JP5655194B2 - 流量測定装置 - Google Patents
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しかし、超音波を利用した上記の流量測定装置では、パイプを伝搬する波についての理論的解析がきちんと行われていないため、その最適化が困難であった。
本件の出願人らは、ガイド波を用いた流量測定装置の発明について、これまで、特願2006−109218(特開2007−298275号公報参照。)、特願2007−280888(特開2009−109299号公報参照。)及び特願2009−272705を出願している。
なお、本明細書において「ガイド波」とは、板、棒、パイプ等、境界を持つ媒質を長手方向に伝搬する超音波をいう。
しかしながら、図9に示すように、従来技術1のような伝搬速度差式超音波流量計において、超音波送受信子2及び3に電気的な導線4及び5を設けるには、構造上、プレート状に形成された超音波振動子の片面から結線する必要がある。もちろん、超音波送受信子2及び3のケース6に導線4及び5の一方の電極を配線するための切除部を設けて超音波振動子の両面から結線することも不可能ではないが、ケース6に切除部を合わせ加工しなければならず、加工に時間がかかるという問題があり、採用されていない(例えば、特許文献2参照。以下、「従来技術2」という。)。
図10(a)において、見えている面が導線4及び5が結線される側の面(以下、「導線接続面」ということもある。)として示されている。
超音波振動子7は、圧電素子材料、例えば、PZTなどからなり、円板状をしており、図10(a)の上面、図10(c)の左側面が導線接続面であり、該導線接続面の大部分を占めるように扇形のプラス電極面8が、また、残りの部分にプラス電極面8と間隙を有してマイナス電極面9が焼付け等の手段で形成され、各電極面8及び9にそれぞれ導線がハンダ付けされるようになっている。一方、超音波振動子7の反対側の面(以下、「超音波送出面」ということもある。)の全面にマイナス電極面9が焼付け等の手段で形成され、導線接続面に形成されたマイナス電極面9と超音波振動子7の側面を回り込むようにして接続された構造となっている。すなわち、従来技術2においては、超音波振動子7の片面から結線する必要がある場合において、導線接続面の大部分にプラス電極面8を残りの小さい部分にマイナス電極面9を形成する一方、超音波送出面の全面にマイナス電極面9を形成して、超音波送出面のマイナス電極面9と導線接続面のマイナス電極面9とを超音波振動子7の側面を介して接続するという構造をとっていた。
超音波振動子7の外周はケースに固定されるものであることから、この条件を再現するため、外周面のz変位はないという境界条件で解いた。
その結果を図12に示す。図12は、電位差を与えたときの断面図(図11のモデルを横から見た図)である。網目は電位分布を示し、網目の細い方が電位が高い。電位分布が不均等のため、変形も不均等になっている。特に、プラス電極が存在する外周部は上下に広がろうとする力が発生することが確認される。
また、本発明は、超音波振動子の熱膨張による形状変化を均等にして、長時間使用時においても安定性のある流量測定装置を提供することを目的とするものである。
さらに、第2の特徴により、超音波振動子の熱膨張による形状変化を均等にして、長時間使用時においても安定性のある流量測定装置を提供することができる。
また、本発明の流量測定装置は、第6に、第3又は第4の特徴において、超音波振動子の両面に形成されたマイナス電極面又はプラス電極面を超音波振動子の側面の全部を介して接続するよう構成してなることを特徴としている。
(1)ガイド波伝搬の解析から、超音波振動子が軸対称の振動をし、その超音波ビームの軸と流体の流路の中心とを一致させることで、測定精度の大幅な改善が可能になった。
(2)両面に電極面が設けられた板状の超音波振動子の一方の面からのみ電気的導線が接続可能なように導線接続面にプラス電極面及びマイナス電極面が間隙を有して配置されたものであって、前記導線接続面に設けられた両電極面の間隙を挟んで対向する部分の形状を超音波ビームの軸を中心とする円形又は正多角形に形成することにより、超音波ビームの軸に対して超音波の音場の軸、すなわち、流体の流路の中心が一致し、Lモードのガイド波を選択的に励起するとともに他のモードのガイド波の励起を抑え、かつ、超音波の軸が経時的にずれることを防止しできるため、測定精度の安定した流量測定装置を提供することができる。また、超音波振動子の熱膨張による形状変化を均等にして、長時間使用時においても安定性のある流量測定装置を提供することができる。
図1において、上向きに開口するコ字形状の超音波流量測定管10は、流体流入部11、流量測定部12及び流体流出部13とから形成されている。また、前記超音波流速測定管1の流量測定部12には、流れ方向の上流側と下流側に、互いに所定距離Lを隔ててそれぞれ超音波送受信子14、15が配置されている。この超音波送受信子14、15は、それぞれ、送受信切替器16、17からの駆動パルスにより駆動されて振動し、超音波を発生送信する一方、送信されてきた超音波を受信するもので、それら超音波送受信子14、15が振動したときの受信波が送受信切替器16、17及びコントローラ18を介して流量演算回路19に送られ、演算結果を流量表示回路20に送るようになっている。
なお、図1では、流量測定部12の両側にそれぞれ超音波送受信子14、15を1個ずつ設け、送信機能及び受信機能を切り替え使用するようにしているが、流量測定部12の両側にそれぞれ超音波送信子及び受信子を1組ずつ設ける構成や、電気回路を2組設けて、両側の送信子(送受信子)から同時に発信させ、両側の受信子(送受信子)で同時に受信させるように構成してもよいことはもちろんである。本明細書においては、送信機能及び受信機能を切り替え使用する構成、及び、送信子及び受信子を別個に設ける構成、及び、電気回路を2組設けて、両側の送信子(送受信子)から同時に発信させ、両側の受信子(送受信子)で同時に受信させるようにする構成を含めて、流量測定部の両側にそれぞれ超音波送信子・受信子を設けるという。
(1)送受信切替器16、17によりDOWN測定経路に切り替えを行う。
(2)パルス発生回路21よりパルスを発生する。
(3)アンプにより±10V程度の波形に増幅する。
(4)DOWN測定経路1を経由して超音波送受信子14より超音波パルスを流量測定部12の流路30に送信する。
(5)超音波送受信子15から超音波パルスを受信する。
(6)受信信号を、DOWN測定経路2を経由して、共振回路22、アンプ23、共振回路24及びアンプ25からなる増幅回路に送り、増幅する。
(7)A/D変換により受信波形をデジタルデータに変換し、コントローラ18に取り込む。
(8)流量演算回路19で、DOWNの伝搬時間T1を計算する。
(9)送受信切替器16、17によりUP測定経路に切り替えを行う。
(10)パルス発生回路21よりパルスを発生する。
(11)アンプにより±10V程度の波形に増幅する。
(12)UP測定経路1を経由して超音波送受信子15より超音波パルスを流量測定部12の流路30に送信する。
(13)超音波送受信子14から超音波パルスを受信する。
(14)受信信号を、UP測定経路2を経由して、共振回路22、アンプ23、共振回路24及びアンプ25からなる増幅回路に送り、増幅する。
(15)A/D変換により受信波形をデジタルデータに変換し、コントローラ18に取り込む。
(16)流量演算回路19で、UPの伝搬時間T2を計算する。
(17)T1、T2より流速を求め、流速より流量を求める。
理論値L(0,1)〜L(0,4)、F(1,0)〜F(1,4)の合計8個のモードのガイド波において、実線は位相速度を、また、破線は群速度を示している。
図2の理論曲線から、ガイド波は速度分散性(周波数依存性)を持っていることがわかる。ガイド波には、さまざまなモードがあるが、L(0,1)〜L(0,4)は軸対称のモードで、F(1,0)〜F(1,4)は曲げモードの一種である。
L(0,4)の群速度は他のモードの群速度から孤立しており、測定に適していることがみてとれる。
超音波送受信子14は、たとえば円板状の圧電材料(例:PZT)を素材とした超音波振動子36とその両面にプラス及びマイナスの電極面が設けられて構成されており、円板状の整合板37に装着され、ケース38により周縁部が固定されて取り付けられるようになっている。超音波振動子36の形状は円板状に限定されるものではなく、四角形その他、任意の形状でよい。また、整合板37は必ずしも必須ではない。
図3において、超音波振動子36の右側の面が導線39が接続される導線接続面であり、左側が超音波送出面である。ケース38の超音波振動子36に近接する導線側の内面には、導線39を超音波振動子36の電極面の所定位置にハンダ付けするための逃げ部40が設けられている。
超音波送受信子14を装着するに当たっては、超音波ビームの軸O、すなわち、電極の中心が測定流体の流路の中心O’と一致するようにして設置することが重要である。
図4(a)において、見えている面が導線39の結線される導線接続面である。
超音波振動子36は、圧電材料、例えば、PZTからなり、円板状をしており、図4(a)の上面、図4(c)の左側が導線接続面である。
超音波振動子36の導線接続面の周縁部に超音波ビームの軸Oを中心とするドーナツ状のマイナス電極面41を、同じく中央部に超音波ビームの軸Oを中心とする円形状のプラス電極面42を形成している。
マイナス電極面41とプラス電極面42とは図4(a)及び4(c)に示すように、所定の間隙δを有して配置される。
一方、超音波振動子36の反対の面(超音波送出面)には、超音波ビームの軸Oを中心とする円形状のマイナス電極面43が形成されている。また、超音波振動子36の両面に形成されたマイナスの電極面41と43とは、超音波振動子36の側面を回り込むようにして形成された接続部44により接続される。
このように、超音波ビームの軸Oを想定してこれを中心として電極を形成するため、結果として、電極の中心が超音波ビームの軸Oとなる。
図5(a)では、超音波振動子36は円形をしており、周縁側のマイナス電極面41及び中心側のプラス電極面42は超音波ビームの軸Oを中心とするドーナツ状をしている。
図5(b)では、超音波振動子36は円形をしており、周縁側のマイナス電極面41は超音波ビームの軸Oを中心とするドーナツ状をしており、中心側のプラス電極面42は超音波ビームの軸Oを中心とする外周が円形で内周は星形をしている。
両例とも、導線接続面に設けられた両電極面41、42の間隙δを挟んで対向する部分の形状は超音波ビームの軸Oを中心とする円形に形成されている。
図5(d)では、超音波振動子36は正四角形をしており、周縁側のマイナス電極面41は超音波ビームの軸Oを中心とする外周が正四角形で内周が円形をしており、中心側のプラス電極面42は超音波ビームの軸Oを中心とする円形をしている。
両例とも、導線接続面に設けられた両電極面41、42の間隙δを挟んで対向する部分の形状は超音波ビームの軸Oを中心とする円形に形成されているが、超音波振動子36は円形である必要はなく、また、両電極面41、42の間隙δを挟んで対向する部分以外の形状は任意である。
超音波振動子36の外周縁には電極は形成されておらず、接続部44が超音波振動子36の側面に1箇所設けられている。
図5(f)では、超音波振動子36は正四角形をしており、周縁側のマイナス電極面41及び中心側のプラス電極面42が超音波ビームの軸Oを中心として形成されており、マイナス電極面41は外周が正四角形で内周が円形を、プラス電極面42は円形をしている。
両例とも、導線接続面に設けられた両電極面41、42の間隙δを挟んで対向する部分の形状は超音波ビームの軸Oを中心とする円形に形成されているが、超音波振動子36の外周縁には電極は形成されておらず、接続部44が超音波振動子36の側面に2箇所設けられている。
また、図5に示した例の場合も、導線接続面と反対の超音波送出面には、マイナス電極43が超音波振動子の全面又はマイナス電極41の外縁と同じ外縁を有して外縁内の全体もしくは一部に設けられている。
図6に示す実施形態1のモデルの場合、水圧の分布は軸対称となった。この軸対称の水圧分布が音波の初期の分布と考えられ、ホイヘンスの原理にのっとって伝搬していくものであるから、軸対称の超音波が軸方向に伝搬すると判断される。
一方、図11に示す従来技術2のモデルの場合、水圧の分布も非対称となった。このため、音場も非対称ではなく、伝搬方向も軸中心からずれると判断される。
この実験では、10mL/分の流量を流し、実施形態1及び従来技術2でそれぞれ測定した。横軸が時間で、縦軸は10mL/分との差を示している。破線は従来技術2の流量データの多項式近似値であり、実線は実施形態1の流量データの多項式近似値である。
従来技術2においては、上下のバラツキが大きく、時間の経過と共に多項式近似値、すなわち、ゼロ点が大きくずれていくことが確認できる。一方、実施形態1においては、上下のバラツキがなく、時間が経過してもゼロ点がほとんどずれていないことが分かる。
実施形態1においては、従来技術2に比較して平均値で10倍以上精度がよいことが確認できる。
以上のとおり、ガイド波伝搬の解析から、超音波振動子が軸対称の振動をし、その振動の中心軸と流体流れの中心軸を一致させることで、測定精度の大幅な改善が可能になった。
したがってこの性質を利用すると、流量測定部の形状を例えばパイプを曲げた形状とすることにより超音波流量計の小型化が可能になる。
11 流体流入部
12 流量測定部
13 流体流出部
14 超音波送受信子
15 超音波送受信子
16 送受信切替器
17 送受信切替器
18 コントローラ
19 流量演算回路
20 流量表示回路
21 パルス発生回路
22 共振回路
23 アンプ
24 共振回路
25 アンプ
30 流量測定部における流路
31 流体流入部の流路
32 流体流出部の流路
33 テーパ部
34 流路の両側の部分における大径流路
35 中央の小径流路
36 超音波振動子
37 整合板
38 ケース
39 導線
40 逃げ部
41 マイナス電極面
42 プラス電極面
43 マイナス電極面
44 接続部
O 超音波ビームの軸(電極の中心)
O‘ 測定流体の流路の中心
Claims (5)
- 流量測定部の両側にそれぞれ超音波送信子・受信子を距離L隔てて設け、前記超音波送信子の駆動により励起されるガイド波が、間隔L離れた前記超音波受信子に上流から下流へ伝搬する時の伝搬時間T1と、下流から上流へ伝搬する時の伝搬時間T2との伝搬時間差から流体の流速を求める流量測定装置において、
両面に電極面が設けられた板状の超音波振動子の一方の面からのみ電気的導線が接続可能なように導線接続面にプラス電極面及びマイナス電極面が間隙を有して配置されたものであって、
前記超音波送信子・受信子の超音波ビームの軸と前記流体の流路の中心とを一致させるように、前記導線接続面に設けられた両電極面の間隙を挟んで対向する部分の形状を前記超音波ビームの軸を中心とする円形又は正多角形に形成することを特徴とする流量測定装置。 - 前記超音波振動子の前記導線接続面の周縁部に前記超音波ビームの軸を中心とするマイナス電極面を、中央部に前記超音波ビームの軸を中心とするプラス電極面を形成し、前記超音波振動子の前記導線接続面と反対の面にマイナス電極面を形成し、両面に形成されたマイナス電極面を前記超音波振動子の側面を介して接続するように構成してなることを特徴とする請求項1記載の流量測定装置。
- 前記超音波振動子の前記導線接続面の周縁部に前記超音波ビームの軸を中心とするプラス電極面を、中央部に前記超音波ビームの軸を中心とするマイナス電極面を形成し、前記超音波振動子の前記導線接続面と反対の面にプラス電極面を形成し、両面に形成されたプラス電極面を前記超音波振動子の側面を介して接続するよう構成してなることを特徴とする請求項1記載の流量測定装置。
- 前記超音波振動子の両面に形成された前記マイナス電極面又は前記プラス電極面を前記超音波振動子の側面の一部を介して接続するよう構成してなることを特徴とする請求項2又は3記載の流量測定装置。
- 前記超音波振動子の両面に形成された前記マイナス電極面又は前記プラス電極面を前記超音波振動子の側面の全部を介して接続するよう構成してなることを特徴とする請求項2又は3記載の流量測定装置。
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