JP5656209B2 - ウシタイレリア症の病態評価を可能とする方法 - Google Patents
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Description
lymphproliferative groupのT. parva や T. annulatareでは、寄生するシゾントがJNK1/2の恒常的活性化をもたらしてTやBリンパ球をtransformするため、リンパ系細胞の異常増殖とそれに関連すると考えられる症状 lymph-proliferative disease(リンパ球増殖症)が出現する。一方、hemoproliferative groupのT. orientalisには、リンパ球に対するtransform活性は確認されていない。メロゾイドによる赤血球寄生で、膜変性(degeneration)が生じ、脾臓の細網内皮系による感染赤血球除去が亢進することで生じると考えられる、貧血とそれに関連した慢性消耗疾患(Chronic Wasting Disease)が出現することが知られている。但し、T. orientalisの感染動向を調査した結果、抗ダニ剤が普及した現在では、原虫が感染した赤血球が末梢血中に観察されるものの、貧血等の明らかな臨床所見を呈することは稀で、大部分は不顕性感染となる。(以上、非特許文献1〜5参照)。
2)血液スメアやPCRによる原虫感染血球の診断は、感染成立を確定できるが、タイレリア症の発症を意味しない。
3)この感染に対する根治療法は無く、対処療法としてパマキンが使用される。大部分の感染ウシは不顕性感染となるため、感染していてもパマキンの投与が必要とは言えない。しかしながら、病態に基づく適切な診断がなされていない現状では、むしろ、過剰な治療がなされている。
4)感染の検出が病態を反映しないことで、投薬治療のガイドラインが明確でなく、また治療薬効果判定は曖昧である。
本発明の課題は、このような問題点を解消することにあり、タイレリア・オリエンタリス感染症のうち治療の必要な病態にあるウシを客観的、正確に診断するための手段を新たに提供し、タイレリア・オリエンタリス感染症の適切な治療に役立てようとするものである。
(1)ウシの末梢血から調製された細胞懸濁液と、タイレリア・オリエンタリス抗原を混和し、該懸濁液中の、タイレリア・オリエンタリス抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞を活性化させて、これらT細胞においてそれぞれIFN-γ及びIL-10を分泌させたのち、IFN-γ抗体及び抗IL-10抗体を用いて、IFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数をそれぞれ測定することにより、上記懸濁液中のタイレリア・オリエンタリス抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数を求め、これらT細胞数を指標にしてウシのタイレリア・オリエンタリス感染症の有無あるいは病態を検知することを特徴とする,ウシのタイレリア・オリエンタリス感染症の診断方法。
(2)上記IFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数の測定が、ELISpot法によることを特徴とする、上記(1)の診断方法。
(3)タイレリア・オリエンタリス抗原が、タイレリア・オリエンタリスの表面タンパク質及びその部分ペプチドであることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の診断方法。
(4)上記(1)に記載の診断方法に使用する診断用器具であって、基板上にIFN-γに対する抗体とIL-10に対する抗体がそれぞれ一定量ずつ区画されて配置固定化されていることを特徴とする、上記診断用器具。
(5)IFN-γに対する抗体の区画とIL-10に対する抗体の区画を各一対ずつ隣接配置して一つのユニットとし、該ユニットを基板上に複数配置したことを特徴とする、上記(4)に記載の診断用器具。
(6)基板が複数のウエルを有し、各ウエルが固定化される各抗体の区画を構成することを特徴とする、上記(4)又は(5)に記載の診断用器具。
2)上記IFN-γ及びIL-10を分泌するT細胞の検出には、ELISpot法が有効であること。
3)実験感染による感染状態の追跡で、タイレリア抗原に応答するT細胞が、Th1からTh2に変化し、この結果は、同病原体侵入後の経時的なT細胞免疫応答を明らかにするものであること。
4)タイレリア・オリエンタリス(T. orientalis)由来抗原特異的に応答してジェネレーションされるIFN-γ及びIL-10を分泌するT細胞の数は、ウシの同病原体感染症の状態を反映、殆どが不顕性感染として推移する同病原体による感染経過と、タイレリア症として発症する病態を見分けることが可能となること。
より具体的には、被験試料はウシより抗凝固処理した末梢血液より、HISTOPAQE(登録商標)-1077(SIGMA-ALDRICH社)などを用いた密度遠心分離法によって単離したPeripheral Blood Mononuclear Cells(PBMC)を使用する。単離後すぐに使用しない場合は細胞凍結保護液CP-1 (極東製薬工業株式会社)などを用いて凍結保存してもよい。また、細胞懸濁液の調製は特に限定されるものではなく、通常使用される培地等により行うが、可能な限りRPMI 1640 培地へ最終濃度10% 非働済FCS、50 μM 2-メルカプトエタノール、100 units/ml penicillin、100 μg/ml streptomycin を添加したRPMI コンプリートメディウムが望ましい。また、使用するPBMC はRPMI コンプリートメディウムへ懸濁した際に細胞数検出キットNucleoCassette(chemometec 社)もしくは血球計算盤を用いて細胞数を算出した後に測定に用いる。
この活性化において使用するタイレリア・オリエンタリス抗原としては、例えば、タイレリア・オリエンタースの表面タンパク質(major piroplasm surface protein (ピロプラズマ主要表面タンパク質, MPSP)及びその部分ペプチドが挙げられるが、ピロプラズム虫体表面に分布し、免疫原性が高い原虫抗原であることが証明されている(Sako et al., Int. J. Parasitol., 1999)p23等も使用できる。
すなわち、本発明の診断法においては、タイレリア・オリエンタリス抗原の混和によって活性化し、IFN-γおよびIL-10を分泌するようになったT細胞を含有する細胞懸濁液は、抗IFN-γ抗体および抗体IL-10抗体と接触させ、上記IFN-γおよびIL-10がそれぞれ結合した抗IFN-γ抗体数および抗体IL-10抗体数を検出することにより、上記懸濁液中のIFN-γおよびIL-10を分泌するようになったT細胞数を測定することができる。このIFN-γおよびIL-10を分泌するようになったT細胞の数は、求めるタイレリア・オリエンタリス感染によってジェネレートとしたタイレリア・オリエンタリス抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数に対応する。
サイトカイン分泌T細胞の数を測定する方法は、抗体による細胞内染色を行ないフローサイトメーターで検出する等いくつか知られているが、本願発明においては、ELISpot (Enzyme-linked immunospot)法が好ましく用いられる。
このように求められたタイレリア・オリエンタリス抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数は、タイレリア・オリエンタリス感染の状態を反映し、診断対象のウシにおいてIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数がともに検出されない場合には、診断対象のウシはタイレリア・オリエンタリスに感染しておらず、また、IFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数がともに一定基準値を超える場合には、診断対象のウシにおいて、タイレリア・オリエンタリス感染症を発症しているか、あるいは発症する恐れが高いものと判定することができる。
このような診断用器具は、IFN-γに対する抗体とIL-10に対する抗体がそれぞれ一定量ずつ区画されて配置固定化されて構成されている。このような診断用器具において、好ましいものは、IFN-γに対する抗体の区画とIL-10に対する抗体の区画を各一対ずつ隣接配置して一つのユニットとし、該ユニットを基板上に複数配置されているものであり、さらに、基板が複数のウエルを有し、各ウエルが固定化される各抗体の区画を構成しているものが好ましく用いられる。
これによりウシ検体が異なる場合にも同時に診断可能になり、また、同一検体でも複数行うことにより正確なものとなる。
図1に示される診断用器具は、基板に96個のウエルを有するフィルタープレートであって、各ウエルで構成される各区画には、キャプチャー抗体として、抗bovine IFN-γ抗体と抗bovineIL-10抗体が一定量ずつそれぞれ配置固定され、また、抗bovine IFN-γ抗体が配置固定化されたウエル2個及び抗bovineIL-10抗体が配置固定化されたウエル2個はそれぞれ対をなして隣接配置されて一つの検出ユニットを構成し、該ユニットはプレートにおいて複数設けられている。
ウシ末梢血から調製した細胞懸濁液は、タイレリア・オリエンタリス抗原と混和して、上記ユニット中の一対の抗bovineIFN-γ抗体及び同抗bovineIL-10抗体がそれぞれ配置固定化された一方ウエルに滴下され、抗bovineIFN-γ抗体及び抗bovineIL-10抗体がそれぞれ配置固定化された他方のウエルには、上記細胞懸濁液とPHAが混和されて滴下される。
これにより、上記発色部分は、ウエル内にスポットとして固定され、該スポットを顕微鏡でカウントすることにより、細胞懸濁液中の各タイレリア・オリエンタリス抗原特異的IFN-γ分泌T細胞 およびIL-10分泌T細胞数をそれぞれ求めることができる。
本実施例において使用した手法、及び予備実験の手法は以下のとおりである。
底面がPolyVinylidine DiFluoride (PVDF) メンブランで構成されている96 ウエルフィルタープレート(Millipore 社)を準備し、各ウエルへ70 % EtOH を50 μl ずつ加え30 秒 〜 2 分間処理することにより疎水性PVDF メンブランの親水処理を行った。ウエル内のEtOH をアスピレーターにより吸引除去後、Phosphate Buffered Saline (Ca2+ Mg2+ 無添加) (PBS) を各ウエルあたり150 μl 加えた後にアスピレーターで取り除く洗浄作業を5 回繰り返し、洗浄操作が終了した後、抗bovine IFN-γ キャプチャー抗体(MABTECH code 3115-3) 及び抗bovineIL-10 キャプチャー抗体(AbD serotec, code MCA2110, clone CC318) をPBS により7.5 μg/ml に希釈し、それぞれ80 μl ずつ加え 4 ℃、一晩処理することにより底面のPVDF メンブランへキャプチャー抗体をコーティングさせた。翌日に余剰なキャプチャー抗体はアスピレーターにより吸引除去後、各ウエルを150 μl のPBS で洗浄作業を行った。洗浄終了後のウエルにはRPMI コンプリートメディウムを100 μl ずつ加えて室温30 分間もしくは4 ℃、1 時間以上のブロッキング処理を行った。また、処理温度が4 ℃でのブロッキング処理を行った場合はELISpot法を行う前にプレートを室温へ戻しておいた。
解析対象ウシ個体から抗凝固処理した末梢血液を採取した。その後、同末梢血より単核球分画Peripheral Blood Mononuclear Cells (PBMCs)をHISTOPAQE(登録商標)-1077 (SIGMA-ALDRICH 社)を用いた密度遠心分離法によって単離した。また、単離後すぐに使用しない場合は細胞凍結保護液CP-1 (極東製薬工業株式会社) を用いて必要になるまで保存した。PBMCsはRPMI コンプリートメディウムで洗浄後、RPMI コンプリートメディウムへ再懸濁させ細胞数検出キットNucleoCassettetm (chemometec) もしくは血球計算盤を用いて細胞数を算出した。
(1) タイレリア原虫表面タンパク質であるmajor piroplasm surface protein (ピロプラズマ主要表面タンパク質, MPSP) において抗原性が報告されている7C、7I、15C、15Iの4 種類をペプチド合成した(J. Vet. Med. Sci 63:895-901,2001 Kakuda T et al)。
上記(1)〜(3)に示される合成ペプチドを実験目的に合わせて単独もしくは混合して使用した。これら合成ペプチドのアミノ酸配列は以下に示される。
7I: MPSP アミノ酸配列の第61 位から80 位からなるペプチド配列(DTSKFTPTVAHRLKHADDLF;配列番号2)
15C: MPSP アミノ酸配列の第141 位から160 位からなるペプチド配列(GTGKVYDFVGNFKVTKVKFE;配列番号3)
15I: MPSP アミノ酸配列の第141 位から160 位からなるペプチド配列(GTGKLYNFIGNFKVKKVMFE;配列番号4)
BHV-gB7: BHV-gB アミノ酸配列の第319 位から第340 位からなるペプチド配列(HREHTSYSPERFQQIEGYYKR;配列番号5)
BHV-gB15: BHV-gB アミノ酸配列の第415 位から第436 位からなるペプチド配列(LQNVPLSDCVIEEAEAAVERV;配列番号6)
RSV-F25: RSV-F アミノ酸配列の第121 位から第136 位からなるペプチド配列(STKKFYGLMGKKRKRR;配列番号7)
RSV-F69: RSV-F アミノ酸配列の第341 位から第356 位からなるペプチド配列(WYCDNAGSVSFFPQAE;配列番号8)
上記1)のキャプチャー抗体をブロッキングした96 ウエルフィルタープレートにおいて、ブロッキング処理に用いたRPMI コンプリートメディウムを除去した後に、抗bovine IFN-γ キャプチャー抗体をブロッキングしたウエルには5 〜20 x 10E5 cells 、抗IL-10 キャプチャー抗体をブロッキングしたウエルには0.5〜 2 x 10E5 cells の細胞を含むRPMI コンプリートメディウム100 μl ずつウエルへ播種した。刺激物質としては抗原性が報告されている刺激用抗原ペプチドを合成し、RPMI コンプリートメディウムで最終濃度の2 倍濃度に調製し用いた。調製した刺激用抗原ペプチドを100 μl ずつ加えて目的の最終濃度の刺激用抗原ペプチドを含む細胞懸濁液200 μl とした。 ELISPOT アッセイのコントロールとしては最終濃度1μg/ml phytohemagglutin (PHA) で刺激するためのウエルを用意し、数回ピペティングした後に37 ℃のCO2 インキュベーター内で18 〜 42 時間、振動を与えないように培養した。
上記4)の操作後、細胞懸濁液を除去した後に200 μl PBS で5 回洗浄作業をし、0.5% FCSを含むPBS (0.5% FCS/PBS)で希釈した抗bovine IFN-γ ビオチン化抗体(最終濃度 0.25 μg/ml MABTECH code 3115-6)または抗bovine IL-10 ビオチン化抗体(最終濃度 0.5 μg/ml AbD serotec code MCA211B clone CC320) をそれぞれのサイトカインに対応するウエルへ80 μl ずつ加えて室温 2 時間反応させた。ビオチン化抗体溶液を除去し、200 ul PBS で5 回洗浄作業をした後に0.5% FCS/PBS で500 倍希釈したHorseradish Peroxidase (HRP) をコンジュゲートしたstreptavidin (MABTECH code 3310-9) を室温1 時間反応させた。HRP 溶液を除去し、200 μl PBS で5 回洗浄作業をした後に3-Amino-9-ethylcarbazole (AEC) substrate kit (BD Biosciences code 551951) を用いて室温30 分間、発色させた。流水により反応液を洗い流し発色反応を停止させた。プレートは風乾によって十分に乾燥させた。
上記5)の操作において、乾燥後のメンブラン上に現れたスポットを正立顕微鏡 (Leica DM200) を用いてそれぞれをカウントした。その結果IFN-γ とIL-10 を同一個体で10 スポット以上検出されると、貧血を含む慢性消耗性状態と判断した。
検体ウシより採取した血液をスライドガラスへ塗布し、乾燥させ、メタノールによって固定した後に、MUTO化学薬品より購入したギムザ液により添付プロトコールにしたがって染色を行った。染色が終了した後に軽く水洗し、再び乾燥させ封入した。
その後に下記基準に従って顕微鏡を用いて検鏡し下記の基準に従って原虫の感染を判定した。
+ 10 視野を観察して、1 個の原虫を検出したもの
++ 10 視野を観察して、2 ~ 9 個の原虫を検出したもの
+++ 1 視野で1 ~ 9 個の原虫を検出したもの
++++ 1 視野で10 個以上の原虫を検出したもの
タイレリア病の遺伝子診断(Polymerase Chain Reaction (PCR) 法)
検体ウシより抗凝固剤処理により採血した末梢血液からQIAamp DNA Blood Mini Kit (QIAGEN 社)を用いてゲノムDNA を精製した。精製したゲノムDNA をPCR 法のテンプレートとして、フォワードプライマー(5' -CTTTGCCTAGGATACTTCCT- 3';配列番号9)、リバースプライマー(5' -CAAGAGAGGCAACAACAACGA- 3';配列番号10)、Takara Ex Taq (タカラバイオ株式会社)、Ampdirect Plus (Shimadzu 社)を調製しPCR 反応液とした。
反応サイクルは下記の条件を用いた。
94℃、10分続いて(94℃、30秒;58℃、45秒;72℃、60秒)を35サイクル続いて72℃、4分。次に、このPCR 法によって得られた産物を常法に従い電気泳動分析した。その結果分離できたバンドパターンを分析することによりタイレリア感染を判定した。
EDTA採血した血液は全自動血球計数器MEK-6358 (日本光電)により赤血球濃度(RBC)、ヘモグロビン濃度(HGB)、ヘマトクリット値(HCT)を測定した。下記のウシ血液正常範囲(獣医血液学〈医歯薬出版〉参照)のいずれかが正常値以下のものを貧血とし、血球性状によって貧血を分類した。
赤血球濃度(RBC) :正常値(500 〜1000)
ヘモグロビン濃度(HGB) :正常値(8.0 〜15.0)
ヘマトクリット値(HCT) :正常値(24.0 〜46.0)
PHA 刺激によるELISPOT アッセイ
糖結合性のタンパク質または糖タンパク質であるレクチンは、抗原非特異的にリンパ球を活性化するため免疫応答機構の基礎研究において広く使用されている。そこで、本ELISpot法系においても植物レクチンPHA 刺激処理によって産生されたIFN-γ とIL-10 を検出できるかを検討した。
標的細胞として、京都微研製の牛5種混合生ワクチン(牛伝染性鼻気管炎(BHV)・牛ウイルス性下痢−粘膜病・牛パラインフルエンザ・牛RSウイルス感染症・牛アデノウイルス感染症混合生ワクチン)を接種したウシ由来のPBMCを用意し、上記1)で調製した抗bovine IFN-γ キャプチャー抗体をブロッキングしたプレート (IFN-γ 検出プレート)、及び抗bovineIL-10 キャプチャー抗体をブロッキングしたプレートにIL-10 検出プレートに、上記4)の手法に従い、それぞれ上記標的細胞(IFN-γ 検出プレート:1.25〜10x10E5 cells/well、IL-10 検出プレート:0.5〜5x10E5 cells/well)cells/well、IL-10 検出プレート:0.5〜5x10E5 cells/well)とPHA (最終濃度0, 10 ng/ml, 100 ng/ml, 500 ng/ml, 1 μg/ml, 10 μg/ml)を混合し42 時間インキュベーションした。その後、上記5)、6)の操作を行って、スポットを検出した。その結果、1 μg/ml PHAで刺激した際にはIFN-γ:10x10 E5 cells/well、またはIL-10:2x10 E5 cells/well条件において未刺激群と比較し良好な結果を得られた(図2A, 図4)。しかし、高濃度の刺激剤や高密度の標的細胞でインキュベーションすると過剰にスポットが検出され、個々のスポットの識別が困難になるが、本ELISpot法系は至適な処理条件を見いだすことによって細胞から産生されたIFN-γ とIL-10 を検出すること可能であるとの結論を得た。
ウイルスペプチドによるELISpot
本ELISpot法が抗原特異的な刺激よって活性化された細胞から産生されるIFN-γ を検出できるか検討した。使用した標的細胞は、上記京都微研製の牛5 種混合生ワクチンを3 回接種したウシよりPBMC を単離し用いた。刺激剤はBHV のglycoprotein B タンパク質上で抗原性が報告されているペプチド(BHV-gB7, BHV-gB15) または、RSV のF タンパク質上で抗原性が報告されているペプチド(RSV-F25, RSV-F69) を選択し、ペプチド合成を行い刺激ペプチドとしてELISpot法 に用いた。上記IFN-γ 検出プレートへそれぞれの刺激ペプチドを最終濃度0.01 μM, 0.1 μM, 1 μM, 2 μMに調製し、2.5〜20x10 E5 cells/well のPBMC と混合し42 時間インキュベーションした。
その結果0.1 μM 以上のBHV-gB7 ペプチド濃度で処理することによりIFN-γ を良好に検出できた。しかし、BHV-gB15, RSV-F25, RSV-F69 に反応しIFN-γを産生する細胞はほとんど存在しなかった(図2C)。これらの結果から、本ELISpot法は適切な刺激剤とその処理条件を見いだすことによって、抗原特異的にIFN-γ を産生する細胞を検出することが可能であるとの結論を得た。
野外感染群による検索
そこで既存のタイレリア症診断(顕微鏡検査、遺伝子診断法) のどちらかでタイレリア感染が認められた放牧牛に対してIFN-γ とIL-10 両ELISpot法の結果と血液検査との関係を検討した。検体ウシはタイレリア症の病態を示しやすいホルスタイン群(T1-10)とタイレリア症の病態を示しにくいアンガス・黒毛和種群(S1-8) の2 群で行った。
人工感染群による検索
タイレリア未感染牛へ人為的にピロプラズマ原虫を投与し、その感染動態における免疫応答能の経時的変化を検討した。検体は感染ウシより回収した原虫を含む感染生血液を投与した個体(OU1) と感染血液から単離後に、凍結保存により赤血球除去により感染力を低下させたPBMC を投与する個体(OU2)とした。投与後に定期的に採血を行いELISA 法用の血清とELISpot法用のPBMC を調製し実験に用いた。
まず、虫体抗原を用いてELISA により血中抗体量を測定すると、OU1は投与後20 日以降で抗体価が上昇し始めた。一方、OU2では投与後30 日目以降でわずかな抗体価上昇が認められた(図6A)。また、OU1では上記7)の手法による顕微鏡検査において原虫が投与後34 日以降で確認でき、上記8)の手法による遺伝子診断法では20 日目以降で陽性を示した。しかし、OU2は両診断方法とも陰性のままだった。このことから感染生血液を投与した群では人工感染が成立していることが確認できた(図6B, C)。
その結果、OU1 PBMC は上記顕微鏡検査と遺伝子診断法が陰性であった投与後5 日目からIFN-γが基準値を超えて検出され、このIFN-γ産生亢進は13 日目まで一過性に続いた。その後、20 日目以降からIFN-γが低下し始めこれに変わって徐々にIL-10が検出され、投与後27 日目以降では安定して検出されるようになった(図6D)。また、OU2 PBMC では20 〜27 日にかけてIFN-γ のみが基準値をやや超えたが、検出されるIFN-γ、IL-10スポット数は少ない傾向であった。以上の結果よりMPSP 抗原ペプチドに反応する細胞はIFN-γ の産生に特徴づけられるTh1 からIL-10 を産生するTh2 またはTregへ推移しており、本ELISpot法を用いることより個体の免疫応答を予測することができる。さらに本ELISpot法は他のタイレリア診断方法より早期の段階で感染の兆候を確認することができるため早期治療を開始できると考えられる。
Claims (7)
- ウシの末梢血から調製された細胞懸濁液と、タイレリア・オリエンタリス抗原を混和し、該懸濁液中の、タイレリア・オリエンタリス抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞を活性化させて、これらT細胞においてそれぞれIFN-γ及びIL-10を分泌させたのち、IFN-γ抗体及び抗IL-10抗体を用いて、IFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数をそれぞれ測定することにより、上記懸濁液中のタイレリア・オリエンタリス抗原特異的に応答するIFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数を求め、これらT細胞数を指標にして、ウシのタイレリア・オリエンタリス感染症の有無、及び、感染している場合は、その病態が不顕性であるか、あるいは、感染症を発症しているかを検知することを特徴とする,ウシのタイレリア・オリエンタリス感染症の診断方法。
- 上記IFN-γ分泌T細胞及びIL-10分泌T細胞数の測定が、ELISpot法によることを特徴とする、請求項1に記載の診断方法。
- タイレリア・オリエンタリス抗原が、タイレリア・オリエンタリスの表面タンパク質及びその部分ペプチドであることを特徴とする、上記請求項1又は2に記載の診断方法。
- 請求項1記載の診断方法に使用する診断用器具であって、基板上にIFN-γに対する抗体とIL-10に対する抗体がそれぞれ一定量ずつ区画されて配置固定化されていることを特徴とする、上記診断用器具。
- IFN-γに対する抗体の区画とIL-10に対する抗体の区画を各一対ずつ隣接配置して一つのユニットとし、該ユニットを基板上に複数配置したことを特徴とする、請求項4に記載の診断用器具。
- 基板が複数のウエルを有し、各ウエルが固定化される各抗体の区画を構成することを特徴とする、上記請求項4又は5に記載の診断用器具。
- タイレリア・オリエンタリス抗原と請求項4〜6に記載の診断用器具を含む、請求項1記載の診断方法に使用するための診断用キット。
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