しかしながら、放射線画像に対するエネルギーサブトラクション処理に独立成分分析や部分独立成分分析の手法を適用する際に生じる、特有の課題や解決手段については、特許文献2には何らの記載も示唆もない。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、放射線画像に対するエネルギーサブトラクション処理に独立成分分析の手法をより適切に適用した装置、方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
本発明の第1の画像成分分離装置は、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離手段を備えた画像成分分離装置に、前記複数の放射線画像の各々から、前記複数の成分の各々が含まれる空間周波数帯域の画像成分を抽出する帯域抽出手段をさらに設け、前記成分分離手段が、前記帯域抽出手段によって抽出された前記空間周波数帯域の画像成分に対して独立成分分析を行うことによって、該空間周波数帯域の画像成分から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数に基づいて前記所定の重みづけ係数を求めるようにしたことを特徴とする。
本発明の第1の画像成分分離方法は、コンピュータが、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離ステップを行う前に、前記複数の放射線画像の各々から、前記複数の成分の各々が含まれる空間周波数帯域の画像成分を抽出する帯域抽出ステップを行い、前記成分分離ステップが、前記帯域抽出ステップにおいて抽出された前記空間周波数帯域の画像成分に対して独立成分分析を行うことによって、該空間周波数帯域の画像成分から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数を前記所定の重みづけ係数とするようにしたことを特徴とする。
本発明の第1の画像成分分離プログラムは、上記の第1の画像成分分離方法をコンピュータに実行させるものである。
本発明の第2の画像成分分離装置は、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離手段を備えた画像成分分離装置に、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、前記複数の放射線画像毎に各画素を1以上の部分集合に分類する部分集合分類手段をさらに設け、前記成分分離手段が、前記複数の放射線画像の部分集合の少なくとも1組に対して独立成分分析を行うことによって該部分集合から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数を前記所定の重みづけ係数とするようにしたことを特徴とする。
本発明の第2の画像成分分離方法は、コンピュータが、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離ステップを行う前に、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、前記複数の放射線画像毎に各画素を1以上の部分集合に分類する部分集合分類ステップを行い、前記成分分離ステップにおいて、前記複数の放射線画像の部分集合の少なくとも1組に対して独立成分分析を行うことによって該部分集合から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数を前記所定の重みづけ係数とするようにしたことを特徴とする。
本発明の第2の画像成分分離プログラムは、上記の第2の画像成分分離方法をコンピュータに実行させるものである。
また、本発明の第2の態様の画像成分分離装置に対する変形例として、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記被検体の所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、前記複数の放射線画像毎に各画素を1以上の部分集合に分類する部分集合分類手段と、前記複数の放射線画像に対する部分集合の各組に対して独立成分分析を行うことによって、該部分集合の組毎に、該部分集合から前記複数の成分の各々を表す画像成分を分離するための分離係数を求め、前記部分集合の組毎に、該分離係数を重みづけ係数として相対応する画素毎に重みづけ総和を求めることによって、前記複数の放射線画像の前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離手段とを設けたものとしてもよい。
同様に、本発明の第2の態様の画像成分分離方法に対する変形例として、コンピュータが、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記被検体の所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、前記複数の放射線画像毎に各画素を1以上の部分集合に分類する部分集合分類ステップと、前記複数の放射線画像に対する部分集合の各組に対して独立成分分析を行うことによって、該部分集合の組毎に、該部分集合から前記複数の成分の各々を表す画像成分を分離するための分離係数を求め、前記部分集合の組毎に、該分離係数を重みづけ係数として相対応する画素毎に重みづけ総和を求めることによって、前記複数の放射線画像の前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離ステップとを行うようにしてもよい。
さらに、本発明の第2の態様の画像成分分離プログラムに対する変形例として、上記の第2の態様の画像成分分離方法に対する変形例による画像成分分離方法をコンピュータに実行させるようにしてもよい。
本発明の第3の画像成分分離装置は、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離手段を備えた画像成分分離装置において、前記成分分離手段が、前記複数の放射線画像に対して独立成分分析を行うことによって、前記複数の放射線画像から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数を前記所定の重みづけ係数とするようにし、前記独立成分分析において、前記複数の放射線画像の各々における前記複数の画像成分の混合比率を表す混合係数を、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータを用いた所定の関数として表したモデルを用いるようにしたことを特徴とする。
本発明の第3の画像成分分離方法は、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離ステップを行う際に、前記複数の放射線画像に対して独立成分分析を行うことによって、前記複数の放射線画像から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数を前記所定の重みづけ係数とするとともに、前記独立成分分析において、前記複数の放射線画像の各々における前記複数の画像成分の混合比率を表す混合係数を、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータを用いた所定の関数として表したモデルを用いるようにしたことを特徴とする。
本発明の第3の画像成分分離プログラムは、上記の第3の画像成分分離方法をコンピュータに実行させるものである。
本発明の第4の画像成分分離装置は、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離手段を備えた画像成分分離装置において、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、該複数の放射線画像の各々における放射線の減衰量の比が前記各成分の厚さまたは前記被写体の厚さによらず一定であるという関係に近づくように、該複数の放射線画像のうちの少なくとも1つの画像の各画素の画素値を非線形に変換する画素値変換手段をさらに設け、前記成分分離手段が、前記画素値変換手段によって変換後の画像に対して独立成分分析を行うことによって、該変換後の画像から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数を前記所定の重みづけ係数とするようにしたことを特徴とする。
本発明の第4の画像成分分離方法は、コンピュータが、被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像を入力とし、該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する成分分離ステップを行う前に、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、該複数の放射線画像の各々における放射線の減衰量の比が前記各成分の厚さまたは前記被写体の厚さによらず一定であるという関係に近づくように、該複数の放射線画像のうちの少なくとも1つの画像の各画素の画素値を非線形に変換する画素値変換ステップを行い、前記成分分離ステップが、前記画素値変換ステップによって変換後の画像に対して独立成分分析を行うことによって、該変換後の画像から前記複数の画像成分を分離するための分離係数を求め、該分離係数を前記所定の重みづけ係数とするようにしたことを特徴とする。
本発明の第4の画像成分分離プログラムは、上記の第4の画像成分分離方法をコンピュータに実行させるものである。
以下、本発明の詳細について説明する。
「被写体」の具体例としては人体が挙げられ、例えば、人体の胸部を表す放射線画像の場合、「(分離対象の)複数の成分」の具体例としては、骨成分と軟部成分が挙げられる。なお、軟部成分とは、生体の骨組織(骨成分)を除く結合組織の成分であり、線維組織、脂肪組織、血管、横紋筋、平滑筋、末梢神経組織(神経節と神経線維)等が含まれる。
入力となる「被写体を透過した放射線によって形成される、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線の各々の該被写体中の透過・減衰の程度を表す複数の放射線画像」は、エネルギー分布の異なる複数のパターンの放射線を用いて撮影を複数回行う複数ショット法で得られたものであってもよいし、エネルギー分離フィルタ等の付加フィルタを介して重ねられた複数枚の蓄積性蛍光体シート(それらは互いに接していても、離れていてもよい)に放射線を1度曝射することによって、1回の曝射で被検体を透過した放射線のエネルギー分布を変更させ、上記複数枚のシートで互いにエネルギー分布の異なる放射線が検出されるようにした1ショット法で得られたものであってもよい。ここで、蓄積性蛍光体シートに記録された、放射線の被写体中の透過の程度を表すアナログ画像は、シートをレーザ光等の励起光で走査して輝尽発光光を生ぜしめ、得られた輝尽発光光を光電的に読み取ることによってデジタル画像化される。なお、放射線を検出する手段には、上記の蓄積性蛍光体シートの他、CMOS等を用いたフラットパネルディテクタ(FPD)等を撮影方法に応じて適宜選択して採用してもよい。
「複数の放射線画像の相対応する画素」とは、各放射線画像中の所定の構造物(観察対象部位やマーカー等)を基準として位置的に対応する画素を意味する。したがって、各画像間で所定の構造物の画像中での位置がずれないような撮影方法で得られた画像の場合には、各画像の座標系における座標が一致する画素とすることができるが、位置ずれが生じる撮影方法で得られた画像の場合には、拡大・縮小・平行移動・回転等による線形的な位置合わせや歪変換等による非線形の位置合わせ、これらを組み合わせた位置合わせを行うことが好ましい。なお、この画像間の位置合わせには、特開2002-032764号公報等に記載されている方法の他、本発明の実施時点において公知の方法を用いてもよい。
「該複数の放射線画像の相対応する画素毎に所定の重みづけ係数を用いた重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する」処理は、いわゆるエネルギーサブトラクション手法を意味する。
例えば、被写体に照射された放射線の総量をE0とし、放射線のエネルギー分布に応じて被写体中の成分(ここでは2種類の成分とする)毎に決定される減弱係数をα,βとし、各成分の厚さをta,tbとすると、放射線画像の各画素位置における放射線の対数露光量Eは次式(1)のように表すことができる。
E=E0−(α・ta+β・tb) ・・・(1)
ここで、式(1)の右辺の項α・ta,β・tbは、各成分における放射線の減衰量を表すものであり、放射線画像が、各成分における放射線の減衰量の影響が混じり合って反映されたものであることを表している。また、項α・ta,β・tbの各々は、減弱係数と各成分の厚さの積となっており、各成分における放射線の減衰量はその成分の厚さに依存することを示している。
式(1)で、E´=E0−Eとすると、式(1)は次式(2)のように簡単に表すことができる。
E´=α・ta+β・tb ・・・(2)
ここで、各放射線画像を識別する添え字を1、2とすると、本発明において、入力となる2つの放射線画像は、放射線のエネルギー分布が異なるので画像毎に減弱係数の値が異なるから、次式(3)(4)のように表すことができる。
E´1=α1・ta+β1・tb ・・・(3)
E´2=α2・ta+β2・tb ・・・(4)
このモデルに基づくと、本発明における、各画像を重みづけして合成することによって画像中の各成分を分離する処理は、上記各式の各々に適切な重みづけ係数を掛けたものの和を求めることによって、上記各式の右辺の分離対象以外の成分を表す各項の係数部分を0にして、分離対象以外の成分の厚さに依存しない関係式を得ることを意味する。したがって、画像中のある成分を分離するためには、上記各式の右辺の分離対象以外の成分を表す各項の係数部分が0となるような重みづけ係数を決定する必要がある。
なお、放射線画像の対数露光量Eは、被写体を撮影する際に被写体を透過して放射線検出手段に照射された放射線量を対数変換したものである。露光量は放射線検出手段に照射される放射線を直接検出することにより得ることができるが、放射線画像の個々の画素毎に露光量を検出することは非常に困難である。一方、放射線検出手段において得られる画像の各画素の画素値は露光量が多いほど大きくなることから、画素値と露光量とは互いに対応づけることができるものである。したがって、上記各式の露光量を画素値に置き換えることができる。
「独立成分分析」とは、既知の複数の観測信号から、統計的に独立した複数の未知の成分信号を分離する手法である。すなわち、既知の複数の観測信号を入力として、統計的独立性が最大となるように成分信号を求める手法である。
例えば、次式(5)(6)のように、統計的に独立した2つの成分信号s1,s2が混合された観測信号x1,x2があるとする。
ここで、a11,a12,a21,a22は、観測信号x1,x2の各々における成分信号s1,s2の混合比率を表す混合係数である。
式(5)(6)を
として整理すると、次式(7)のようになる。
このとき、行列Aの逆行列をWとすると、次式(8)を計算することによって、成分信号s1、s2を復元することができる。
ここで、行列Wの各成分は、観測信号x1,x2から成分信号s1,s2を分離するための分離係数である。
独立成分分析では、この成分信号s1,s2の独立性を様々な基準によって評価し、成分信号s1,s2の独立性が最大となるように分離係数(行列W)と成分信号s1,s2とが求められる。
式(3)(4)と(5)(6)とを対比すると、本発明における複数の放射線画像(E´1、E´2)は観測信号x1,x2に対応し、分離対象の被写体中の成分(ta,tb)が成分信号s1,s2に対応し、減弱係数α1,β1,α2,β2が混合係数a11,a12,a21,a22に対応する。したがって、複数の放射線画像(E´1、E´2)を観測信号として独立成分分析を行うことによって、成分信号である、被写体中の所定の複数の成分(ta,tb)の各々を表す複数の画像成分を求めることができる。このとき求められる分離係数(行列W)が、入力となる複数の放射線画像の重みづけ総和を求める際の重みづけ係数となる。
独立成分分析における独立性の評価基準としては、負のエントロピーや相互情報量等が知られている。また、独立性を最大化するように独立成分を決定する具体的な処理方法としては、不動点法や勾配法等が知られている。本発明においても、これらの公知の方法を適宜選択して適用することができる。
なお、独立成分分析によって求められる成分信号の数は、観測信号の数以下である。したがって、本発明においても、分離対象の被写体中の成分の数以上の放射線画像を用意する必要がある。
また、独立成分分析には、混合係数(行列A)が常に一定である線形のものと、混合係数がパラメータによって規定された、混合係数が常に一定ではない非線形のものとがある。本発明の第3の態様は、非線形の独立成分分析手法を適用したものに相当する。
本発明の第1の態様における「前記複数の放射線画像の各々から、前記複数の成分の各々が含まれる空間周波数帯域の画像成分を抽出する」処理の具体例としては、人体を被写体とする放射線画像から骨成分と軟部成分を表す画像成分を分離する場合、人体の骨の太さに対応する空間周波数帯域を含む中周波帯域の画像成分を抽出することが好ましい。
本発明の第2、第3、第4の態様における「前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータ」の具体例としては、前記複数の放射線画像のうちの1つの各画素における放射線量、放射線量の対数値、前記複数の放射線画像のうちの2つの間での各画素における放射線量の対数値の差、該各画素における放射線量の比の対数値が挙げられる。なお、前述のとおり、放射線量の対数値は各画像の画素値に置き換えることができる。
本発明の第2の態様では、前記複数の放射線画像中の、放射線の減衰量が第1の基準値未満の領域、および/または、放射線の減衰量が第2の基準値より高い領域を除外して、前記部分集合に分類するようにしてもよい。ここで、第1の基準値をほぼ0とし、放射線がほとんど減衰していない領域を除外することが好ましい。また、第2の基準値を減衰量の最大値付近とし、放射線のほとんどが減衰している領域を除外することが好ましい。
また、本発明の第2の態様では、1つの部分集合のみを抽出し、その部分集合に対して独立成分分析を行うことによって分離係数を求め、その分離係数を画像全体に適用してもよいし、複数の部分集合に分類し、分類された部分集合毎に、その部分集合に対して独立成分分析を行うことによって分離係数を求め、部分集合毎に、その分離係数を前記所定の重みづけ係数として画像成分を分離するようにしてもよい。
本発明の第4の態様における、「該複数の放射線画像の各々における放射線の減衰量の比が前記各成分の厚さまたは前記被写体の厚さによらず一定であるという関係に近づくように」とは、例えば、図12に示した被検体または被検体の各成分の厚さとX線露光量(対数)との関係では、複数の放射線画像のうちの高エネルギー画像におけるX線減衰量EHと複数の放射線画像のうちの低エネルギー画像におけるX線減衰量ELとの比が、被検体または被検体の各成分の厚さによらず一定となるようにすることを意味する。
本発明の第4の態様において、複数の放射線画像が複数ショット法で形成されたものである場合には、前記画素値変換の際に、前記複数の放射線画像中の放射線の減衰量がより大きい領域において、より高いエネルギーの放射線の曝射によって形成された放射線画像のゲインを、より低いエネルギーの放射線の曝射によって形成された放射線画像のゲインに比べて大きくする変換を行うようにしたり(図15参照)、より低いエネルギーの放射線の曝射によって形成された放射線画像のゲインを、より高いエネルギーの放射線の曝射によって形成された放射線画像のゲインに比べて小さくする変換を行うようにしたり(図18参照)することが好ましい。
また、本発明の第4の態様において、複数の放射線画像が1ショット法で形成されたものである場合には、前記画素値変換の際に、前記複数の放射線画像中の放射線の減衰量がより大きい領域において、より高いエネルギーの放射線によって形成された放射線画像のゲインを、より低いエネルギーの放射線によって形成された放射線画像のゲインに比べて小さくする変換を行うようにしたり(図18参照)、より低いエネルギーの放射線によって形成された放射線画像のゲインを、より高いエネルギーの放射線によって形成された放射線画像のゲインに比べて大きくする変換を行うようにしたり(図15参照)することが好ましい。
さらに、本発明の第4の態様において、重みづけ総和を求める際に入力となる「複数の放射線画像」には、上記の画素値変換後の放射線画像を用いてもよいし、変換前の放射線画像を用いてもよい。
本発明の第1の態様では、独立成分分析を用いて複数の放射線画像から複数の画像成分を分離するための分離係数を求める前に、前記複数の放射線画像の各々から、前記複数の成分の各々が含まれる空間周波数帯域の画像成分を抽出し、抽出された画像成分に対して独立成分分析を行い、得られた分離係数を用いて複数の放射線画像の重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離する。ここで、抽出された空間周波数帯域の画像成分は、観測信号が分離対象の成分信号のすべてを含むものでなければならないという、独立成分分析における観測信号の前提をより適切に満たすので、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
例えば、人体の放射線画像から骨成分と軟部成分を表す画像成分を分離する場合、人体の骨の太さに対応する空間周波数帯域を含む中周波帯域の画像成分を抽出するようにすれば、骨部成分がほとんど存在しない低周波帯域(人体の骨の太さよりも太い構造物に対応する空間周波数帯域)とノイズが支配的な高周波帯域とが独立成分分析の入力データから除外され、骨成分と軟部成分が多く存在する中周波帯域の画像成分のみ入力されるので、独立成分分析においてノイズの影響を受けにくくなり、分離係数を求める処理のロバスト性が高くなる。また、別の観点から説明すると、人体において、骨は軟部組織がまったくないところには普通存在することはなく、軟部組織が比較的厚い部分に存在する確率が高い。すなわち、2つの組織は低周波帯域において強い相関を持っており独立性を低下させる要因となっている。そこで、骨の太さより低い周波数帯域を除去することで2つの組織間の独立性が高まり、分離が容易になる。
実際の撮影で得られる放射線画像では、被写体に照射された放射線が単色ではなく、あるエネルギー範囲に分布している場合、照射される放射線のエネルギー分布が、被写体中の各成分の厚さに依存して変化するビームハードニングという現象が生じるため、各成分における減弱係数は画素毎に異なる。より詳細には、コンプトン効果が支配的なX線エネルギーの範囲(40〜150kVp程度の一般撮影におけるX線エネルギーの範囲)における減弱係数は、それ以外の成分の厚さが増すにしたがって単調減少する。例えば、人体の胸部の場合、肺野内部と縦郭部とでは減弱係数が異なる。(線形の)独立成分分析においては、1つの観測信号において、異なる混合係数で成分信号が混合されていると、異なる混合係数で混合された成分信号の部分集合は、独立成分の推定の際に互いにノイズとなってしまう。
そこで、本発明の第2の態様によれば、独立成分分析を用いて複数の放射線画像から複数の画像成分を分離するための分離係数を求める前に、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、前記複数の放射線画像毎に各画素を1以上の部分集合に分類し、分類された部分集合の少なくとも1組に対して独立成分分析を行い、得られた分離係数を用いて複数の放射線画像または各部分集合の重みづけ総和を求めることによって、前記被写体中の所定の複数の成分の各々を表す複数の画像成分を分離するので、放射線画像特有のビームハードニングの影響により、異なる混合係数で混合された成分信号がノイズとして作用することが回避され、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
また、本発明の第3の態様によれば、独立成分分析を用いて複数の放射線画像から複数の画像成分を分離するための分離係数を求める際に、前記複数の放射線画像の各々における前記複数の画像成分の混合比率を表す混合係数を、前記複数の放射線画像の少なくとも1つから得られる、該複数の放射線画像の各々の各画素における前記所定の複数の成分の各々の厚さまたは前記被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータを用いた所定の関数として表したモデルを用いるので、放射線画像特有のビームハードニングの影響を考慮した非線形の独立成分分析により、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
上記の複数ショット法で形成された放射線画像の場合、図13に被検体の厚みとX線露光量との関係を模式的に表したように、上記のビームハードニングの影響により、被写体の厚さが増すほどX線露光量の減少率が小さくなるため、より高エネルギーのX線によって形成された画像もより低エネルギーのX線によって形成された画像も、X線露光量(対数)と被検体または被検体の各成分の厚さとは線形の関係にはならない。さらに、コンプトン効果がより支配的な高エネルギー側のX線ではより多くの散乱線が生じるため、被検体の厚さが増すほど散乱線が増加し、X線露光量の減少率が、低エネルギー側のX線よりもさらに小さくなる。図13の一点鎖線は高エネルギー側のX線の散乱線が低エネルギー側の散乱線と同程度であった場合を示したものであり、図15の破線は、実際の散乱線が含まれる高エネルギー側のX線の場合を示している。
一方、前述のとおり、(線形の)独立成分分析においては、1つの観測信号では、同じ混合係数で成分信号が混合されていることが前提となっており、1つの観測信号中において異なる混合係数で混合された成分信号は、独立成分の推定の際に互いにノイズとなってしまう。
そこで、本発明の第4の態様では、放射線画像中の画像成分を分離する場合には、1つの観測信号中において同じ混合係数で成分信号が混合されていなくても、複数の放射線画像の各々における放射線の減衰量の比が前記各成分の厚さまたは被写体の厚さによらず一定であるという条件を満たしていればよいことに着目し、複数の放射線画像の各々の各画素における所定の複数の成分の各々の厚さまたは被検体の厚さと所定の関係を有するパラメータの値に基づいて、上記の条件に近づくように、複数の放射線画像のうちの少なくとも1つの画像の各画素の画素値を非線形に変換するので、異なる混合係数で混合された成分信号がノイズとして作用することが回避され、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
このように、本発明によれば、放射線画像に対するエネルギーサブトラクション処理に独立成分分析の手法を適用する際に生じうる、放射線画像特有の課題が解決され、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本発明の実施形態となる画像成分分離装置が導入された医療情報システムの概略構成を示す。図に示すように、このシステムは、医用画像の撮影装置(モダリティ)1、画像品質チェック用ワークステーション(QA−WS)2、読影ワークステーション3(3a、3b)、画像情報管理サーバ4、画像情報データベース5が、ネットワーク19を介して互いに通信可能な状態で接続されて構成されている。各種データベースを除く各機器は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムによって制御される。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバからダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
モダリティ1には、被検体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を表した画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM規格で規定された付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置が含まれる。付帯情報は、そのモダリティ等のメーカー独自の規格のものであってもよい。本実施形態では、X線撮影装置で撮影され、DR装置やCR装置でデジタル画像データ化された画像情報が用いられる。DR装置は、X線発生装置とX線検出器とからなり、X線発生装置において、X線高電圧発生器によって印加された管電圧でX線管からX線を曝射し、被検体を透過したX線をフラットパネル型の検出器(Flat Panel Detector: FPD)で検出して電荷に変換して蓄積し、デジタル画像データに変換するものである。CR装置は、X線撮影装置と画像読取装置とからなり、X線撮影装置は、被検体の放射線画像情報を、シート状の蓄積性蛍光体層を備えてなる蓄積性蛍光体シートIPに記録するものであり、画像読取装置は、X線撮影装置によって記録された蓄積性蛍光体シートIPにレーザ光等の励起光を走査して輝尽発光光を生じさせ、得られた輝尽発光光を光電的に読み取ってアナログ画像信号を取得し、このアナログ画像信号を対数変換後、デジタル化してデジタル画像データを生成するものである。なお、本発明の実施形態において、複数ショット法で形成された画像を用いる場合には、DR装置を用いることが好ましい。モダリティの他の具体例としては、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)、超音波撮影装置などが挙げられる。また、造影剤の選択的な集積状態をX線撮影装置等により撮影することも行われる。なお、以下では、被写体を表す画像データと画像データの付帯情報の組を「画像情報」と称することとする。すなわち「画像情報」の中には画像に係るテキスト情報も含まれる。
QA−WS2は、汎用の処理装置(コンピュータ)と1台または2台の高精細ディスプレイとキーボード・マウスなどの入力機器により構成される。処理装置には、検査技師の作業を支援するためのソフトウェアが組み込まれている。QA−WS2は、そのソフトウェアプログラムの実行によって実現される機能により、モダリティ1からDICOMに準拠した画像情報を受信し、規格化処理(EDR処理)や画像の品質を調整するための処理を行い、処理後の画像情報に含まれる画像データと付帯情報の内容を画面に表示することで検査技師に確認を促す。そして、検査技師による確認が済んだ画像情報を、ネットワーク19を介して画像情報管理サーバ4に転送し、その画像情報の画像情報データベース5への登録を要求する。
読影ワークステーション3は、画像診断医が画像の読影や読影レポートの作成に利用する装置であり、処理装置と1台または2台の高精細ディスプレイとキーボード・マウスなどの入力機器により構成される。この装置では、画像情報管理サーバ4に対する画像の閲覧要求や、画像情報管理サーバ4から受信した画像に対する各種画像処理、画像の表示、画像中の病変らしき部分の自動検出・強調表示、読影レポートの作成の支援、読影レポートサーバ(図示なし)に対する読影レポートの登録要求や閲覧要求、読影レポートサーバから受信した読影レポートの表示等が行われる。本発明の画像成分分離装置は、この読影ワークステーション3に実装されている。なお、本発明の画像成分分離処理や、その他の各種画像処理や病変候補の自動検出・強調処理等の画質・視認性改善処理や画像解析処理を読影ワークステーション3で行わず、別途画像処理サーバ(図示なし)をネットワーク19に接続しておき、読影ワークステーション3からの当該処理の要求に応じて、画像処理サーバが行うようにしてもよい。
画像情報管理サーバ4は、汎用の比較的処理能力の高いコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムを組み込んだものである。画像情報管理サーバ4は画像情報データベース5が構成される大容量ストレージを備えている。このストレージは、画像情報管理サーバ4とデータバスによって接続された大容量のハードディスク装置であってもよいし、ネットワーク19に接続されているNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)に接続されたディスク装置であってもよい。
画像情報データベース5には、被写体画像を表す画像データと付帯情報とが登録される。付帯情報には、例えば、個々の画像を識別するための画像ID、被写体を識別するための患者ID、検査を識別するための検査ID、画像情報ごとに割り振られるユニークなID(UID)、その画像情報が生成された検査日、検査時刻、その画像情報を取得するための検査で使用されたモダリティの種類、患者氏名、年齢、性別などの患者情報、検査部位(撮影部位)、撮影情報(管電圧・蓄積性蛍光体シートと付加フィルタの構成等の撮影条件、撮影プロトコル、撮影シーケンス、撮像手法、造影剤の使用有無や注入後の経過時間/使用された色素、放射線核種、放射線量など)、1回の検査で複数の画像を取得したときのシリーズ番号あるいは採取番号などの情報が含まれうる。画像情報は、例えばXMLやSGMLデータとして管理されうる。
画像情報管理サーバ4は、QA−WS2からの画像情報の登録要求を受け付けると、その画像情報をデータベース用のフォーマットに整えて画像情報データベース5に登録する。
また、画像管理サーバ4は、読影ワークステーション3からの閲覧要求をネットワーク19経由で受信すると、上記画像情報データベース5に登録されている画像情報を検索し、抽出された画像情報を要求元の読影ワークステーション3に送信する。
読影ワークステーション3は、画像診断医等のユーザによって読影対象画像の閲覧を要求する操作が行われると、画像管理サーバ8に対して閲覧要求を送信し、読影に必要な画像情報を取得する。そして、その画像情報をモニタ画面に表示し、画像診断医からの要求に応じて病変の自動検出処理などを実行する。
ネットワーク19は病院内の各種装置を接続するローカルエリアネットワークである。但し、読影ワークステーション3が他の病院あるいは診療所にも設置されている場合には、ネットワーク19は、各病院のローカルエリアネットワーク同士をインターネットもしくは専用回線で接続した構成としてもよい。いずれの場合にも、ネットワーク9は光ネットワークなど画像情報の高速転送を実現できるものとすることが望ましい。
以下、本発明の第1の実施形態となる画像成分分離装置の機能およびその周辺機能の詳細について説明する。図2は、この装置の構成とデータの流れを模式的に示したブロック図である。図に示したように、この装置は、中周波成分抽出部21、独立成分分析処理部22、成分画像生成部23から構成される。
中周波成分抽出部21は、画像のピクセルピッチ(読み取り密度)に応じて、人体の骨の太さに対応した空間周波数成分が抽出されるように調整されたフィルタ等を用いて、入力された放射線画像(E1、E2)の各々から、人体の骨の太さに対応する空間周波数帯域を含む中周波数帯域の画像成分(EM1、EM2)を抽出する。具体的には、骨の太さに対応する空間周波数成分より高い空間周波数成分をカットする第1のフィルタにより第1のボケ画像を作成し、骨の太さに対応する空間周波数成分およびそれより高い空間周波数成分をカットする第2のフィルタにより第2のボケ画像2を作成し、第1のボケ画像から第2のボケ画像を減算することによって、中周波数帯域の画像成分(EM1、EM2)を得ることができる。また、骨の太さに対応する空間周波数成分より高い空間周波数成分とより低い空間周波数成分とをカットするフィルタを用いて、中周波数帯域の画像成分(EM1、EM2)を得てもよいし、多重解像度分解を用いて、入力画像をダウンサンプリングして中解像度画像を取得し、中解像度画像をさらにダウンサンプリングして低解像度画像を取得し、この低解像度画像をアップサンプリングし、アップサンプリングされた低解像度画像と、中解像度画像の差分を求めることによって、中周波帯域画像(EM1、EM2)を抽出してもよい。なお、上記ダウンサンプリングは、σ=1のガウシアンローパスフィルタと入力画像の1/2間引きとを行うものであり、上記アップサンプリングは3次Bスプライン補間を利用して行うものである。
独立成分分析処理部22は、入力された2つの画像データを観測信号として独立成分分析を行い、画像中の軟部成分と骨成分とを独立成分として分離するための分離係数を算出する。本実施形態では、不動点法を用いて負のエントロピーを最大化するように独立成分を推定するFast ICAアルゴリズムを用いた例を説明する。
入力された2つの画像データの相対応する画素の画素値をx1,x2とし、分離対象の軟部成分と骨成分を表す画像成分を各々y1、y2とし、各画像成分に対する混合係数をa11,a12,a21,a22とすると、x1,x2は、次式(9)(10)のように表すことができる。
式(9)(10)を
として整理すると、次式(11)のようになる。
したがって、行列Aの逆行列をWとすると、次式(12)のようになる。
このような前提の下で、まず、以下のようにして観測信号を無相関化する前処理を行う。
次に、分離係数を表す行列Wの成分を構成する2つの荷重ベクトルw1、w2の適当な初期値を例えば乱数を用いて決定する。ここで、それぞれのノルムは1となるように規格化しておく。なお、W=(w1,w2)Tである。
さらに、次の(a)と(b)を、収束するまで繰り返す。ここで、収束とは、w1、w2の各々について、更新前後のベクトルの方向がほぼ同じになる、すなわち、更新されるwiの値の変化が十分に小さくなることを意味する。
(a)i=1,2について、次式(14)に従ってwiを更新する。
(b)次式(15)のように、Wの要素(w1,w2)が互いに直交するようにWを更新する。
なお、上記の手順によって推定された行列Wを用いて、次式(16)により、独立成分Yが推定される。
以上の処理の詳細については、ビバリネン・アーポ〈Hyv¨arinen,Aapo〉、カルーネン・ユハ〈Karhunen,Juha〉、オヤ・エルキ〈Oja,Erkki〉著、根本 幾、川勝 真喜訳、「詳解 独立成分分析―信号解析の新しい世界」(原書名:Independent Component Analysis)、東京電機大学出版局、2005年2月等に開示されている。
成分画像生成部23は、入力された分離係数を重みづけ係数として用いて、入力された2つの画像の相対応する画素毎に重みづけ総和を算出することによって軟部成分、骨成分を表す2つの成分画像を生成する。すなわち、入力された分離係数を、すべての空間周波数帯域に対して適用し、軟部画像と骨部画像を生成する。
なお、画像間の相対応する画素については、各画像中のマーカーや胸郭等の構造物を検出し、検出された構造物を基準とする公知の線形・非線形の変換によって画像間の位置合わせを行うことによって特定してもよいし、被検者の呼吸のタイミングを指示する指示部を有するX線撮影装置(例えば、特開2005-012248号公報参照)を用いて撮影を行い、3つの画像における呼吸相を一致させることによって画像間の位置合わせを不要にし、単純に座標が一致する画素としてもよい。
次に、図3のフローチャート、および、図2のブロック図を用いて、本発明の第1の実施形態となる画像成分分離処理を利用した画像読影のワークフローとその際のデータの流れについて説明する。
まず、画像診断医は、この医療情報システムへのアクセスのためのユーザID・パスワード、指紋等の生体情報等によるユーザ認証を読影ワークステーション3で行う(#1)。
ユーザ認証に成功すると、オーダリングシステムによって発行された画像診断オーダに基づく検査(読影)対象画像リストがディスプレイに表示される。画像診断医は、マウス等の入力機器を用いて検査対象画像リストから読影対象の画像E1、E2を含む検査(画像診断)を選択する。読影ワークステーション3は、選択された画像E1、E2の画像IDを検索キーとする画像情報管理サーバ4への閲覧要求を行い、この要求を受信した画像情報管理サーバ4が画像情報データベース5に対する検索を行って、読影対象画像E1、E2、の画像ファイル(便宜上、画像と同じ符号Eで表す)を取得し、要求を送信した読影ワークステーション3にそれらの画像ファイルE1、E2を送信する。読影ワークステーション3は、それらの画像ファイルE1、E2を受信する(#2)。
さらに、読影ワークステーション3は、画像診断オーダの内容を解析し、受信した画像E1、E2から軟部・骨の各成分を分離した成分画像S,Bを生成する処理、すなわち、読影ワークステーション3を本発明による画像成分分離装置として機能させるプログラムを起動させる。
起動されたプログラムにより、中周波成分抽出部21が、入力された放射線画像E1、E2の各々の中周波数帯域の画像成分EM1、EM2を抽出し(#3)、独立成分分析処理部22が、入力された2つの中周波帯域画像EM1、EM2を観測信号として独立成分分析を行い、画像中の軟部成分と骨成分とを独立成分として分離するための分離係数Wを算出し(#4)、成分画像生成部23が、分離係数Wを重みづけ係数として用いて、もとの2つの放射線画像E1,E2の相対応する画素毎に重みづけ総和を算出することによって軟部成分、骨成分を表す2つの成分画像S,Bを生成する(#5)。
生成された各成分画像S,Bは、読影ワークステーション3のディスプレイに表示され、画像診断医の読影に供される。
このように、本発明の第1の実施形態となる画像成分分離装置を含む医療情報システムでは、中周波成分抽出部21が、入力された放射線画像E1,E2から、人体の骨の太さに対応する空間周波数帯域を含む中周波帯域の画像成分EM1、EM2を抽出するので、もとの画像E1,E2の骨部成分がほとんど存在しない低周波帯域(人体の骨の太さよりも太い構造物に対応する空間周波数帯域)とノイズが支配的な高周波帯域とが、独立成分分析処理部22に対する入力データから除外され、骨成分と軟部成分が多く存在する中周波帯域の画像成分EM1、EM2のみに対して独立成分分析が行われるので、ノイズの影響を受けにくくなり、分離係数Wを求める処理のロバスト性が高くなり、軟部成分Sと骨部成分Bをより高い精度で分離することが可能になる。
図4は、本発明の第2の実施形態となる画像成分分離装置の構成とデータの流れを模式的に示したブロック図である。図に示したように、この装置は、部分集合分類部24、独立成分分析処理部22、成分画像生成部23から構成される。
部分集合分類部24は、入力された2つの放射線画像の各画素における放射線量の対数値の差の値に基づいて、入力された放射線画像毎に各画素を複数の部分集合に分類する。
前述のとおり、現実の放射線画像ではビームハードニングの影響によって、被写体厚が厚いところほど、軟部や骨部の減弱係数が小さくなるため、線形の独立成分分析における1つの観測信号において、異なる混合係数で成分信号が混合されていることになり、異なる混合係数で混合された成分信号の部分集合は、独立成分の推定の際に互いにノイズとなってしまう。
一方、減弱係数は入力となる2つの放射線画像の対数線量差、すなわち、相対応する画素の画素値の差に依存することが知られている(特許文献1参照)。図5(a)は軟部の減弱係数aと対数線量差E1-2との関係を表したものであり、図5(b)は骨部の減弱係数bと対数線量差E1-2との関係を表したものである。なお、これらの関係は実験的に得られたものである。
そこで、部分集合分類部24は、入力された2つの放射線画像の相対応する画素の画素値の差を算出し、算出された差についてヒストグラム解析を行い、入力された放射線画像の各々を複数の部分集合に分割する。ここで、2つの放射線画像の部分集合間でも、相対応する画素の対応関係に基づく対応関係が保持されることになる。
なお、部分集合への分割の基準には、上述の画素値の差ではなく、画素値の比を用いてもよいし、入力された放射線画像のうちのいずれか一方の画像の画素値をそのまま用いてもよい。
独立成分分析処理部22、成分画像生成部23で行われる処理は第1の実施形態と同様である。
次に、図6のフローチャート、および、図4のブロック図を用いて、本発明の第2の実施形態となる画像成分分離処理を利用した画像読影のワークフローとその際のデータの流れについて説明する。
まず、第1の実施形態と同様に、画像診断医がユーザ認証の後(#11)、読影対象の画像E1、E2を選択・取得すると(#12)、読影ワークステーション3は、画像診断オーダの内容に基づいて、本発明の第2の実施形態となる画像成分分離装置のプログラムを起動させる。
起動されたプログラムにより、部分集合分類部24は、入力された放射線画像E1、E2を、両画像の相対応する画素における画素値の差に基づいて複数の部分集合E1i,E2i(i=1,2,・・・)に分類する(#13)。
独立成分分析処理部22は、相対応する2つの部分集合E1i,E2i毎に独立成分分析を行って、分離係数Wiを算出する。すなわち、まず、添え字iに1を設定し(#14)、部分集合E11,E21を入力とする独立成分分析を行い、部分集合E11,E21に対する分離係数W1を算出する(#15)。そして、添え字iを1加算し(#16)、添え字iが最大値IMAX、すなわち部分集合の総数を超えていなければ(#17;NO)、次の部分集合E12,E22について分離係数W2を算出する。同様に、添え字iが最大値IMAXを超えるまで、添え字iの加算(#16)、部分集合E1i,E2iから分離係数Wiを算出する処理(#15)を繰り返し行う。
添え字iが最大値IMAXを超えたら(#17;YES)、成分画像生成部23は、相対応する部分集合E1i,E2i毎に、対応する分離係数Wiを用いて、相対応する画素毎に重みづけ総和を算出する。これにより、軟部成分、骨成分を表す2つの成分画像S,Bが生成される(#18)。
生成された各成分画像S,Bは、読影ワークステーション3のディスプレイに表示され、画像診断医の読影に供される。
このように、本発明の第2の実施形態となる画像成分分離装置を含む医療情報システムでは、部分集合分類部24が、入力された2つの放射線画像E1,E2の相対応する画素の画素値の差に基づいて、放射線画像E1,E2毎に各画素を複数の部分集合E1i,E2i(i=1,2,・・・)に分類し、独立成分分析処理部22が、分類された部分集合E1i,E2i毎に独立成分分析を行い、得られた分離係数Wiを用いて、成分画像生成部23が、部分集合E1i,E2i毎に放射線画像の重みづけ総和を求めることによって、軟部成分と骨部成分を表す成分画像S,Bを生成するので、放射線画像特有のビームハードニングの影響を回避し、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
なお、本実施形態において、部分集合分類部24が、各画像E1、E2から1つの部分集合E11,E21のみを抽出し、独立成分分析処理部22が、その部分集合E11,E21に対して独立成分分析を行うことによって分離係数W1を求め、その分離係数W1を画像全体に適用してもよい。
図7は、本発明の第3の実施形態となる画像成分分離装置の構成とデータの流れを模式的に示したブロック図である。図に示したように、この装置は、非線形独立成分分析処理部25、成分画像生成部23´から構成される。
非線形独立成分分析処理部25は、入力された2つの放射線画像の各々における軟部と骨部を表す画像成分の混合比率を表す混合係数を、入力された2つの放射線画像の相対応する画素の画素値の差をパラメータとして用いた所定の関数として表したモデルを用いて
非線形の独立成分分析を行い、分離係数を算出する。
入力された2つの画像をE1,E2とし、分離対象の軟部成分と骨成分を表す画像成分を各々S、Bとし、各画像成分に対する混合係数(減弱係数)をa,b,c,dとすると、前述のとおり、次式(17)(18)の関係が成り立つ。
式(17)(18)を変形して、画像E1に対応する軟部画像aSと骨部画像bBを求めると、次式(19)(20)のようになる。
一方、前述のとおり、減弱係数は入力となる2つの放射線画像の対数線量差、すなわち、相対応する画素の画素値の差に依存することが知られており(特許文献1参照)、各減弱係数を、対数線量差E1-2の関数fa、fb、fc、fdを用いて表すと、式(17)(18)は次式(21)(22)のようになる。
式(21)(22)は、独立成分分析における混合係数が常に一定ではないことを示しており、前述のFast ICAのような線形の独立成分分析のアルゴリズムを用いることはできない。
ここで、式(19)(20)における両画像間での軟部の減弱係数の比a/c、骨部の減弱係数の比b/dに着目し、これらの比と対数線量差E1-2との関係を実験的に求めると、各々、図8(a)(b)のようになる。
簡単のため、減弱係数の比a/c、b/dが対数線量差E1-2に対して線形であると近似し、a/c=e+fE1-2、b/d=g+hE1-2とすると、式(19)(20)は次式(23)(24)のようになる。
したがって、aSとbBの相互情報量が最小となるようにパラメータe,f,g,hを最適化することによって、2つの画像E1、E2から独立成分aS,bBを推定することができる。
aS=S´、bB=B´とすると、S´とB´の相互情報量I(S´,B´)は、次式(25)によって求めることができる。
ここで、Hはエントロピーを表す。PS´、PB´は、各々、S´とB´の周辺確率分布で、PS´B´は、S´とB´の同時確率分布を表す。すなわち、PS´(i)は、S´がiという画素値をとる確率であり、画像データ(S´)のヒストグラムから、「iという画素値をとる画素数/画像データ(S´)の総画素数」により求められる。PB´(j)は、B´がjという画素値をとる確率であり、PS´B´(i,j)は、S´がiという画素値をとるとともに、B´がjという画素値をとる確率であり、PS´(i)と同様にして求められる。なお、PS´B´(i,j)の場合には、iとjの2つの確率変数があるので、2次元のヒストグラムとなる。
また、相互情報量I(S´,B´)を最小化するパラメータe,f,g,hの値は、例えばシンプレックス法を用いて決定することができる。
図9は、相互情報量を計算するための、S´とB´の頻度分布の一例を表したものであり、図9(a)はパラメータe,f,g,hに初期値を設定した際の頻度分布であり、図9(b)はパラメータe,f,g,hを最適化した後の頻度分布である。一方、図10(a)は2つの変数の相互情報量の値が約0.8の場合の両変数の分布を表したものであり、図10(b)は2つの変数の相互情報量の値が0の場合の両変数の分布を表したものである。このように、相互情報量を最小化することによって、2つの変数S´とB´の相関が低くなり、両変数は、より独立性の高い成分となる。
なお、減弱係数の比a/c、b/dと対数線量差E1-2との関係を線形であると近似せずに、2次関数等で近似してもよい。
成分画像生成部23´は、非線形独立成分分析処理部25によって求められたパラメータe,f,g,hの値、および、入力された画像E1,E2の相対応する画素の画素値の差E1-2を、式(23)(24)に代入して、軟部画像Sおよび骨部画像Bの各画素の画素値を求める。
次に、図11のフローチャート、および、図7のブロック図を用いて、本発明の第3の実施形態となる画像成分分離処理を利用した画像読影のワークフローとその際のデータの流れについて説明する。
まず、第1の実施形態と同様に、画像診断医がユーザ認証の後(#21)、読影対象の画像E1、E2を選択・取得すると(#22)、読影ワークステーション3は、画像診断オーダの内容に基づいて、本発明の第3の実施形態となる画像成分分離装置のプログラムを起動させる。
起動されたプログラムにより、非線形独立成分分析処理部25は、画像E1、E2を入力として、上記の非線形の独立成分分析を行い、分離係数W(パラメータe,f,g,h)を算出し(#23)、成分画像生成部23´は、分離係数Wおよび画像E1,E2の相対応する画素の画素値の差E1-2に基づいて、軟部画像Sおよび骨部画像Bの各画素の画素値を求めることによって、軟部成分、骨成分を表す2つの成分画像S,Bを生成する(#24)。
生成された各成分画像S,Bは、読影ワークステーション3のディスプレイに表示され、画像診断医の読影に供される。
このように、本発明の第3の実施形態となる画像成分分離装置を含む医療情報システムでは、非線形独立成分分析処理部25が、入力された2つの放射線画像E1、E2の各々における軟部と骨部を表す画像成分の混合比率を表す混合係数を、入力された2つの放射線画像E1、E2の相対応する画素の画素値の差E1-2をパラメータとして用いた所定の関数として表したモデルを用いて非線形の独立成分分析を行うので、放射線画像特有のビームハードニングの影響が考慮された分離係数Wが算出され、これを用いることにより、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
図14は、本発明の第4の実施形態となる画像成分分離装置の構成とデータの流れを模式的に示したブロック図である。図に示したように、この装置は、非線形濃度変換部26、独立成分分析処理部22、成分画像生成部23から構成される。なお、本実施形態では、放射線画像E1、E2は、2ショット法、すなわち、エネルギー分布の異なる2回の放射線の曝射によって得られたものであり、画像E1の方が画像E2よりも高いエネルギー分布の放射線によって形成されたものとする。以下、画像E1を高エネルギー画像E1、画像E2を低エネルギー画像E2と呼ぶ。
非線形濃度変換部26は、高エネルギー画像E1に対して、放射線の減衰量がより大きい領域、すなわち、画像の濃度値がより小さい(より白い)領域のゲインを低エネルギー画像E2のゲインよりも大きくする非線形の濃度変換を行い、濃度変換後の高エネルギー画像E1´を出力する。図15はこのような濃度変換を行う参照テーブル(LUT)を模式的に表したものである。図に示したように、低濃度側の階調を立てる変換が行われる。なお、本実施形態では、低エネルギー画像E2に対しては濃度変換を行わないか、線形の濃度変換を行うことを前提としている。また、放射線画像E1、E2のどちらが高エネルギー画像であるかについては、各画像の付帯情報に含まれる管電圧等の情報を参照して判定してもよいし、予めユーザが指定するようにしてもよい。
前述のとおり、2ショット法で得られた2つの放射線画像では、ビームハードニングとコンプトン散乱の影響により、高エネルギー画像E1の方が低エネルギー画像E2よりもX線露光量(対数)と被検体または被検体の各成分の厚さとの間の線形性が低いために、2つの放射線画像の各々における放射線の減衰量の比が各成分の厚さや被写体の厚さによらず一定という関係にならず、このことが後続の独立成分分析における独立成分の推定の際のノイズとして作用する。
この非線形の濃度変換処理は、このノイズとしての作用を軽減するためのものであり、放射線画像(本実施形態では高エネルギー画像E1を利用)の画素値(濃度値)が小さい領域ほど、被検体のその領域の厚さが厚いという関係に着目し、高エネルギー画像E1に対して上記の濃度変換を行うことによって、2つの放射線画像の各々における放射線の減衰量の比が各成分の厚さや被写体の厚さによらず一定という関係に近づくように補正を行うものである。
なお、独立成分分析処理部22、成分画像生成部23で行われる処理は第1の実施形態と同様である。
次に、図16のフローチャート、および、図14のブロック図を用いて、本発明の第4の実施形態となる画像成分分離処理を利用した画像読影のワークフローとその際のデータの流れについて説明する。
まず、第1の実施形態と同様に、画像診断医がユーザ認証の後(#31)、読影対象の画像E1、E2を選択・取得すると(#32)、読影ワークステーション3は、画像診断オーダの内容に基づいて、本発明の第4の実施形態となる画像成分分離装置のプログラムを起動させる。
起動されたプログラムにより、非線形濃度変換部26は、入力された放射線画像E1、E2のうち高エネルギー画像E1の方を非線形濃度変換し、処理後の高エネルギー画像E1´を出力する。(#33)。
独立成分分析処理部22は、入力された、処理後の高エネルギー画像E1´および低エネルギー画像E2を観測信号として独立成分分析を行い、画像中の軟部成分と骨成分とを独立成分として分離するための分離係数Wを算出し(#34)、成分画像生成部23が、分離係数Wを重みづけ係数として用いて、処理後の高エネルギー画像E1´および低エネルギー画像E2の相対応する画素毎に重みづけ総和を算出することによって軟部成分、骨成分を表す2つの成分画像S,Bを生成する(#35)。
生成された各成分画像S,Bは、読影ワークステーション3のディスプレイに表示され、画像診断医の読影に供される。
このように、本発明の第4の実施形態となる画像成分分離装置を含む医療情報システムでは、非線形濃度変換部26が、高エネルギー画像E1に対して、放射線の減衰量がより大きい領域、すなわち、画像の濃度値がより小さい(より白い)領域のゲインを低エネルギー画像E2のゲインよりも大きくする非線形の濃度変換を行い、独立成分分析処理部22が、処理後の高エネルギー画像E1´および低エネルギー画像E2を観測信号として独立成分分析を行って分離係数Wを算出し、成分画像生成部23が、分離係数Wを重みづけ係数として用いて軟部成分と骨部成分を表す成分画像S,Bを生成するので、放射線画像特有のビームハードニングの影響を回避し、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
図17は、前述の非線形濃度変換によるX線の対数露光量(各放射線画像の濃度)と被検体の厚さの関係の変化を模式的に表したものである。図に示したように、非線形濃度変換部26による補正前(破線)は、高エネルギー画像E1におけるX線減衰量EHと低エネルギー画像E2におけるX線減衰量ELとの比が、被検体の厚さに応じて変化しているが、非線形濃度変換部26による補正後(一点鎖線)は、高エネルギー画像E1におけるX線減衰量EHと低エネルギー画像E2におけるX線減衰量ELとの比がほぼ一定となっている。
なお、本実施形態において、非線形濃度変換部26は、低エネルギー画像E2に対して、図18に模式的に表した参照テーブルを用いて、放射線の減衰量がより大きい領域(画像の濃度値がより小さい(より白い)領域)のゲインを高エネルギー画像E1のゲインよりも小さくする(階調を寝かせる)非線形の濃度変換を行うようにしてもよい。この場合、高エネルギー画像E1に対しては、濃度変換を行わなくてもよいし、線形の濃度変換を行ってもよいし、上記の図15で示した非線形の濃度変換を行ってもよい。
また、本実施形態では、2ショット法で得られた2つの放射線画像を入力としているが、1ショット法で得られた放射線画像の場合には、非線形濃度変換の方向性が異なる。例えば、CR装置を用いた1ショット法として、銅板をはさんだ2枚のIPに対して放射線を1回曝射することによって各IPに形成される画像は、図19にX線の対数露光量と被検体の厚さの関係を模式的に表したように、高エネルギー画像(銅板の後)の方が低エネルギー画像(銅板の前)に比べて線形性が良くなる(図の破線が1ショット法の場合の高エネルギー画像、実線が低エネルギー画像を表す)。これは、1ショット法では、散乱線の影響は高エネルギー画像も低エネルギー画像も同程度であるのに対して、高エネルギー画像では、放射線が銅板を透過したことによって単色性がより高くなるため、ビームハードニングの影響は、低エネルギー画像の方が高エネルギー画像よりも大きくなることによることによる。
そこで、1ショット法で得られた放射線画像の場合には、2ショット法の場合とは逆の濃度変換を行う必要がある。すなわち、この場合には、非線形濃度変換部26は、低エネルギー画像E2に対して、図15に模式的に表した参照テーブルを用いて、放射線の減衰量がより大きい領域、すなわち、画像の濃度値がより小さい(より白い)領域のゲインを高エネルギー画像E1のゲインよりも大きくする(階調を立てる)非線形の濃度変換を行う。これにより、低エネルギー画像E2におけるX線対数露光量は図19に一点鎖線で示したように変化し、高エネルギー画像E1におけるX線減衰量EHと低エネルギー画像E2におけるX線減衰量ELとの比が被検体の厚さによらずほぼ一定となり、2ショット法で得られた放射線画像の場合と同様に、放射線画像特有のビームハードニングの影響を回避し、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
あるいは、非線形濃度変換部26は、高エネルギー画像E1に対して、図18に模式的に表した参照テーブルを用いて、放射線の減衰量がより大きい領域、すなわち、画像の濃度値がより小さい(より白い)領域のゲインを低エネルギー画像E2のゲインよりも小さくする(階調を寝かせる)非線形の濃度変換を行ってもよい。
また、本実施形態では、成分画像生成部23は、処理後の高エネルギー画像E1´および低エネルギー画像E2から軟部成分、骨成分を表す2つの成分画像S,Bを生成しているが、濃度変換前の放射線画像E1およびE2から成分画像S,Bを生成するようにしてもよい。
上記各実施形態では、2つの放射線画像を入力として、軟部と骨という2つの成分を表す画像成分を分離する処理を行っているが、上記各実施形態を、3以上の放射線画像を入力として3以上の成分を表す画像成分を分離する処理に適用してもよい。なお、このとき、分離対象の成分の数は、入力となる放射線画像の総数以下とする必要がある。
上記各実施形態において、公知の画像認識処理により骨が含まれる領域を検出し、軟部とともに骨が含まれる領域の画像を独立成分分析の入力として用いるようにすることも考えられる。このように、分離対象の独立成分(軟部・骨)の両方が含まれる画像を入力とすることにより、観測信号が分離対象の成分信号のすべてを含むものでなければならないという、独立成分分析における観測信号の前提をより適切に満たすので、分離対象の画像成分をより高い精度で分離することが可能になる。
また、ユーザが分離したい領域を指定し、その領域を入力として独立成分分析を行うようにしてもよい。
さらに、入力となる放射線画像中の、放射線がほとんど減衰していない領域や、放射線のほとんどが減衰している領域を除外するようにしてもよい。これにより、独立成分分析の際に、分離対象となる軟部や骨等の独立成分に対してノイズとして作用する領域が除外され、分離精度の向上に資する。
なお、上記の説明の他、各実施形態におけるシステム構成、処理フロー、テーブル構成、ユーザインターフェース等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記の各実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。
例えば、図20のブロック図に示したように、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせ、中周波成分抽出部21が、入力された放射線画像E1,E2から中周波帯域の画像成分EM1、EM2を抽出し、部分集合分類部24が、抽出された中周波帯域の画像成分EM1、EM2の相対応する画素の画素値の差に基づいて、各画素を複数の部分集合EM1i,EM2i(i=1,2,・・・)に分類し、独立成分分析処理部22が、分類された部分集合EM1i,EM2i毎に独立成分分析を行い、成分画像生成部23が、得られた分離係数Wiを用いて、中周波帯域の部分集合EM1i,EM2iに対応する入力画像E1,E2の部分集合E1i,E2i毎に放射線画像の重みづけ総和を求めることによって、軟部成分と骨部成分を表す成分画像S,Bを生成するようにしてもよい。
さらに、図21のブロック図に示したように、さらに第3の実施形態も組み合わせ、中周波帯域の部分集合毎に、非線形の独立成分分析処理を行うことも考えられる。この場合、部分集合分類部24´は、例えば、図8の軟部の減弱係数の比a/c、骨部の減弱係数の比b/dと対数線量差E1-2との関係を表すテーブルを参照し、中周波帯域の画像成分EM1、EM2を、各減弱係数と対数線量差E1-2との関係が線形により近い部分集合とそれ以外の部分集合に分類するようにすることが好ましい。
また、図22のブロック図に示したように、第1、第2、第4の実施形態を組み合わせ、非線形濃度変換部26が、高エネルギー画像E1に対して、放射線の減衰量がより大きい領域、すなわち、画像の濃度値がより小さい(より白い)領域のゲインを低エネルギー画像E2のゲインよりも大きくする非線形の濃度変換を行い、中周波成分抽出部21が、変換後の放射線画像E1´および低エネルギー画像E2から中周波帯域の画像成分EM1´、EM2を抽出し、部分集合分類部24が、抽出された中周波帯域の画像成分EM1´、EM2の相対応する画素の画素値の差に基づいて、各画素を複数の部分集合EM1i´,EM2i(i=1,2,・・・)に分類し、独立成分分析処理部22が、分類された部分集合EM1i´,EM2i毎に独立成分分析を行い、成分画像生成部23が、得られた分離係数Wiを用いて、中周波帯域の部分集合EM1i´,EM2iに対応する画像E1´,E2の部分集合E1i´,E2i毎に放射線画像の重みづけ総和を求めることによって、軟部成分と骨部成分を表す成分画像S,Bを生成するようにしてもよい。
なお、以上の説明では、取得した画像に対して予め対数変換した後で上記各処理部21から26の処理を行うことを前提としているため、成分画像生成部23において成分画像を分離するプロセスを「重みづけ総和」と表現しているが、対数変換していない画像から成分画像を分離する場合には、上記説明における「和」を「積」、「差」を「商」と読み替えれば、上記と同じ結果が得られることは明らかである。