みした上で、次工程に搬送することができるので、搬送性が高まる。
実施例2によれば、上記実施例1の作用、効果と同様の作用、効果を発揮する。さらに実施例2では、スライドレール部51Aは、スライダ61Aのスライド可能な領域Tetの一部に、該スライダ61Aとの間の摩擦力が大きい摩擦力増大部82を有している。このため、スライド可能な領域Tetのなかの摩擦力増大部82を、スライダ61Aがスライドするときの、スライドレール部51Aとスライダ61Aとの間に滑り摩擦力(増大部位の滑り摩擦力)は、他の部位81をスライダ61Aがスライドするときの滑り摩擦力(一般部位の滑り摩擦力)よりも大きい。
スライドレール部51Aに摩擦力増大部82を設けるだけなので、増大部位の滑り摩擦力がトーションバー40Lの付勢力を上回るように、摩擦力増大部82を適宜に容易に設定することができる。例えば摩擦力増大部82の大きさ、形状、表面荒さ、突起の有無を容易に設定することができる。しかも、摩擦力増大部82の構成が簡単であり、スライドレール部51Aとは別個の部品を設ける必要がなく、コストを増加させずにすむ。
増大部位の滑り摩擦力が、トーションバー40Lの付勢力によるスライド荷重を上回るようにするだけで、開閉運動中のヒンジアーム31及びトランクリッド14(開閉体14)を、人為的に任意の開度で一時停止させることができる。また、増大部位の滑り摩擦力が、トーションバー40Lの付勢力によるスライド荷重を上回ることにより、図21に示されるように、トランクリッド14が開き始めの時点に一気に全開になる(想像線の14Aの位置になる)、いわゆるポップアップすることを抑制して、途中の開度(想像線の14Bの位置)にすることができる。しかも、ポップアップを抑制するための、別個の部材を設ける必要もない。
さらには、摩擦力増大部82は、スライドレール部51Aの被スライド面51cの一部が、トーションバー40Lの付勢方向に対して逆方向へ隆起した隆起面82によって構成されている。スライダ61Aのスライド面61bが、トーションバー40Lの付勢力に抗して隆起面82に乗り上がることによって、滑り摩擦力が増大する。簡単な構成によって摩擦力増大部82を構成することができる。
さらには一対のスライド溝65,65は、スライドレール部51Aの両側の縁部51a,51aにスライド可能に嵌合している。このため、スライダ61Aは、略平板状のスライドレール部51Aに対して表裏方向に、つまりトーションバー40Lの付勢方向Rt(図4参照)や反付勢方向に抜け出ることはない。
さらには、一対のスライド溝65,65の溝幅ds、つまり、スライダのスライド面61bから一対の折り返し部64,64までの間隔dsの大きさは、スライドレール部の厚さT2よりも大きく設定されている。しかも、該スライダ61Aは、スライドレール部51Aに対して、トーションバー40Lの付勢方向Rtに常に面接触した状態に保持されている。このため、スライダ61Aのスライド面61bが隆起面82に乗り上がっていない場合には、一対のアーム部62,62の各折り返し部64,64は、スライドレール部51Aの裏面51bに接しない。その分、接触面積が小さいので摩擦抵抗を抑制することができる。
さらには、図18(a)に示されているように、隆起面82は、トランクリッド14(図2参照)の全閉状態時におけるスライダ31Aの停止位置STに、隣接している。このため、例えばトランクリッド14のラッチ機構(図示せず)をアンラッチ操作した際に、トランクリッド14が全閉状態から少しだけ開いた状態のときに、隆起面82によってスライダ61Aを一時停止させることができる。スライダ61Aが一時停止するので、トランクリッド14も一時停止する。従って、トランクリッド14の不要な開動作を抑制することができる。例えば、アンラッチ操作をした後、トランクリッド14を開き操作するために、開口部13とトランクリッド14との間に手を入れることができる程度の開きスペースを確保した状態で、トランクリッド14を一時停止状態にすることができる。
なお、本発明では、実施例2の摩擦力増大部82は、隆起面の構成に限定されるものではない。例えば、スライドレール部51Aの被スライド面51cは、基準面81に対して起伏のない均一な平坦面とし、前記隆起面82に相当する範囲Te2の表面荒さを変えることによって、該表面荒さを変更した部位を摩擦力増大部82とすることができる。また、摩擦力増大部82をスライドレール部51Aのスライド方向の両縁(側面)に突起を設け、該突起を摩擦力増大部82とすることができる。