JP5668531B6 - チタン酸リチウムランタン粒子の製造方法 - Google Patents

チタン酸リチウムランタン粒子の製造方法 Download PDF

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本発明は、チタン酸リチウムランタン粒子の製造方法及びチタン酸リチウムランタン粒子に関するものである。
リチウムやリチウム含有物質を負極に用いた電池(以下、「リチウムイオン電池」ともいう。)は、軽量で高容量であるばかりでなく、適切な正極と組み合わせることで高い電圧が得られる場合がある。このため、リチウムイオン電池は携帯電子機器、カメラ、時計、電動工具、さらにはハイブリッド自動車用バッテリーなどに広く応用されている。
従来のリチウムイオン電池には、電池内に可燃性の有機電解液を含んだものがある。このため、このリチウムイオン電池が短絡した場合、即ち電池内で有機電解液とリチウムとが接触し、反応した場合には発火や爆発などを引き起こす可能性があった。そこで、この可能性を回避するために様々な試みがなされており、そのうちの1つが「脱電解液化」である。
この脱電解液化の試みの一つとして、有機電解液に代えて、セラミック電解質を採用したリチウムイオン電池(以下、「全固体リチウムイオン電池」ともいう。)が開発されており、その従来技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
リチウムイオン電池において、セラミック電解質を採用すると、電池反応によって電解質中を移動するイオンがリチウムイオン(以下、「Li」とも表記する。)だけになるので副反応を抑制できる場合がある。また、有機電解液を電池内に含まないので、シール部材や液封止構造が不要となることもある。このため、リチウムイオン電池の小型・薄型化が可能となる場合がある。
上記セラミック電解質において、一般式Li3xLa2/3−xTiO(但し、xは0<x<0.17の条件を満たす。)で表されるチタン酸リチウムランタン(Lithium Lanthanum Titanate、略して以下、「LLT」とも表記する。)のペロブスカイト結晶は、代表的なリチウムイオン伝導性セラミック電解質であり、x=0.12の場合に、セラミック電解質の中で最も高いリチウムイオン伝導度0.00153S/cmを示すことが知られている。
特開2006−277997号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法、即ちセラミック電解質粉体(例えば、チタン酸リチウムランタン粒子)を電極活物質粉体とともに圧粉成型する方法には、圧粉成型する際に用いられるセラミック電解質粉体の平均粒径が粗大であるといった課題がある。このため、上記方法を用いて全固体リチウムイオン電池を製造すると、セラミック電解質粉体と電極活物質粉体との界面での接触及び/又はセラミック電解質粉体同士の界面での接触(以下、「界面接触」ともいう。)が不十分となり、電池の出力、即ち電圧が十分に得られない場合がある。また、充放電サイクルに伴うリチウムイオン電池の体積変化によって、この界面接触が不十分となり、サイクル寿命が短くなる場合がある。
そこで、本発明のいくつかの態様は、このような事情に鑑みてなされたものであって、平均粒径をより微細化できるチタン酸リチウムランタン粒子の製造方法及び平均粒径がより微細化されたチタン酸リチウムランタン粒子を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための本発明の一態様は、チタン酸ランタン粒子をリチウム塩水溶液に懸濁させた懸濁水を水熱処理すること、を含むことを特徴とするチタン酸リチウムランタン粒子の製造方法である。
上記態様によれば、常温常圧では非水溶性であるチタン酸ランタン粒子を高温高圧水に溶解させることができる。このため、リチウム塩に含まれるリチウムイオンをチタン酸ランタン粒子内に挿入することができ、チタン酸リチウムランタン粒子を製造することができる。ここで、「水熱処理」とは、密閉容器の中に試料と水を入れて高温高圧条件下で反応を促す処理方法をいう。また、「懸濁」とは、溶媒に不溶な微粒子が溶媒中を浮遊している状態をいう。
また、本発明の他の態様は、前記水熱処理することは、超臨界水を用いることとしても良い。
上記態様によれば、製造時に超臨界水を用いているので、製造されたチタン酸リチウムランタンを結晶として析出させる際、その平均粒径を微細なものとすることができるため、超臨界水を用いなかった場合と比較して、さらに微細なチタン酸リチウムランタン粒子を製造することができる。また、チタン酸リチウムランタン粒子を製造する速度、即ち反応速度も向上させることができる。ここで、「超臨界水」とは、超臨界状態にある水、即ち水の臨界点を越えた状態にある水を言い、詳しくは、臨界温度、即ち374.1℃以上の温度で、かつ水の臨界圧力、即ち22.04MPa以上の圧力下にある状態の水を言う。
また、本発明の他の態様は、前記チタン酸ランタン粒子の平均粒径は、0.06μm以下であることとしても良い。
上記態様によれば、チタン酸リチウムランタン粒子を製造する際の出発物質(つまり、反応物)の一つであるチタン酸ランタン粒子の平均粒径は0.06μm以下であるので、製造された(つまり、生成物である)チタン酸リチウムランタン粒子の平均粒径を0.06μm以下にすることができる。このため、チタン酸ランタン粒子の平均粒径が0.06μmより大きい場合と比較して、微細なチタン酸リチウムランタン粒子を製造することができる。ここで、「平均粒径」とは、粒子直径の分布における平均中心値をいう。
また、本発明の他の態様は、前記チタン酸ランタンは、ペロブスカイト型の結晶構造を有し、前記リチウム塩は、水酸化リチウムであることとしても良い。
上記態様によれば、高温高圧水中で、水酸化リチウムに含まれるリチウムイオンをペロブスカイト型チタン酸ランタン粒子内に挿入することができるので、微細なペロブスカイト型チタン酸リチウムランタン粒子を製造することができる。
上記課題を解決するための本発明の別の態様は、上記態様の何れかに記載の製造方法で製造され、平均粒径が0.06μm以下であることを特徴とするチタン酸リチウムランタン粒子である。
上記態様によれば、粗大なチタン酸リチウムランタン粒子を用いた場合と比較して、成型体の焼結温度を低下させることができるので、容易にリチウムイオン伝導層を焼結形成することができる。
本発明の実施形態に係るLLT粒子の製造方法を示す図。 本発明の実施形態に係るLLT粒子の製造における温度領域を示す図。 本発明の実施形態に係る製造方法で製造したLLT粒子のX線回折パターン。 LLT粒子を製造する際に用いたLaTiO粒子の製造方法を示す図。 LLT粒子を製造する際に用いたLaTiO粒子のX線回折パターン。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。具体的には、まず本実施形態に係るLLT粒子200の製造方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。次に、具体的検証として、本実施形態に係る製造方法で製造したLLT粒子200の結晶構造及び平均粒径について、図3を参照しながら説明する。最後に、本実施形態に係る製造方法において、原材料の一つとして用いられたチタン酸ランタン(以下、「LaTiO」とも表記する。)粒子100の製造方法と結晶構造について、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する場合もある。
[LLT粒子200の製造方法について]
図1(a)〜(f)は、本実施形態に係るLLT粒子200の製造方法を示す図である。
本実施形態に係る製造方法では、図1(a)及び図1(b)に示すように、まずLaTiO粒子100とリチウム塩水溶液(つまり、リチウム塩粒子2を純水4に溶解させたもの)6とを用意する。なお、このLaTiO粒子100の製造方法については後述する。
LaTiO粒子100は、例えば平均粒径が0.06μm以下であり、ペロブスカイト型の結晶構造を有するLaTiO粒子である。また、リチウム塩粒子2は、例えば水酸化リチウム(以下、「LiOH」とも表記する。)粒子である。
次に、図1(c)に示すように、LaTiO粒子100をリチウム塩水溶液6に懸濁させ、懸濁水8を作製する。この懸濁水8は、例えば、0.15mol/l(以下、mol/lを「M」とも表記する。)のリチウム塩水溶液6にLaTiO粒子100を0.1M添加した後、15分間以上超音波撹拌することで作製される。
次に、作製した懸濁水8を水熱処理する。この水熱処理は、図1(d)に示すように、まず懸濁水8を耐圧容器10に入れる。この際、例えば耐圧容器10の内容量5ccに対して、懸濁水8を2.5cc程度入れる。
次に、この耐圧容器10を炉に入れ、図1(e)に示すように、耐圧容器10の温度を400℃まで急速に加熱する(図2を参照)。その後、この400℃を10分間維持する。なお、耐圧容器10の温度が室温程度から400℃に達するまでの時間は、例えば2分間程度である。また、この耐圧容器10は、耐熱耐食合金製の耐圧容器であり、例えばSUS316やハステロイで製造されている。
また、この水熱処理の工程において、超臨界状態の純水、即ち超臨界水を用いることもできる。
次に、炉から耐圧容器10を取り出し、図1(f)に示すように、耐圧容器10を急冷する。耐圧容器10を急冷するために、例えば耐圧容器10を水浴に浸漬する。
最後に、水熱処理した懸濁水12を耐圧容器10内から取り出し、製造したLLT粒子200を懸濁水12から分離する。この分離の際、例えば遠心分離機を用いて遠心分離することができる。なお、懸濁水12を耐圧容器10内から取り出す際、例えば耐圧容器10内をイオン交換水や蒸留水で濯ぎながら回収してもよい。
以上のように、上記の製造方法によれば、LaTiO粒子100をLiOH水溶液6に懸濁させた懸濁水8を水熱処理するので、高温高圧水中で、LiOH粒子2に含まれるLiをLaTiO粒子100内に挿入することができ、平均粒径が0.06μm以下の微細な(つまり、平均粒径の小さな)LLT粒子200を製造することができる。また、こうして製造されたLLT粒子200の粒径は概ね均一である。
本実施形態に係る製造方法で製造されたLLT粒子200は、LaTiO粒子100へのリチウムイオンの拡散・浸入によって合成されるので、LLT粒子200の平均粒径は、反応物であるLaTiO粒子100の平均粒径によって概ね決まる。このため、平均粒径が微細なLaTiO粒子100を用いるほど、得られるLLT粒子200の平均粒径も微細になる。また、平均粒径が微細なLLT粒子200を用いるほど、LLT粒子200を焼結した際の焼結温度の低下も大きくなる。
このようにして製造されたLLT粒子200を全固体リチウム電池の固体電解質材料に用いた場合、平均粒径が微細化されているので、固体電解質粒子同士の界面接触や固体電解質と電極活物質粒子との界面接触を向上させることができる。このため、電池の内部抵抗が下がり、電圧を向上させることができる。
なお、本実施形態では、図1(c)に示した懸濁水8に含まれるLiOH粒子2とLaTiO粒子100とのモル比(つまり、LiOH/LaTiO)を0.1M/0.15Mとして説明したが、この比率に限定されるものではない。例えば、モル比が0.5以上であればLLT粒子200を効率良く製造することができる。また、このモル比をさらに高めることで、LaTiO粒子100内へのリチウム拡散がさらに生じやすくなる。このため、LLT粒子200をさらに効率良く製造することができる。
[具体的検証]
以下、LLT粒子200の結晶構造及び平均粒径について検証する。
図3は、本実施形態に係る製造方法で製造されたLLT粒子200のX線回折の結果(つまり、X線回折パターン)である。ここで、図3の縦軸は回折強度(単位は任意強度)を示し、その横軸は回折角(単位は度)を示す。
図3に示された回折線の位置と幅から、本実施形態に係る製造方法で製造された微粒子は、ペロブスカイト型の結晶構造を有するLLT粒子200であることが確認できた。そして、このLLT粒子200は、水酸化ランタン(以下、「La(OH)」とも表記する。)粒子とともに得られることも確認できた。さらに、このLLT粒子200の平均粒径は概ね0.06μmであることも確認できた。
なお、図3において、●マークが付された回折線がLLT粒子200に起因する回折線であり、マークが付されていない回折線がLa(OH)粒子に起因する回折線である。
また、このLLT粒子200の組成式はLi0.2LaTi0.8であることも確認できた。なお、この物質のICDD番号は00−058−0155である。また、La(OH)のICDD番号は00−036−1481である。ここで「ICDD番号」とは、国際回析データセンター(International Center for Diffraction Data、略してICDD)が発行した粉末データファイル(Powder Data File)において、各物質に対応付けられている番号をいう。
また、LLT粒子200の平均粒径は、シェラー法を用いて算出された。ここで「シェラー法」とは、X線回折を利用した構造解析の手法の一つであり、回折線の幅からサンプル粒子の平均粒径を算出することができる手法の一つである。
[原材料の製造方法]
以下、LaTiO粒子100の製造方法及びLa(OH)粒子16の製造方法について、それぞれ説明する。
(LaTiO粒子100の製造方法について)
図4(a)〜(f)は、本実施形態に係る製造方法において、原材料の一つとして用いられたLaTiO粒子100の製造方法を示す図である。
この製造方法では、図4(a)及び図4(b)に示すように、まず非晶質の二酸化チタン(以下、「TiO」とも表記する。)粒子14とLa(OH)粒子16とを用意する。ここで「非晶質」とは、結晶のような規則正しい構造をもたないことをいう。なお、TiO粒子14は、例えば平均粒径が0.05μm程度のものを用いる。また、La(OH)粒子16は、例えば平均粒径が0.2μm程度のものを用いる。
次に、図4(c)に示すよう、TiO粒子14とLa(OH)粒子16とを純水18に懸濁させ、懸濁水20を作製する。この懸濁水20は、例えば、純水18にTiO粒子14とLa(OH)粒子16とをそれぞれ0.1M添加した後、15分間以上超音波撹拌することで作製される。
次に、作製した懸濁水20を水熱処理する。この水熱処理は、図4(d)に示すように、まず懸濁水20を耐圧容器22に入れる。この際、例えば耐圧容器22の内容量5ccに対して、懸濁水20を2.5cc程度入れる。そして、この耐圧容器22を炉に入れ、図4(e)に示すように、耐圧容器22の温度を400℃まで急速に加熱する。その後、この400℃を10分間維持する。なお、耐圧容器22の温度が室温程度から400℃に達するまでの時間は、例えば2分間程度である。また、この耐圧容器22は、耐圧容器10と同様に耐熱耐食合金製の耐圧容器であり、例えばSUS316やハステロイで製造されている。
また、この水熱処理の工程において、超臨界水を用いることもできる(図2を参照)。
次に、炉から耐圧容器22を取り出し、図4(f)に示すように、耐圧容器22を急冷する。耐圧容器22を急冷するために、例えば耐圧容器22を水浴に浸漬する。
最後に、水熱処理した懸濁水24を耐圧容器22内から取り出し、製造したLaTiO粒子100を懸濁水24から分離する。この分離の際、例えば遠心分離機を用いて遠心分離することができる。なお、懸濁水24を耐圧容器22内から取り出す際、例えば耐圧容器22内をイオン交換水や蒸留水で濯ぎながら回収してもよい。
こうして製造されたLaTiO粒子100のX線回折パターンを図5に示す。ここで、図5の縦軸は回折強度(単位は任意強度)を示し、その横軸は回折角(単位は度)を示す。
図5において、■マークが付された回折線がLaTiO粒子100に起因する回折線である。LaTiO粒子100の平均粒径は、上述したシェラー法により、0.06μmであることが確認できた。なお、LaTiOのICDD番号は01−075−0267である。
(La(OH)粒子16の製造方法について)
LaTiO粒子100の製造方法において、原材料の一つとして用いられたLa(OH)粒子16は、酢酸ランタン(La(CHCOO))水溶液と水酸化リチウム(LiOH)水溶液とを反応させて製造することができる。以下、その製造方法について簡単に説明する。
まず、スターラーで撹拌されている0.1Mの酢酸ランタン水溶液10ml中に、0.3Mの水酸化リチウム水溶液10mlを滴下する。この滴下が終了した後、さらに20分間撹拌を続けて懸濁水を得る。次に、得られた懸濁水を遠心分離し、沈殿物を得る。次に、得られた沈殿物に純水25mlを加え、超音波分散させた後に、再び遠心分離する。これにより、得られた沈殿物は洗浄される。この洗浄工程を2回以上行い、La(OH)粒子16を含んだゼリー状の沈殿物を製造する。こうして製造されたLa(OH)粒子16を粒径分布測定したところ、La(OH)粒子16の平均粒径は0.2μmであった。なお、La(OH)粒子16の粒径分布は、光学式粒度分布測定(島津SALD2200を使用)により求められた。
2 リチウム塩粒子、4 純水、6 リチウム塩水溶液、8 懸濁水、10 耐圧容器、12 懸濁水、14 二酸化チタン粒子、16 水酸化ランタン粒子、18 純水、20 懸濁水、22 耐圧容器、24 懸濁水、100 チタン酸ランタン粒子、200 チタン酸リチウムランタン粒子

Claims (4)

  1. チタン酸ランタン粒子をリチウム塩水溶液に懸濁させた懸濁水を水熱処理すること、を含むことを特徴とするチタン酸リチウムランタン粒子の製造方法。
  2. 前記水熱処理することは、超臨界水を用いることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸リチウムランタン粒子の製造方法。
  3. 前記チタン酸ランタン粒子の平均粒径は、0.06μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチタン酸リチウムランタン粒子の製造方法。
  4. 前記チタン酸ランタンは、ペロブスカイト型の結晶構造を有し、
    前記リチウム塩は、水酸化リチウムであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のチタン酸リチウムランタン粒子の製造方法。
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