以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における金型装置の断面図、図3は本発明の第1の実施の形態における温度調整層の特性図、図4は本発明の第1の実施の形態における射出成形機の制御装置を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における金型装置の動作を示すタイムチャートである。なお、図3において、横軸に樹脂の温度Tを、縦軸に上昇温度δTを採ってある。
図において、11は成形品、例えば、導光板を成形するための樹脂成形装置としての、かつ、断熱金型としての金型装置、12は第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型、13は、該固定金型12に対して進退自在に、かつ、対向させて配設された第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型、14は、固定金型12及び可動金型13の周囲の所定の箇所、本実施の形態においては、固定金型12及び可動金型13の周囲の全体を包囲して配設された磁場形成装置である。該磁場形成装置14は、固定金型12及び可動金型13に隣接させて、本実施の形態においては、可動金型13に隣接させて、射出成形機のフレーム上の所定の位置に配設される。なお、磁場形成装置14を前記可動金型13と共に進退自在に配設することができる。
また、前記磁場形成装置14は、固定金型12及び可動金型13の周囲を包囲する一つの電磁石によって形成することができるだけでなく、固定金型12及び可動金型13の周囲に配設された複数の電磁石によって形成することもできる。
そして、図示されない型締装置(プレス機構)によって、可動金型13が前進させられて型閉じ(接近)が行われ、可動金型13が前記固定金型12に当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型12と可動金型13との間に矩形の形状を有するキャビティ空間C1、C2が形成され、可動金型13が後退させられ、固定金型12から離されて型開き(離反)が行われる。
また、15は固定金型12に形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とがゲートg1、g2を介して連通させられる。
そして、前記可動金型13は第1の型板としての上板21、及び該上板21を受ける第2の型板としての下板(受け板)22を備え、前記キャビティ空間C1、C2内の可動金型13における固定金型12と対向する面上に、熱伝導率の低い断熱材料から成る断熱部としての断熱層25が形成され、該断熱層25における固定金型12と対向する面上に加熱部としての温度調整層26が形成される。
また、該温度調整層26上に入れ子としての転写プレート24が取り付けられ、該転写プレート24における固定金型12と対向する面に、サブミクロンの微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成される。本実施の形態において、転写プレート24は可動金型13側に取り付けられるようになっているが、固定金型12側に取り付けることもできる。
なお、前記上板21及び下板22は、剛性を保つためにステンレス鋼によって形成される。また、転写プレート24は、パターンの形状を良好にするために、ニッケル電鋳によって形成される。
そして、前記固定金型12に温調用流路51が、下板22に温調用流路52が形成され、各温調用流路51、52に熱水又は冷水の温調媒体を流すことによって、転写プレート24及び金型装置11の温度を調整して高くしたり、低くしたりし、キャビティ空間C1、C2内の成形材料としての樹脂を加熱又は冷却することができる。この場合、樹脂として、加熱されるのに伴って可塑化される熱可塑性を有する樹脂が使用される。
前記型締装置は、第1のプラテンとしての固定プラテン、ベースプレートとしてのトグルサポート、前記固定プラテンとトグルサポートとの間に架設されたタイバー、固定プラテンと対向させて、かつ、タイバーに沿って進退自在に配設された第2のプラテンとしての可動プラテン、該可動プラテンとトグルサポートとの間に配設されたトグル機構、型締用の駆動部としての型締用モータ等を備える。そして、前記固定プラテン及び可動プラテンに、前記固定金型12及び可動金型13がそれぞれ互いに対向させて取り付けられる。なお、前記磁場形成装置14を前記可動金型13と共に進退自在に配設する場合、磁場形成装置14は可動プラテンに取り付けられる。
また、前記固定プラテンと対向させて図示されない射出装置が配設される。該射出装置は、シリンダ部材としての加熱シリンダ、該加熱シリンダ内において、回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としてのスクリュー、前記加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズル、前記加熱シリンダの後端の近傍に配設されたホッパ、前記スクリューと連結された計量用の駆動部としての計量用モータ、前記スクリューと連結された射出用の駆動部としての射出用モータ等を備える。そして、前記金型装置11、型締装置、射出装置等によって射出成形機が構成される。
次に、前記構成の射出成形機の動作について説明する。
前記型締装置において、型締用モータを駆動すると、トグル機構が伸展させられ、可動プラテンが前進させられて型閉じが行われ、可動金型13が固定金型12に当接させられる。続いて、型締用モータを更に駆動すると、トグル機構において型締力が発生させられ、該型締力で可動金型13が固定金型12に押し付けられる。
一方、前記射出装置においては、計量工程において、計量用モータを駆動し、スクリューを回転させると、ホッパから供給された樹脂が、加熱シリンダ内において加熱されて溶融させられ、スクリューの前方に溜められる。これに伴って、スクリューは所定の位置まで後退させられる。
また、射出工程において、型締めが行われた状態の金型装置11の前記スプルー15に、前記射出ノズルを押し当て、射出用モータを駆動し、スクリューを前進させると、スクリューの前方に溜められた樹脂は射出ノズルから射出され、ゲートg1、g2を介して前記キャビティ空間C1、C2に充填される。
そして、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂は、前記温調媒体によって加熱又は冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート24の転写面のパターンが樹脂に転写される。
続いて、前記型締用モータを逆方向に駆動すると、トグル機構が屈曲させられ、可動プラテンが後退させられ、型開きが行われる。このようにして、導光板を成形することができる。
ところで、成形サイクルを短くするために、転写プレート24及び金型装置11の設定温度を、樹脂のガラス転移点より数十〔℃〕低くすることによって、樹脂を冷却し、固化させるのに必要な時間を短くするようにしている。
ところが、一般的に、射出ノズルから射出された樹脂が、キャビティ空間C1、C2内に進入し、キャビティ空間C1、C2の内周面に接触すると、スキン層が一瞬にして成長する。したがって、前述されたように、金型装置11の設定温度を低くすると、スキン層が発達し、樹脂の流動性が低くなり、キャビティ空間C1、C2の内周面と接触する部分において良好な成形が阻害され、導光板にウェルド、転写不良等の成形不良が発生し、導光板の品質が低下してしまう。
そこで、本実施の形態においては、前述されたように、上板21上に断熱層25が形成され、キャビティ空間C1、C2の内周面を上板21の他の部位から熱的に隔離させ、局所的に温度を上昇させるようにしている。
この場合、上板21上に断熱層25が形成されるので、成形サイクルを短くするために、金型装置11の設定温度を低くしても、スキン層が発達するのを防止することができ、樹脂の流動性を高くすることができる。したがって、キャビティ空間C1、C2の内周面と接触する部分において良好な成形を行うことができるので、導光板にウェルド、転写不良等の成形不良が発生するのを防止することができ、導光板の品質を向上させることができる。
ところが、例えば、導光板の品質を一層向上させようとすると、樹脂の流動性を高くし、パターンを転写する精度を更に高くする必要があるが、その場合、金型装置11の設定温度を低くすることができず、成形サイクルがその分長くなってしまう。
また、逆に、成形サイクルを一層短くしようとすると、金型装置11の設定温度を更に低くする必要があるが、その場合、樹脂の流動性が低くなり、パターンを転写する精度を高くすることができず、導光板の品質がその分低下してしまう。
そこで、本実施の形態においては、前述されたように、断熱層25における固定金型12と対向する面上に温度調整層26を形成し、キャビティ空間C1、C2内に樹脂が充填されたときに、キャビティ空間C1、C2の内周面を加熱し、短時間で局所的に温度を上昇させるようにしている。
そのために、キャビティ空間C1、C2に樹脂が充填される所定のタイミングで、射出成形機の制御部31の図示されない磁場形成処理手段(磁場形成処理部)は、磁場形成処理を行い、磁場形成装置14を構成する電磁石のコイルに電流を供給し、一時的に、金型装置11を包囲する磁場を形成する。
また、前記温度調整層26は、磁気スピンによる熱磁気機能を有し、磁場内に置かれると温度が高くなり、磁場外に置かれると温度が低くなる材料、本実施の形態においては、セラミック材料によって形成されるとともに、キャビティ空間C1、C2の内周面の形状に合わせて、断熱層25上に薄く形成され、磁場形成装置14を作動させることによって、磁気加熱・冷却デバイスとして機能する。
本実施の形態においては、前記セラミック材料として、例えば、LaFe11.5Si1.5 Hy が使用され、La(ランタン)、Fe(鉄)、Si(ケイ素)、H(水素)等の各元素の成分比を変更することによってキュリー点を変更し、磁場内に置かれたときに温度を高くするのに適した樹脂の温度を変更することができる。例えば、Hの成分比については、yを15程度まで大きくすることが可能である。各元素の成分比を変更させることによって、成形温度の領域(100〜200〔℃〕)で、温度調整層26に最大の熱磁気機能を持たせ、樹脂の温度を急速に高くすることができる。
図3において、各元素の成分比を所定の値にしたときの温度調整層26の特性を示す。L1は1〔テスラ〕の磁場強度で磁場を形成したときの、L2は2〔テスラ〕の磁場強度で磁場を形成したときの上昇温度δTを表す線であり、図に示されるように、樹脂の温度Tが所定の値(キュリー点)Trである場合、上昇温度δTが最も高く、値Trから離れるほど上昇温度δTが低くなる。
このように、前記温度調整層26を磁場内に置くと、磁場強度に応じて温度調整層26の温度が高くなるので、キャビティ空間C1、C2に樹脂を充填した後、樹脂が冷却され、温度Tが値Trの近傍に到達したときに、磁場形成装置14を作動させ、一時的に磁場を形成すると、温度Tをその間高くすることができる。したがって、スキン層が発達するのを抑制することができる。また、パターンの転写が終了するタイミングで磁場の形成を停止させることによって、樹脂の温度Tを直ちに低くすることができるので、成形サイクルを短くすることができる。
次に、前記構成の金型装置11の動作について説明する。
図4において、31は制御部であり、該制御部31は、演算装置としての図示されないCPU、記憶装置としての図示されないRAM及びROM、計時装置としての図示されないタイマ等を備える。また、32は設定部、33は前記磁場形成装置14を作動させるための温度調整制御部、34はキャビティ空間C1、C2内の樹脂の温度Tを検出する温度検出部としての温度センサである。該温度センサ34は、金型装置11の本体、すなわち、金型装置本体の所定の箇所、本実施の形態においては、上板21におけるキャビティ空間C1の内周面の近傍で、かつ、ゲートg1に隣接する箇所に配設される。したがって、温度センサ34によって検出された樹脂の温度Tは、キャビティ空間C1、C2の内周面の温度を表す。
この場合、キャビティ空間C1、C2に充填される樹脂の温度Tは、300〔℃〕以上、かつ、400〔℃〕以下の値Tsにされ、金型装置11の設定温度は、前記温度調整層26を構成するセラミック材料の各元素の成分比を変更することによって得られるキュリー点で表される値Trにされる。該値Trは、成形に使用される樹脂のガラス転移点Tgより低く、かつ、転写プレート24のパターンを転写する場合に適正とされる温度、すなわち、転写適正温度に設定される。
そして、樹脂は、キャビティ空間C1、C2内に進入すると、固定金型12及び可動金型13によって多くの熱が奪われるので、その後、樹脂の温度は直ちに低下させられる。そして、転写プレート24の表面温度は、転写が終了するときに、百数十〔℃〕に低下させられるが、その場合、樹脂は、300〔℃〕以上、かつ、400〔℃〕以下から百数十〔℃〕まで急激に冷却されることになり、スキン層が形成されやすく、形成されたスキン層は発達しやすい。
このとき、前記スキン層を形成した樹脂を、金型装置11の型締力によって発生させられる圧縮力により、押しつぶし、凹凸に沿うように塑性変形させることにより、樹脂にパターンが転写されるが、スキン層が発達していると、必要となる型締力が大きくなり、圧縮力がその分大きくなるので、転写プレート24において転写面が劣化しやすくなってしまう。
そこで、本実施の形態においては、樹脂の温度Tが値Trになるときに、上昇温度δTが最も高くなるように、磁場形成装置14が作動させられる。そのために、前記温度センサ34によって樹脂の温度Tが検出され、制御部31の図示されない温度判断処理手段(温度判断処理部)は、温度判断処理を行い、温度センサ34によって検出された温度Tを読み込み、該温度Tが設定温度Tthに到達したかどうかを判断する。なお、該設定温度Tthは前記値Trより所定の値αだけ高くされる。
そして、前記温度Tが所定のタイミングで設定温度Tthに到達すると、制御部31の図示されない温度調整処理手段(温度調整処理部)は、温度調整処理を行い、温度調整制御部33によって磁場形成装置14を作動させ、電磁石のコイルに電流を供給し、磁場を形成する。
その結果、温度調整層26の温度は、図3に示される特性に従って、磁場強度に応じて高くなり、樹脂が加熱される。すなわち、温度Tが値Trに近づくほど温度調整層26の高くなる温度、すなわち、上昇温度δTが大きくなり、それに伴って、温度Tの低下の傾きが小さくなり、タイミングt1で温度Tが値Trになると、温度調整層26の上昇温度δTが最も大きくなり、温度Tの低下の傾きが最も小さくなる。
そして、温度Tが値Trになると、前記温度調整処理手段は、温度調整制御部33による磁場形成装置14の作動を停止させ、電磁石のコイルへの電流の供給を停止させて、磁場を消去させる。その結果、温度調整層26の温度は低くなり、その後、温度Tは、急激に低下させられる。
このように、本実施の形態においては、樹脂の温度Tが設定温度Tthに到達すると、磁場形成装置14が作動させられ、樹脂の加熱が行われ、温度Tの低下が抑制されるので、転写が行われている間の樹脂の温度Tを十分に高くすることができる。したがって、樹脂の流動性を高くし、パターンを転写する精度を更に高くすることができる。その結果、導光板の品質を十分に向上させることができる。
また、タイミングt1で温度Tが値Trになった後、磁場形成装置14の作動が停止させられ、温度調整層26による樹脂の加熱が停止させられるので、温度Tは急激に低くなる。したがって、転写後の樹脂を冷却し、固化させるのに必要な時間を一層短くすることができるので、成形サイクルを十分に短くすることができる。
なお、図5に示されるように、樹脂の温度Tが値Trになるタイミングt1までは、転写性を維持することができる転写時間であり、導光板を金型装置11から取り出すことができる温度(以下「取出適正温度」という。)Toになるタイミングt2までは冷却時間であり、タイミングt2を経過すると、型開きを行い、成形品を金型装置11から取り出すことができる。本実施の形態においては、転写時間を長く、冷却時間を短くすることができる。
ところで、本実施の形態においては、転写プレート24のパターンを転写する精度を高くするために、転写時に、温度調整層26の温度を高くし、金型装置11の温度を調整するようにしている。
この種の金型装置11の温度を調整する方法として、熱・冷液媒体交互循環方式が考えられる。該熱・冷温調媒体交互循環方式においては、温調用流路51、52内に供給される温調媒体の温度を高くすることによって、金型装置11の温度を調整することができる。ところが、この場合、温調媒体の温度を変更する必要があるので、熱・冷温調媒体交互循環方式の応答性が低く、成形サイクルを十分に短くすることができない。
また、金型装置11の温度を調整する方法として電気抵抗加熱方式が考えられる。該電気抵抗加熱方式においては、キャビティ空間C1、C2の内周面の近傍にヒータを埋設し、該ヒータを選択的に通電することによって、金型装置11の温度を調整することができる。ところが、該電気抵抗加熱方式においては、エネルギー効率が低く、寸法の大きい導光板を成形するための金型装置11に適用するのが困難である。
さらに、金型装置11の温度を調整する方法として電磁加熱方式が考えられる。該電磁加熱方式においては、型開き時に、固定金型と可動金型との間に、キャビティ空間の表面の所定の部位と対向するように電磁加熱ヘッドを挿入することによって、金型装置11の温度を調整することができる。ところが、前記電磁加熱方式においては、電磁誘導が可能な材料によってキャビティ空間の内周面を構成する必要があるので、金型装置の設計に制約が生じるとともに、金型装置のコストが高くなってしまう。
これに対して、本実施の形態においては、金型装置11の温度を調整するために、温調媒体の温度を変更する必要がないので、応答性を高くすることができ、成形サイクルを十分に短くすることができる。また、ヒータを配設する必要がないので、エネルギー効率を高くすることができるとともに、寸法の大きい導光板を成形するための金型装置11に適用することができる。さらに、電磁誘導が可能な材料によってキャビティ空間C1、C2の内周面を構成する必要がないので、金型装置11の設計に制約が生じることがなく、金型装置11のコストを低くすることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明をし、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図6は本発明の第2の実施の形態における金型装置の断面図である。
この場合、成形品として薄肉のプレート材が成形され、金型装置11においては、転写プレートが取り付けられない。キャビティ空間C1、C2内の第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型13における第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型12と対向する面上に、熱伝導率の低い断熱材料から成る断熱部としての断熱層25が形成され、該断熱層25における固定金型12と対向する面上に、加熱部としての温度調整層26が形成される。
本実施の形態においては、樹脂の温度Tが設定温度Tthに到達すると、磁場形成装置14が作動させられ、温度Tの低下が抑制されるので、転写が行われている間の樹脂の温度Tを十分に高くすることができる。したがって、樹脂の流動性を高くすることができ、薄肉のプレート材にウェルド等の成形不良が発生するのを防止することができる。その結果、プレート材の品質を十分に向上させることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明をし、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図7は本発明の第3の実施の形態における金型装置の断面図である。
この場合、第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型12側にも、断熱部としての断熱層125及び加熱部としての温度調整層126が形成される。
すなわち、本実施の形態においては、キャビティ空間C1、C2内の固定金型12における可動金型13と対向する面上に、熱伝導率の低い断熱材料から成る断熱層125が形成され、該断熱層125における可動金型13と対向する面上に温度調整層126が形成される。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明をし、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図8は本発明の第4の実施の形態における金型装置の断面図である。
この場合、成形品として導光板が成形され、金型装置11においては、第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型12に入れ子としての転写プレート124が取り付けられる。キャビティ空間C1、C2内の第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型13における固定金型12と対向する面上に、断熱部としての前記断熱層25が形成され、該断熱層25における固定金型12と対向する面上に、前記温度調整層26が形成される。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明をし、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図9は本発明の第5の実施の形態における金型装置の断面図である。
図において、20は成形品としてのディスク基板を成形するための樹脂成形装置としての、かつ、断熱金型としての金型装置、56Aは第1の型部材としての、かつ、第1の金型としての固定金型(固定下型)、56Bは該固定金型56Aに対して進退自在に、かつ、対向させて配設された第2の型部材としての、かつ、第2の金型としての可動金型(可動上型)である。そして、図示されない型締装置(プレス機構)において、可動金型56Bが前進させられて型閉じが行われ、可動金型56Bが前記固定金型56Aに当接させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型56Aと可動金型56Bとの間に円形の形状を有するキャビティ空間Cが形成され、可動金型56Bが後退させられ、固定金型56Aから離されて型開きが行われる。
また、15は固定金型56Aに形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間Cとが連通させられる。そして、63は可動金型56Bに対して進退自在に配設されたカットパンチであり、該カットパンチ63を前進させることによって、キャビティ空間Cに充填された成形材料としての樹脂に対して穴開加工を施すことができる。
前記キャビティ空間C内の固定金型56Aにおける可動金型56Bと対向する面上に、第1の実施の形態と同様に、断熱部としての断熱層25が形成され、該断熱層25における可動金型56Bと対向する面上に加熱部としての温度調整層26が形成される。
また、本実施の形態においては、キャビティ空間C内の可動金型56Bにおける固定金型56Aと対向する面上に、入れ子としてのスタンパ54が取り付けられる。そして、該スタンパ54に、固定金型56Aと対向させて、微小な凹凸が所定のパターンで形成された転写面が形成され、前記スタンパ54によって転写プレートが構成される。
前記金型装置20の周囲の所定の箇所、本実施の形態においては、金型装置20の周囲の全体を包囲して磁場形成装置14が配設される。
そして、前記固定金型56Aに温調用流路51が、可動金型56Bに温調用流路52が形成され、各温調用流路51、52に温調媒体、例えば、水を流すことによって、金型装置20、スタンパ54及びキャビティ空間C内の樹脂を冷却することができる。
また、キャビティ空間C内の樹脂は、前記水によって冷却され、固化させられ、このとき、前記スタンパ54の転写面のパターンが樹脂に転写される。続いて、カットパンチ63を前進させ、穴開加工を行った後、型開きを行うと、ディスク基板を成形することができる。
前記各実施の形態においては、成形材料として熱可塑性を有する樹脂が使用されるようになっているが、成形材料として、加熱されることによって硬化する熱硬化性を有する樹脂を使用することができる。その場合、金型装置として、半導体樹脂封止装置が使用され、キャビティ空間としての封止キャビティの内周面に温度調整層が配設される。
なお、前記半導体樹脂封止装置を使用して成形品を成形する場合、最初から半導体樹脂封止装置の温度を高くしす過ぎると、樹脂の硬化を促進し過ぎ、充填が不適切になる。例えば、流動中の樹脂が半導体チップの結線ワイヤを倒したり、切断したりしてしまう。
そこで、本実施の形態においては、十分な流動性を有する樹脂を充填した後、硬化させるときだけ、温度調整層26の温度を高くして、封止キャビティの内周面の温度を高くする。
したがって、成形品としての樹脂封止物の品質を向上させることができるとともに、樹脂の封止のための成形サイクルを十分短くすることができる。
また、前記各実施の形態においては、キャビティ空間C1、C2、Cの内周面に温度調整層26、126を配設するようになっているが、成形材料に温度調整層26、126を構成するセラミック材料をナノバーティクル化して混入させることができる。
この場合、成形材料を磁場に置くと、セラミック材料の温度が高くなるので、熱可塑性を有する樹脂の場合、樹脂の温度を高くし、スキン層が発達するのを防止することができるようになり、熱硬化性を有する樹脂の場合、樹脂の温度を高くし、樹脂を急速に硬化させることができるようになる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。