JP5665626B2 - 管継手の開先構造及び管継手 - Google Patents

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本発明は、2本の管を突合せ溶接により接合して成形する管継手の開先構造、及びこの開先構造を用いて溶接により成形された管継手に関する。
一般的な管の突合せ溶接は、図8に示すように、管101、102の中心軸Pに対し垂直に切断された端面103、104に、図9に示すように面取り加工を施すことで開先加工面105、106をそれぞれ形成し、管101の端面103と管102の端面104とを突き合わせることで開先107を形成している。この場合、開先107は、端面103及び104に垂直な開先形状および開先面積が、管101、102の周方向におけるいずれの位置でも一定に保たれている。
溶接においては、このような開先107が理想的である。なぜならば、溶接時のパスシーケンスが管101及び102の周方向において一定になり、更に、単位溶接長当たりの溶着金属量が一定に保たれることで、溶接角変形の発生を抑制できるからである。
ところが、ある特殊な事情によって、特許文献1及び2並びに図10に示すように、管101、102の中心軸Pに垂直な面108に対し傾斜角δだけ傾斜して端面109、110を形成する場合がある。このような場合にも、端面109、110の外周縁から管101、102の中心軸P方向に一定の距離Sだけ、管101、102の周方向に面取り加工を施して、図11に示すように開先加工面111、112を形成し、これらの開先加工面111及び112により、管101の端面109と管102の端面110間に開先113を形成している。
特開昭58−192693号公報 特開平2−155591号公報
しかしながら、図11に示す開先113を用いた突合せ溶接では、開先113の開先形状や開先面積が管101、102の周方向において異なるため、パスシーケンスや溶接条件を一定に保持することができない。
即ち、図11に示す開先113のA部の開先形状は、図12(A)に示すように、底辺が管101、102の肉厚dの寸法で、高さが2×Sとなる直角三角形である。また、開先113のB部の開先形状は、図12(B)に示すように、A部と同一の開先面積であるが、上下方向(即ち中心軸P方向)に反転した形状である。
更に、開先113のC部では、図12(C)に拡大して示すように、溶接線となる端面109、110に垂直な平面114に沿う距離Sの成分が、S×cosδになる。このため、この平面114で開先113を切断したときの開先形状は、図12(D)に示すように、底辺が2×S×cosδで、高さが端面109、110の肉厚dの寸法になる二等辺三角形である。
また、図11の開先113における開先面積は、A部とB部では、S×dの面積になるが、C部では、d×S×cosδの面積になり、このC部の面積は傾斜角δが大きくなるほど小さくなる。
このように、図11に示す開先113では、開先形状及び開先面積が管101、102の周方向に異なるため、上記開先113を用いて管101、102の周方向に溶接を施す場合に、パスシーケンスや溶接条件(溶接速度や溶加材の送り速度など)を一定に保持することができない。従って、単位溶接長当たりの溶着金属量が、管101、102の周方向の各部位によって変化するので、管101、102の中心軸P方向の収縮(歪み)が管101、102の周方向において異なり、この収縮によって生ずる残留応力も管101、102の周方向において異なってしまう。このため、溶接後の管継手の軸がずれてしまうなどの溶接変形が生ずる恐れがある。
また、開先113を用いて管101、102に周方向の溶接を施す際に、溶接条件を一定に保持することができず、変化させる必要があるので、この溶接を自動溶接で実施する場合に溶接条件の設定が煩雑になってしまう。この結果、自動溶接への適用が困難になってしまう。
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、管継手の溶接変形を低減できると共に、自動溶接への適用を容易化できる管継手の開先構造及び管継手を提供することにある。
本発明に係る管継手の開先構造は、管の中心軸に垂直な面に対して傾斜して設けられた端面に開先加工面を形成し、2本の前記管のそれぞれの前記端面を突き合せ、これらの端面の前記開先加工面間に形成される開先に溶着金属を埋めて溶接を行ない成形する管継手の開先構造であって、前記開先における開先形状と開先面積の少なくとも1つが、前記管の周方向におけるいずれの位置においても略同一に設定され、前記開先を形成する前記開先加工面は、所定形状のベースフィーチャを前記管の前記端面に垂直に保持した状態で、前記端面に沿って移動させることにより形成され、前記ベースフィーチャは五角形GHIJKにて定義され、辺GH及び辺JKが前記管の中心軸に平行に設けられ、辺GK及び辺IJが前記管の前記中心軸に垂直に設けられ、辺GHが前記管の前記端面の外周縁に点Lで交わり、点Jが前記管の内周面の点として設けられ、辺HIと辺GKとのなす角が前記開先の開先角度の1/2に設定され、辺IJの長さが、前記開先のルートフェイスの長さと同一に設定され、前記端面が前記管の前記中心軸に垂直な面に対し傾斜する傾斜角をθとし、前記管の肉厚をtとし、前記端面の最下点Fと点Hとの長さを(FH)としたとき、辺GHの長さが、2×t×tanθ+(FH)以上に設定されたことを特徴とするものである。
また、本発明に係る管継手は、前記発明に記載の管継手の開先構造を用いて突き合せ溶接により成形されたものである。
本発明に係る管継手の開先構造及び管継手によれば、2本の管の端面間に形成される開先における開先形状と開先面積の少なくとも1つが、管の周方向におけるいずれの位置においても略同一に設定されたので、2本の管が突き合された端面を周方向に溶接する際に、パスシーケンス及び溶接条件を略一定に保持して溶接できる。このため、単位溶接長当たりの溶着金属量が管の周方向において略同一になるので、管継手の溶接変形を低減できる。また、溶接条件が略一定になるので、自動溶接への適用を容易化できる。
本発明に係る管継手の一実施形態を成形する前の2本の管の端面を突き合わせて開先が形成された状態を示す側面図。 図1の管の端面に開先加工面が形成される前の状態を示す斜視図。 図2の管を示す側面図。 図2の管に開先加工面を形成するためのベースフィーチャを管と共に示す側面図。 図4のベースフィーチャのスイープ手順を、管の端面に対応して説明する説明図。 図5のベースフィーチャのスイープ状況を管と共に示す斜視図。 図4のベースフィーチャの変形形態を管と共に示す説明図。 従来の管継手を成形する前の2本の管を示す側面図。 図8の管の端面に開先加工面が加工されて開先が成形された状態を示す2本の管の側面図。 従来の他の管継手を成形する前の2本の管を示す側面図。 図10の管の端面に開先加工面が加工されて開先が形成された状態を示す2本の管の側面図。 図11の各部を拡大して示し、(A)、(B)、(C)が、図11のA部、B部、C部のそれぞれの拡大図、(D)が図12(C)のD−D線に沿う断面図。
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
図1に示すように、2本の管11、12のそれぞれの端面13、14に、後述の開先加工面15、16がそれぞれ形成(加工)され、管11の端面13と管12の端面14が突き合わされることで、端面13の開先加工面15と端面14の開先加工面16との間に開先17が形成される。この開先17は、例えばルートフェイス18を有するY型開先である。この開先17に溶着金属(不図示)を埋めて、管11及び12の周方向全周を突合せ溶接することにより、溶接による継手、即ち管継手が成形される。
ここで、管11と管12は、外径及び内径が同一であり、従って肉厚tが同一である。また、管11の端面13、及びこの端面13に形成される開先加工面15は、管12の端面14、及びこの端面14に形成される開先加工面16とそれぞれ同一の形状である。このため、以下、図2〜図7に示すように、管12の端面14及び開先加工面16について説明し、管11の端面13及び開先加工面15については説明を省略する。
管12の端面14は、図2及び図3に示すように、Z軸に一致する管12の中心軸Oに垂直な面20(X−Y平面)に対し、Y軸回りに傾斜角θだけに傾斜して設けられ、楕円のリング形状に形成される。この端面14では、Z軸方向の最上点をE、最下端をFとする。また、管12の肉厚はtであり、この肉厚tのZ軸方向に対応する長さが、t×tanθである。
管12の端面14に形成される開先加工面16は、図4に示す所定形状のベースフィーチャ21(後述)を端面14に垂直に保持した状態で、図5及び図6に示すように管12の中心軸O回りに回転させ、端面14に沿って移動(スイープ)させることにより形成される。これにより、管12の端面14に形成された開先加工面16と、管11の端面13に形成された開先加工面15との間に形成される開先17(図1)は、突き合わされた端面13及び14(つまり図1の溶接線19)に垂直な開先形状と開先面積の少なくとも1つ、本実施形態では開先形状及び開先面積が、管11及び12の周方向におけるいずれの位置においても略同一に設定される。
前記ベースフィーチャ21は、図4に示すように、五角形GHIJKにて定義される。このベースフィーチャ21の辺GH及び辺JKは、管12の中心軸Oに平行に設けられる。また、ベースフィーチャ21の辺GK及び辺IJは、管12の中心軸Oに垂直に設けられる。また、ベースフィーチャ21の辺GHは、管12の端面14の外周縁22(図2)に点Lで交わる。更に、ベースフィーチャ21の点Jは、管12の内周面23上の点として設けられる。また、ベースフィーチャ21の辺HIと辺GK(つまり図4のX軸)とのなす角αは、開先17(図1)の開先角度βの1/2(α=(1/2)×β)に設定される。
更に、辺IJの長さは、開先17のルートフェイス18(図1)の長さと同一に設定される。また、管12の肉厚t、管12の端面14の傾斜角θ、及び管12の中心軸O方向(Z軸方向)における端面14の最下点Fと点Hとの長さ(FH)を用いて、辺GHの長さ(GH)は、
(GH)≧2×t×tanθ+(FH)
に設定される。
このような五角形GHIJKにて定義されたベースフィーチャ21を、図5及び図6に示すように管12の中心軸O回りに回転させ、管12の端面14に沿ってスイープさせる条件は、次の第1〜第5の条件である。つまり、第1条件は、ベースフィーチャ21の辺GH及び辺JKが管12の端面14に垂直に保持されることである。第2条件は、ベースフィーチャ21の辺IJ上の少なくとも1点が管12の端面14に接触することである。第3条件は、ベースフィーチャ21の辺GH上の点Lが、管12の端面14の外周縁22に接することである。第4条件は、ベースフィーチャ21の点Jが管12の内周面23に接することである。第5条件は、ベースフィーチャ21の辺IJの延長線が管12の中心軸O(Z軸)に直交することである。
これらの第1〜第5の条件を満たす状態で、ベースフィーチャ21を管12の中心軸O回りに、この中心軸O回りの回転角ξが0°から360°になるまで回転させる。このとき、図5において、例えば、ベースフィーチャ21の点G、Hは、ξ=90°のとき点G’、H’に移動し、ξ=180°のとき点G”、H”にそれぞれ移動する。また、ベースフィーチャ21の点I、J、Kは、ξ=180°のとき点I”、J”、K”にそれぞれ移動する。
このように回転するベースフィーチャ21が管12と交差する領域、例えば図5の多角形FHIJM、EH”I”J”の領域が管12から切除される切削加工をすることで、管12の端面14に開先加工面16が形成される。管11の端面13に形成される開先加工面15についても同様である。尚、上記点Mは、ベースフィーチャ21の辺JKが管12の端面14における内周縁24と交差する点である。
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)および(2)を奏する。
(1)管11の端面13と管12の端面14にそれぞれ加工される開先加工面15と16間に形成される開先17は、突き合わされた端面13及び14(つまり図1の溶接線19)に垂直な開先形状および開先面積が、管11及び12の周方向におけるいずれの位置においても略同一に設定されている。このため、管11の端面13と管12の端面14とを突き合わせて、これらの端面13及び14を周方向全周に突合せ溶接する際に、パスシーケンス及び溶接条件(溶接速度や溶加材の送り速度など)を略一定に保持できる。
このため、単位溶接長当たりの溶着金属量が管11、12の周方向において略同一になるので、溶接部における管11、12の中心軸O方向の収縮(歪み)が、管11、12の周方向において略同一になり、溶接部における残留応力も管11、12の周方向において略同一になる。この結果、管11及び12が溶接されて成形される管継手の中心軸がずれてしまう溶接変形を低減できる。
(2)上述の管11と管12の突合せ溶接時において溶接条件が略一定になるので、この突合せ溶接の自動溶接への適用を容易化できる。
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、管11の端面13と管12の端面14に形成される開先が、ルートフェイス18(図1)のないV型開先である場合には、管11の端面13と管12の端面14にそれぞれ形成される開先加工面は、図7に示すように、辺IJが存在しない四角形GHJKで定義されるベースフィーチャ30を用いて形成される。
11、12 管
13、14 端面
15、16 開先加工面
17 開先
20 面
21 ベースフィーチャ
22 外周縁
23 内周面
O 中心軸
GH、JK、GK、IJ、HI 辺
L、J 点
α なす角
β 開先角度
θ 傾斜角

Claims (3)

  1. 管の中心軸に垂直な面に対して傾斜して設けられた端面に開先加工面を形成し、2本の前記管のそれぞれの前記端面を突き合せ、これらの端面の前記開先加工面間に形成される開先に溶着金属を埋めて溶接を行ない成形する管継手の開先構造であって、
    前記開先における開先形状と開先面積の少なくとも1つが、前記管の周方向におけるいずれの位置においても略同一に設定され
    前記開先を形成する前記開先加工面は、所定形状のベースフィーチャを前記管の前記端面に垂直に保持した状態で、前記端面に沿って移動させることにより形成され、
    前記ベースフィーチャは五角形GHIJKにて定義され、
    辺GH及び辺JKが前記管の中心軸に平行に設けられ、
    辺GK及び辺IJが前記管の前記中心軸に垂直に設けられ、
    辺GHが前記管の前記端面の外周縁に点Lで交わり、
    点Jが前記管の内周面の点として設けられ、
    辺HIと辺GKとのなす角が前記開先の開先角度の1/2に設定され、
    辺IJの長さが、前記開先のルートフェイスの長さと同一に設定され、
    前記端面が前記管の前記中心軸に垂直な面に対し傾斜する傾斜角をθとし、前記管の肉厚をtとし、前記端面の最下点Fと点Hとの長さを(FH)としたとき、辺GHの長さが、2×t×tanθ+(FH)以上に設定されたことを特徴とする管継手の開先構造。
  2. 前記ベースフィーチャの辺GH及び辺JKが管の端面に垂直に保持され、
    前記ベースフィーチャの辺IJ上の少なくとも1点が前記端面に接触し、
    前記ベースフィーチャの辺GH上の点Lが前記端面の外周縁に接し、
    前記ベースフィーチャの点Jが前記管の内周面に接し、
    前記ベースフィーチャの辺IJの延長線が管の中心軸に直交する状態で、
    前記ベースフィーチャを前記管の前記中心軸回りに回転させることで、前記管の前記端面に開先加工面が形成されたことを特徴とする請求項に記載の管継手の開先構造。
  3. 請求項1または2に記載の管継手の開先構造を用いて突き合せ溶接により成形された管継手。
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