JP5668189B2 - 摺動部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動面にグラファイトを含む摺動部材及びその製造方法に係り、特に、摺動面に耐摩耗性及び摺動特性に優れた皮膜が形成された摺動部材及びその製造方法に関する。
従来から、自動車において、エンジン、トランスミッションなど様々な機器に摺動部材が用いられており、この摺動部材の摺動特性を向上させるために様々な開発がなされている。この摺動部材の摩擦係数を低減させることは、自動車の燃費の向上にも繋がるので、特に重要視されている。近年では、このような摩擦係数の低減化、耐摩耗性の向上を図るべく、摺動部材の表面のコーティング技術として、その表面に非晶質炭素皮膜を被覆する技術が注目されている。
非晶質炭素皮膜は、ダイヤモンド構造とグラファイト構造とを含むアモルファス構造を有するので、耐摩耗性及び潤滑性に優れている。しかしながら、非晶質炭素皮膜は、PVD法やCVD法などの成膜方法により成膜されるため、大量生産には適さず、コストを多大に要することがある。
そこで、安価かつ量産に皮膜を形成する方法として、溶射による成膜方法や、コールドスプレーによる成膜方法が採用されている。例えば、コールドスプレー法は、皮膜の材料の融点又は軟化温度よりも低い温度に加熱した圧縮ガスを、先細末広がりのノズルにより流速を高め、このガス流れの中に皮膜の材料となる粉末を投入して加速させ、該粉末を固相状態のまま基材に高速で衝突させて皮膜を形成する方法である。この方法によれば、皮膜材料となる粉末を溶融させることなく成膜できるので、基材の熱変形及び皮膜の酸化を抑制することができる。
たとえば、WC系の造粒−焼結サーメット粒子を含有する粉末から、コールドスプレー法により、基材の表面に皮膜を成膜する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。また、WCなどの硬質表面材料粒子と、コバルト等のバインダ材料が被覆されたグラファイト粒子との粉末から、コールドスプレー法により、皮膜を成膜する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
特開2008−231527号公報 特開2007−126751号公報
しかしながら、例えば、特許文献1のように、造粒−焼結サーメット粒子から皮膜を形成した場合には、基材の表面の耐摩耗性を向上させることができるが、皮膜には、グラファイトなどの固体潤滑剤となる材料が含まれていない。従って、摺動部材として用いた場合には、相手部材の摺動面に対して攻撃性が高く、十分な摺動特性を得ることができないことがある。
一方、特許文献2のように、グラファイト粉末を皮膜に含有させた場合であったとしても、以下の2つの理由により、十分な摺動特性を得ることができないことがある。第一の理由に、サーメット粒子とグラファイト粒子の比重差、それぞれの粒子の適正な成膜条件(温度、速度など)に差があるため、成膜時には、均一にグラファイト粒子が皮膜中に分散されず、場合によっては、摺動面を含む皮膜中のグラファイト粒子の割合が低下することが挙げられる。
第二の理由に、グラファイト粒子には、バインダ材料が被覆されているため、摺動面には、グラファイト粒子が露出せず、バインダ材料が存在することが挙げられる。これにより、摺動時には、バインダ材料が相手部材に凝着することもあり、グラファイト本来の潤滑作用が期待できないことがある。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摺動面に均一に分散してグラファイトを含み、これにより、耐摩耗性ばかりでなく、低摩擦特性を得ることができる摺動部材及びこの摺動部材を安価かつ量産できる製造方法を提供することにある。
前記課題を鑑みて、発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、セラミック粉末と、金属粉末とを混合して焼結したサーメット粉末を製造する際に、グラファイト粉末を添加することにより、グラファイト粒子を含有したサーメット粒子からなる粉末を用いれば、グラファイト粒子と、サーメット粒子とを一体的に基材の摺動面に吹き付けることができ、摺動面の表面及び皮膜中に、グラファイト粒子を均一に分散して形成できるとの新たな知見を得た。
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、本発明に係る摺動部材の製造方法は、セラミック粉末と、金属粉末と、グラファイト粉末とを、混合して焼結することにより、グラファイト粒子を含有したサーメット粒子からなるサーメット粉末を製造する工程と、該サーメット粉末から、コールドスプレー法により、基材の摺動面にサーメット皮膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とするものである。
このようにして製造された摺動部材は、セラミック粉末と、金属粉末と、グラファイト粉末とを、混合して焼結することにより、グラファイト粒子を含有したサーメット粒子からなるサーメット粉末から、コールドスプレー法により、基材の摺動面にサーメット皮膜が被覆されたものである。
本発明によれば、まず、セラミック粉末と、金属粉末と、グラファイト粉末とを均一に混合して、これらの粉末の粒子同士を焼結させた混合粒子からなる粉末を製造する。すなわち、この焼成の際に、セラミック粉末のセラミックと、金属粉末の金属とから、サーメットが生成されると共、このサーメットにグラファイト粒子が介在したサーメット粒子からなるサーメット粉末が得られる。焼結時には、金属粒子の金属は、セラミック粒子のセラミックと合わさってサーメットになると共に、グラファイト粒子をこのサーメットに結合させることができる。
このようにして得られたサーメット粉末を、コールドスプレー法により、固相状態(サーメット材料が固相の状態)で圧縮ガスと共に基材の摺動面に吹き付けて、グラファイト粒子を含有したサーメット皮膜を、基材の摺動面に成膜することができる。この際、サーメットとグラファイト粒子が一体となって吹き付けられるので、サーメット皮膜には、グラファイト粒子が均一に分散することになる。この結果、摺動面にも、グラファイト粒子が均一に分散して配置されるので、摺動時には、摺動面のグラファイトが固体潤滑剤として作用し、潤滑性を確保する(低摩擦特性を得る)ことができる。また、コールドスプレー法により成膜するので、摺動部材を安価かつ量産できる。
より好ましくは、混合粉末に用いるグラファイト粉末は、造粒粉末である。この造粒粉末は、樹脂バインダを用いて天然黒鉛粉末など微細な粉末を結合して、結合体とし、この結合体を粉砕した粉末であり、この際、所望の平均粒径に分級されてもよい。造粒したグラファイト粒子を用いることにより、成膜時には、その一部のグラファイト粒子は、解砕して皮膜により均一に分散する。これにより、摺動面にグラファイトが配置されることにより、摺動面の摺動特性をさらに向上させることができる。
また、グラファイト粉末の平均粒径は、成膜時の皮膜にグラファイト粒子を残存させることができるのであれば、特にその範囲は限定されないが、より好ましくは、10μm〜30μmである。このような範囲のグラファイト粉末を用いることにより、コールドスプレー法により皮膜を形成した場合に、皮膜中にグラファイト粒子を残存させ易い。発明者らの後述する実験によれば、平均粒径が10μm未満である場合には、皮膜中にグラファイト粒子が残存しにくく、30μmを超える場合には、皮膜が成膜され難い。
さらに、このグラファイト粉末は、混合した粉末全体(混合時の粉末全体)に対して、1.6〜4.8質量%含有していることがより好ましい。このような範囲となるように、混合粉末に対してグラファイト粉末を含有することにより、コールドスプレー法により皮膜を成膜し易く、皮膜中にグラファイト粒子を残存させ易い。発明者らの後述する実験によれば、混合時の粉末全体に対して、グラファイト粉末が1.6質量%未満である場合には、皮膜中にグラファイト粒子が残存しにくく、混合時の粉末全体に対して、グラファイト粉末が1.6質量%未満である場合には、皮膜が成膜され難い。
また、本発明でいうサーメットとは、炭化物、酸化物、窒化物、硼化物などのセラミック材料と金属材料との複合材料を意味する。セラミック材料としては、例えば、TiC、Ti(CN)、WC、NbC、TaC、MoC、BNなどを挙げることができ、金属材料としては、焼結時に、このセラミック材料を結合することができる材料であり、例えば、Co、Ni、Cr、及び、Moから選択される一種、または、これらから選択される2種以上が単体又は合金を挙げることができる。
そして、このサーメット粒子の原材料となるセラミック粉末は、上に示すセラミック材料から選定され、金属粉末は、上に示す金属材料から選定され、より好ましくは、前記セラミック材料は、WC粒子からなるWC粉末であり、金属粉末は、Co粒子からなるCo粉末又はMo粒子からなるMo粉末である。これらの粉末を用いることにより、WC−Co、系サーメット又はWC−Mo系サーメットに、Co又はMoを結合材としてグラファイト粒子とを含むサーメット粒子を含む粉末を得ることができる。
本発明として、前記製造方法により製造された摺動部材を開示する。本発明に係る摺動部材は、サーメットにグラファイト粒子が均一に分散したコールドスプレー皮膜が、基材の摺動面に被覆されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、コールドスプレーより成膜されたサーメット皮膜(コールドスプレー皮膜)は、サーメットに、グラファイト粒子が均一に分散しているので、摺動面には、均一に分散したグラファイト粒子が存在する。これにより、コールドスプレー皮膜にサーメットを含むことにより、摺動部材の耐摩耗性を向上させることができ、さらには、摺動面のグラファイトが、相手部材との固体潤滑剤として作用するので、摩擦係数の低減もすることができる。このようなサーメットとしては、上述した材料が好ましく、さらに、グラファイト粒子の形態は、上述した形態であることが好ましい。
より好ましくは、本発明に係る摺動部材のグラファイト粒子は、コールドスプレー皮膜の摺動面に対して面積率で、10〜30%含むものである。この面積率の範囲内となるように、グラファイト粒子を含有することで、より好適な潤滑特性を発現することができる。すなわち、面積率が10%未満である場合には、グラファイトの固体潤滑特性を十分発揮することができず、面積率が30%を超える場合には、グラファイト粒子の含有率が増加することにより、コールドスプレー皮膜の強度が低下することがある。
本発明によれば、摺動面に均一に分散してグラファイトを含むことができ、これにより、耐摩耗性ばかりでなく、低摩擦特性を得ることができる摺動部材及びこの摺動部材を安価かつ量産できる。
天然黒鉛粉末を電子顕微鏡で撮影した写真図。 造粒したグラファイト粉末を電子顕微鏡で撮影した写真図。 サーメット粉末を電子顕微鏡で撮影した図。 本実施形態にかかる摺動部材の断面を電子顕微鏡で撮影した図。 本実施形態に係るコールドスプレー装置を説明するための図。 摩擦摩耗試験を説明するための図。 実施例1及び比較例1の摩擦係数と摩耗量の結果と示した図。
以下に本発明に係る摺動部材及びその製造方法の実施形態に関して説明する。まず、グラファイト粒子を製造する。まず、図1に示すように、グラファイト粒子の原材料として、天然黒鉛粉末を準備する。
この天然黒鉛粉末と、PVD(ポリビニルアルコール)などの樹脂バインダを混練し、高速攪拌型混合造粒機を用いて、図2に示すように、数mm程度の平均粒径に造粒し、卓上型衝撃式粉砕機を用いて、平均粒径10〜50μmに粉砕し、粒度調整し、粒度調整した粉末を乾燥し、造粒粉末を製造する。一方、セラミック粉末として、平均粒径0.2μm〜5.0μmのWC粉末と、金属粉末として、平均粒径1μm〜10μmのCo粉末又はMo粉末を準備する。
次に、造粒−焼結法によりサーメット粉末を製造する。具体的には、バインダ(例えばPVA:ポリビニルアルコール)を各種溶媒(水またはアルコール等の溶剤)に分散させたものを、原料であるセラミック粉末、金属粉末、及び造粒したグラファイト粉末を混合した混合粉末に添加、混合しスラリーを調製する。そしてこのスラリーを、噴霧造粒機等を用いて球状の顆粒粉末に造粒し、次にこの顆粒粉末中から有機バインダを除去するため、および顆粒に適度な機械的強度を持たせる目的で脱脂・焼結を行う。
さらに、焼結後の粉末をボールミル等の解砕機を用いて解砕する。この解砕を行うことにより、顆粒一個々々が分離し、球状の粉末を得ることができる。次に、使用するコールドスプレー装置の種類やスプレー条件に応じて必要な粒度分布のコールドスプレー用粉末を得る目的で分級を行う。
分級としては、ふるいによる方法の他に、気流による分級およびその他の方法ならびにこれらを組み合わせた方法等が知られている。この分級により、図3に示すように、平均粒径が、5μm〜20μmのサーメット粒子からなるサーメット粉末を得る。
この造粒−焼結法により得られる粉末粒子は、球状で比較的粒度分布が揃っているため流動性が良く、また多孔質であり比表面積が大きく溶融され易いためスプレー効率が高い利点がある。
次に、グラファイト粒子を含有したサーメット粒子からなるサーメット粉末から、図5に示すコールドスプレー装置(成膜装置)を用いて、基材の摺動面にサーメット皮膜を成膜した。図5は、本実施形態に係るコールドスプレー法により、サーメット皮膜を成膜するためのコールドスプレー装置の模式図である。
本実施形態に係る摺動部材10は、クロムモリブデン鋼などの鉄系の基材11に、固相状態のサーメット粒子(粉末)を堆積させて皮膜を成膜した部材であって、図5に示すような成膜装置20を用いて製造することができる。
成膜装置20は、圧縮ガス供給手段21と、粉末供給手段22と、ノズル23と、ノズル移動手段24と、を少なくとも備えている。圧縮ガス供給手段21は、圧縮ガスを後述するノズル23に供給するため手段であって、圧縮ガスの圧力を調整する圧力調整弁21aを介してノズル23に接続されている。また、圧縮ガス供給手段21は、エア、不活性ガス等が充填されたボンベ、大気を圧縮するコンプレッサなどで挙げられるものであり、0.1〜5.0MPaの圧力条件のガスをノズル23に供給できるものであれば、特に限定されるものではない。また、圧縮ガス供給手段21の下流には、圧縮ガスを加熱するための加熱手段21bがさらに配設されている。加熱手段21bにより圧縮ガスを加熱し、所望の温度条件でサーメット粉末を基材11に吹き付けることができる。なお、加熱手段21bは、サーメット粉末を圧縮ガスにより間接的に加熱するためのものであり、圧縮ガス供給手段21の内部に配置されていてもよく、後述するヒータ23aによりサーメット粉末を所望の温度に加熱することができるのであれば、特に必要なものではない。
粉末供給手段22には、基材11に吹き付けるサーメット粉末が収容されており、サーメット粉末を所定の供給量でノズル23に供給可能なように、ノズル23に接続されている。ノズル23の内部には、供給されたサーメット粉末を加熱するためのヒータ23aが設けられている。ノズル23は、ノズル移動手段24に接続されおり、ノズル移動手段24を駆動させることにより、基材の摺動面に、均一な厚みのサーメット皮膜(コールドスプレー皮膜)を成膜することができる。
該装置20を用いて、以下の方法により摺動部材の成膜を行う。具体的には、まず、圧力調整弁21aにより圧縮ガスを0.5〜5.0MPa程度に圧力調整すると共に、加熱手段21bにより所定の温度に加熱し、ノズル23に供給する。一方、平均粒径が5〜20μmの程度のサーメット粉末を粉末供給手段22のポッパー22aに収容し、該粉末供給手段22からノズル23に、サーメット粉末を供給する。
そして、ノズル23を介して、圧縮ガスと共に固相状態のサーメット粉末を基材11の表面に吹き付けて、皮膜12を基材11の表面に成膜する。なお、吹き付けの際に、予めサーメット粉末が、基材の表面において100〜800℃程度の温度条件(好ましくは、300〜600℃)で吹き付けられるように、圧縮ガスを加熱手段21bで加熱するとともに、ノズル23内のヒータ23aにより、サーメット粉末を加熱し、この粉末の温度調整したサーメット粉末を、基材11の摺動面に吹き付けて、サーメット皮膜を成膜する。
コールドスプレー用のサーメット粉末中のサーメット粒子には炭化タングステン及び金属以外の成分が含まれてもよい。ただし、このセラミック(WC)及び金属(Co又はMo)以外の成分の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。
このように、サーメット粒子には、金属等が被覆されていない状態で、グラファイト粒子を含有しており、グラファイト粒子が一体となって吹き付けられるので、図4に示すように、サーメット皮膜には、グラファイト粒子が均一に分散することになる。この結果、摺動面にも、グラファイト粒子が均一に分散して配置されるので、摺動時には、摺動面のグラファイトが固体潤滑剤として作用し、潤滑性を確保する(低摩擦特性を得る)ことができる。さらには、造粒したグラファイト粒子を用いることにより、成膜時には、その一部のグラファイト粒子は、解砕して皮膜に、さらに均一に分散する。
本発明を以下の実施例に基づいて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<プレート試験片>
サーメット皮膜が形成された摺動部材(円盤状のプレート試験片)を製作した。まず、グラファイトとして、図1に示すような天然黒鉛粉末を250g準備し、これをPVAバインダ65gと混練し、高速攪拌型混合造粒機を用いて、図2に示すように、1mm程度の平均粒径に造粒し、卓上型衝撃式粉砕機を用いて、平均粒径10〜30μmに粉砕し、粒度調整し、粒度調整した粉末を乾燥し、造粒粉末を製造した。
次に、平均粒径1μmのWC粉末と、平均粒径3μmのCo粉末を、Co粉末が12質量%となるように混合すると共に、さらに、粉末全体に対して、1.6質量%となるように、グラファイトの造粒粉末を添加し、PVAに分散させ、噴霧造粒機を用いて球状の顆粒粉末に造粒し、顆粒に適度な機械的強度を持たせる目的で、脱脂及び1300℃で焼結を行った。その後、焼結後の粉末をボールミル等の解砕機を用いて解砕し、分級して、グラファイト粒子含有のサーメット粉末(平均粒径15μm)を製造した(図3参照)。
なお、サーメット粉末の平均粒径は、堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度測定器“LA−300”を用いて確認し、グラファイト粒子の平均粒径は、島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置(SALD‐2000J(ドライ測定用))を用いて確認した。
この得られたサーメット粉末を、図5に示すコールドスプレー装置を用いて、ヘリウムガスを作動ガスとし、ガス圧2MPa、ガス温度500℃、投射距離20mm、トラバース速度20mm/秒、粉末供給量20g/分、で、直径28mmの円盤状のクロムモリブデン鋼(JIS規格:SCM415)からなるプレートの表面(摺動面)に、厚さ0.3mmとなるように、吹き付けて、サーメット皮膜(コールドスプレー皮膜)を成膜した。
(比較例1)
実施例1と同じようにして、基材の摺動面に、サーメット皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、グラファイト粉末を添加せずに、サーメット粉末を製造し、このサーメット粉末を用いて、皮膜を成膜した点である。
<摩擦摩耗試験>
実施例1及び比較例1のプレート試験片に対して、以下の摩擦摩耗試験を行った。直径6.4mm、ビッカース硬さHv760相当のJIS規格:高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)の球状のボール試験片を準備した。図6に示すように、プレート試験片の皮膜表面に、ボール試験片を、面圧1300MPaで、プレート試験の中心から6mmの位置に押し当てて、周速0.3m/sでプレート試験を100分間回転させた。このときのプレート試験の摩擦係数及び摩耗量(摩耗深さ)を測定した。この結果を、図7に示す。
<結果1及び考察>
実施例1のプレート試験片は、図4に示すように、サーメットにグラファイト粒子が均一に分散したコールドスプレー皮膜が、基材の摺動面に被覆されていた。さらに、図7に示すように、実施例1及び比較例1のプレート試験片の皮膜の摩耗量(摩耗深さ)は、ほとんど変化なかったが、実施例1のプレート試験片のほうが、比較例1のものに比べて、摩擦係数が小さかった。これは、実施例1のプレート試験片は、摺動面に、グラファイトが存在することにより、試験時に、このグラファイトが固体潤滑剤として作用したものであると考えられる。
(実施例2)
実施例1と同様に、プレート試験片を製作した。実施例1と相違する点は、グラファイト粒子の平均粒径を5μm、10μm、30μm、又は50μmから選択し、その配合比を粉末全体に対して、0.8質量%、1.6質量%、4.8質量%、又は8.0質量%となるように、グラファイトの造粒粉末を添加して、サーメット粉末を製造し、この粉末を用いて、プレート試験片を製作した点である。
(実施例3)
実施例1と同じように、プレート試験片を製作した。実施例1と相違する点は、Co粉末の変わりに、同量のMo粉末を用い、さらに、グラファイト粒子の平均粒径を30μmにし、その配合比を粉末全体に対して、1.6質量%、又は4.8質量%となるように、グラファイトの造粒粉末を添加して、サーメット粉末を製造し、この粉末を用いて、プレート試験片を製作した点である。
(比較例2)
実施例1と同じように、プレート試験片を製作した。実施例1と相違する点は、グラファイト粒子の平均粒径を30μmにし、その配合比を粉末全体に対して、0.8質量%、1.6質量%、4.8質量%、又は8.0質量%となるように、グラファイトの造粒粉末を添加して、セラミック粉末、金属粉末のみを焼結し、グラファイト粉末を単純混合した混合粉末を用いて、コールドスプレー法により、皮膜を成膜した点である。
実施例2、3、比較例2に対して、実施例1と同じように、摩擦摩耗試験を行い、摩擦係数、摩耗量(摩耗深さ)を測定した。この結果、表1に示す。
Figure 0005668189
<結果2及び考察>
実施例2の結果から、グラファイト粒子の平均粒径が5μmである場合には、皮膜中にグラファイト粒子が残存しにくく、平均粒径が50μmである場合には、皮膜が成膜され難い。この結果から、グラファイト粉末の平均粒径は、成膜時の皮膜にグラファイト粒子を残存させることができるのであれば、特にその範囲は限定されないが、より好ましくは、10μm〜30μmであると考えられる。
さらに、焼結前に混合する粉末全体に対して、グラファイト粉末が0.8質量%である場合には、皮膜中にグラファイト粒子が残存しにくく、グラファイト粉末が8.0質量%である場合には、皮膜が成膜され難い。この結果から、焼結前に混合する粉末全体に対して、グラファイト粉末は、粉末全体に対して、1.6〜4.8質量%であることがより好ましい。
また、比較例2のように、グラファイト粉末を単純混合した粉末を用いた場合には、グラファイトの平均粒径や、配合比を変化させても、皮膜の成膜をすることができなかった。これは、WC−Co粉末と、グラファイト粉末との比重差が大きく、コールドスプレー時に、グラファイト粒子が飛行中に分散したり、基材との衝突時にガスの障壁により跳ね返されたりして、成膜できなかったものと推測される。さらに、WC−Co粉末が、基材の摺動面に堆積しようとしても、グラファイト粒子との層間すべりにより、堆積が抑制され、成膜できなかったものと推測される。
従って、実施例2及び3は、比較例2とは異なり、造粒−焼結により、グラファイト粒子を含有したサーメット粒子からなるサーメット粉末を用いたことにより、成膜性が確保されたものと考えられる。
また、実施例3のように、金属粉末に、Moを用いた場合には、Coを用いた場合に比べて、摩擦係数が僅かながらに低減された。
また、実施例2及び3のうち、グラファイト粒子の含有が認められたプレート試験片を電子顕微鏡で観察し、グラファイトの残存率を確認したところ、グラファイト粒子は、コールドスプレー皮膜の摺動面に対して面積率で、10〜30%含んでいた。面積率が10%未満である場合には、グラファイトの固体潤滑特性を十分発揮することができず、面積率が30%超えとなる皮膜は、成膜され難いと考えられる。
10:摺動部材、11:基材、12:サーメット皮膜(コールドスプレー皮膜)、20:成膜装置

Claims (3)

  1. WC粉末と、Co粉末又はMo粉末と、造粒されたグラファイト粉末とを、混合して焼結することにより、前記WC粉末のWCと、前記Co粉末のCoまたは前記Mo粉末のMoとから、WC−CoまたはWC−Moからなるサーメットを生成すると共に、このサーメットにグラファイト粒子が介在したサーメット粒子からなるサーメット粉末を造粒する工程と、
    該サーメット粉末から、コールドスプレー法により、基材の摺動面にサーメット皮膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする摺動部材の製造方法。
  2. 前記グラファイト粉末の平均粒径は、10μm〜30μmであることを特徴とする請求項1記載の摺動部材の製造方法。
  3. 前記グラファイト粉末は、混合した粉末全体に対して、1.6〜4.8質量%含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材の製造方法。
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